(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
(a)1分子中に2個以上のチオール基を含有するポリマーが、(f)ポリサルファイドポリマー、及び/又は、(g)ポリサルファイドポリエーテルポリマーである請求項1に記載の硬化型組成物。
(d)有機チタン化合物、有機ジルコニウム化合物、有機アルミニウム化合物、有機スズ化合物から選ばれる少なくとも1種の化合物が、(a)1分子中に2個以上のチオール基を含有するポリマー100重量部に対して0.001〜10重量部である請求項1から3のいずれかに記載の硬化型組成物。
(d)有機チタン化合物が、チタンのカルボン酸塩、アルコキシド、アルコールおよびβ−ジケトンから選ばれる1種または2種以上をキレート型配位子の1成分として含有する錯体から選ばれる少なくとも1種の化合物である請求項1から5のいずれかに記載の硬化型組成物。
(d)有機ジルコニウム化合物が、ジルコニウムのカルボン酸塩、アルコキシド、アルコールおよびβ−ジケトンから選ばれる1種または2種以上をキレート型配位子の1成分として含有する錯体から選ばれる少なくとも1種の化合物である請求項1から5のいずれかに記載の硬化型組成物。
(d)有機アルミニウム化合物が、アルミニウムのカルボン酸塩、アルコキシド、アルコールおよびβ−ジケトンから選ばれる1種または2種以上をキレート型配位子の1成分として含有する錯体から選ばれる少なくとも1種の化合物である請求項1から5のいずれかに記載の硬化型組成物。
ヘキサメチレンジイソシアネートのポリイソシアネートが、ヘキサメチレンジイソシアネートとモノアルコールから得られたアロファネート体、及び/又は、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート体から選ばれる少なくとも1種の化合物を含むポリイソシアネートである請求項1から9のいずれかに記載の硬化型組成物。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明は、(a)1分子中に2個以上のチオール基を含有するポリマーと、(b)
ポリプロピレングリコールと、ヘキサメチレンジイソシアネートのポリイソシアネートとの反応で得られるウレタンプレポリマーと、(c)3級アミンと、(d)有機チタン化合物、有機ジルコニウム化合物、有機アルミニウム化合物、有機スズ化合物から選ばれる少なくとも1種の化合物と、(e)マイクロバルーンを含有する硬化型組成物であって、(c)3級アミンが、トリオクチルアミン、ジメチルオクチルアミン、ジメチルデシルアミン、または、ジメチルラウリルアミンである硬化型組成物である。
【0011】
本発明の硬化型組成物における(a)1分子中に2個以上のチオール基を含有するポリマーと、(b)
ポリプロピレングリコールと、ヘキサメチレンジイソシアネートのポリイソシアネートとの反応で得られるウレタンプレポリマーは、チオール基とイソシアネート基の反応によりチオウレタン結合を形成することにより室温で硬化する組成物であり、以下に各ポリマー化合物について説明する。
【0012】
(a)1分子中に2個以上のチオール基を含有するポリマー
本発明の1分子中に2個以上のチオール基を含有するポリマーは、主鎖中にエーテル結合、チオエーテル結合、ジスルフィド結合、ウレタン結合及びエステル結合を含むものであってもよい。
【0013】
このような1分子中に2個以上のチオール基を含有するポリマーの好ましい例として、特公昭47−48279号公報に記載されているポリオキシアルキレンポリオールや、米国特許第4,092,293号明細書及び特公昭46−3389号公報に記載されているポリメルカプタンが挙げられる。また、この他の既知化合物としては、米国特許第3,923,748号明細書に記載のチオール基末端液状ポリマー、米国特許第4,366,307号明細書に記載の液状チオエーテルでチオール基末端のもの等が挙げられる。更に、特に好ましいポリマーは、下記記載のポリサルファイドポリエーテルポリマー及びポリサルファイドポリマーである。
【0014】
このような1分子中に2個以上のチオール基を含有するポリマーの数平均分子量は、好ましくは100〜200,000であり、より好ましくは400〜100,000である。
【0015】
・ポリサルファイドポリエ−テルポリマー
好ましいポリサルファイドポリエーテルポリマーは、主鎖中に、
(ア)−(R
1O)
n −(但し、R
1は炭素数2〜4のアルキレン基、nは6〜200の整数を示す。)で表されるポリエーテル部分と、
(イ)−(C
2H
4OCH
2OC
2H
4−S
x)− 及び −(CH
2CH(OH)CH
2−S
x)−(但し、xは1〜5の整数である。)で示される構造単位とを含有し、かつ末端に、
(ウ)−C
2H
4OCH
2OC
2H
4−SH 及び/又は −CH
2CH(OH)CH
2−SHで示されるチオール基を有するものである。
【0016】
ポリサルファイドポリエーテルポリマー中において、(ア)のポリエーテル部分と(イ)で示される構造単位は、任意の配列で結合していてよい。またその割合は、(ア)の−(R
1O)
n−成分が2〜95重量%、(イ)の
−(C
2H
4OCH
2OC
2H
4−S
x)−成分が3〜70重量%、
及び−(CH
2CH(OH)CH
2−S
x)−成分が1〜50重量%となることが好ましい。
【0017】
ポリサルファイドポリエーテルポリマーの数平均分子量は、通常600〜200,000であり、好ましくは800〜50,000である。このようなポリサルファイドポリエーテルポリマーは、例えば特開平4−7331号公報に記載されているように、ポリオキシアルキレングリコールにエピハロヒドリンを付加して得られるハロゲン末端プレポリマーとポリサルファイドポリマーを、95/5〜5/95のような重量比で水硫化アルカリおよび/または多硫化アルカリとともに反応させる方法により製造することができる。このポリサルファイドポリマーの製造方法としては、米国特許第2,466,963号明細書記載の固体ポリサルファイドを経由して液状ポリサルファイドポリマーを得る方法が最も一般的であり、新たに相間移動触媒を用いた固体ポリサルファイドの形成を含まない製造方法も特許第4,227,787号明細書に報告されている。また、このポリサルファイドポリマーは、特願2011−167330号に記載の末端ハロゲン化物を、特公昭47−48279号公報、特開平1−278557号公報に準じて、水硫化ナトリウムと反応させることによっても得ることもできる。
