特許第6094879号(P6094879)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ サンケン電気株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6094879-LDMOSFETのサージ電流保護回路 図000002
  • 特許6094879-LDMOSFETのサージ電流保護回路 図000003
  • 特許6094879-LDMOSFETのサージ電流保護回路 図000004
  • 特許6094879-LDMOSFETのサージ電流保護回路 図000005
  • 特許6094879-LDMOSFETのサージ電流保護回路 図000006
  • 特許6094879-LDMOSFETのサージ電流保護回路 図000007
  • 特許6094879-LDMOSFETのサージ電流保護回路 図000008
  • 特許6094879-LDMOSFETのサージ電流保護回路 図000009
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6094879
(24)【登録日】2017年2月24日
(45)【発行日】2017年3月15日
(54)【発明の名称】LDMOSFETのサージ電流保護回路
(51)【国際特許分類】
   H02M 3/28 20060101AFI20170306BHJP
【FI】
   H02M3/28 C
   H02M3/28 H
【請求項の数】2
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2013-60396(P2013-60396)
(22)【出願日】2013年3月22日
(65)【公開番号】特開2014-187787(P2014-187787A)
(43)【公開日】2014年10月2日
【審査請求日】2015年12月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】000106276
【氏名又は名称】サンケン電気株式会社
(72)【発明者】
【氏名】近藤 啓
【審査官】 麻生 哲朗
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−204361(JP,A)
【文献】 特開2012−023899(JP,A)
【文献】 特表2005−515745(JP,A)
【文献】 特開2012−157191(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2008/0205099(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 3/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
直流電源の出力端子間に、負荷を介して横型構造のLDMOSFETが接続され、前記LDMOSFETのゲート端子にオンパルス信号を入力してスイッチング動作させることで前記負荷に一定の電力を供給させる制御回路において、前記制御回路は、前記LDMOSFETに流れるスイッチング電流を検出して電圧信号に変換して出力する電流検出手段を備え、前記電流検出手段は基準電圧を有し、前記制御回路は、前記電圧信号と前記基準電圧とを比較して前記電圧信号が大きく、かつ前記電圧信号が出力される時間幅が所定の第1の時間を超えた時点で前記LDMOSFETのオン状態をオフさせるオフ手段と、前記オンパルス信号のパルス幅が所定の第2の時間未満の場合には、前記LDMOSFETのオン状態を少なくとも予め定められた時間分オンさせる手段とを備えることを特徴とする制御回路。
【請求項2】
前記電流検出手段は、第1の基準電圧と第2の基準電圧とを有し、前記第1の基準電圧
より前記第2の基準電圧は高く設定され、
前記第1の基準電圧は、前記LDMOSFETがASO破損とならないスイッチング電
流未満に相当する値とし、
前記第2の基準電圧は、前記LDMOSFETに流れるサージ電流により寄生トランジ
スタが誤動作開始する電流に相当する値とし、
前記LDMOSFETに流れるターンオン時のスイッチング電流を検出した電圧信号と
前記第1の基準電圧と比較し、前記電圧信号が大きいときに第1の過電流信号を出力し、
前記第2の基準電圧と比較し、前記電圧信号が大きいときに第2の過電流信号を出力し、
