【実施例】
【0074】
<実施例1>
(多孔性支持膜の作製)
多孔性支持膜のポリマーとして、三菱エンジニアリングプラスチックス株式会社製のポリフェニレンエーテルPX100L(以下、PPEと略す。)を準備した。PPEが20質量%となるように、N−メチル−2−ピロリドン(以下、NMPと略す。)を加えて混練しながら、130℃で溶解させて、均一な製膜原液を得た。
【0075】
続いて、製膜原液を二重円筒管ノズルより、中空状に押出しながら、内液として35質量%NMP水溶液を同時に押出して成形させ、常温の空気中を空走させて、乾燥処理を行ったあと30質量%のNMP凝固浴に40℃にて浸漬させ、PPE多孔性支持膜を作製した後、水洗処理を行った。
【0076】
得られたPPE多孔性支持膜の外径は260μm、膜厚は50μmであった。純水透過試験を行ったところ、純水透過量FRは0.5MPaの試験圧力において、10,000L/m
2/日であった。
【0077】
(複合分離膜の作製)
上記の式(I)で表される疎水性セグメントと式(II)で表される親水性セグメントの繰り返し構造を有するSPAEを以下のようにして準備した。
【0078】
3,3′−ジスルホ−4,4′−ジクロロジフェニルスルホン2ナトリウム塩(以下S−DCDPSと略す。)30.000g、2,6−ジクロロベンゾニトリル(以下DCBNと略す)17.036gを計り取り、S−DCDPSとDCBNの仕込みモル比を38:62とした。さらに4,4′−ビフェノール29.677g、炭酸カリウム24.213g、およびモレキュラーシーブを四つ口フラスコに計り取り、窒素を流した。NMP259gを加えて、150℃で50分撹拌した後、反応温度を195℃〜200℃に上昇させて系の粘性が十分上がるのを目安に反応を続けた。その後、放冷し、放冷後、沈降しているモレキュラーシーブを除いて水中に沈殿させた。得られたポリマーは、沸騰水中で1時間洗浄した後、純水で丁寧に水洗することで、残留した炭酸カリウムを完全に除去した。その後、炭酸カリウムを除去した後のポリマーを乾燥させることによって、目的物であるスルホン化度(DS)=38%のSPAEを得た。スルホン酸基はほぼカリウムで中和されていた。
【0079】
得られたSPAEにDMSO溶媒を加えて、常温で撹拌させながら溶解させ1質量%濃度のコーティング溶液を得た。
【0080】
PPE多孔性支持膜をSPAEコーティング溶液中にディップコートし、垂直乾燥炉内にて120℃で乾燥させた。その後、SPAEからなる第一分離層を有する複合分離膜をワインダーに巻き取った。
【0081】
さらに、上記の複合分離膜に対して、交互積層処理を実施した。具体的には、4級アンモニウム基で修飾されたカチオン性ポリビニルアルコール(以下CPVAと略)である日本合成化学社製のK434の0.1質量%水溶液に、上記の複合分離膜を浸漬し、CPVAを第一分離層の表面に30分間吸着させた。続いて、複合分離膜を純水で洗浄した後、スルホン酸基で修飾されたアニオン性ポリビニルアルコール(以下APVAと略。)である日本合成化学社製のCKS50の0.1質量%水溶液に、複合分離膜を浸漬し、APVAの吸着処理を30分間行い、同様に水洗を行った。以上の2層の積層処理の後、1質量%のグルタルアルデヒド(以下GAと略)水溶液に、複合分離膜を浸漬し、架橋処理を行った。その後、複合分離膜を十分洗浄した。その後、さらにCPVAとAPVAの交互積層処理およびGA水溶液による架橋処理を全く同一の条件で、もう一度繰り返した(交互積層数は4)。かくして第一分離層及び第二分離層を有する複合分離膜を得た。得られた複合分離膜の詳細と評価結果を表1に示す。
【0082】
<実施例2>
(多孔性支持膜の作製)
多孔性支持膜のポリマーとして、PPEが30質量%となるようにしたこと以外は、実施例1と同じ方法にて、PPE多孔性支持膜を得た。外径は260μm、膜厚は45μmであった。純水透過試験を行ったところ、純水透過量FRは0.5MPaの試験圧力において、5,900L/m
2/日であった。