【0018】
・ポリサルファイドポリマー
ポリサルファイドポリマーは、主鎖中に、
(エ)−(C
2H
4OCH
2OC
2H
4−S
x)−(但し、xは1〜5の整数である。)で表される構造単位とを含有し、かつ末端に、
(オ)−C
2H
4OCH
2OC
2H
4−SHで表されるチオール基を有するものである。このポリサルファイドポリマーは、室温で流動性を有し、数平均分子量が好ましくは100〜200,000であり、より好ましくは400〜50,000である。このようなポリサルファイドポリマーの好ましい例は、米国特許2,466,963号明細書に記載されている。このポリサルファイドポリマーの製造方法としては、米国特許第2,466,963号明細書記載の固体ポリサルファイドを経由して液状ポリサルファイドポリマーを得る方法が最も一般的であり、新たに相間移動触媒を用いた固体ポリサルファイドの形成を含まない製造方法も特許第4,227,787号明細書に報告されている。また、このポリサルファイドポリマーは、特願2011−167330号に記載の末端ハロゲン化物を、特公昭47−48279号公報、特開平1−278557号公報に準じて、水硫化ナトリウムと反応させることによっても得ることもできる。
【0019】
本発明ではポリサルファイドポリマーの製造方法は限定されないが、固体ポリサルファイドの形成を含まない製造方法が、より柔軟な硬化物となるために好ましい。
【0020】
さらに(a)1分子中に2個以上のチオール基を含有するポリマーは、特開昭63−145321号公報に記載されているようなシリル化試薬によりチオール基をトリアルキルシリルチオ基として保護したものであってもよい。
【0021】
このような1分子中に2個以上のトリアルキルシリルチオ基を含有するポリマーと1分子中に2個以上のイソシアネート基を含有する化合物は一液硬化型組成物とすることが可能である。
【0022】
(b)
ポリプロピレングリコールと、ヘキサメチレンジイソシアネートのポリイソシアネートとの反応で得られるウレタンプレポリマー
【0023】
ポリプロピレングリコールと、ヘキサメチレンジイソシアネートのポリイソシアネートとの反応で得られるウレタンプレポリマーを用いた場合、硬化物は黄変したり、しわやひび割れが生じることがなく、耐候性に優れ
る。
【0025】
本発明において、(b
)は、ポリプロピレングリコールと
、ヘキサメチレンジイソシアネートのポリイソシアネー
トとの反応で得られるウレタンプレポリマーである。
【0026】
ポリプロピレングリコールとヘキサメチレンジイソシアネートの
イソシアネートの反応比はイソシアネート基/水酸基が0.5〜20.0となるように反応させるのが好ましい。より好ましくは2.0〜15.0、さらに好ましくは3.0〜11.0である
。
【0027】
本発明において、ヘキサメチレンジイソシアネートのポリイソシアネートは、好ましくは、ヘキサメチレンジイソシアネートとモノアルコールから得られたアロファネート体、及び/又は、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート体から選ばれる少なくとも1種の化合物を含むポリイソシアネートである。
【0028】
本発明において、ヘキサメチレンジイソシアネートとモノアルコールから得られたアロファネート体は、分子内にアロファネート基の構造を有するものである。
【0029】
本発明において、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート体を含むポリイソシアネートも、ヘキサメチレンジイソシアネートのポリイソシアネートと同様に分子内にイソシアヌレート基の構造を有するものである。また、必要に応じて、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート体を含むポリイソシアネートを加えることで、ポリイソシアネートの粘度と硬化型組成物の強度を調整できる。
【0030】
ヘキサメチレンジイソシアネートのポリイソシアネートの例として、デュラネートA−201H(旭化成ケミカルズ(株)製)、デュラネートTPA−100(旭化成ケミカルズ(株)製)、デュラネートTKA−100(旭化成ケミカルズ(株)製)、デュラネートMFA−75B(旭化成ケミカルズ(株)製)、デュラネートA−201H(旭化成ケミカルズ(株)製)、デュラネートMHG−80B(旭化成ケミカルズ(株)製)、デュラネートTLA−100(旭化成ケミカルズ(株)製)、デュラネートTSA−100(旭化成ケミカルズ(株)製)、デュラネートTSS−100(旭化成ケミカルズ(株)製)、デュラネートTSE−100(旭化成ケミカルズ(株)製)、デュラネートD101(旭化成ケミカルズ(株)製)、デュラネートD201(旭化成ケミカルズ(株)製)等が挙げられる。
【0031】
ヘキサメチレンジイソシアネートのポリイソシアネート中のイソシアヌレート基/アルファネート基のモル比は、0/100〜10/90であり、好ましくは0/100〜5/95であり、より好ましくは1/99〜5/95である。ヘキサメチレンジイソシアネートのポリイソシアネート中のイソシアヌレート基/アルファネート基のモル比を1/99以上とすることによって、硬化物の強度を維持することができ、5/95以下とすることによって、粘度を低く抑えることができる。
【0032】
ヘキサメチレンジイソシアネートのポリイソシアネート中の残留ヘキサメチレンジイソシアネートモノマー濃度は、例えば3wt%以下であり、好ましくは1wt%以下である。ヘキサメチレンジイソシアネートのポリイソシアネート中の残留ヘキサメチレンジイソシアネートモノマー濃度を3wt%以下とすることによって、ポリプロピレングリコールとヘキサメチレンジイソシアネートのポリイソシアネートとの反応で得られるウレタンプレポリマーの残留ヘキサメチレンジイソシアネートモノマー濃度は1wt%以下にすることができる。残留ヘキサメチレンジイソシアネートモノマー濃度が多い場合は、未反応のヘキサメチレンジイソシアネートモノマーを薄膜蒸発缶、抽出などにより除去できる。残留ヘキサメチレンジイソシアネートモノマー濃度はとくに限定されないが、例えば3wt%以下であり、好ましくは1wt%以下であり、より好ましくは0.5wt%以下である。残留ヘキサメチレンジイソシアネートモノマー濃度は1wt%以下にすることで、硬化性が低下する懸念を回避することができる。
