特許第6094957号(P6094957)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6094957
(24)【登録日】2017年2月24日
(45)【発行日】2017年3月15日
(54)【発明の名称】シール転写具およびシールテープ
(51)【国際特許分類】
   B65H 35/07 20060101AFI20170306BHJP
   B43L 19/00 20060101ALI20170306BHJP
【FI】
   B65H35/07 D
   B43L19/00 H
【請求項の数】5
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2012-243133(P2012-243133)
(22)【出願日】2012年10月18日
(65)【公開番号】特開2014-80285(P2014-80285A)
(43)【公開日】2014年5月8日
【審査請求日】2015年7月31日
(73)【特許権者】
【識別番号】000109037
【氏名又は名称】ダイニック株式会社
(72)【発明者】
【氏名】堀 芳行
(72)【発明者】
【氏名】雨森 和彦
(72)【発明者】
【氏名】豊田 幹夫
【審査官】 藤井 眞吾
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−307211(JP,A)
【文献】 実開平05−013799(JP,U)
【文献】 特開昭62−218363(JP,A)
【文献】 特開平08−193182(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65H 35/07
B43L 19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
離型シート上に所定の間隔で保持されたシールを剥離し、押圧ローラーにより被転写体に転写するシール転写具であって、
シール基材と粘着層とからなるシールを所定間隔で連続的に粘着層面が離型シートと接するように保持させたシールテープを巻き回した巻き出しボビンと、
シールを離型シートから剥離する離型シート面を接触させた剥離用突起と、
剥離用突起により剥離したシールを被転写体に転写させる押圧ローラーと、
離型シートを巻き取る巻き取りボビンと、
巻き出しボビンと巻き取りボビンとを連結するベルトを備え、
唯一被転写体と接する押圧ローラーを被転写体に押し当てることにより、該ローラーを回転させ、シールを被転写体に転写する
巻き出しボビンと剥離用突起との間に、押圧ローラーと、シールテープを介して接触する被押圧突起を設けることを特徴とするシール転写具。
【請求項2】
被押圧突起を回転するローラーとすることを特徴とする請求項のシール転写具。
【請求項3】
押圧ローラーの JIS K6253−3 によるタイプAデュロメータ硬さが、100以下であることを特徴とする、請求項1−のシール転写具。
【請求項4】
曲げ反発性差 = A − B
(式中、
A =(シールのJIS L1096 A法 剛軟度 ガーレ法 による曲げ反発性)
B =(離型シートのJIS L1096 A法 剛軟度 ガーレ法 による曲げ反発性))
で求められる曲げ反発性差が、
−1.0mNから1.9mNであるシールテープを装着使用することを特徴とする請求項のシール転写具。
【請求項5】
離型シート上に所定の間隔で保持されたシールを剥離し、押圧ローラーにより被転写体に転写するシール転写具に装填使用されるシールテープであって、
曲げ反発性差 = A − B
(式中、
A =(シールのJIS L1096 A法 剛軟度 ガーレ法 による曲げ反発性)
B =(離型シートのJIS L1096 A法 剛軟度 ガーレ法 による曲げ反発性))
で求められる曲げ反発性差が、
−1.0mNから1.9mNであることを特徴とするシールテープ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、文字や符号や図柄等を表し粘着層を設けたシールを紙など任意の被転写体に転写することのできるシール転写具であって、特にコンパクトで意匠性に優れたシール転写具に関する。
【背景技術】
【0002】
離型シートからシールを剥離し押え部材を使用してシールを被転写体に転写し、離型シートを巻き取る機構は知られている。(特許文献1)
【0003】