【0083】
(複合分離膜の作製)
多孔性支持膜を変更した以外は、実施例1と全く同一の方法で、第一分離層および第二分離層を有する複合分離膜を得た。得られた複合分離膜の詳細と評価結果を表1に示す。
【0084】
<実施例3>
(多孔性支持膜の作製)
実施例1と同じ方法でPPE多孔性支持膜を作製した。
【0085】
(複合分離膜の作製)
S−DCDPSおよびDCBNの仕込み量のモル比を44:56に変更したこと以外は、実施例1と同様の方法でDS=44%のSPAEを得た。
【0086】
第一分離層のSPAEのDSを変更した以外は、実施例1と全く同一の方法で、第一分離層および第二分離層を有する複合分離膜を得た。得られた複合分離膜の詳細と評価結果を表1に示す。
【0087】
<実施例4>
(多孔性支持膜の作製)
実施例1と同じ方法でPPE多孔性支持膜を作製した。
【0088】
(複合分離膜の作製)
実施例1と同じ方法で第一分離層を有する複合分離膜を作製した。
【0089】
さらに、CPVA(日本合成化学社製のK434)の0.1質量%水溶液に、複合分離膜を浸漬し、CPVAを第一分離層の表面に30分間吸着させた。続いて、複合分離膜を純水で洗浄した後、カルボキシル基で修飾されたAPVA(日本合成化学社製T300H)の0.1質量%水溶液に、複合分離膜を浸漬し、APVAの吸着処理を30分間行い、同様に水洗を行った。以上の2層の積層処理の後、1質量%のGA水溶液に、複合分離膜を浸漬し、架橋処理を行った。その後、複合分離膜を十分洗浄した(交互積層数2)。かくして第一分離層及び第二分離層を有する複合分離膜を得た。得られた複合分離膜の詳細と評価結果を表1に示す。
【0090】
<実施例5>
(多孔性支持膜の作製)
実施例1と同じ方法でPPE多孔性支持膜を作製した。
【0091】
(複合分離膜の作製)
S−DCDPSおよびDCBNの仕込み量モル比を65:35に変更したこと以外は、実施例1と同様の方法でDS=65%のSPAEを作製し、第一分離層を有する複合分離膜を作製した。
【0092】
さらに、CPVA(日本合成化学社製のK434)の0.1質量%水溶液に、複合分離膜を浸漬し、CPVAを第一分離層の表面に30分間吸着させた。続いて、複合分離膜を純水で洗浄した後、APVA(日本合成化学社製CKS50)の0.1質量%水溶液に、複合分離膜を浸漬し、APVAの吸着処理を30分間行い、同様に水洗を行った。続いて、CPVA(日本合成化学社製のK434)の0.1質量%水溶液に、複合分離膜を浸漬し、CPVAを第一分離層の表面に30分間吸着させた。最後に、1質量%のGA水溶液に、複合分離膜を浸漬し、架橋処理を行った。その後、複合分離膜を十分洗浄した(交互積層数3)。かくして第一分離層及び第二分離層を有する複合分離膜を得た。得られた複合分離膜の詳細と評価結果を表1に示す。
【0093】
<実施例6>
(多孔性支持膜の作製)
実施例1と同じ方法でPPE多孔性支持膜を作製した。
【0094】
(複合分離膜の作製)
前記式(IV)、(V)の組合せのなかから選択し、下記の式(VI)で表される疎水性セグメントと式(VII)で表される親水性セグメントの繰り返し構造を有するSPAEを以下のようにして準備した。
【0095】
まず3,3’−ジスルホ−4,4’−ジクロロジフェニルスルホン2ナトリウム塩(以下S−DCDPSと略す)30.000g、4,4’−ジクロロジフェニルスルホン(以下DCDPSと略す)70.936gを計り取り、S−DCDPSとDCDPSの仕込みモル比を20:80とした。さらに4,4’−ビフェノール56.386g、炭酸カリウム46.004g、およびモレキュラーシーブを四つ口フラスコに計り取り、窒素を流した。NMPを534g加えて、150℃で50分撹拌した後、反応温度を195℃〜200℃に上昇させて系の粘性が十分上がるのを目安に反応を続けた。その後、放冷し、放冷後、沈降しているモレキュラーシーブを除いて水中に沈殿させた。得られたポリマーは、沸騰水中で1時間洗浄した後、純水で丁寧に水洗することで、残留した炭酸カリウムを完全に除去した。その後、炭酸カリウムを除去した後のポリマーを乾燥させることによって、目的物であるスルホン化度DS=20%のSPAEを得た。スルホン酸基はほぼカリウムで中和されていた。