【0033】
ヘキサメチレンジイソシアネートのポリイソシアネート中のモノアルコールの炭素数は4〜20であり、好ましくは6〜16であり、より好ましくは6〜12であり、さらに好ましくは6〜9である。炭素数20以下で、ポリイソシアネートの粘度が上昇を抑制できる。
【0034】
このようなモノアルコールとしては、分子内にエーテル結合を含むもの、例えば、1−ブトキシエタノール、2−ブトキシエタノール、1−ブトキシプロパノール、2−ブトキシプロパノール、3−ブトキシプロパノール、エチレングリコールモノブチルエーテル等であってもよい。また、前記モノアルコールはエステル基、カルボニル基、フェニル基、例えば、ベンジルアルコール等を含んでもよく、好ましいのは飽和炭化水素基だけからなるモノアルコールである。さらに、分岐を有しているモノアルコールがより好ましい。このようなモノアルコールとして、例えば、1−ブタノール、2−ブタノール、1−ペンタノール、2−ペンタノール、1−ヘキサノール、2−ヘキサノール、1−ヘプタノール、2−ヘプタノール、1−オクタノール、2−オクタノール、2−エチル−1−ヘキサノール、3,3,5−トリメチル−1−ヘキサノール、トリデカノール、ペンタデカノール、パルミチルアルコール、ステアリルアルコール、1,3,5−トリメチルシクロヘキサノール等が挙げられる。
【0035】
本発明においては、前記(b)の化合物中のイソシアネ−ト基と、上述した(a)の1分子中に2個以上のチオール基を含有するポリマー中のチオール基とのモル比(イソシアネート基/チオール基)が、0.5〜4.0となるように配合することが好ましい。前記モル比が0.5未満では、硬化物が十分に高分子量化しないため好ましくなく、一方、前記モル比が4.0を超えると硬化物が硬く脆いものとなり、好ましくない。より好ましいモル比は、0.7〜3.0であり、さらに好ましくは1.0〜2.0である。
【0036】
本発明の硬化型組成物において、(a)1分子中に2個以上のチオール基を含有するポリマーと、(b)
ポリプロピレングリコールと、ヘキサメチレンジイソシアネートのポリイソシアネートとの反応で得られるウレタンプレポリマーとをあらかじめ反応させて、上述のウレタンプレポリマーとしたもののみを用いることにより、一液硬化型組成物として使用することも可能である。
【0037】
(c)3級アミン
本発明における3級アミ
ンは、
【0038】
具体例としては
、トリオクチルアミン、ジメチルオクチルアミン、ジメチルデシルアミン、ジメチルラウリルアミ
ンが挙げられる
。好ましくはトリオクチルアミン
、ジメチルオクチルアミン、ジメチルラウリルアミンである。これら3級アミンは2種以上を用いてよい。
【0039】
(c)3級アミンの含有量は、好ましくは、1分子中に2個以上のチオール基を含有するポリマー100重量部に対して、0.001〜10重量部である。0.001重量部未満では十分な硬化速度が得られず、10重量部を超えると硬化が速すぎて作業性が取れないために好ましくない。より好ましくは、0.005〜8重量部であり、さらにより好ましくは、0.01〜5重量部である。
【0040】
(d)有機チタン化合物、有機ジルコニウム化合物、有機アルミニウム化合物、有機スズ化合物から選ばれる少なくとも1種の化合物
本発明の有機チタン化合物は、チタンと有機原子団とからなる化合物であって、チタンの塩、アルコキシド、錯体、シクロペンタジエニル化合物等が含まれる。具体的には酢酸チタン(II)、酢酸チタン(IV)、2−エチルヘキサン酸チタン、チタン(IV)メトキシド、チタン(IV)エトキシド、チタン(IV)n−プロポキシド、チタン(IV)イソプロポキシド、チタン(IV)ブトキシド、酸化チタン(II)アセチルアセトナート、酸化チタン(IV)ビス(アセチルアセトン)、ジイソプロポキシビス(メチルアセトアセテート)チタン(IV)、ジイソプロポキシビス(エチルアセトアセテート)チタン(IV)、ジブトキシビス(アセチルアセトナート)チタン(IV)、テトラアセチルアセトネートチタン(IV)、ビス(シクロペンタジエニル)チタン(IV)、ジカルボニルビス(シクロペンタジエニル)チタン(II)、クロロビス(シクロペンタジエニル)チタン(IV)、ジクロロビス(シクロペンタジエニル)チタン(IV)、ビス(シクロペンタジエニル)ジメチルチタン(IV)、トリクロロ(シクロペンタジエニル)チタン(IV)、トリクロロ(ペンタメチルシクロペンタジエニル)チタン(IV)、トリクロロ(メチル)チタン(IV)テトラベンジルチタン(IV)、チタン(IV)2−エチル−1−ヘキサノラート、イソプロポキシ(2−エチル−1,3−ヘキサンジオラト)チタン、ジイソプロポキシビス(トリエタノールアミナト)チタン、ジ(2ーエチルヘキソキシ)ビス(2−エチル−1,3−ヘキサンジオラト)チタン、ジ−n−ブトキシビス(トリエタノールアミナト)チタン、ヒドロキシビス(ラクトン)チタン等である。
【0041】
本発明では、(d)有機チタン化合物は、好ましくは、チタンのカルボン酸塩、アルコキシド、アルコールおよびβ−ジケトンから選ばれる1種または2種以上をキレート型配位子の1成分として含有する錯体から選ばれる少なくとも1種の化合物である。カルボン酸としては、酢酸、2−エチルヘキサン酸、ナフテン酸等が挙げられる。アルコキシドとしては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、t−ブタノール等からなるアルコキシドが挙げられる。
【0042】
チタンの錯体には、アルコールおよびβ−ジケトンから選ばれる1種または2種以上をキレート型配位子の1成分として含有する錯体が好適に用いられる。アルコールとしては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、t−ブタノール等が挙げられる。さらにβ−ジケトンとしては、アセチルアセトン、メチルアセトアセテート、エチルアセトアセテート、ベンゾイルアセトン等が挙げられる。中でもチタンの錯体、具体的にはジイソプロポキシビス(エチルアセトアセテート)チタン、ジブトキシビス(アセチルアセトナート)チタンを用いた場合、可使時間が長くかつ硬化速度が速いため作業性がよく好ましい。
【0043】