また、携帯性を有しかつ、手動でシールを被転写体に転写できるシール転写具が知られている。(特許文献2)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】 実公昭47−001438号 公報
【特許文献2】 特開2004−307211号 公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1のシール貼着装置は、離型シートを巻き取る巻き取り部とシールの押え部材と案内部材とを被転写体に押し当て手動で回転させることにより、シール転写を行うものであるため、転写具自体が大きくなるとともに、転写するシールを被印字体の所望の位置に転写するのが難しいなどの欠点があった。
【0006】
また、特許文献2のシール転写具は携帯性はあるものの、離型シートからシールだけを確実に分離し押圧ローラーだけが被転写体に接してシールを転写することは難しく、またシールテープのシールとシールの間の離型シートだけが存在する部分に押圧ロールが接すると、離型シート自体の滑りやすさにより押圧ローラーと被転写体との間でスリップを生じて走行不良が発生し、シール転写具とするには不十分であった。
【0007】
本発明は、上記問題点に鑑み、離型シート上に所定の間隔で保持されたシールを剥離分離し、押圧ローラーにより所望の被転写体の位置に確実に転写できるコンパクトなシール転写具と、それに用いるシールテープを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、課題を解決するために鋭意研究した結果、シールテープを巻き回した巻き出しボビン、シールを剥離する剥離用突起、シールを被転写体に転写する押圧ロール、離型シートを巻き取る巻き取りボビン、巻き出しボビンと巻き取りボビンの駆動同期をとるボビン間ベルトを基本構成とする構成体からなるシール転写具とこの機構を満足させるシールテープを備えることにより優れた発明となることを見出した。
【0009】
即ち、請求項1の発明は、離型シート上に所定の間隔で保持されたシールを剥離し、押圧ローラーにより被転写体に転写するシール転写具であって、シール基材と粘着層とからなるシールを所定間隔で連続的に粘着層面が離型シートと接するように保持させたシールテープを巻き回した巻き出しボビンと、シールを離型シートから剥離する離型シート面を接触させた剥離用突起と、剥離用突起により剥離したシールを被転写体に転写させる押圧ローラーと、離型シートを巻き取る巻き取りボビンと、巻き出しボビンと巻き取りボビンとを連結するベルトを備え、唯一被転写体と接する押圧ローラーを被転写体に押し当てることにより、該ローラーを回転させ、シールを被転写体に転写する、巻き出しボビンと剥離用突起との間に、押圧ローラーと、シールテープを介して接触する被押圧突起を設けることを特徴とするシール転写具である。
請求項は、被押圧突起を、回転するローラーとすることを特徴とするシール転写具に関するものである。
請求項は、押圧ローラーのJIS K6253−3 によるタイプAデュロメータ硬さが100以下であることを特徴とするシール転写具に関するものである。
請求項は、曲げ反発性差 = A − B
(式中、A=(シールのJIS L1096 A法 剛軟度 ガーレ法 による曲げ反発性)B=(離型シートのJIS L1096 A法 剛軟度 ガーレ法による曲げ反発性))
で求められる曲げ反発性差が、−1.0mNから1.9mNであるシールテープを装着使用することを特徴とするシール転写具に関するものである。
請求項は、離型シート上に所定の間隔で保持されたシールを剥離し、押圧ローラーにより被転写体に転写するシール転写具に装填使用されるシールテープであって、
曲げ反発性差 = A − B
(式中、A=(シールのJIS L1096 A法 剛軟度 ガーレ法 による曲げ反発性)B=(離型シートのJIS L1096 A法 剛軟度 ガーレ法 による曲げ反発性))
で求められる曲げ反発性差が、−1.0mNから1.9mNであることを特徴とするシールテープに関するものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明のシール転写具を利用することにより、文字や図柄や写真などが施されたシールを、被転写体に確実に転写することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の一実施形態を示すシール転写具
図2】本発明の別の一実施形態を示すシール転写具
図3】本発明の別の一実施形態を示すシール転写具