【0096】
上記式中、aおよびb、R
1およびR
2については上記の式(IV)(V)で規定されているのと同じ意味を表す。
【0097】
第一分離層として異なるSPAE構造を用いたこと以外は、実施例1と全く同一の方法で、第一分離層および第二分離層を有する複合分離膜を得た。得られた複合分離膜の詳細と評価結果を表1に示す。
【0098】
<実施例7>
(多孔性支持膜の作製)
実施例1と同じ方法でPPE多孔性支持膜を作製した。
【0099】
(複合分離膜の作製)
S−DCDPSおよびDCBNの仕込み量モル比を20:80に変更したこと以外は、実施例1と同様の方法でDS=20%のSPAEを得た。
【0100】
第一分離層としてSPAEのDSを変更したこと以外は、実施例1と全く同一の方法で、第一分離層および第二分離層を有する複合分離膜を得た。得られた複合分離膜の詳細と評価結果を表1に示す。
【0101】
<実施例8>
(多孔性支持膜の作製)
実施例1と同じ方法でPPE多孔性支持膜を作製した。
【0102】
(複合分離膜の作製)
実施例1と全く同一の方法で第一分離層を有する複合分離膜を作製した。
【0103】
さらに、CPVA(日本合成化学社製のK434)の0.1質量%水溶液に、複合分離膜を浸漬し、CPVAを第一分離層の表面に30分間吸着させた。続いて、複合分離膜を純水で洗浄した後、APVA(日本合成化学社製CKS50)の0.1質量%水溶液に、複合分離膜を浸漬し、APVAの吸着処理を30分間行い、同様に水洗を行った。以上の2層の積層処理を合計4回繰り返した。最後に1質量%のGA水溶液に、複合分離膜を浸漬し、架橋処理を行った。その後、複合分離膜を十分洗浄した(交互積層数8)。かくして第一分離層及び第二分離層を有する複合分離膜を得た。得られた複合分離膜の詳細と評価結果を表1に示す。
【0104】
<実施例9>
(多孔性支持膜の作製)
実施例1と同じ方法でPPE多孔性支持膜を作製した。
【0105】
(複合分離膜の作製)
実施例1と全く同一の方法で第一分離層を有する複合分離膜を作製した。
【0106】
さらに、架橋剤を1質量%のオルトフタルアルデヒド(OPAと略)水溶液に変更した以外は、実施例1と全く同一の方法で、第一分離層の上に第二分離層を作製した。かくして第一分離層及び第二分離層を有する複合分離膜を得た。得られた複合分離膜の詳細と評価結果を表1に示す。
【0107】
<実施例10>
(多孔性支持膜の作製)
実施例1と同じ方法でPPE多孔性支持膜を作製した。
【0108】
(複合分離膜の作製)
実施例1と全く同一の方法で第一分離層を有する複合分離膜を作製した。
【0109】
さらに、架橋剤を0.1質量%のテレフタルアルデヒド(TPAと略)水溶液に変更した以外は、実施例1と全く同一の方法で、第一分離層の上に第二分離層を作製した。かくして第一分離層及び第二分離層を有する複合分離膜を得た。得られた複合分離膜の詳細と評価結果を表1に示す。
【0110】
<実施例11>
(多孔性支持膜の作製)
多孔性支持膜のポリマーとして、実施例1と同様に、三菱エンジニアリングプラスチックス株式会社製のポリフェニレンエーテルPX100L(以下、PPEと略す。)を準備した。PPEが15質量%となるように、N−メチル−2−ピロリドン(以下、NMPと略す。)を加えて混練しながら、130℃で溶解させて、均一な製膜原液を得た。
【0111】
続いて、保温したガラス基板上に、グリセリン水溶液を適度に含浸させたポリエステル抄紙(廣瀬製紙社製05TH−60)を置き、その上から、100℃の製膜原液を均一にハンドコーターで塗布した。これを20℃の凝固浴中に浸漬して、平膜状の多孔性支持膜を得た。その後、水洗処理を行った。
【0112】
(複合分離膜の作製)
実施例1と同一の方法でDS=38%のSPAEを得た。