本発明の有機ジルコニウム化合物は、ジルコニウムと有機原子団とからなる化合物であって、ジルコニウムの塩、アルコキシド、錯体、シクロペンタジエニル化合物等が含まれる。具体的には、ナフテン酸酸化ジルコニウム、酢酸ジルコニウム(IV)、2−エチルヘキサン酸ジルコニウム(IV)、ジルコニウム(IV)エトキシド、ジルコニウム(IV)イソプロポキシド、ジルコニウム(IV)n−プロポキシド、ジルコニウム(IV)t−ブトキシド、テトラノルマルブトキシジルコニウム、ブトキシ・ビス(メチルアセトアセテート)ジルコニウム、ブトキシ・ビス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、ジイソプロポキシビス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、アセチルアセトントリブトキシジルコニウム、ジルコニウム(IV)アセチルアセトナート、ジルコニウムヘキサフルオロアセチルアセトナート、テトラキス(2,4−ペンタンジオナト)ジルコニウム(IV)、ジクロロビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウム(IV)、ビス(シクロペンタジエニル)ジメチルジルコニウム(IV)、ブタジエンビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウム(II)、ジカルボニルビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウム(II)、トリブロモ(シクロペンタジエニル)ジルコニウム(IV)、テトラベンジルジルコニウム(IV)等が挙げられる。
【0044】
本発明では、(d)有機ジルコニウム化合物は、好ましくは、ジルコニウムのカルボン酸塩、アルコキシド、アルコールおよびβ−ジケトンから選ばれる1種または2種以上をキレート型配位子の1成分として含有する錯体から選ばれる少なくとも1種の化合物である。カルボン酸としては、酢酸、2−エチルヘキサン酸、ナフテン酸等が挙げられる。アルコキシドとしては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、t−ブタノールとからなるアルコキシド等が挙げられる。ジルコニウムの錯体には、アルコールおよびβ−ジケトンから選ばれる1種または2種以上をキレート型配位子の1成分として含有する錯体が好適に用いられる。アルコールとしては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、t−ブタノール等が挙げられる。さらにβ−ジケトンとしては、アセチルアセトン、エチルアセトアセテート、ベンゾイルアセトンなどが挙げられる。中でもジルコニウムの錯体、具体的にはブトキシ・ビス(エチルアセトアセテート)ジルコニウムを用いた場合、可使時間が長くかつ硬化速度が速いため作業性がよく好ましい。
【0045】
本発明の有機アルミニウム化合物は、アルミニウムと有機原子団とからなる化合物であって、アルミニウムの塩、アルコキシド、錯体等が含まれる。具体的には2−エチルヘキサン酸アルミニウム、乳酸アルミニウム、ステアリン酸アルミニウム、アルミニウムエトキシド、アルミニウムイソプロポキシド、アルミニウムn−ブトキシド、アルミニウムt−ブトキシド、アルミニウムトリフルオロアセチルアセトナート、アルミニウムヘキサフルオロアセチルアセトナート、トリス(2,4−ペンタンジオナト)アルミニウム、トリス(アセチルアセトナート)アルミニウム等が挙げられる。
【0046】
本発明では、(d)有機アルミニウム化合物は、好ましくは、アルミニウムのカルボン酸塩、アルコキシド、アルコールおよびβ−ジケトンから選ばれる1種または2種以上をキレート型配位子の1成分として含有する錯体から選ばれる少なくとも1種の化合物である。中でもアルミニウムの錯体、具体的にはトリス(アセチルアセトナート)アルミニウムを用いた場合、可使時間が長くかつ硬化速度が速いため作業性がよく好ましい。
【0047】
本発明では、(d)有機スズ化合物は、好ましくは、ジオクチルスズ化合物である。具体的にはジオクチルスズジアセテート、ジオクチルスズモノアセテート、ジオクチルスズジラウレート、ジオクチルスズジオクトエート、ジオクチルスズジネオデカネート、ジオクチルスズ(2−エチルヘキシルマレート)、ジオクチルスズビスアセチルアセテート、ジオクチルスズジエトキシド、ジオクチルスズジメトキシド、ジオクチルスズメルカプト脂肪酸エステル、ジオクチルスズビス(2−エチルヘキシルメルカプトアセテート)、ジオクチルスズマレート、ジオクチルスズジステアレート、ジオクチルスズジドデシルメルカプト、ジオクチルスズビス(エチルマレート)等が挙げられる。中でもジオクチルスズ(2−エチルヘキシルマレート)を用いた場合、可使時間が長くかつ硬化速度が速いため作業性がよく好ましい。また貯蔵後の硬度発現性が貯蔵前の硬度発現性とかわらず貯蔵安定性がよく好ましい。また引張特性の加熱による高モジュラス化が少なく好ましい。
【0048】
これら有機チタン化合物、有機ジルコニウム化合物、有機アルミニウム化合物、有機スズ化合物から選ばれる少なくとも1種の化合物は2種類以上用いても良い。
【0049】
本発明の硬化型組成物では、有機チタン化合物、有機ジルコニウム化合物、有機アルミニウム化合物、有機スズ化合物から選ばれる少なくとも一種の化合物は、1分子中に2個以上のチオール基を含有するポリマー100重量部に対して0.001〜10重量部であることが好ましい。0.001重量部未満では十分な硬化速度が得られず、10重量部を超えると加熱養生後の物性変化が大きく好ましくない。より好ましくは0.001〜5重量部であり、さらにより好ましくは、0.001〜3.0重量部である。
【0050】
(e)マイクロバルーン
本発明において、(e)マイクロバルーンは、例えば、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、尿素樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリスチレン樹脂、スチレン系共重合体、ポリメタクリレート、ポリビニルアルコール、塩化ビニリデン−アクリロニトリル共重合体、アクリロニトリル−メタクリロニトリル共重合体、アクリロニトリル−メチルメタクリレート共重合体、塩化ビニリデン−アクリロニトリル−ジビニルベンゼン共重合体等のいずれかから形成される有機質バルーン、またはセラミックバルーン、ガラスバルーン、シリカバルーン、シラスバルーン、アルミナバルーンのような無機バルーンを挙げることができる。
【0051】
