(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6094977
(24)【登録日】2017年2月24日
(45)【発行日】2017年3月15日
(54)【発明の名称】裁縫機械および前記裁縫機械を用いて少なくとも2つの重なり合う布端を縫い合わせるためのプロセス
(51)【国際特許分類】
D05B 1/20 20060101AFI20170306BHJP
D05B 73/12 20060101ALI20170306BHJP
【FI】
D05B1/20 B
D05B73/12
【請求項の数】9
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2014-544005(P2014-544005)
(86)(22)【出願日】2012年11月21日
(65)【公表番号】特表2014-533601(P2014-533601A)
(43)【公表日】2014年12月15日
(86)【国際出願番号】IB2012056593
(87)【国際公開番号】WO2013080094
(87)【国際公開日】20130606
【審査請求日】2015年5月8日
(31)【優先権主張番号】MI2011A002188
(32)【優先日】2011年11月30日
(33)【優先権主張国】IT
(73)【特許権者】
【識別番号】509082330
【氏名又は名称】サントーニ エス.ピー.エー.
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【弁理士】
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123995
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 雅一
(74)【代理人】
【識別番号】100148596
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 和弘
(72)【発明者】
【氏名】ロナティ, ティベーリオ
【審査官】
山本 杏子
(56)【参考文献】
【文献】
特表2000−513260(JP,A)
【文献】
特開昭62−164489(JP,A)
【文献】
米国特許第03885509(US,A)
【文献】
特開平10−118362(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05B 1/00−97/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つ以上の布製品に属する少なくとも2つの重なり合う布端(3a、3b)を縫い合わせるためのオーバーロックカットアンドソータイプの裁縫機械であって、
裁縫ステッチ(10a、10b、10c)を形成するためにスライドしている1つ以上の布製品の少なくとも2つの重なり合う布端(3a、3b)を支持するのに適した針プレート(2)であり、前記針プレート(2)には、縫針(5)を通過させるためのそれぞれの座部(4)を規定する貫通開口と、前記裁縫ステッチ(10a、10b、10c)のためのスライドライン(7)を規定する少なくとも1つの側部付属体(6)とが設けられる、針プレート(2)と、
下側クローシェ編みかぎ針(14)と、
上側クローシェ編みかぎ針(15)と、
裁縫作業中に前記重なり合う布端(3a、3b)を前記針プレート(2)に対して前進方向に沿って前進させるのに適した前進装置と、
前記布端(3a、3b)の前記前進方向に沿う前記側部付属体(6)の上流側で且つ前記側部付属体の近傍で、前記重なり合う布端(3a、3b)を前記布製品の切断ライン(20)に対応させて切断するための装置(12)と、
縫糸(10)を前記裁縫機械の前記縫針(5)へ供給するのに適した少なくとも1つの針用糸供給器(13)と、
前記上側クローシェ編みかぎ針(15)と前記下側クローシェ編みかぎ針(14)の少なくともどちらか一方へ結糸(17)を供給するのに適した少なくとも1つの結糸供給器(16)と、
前記上側クローシェ編みかぎ針(15)および/または前記下側クローシェ編みかぎ針(14)からの結糸(17)の引き伸ばし装置(18)と、
少なくとも1つの縫針支持装置(11)と、を少なくとも備える裁縫機械において、