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照しつつ、本発明を詳細に説明する。なお、各図に記載した符号はいずれも共通もしくは同等の構成体を示している。
【0013】
図1.は、本発明の一実施形態に係るシール転写具カセットで、押圧ローラー4を被転写体に押し当て←方向(転写具走行方向)に移動させることにより、シール3をシール転写具カセットの内壁方向に位置するようにシールテープ巻き出しボビン1に巻き回されたシールテープ2が、ガイドビン10(本図ではガイドピンを3か所とした。ガイドピンの数や位置は時に限定されないが、押圧ローラー4近傍にあればより好ましい。)を経由して移動し、剥離用突起5によりシール3が離型シート6から剥離し、押圧ローラー4側に粘着層面を外側にして移動し、被転写体との圧着によりシールが被転写体に転写される。転写された後の離型シート6は離型シート巻き取りボビン7に巻き取られる。押圧ローラー4の回転により発生した駆動はベルト8によってシールテープ巻き出しボビン1と離型シート巻き取りボビン7との間に伝達される。
【0014】
図2.は、本発明の別の一実施形態に係るシール転写具カセットで、巻出しボビン1と剥離用突起5との間に、押圧ローラー4とシールテープを介して接触する被押圧突起9を設けることにより、走行するシールテープの蛇行やしわ発生を防ぎ、剥離用突起部分でのシールの離型シートからの剥離を安定して行うことができるようにしたものである。
【0015】
被押圧突起9の形状としては、シールテープと接する部分が板状や曲面状など押圧ローラーとシールテープを介して接触できる突起を有しておればよく、ガイドピンのような円柱状の形状でもよい。回転ローラーとすると、シールテープの走行がさらに安定するためより好ましい。
【0016】
図3.は、本発明の別の一実施形態に係るシール転写具カセットで、図1.と図2.とを組み合わせたような構成体で、押圧ローラー4と被押圧突起9を備えかつ、押圧ローラー4近傍にガイドピン10を配置したものである。
【0017】
押圧ローラーに使用する素材としては、一般のプラスチックやゴム素材が使用でき、スチレン−エチレン−ブテン−スチレン共重合体(SEBS)、スチレン−エチレン−プロピレン−スチレン共重合体(SEPS)、スチレン−エチレン−エチレン−プロピレン−スチレン共重合体(SEEPS)、部分水添スチレン−ブタジエン−スチレン共重合体(SBBS)、スチレン−イソブチレン−スチレン共重合体(SIBS)、スチレン−ブタジエン−スチレン共重合体(SBS)、スチレン−イソプレン−スチレン共重合体(SIS)などのスチレン共重合体やポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体ゴムや各種エラストマーやシリコーン変成した樹脂やゴムなどを適宜選択して使用することができるが、シールの被粘着層面が押圧ローラーと接触するため、剥離用突起から押圧ローラーへのシールの転写が安定して行える素材として、特定の硬さを有する素材が好ましい。
【0018】
以下に、本発明の実施の形態のうち、押圧ローラーのタイプAデュロメータ硬さや、シールや離型シートの曲げ反発性などによる試験結果の一部を示した。本発明はこの試験例中の実施例に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【0019】
表1.に 押圧ローラーのJIS K6253−3 によるタイプAデュロメータ硬さとシールの被転写体への転写性などの結果を示した。
【0020】
【表1】
【0021】
表1.において、被押圧突起の状態は、T1被押圧突起、回転ローラーなし(図1.)T2被押圧突起としてガイドピンを設置(図2.)T3回転ローラーを設置(図2.)T4被押圧突起が回転ローラーで近傍にガイドピンを設置(図3.) を示している。
【0022】
タイプAデュロメータ硬さは、押圧ローラーに使用する材質をJIS K6253−3 により測定した結果である。
【0023】
シールの転写状態は、シールが押圧ローラーを介して被転写体に転写する状態を目視及び走行感覚で判定したもので、◎は、転写時シールに全くシワ発生も転写不良もなく被転写体に転写する。○は、シールが被転写体に転写する。×は、転写時シールにシワか転写不良が発生し転写が悪い。 を示している。
【0024】
