特許第6094906号(P6094906)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6094906
(24)【登録日】2017年2月24日
(45)【発行日】2017年3月15日
(54)【発明の名称】荷電粒子線照射装置
(51)【国際特許分類】
   A61N 5/10 20060101AFI20170306BHJP
【FI】
   A61N5/10 Q
   A61N5/10 H
【請求項の数】2
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2015-121259(P2015-121259)
(22)【出願日】2015年6月16日
(62)【分割の表示】特願2011-227078(P2011-227078)の分割
【原出願日】2011年10月14日
(65)【公開番号】特開2015-163309(P2015-163309A)
(43)【公開日】2015年9月10日
【審査請求日】2015年7月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002107
【氏名又は名称】住友重機械工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100117499
【弁理士】
【氏名又は名称】小島 誠
(72)【発明者】
【氏名】佐々井 健蔵
【審査官】 川島 徹
(56)【参考文献】
【文献】 特開平11−169469(JP,A)
【文献】 特開2009−072287(JP,A)
【文献】 特開2004−041292(JP,A)
【文献】 特開昭55−136069(JP,A)
【文献】 特開平11−169471(JP,A)
【文献】 特開平10−314323(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61N 5/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者に対して荷電粒子線を照射する荷電粒子線照射装置であって、
前記患者が載置される治療台と、
前記治療台のまわりを回転可能な回転ガントリと、
前記回転ガントリに取り付けられ、前記荷電粒子線を照射する照射部と、
前記荷電粒子線の線量分布を算出する線量分布算出部と、を備え、
前記照射部は、
通過する前記荷電粒子線の線量分布を測定する線量分布モニタと、
前記線量分布モニタよりも前記荷電粒子線の照射方向における下流側に設けられ、前記荷電粒子線の照射方向と垂直な平面における前記荷電粒子線の形状の成形を行うコリメータと、を有し、
前記照射部を通る前記荷電粒子線の照射方向をZ軸方向、前記Z軸方向に直交する方向をX方向、前記Z軸方向及び前記X軸方向の双方と直交する方向をY軸方向とし、
前記線量分布モニタは、前記X軸方向に延在する複数の金属ワイヤと前記Y軸方向に延在する複数の金属ワイヤとを有し、前記荷電粒子線が照射された前記金属ワイヤから発生する電子を検出して前記荷電粒子線の線量分布を測定し、
前記線量分布算出部は、
前記線量分布モニタの測定結果である線量分布データのフィッティングを行って前記測定結果である線量分布データの中心位置座標を求め、
前記フィッティングによって求めた前記中心位置座標と前記コリメータの開口の形状のデータとに基づき、前記線量分布モニタの測定結果を補正して前記コリメータよりも前記荷電粒子線の照射方向における下流側における前記荷電粒子線の線量分布を算出する
ことを特徴とする荷電粒子線照射装置。
【請求項2】
記コリメータは、前記X軸方向で対向する二列の櫛歯を有し、対向する前記櫛歯の間の前記開口を調整することで前記開口を通過する前記荷電粒子線の成形を行うマルチリーフコリメータであり、
前記線量分布算出部は、前記線量分布モニタの測定結果と前記マルチリーフコリメータの対向する前記櫛歯の間の前記開口の前記X軸方向における幅とに基づき、前記線量分布モニタの測定結果を補正して前記コリメータよりも前記荷電粒子線の照射方向における下流側における前記荷電粒子線の線量分布を算出する