前記縫針支持装置(11)に取り付けられる少なくとも3本の縫針(5)を備え、これらの縫針が相互に側面に配置されて互いに対して位置合わせされるとともに、前記縫針にはそれぞれの縫糸(10)が供給され、前記縫針(5)が、前記重なり合う布端(3a、3b)を縫い付けるために前記針プレート(2)の前記座部(4)を通過するのに適しており、前記針プレート(2)には、前記縫針(5)を通過させるための少なくとも3つの前記座部(4)が設けられ、前記縫針(5)を通過させるための前記座部(4)のそれぞれが、少なくとも1つの対応する縫針によって交差されるように構成され、前記針プレート(2)には、互いから相互に離れた別個の少なくとも3つの前記裁縫ステッチ(10a、10b、10c)を平行に形成できるように、前記縫針(5)を通過させるための前記座部のそれぞれを、前記縫針(5)を通過させるための隣り合う座部(4)から少なくとも部分的に分離するのに適したそれぞれの分離部(8)が、少なくとも前記縫針(5)の通過領域(9)に設けられ、前記側部付属体(6)および前記分離部(8)の全てが、前記針プレート(2)の近傍で前記下側クローシェ編みかぎ針(14)の通過を可能にするために、下方に向けて先細ることを特徴とする裁縫機械。
【請求項2】
前記縫針(5)を通過させるための前記座部(4)のそれぞれは、単一の対応する縫針が通過できるような寸法にされて構成されることを特徴とする、請求項1に記載の裁縫機械。
【請求項3】
前記縫針(5)を通過させるための前記座部(4)が、前記分離部(8)により、前記座部(4)の延在部の全体にわたって互いから完全に分離され、および/または、互いに完全に別個の貫通開口によって規定されることを特徴とする、請求項1または2に記載の裁縫機械。
【請求項4】
前記縫針(5)が、軸線間により規定される1.4〜2.8mmまたは1.5〜2.5mmまたは1.6〜2.0mmの相互距離で前記縫針支持装置(11)に取り付けられ、および/または前記縫針(5)が、隣り合う縫針(5)間の距離を等しくして前記縫針支持装置(11)に相互に等間隔に取り付けられることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の裁縫機械。
【請求項5】
前記側部付属体(6)の前記スライドライン(7)が、少なくとも前記縫針(5)の前記通過領域(9)と前記側部付属体(6)の前端部との間に延びる区域で、または、前記側部付属体の延在部の全体にわたって、前記側部付属体(6)の一般的な長手前進方向および/または前記布端(3a、3b)のスライド方向を横断する直線形態を成す、請求項1〜4のいずれか一項に記載の裁縫機械。
【請求項6】
前記側部付属体(6)が、前記針プレート(2)の上側載置面を貫通する平面内で測定される2mm未満または1mm未満または0.5mm未満の厚さを有する狭い端部を持つ前部を有するとともに、前端部の反対側に、側部付属体の長手方向延在部を横断する4mm〜7mmまたは5mm〜6.5mmまたは5.5〜6mmの厚さを持つ後側ベース部を有する、請求項1〜5のいずれか一項に記載の裁縫機械。
【請求項7】
前記側部付属体(6)が、前記縫針(5)の前記通過領域(9)に、前記側部付属体の長手方向延在部を横断する3mm〜6mmまたは4mm〜5.5mmまたは4.2〜5mmの厚さを有し、または、前記横断する厚さが、3mmよりも大きく、または、3.5mmよりも大きく、または、4mmよりも大きく、または、4.2mmよりも大きい、請求項1〜6のいずれか一項に記載の裁縫機械。
【請求項8】
前記縫針支持装置(11)に取り付けられる4本の前記縫針(5)が備えられ、前記針プレート(2)には、前記縫針(5)を通過させるための4つの前記貫通開口が設けられる、請求項1〜7のいずれか一項に記載の裁縫機械。
【請求項9】
オーバーロックカットアンドソー機械(1)を用いて少なくとも2つの重なり合う布端(3a、3b)を縫い合わせるためのプロセスであって、
少なくとも2つの前記重なり合う布端(3a、3b)をオーバーロックカットアンドソータイプの裁縫機械(1)の針プレート(2)に対応させて配置するステップであって、縫針(5)を通過させるために、前記針プレート(2)には座部(4)を規定する互いに別個の少なくとも3つの開口と、裁縫ステッチ(10a、10b、10c)のためのスライドライン(7)を規定する少なくとも1つの側部付属体(6)とが設けられる、ステップと、
前記座部(4)のそれぞれを単一の対応する前記縫針(5)が通過できるような寸法にして構成する、ステップと、
前記針プレート(2)に、前記縫針(5)を通過させるための前記座部のそれぞれを、隣り合う前記座部(4)から分離するのに適したそれぞれの分離部(8)が設けられる、ステップと、
前記側部付属体(6)および前記分離部(8)の全てが、前記針プレート(2)の近傍で下側クローシェ編みかぎ針(14)の通過を可能にするために、下方に向けて先細る構成にする、ステップと、
前記布端(3a、3b)を前記針プレート(2)に対して前進させるステップと、
前記布端(3a、3b)の側部を漸進的に切断するステップと、