表1.の試験例1−12においてはシールの曲げ反発性が2.2mNで離型シートの曲げ反発性が1.6mNのシールテープを使用した結果を示した。シールの曲げ反発性は1.6mNで離型シートの曲げ反発性が1.6mN、シールの曲げ反発性は5.0mNで離型シートの曲げ反発性が4.9mNのシールテープでも試験を行ったが試験例1−12と同様の結果を示した。また、シールの曲げ反発性が2.2mNで離型シートの曲げ反発性が4.9mNでも本試験例12の条件ではシールの転写状態は○のレベルであった(表1への記載なし)。
【0025】
表1.の結果から、試験例1では、被押圧突起がなくてもシールテープの被印字体への転写を行えることがわかる。被押圧突起としてガイドピンを設置した試験例2では、優れた転写性を示す。試験例3−11は、被押圧突起を回転ローラーとしたもので、押圧ローラーに使用する材質のタイプAデュロメータ硬さの数値によってシールの転写状態に変化を生じることがわかる。さらに、試験例12も優れた転写性を示すことがわかる。このように、試験例11が比較例で、その他の試験例は実施例である。
【0026】
タイプAデュロメータ硬さが5である試験例3であっても押圧ローラーを被転写体に押し当て転写は可能である。一方、タイプAデュロメータ硬さが100より大きい試験例11では押圧ローラーが硬すぎるため、シールの転写時に被転写体との間ですべりが発生し、被転写体の表面に凹凸があると粘着層部分に空気による浮きなども発生しやすくなるなど転写不良が発生する。押圧ローラーのタイプAデュロメータ硬さが100以下だと優れたシールの転写性能を有することがわかる。
【0027】
押圧ローラーは、タイプAデュロメータ硬さが100以下であれば材質を適宜選択して使用可能であるが、指触により明らかに粘着性を有する押圧ローラーを使用すると、経時的に押圧ローラー部にゴミが付着するなどして転写性に支障をきたすため粘着性を有しない材質であることが好ましい。
【0028】
表2.に本発明のシール転写具に使用するシールテープに関連した曲げ反発性や曲げ反発性差を示した。
【0029】
【表2】
【0030】
表2.の中で、A=(シールのJIS L1096 A法 剛軟度 ガーレ法 による曲げ反発性)を示し、B=(離型シートのJIS L1096 A法 剛軟度 ガーレ法 による曲げ反発性)を示し、また、曲げ反発性差 = A − B として記載した。
【0031】
剥離性・触感において、◎は、剥離用突起部分でシールが離型シートから問題なく剥がれかつ、押圧ローラーを介して被転写体にシールが転写できるし、シールやシールテープ全体が柔らかくシールの剥離用突起から剥離後の押圧ローラーへの転移もスムーズである。○は、剥離用突起部分でシールが離型シート剥がれかつ、押圧ローラーを介して被転写体にシールが転写できる。×は、剥離用突起部分でシールが離型シートから剥がれにくかったり、簡単に剥がれて押圧ローラーへの移動ができなかったり、押圧ローラーを介して被転写体にシールが転写する際に転写がしにくかったりして、結果として転写不良を発生するものである。
【0032】
本試験例101−109は、タイプAデュロメータ硬さが65の押圧ローラーの使用結果を示したが、タイプAデュロメータ硬さが36の押圧ローラーでも同様の結果が得られた。
【0033】
Aに示したシールのJIS L1096 A法 剛軟度 ガーレ法 による曲げ反発性。表面に印刷を施した12μmポリエステルフィルムの非印刷面に、20μmのアクリル系粘着剤処理を行いシールとし、この反発性を測定した結果16mNであった。同様にして、16μmポリエステルフィルムで23μmのアクリル系粘着剤処理が2.2mN、36μmポリエステルフィルムで30μmのアクリル系粘着剤処理が5.0mN、50μmコート紙で30μmのアクリル系粘着剤処理が7.8mNであった。
【0034】
Bに示した離型シートのJIS L1096 A法 剛軟度 ガーレ法 による曲げ反発性。6.0μmポリエステルフィルムの表面に、0.1μmのシリコン系樹脂による離型処理を行い離型シートとし、この反発性を測定した結果0.2mNであった。同様にして、16μmポリエステルフィルムの表面に1.0μmのシリコン系樹脂による離型処理で1.0mN、25μmポリエステルフィルムの表面に1.0μmのシリコン系樹脂による離型処理で1.6mN、36μmポリエステルフィルムの表面に2.0μmのシリコン系樹脂による離型処理で3.0mN、50μmのグラシン紙に離型処理を施したもので4.9mN、75μmのグラシン紙に離型処理を施したもので7.5mNであった。
【0035】