ことを特徴とする請求項1に記載の荷電粒子線照射装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、荷電粒子線照射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、患者の腫瘍に対して荷電粒子線の照射により治療を施す荷電粒子線照射装置が知られている。このような荷電粒子線照射装置では、アイソセンター位置に配置された腫瘍の形状に応じて荷電粒子線の線量分布を正確に設定する必要がある。
【0003】
例えば、特許文献1には、CT装置が得た患者の断面画像を用いて腫瘍の輪郭を決定し、腫瘍の形状から荷電粒子線の線量分布を計画する治療計画装置が開示されている。この治療計画装置では、腫瘍付近の断面画像から立体画像を構成し、計画した荷電粒子線の線量分布を立体画像へ投影することで線量分布計画の確認を行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平5−337208号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前述した治療計画装置においては、画像データ上で線量分布計画の確認を行っているが、実際に照射された荷電粒子線の線量分布を測定しておらず、確認に対する信頼性が高いとは言えない。荷電粒子線の径路上に線量分布モニタを設けることも考えられるが、この場合、測定できる線量分布は線量分布モニタ位置のものであり、アイソセンター位置における線量分布とは異なる。荷電粒子線の線量分布の確認は治療の信頼性を確保する上で重要であることから、アイソセンター位置における荷電粒子線の線量分布を精度良く確認するための技術が強く求められている。
【0006】
そこで、本発明は、アイソセンター位置における荷電粒子線の線量分布を精度良く算出できる荷電粒子線照射装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明は、患者に対して荷電粒子線を照射する荷電粒子線照射装置であって、患者が載置される治療台と、治療台のまわりを回転可能な回転ガントリと、回転ガントリに取り付けられ、荷電粒子線を照射する照射部と、荷電粒子線の線量分布を算出する線量分布算出部と、を備え、照射部は、通過する荷電粒子線の線量分布を測定する線量分布モニタと、線量分布モニタよりも荷電粒子線の照射方向における下流側に設けられ、荷電粒子線の照射方向と垂直な平面における荷電粒子線の形状の成形を行うコリメータと、を有し、照射部を通る前記荷電粒子線の照射方向をZ軸方向、Z軸方向に直交する方向をX方向、Z軸方向及びX軸方向の双方と直交する方向をY軸方向とし、線量分布モニタは、X軸方向に延在する複数の金属ワイヤとY軸方向に延在する複数の金属ワイヤとを有し、荷電粒子線が照射された金属ワイヤから発生する電子を検出して荷電粒子線の線量分布を測定し、線量分布算出部は、線量分布モニタの測定結果である線量分布データのフィッティングを行って測定結果である線量分布データの中心位置座標を求め、フィッティングによって求めた中心位置座標とコリメータの開口の形状のデータとに基づき、線量分布モニタの測定結果を補正してコリメータよりも荷電粒子線の照射方向における下流側における荷電粒子線の線量分布を算出することを特徴とする。
【0008】
本発明に係る荷電粒子線照射装置によれば、照射部を通過する荷電粒子線の線量分布の測定結果に基づいて、アイソセンター位置における荷電粒子線の線量分布を算出することができる。従って、この荷電粒子線照射装置によれば、実際に照射することでアイソセンター位置における線量分布を治療前に確認することが可能になる。しかも、この荷電粒子線照射装置では、実際に照射された荷電粒子線の線量分布の測定結果を用いることで、実際の測定結果を用いない場合と比べて、アイソセンター位置における荷電粒子線の線量分布を精度良く算出することができる。
【0009】
本発明に係る荷電粒子線照射装置において、コリメータは、X軸方向で対向する二列の櫛歯を有し、対向する櫛歯の間の開口を調整することで開口を通過する荷電粒子線の成形を行うマルチリーフコリメータであり、線量分布算出部は、線量分布モニタの測定結果とマルチリーフコリメータの対向する櫛歯の間の開口のX軸方向における幅とに基づき、線量分布モニタの測定結果を補正してコリメータよりも荷電粒子線の照射方向における下流側における荷電粒子線の線量分布を算出してもよい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、アイソセンター位置における荷電粒子線の線量分布を精度良く算出できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明に係る荷電粒子線照射装置の一実施形態を示す斜視図である。