少なくとも3本の相互に側面に配置される前記縫針(5)が前記布端(3a、3b)を互いに縫い合わせるように、それぞれの縫糸(10)が供給される少なくとも1つのそれぞれの縫針を、前記縫針(5)を通過させるための前記3つの開口のそれぞれに通すステップであって、少なくとも1つの下側クローシェ編みかぎ針(14)および少なくとも1つの上側クローシェ編みかぎ針(15)と協働して、少なくとも3つの別個の裁縫ステッチ(10a、10b、10c)を実現し、前記クローシェ編みかぎ針の少なくとも一方に結糸(17)が供給される、ステップと、を少なくとも備えるプロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、1つ以上の布(textile)製品に属する少なくとも2つの重なり合う布端(flap of textile)を縫い合わせるための「オーバーロック」「カットアンドソー」タイプの裁縫機械に関する。また、本発明は更に、オーバーロックカットアンドソータイプの裁縫機械を用いて少なくとも2つの重なり合う布端を縫い合わせるためのプロセスに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、「オーバーロック」「カットアンドソー」裁縫機械は、例えば関連する取扱説明書および2006年11月のカタログ103XQA−GRに記載されるような、9Mシリーズのモデルのうちの1つにおけるUNION SPECIAL(登録商標)によるタイプの製品などの機械となり得る。
【0003】
オーバーロックとして、あるいはオーバーエッジとしても知られるタイプのステッチは、それ自体、当該技術分野において幅広く知られており、したがって、本明細書では更に詳しく説明されない。周知のように、このタイプの裁縫機械は、多くの用途において使用することができ、そのような用途のうちの1つが女性用タイツなどの軽量布製品の裁縫である。これらの裁縫機械は、特に、複数の布製品が互いに組み付けられる(例えば、パンティーストッキングとして知られる単一の布製品を形成するための2つの管状ストッキング脚の組み付け)、布製品を自動的に組み付けるための既知の機械の構成要素として適用できる。
【0004】
布製品のこれらの組み付け機械の分野において、オーバーロックカットアンドソータイプの裁縫機械は、オペレータによる介入を何ら伴うことなく、適切な縫針と「クローシェ」として知られる既知のタイプの要素とを移動させることによって、少なくとも2つの布端の切断を完全に自動で行う。周知のように、2つの布端が互いに重ね合わされて縫い付けられるオーバーロックカットアンドソータイプの裁縫機械によって実現されるタイプの縫い物は、ある場合には、製品の最適な使用のために過度な厚さを有する可能性があり、したがって、製品の着用者にとって審美的に魅力がなく、心地よくない可能性がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この既知のタイプの裁縫機械の一例は、特定の針プレートと2つの針とを有するオーバーエッジタイプの裁縫機械を例示する米国特許出願公開第3,079,882号明細書(Washburn)に記載されており、同明細書の内容は、裁縫ステッチの形成の説明に関して、参照により本明細書に組み入れられると見なされるべきである。
【0006】
この機械により実現される2ステッチ裁縫は、2つの布端の効果的な縫い付けを可能にするが、ある特定の用途において、例えばタイツ、一般的には軽量布の裁縫においては過度に厚く、これに関しては、レリーフにおけるステッチングの存在が厄介になる可能性がある。
【0007】
オーバーエッジタイプの裁縫機械の更なる例は、針用の2つの通過座部を有する針プレートと協働する3本の縫針を備え、第1の針が関連する座部内を通過し、残りの2本の針がもうひとつの共通の座部内を通過するようになっている機械について記載する、米国特許出願公開第3,885,509号明細書(Cox)において例示される。この解決策は、厚さが薄く且つ同様に効率が良いステッチングを得ようとする試みにおいて提案されているが、結果は部分的にしか満足できない。
【0008】
提案されてきた第3の解決策は米国特許第6,167,825号明細書(Marchetti)に例示されており、同明細書において、オーバーロックタイプの裁縫機械には、2本の縫針と、側部付属体を有する針プレートとが備えられ、側部付属体は、略平行な面を伴う第1の部分と、狭い第2の部分とを有する。この特許の内容は、繊維機械の構造および裁縫ステッチの形成の説明に関して、参照により本明細書に組み入れられると見なされるべきである。
【0009】