表2.の結果から、シール及び離型シートの曲げ反発性が小さく曲げ反発性差のない試験例101では優れた剥離性・触感を有していることが分かる。また、シールの曲げ反発性が2.2mNであっても剥離シートの曲げ反発性の値のよって剥離性・触感に差生じ、曲げ反発性差が−1.0mNから1.9mNの範囲であると優れた剥離性・触感となることが試験例102−107の結果からわかる。さらにシールの曲げ反発性が5.0mNの試験例108や、7.8mNの試験例109では曲げ反発性差が−1.0mNから1.9mNの範囲のため優れた剥離性・触感となることがわかる。このように、曲げ反発性差が−1.0mNから1.9mNの範囲から外れる試験例102、103、107が比較例でその他が実施例となる。
【0036】
表2.のシールテープを、タイプAデュロメータ硬さが100以下の押圧ローラーとともに使用すると、曲げ反発性差 = A − B が−1.0mNから1.9mNの範囲内である限りシールの被転写体への転写は可能であった。
【0037】
−1.0mNより小さいと離型シートからシールが剥離しにくくなり結果として転写不良の問題が発生し、1.9mNより大きいと離型シートからシールが剥がれやすくなるため被転写体への転写以前で剥がれてしまい走行不良などを生じ結果として転写不良の問題が生じるため、−1.0mNから1.9mNであることが好ましい。シールテープを実際の転写具に装着するにあたって、A−Bがこの範囲であれば剥離性・触感に問題はないが、シールテープ全体の厚みが厚いとシール転写具自体の形状が大きくなったり、収納長さが少なくなったりして、製品としてのコスト競争力に欠けるなど問題を生じることになるため、シールの厚みが12−70μm、離型シートの厚みが16−50μmであるのがより好ましい。
【0038】
これにより、シール転写具として片手で簡単に転写できる大きさで、生産組立が容易で、転写不良を発生しない優れた転写性能が、本発明により明らかになったものである。
【0039】
また、シールと離型シートとからなるシールテープにおいて、シールを離型シートから剥がす状態を考えると、シールや離型シートが薄すぎたり、もしくは厚すぎたりすると剥がす作業がきわめて難しくなる。シールの粘着層と離型シートの離型剤層との界面での剥離力以前に曲げ反発性差が、シールテープ転写具には重要な要素となることを見いだしたものである。表2.に示したように、曲げ反発性差 = A − B が−1.0mNから1.9mNの範囲内のシールテープにより優れた転写性能を有するシール転写具となり得ることを初めて明らかにしたものである。
【0040】
本発明に使用する押圧ローラー、巻き出しボビン、巻き取りボビン間の駆動伝達機構としては、スリップトルクを利用して離型シートの巻き取りに異常が生じないようにできるため、ベルトの使用が好ましい。
【0041】
シールに使用する基材には、印刷やインクジェットによる印字などで適宜模様や柄をつけることができ、基材の材質としても紙やフィルムなど用途に合わせて適宜選択することができ、曲げ反発性を低くするため、PETやPPなどのフィルムを使用できる。さらに、粘着層についても曲げ反発性を考慮して用途や目的に合わせ、合成樹脂などを選択する。離型シートに使用する材質である紙やフィルム、上面に塗布する塗布材料も、曲げ反発性を考慮した上で用途や目的に合わせて適宜選択することができる。
【0042】
剥離用突起の形状や材質は、離型シートからシールが剥がれれば特に限定されない。
【0043】
シール転写具には、被転写体と接する押圧ロールが非使用時に汚れなどの障害を発生させないため、蓋を設置するのが好ましい。本発明による転写具は、使用するシールテープ自体で転写性に優れた材料とすることができるため、少ない部材でコンパクトかつ文具や工業製品用など用途に合わせた意匠性をもたせることができ、蓋と一体化させることにより一層意匠性に優れたものとなる。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明のシール転写具は、シールに図柄やキャラクターを付加することにより、文具や玩具などに使用できる他、磁気やホログラム処理等を行ったシールの使用により改ざん防止のマークなど情報関連やセキュリティー用途、注意や警告を示すシールとして工業用途などに幅広く利用できる。
【符号の説明】
【0045】
1 シールテープ巻き出しボビン
2 シールテープ
3 シール
4 押圧ローラー
5 剥離用突起
6 離型シート
7 離型シート巻き取りボビン
8 ベルト
9 被押圧突起(回転ローラー)
10 ガイドピン
図1
図2
図3