前記の有機質バルーンは、表面の一部または全部を炭酸カルシウム、表面処理炭酸カルシウム、酸化チタン、酸化ケイ素、タルク、クレー、カーボンブラック等から選ばれる少なくとも1種類からなる充填剤により被覆されている。表面被覆することにより、ポリサルファイドエーテルポリマー中へのマイクロバルーンの混練をし易くし、また、硬化性が向上する。
【0052】
本発明の硬化型組成物において、マイクロバルーンの添加量は、硬化型組成物全体の重量の0.5〜10重量%が好ましい。0.5重量%未満では硬化型組成物の低比重化の効果が不十分であり、10重量%を越えると硬化型組成物の機械的強度が低下するため好ましくない。マイクロバルーンの添加量は、より好ましくは、硬化型組成物全体の重量の0.5〜5.0重量%であり、さらに好ましくは0.5〜3.0重量%である。
【0053】
本発明の硬化型組成物に使用することができる充填剤は、例えば、カーボンブラック、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、クレー、タルク、マイカ、ケイ酸、ケイ酸塩、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、硫酸バリウム、ゼオライト、パーライト等が挙げられる。これらは単独で又は2種以上組み合わせて用いてよい。特に炭酸カルシウムは、比較的安価で粒子径の調節が容易であるため好適である。
【0054】
本発明の硬化型組成物で用いられる炭酸カルシウムは、重質炭酸カルシウム、コロイド炭酸カルシウムが好ましい。一般に、重質炭酸カルシウムは、石灰石原石を機械的に粉砕・分級して所望の粒度とし得られた炭酸カルシウムである。またコロイド炭酸カルシウムは、石灰石原石をコークス等で混焼し、一旦、酸化カルシウム(生石灰)を作製し、それを水と反応させて水酸化カルシウム(消石灰)とし、焼成時に発生した炭酸ガスと反応せしめ、所望の粒径、粒子形状とし得られた炭酸カルシウムである。これらの炭酸カルシウムは、有機系表面処理剤により表面処理なされた炭酸カルシウムが好ましい。炭酸カルシウムの有機系表面処理剤は、脂肪酸、樹脂酸、界面活性剤、カップリング剤等が挙げられる。中でも特に好ましいのは、脂肪酸である。脂肪酸には、アルカリ金属塩、アンモニウム塩、アミン塩等の脂肪酸塩、更には、脂肪酸エステル等が挙げられる。特に好ましいのは、脂肪酸エステルが好ましい。脂肪酸エステルの融点は、30℃以上が好ましい。より好ましくは40℃以上、更に好ましくは50℃以上である。30℃以上であれば、表面処理で炭酸カルシウムへの吸着結合が十分に起こり、表面処理
が均一になるため好ましい。脂肪酸エステルの表面処理量は、炭酸カルシウム100重量部に対して1.0〜20.0重量部が好ましい。1.0重量部以上であれば、表面処理効果が十分に得られるため好ましく、20.0重量部以下であれば、経済的にも有利であるため好ましい。より好ましくは10.0〜20.0重量部である。10.0〜20.0重量部であれば、得られた硬化物の加熱養生後の物性変化が小さいため好ましい。さらに好ましくは、15.0〜20.0重量部である。脂肪酸エステルを構成する脂肪酸のアルキル基の炭素数は、8以上であるのが好ましい。より好ましくは10以上、さらに好ましくは12以上である。脂肪酸エステルを構成するアルキル基の炭素数が8以上であれば、硬化型組成物に高いチキソ性、耐スランプ性を付与するため好ましい。このような脂肪酸としては、例えばペラルゴン酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、マルガリン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸などの飽和脂肪酸、パルミトイル酸、オレイン酸、リノール酸、エレオステアリン酸、アラキドン酸、リシノール酸などの不飽和脂肪酸等が挙げられる。尚、上記一価アルコールは、炭素数が1〜18が好ましい。このような一価アルコールとしては、メチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール、ブチルアルコール等が挙げられる。また一価のアルコールから生成される脂肪酸エステルのみならず、グリセリン等の多価アルコールから生成する脂肪酸エステルも使用できる。このような多価アルコールとしては、トリステアリルグリセライド、ジステアリルグリセライド、モノステアリルグリセライド、トリパルミチルグリセライド、更に、大豆油、ヤシ油、パーム油、パーム核油、アマニ油、ナタネ油、綿実油、キリ油、ヒマシ油、牛脂油、スクワラン、ラノリン等の天然油脂、上記天然油脂の硬化油脂等が例示される。脂肪酸エステルの分子量としては、250〜1200が好ましい。より好ましくは300〜1000、さらに好ましくは350〜900である。250以上であれば、十分なチキソ性が得られ、1200以下であれば、融点が高くなり過ぎず取り扱いやすいため好ましい。また上記脂肪酸エステルの中では、水素添加した牛脂硬化油、パーム硬化油、ヤシ硬化油、大豆硬化油、ヒマシ硬化油等が特に好ましい。これらは単独又は2種類以上組み合わせて用いてよい。
【0055】
本発明の硬化型組成物に使用できる可塑剤は、例えば、フタレート系、アジペート系、ホスフェート系、キシレン樹脂、塩素化パラフィン、炭化水素系可塑剤等が挙げられる。具体的には、ジメチルフタレート、ジブチルフタレート、ジオクチルフタレート、ジイソノニルフタレート、ブチルベンジルフタレート、ジベンジルフタレート、へキサノールベンジルフタレート、アルキルベンジルフタレート、ジブチルアジペート、ビス(ブチルジグリコール)アジペート、マレイン酸ジブチル、トリエチルホスフェート、トリ−n−ブチルホスフェート、トリクレシルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、特開平10−60261号公報記載のキシレン樹脂、特公昭56−14705号公報、特公昭56−15440号公報、特公昭57―56511号公報等に例示されているようなジアリールアルカン型の化合物、トリアリールジアルカン型の化合物、スチレンの2〜3重合体とアルキルベンゼンとの反応生成物からなる高沸点芳香族炭化水素、特開2004−161837号公報記載のアクリル酸エステル共重合体等が挙げられる。
【0056】
本発明の硬化型組成物には無機紫外線遮蔽剤を使用することができる。無機紫外線遮蔽剤としては、例えば、二酸化チタン、酸化亜鉛、酸化セリウム等が挙げられる。これらは単独で又は2種以上組み合わせて用いてよい。特に二酸化チタン、酸化亜鉛を用いた場合、得られた硬化物が耐候性に優れるため好ましい。