【0113】
得られたSPAEにDMSO溶媒を加えて、常温で撹拌させながら溶解させ1.0質量%のコーティング溶液を得た。複合膜化は、30cm角の平膜状PPE多孔性支持膜の表面にハンドコーターを用いて行った。80℃で30分間、熱風乾燥を行った。かくしてSPAEからなる第一分離層を有する平膜状の複合分離膜を作製した。
【0114】
さらに、実施例1と全く同一の方法で、平膜状の複合分離膜を交互積層処理し、第一分離層の上に第二分離層を作製した。かくして第一分離層及び第二分離層を有する平膜状の複合分離膜を得た。得られた複合分離膜の詳細と評価結果を表1に示す。
【0115】
<実施例12>
(多孔性支持膜の作製)
実施例1と同じ方法でPPE多孔性支持膜を作製した。
【0116】
(複合分離膜の作製)
実施例1と全く同一の方法で第一分離層を有する複合分離膜を作製した。
【0117】
さらに、カチオン性のポリエチレンイミン(PEIと略。和光純薬社製)の0.02質量%水溶液に、複合分離膜を浸漬し、PEIを第一分離層の表面に30分間吸着させた。続いて、複合分離膜を純水で洗浄した後、APVA(日本合成化学社製CKS50)の0.1質量%水溶液に、複合分離膜を浸漬し、APVAの吸着処理を30分間行い、同様に水洗を行った。以上の2層の積層処理の後、1質量%のグルタルアルデヒド(以下GAと略)水溶液に、複合分離膜を浸漬し、架橋処理を行った。その後、複合分離膜を十分洗浄した。その後、さらにPEIとAPVAの交互積層処理およびGA水溶液による架橋処理を全く同一の条件で、もう一度繰り返した(交互積層数は4)。かくして第一分離層及び第二分離層を有する複合分離膜を得た。得られた複合分離膜の詳細と評価結果を表1に示す。
【0118】
<実施例13>
(多孔性支持膜の作製)
実施例1と同じ方法でPPE多孔性支持膜を作製した。
【0119】
(複合分離膜の作製)
実施例1と全く同一の方法で第一分離層を有する複合分離膜を作製した。
【0120】
さらに、カチオン性のポリアリルアミン塩酸塩(PAAと略。日東紡メディカル社製PAA−HCL−3L)の0.03質量%水溶液に、複合分離膜を浸漬し、PAAを第一分離層の表面に30分間吸着させた。続いて、複合分離膜を純水で洗浄した後、APVA(日本合成化学社製CKS50)の0.1質量%水溶液に、複合分離膜を浸漬し、APVAの吸着処理を30分間行い、同様に水洗を行った。以上の2層の積層処理の後、1質量%のグルタルアルデヒド(以下GAと略)水溶液に、複合分離膜を浸漬し、架橋処理を行った。その後、複合分離膜を十分洗浄した。その後、さらにPAAとAPVAの交互積層処理およびGA水溶液による架橋処理を全く同一の条件で、もう一度繰り返した(交互積層数は4)。かくして第一分離層及び第二分離層を有する複合分離膜を得た。得られた複合分離膜の詳細と評価結果を表1に示す。
【0121】
<実施例14>
(多孔性支持膜の作製)
実施例1と同じ方法でPPE多孔性支持膜を作製した。
【0122】
(複合分離膜の作製)
実施例1と全く同一の方法で第一分離層を有する複合分離膜を作製した。
【0123】
さらに、カチオン性のポリジアリルジメチルアンモニウム塩酸塩(PDADMAと略。Sigma−Aldrich社製)の0.03質量%水溶液に、複合分離膜を浸漬し、PDADMAを第一分離層の表面に30分間吸着させた。続いて、複合分離膜を純水で洗浄した後、APVA(日本合成化学社製CKS50)の0.1質量%水溶液に、複合分離膜を浸漬し、APVAの吸着処理を30分間行い、同様に水洗を行った。以上の2層の積層処理の後、1質量%のグルタルアルデヒド(以下GAと略)水溶液に、複合分離膜を浸漬し、架橋処理を行った。その後、複合分離膜を十分洗浄した。その後、さらにPDADMAとAPVAの交互積層処理およびGA水溶液による架橋処理を全く同一の条件で、もう一度繰り返した(交互積層数は4)。かくして第一分離層及び第二分離層を有する複合分離膜を得た。得られた複合分離膜の詳細と評価結果を表1に示す。