図2図1に示すワブラー方式の照射部を示す斜視図である。
図3】照射部における荷電粒子線の線量分布の変化を示す概略図である。
図4】線量分布モニタにおける測定結果の一例を示すグラフである。
図5】本発明に係る荷電粒子線の線量分布算出方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の好適な実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0013】
図1に示されるように、照射部1は、荷電粒子線照射装置100において、治療台105を取り囲むように設けられた回転ガントリ103に取り付けられ、この回転ガントリ103によって治療台105の回りに回転可能とされている。そして、治療台105に寝かされた患者の腫瘍等の被照射体に対して、荷電粒子線P(図2参照)を照射する。荷電粒子線Pは、電荷をもった粒子を高速に加速したものであり、荷電粒子線Pとしては、例えば陽子線、重粒子(重イオン)線等が挙げられる。
【0014】
なお、図1には示されていないが、荷電粒子線照射装置100は、イオン源で生成した荷電粒子線を加速して荷電粒子線Pを出射するサイクロトロンを治療台105及び回転ガントリ103から離れた位置に備えている。サイクロトロンから出射された荷電粒子線Pはビーム輸送系を介して照射部1に供給される。この荷電粒子線照射装置100は、制御装置10によって統括的に制御されている。
【0015】
図2に示されるように、照射部1は、荷電粒子線Pの照射方向に順に配列された四極磁石2、ワブリング磁石3、散乱体4、リッジフィルタ5、線量分布モニタ(線量分布測定手段)6、マルチリーフコリメータ7、及びスノート8を備えている。以下、照射部1を通る荷電粒子線Pの照射方向をZ軸方向、Z軸に直交する二方向をX軸方向及びY軸方向として説明に用いる。X軸方向及びY軸方向は互いに直交する方向である。
【0016】
照射部1の入口に最も近い四極磁石2は、ビーム輸送ラインを介して入力された荷電粒子線Pが発散するのを抑えて収束させる電磁石である。四極磁石2の下流には、ワブリング磁石3が配置されている。ワブリング磁石3は、正規分布状の荷電粒子線Pを円軌道で走査することで一様な照射野を形成するための電磁石である。
【0017】
散乱体4は、ワブリング磁石3で走査された荷電粒子線Pの拡散を行う。このような散乱体4は、例えば鉛製の板から構成されている。散乱体4は、荷電粒子線Pを照射方向と直交する方向(XY平面内の方向)に広がりを持つ幅広のビームへと拡散させる。
【0018】
リッジフィルタ5は、散乱体4で散乱された荷電粒子線Pの線量分布の調整を行う。具体的には、リッジフィルタ5は、患者の体内の腫瘍の厚さ(照射方向における腫瘍の長さ)に対応するように、荷電粒子線Pに拡大ブラッグピーク(SOBP)を与える。
【0019】
線量分布モニタ6は、通過する荷電粒子線Pの線量分布の測定を行う。線量分布モニタ6は、X軸方向又はY軸方向で延在して格子状に配列された複数の金属ワイヤを有しており、荷電粒子線Pが照射された金属ワイヤから発生する電子を検出する。これらの複数の金属線にはX軸及びY軸の位置座標に応じたチャネル番号が付されており、各チャネル番号の金属ワイヤから発生した電子を検出することで、荷電粒子線Pの線量分布の測定が行われる。
【0020】
マルチリーフコリメータ7は、照射方向と垂直な平面(XY平面)における荷電粒子線Pの形状の成形を行う。マルチリーフコリメータ7は、X軸方向で対向する二列の櫛歯を有しており、対向する櫛歯間の開口を調整することで、開口を通過する荷電粒子線Pの成形を行う。なお、マルチリーフコリメータ7に代えて、ブロックコリメータを用いても良い。ブロックコリメータとしては、患者の腫瘍形状に合わせて穴を形成された金属柱等が用いられる。
【0021】
スノート8は、照射方向(Z軸方向)の奥行きについて荷電粒子線Pを腫瘍の形状に合わせて成形するボーラスを保持する部材である。ボーラスは、荷電粒子線Pの最大到達深さの部分の立体形状を、腫瘍の最大深さ部分の形状に合わせて成形する。
【0022】