【0057】
本発明の硬化型組成物で用いられる二酸化チタンは、二酸化チタン粒子組成物の粉粒体が好ましい。二酸化チタンの結晶形態は、ルチル、アナタース、ブルカイトが挙げられる。中でも特に好ましいのは、ルチルである。ルチルは、有機系樹脂を劣化、分解する原因である光触媒機能が弱いため好ましい。二酸化チタンの平均一次粒子径は、0.005〜0.1μmが好ましい。0.005μm以上であれば、二酸化チタン粒子の分散性が良いため好ましく、0.1μm以下であれば、二酸化チタンが透明性を示めし硬化型組成物の調色が容易となるため好ましい。二酸化チタン粒子の表面処理は、無処理、無機物処理、有機物処理が挙げられる。中でも特に好ましいのは、無機物処理、有機物処理である。これら何れかの表面処理によって二酸化チタン粒子と有機系樹脂とが直接接触しないようにして、光触媒活性が発現したとしても、二酸化チタンが有機系樹脂を劣化、分解しないため表面処理された二酸化チタンが好ましい。無機物処理には、アルミニウム、ケイ素、チタニウム、ジルコニウム、スズ、アンチモン等の金属の酸化物若しくは含水酸化物等による粒子表面の被覆が挙げられる。有機物処理には、トリメチロールエタン等のポリオール、トリエタノールアミン酢酸塩等のアルカノールアミン、トリメチルクロロシラン等のシリコン樹脂等による粒子表面の被覆が挙げられる。これらの無機物処理と有機物処理は単独又は2種類以上組み合わせて用いてよい。
【0058】
本発明の硬化型組成物で用いられる酸化亜鉛は、酸化亜鉛粒子組成物の粉粒体が好ましい。酸化亜鉛粒子の平均一次粒子径は、0.15μm以下が好ましい。0.15μm以下であれば、高い透明性を示し、硬化型組成物の調色が容易となるため好ましい。酸化亜鉛粒子の表面処理は、無処理、無機物処理、有機物処理が挙げられる。中でも特に好ましいのは、無機物処理、有機物処理である。無機物処理、有機物処理によって酸化亜鉛粒子表面が被覆されれば、純水や水溶液への溶解度が小さく酸化亜鉛粒子からの溶解物が、硬化型組成物や得られた硬化物に悪影響を及ぼすことがない。更に光触媒機能が抑制され、有機系樹脂が劣化、分解しないため好ましい。無機物処理には、アルミニウム、ケイ素、チタニウム、ジルコニウム、スズ、アンチモン、イットリウム、ランタン、セリウム、ネオジム等の金属の酸化物若しくは含水酸化物、ケイ酸亜鉛等による粒子表面の被覆が挙げられる。有機物処理には、有機ケイ素化合物、多価アルコール及びアルカノールアミン、高級脂肪酸、高級脂肪酸エステル又は金属石ケン等による粒子表面の被覆が挙げられる。これらの無機物処理と有機物処理は単独又は2種類以上組み合わせて用いてよい。上記有機ケイ酸化合物としては、例えばメチルハイドロジェンポリシロキサンやジメチルポリシロキサン等のオルガノポリシロキサンや、トリエトキシビニルシラン、ジフェニルジメトキシシラン等のシランカップリング剤が挙げられる。また多価アルコールとしては、例えばトリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等が挙げられる。またアルカノールアミンとしては、例えばジエタノールアミン、ジプロパノールアミン、トリエタノールアミン、トリプロパノールアミン等が挙げられる。高級脂肪酸、高級脂肪酸エステル又は金属石ケンの構成する脂肪酸のアルキル基の炭素数は、10〜30が好ましい。このような脂肪酸としては、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、マルガリン酸、ステアリン酸等が挙げられる。高級脂肪酸の金属塩を構成する金属種は、アルミニウム、リチウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、亜鉛、スズ等が挙げられる。
【0059】
本発明の硬化型組成物に使用できる紫外線吸収剤は、例えばベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、サリチル酸フェニル系、トリアジン系、ニッケル塩及びニッケル錯塩系が挙げられる。特に好ましい紫外線吸収剤は、ベンゾトリアゾール系、ニッケル塩、ニッケル錯塩系の紫外線吸収剤であり、とりわけベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤が好ましい。具体的には、2−(2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−[2−ヒドロキシ−3(3,4,5,6−テトラ−ヒドロフタルイミドメチル)−5−メチルフェニル]ベンソトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−3−t−ブチル−5−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−4−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−3,5−t−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−3,5−t−ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−5−t−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−アミルフェニル)ベンゾトリアゾール、ニッケルジブチルジチオカルバメート、[2,2’−チオビス(4−t−オクチルフェノレート)]−2−エチルヘキシルアミン−ニッケルなどである。
【0060】
本発明の硬化型組成物に使用できる酸化防止剤は、例えば、アミン系酸化防止剤、フェノール系酸化防止剤、ホスファイト系酸化防止剤、チオエーテル系酸化防止剤が挙げられる。フェノール系酸化防止剤は、ポリマーとの相溶性が良く好ましい。具体的には、1,3,5‐トリス[[3,5‐ビス(1,1‐ジメチルエチル)‐4‐ヒドロキシフェニル]メチル]‐1,3,5‐トリアジン‐2,4,6(1H,3H,5H)‐トリオン、1,1,3‐トリス(5‐tert‐ブチル‐4‐ヒドロキシ‐2‐メチルフェニル)ブタン、1,1‐ビス(4‐ヒドロキシ‐2‐メチル‐5‐tert‐ブチルフェニル)ブタン、2,2‐ビス[[[3‐(3,5‐ジ‐tert‐ブチル‐4‐ヒドロキシフェニル)プロピオニル]オキシ]メチル]プロパン‐1,3‐ジオール、1,3‐ビス[3‐(3,5‐ジ‐tert‐ブチル‐4‐ヒドロキシフェニル)プロピオナート]、ビス(3‐tert‐ブチル‐4‐ヒドロキシ‐5‐メチルベンゼンプロパン酸)エチレンビス(オキシエチレン), 4,4′,4′′‐[(2,4,6‐トリメチルベンゼン‐1,3,5‐トリイル)トリス(メチレン)]トリス(2,6‐ジ‐tert‐ブチルフェノール)などである。