【0124】
<実施例15>
(多孔性支持膜の作製)
実施例1と同じ方法でPPE多孔性支持膜を作製した。
【0125】
(複合分離膜の作製)
実施例1と全く同一の方法で第一分離層を有する複合分離膜を作製した。
【0126】
さらに、CPVA(日本合成化学社製のK434)の0.1質量%水溶液に、複合分離膜を浸漬し、CPVAを第一分離層の表面に30分間吸着させた。続いて、複合分離膜を純水で洗浄した後、ポリスチレンスルホン酸ナトリウム(PSSと略。Sigma−Aldrich社製243051)の0.03質量%水溶液に、複合分離膜を浸漬し、APVAの吸着処理を30分間行い、同様に水洗を行った。以上の2層の積層処理の後、1質量%のグルタルアルデヒド(以下GAと略)水溶液に、複合分離膜を浸漬し、架橋処理を行った。その後、複合分離膜を十分洗浄した。その後、さらにCPVAとPSSの交互積層処理およびGA水溶液による架橋処理を全く同一の条件で、もう一度繰り返した(交互積層数は4)。かくして第一分離層及び第二分離層を有する複合分離膜を得た。得られた複合分離膜の詳細と評価結果を表1に示す。
【0127】
<比較例1>
(多孔性支持膜の作製)
実施例1と同じ方法でPPE多孔性支持膜を作製した。
【0128】
(複合分離膜の作製)
実施例1と同様の方法でDS=38%のSPAEを得た。
【0129】
実施例1と同じ方法で、第一分離層を有する複合分離膜を作製した。
【0130】
比較のため、交互積層処理を行わず、第二分離層を形成しなかった。即ち、第一分離層のみの複合分離膜を得た。得られた複合分離膜の詳細と評価結果を表1に示す。比較例1の複合分離膜は、実施例のものと比較すると、透水性と中性低分子(スクロースおよびグルコース)の阻止率に劣ることが明らかであった。
【0131】
<比較例2>
(多孔性支持膜の作製)
実施例1と同じ方法でPPE多孔性支持膜を作製した。
【0132】
(複合分離膜の作製)
S−DCDPSおよびDCBNの仕込み量比を変更したこと以外は、実施例1と同様の方法でDS=20%のSPAEを得た。
【0133】
垂直乾燥炉の温度を160℃としたこと以外は、実施例1と同じ方法で、第一分離層を有する複合分離膜を作製した。
【0134】
比較のため、交互積層処理を行わず、第二分離層を形成しなかった。即ち、第一分離層のみの複合分離膜を得た。得られた複合分離膜の詳細と評価結果を表1に示す。比較例2の複合分離膜は、実施例のものと比較すると、透水性と中性低分子(スクロースおよびグルコース)の阻止率に劣ることが明らかであった。
【0135】
<比較例3>
(多孔性支持膜の作製)
実施例1と同じ方法でPPE多孔性支持膜を作製した。
【0136】
(複合分離膜の作製)
実施例1と同様の方法でDS=38%のSPAEを得た。
【0137】
実施例1と同じ方法で、第一分離層を有する複合分離膜を作製した。
【0138】
さらに、交互積層法との比較のため、第一分離層を有する複合分離膜に対して、塗布・乾燥法により、第二分離層を形成させることを検討した。具体的には、ロール搬送させた複合分離膜を、CPVA(日本合成化学社製のK434)の0.8質量%水溶液を満たした槽に浸漬した後、引き上げてディップコートし、垂直乾燥炉を用いて80℃にて1分間乾燥させた。その後、APVA(日本合成化学社製CKS50)の0.8質量%水溶液を満たした槽に浸漬した後、引き上げてディップコートし、垂直乾燥炉を用いて80℃にて1分間乾燥させた。その後、ワインダーに巻き取った複合分離膜を、1質量%のグルタルアルデヒド水溶液に浸漬し、架橋処理を行った。複合分離膜を十分に水洗した後、アルコールによる膜の湿潤処理を行った。その後、膜を完全に純水に置換した。かくして第一分離層及び第二分離層を有する複合分離膜を得た。得られた複合分離膜の詳細と評価結果を表1に示す。比較例3の複合分離膜は、実施例のものと比較すると、第二分離層が厚いうえに、製造過程、特に乾燥工程において欠陥が生成しがちであったため、透水性と中性低分子(スクロースおよびグルコース)の阻止率に劣ることが明らかであった。