図1及び図2に示されるように、荷電粒子線照射装置100は、その全体的な制御を行う制御装置10を備えている。制御装置10は、患者に対する荷電粒子線Pの照射制御やマルチリーフコリメータ7の位置制御を行う。また、制御装置10は、アイソセンター位置における荷電粒子線Pの線量分布を算出するための線量分布算出部(線量分布算出手段)11を有している。線量分布算出部11は、線量分布モニタ6の測定結果に基づいて、アイソセンター位置における荷電粒子線Pの線量分布を算出する。
【0023】
次に、本実施形態に係る荷電粒子線照射装置100における線量分布算出方法について説明する。
【0024】
図3に示されるように、本実施形態に係る線量分布算出方法は、線量分布モニタ6が荷電粒子線Pの線量分布を測定する線量分布測定ステップS1と、線量分布算出部11がアイソセンター位置における荷電粒子線Pの線量分布を算出する線量分布算出ステップS2と、を有している。
【0025】
ここで、図4は、XZ平面における荷電粒子線Pの線量分布の変化を説明するための概略図である。図4において、四極磁石2、リッジフィルタ5、及びスノート8の描写を省略する。照射部1における中心軸(照射部1を構成する機器2〜8の略中心を通る軸)をCとして示す。
【0026】
図4に示されるように、ビーム輸送ラインから入射した荷電粒子線Pは、四極磁石2により収束され、その線量分布はW1のような山なりの状態となる。この場合の線量分布W1は、位置座標xの関数f(x)として下記の式(1)で表すことができる。式(1)におけるAは規格化定数である。また、μは実際の線量分布の中心位置座標であり、中心軸Cからの距離(X軸方向における距離)として表すことができる。σは線量分布の広がりである。この関数f(x)はガウシアン(ガウス関数)となる。
【数1】
【0027】
線量分布W1の荷電粒子線Pがワブリング磁石3によって走査されると、線量分布はW2の状態(二つの山からなる状態)となる。この場合のワブリング半径をRとする。ワブリング半径Rは、入射した荷電粒子線Pの粒子エネルギーE、ワブリング磁石3の磁場強度B、ワブリング磁石3から線量分布W2の現在位置までの距離Lwに依存するパラメータである。ここで、線形分布W1に対するワブリング磁石3の走査の影響を表す関数g(x)を検討すると、下記の式(2)として表すことができる。この場合、線量分布W2の関数D(x)は、下記の式(3)として表すことができる。すなわち、関数D(x)は、関数f(x)及び関数g(x)を畳み込み積分することで求めることができる。
【数2】
【数3】
【0028】
その後、荷電粒子線Pが散乱体4によってX軸方向及びY軸方向に拡散されると、線量分布はW3の状態となる。線量分布W3は、線量分布モニタ6の位置(線量分布測定位置)における荷電粒子線Pの線量分布である。この線量分布W3を表す関数は、上記式(2)において、関数f(x)に含まれるσを線量分布モニタ6の位置における広がりσに置き換えることで求められる。このσは、入射時における線形分布W1の広がりσ、散乱体4の厚さd、散乱体4から線量分布モニタ6までの距離LSMに依存するパラメータである。この線量分布W3が線量分布測定ステップS1において線量分布モニタ6に測定される。
【0029】
図5は、線量分布モニタ6の測定結果の一例を示すグラフである。横軸は、線量分布モニタ6のX軸座標に対応するチャネル番号、縦軸は線量相当値を示している。線量相当値とは、荷電粒子線Pの線量に比例する値であり、所定の係数を乗じることで線量が得られる。
【0030】
線量分布算出部11は、図5に示す測定結果の線量分布データ(折れ線状のデータ)に対してフィッティングを行う。このようなフィッティングには、Levenberg−Marquardt法やNelder−Mead Simplex法等を利用することができる。フィッティング後の線量分布データの一例を図5に一点鎖線として示す。
【0031】
ここで、線量モニタ6の位置における線量分布の広がりσと線量モニタ6の位置におけるワブリング半径Rは、予め計算や実測で決定することができる。従って、上記の式(3)におけるフリーパラメータは、規格化定数Aと線量モニタ6の位置における線量分布の中心位置座標μのみである。Aは規格化定数なので、物理的な意味はない。このため、フィッティングによってμが求められる。線量分布算出部11は、フィッティングによって求めたμを、アイソセンター位置における線量分布W4の中心位置座標μとして用いる。
【0032】