【0061】
本発明の硬化型組成物に使用できる加硫促進剤としては、例えばアルデヒド・アンモニア及びアルデヒド・アミン系、チオウレア系、グアニジン系、チアゾール系、スルフェンアミド系、チウラム系、ジチオカルバミン酸塩系、キサントゲン酸塩系などが挙げられる。具体的には、ヘキサメチレンテトラミン、ジフェニルグアニジン、テトラメチルチウラムジスルフィド、テトラエチルチウラムジスルフィド、テトラブチルチウラムジスルフィドなどが挙げられる。上記加硫促進剤は2種類以上添加しても良い。
【0062】
本発明の硬化型組成物にはその特性を損なわない限り、他のゴム・エラストマーを加えることができる。例えば、天然ゴム、ポリブタジエンゴム、アクリルゴム、ポリイソプレンゴム、スチレンーブタジエンゴム、アクリロニトリル−ブタジエンゴム、クロロプレンゴム、オレフィン系エラストマー、スチレン系エラストマー、塩化ビニル系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、ポリアミド系エラストマー、ポリウレタン系エラストマー、ポリシロキサン系エラストマー等が挙げられる。
【0063】
本発明の硬化型組成物に使用できるシランカップリング剤は、加水分解性シリル基と反応性有機官能基とを含有する化合物である。具体的には、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、2−(3,4エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、p−スチリルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、N−2(アミノエチル)3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−2(アミノエチル)3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−2(アミノエチル)3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−トリエトキシシリル−N−(1,3−ジメチル−ブチリデン)プロピルアミン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、ビス(トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィドなどが挙げられる。また、特開平6−271833号公報に記載のポリサルファイドポリマー“チオコールLP−3”と3―グリドキシプロピルトリメトキシシランを反応させて合成した末端トリメトキシシラン変性ポリサルファイドポリマーもシランカップリング剤として用いることができる。これらシランカップリング剤は2種以上を用いてもよい。本発明の硬化型組成物では、シランカップリング剤として、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、末端トリメトキシシラン変性ポリサルファイドポリマーを使用した場合、特に接着性が良好で好ましい。
【0064】
本発明の硬化型組成物中のシランカップリング剤の含有量は、1分子中に2個以上のチオール基を含有するポリマー100重量部に対して、0.1〜20重量部が好ましく、より好ましくは0.5〜10重量部である。シランカップリング剤の含有量が、0.1重量部未満では十分な接着力が得られず、20重量部を超えるとコスト的に好ましくない。
【0065】
本発明の硬化型組成物には、硬化後の表面残存タックを改良するために、特開2000−178334号公報記載の空気酸化可能な不飽和基を含有する化合物を添加することができる。空気酸化可能な不飽和基を含有する化合物としては、乾性油、ジエン系化合物、乾性油の各種変性物が挙げられる。具体的には不飽和脂肪酸の混合トリグリセライドで、ヨウ素価130以上の油脂(乾性油及び魚油)が使用可能である。不飽和脂肪酸としてはトウハク酸、リンデル酸、ツズ酸、マッコウ酸、ミリストオレイン酸、ゾーマリン酸、ペトロセリン酸、オレイン酸、バクセン酸、ガドレイン酸、鯨油酸、エルシン酸、サメ油酸、リノール酸、ヒラゴ酸、エレオステアリン酸、ブニカ酸、トリコサン酸、リノレン酸、モロクチ酸、パリナリン酸、アラキドン酸、イワシ酸、ヒラガシラ酸、ニシン酸が挙げられる。具体的には、植物油としては亜麻仁油、エノ油、桐油、日本桐油、オイチシカ油、麻実油、カヤ油、イヌガヤ油、クルミ油、オニグルミ油、ケシ油、ヒマワリ油、大豆油、サフラワー油等。魚油としてイワシ油、ニシン油、メンヘーデン油等が挙げられる。これ以外にも魚油のアルカリ異性化による異性化油、ヒマシ油の脱水化による脱水ヒマシ油等挙げられる。特に好ましい例は、エレオステアリン酸等の共役酸型の不飽和脂肪酸を多く含むキリ油、オイチシカ油である。
【0066】
本発明においては、乾性油の添加量は1分子中に2個以上の活性水素を含有するポリマーと1分子中に2個以上のイソシアネート基を含有する化合物の合計100重量部に対し0.1〜50重量部であることが望ましい。添加量が0.1重量部未満では残存タック改良の効果が乏しくなり、50重量部を超えると引張り応力等の物性上昇及び伸度の低下が大きくなり好ましくない。
【0067】
さらに、空気酸化可能な不飽和基を含有する化合物は、活性水素含有化合物と有機ポリイソシアネート化合物をイソシアネ−ト化合物過剰の条件で反応させる際に共存させて合成することにより、1分子中に2個以上のイソシアネート基を含有する化合物と空気酸化可能な不飽和基を含有する化合物を安定に存在させることが可能となり、特に好ましい。
【実施例】
【0068】
本発明を以下の実施例によりさらに詳細に説明する。
【0069】
合成例1