そのような解決策は、その後に更に良好に引き伸ばすことができて、2つの縫い付けられた布端をより良く分離させ、したがって、厚さが薄い縫い目を有する「オーバーロック」ステッチングを得ることができるようにすることを目的としていた。この解決策も欠点を伴う。これは、第1の平行な位置の存在が裁縫ステッチのスライドを妨げる可能性があるからであり、また、特許に例示される針プレートの形態が2つの布端の接合ポイントであまりきつくないステッチを定めるからであり、これは、特に軽量布の場合には、幾つかのポイントでステッチングに開口が現れるというリスクを伴い、審美的および機能的な欠点を伴う。
【0010】
本発明の目的は、前述した欠点のうちの1つ以上を取り除くことである。
【0011】
本発明の目的は、高品質で且つ欠陥が実質的にない布製品を実現するなどのために、重なり合うとともに1つ以上の布製品に属する少なくとも2つの布端を縫い合わせることができるオーバーロックカットアンドソータイプの裁縫機械を提供することである。
【0012】
本発明の更なる目的は、生産廃物を減らすことができるオーバーロックカットアンドソータイプの裁縫機械を提供することである。
【0013】
本発明の更なる目的は、2つの布端間の接合ポイントで高品質の完全に「閉じられた」裁縫を得ることができるオーバーロックカットアンドソータイプの裁縫機械を提供することである。
【0014】
本発明の更なる目的は、既知のステッチによる縫い目に対して更に幅広く、および/または更に平坦な裁縫効果を達成するように制御して拡張できるステッチによる縫い目を得ることができるオーバーロックカットアンドソータイプの裁縫機械を提供することである。
【0015】
本発明の更なる目的は、生産される様々な物品の範囲内で高度な均一性を有する生産物を得ることができるオーバーロックカットアンドソータイプの裁縫機械を提供することである。
【0016】
本発明の更なる目的は、ステッチによる縫い目を簡単に、素早く、自動的に得ることができ、特に布製品の組み付け用の自動機械に組み込むこともできるオーバーロックカットアンドソータイプの裁縫機械を提供することである。
【0017】
本発明の更なる目的は、既知のタイプの裁縫機械に関する適度な変更の観点でも、簡単で、頑丈であり、経済的に製造できるオーバーロックカットアンドソータイプの裁縫機械を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
更に、以下の説明の過程においてより良く明らかになるこれらの目的および他の目的は、実質的に、添付の特許請求項に係るオーバーロックカットアンドソータイプの裁縫およびその使用のためのプロセスにより、これらを互いに任意に組み合わせて、および/または本明細書中の以下で示される態様のうちの1つ以上を伴って、達成される。
【0019】
単独で、あるいは、特許請求項または以下に示される態様のうちのいずれか1つと組み合わせて解釈される一態様において、本発明は、更に、添付の特許請求項または示される態様のうちのいずれか1つに係る裁縫機械に関し、上側クローシェに結糸が供給され、下側クローシェには結糸が供給されず、したがって、下側クローシェが「ブラインド」であり、あるいは、下側クローシェに結糸が供給され、上側クローシェには結糸が供給されず、したがって、上側クローシェが「ブラインド」であり、あるいは、上側クローシェおよび下側クローシェの両方に結糸が供給される。
【0020】
単独で、あるいは、特許請求項または以下に示される態様のうちのいずれか1つと組み合わせて解釈される更なる態様において、本発明は、更に、添付の特許請求項または示される態様のうちのいずれか1つに係る裁縫機械に関し、縫針を通過させるための座部のうちの少なくとも1つは、2本の隣り合う縫針が通過できるような寸法にされて構成される。
【0021】
単独で、あるいは、特許請求項または以下に示される態様のうちのいずれか1つと組み合わせて解釈される更なる態様において、本発明は、更に、添付の特許請求項または示される態様のうちのいずれか1つに係る裁縫機械に関し、裁縫機械は、少なくとも2つの分離部を備え、または、分離部はそれぞれ、少なくとも0.6mmまたは少なくとも0.8mmまたは少なくとも1mmの厚さを有する。
【0022】
単独で、あるいは、特許請求項または以下に示される態様のうちのいずれか1つと組み合わせて解釈される更なる態様において、本発明は、更に、添付の特許請求項または示される態様のうちのいずれか1つに係る裁縫機械に関し、分離部は、布端の前進方向に沿う少なくとも0.5cm、または、少なくとも1cm、または、少なくとも1.5cmの長手方向延在部を有する。
【0023】