前記第1の過電流信号と前記第2の過電流信号が出力されたのち、
前記第1の過電流信号が前記オンパルス信号のパルス幅が所定の第2の時間未満の場合
には、前記LDMOSFETのオン状態を少なくとも予め定められた時間オンさせ、
または、
前記第1の過電流信号と前記第2の過電流信号が出力されたのち、
前記第1の過電流信号が所定の第1の時間を超えた時点で、前記LDMOSFETのオ
ン状態をオフさせることを特徴とする請求項1記載の制御回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スイッチング電源装置に係り、特にLDMOS構造のスイッチング素子のターンオンにおいて、サージ電流による寄生トランジスタによる誤動作を防止する保護に関するものである。
【背景技術】
【0002】
スイッチング電源装置において、交流電源を受電し起動するとき、或いは負荷電流の急激な変化、もしくは負荷短絡により1次側のスイッチング素子に流れる電流を制限するために過電流回路が組み込まれている。
特許文献1においては、前記スイッチング素子にセンスMOSを併用し、1次側のスイッチング素子に流れるドレイン電流の過電流をセンスMOSに流れる電流と比較することで検出する。スイッチング素子に流れるメイン電流とセンスMOSに流れる電流を抵抗を介して電圧に変換して基準電圧に設定し、前記スイッチング素子のオン時のドレイン電圧とセンスMOSのドレイン電圧を比較することで異常過電流を検出し、異常時にはスイッチング素子のゲート電圧を低下させることで、トランジスタ破壊を防止するものである。
スイッチング素子として、例えば特許文献2のLDMOSFET(Laterally Diffused MOSFET)構造のFET(電界効果トランジスタ)が用いられることもある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平6−244693号公報
【特許文献2】特開2001−135719号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら特許文献1では、負荷短絡などによりターンオン時のサージ電流が増大したとき、横型構造のLDMOSFET(Laterally Diffused MOSFET)特有の寄生トランジスタ動作によりドレイン電流が持続する現象に関しては言及されていない。
横型構造のLDMOSFETの等価回路は、図4に示すようにMOSFET M1のドレイン・ソース端子と並列にトランジスタTr1のコレクタ・エミッタが接続され、バックゲート・ソース端子間にはトランジスタTr1のベース・エミッタ端子と抵抗r1とコンデンサc1が並列に接続されている。
図7に示す従来のスイッチング電源装置1aにおいて、負荷短絡されると2次側整流ダイオードD3に過電流が流れ、ダイオードD3はチップ温度が上昇し、リカバリ電流が増加することになる。これにより、スイッチング素子Q1がターンオン時にトランスTを介してダイオードD3のリカバリ電流であるサージ電流が流れることになる。ここで、ターンオン時に大きなサージ電流が100〜200ナノ秒程度流れるとコンデンサc1に充電され寄生トランジスタTr1がオン動作となり、寄生トランジスタTr1のオン直後にLDMOSFETのゲート信号がオフされるとMOSFET M1はオフするが、寄生トランジスタTr1はコンデンサc1と抵抗r1の時定数時間だけオン動作が持続してしまう。寄生トランジスタTr1のオン動作の持続は10マイクロ秒台に至る場合があり、スイッチング周期以上のオン状態が持続するのでトランスの飽和を招き破損に至る。
【0005】
また、スイッチング電源装置においては、ターンオン時に発生するサージ電流により過電流保護回路が誤動作して、スイッチング素子のオンパルス信号のデューティーをゼロ近くまで制限して電力を出力に供給できなくなる誤動作を防止するために、図7に示すようにサージ電流が流れる期間より少し余裕を持たせた時間だけ過電流保護回路を動作させないブランキング回路Blankingが備えられている。しかしながら、図8に示すように、時刻t1において負荷短絡が生じると時刻t2のスイッチング素子のゲート信号Vgのデューティーがゼロ近くまで短くなるが、ドレイン電流は増加する。これは、ブランキング回路によりターンオン時のブランキング時間分は過電流保護回路が動作しないため、ドレイン電流を制限できないためである。また、ブランキング時間中のドレイン電流が定常動作時の電流よりも大幅に増加することでオン状態時のドレイン電圧が上昇し、これによりASO損失の増加となる。図6にLDMOSFETのASOと許容時間との関係を示す。図6に示すゲート信号Vgが時刻tg3から時刻tasxになると、ドレイン電圧Vdsの上昇に伴いASO損失の増加となって、スイッチング素子のチャンネル温度を超えて破損に至ることがある。