【0139】
<比較例4>
(非対称中空糸膜の作製)
上記の式(I)で表される疎水性セグメントと式(II)で表される親水性セグメントの繰り返し構造を有するSPAEを用いて、非対称中空糸膜を作製した。S−DCDPSおよびDCBNの仕込み量モル比を20:80に変更したこと以外は、実施例1と同様の方法でDS=20%のSPAEを得た。
【0140】
SPAEが35質量%となるように、NMPを加えて混練しながら、170℃で一晩窒素雰囲気下にて溶解させ、均一な製膜原液を得た。
【0141】
続いて、製膜原液を二重円筒管ノズルより、中空状に押出しながら、内液としてNMPとエチレングリコールの混合液を同時に押出して成形し、常温の空気中を空走させて、乾燥処理を行ったあと凝固浴に浸漬させ、SPAE非対称中空糸膜を作製した後、水洗処理を行ったのち、90℃の純水で20分間アニール処理を行った。
【0142】
この中空糸膜に、交互積層処理を実施例1と全く同一の方法で行った。得られた非対称中空糸膜の詳細と評価結果を表1に示す。比較例4の非対称中空糸膜は、実施例のものと比較すると、イオン・溶質阻止率は良好であったが、透水量が著しく低い結果であった。また中空糸膜全体がSPAEで構成されているため、つぶれ圧が低い結果であった。
【0143】
<SPAEポリマーの評価>
SPAEポリマーのスルホン化度、イオン交換容量(IEC)は以下のように評価した。
【0144】
(スルホン化度)
真空乾燥器で100℃、1晩乾燥させたポリマー20mgを、ナカライテスク社の重水素化DMSO(DMSO−d6)1mLに溶解させ、これをBRUKER社 AVANCE500(周波数500.13MHz、温度30℃、FT積算32回)にてプロトンNMR測定した。得られたスペクトルチャートにおいて、疎水性セグメントおよび親水性セグメントに含まれる各プロトンとピーク位置の関係を同定し、疎水性セグメントにおけるプロトンのうち独立したピークと、親水性セグメントにおけるプロトンのうち独立したピークの1個のプロトンあたりの積分強度の比から求めた。
【0145】
(IEC)
窒素雰囲気下で一晩乾燥したSPAEポリマーの重量を測定し、水酸化ナトリウム水溶液と攪拌処理した後、塩酸水溶液による逆滴定を行うことでイオン交換容量(IEC)を評価した。
【0146】
<複合分離膜の評価方法>
上記のようにして作製された実施例1〜15および比較例1〜4の複合分離膜について、以下の方法で、膜形状の評価、分離層の厚み評価、イオンおよび溶質の阻止性能および透過性能の評価を行なった。
【0147】
(多孔性支持膜の形状)
実施例1〜10,12〜15、比較例1〜4の多孔性支持膜サンプル(中空糸膜)の形状評価は以下の方法で行った。3mmφの孔を空けた2mm厚のSUS板の孔に、適量の中空糸膜束を詰め、カミソリ刃でカットして断面を露出させた後、Nikon社製の顕微鏡(ECLIPSE LV100)およびNikon社製の画像処理装置(DIGITAL SIGHT DS−U2)およびCCDカメラ(DS−Ri1)を用いて、断面の形状を撮影し、画像解析ソフト(NIS Element D3.00 SP6)により、中空糸膜断面の外径および内径を、該解析ソフトの計測機能を用いて測定することで中空糸膜の外径および内径および厚みを算出した。実施例11の多孔性支持膜サンプル(平膜)の形状評価は、含水状態のサンプルを液体窒素で凍結させ、割断し、風乾させて、その割断面にPtをスパッタリングさせて、(株)日立製作所社製の走査型電子顕微鏡S−4800を用いて、加速電圧5kVで観察し、ポリエステル不織布部分を除く、多孔性支持膜の厚みを計測した。
【0148】
(複合分離膜サンプルの第一分離層の厚み)
実施例1〜15および比較例1〜4の複合分離膜または非対称中空糸膜をエタノール水溶液で親水化処理した後、水に浸漬したものを液体窒素で凍結させ、割断し、風乾させて、その割断面にPtをスパッタリングさせて、(株)日立製作所社製の走査型電子顕微鏡S−4800を用いて、加速電圧5kVで観察した。