単独で、あるいは、特許請求項または以下に示される態様のうちのいずれか1つと組み合わせて解釈される更なる態様において、本発明は、更に、添付の特許請求項または示される態様のうちのいずれか1つに係る裁縫機械に関し、針プレートが金属材料から形成され、また、座部を規定する開口が針プレートの溝切削によって実現される。
【0024】
単独で、あるいは、特許請求項または以下に示される態様のうちのいずれか1つと組み合わせて解釈される更なる態様において、本発明は、更に、添付の特許請求項または示される態様のうちのいずれか1つに係る裁縫機械に関し、分離部は、針プレートに取り付けられる要素を対応する取り付け座部で分離することによって規定される。
【0025】
単独で、あるいは、特許請求項または以下に示される態様のうちのいずれか1つと組み合わせて解釈される更なる態様において、本発明は、更に、添付の特許請求項または示される態様のうちのいずれか1つに係る裁縫機械に関し、側部付属体のスライドラインは、少なくとも縫針の通過領域と側部付属体の端部との間に延びる区域で、または、側部付属体の延在部の全体にわたって、側部付属体の一般的な長手進行方向および/または布端のスライド方向を横断する略湾曲される形態を成す。
【0026】
単独で、あるいは、特許請求項または以下に示される態様のうちのいずれか1つと組み合わせて解釈される更なる態様において、本発明は、更に、添付の特許請求項または示される態様のうちのいずれか1つに係る裁縫機械に関し、略湾曲形態は略凹状であり、あるいは、略湾曲形態は略凸状である。
【0027】
単独で、あるいは、特許請求項または以下に示される態様のうちのいずれか1つと組み合わせて解釈される更なる態様において、本発明は、更に、添付の特許請求項または示される態様のうちのいずれか1つに係る裁縫機械に関し、上側クローシェおよび/または下側クローシェからの結糸の引き伸ばし装置は、縫針支持装置と同期して振動する引き伸ばしブレードである。
【0028】
単独で、あるいは、特許請求項または以下に唆される態様のうちのいずれか1つと組み合わせて解釈される更なる態様において、本発明は、更に、添付の特許請求項または示される態様のうちのいずれか1つに係る裁縫機械に関し、裁縫機械は、自動式であり、および/または布製品を組み付けるための機械に組み込まれる。
【0029】
単独で、あるいは、特許請求項または以下に唆される態様のうちのいずれか1つと組み合わせて解釈される更なる態様において、本発明は、更に、添付の特許請求項または示される態様のうちのいずれか1つに係る裁縫機械に関し、針用糸供給器および結糸供給器は、糸を針またはクローシェへ能動的に供給できる能動型のものであり、あるいは、針糸供給器および結糸供給器は、受動型のものであって、針またはクローシェによって直接に引っ張られる糸を受動的に供給できる。
【0030】
更なる態様において、本発明は、更に、特許請求項または以下に示される態様のうちのいずれか1つに示される特徴に係る針プレートに関する。
【0031】
更なる態様において、本発明は、更に、特許請求項または以下に示される態様のうちのいずれか1つに示される特徴に係る縫針支持装置に関する。
【0032】
更なる態様において、本発明は、更に、特許請求項または本明細書中で以下に示される態様のうちのいずれか1つに示される特徴に係る、少なくとも1つの針プレートと少なくとも3本の縫針とを備えるオーバーロックカットアンドソータイプの裁縫機械に関する。
【0033】
更なる態様において、本発明は、更に、添付の特許請求項または本明細書中に示される態様のうちのいずれか1つに係る裁縫機械を備える布製品を組み付けるための機械に関する。
【0034】
更なる態様において、本発明は、1つ以上の布製品に属する少なくとも2つの重なり合う布端を縫い合わせるためのオーバーロックカットアンドソータイプの裁縫機械用の器具に関し、器具は、裁縫ステッチを形成するためにスライドしている1つ以上の布製品の少なくとも2つの重なり合う布端を支持するのに適した針プレートであって、縫針を通過させるためのそれぞれの座部を規定する貫通開口と、裁縫ステッチのためのスライドラインを規定する少なくとも1つの側部付属体とが設けられる針プレートを少なくとも備えるとともに、3本の縫針が取り付けられた少なくとも1つの縫針支持装置を更に備え、縫針は相互に側面に配置されて互いに対して位置合わせされるとともに、縫針にはそれぞれの縫糸が供給され、縫針は、重なり合う布端を縫い付けるために針プレートの座部を通過するのに適しており、針プレートには、縫針を通過させるための少なくとも3つの座部が設けられ、縫針を通過させるための座部のそれぞれは、少なくとも1つの対応する縫針によって交差されるように構成され、針プレートには、互いから相互に離れた別個の少なくとも3つの裁縫ステッチを平行に形成できるように、縫針を通過させるための各座部を、針を通過させるための隣り合う座部から少なくとも部分的に分離するのに適したそれぞれの分離部が、少なくとも針の通過領域に設けられる。