また、特許文献2においては、寄生トランジスタの動作を抑制するための半導体素子構造について開示されているが、誤動作に対する確実な保護を行う回路は開示されていない。
【0006】
本発明は、上記スイッチング電源装置にLDMOSFETのスイッチング素子を使用した場合において、寄生トランジスタ動作によるドレイン電流の持続現象の回避、及び負荷短絡時におけるASO損失の抑制を図ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明に係るLDMOSFETのサージ電流保護回路は、
直流電源の出力端子間に、負荷を介して横型構造のLDMOSFETが接続され、前記LDMOSFETのゲート端子にオンパルス信号を入力してスイッチング動作させることで前記負荷に一定の電力を供給させる制御回路において、前記制御回路は、前記LDMOSFETに流れるスイッチング電流を検出して電圧信号に変換して出力する電流検出手段を備え、前記電流検出手段は基準電圧を有し、前記制御回路は、前記電圧信号と前記基準電圧とを比較して前記電圧信号が大きく、かつ前記電圧信号が出力される時間幅が所定の第1の時間を超えた時点で前記LDMOSFETのオン状態をオフさせるオフ手段と、前記オンパルス信号のパルス幅が所定の第2の時間未満の場合には、前記LDMOSFETのオン状態を少なくとも予め定められた時間分オンさせる手段とを備えることを特徴とする。 また、本発明に係るLDMOSFETのサージ電流保護回路は、
前記電流検出手段は、第1の基準電圧と第2の基準電圧とを有し、前記第1の基準電圧
より前記第2の基準電圧は高く設定され、前記第1の基準電圧は、前記LDMOSFET
がASO破損とならないスイッチング電流未満に相当する値とし、前記第2の基準電圧は
、前記LDMOSFETに流れるサージ電流により寄生トランジスタが誤動作開始する電
流に相当する値とし、前記LDMOSFETに流れるターンオン時のスイッチング電流を
検出した電圧信号と前記第1の基準電圧と比較し、前記電圧信号が大きいときに第1の過
電流信号を出力し、前記第2の基準電圧と比較し、前記電圧信号が大きいときに第2の過
電流信号を出力し、前記第1の過電流信号と前記第2の過電流信号が出力されたのち、
記第1の過電流信号が前記オンパルス信号のパルス幅が所定の第2の時間未満の場合には
、前記LDMOSFETのオン状態を少なくとも予め定められた時間オンさせ、または、
前記第1の過電流信号と前記第2の過電流信号が出力されたのち、前記第1の過電流信号
が所定の第1の時間を超えた時点で、前記LDMOSFETのオン状態をオフさせること
を特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係るLDMOSFETのサージ電流保護回路によれば、ターンオン時のサージ電流が所定時間未満かつ所定電流以上流れても、ターンオン時のサージ電流が流れる時間以上にLDMOSFETのゲート駆動信号を与える期間を設けるので、寄生トランジスタの動作を阻止して信頼性を向上できる。
また、負荷短絡時において、ドレイン電流が所定期間以上の過電流状態であった場合、ASO破壊に至る所定時間未満にLDMOSFETの駆動信号をオフさせることでASO損失の増加を防ぎ信頼性を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の実施例1に係るLDMOSFETのサージ電流保護回路を備えたスイッチング電源装置の構成図である。
図2図1に係るLDMOSFETのサージ電流保護回路の一例を示した詳細な回路図である。
図3図2に係るLDMOSFETのサージ電流保護回路動作を示すシーケンス図である。
図4】LDMOSFETの等価回路図である。
図5】LDMOSFETのサージ電流と寄生トランジスタ動作及びゲートパルス幅との関係を示す図である。
図6】LDMOSFETのASOと許容時間との関係を示す図である。