アイソセンター位置における線量分布W4は、上記の式(3)にマルチリーフコリメータ7の効果を乗じることで求められる。マルチリーフコリメータ7の効果は、下記の式(4),(5)として表わすことができる。下記の式(4),(5)において、aはマルチリーフコリメータ7の開口の幅q(X軸方向における幅)等に依存するパラメータである。また、sは、入射した荷電粒子線Pの粒子エネルギーE、ワブリング磁石3の磁場強度B、マルチリーフコリメータ7からアイソセンター位置までの距離LCI等に依存するパラメータである。
【数4】
【0033】
アイソセンター位置における荷電粒子線Pの線量分布W4を表す関数D(x)は、f(x)とg(x)とを畳み込み積分をしたものにh(x)を乗じたものとなる。従って、関数D(x)を下記の式(6)として表すことができる。式(6)において、アイソセンター位置における線量分布W4の中心位置座標μにはフィッティングで求めたμを用いる。また、アイソセンター位置における線量分布W4の広がりσ及びアイソセンター位置におけるワブリング半径Rには計算や実測で決定した値を利用する。
【数5】
【0034】
線量分布算出部11は、線量分布算出ステップS2において上記の式(6)に基づいて、アイソセンター位置における荷電粒子線Pの線量分布W4の関数D(x)を算出する。線量分布算出部11は、線量モニタ6の測定結果のフィッティングデータと上記の式(6)とに基づいて、アイソセンター位置における荷電粒子線Pの線量分布W4を算出することができる。なお、線量分布をX軸位置座標の関数とした場合の算出について説明したが、線量分布をY軸位置座標の関数とした場合も同様に算出することができる。
【0035】
以上説明した荷電粒子線照射装置100及び荷電粒子線の線量分布算出方法によれば、照射部1を通過する荷電粒子線Pの線量分布の測定結果に基づいて、アイソセンター位置における荷電粒子線Pの線量分布を算出することができる。従って、この荷電粒子線照射装置100及び線量分布算出方法によれば、実際に照射することでアイソセンター位置における線量分布を治療前に確認することが可能になる。しかも、この荷電粒子線照射装置100及び線量分布算出方法では、実際に照射部1を通過する荷電粒子線Pの線量分布の測定結果を用いるので、線量分布の測定結果を用いない場合と比べて、アイソセンター位置における荷電粒子線Pの線量分布を精度良く算出することができる。
【0036】
また、この荷電粒子線照射装置100及び線量分布算出方法によれば、上述した式(1)〜(6)を用い、実際の荷電粒子線Pの線量分布の測定結果を踏まえて線量分布を算出することで、アイソセンター位置における荷電粒子線Pの線量分布を一層精度良く算出することができる。
【0037】
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではない。例えば、アイソセンター位置における線量分布の中心位置座標μは、フィッティングにより求められたμと同じにする必要はない。照射部1の入口側のプロファイルモニタによって当該プロファイルモニタの位置における線量分布の中心位置座標μpを測定した場合には、μpを用いてアイソセンター位置における線量分布の中心位置座標μを算出することもできる。具体的には、μpと、プロファイルモニタから線量分布モニタ6までの距離LPMと、線量分布モニタ6からアイソセンター位置までの距離LMIと、を用いて下記の式(7)から求めることができる。
【数6】
【0038】
また、本発明は、ワブラー法による荷電粒子線の線量分布算出に限られない。例えば、ワブリング磁石を使わずに、複数の散乱体により荷電粒子線を拡散させる二重散乱体法においても本発明を有効に適用することができる。また、スキャニング法による荷電粒子線の線量分布算出にも適用することができる。更に、本発明は、上述したような関数を用いた算出方法に限られず、様々な方法によりアイソセンター位置の線量分布の算出を行うことができる。
【符号の説明】
【0039】
1…照射部 2…四極磁石 3…ワブリング磁石 4…散乱体 5…リッジフィルタ 6…線量分布モニタ 7…マルチリーフコリメータ 8…スノート 10…制御装置 11…線量分布算出部(線量分布算出手段) 100…荷電粒子線照射装置 103…回転ガントリ 105…治療台 C…中心軸 P…荷電粒子線 q…開口幅 R…ワブリング半径 W1-W4…線形分布
図1
図2
図3
図4
図5