【0035】
更なる特徴および利点は、図面の添付の図に係る好適であるが非排他的な実施形態の詳細な説明から更に十分に明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【
図1】本発明の一実施形態に係る裁縫機械の幾つかの構成要素の斜視図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係る裁縫機械の幾つかの構成要素の斜視図である。
【
図3】
図1の構成要素、特に針支持装置の拡大図である。
【
図4】
図1の構成要素、特に下側クローシェの拡大図である。
【
図5】
図1の構成要素、特に針プレートの上側から見た拡大図である。
【
図6】明確にするために針プレートが切断された、裁縫ステッチの形成ステップに関連する
図1の裁縫機械の詳細である。
【
図7】
図5の針プレートにおける、2つの布端上での裁縫ステッチの形成ステップを上側から見た図である。
【
図8】針プレートで実現される裁縫ステッチが例示された
図7の針プレートの正断面図である。
【
図9】布が部分的に分離されて、縫われたステッチが引き伸ばされた、
図7に示される本発明の一実施形態に係るプロセスを用いて縫われた2つの布端の平面図である。
【
図10】本発明の一実施形態に係るプロセスを使用して縫われるとともに縫われたステッチを引き伸ばすことによって部分的に分離される
図9の2つの布端の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
図を参照すると、1は、1つ以上の布製品に属する少なくとも2つの重なり合う布端3a、3bを縫い合わせるためのオーバーロックカットアンドソータイプの裁縫機械を全体的に示す。
【0038】
図1は、裁縫機械1の幾つかの必須の構成要素を示す。裁縫機械1の残りの部分は、既知のタイプのものであり、したがって、添付の図面に示されず、本明細書において詳しく説明されない。
【0039】
裁縫機械1は、裁縫ステッチを形成するために、1つ以上のスライドする布製品の少なくとも2つの重なり合う布端3a、3bを支持できる、少なくとも1つの針プレート2を備える。
【0040】
針プレート2には、縫針5を通過させるためのそれぞれの座部4を規定する貫通開口と、裁縫ステッチ10a、10b、10cのためのスライドライン7を規定する少なくとも1つの側部付属体6とが設けられる。
【0041】
針プレート2には、縫針5を通過させるための少なくとも3つの座部4が設けられ、縫針5を通過させるための座部4のそれぞれは、少なくとも1つの対応する縫針5によって交差されるように構成される。針プレート2には、互いから相互に離れた別個の少なくとも3つの裁縫ステッチ10a、10b、10cを形成できるように、縫針5を通過させるための各座部を隣り合う縫針5を通過させるための座部4から少なくとも部分的に分離できるそれぞれの分離部8が、少なくとも針5の通過領域9に設けられる。
【0042】
縫針5を通過させるための各座部4は、添付図面に示される実施形態の場合のように、単一の対応する縫針が通過できるような寸法にされて構成され得る。縫針5を通過させるための座部4は、分離部8により、座部4の延在部の全体にわたって互いから完全に分離され得る。縫針5を通過させるための座部4は、互いに完全に別個の貫通開口によって規定され得る。
【0043】
針プレート2は少なくとも2つの分離部を備えることができ、または、分離部8のそれぞれは、少なくとも0.6mmまたは少なくとも0.8mmまたは少なくとも1mmの厚さを有する。分離部8は、布端3a、3bの前進方向に沿う少なくとも0.5cm、または、少なくとも1cmまたは少なくとも1.5cmの長手方向延在部を有することができる。
【0044】
針プレート2を金属材料から形成することができ、また、座部4を規定する開口を針プレート2の溝切削によって実現することができる。あるいは、例えば、針プレート2に取り付けられる要素を対応する取り付け座部で分離することによって分離部8を規定することができる。
【0045】
図示しない変形実施形態では、縫針5を通過させるための座部4のうちの少なくとも1つを、2つの隣り合う縫針5の通過を可能にするような寸法にして構成することができ、したがって、3つの座部内を通過する4つの針5を設けることができ、その場合、2つの針5が共通の座部内を通過する。裁縫機械1は、例えば針支持棒などの少なくとも1つの縫針支持装置11を更に備える。
【0046】