図7】従来技術に係るスイッチング電源装置を示す構成図である。
図8】従来技術に係る構成図における負荷短絡時のシーケンス図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態のLDMOSFETのサージ電流保護回路を、図面を参照しながら詳細に説明する。
【実施例】
【0011】
図5は、LDMOSFETのサージ電流と寄生トランジスタ動作及びゲートパルス幅との関係を示す図である。ここで、図5(a)に示すのは、ゲートパルス信号VgがLDMOSFETに流れるサージ電流が流れる期間tsgより充分長い場合の波形を示し、通常の動作波形となる。また、図5(b)に示すのは、ゲートパルス信号VgがLDMOSFETに流れるサージ電流が流れる期間tsgと同等以下の場合の波形を示し、ゲートパルス信号VgがLowになったにも関わらず、寄生トランジスタがオン動作となって数10マイクロ秒台のオン状態が持続する。
図5(a)、(b)から明らかなように、逆説的に、ゲートパルス信号Vgのパルス幅がサージ電流Isgのパルス幅tsgよりも充分長い条件であれば寄生トランジスタがオン動作しないことが分かる。
以下に説明する実施例では、一例としてサージ電流Isgのパルス幅tsgを100〜200nSと仮定し、寄生トランジスタの誤動作を回避できる時間を400nSとして設定する。
【0012】
図6は、LDMOSFETのASOと許容時間との関係を示す図である。ここで、スイッチング電源装置の負荷短絡時において、ブランキング回路によりターンオン時のブランキング期間tasは過電流保護回路が動作しないためドレイン電流が増加し、ドレイン電流の増加に伴いドレイン電圧も上昇しASO損失が増加する。ブランキング期間tasのLDMOSFETのASO損失によりチャンネル温度を超えなければ破壊に至らないが、ブランキング期間が図6の点線で示すtasx期間の場合にはチャンネル温度を超えて破損に至ることが分かる。
【0013】
以上のことから、LDMOSFETのサージ電流と寄生トランジスタ動作及びゲートパルス幅との関係、及びLDMOSFETのASO損失の限界の条件の論理積をとることで、LDMOSFETの保護回路を構成することができる。
【0014】
図1は、本発明の実施例1に係るLDMOSFETのサージ電流保護回路を備えたスイッチング電源装置1の構成図である。
図1を用いて、本実施例に係るLDMOSFETのサージ電流保護回路の構成について説明する。
図1で示したスイッチング電源装置の構成図において、従来の構成図と異なるのは、LDMOSFETQ1のサージ電流保護回路10が追加されている点である。
サージ電流保護回路10は、センスMOSのソースと電流検出抵抗Rsとの接続点から制御部CONT間に接続され、制御部CONTのゲートパルス信号はサージ電流保護回路10を介してゲート駆動部BFに出力されている。
ここで、サージ電流保護回路10は、サージ電流保護部とASO保護部からなり、LDMOSFETQ1に流れるドレイン電流を検出し、検出したドレイン電流が所定の基準値以上かを比較し、かつ流れている期間からサージ電流保護かASO保護かを行う。
図2は、図1に係るLDMOSFETのサージ電流保護回路10の一例を示した詳細な回路図である。
サージ電流保護回路は、コンパレータCP1、CP2、基準電圧Vr1、Vr2、論理積回路AND1〜4、論理和回路OR1、OR2、S−Rフリップフロップ回路FF1、FF2、タイマーTM1、遅延回路DL1、DL2、ワンショット回路SH1からなる。
また内訳は、サージ電流保護部がコンパレータCP2、基準電圧Vr2、論理積回路AND1〜4、S−Rフリップフロップ回路FF2、タイマーTM1、遅延回路DL2、ワンショット回路SH1で構成され、ASO保護部がコンパレータCP1、基準電圧Vr1、論理和回路OR2、S−Rフリップフロップ回路FF1、遅延回路DL1で構成されている。ここで、基準電圧Vr1、Vr2はVr1<Vr2に設定されているものとして、以下に説明を行う。ただし、LDMOSFETの特性により、基準電圧Vr1、Vr2の設定電圧は同一であっても良く、基準電圧Vr1はASO破損とならない電流未満に設定する値であり、基準電圧Vr2は、サージ電流により寄生トランジスタが誤動作開始する電流設定値とする。
【0015】
図3は、図2に係るLDMOSFETのサージ電流保護回路動作を示すシーケンス図である。