1Lのセパラブルフラスコを用いて、844.2gの二硫化ナトリウム水溶液(2.17mol/L)、2.6gのメチルトリブチルアンモニウムクロライド50wt%水溶液、11.4gの42%水硫化ナトリウム水溶液、276.9gのビス(2−クロロエチル)ホルマールを、固体ポリサルファイドポリマーの形成を含まない方法で反応させて、約260gの淡黄色透明液体ポリマーを得た。得られたポリマーは、粘度が43.7Pa・s、SH含量が1.5%であった。このポリマーを使用して、合成例2のポリマーを合成した。
【0070】
合成例2
セパラブルフラスコにプロピレングリコールにプロピレンオキサイドを付加して得られる二官能性ポリプロピレングリコール(OH価56.1mgKOH/g)63.2gと、6.75gのエピクロロヒドリンと、0.08gの塩化第二錫五水塩とを仕込み、80〜90℃で3時間攪拌した。さらに、合成例1のポリマー70gを加え混合した後、5.82gの水硫化ソーダ(純度70%)を加え、80℃で2時間攪拌した。その後、クエン酸の50重量%水溶液1.38gを加えて、15分してから脱水した。更に、塩を除去し、メルカプタン含量2.0重量%、粘度8.7Pa・s(25℃)の淡黄色透明なポリマーを得た。
【0071】
合成例3
セパラブルフラスコに分子量1000の2官能性ポリプロピレングリコール900gと分子量15000の3官能性ポリプロピレングリコール100gとを仕込み、80℃のオイルバスで加熱撹拌した。窒素雰囲気下、ヘキサメチレンジイソシアネート247.8g、ジブチル錫ジラウレートを数滴仕込み、80℃で4時間反応させた。得られた反応生成物を薄膜蒸留装置2−03型ワイプレン((株)新興環境ソリューション製)を使用して蒸留し、未反応ヘキサメチレンジイソシアネートを除くことでポリマーを得た。得られたポリマーは、イソシアネート含量4.2重量%、粘度2.5Pa・s(25℃)の無色透明液体であった。さらに未反応ヘキサメチレンジイソシアネート含有量は0.4重量%であった。
【0072】
合成例4
セパラブルフラスコにポリプロピレングリコールとキシリレンジイソシアネートをモル比(イソシアネート基/水酸基)1.85になるように仕込み、80℃にて14時間反応させた。得られたポリマーは、イソシアネート含量3.8重量%、粘度16Pa・s(25℃)の無色透明液体であった。
【0073】
合成例5
セパラブルフラスコにポリプロピレングリコールとデュラネートA−201H(旭化成ケミカルズ(株)製)をモル比(イソシアネート基/水酸基)2.00になるように仕込み、90℃にて16時間反応させた。得られたポリマーは、イソシアネート含量4.2重量%、粘度14Pa・s(25℃)の無色透明液体であった。
【0074】
実施例1
、参考例1〜3
合成例2のポリマーに可塑剤、充填剤および硬化触媒を表1の割合で配合し、ミキサーで混合することによって得た主剤を初期の主剤とし、初期の主剤を50℃にて14日間加熱貯蔵して得た主剤を50℃14日貯蔵の主剤とした。得られた主剤に、硬化剤として合成例3のポリマー、グレートナー(横浜ゴム(株)製、HAMATITE(スーパーII、SC−M500)共用カラーマスター:グレー)を表1に示す割合で加え、ヘラにて混合した。得られた混合物を使用して、以下の評価を行った。結果を表2に示した。
【0075】
可使時間は、混合物の粘度が500Pa・s以上となった時間とした。可使時間は23℃55%RHの環境で測定した。粘度計にはB型粘度計 B8U(東京計器(株))を使用し、No.7ローターを使用した。回転数は10rpmとした。
【0076】
硬度測定は、JIS K 6253−1997に準じて行った。硬度計には、ASKER TYPE C(高分子計器(株))を用いた。また、硬化性は、表1に示す割合で混合後、24時間経過時点での硬度を測定し、未硬化の状態を×とした。
【0077】
引張接着性試験は、JIS A 1439−2004の5.20 引張接着性試験に従って行った。試験体は、5.17.2に従って作成した。被着体にはアルミニウム板を用いた。但し、硬化条件は23℃55%RHにて3日間の後、50℃にて3日間を初期養生とし、初期養生後、90℃にて7日間を加熱養生とした。
【0078】
比較例1〜4
合成例2のポリマーに可塑剤、充填剤および硬化触媒を表1の割合で配合して、初期の主剤を得た。得られた主剤に、硬化剤として合成例3、合成例4のポリマーと、グレートナーを表1の割合で混合した。得られた混合物を使用して、実施例1と同様の評価を実施した。結果を表2に示した。
【0079】
【表1】
【0080】
【表2】
【0081】
比較例1は、可使時間が3〜4時間と長い一方で、24時間後の硬度が9と高く作業性良好であり、50%引張応力は15N/cm
2、最大荷重時の伸び率は419%と引張特性も良好であったが、全比重が1.5と高かった。これに対し、
参考例1は、可使時間が3〜4時間と長い一方で、24時間後の硬度が12と高く作業性良好であった。また、マイクロバルーンの配合により全比重が1.2まで低減化されているにも関わらず、50%引張応力は20N/cm
2、最大荷重時の伸び率は567%と、比較例1と同程度の引張特性であり、良好であった。一方、比較例2は、24時間後の硬度が測定出来るほどに硬化しておらず作業性が悪かった。また、キシリレンジイソシアネート系ウレタンプレポリマーを使用した比較例3、4は、マイクロバルーンの配合により50%引張応力が、それぞれ16N/cm
2から30N/cm
2に上昇、最大荷重時の伸び率は558%から210%に低下した。マイクロバルーンを配合することで、実用上使用できない範囲の引張特性となった。
【0082】
参考例2は、可使時間が3〜4時間と長い一方、24時間後の硬度が25と硬度発現性良好であった。また、50℃14日間貯蔵した主剤を用いると、可使時間が3〜4時間と長く、24時間後の硬度が20と初期の主剤を用いての硬度と同様に、硬度発現性良好であった。
【0083】
参考例3は、可使時間が3〜4時間と長い一方、24時間後の硬度が28と硬度発現性良好であった。また加熱養生後は、50%引張応力が20N/cm
2と、初期養生後と変化が少なく良好であった。さらに、50℃14日間貯蔵した主剤を用いると、可使時間が3〜4時間と長く、24時間後の硬度が26と初期の主剤を用いての硬度との変化が少なく、また加熱養生後は、50%引張応力が20N/cm
2、最大荷重時の伸び率は310%と、初期養生後との変化が少なく、貯蔵安定性良好であった。
【0084】
実施例
1は、可使時間が3〜4時間と長い一方、24時間後の硬度が15と硬度発現性良好であった。また加熱養生後は、50%引張応力が12N/cm
2と、初期養生後と変化が少なく良好であった。