裁縫機械1は、縫針支持装置11に取り付けられる少なくとも3つの縫針5を更に備え、これらの縫針は相互に側面に配置されて互いに対して位置合わせされ、また、これらの縫針には針用のそれぞれの縫糸10が供給される。縫針5は、布の重なり合う布端3a、3bを縫い付けるために針プレート2の座部4を通過するのに適している。
【0047】
針5は、それぞれの縫糸が抜け出る針5の小穴19間の距離に対応する、軸線間により規定される1.4〜2.8mmまたは1.5〜2.5mmまたは1.6〜2.0mmの相互距離を伴って、針支持装置11に取り付けることができる。
【0048】
針5は、隣り合う針5間の距離を等しくして針支持装置11に等間隔に取り付けることができる。
【0049】
図示しない変形では、針間の軸線間を異ならせて針を取り付けることができる。針は同じサイズのものにすることができ、また、同一の糸または同じサイズの異なる糸を針に供給することができる。あるいは、針が異なるサイズを有することができ、また、異なるサイズの糸を針に供給することができる。
【0050】
図7から分かるように、側部付属体6のスライドラインは、少なくとも縫針5の通過領域9と付属体6の前端部との間に延びる区域で、あるいは、付属体の延在部の全体にわたって、側部付属体6の一般的な長手方向および/または布端3a、3bのスライド方向を横断する略直線形態を成す。
【0051】
側部付属体6は、針プレート2の上側載置面のための貫通平面内で測定される2mm未満または1mm未満または0.5mm未満の厚さを有する狭い端部を持つ前部6aを有することができる。
【0052】
側部付属体6は、前端部の反対側に、4mm〜7mmまたは5mm〜6.5mmまたは5.5〜6mmの長手方向延在部の横断厚を持つ後側ベース部6bを有することができる。
【0053】
側部付属体6は、縫針5の通過領域9に、長手方向延在部を横断する3mm〜6mmまたは4mm〜5.5mmまたは4.2〜5mmの厚さ6cを有することができる。この横断厚は、3mmより大きくてもよく、または、3.5mmより大きくてもよく、または、4mmより大きくてもよく、または、4.2mmより大きくてもよい。
【0054】
あるいは、側部付属体6のスライドライン7は、少なくとも縫針5の通過領域9と付属体6の末端との間に延びる部分で、あるいは、付属体の延在部の全てにおいて、側部付属体6の一般的な長手延在方向および/または布端3a、3bのスライド方向を横断する略湾曲形態を成すことができる。略湾曲形態は、略凹状または略凸状にすることができる。
【0055】
図8から分かるように、少なくともスライドラインを規定する側部付属体6および/または分離部8のうちの少なくとも1つおよび/または分離部8の全ては、針プレート2の近傍で下側クローシェの通過を可能にするために下方に向けて終端する、あるいは先細りにすることができる。
【0056】
裁縫機械1は、裁縫作業中に重なり合う布端3a、3bを針プレート2に対して前進方向に沿って前進させることができる前進装置(既知の従来のタイプを成すため図示しない)を更に備えることができる。
【0057】
裁縫機械1は、
図7に示されるように、布端3a、3bの前進方向に沿う側部付属体6の上流側で且つ側部付属体6の近傍で、重なり合う布端3a、3bを布の切断ライン20で切断するための装置12を更に備えることができる。
【0058】
裁縫機械1は、縫糸10を裁縫機械の針5へ供給できる針5用の少なくとも1つの糸供給器を更に備えることができる。
【0059】
裁縫機械1は、ステッチ10a、10b、10cの形成に役立つことができる、少なくとも1つの下側クローシェ14および少なくとも1つの上側クローシェ15を更に備える。
【0060】
裁縫機械1は、上側クローシェ15と下側クローシェ14との間からその少なくとも一方へ結糸を供給できる少なくとも1つの結糸供給器16を更に備える。
【0061】
図に示される第1の実施形態では、下側クローシェ14に結糸17が供給され、上側クローシェ15には結糸17が供給されず、したがって、上側クローシェは「ブラインド」タイプを成す。
【0062】
図示しない変形例では、上側クローシェ15に結糸17を供給することができ、また、下側クローシェ14に結糸17を供給することができず、したがって、下側クローシェは「ブラインド」タイプを成す。
【0063】
図示しない更なる変形例では、上側クローシェ15および下側クローシェ14の両方に結糸17を供給することができる。図示の実施形態において、結糸17が供給される下側クローシェ14は、縫糸10と協働するそれぞれの結糸17を用いて裁縫ステッチ10a、10b、10cの形成に役立ち、一方、結糸が供給されない、あるいは「ブラインド」である上側クローシェ15は、下側クローシェ14により供給される結糸17に作用することによって裁縫ステッチ10a、10b、10cの形成に役立つ。