次に、LDMOSFETのサージ電流保護回路動作の詳細について、図1及び図2を参照しながら説明する。
図3(1)は定常動作時の各部波形を示したものである。
時刻t10〜t12にかけてオンパルス信号ON_PULSが入力されると、LDMOSFETQ1のゲート電圧Vgが印加され、オン状態になる。ここでLDMOSFETQ1のドレイン電流Id、すなわち抵抗Rs電圧VRsは、基準電圧Vr1、Vr2に達していないため、コンパレータCP1,CP2の出力はLのままとなっている。従って、定常動作時においては、サージ電流保護もASO保護も動作せず、オンパルス信号ON_PULSと同一のゲート電圧Vgが印加されている。
なお、タイマー回路TM1は、オンパルス信号ON_PULSが入力されるとタイマーのカウント動作を開始し、200nS後にワンパルス(200nS)出力を行い自己リセットする。
【0016】
図3(2)は、負荷短絡時の場合におけるサージ電流保護動作時の各部波形を示したものである。
図3(2)に示すオンパルス信号ON_PULSの(a)〜(c)のパルス幅は、(a)tg1=500nS、(b)tg2=200nS、(c)tg3=100nSである。
まず、(a)tg1=500nSのオンパルス信号ON_PULSが入力されると、S−Rフリップフロップ回路FF1がセットされ、論理和回路OR1にHレベルが入力されてLDMOSFETQ1のゲート電圧Vgが印加されオン状態になる。ここでLDMOSFETQ1のドレイン電流Id、すなわち抵抗Rs電圧VRsは負荷短絡により過電流が流れ、基準電圧Vr1、Vr2に達し、コンパレータCP1,CP2の出力はHレベルを出力する。コンパレータCP2がHレベルになるとS−Rフリップフロップ回路FF2はセット状態になり、Q出力はHレベルを出力する。論理積回路AND4は、S−Rフリップフロップ回路FF2のQ出力がHレベルになった時点で、タイマー回路TM1の出力が接続されている反転入力端子がLレベルにあるため、Hレベルを論理和回路OR1へ出力する。
また、tg1=500nSのオンパルス信号ON_PULSが入力されると同時にタイマー回路TM1がカウント開始し、時間設定された200nS後にHレベルを論理積回路AND1、AND2、AND4へ出力する。タイマー回路TM1のHレベル出力により論理積回路AND1を介して論理積回路AND3がワンショット回路ST1へHレベル出力して、ワンショットパルス200nSを論理和回路OR1へ出力させて、少なくともLDMOSFET Q1を400nSオン状態にさせる動作をおこなう。ただし、(a)のtg1=500nSのオンパルス信号ON_PULSであれば、前述のゲート信号は400nSであるため、保護回路の効果としては現れない。なお、400nS以上のオン状態であれば、サージ電流が流れても寄生トランジスタによる誤動作は十分回避できる値である。
次に、(b)tg2=200nSのオンパルス信号ON_PULSが入力されると、同時にタイマー回路TM1がカウント開始し、時間設定された200nS後にHレベルを論理積回路AND1、AND2、AND4へ出力する。タイマー回路TM1のHレベル出力により論理積回路AND1を介して論理積回路AND3がワンショット回路ST1へHレベル出力して、ワンショットパルス200nSを論理和回路OR1へ出力させる。
これにより論理和回路OR1からLDMOSFETのゲート電圧Vgへバッファ回路BFを介して少なくとも400nSのパルス信号が出力される。従って、200nS幅のサージ電流により寄生トランジスタが動作しても、少なくとも400nSのゲート信号Vgが出力されることで、寄生トランジスタのベース・エミッタ間の容量c1が放電されてLDMOSFETのドレイン電流が継続して流れる現象を防止することが可能になる。
また、(c)tg3=100nSのオンパルス信号ON_PULSが入力されると、同時にタイマー回路TM1がカウント開始し、時間設定された200nS後にHレベルを論理積回路AND1、AND2、AND4へ出力する。ここで、論理積回路AND4の反転入力端子には、タイマー回路出力からLレベル、非反転端子にはS−Rフリップフロップ回路FF2のQ出力からHレベル信号が入力されHレベル出力を論理和回路OR1へ出力し、タイマー回路TM1出力がHレベルになるまでHレベル出力を維持する。これにより、オンパルス信号ON_PULS信号がtg3=100nSと短くても、タイマー回路TM1のHレベル出力がなされるまでゲート信号を途切れることなく出力することができる。また、前述同様に、タイマー回路TM1のHレベル出力により論理積回路AND1を介して論理積回路AND3がワンショット回路ST1へHレベル出力して、ワンショットパルス200nSを論理和回路OR1へ出力させることで、合計400nSのゲート信号Vgを出力することができる。