【0149】
(複合分離膜サンプルの第二分離層の厚み)
第二分離層の厚みは、透過型電子顕微鏡で厚みを測定することが可能であり、以下に測定法を示す。
実施例1〜15および比較例3、4の交互積層処理された複合分離膜を、マツモトファインケミカル社製のチタンラクテート架橋剤(TC310)の10倍希釈液に、24時間、40℃の条件で浸漬させ、第二分離層中のポリビニルアルコール中に含まれるヒドロキシル基の残余の一部を架橋処理し、チタン元素を第二分離層に導入することで、電子密度のコントラストを付与した。その後、同サンプルを十分水洗した後、電子染色した後、エポキシ樹脂に包埋した。包埋した試料をウルトラミクロトームで超薄切片化し、カーボン蒸着を施した。TEM観察には、日本電子社製JEM−2100透過電子顕微鏡を使用し、観察条件は、加速電圧200kVにて行った。
【0150】
(複合分離膜の分離性能および透過性能)
実施例1〜10、12〜15および比較例1〜4の中空糸膜を30本、プラスチック製スリーブに挿入した後、熱硬化性樹脂をスリーブに注入し、硬化させ封止した。熱硬化性樹脂で硬化させた中空糸膜の端部を切断することで中空糸膜の開口面を得て、評価用モジュールを作製した。この評価用モジュールを供給水タンク、ポンプからなる中空糸膜性能試験装置に接続し、性能評価した。実施例11の平膜は、上記と同様、供給水タンク、ポンプの構成からなる平膜性能評価装置に設置し、性能評価した。評価条件は以下のとおりである。溶質として、塩化ナトリウム(NaCl)、硫酸マグネシウム(MgSO
4)、スクロース(分子量342)、グルコース(分子量180)をそれぞれ用いた。溶質濃度は、全て1500mg/Lに調製した。各溶質を含む水溶液を供給液として、25℃、圧力0.5MPaで約30〜1時間ろ過運転を行った。その後、膜からの透過水を採取して、電子天秤(島津製作所社 LIBROR EB−3200D)で透過水重量を測定した。透水性能はNaCl水溶液を供給液としてろ過運転した際の透過水量を表2に記載した。透水性能は、下記式にて25℃の透過水量に換算した。
透過水量(L)=透過水重量(kg)/0.99704(kg/L)
透水量(FR)は下記式より算出した。
FR[L/m
2/日]=透過水量[L]/膜面積[m
2]/採取時間[分]×(60[分]×24[時間])
【0151】
供給液がNaClまたはMgSO
4の場合には、前記透水量測定で採取した膜透過水と、供給水溶液について、電気伝導率計(東亜ディーケーケー社CM−25R)を用いて導電度を測定し、イオン阻止率を下記式より算出した。
阻止率[%]=(1−ろ過液の導電率[μS/cm]/供給水溶液の導電率[μS/cm])×100
【0152】
供給液がスクロースまたはグルコースの場合には、前記透水量測定で採取した膜透過水と、供給水溶液の糖濃度を、公知のフェノール硫酸法により評価した。具体的には、試験管に1.0mLの上記の供給液または透過液を、純水で10倍に希釈したものを入れ、5%フェノール水溶液を1.0mL加えて攪拌する。そのうえに濃硫酸(96%濃度)を5.0mL速やかに加えて、攪拌する。呈色した溶液を、490nmにて吸光度測定を行い、あらかじめ作成した検量線から濃度を算出し、10倍した値を実際の濃度値とする。フェノール硫酸法において、各糖濃度と吸光度の間の線形性が良好な範囲は、0〜200mg/Lまでであるため、上記の1500mg/Lの供給液またはろ過液は10倍に希釈して測定を行う。溶質の阻止率は下記式から算出した。
阻止率[%]=(1−ろ過液の糖濃度[mg/L]/供給水溶液の糖濃度[mg/L])×100
【0153】
膜のつぶれ圧は、標準の測定圧力0.5MPaから0.05MPaずつ運転圧力を上昇させ、各圧力において30分間運転した後、透水量測定を行った。膜つぶれが生じると、透水量が著しく低下し、透水量変化率が負に転じるので、透水量変化率が負に転じる直前の圧力値をつぶれ圧として記録した。
【0154】
【表1】