【0064】
裁縫機械1は、上側クローシェ15から、および/または下側クローシェ14からの結糸17の引き伸ばし装置18を更に備える。上側クローシェ15から、および/または下側クローシェ14からの結糸17の引き伸ばし装置18は、例えば、縫針支持装置11と同期して振動する引き伸ばしブレードであってもよい。
【0065】
針5用の糸供給器13および結糸の糸供給器16は、糸を針5またはクローシェへ能動的に供給できる能動型のものであってもよく、あるいは、別の方法として、針糸供給器13および結糸供給器16は、受動型のものであって、針5によって、あるいはクローシェによって直接に引っ張られる糸を受動的に供給できてもよい。
【0066】
図示しない変形例において、裁縫機械1は、針支持装置11に取り付けられる4本の縫針5を備えることができ、また、縫針5を通過させるための4つの開口を針プレートに設けることができる。
【0067】
また、本発明は、オーバーロックカットアンドソータイプの裁縫機械1用の器具に関し、器具は、前述したように、互いから相互に離れた別個の少なくとも3つの裁縫ステッチ10a、10b、10cの形成を可能にするべく、少なくとも1つの針プレート2と少なくとも3本の縫針5とを備える。
【0068】
器具は、原則的に、
図1に示される構成要素を備える。裁縫機械1は、特に裁縫機械1が布製品の組み付け用の機械に組み込まれる場合には、自動式であってもよい。
【0069】
更に、本発明は、前述のタイプの裁縫機械1を備える、既知のタイプであるため本文で説明されていない、布製品を組み付けるための機械に関する。裁縫機械は、その残りの部分が従来と同様であって既知のタイプを成すため、更に詳しく説明されない。
【0070】
また、本発明は、オーバーロックカットアンドソータイプの裁縫機械1を用いて少なくとも2つの重なり合う布端3a、3bを縫い合わせるためのプロセスに関し、プロセスは、布製品の少なくとも2つの重なり合う布端3a、3bをオーバーロックカットアンドソータイプの裁縫機械1の針プレート2に供給するステップであって、縫針5の通過のために、針プレート2には少なくとも一部が互いに別個の少なくとも3つの開口が設けられるステップと、布端3a、3bを針プレート2に対して前進させるステップと、布端3a、3bの側部を漸進的に切断するステップと、少なくとも3つの相互に側面に配置される縫針5が布端3a、3bを互いに縫い合わせるように、それぞれの縫糸10が供給される少なくとも1本のそれぞれの縫針を、縫針5を通過させるための3つの各開口に通過させ、それにより、少なくとも1つの下側クローシェ14および少なくとも1つの上側クローシェ15と協働して、少なくとも3つの別個の裁縫ステッチ10a、10b、10cを実現するステップであって、クローシェの少なくとも一方に結糸17が供給されるステップと、を少なくとも備える。
【0071】
裁縫機械に関連して前述した更なる態様に対応するプロセスの様々な態様は、本明細書では繰り返されない。
【0072】
本明細書本文で詳しく説明されず且つ前述した裁縫機械の固有の特徴から導き出されない裁縫ステッチの形成プロセスの更なる態様は、従来のタイプであると見なされるべきである。
【0073】
本発明は、それが想起されるように、全てが本発明の概念の範囲内に入る多くの変更および変形を受け入れる余地があり、また、挙げられた構成要素を他の技術的に等価な要素と置き換えることができる。
【0075】
主に、本発明は、従来技術の欠点の少なくとも一部を取り除くことができる。
【0076】
また、本発明は、1つ以上の布製品に属する少なくとも2つの重なり合う布端を縫い合わせて、高品質で且つ欠陥が実質的にない布製品を実現することができる。
【0077】
更に、本発明は、2つの布端間の接合ポイントで高品質の完全に「閉じられた」縫い目を得ることができ、および/または、生産廃物を減らすことができる。
【0078】
更に、本発明は、既知のステッチングに対して更に幅広いステッチング効果および/または更に平坦なステッチング効果を与えるように制御された態様で拡張できる縫い目を得られるようにする。
【0079】
更に、本発明は、生産される様々な物品間で高レベルの均一性を伴って生産物を得られるようにする。
【0080】
また、本発明は、特に布製品を組み付けるための既知のタイプの自動機械に裁縫機械を組み込むことによって、ステッチングを簡単に、素早く、自動的に実現できるようにする。
【0081】
また、本発明は、簡単で、頑丈であり、比較的経済的に製造できるとともに、高い水準の再現性および安全性を保証する。