すなわち、オンパルス信号ON_PULS信号がtg3=100nSと短く、サージ電流により寄生トランジスタが動作しても、400nSのゲート信号Vgが出力されるので寄生トランジスタのベース・エミッタ間の容量c1が放電され、LDMOSFETのドレイン電流が継続して流れる現象を防止することが可能になる。
なお、(a)〜(c)のオンパルス信号ON_PULS信号が入力された後のコンパレータCP1出力はHレベルになった後、抵抗Rs電圧VRsが基準電位Vr1電圧未満になるとLレベルに変化し、ASO保護回路動作は行われない。
【0017】
図3(3)は、負荷短絡時の場合におけるASO保護動作時の各部波形を示したものである。
ここで、図3(3)の負荷短絡状態の前提として、図1の制御回路IC1のブランキング回路を備えた過電流保護回路が動作しており、ブランキング時間は250nSと仮定する。
まず、時刻t30においてtg4=250nSのオンパルス信号ON_PULSが入力されると、S−Rフリップフロップ回路FF1がセットされ、論理和回路OR1にHレベルが入力されてLDMOSFETのゲート電圧Vgが印加されオン状態になる。ここでLDMOSFETのドレイン電流Id、すなわち抵抗Rs電圧VRsは負荷短絡により過電流が流れ、基準電圧Vr1、Vr2に達し、コンパレータCP1,CP2の出力はHレベルを出力する。コンパレータCP2がHレベルになるとS−Rフリップフロップ回路FF2はセット状態になり、Q出力はHレベルを出力する。論理積回路AND4は、S−Rフリップフロップ回路FF2のQ出力がHレベルになった時点で、タイマー回路TM1の出力が接続されている反転入力端子がLレベルにあるため、Hレベルを論理和回路OR1へ出力し、タイマー回路TM1の出力がHレベルに変化するまで出力状態を保持する。
ここで、コンパレータCP1出力はHレベルを時刻t31まで保持するので、ディレイ回路DL1のディレイ時間200nSに達すると論理和回路OR2の非反転入力端子へHレベルが入力され、S−Rフリップフロップ回路FF1をリセットする。これにより論理和回路OR1の出力はLレベルとなり、時刻t31でゲート信号VgはLレベルとなり、ドレイン電流IdをオフすることでLDMOSFETのASO損失の増加を抑制することが可能になる。
なお、時刻t31において、タイマー回路TM1の出力がHレベルとなるが、論理積回路AND1の反転入力端子はコンパレータCP1出力のHレベルが入力されているので、論理積回路AND3はHレベル出力せずワンショット回路ST1から200nSのワンショットパルスは発生しない。即ち、サージ電流保護部は動作しない。
【0018】
以上のように、定常動作時には、サージ電流保護部、ASO保護部ともに動作せず、負荷短絡時にサージ電流が流れる場合においては、サージ電流保護部が動作し、かつASO保護部は動作せず、負荷短絡時に過電流が流れる場合においては、ASO保護部が動作し、かつサージ電流保護部は動作しないので、安定した保護機能を得られることになる。
【0019】
以上、本発明の実施例の一例について説明したが、本発明は係る特定の実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形、変更が可能である。
例えば、スイッチング電源装置はフライバック方式を用いて説明したが、フォワード方式等でも、共振型方式でも、モーター駆動装置などへの変更が可能である。
【符号の説明】
【0020】
1、1a スイッチング電源装置
10 サージ電流保護回路
AND1〜4 論理積回路
BF バッファ回路
C1〜C6,c1 コンデンサ
CP1、CP2 コンパレータ
D1〜D3 ダイオード
DB1 ブリッジダイオード
DL1、2 ディレイ回路
FF1、FF2 S−Rフリップフロップ回路
IC1 制御回路
IC2 シャントレギュレータ
OR1、2 論理和回路
PC1 フォトカプラ
Q1 LDMOSFET
R1〜R5、Rs 抵抗
SH1 ワンショット回路
TM1 タイマー回路
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8