【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成24年度、独立行政法人科学技術振興機構、戦略的創造研究推進事業チーム型研究(CREST)研究領域「ディペンダブルVLSIシステムの基盤技術」研究課題「ディペンダブルワイヤレスシステム・デバイスの開発(オールSi CMOS 受信器 RF ICの開発)」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
立体形状の基体の複数の面のうちの2以上の面にそれぞれに形成された複数のサブアレーアンテナの、異なる複数の面に設けられたサブアレーアンテナを同時に使用し指向性合成するアレーアンテナの制御方法であって、
前記基体を立方体とし、前記基体の複数の側面に設けられるサブアレーアンテナの偏波方向をそれぞれ前記基体の上面及び下面と垂直又は平行な方向とし、
前記上面と下面の少なくとも一方に設けられたサブアレーアンテナを前記側面と垂直及び平行な角度を含む複数の角度に偏波方向を切り換えることを特徴とするアレーアンテナの制御方法。
立体形状の基体の複数の面又は領域のうちの2以上の面又は領域にそれぞれに形成された複数のサブアレーアンテナの、異なる複数の面又は領域に設けられたサブアレーアンテナを同時に使用し指向性合成するアレーアンテナの制御方法であって、
前記基体を角柱状又は円柱状とし、角柱状の前記基体の複数の側面又は円柱状の前記基体の側面の周に亘って複数に分割された複数の領域の2以上の領域に設けられる各サブアレーアンテナの偏波方向をそれぞれ前記基体の上面及び下面と垂直又は平行な方向とし、
前記上面と下面の少なくとも一方に設けられたサブアレーアンテナを前記各側面又は各領域と垂直又は平行な角度を含む複数の角度に偏波方向を切り換えることを特徴とするアレーアンテナ制御方法。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、この発明によるアレーアンテナ装置等を各実施の形態に従って図面を用いて説明する。なお、各実施の形態において、同一もしくは相当部分は同一符号で示し、重複する説明は省略する。
なお、この発明によるアレーアンテナ装置等は、主に通信に使用されるものを主眼においているが、レーダや探査等にも適用可能である。
また以下の実施の形態では、金属基板を使用したものを例に説明しているが、基板の材料はこれに限定されるものではない。
【0010】
実施の形態1.
図1はこの発明の実施の形態1によるアレーアンテナ装置の外観を概略的に示す図である。アレーアンテナ装置1の基体10は例えば図示のような立方体等の立体形状を有する。
図1の立方体からなる基体10は4側面にサブアレーアンテナA,B,C,Dが、上面と下面にサブアレーアンテナE,Fがそれぞれ設けられている。各サブアレーアンテナA〜Fの指向性の中心方向(最大放射方向)をAd,Bd,Cd,Dd,Ed,Fdで示す。なお説明の都合上、
図1に示すように、側面に垂直な面の方向をxy平面、下面から上面への方向をz軸とする。また、xz平面のz軸からy軸を中心に反時計回りに回転した角度をθ、xy平面のx軸からz軸を中心に反時計回りに回転した角度をφとする。
【0011】
なお基体10は金属性材料で構成され、金属性のコアのものでも、6枚の金属性の基板を張り合わせた内側が空洞のものでもよい。
【0012】
各サブアレーアンテナA〜Dはそれぞれ、z軸方向を偏波方向PDとするアンテナ素子2aがマトリックス状に複数配列されてなる。各サブアレーアンテナE,Fはそれぞれ、偏波方向PDをx軸方向とy軸方向との間で切り換え可能(90°切り換え可能)なアンテナ素子2bがマトリックス状に複数配列されてなる。
【0013】
なお、アレーアンテナ装置1は通常、通信端末に搭載されるため、実際には、側面のうちの一方向、
図1ではサブアレーアンテナDの方向は電波の送受信が行われないデッドゾーンとなる。
【0014】
図2にはこの発明の一実施の形態によるアレーアンテナ装置における制御系の構成を示す。例えばマイクロコンピュータ等により構成される制御部100は、各サブアレーアンテナA〜Fに接続され、駆動指令信号DSに従って該当する1つのサブアレーアンテナに制御信号CSを送って電波を送信または受信または送受信が可能な状態にしたり、また複数のサブアレーアンテナに制御信号CSを送って電波を送信または受信または送受信が可能な状態にし、指向性合成するように駆動制御する。駆動指令信号DSは、アレーアンテナ装置1の送受信エリアおよび該エリア内での利得を含む。駆動指令信号DSは外部から入力されてもよいし、制御部100内部で生成されるものであってもよい。なお制御部100は、アレーアンテナ装置1の基体10の内部に搭載されても、また基体10の外部に設けられてもよい。
【0015】
この発明によるアレーアンテナ装置1では、複数のサブアレーアンテナを指向性合成して同時に制御することで、所望のエリア内で所望の利得を得る。広義には、隣接する2つ又は3つ以上のサブアレーアンテナを同時に使用して指向性合成を行う。なおここで利得とは、送信時の放射強度、受信時の受信感度、の少なくとも一方に関するものとする。
【0016】
指向性合成するために、サブアレーアンテナのアンテナ素子の偏波方向を変更する必要がある場合がある。アンテナ素子2a,2bはパッチアンテナ、ダイポールアンテナ等の種々のアンテナで構成可能である。
図3にはアンテナ素子として使用されるアンテナの一例としてのパッチアンテナ2を示す。例えばパッチアンテナ2では、給電点を給電点21,22で切り換えることで偏波方向が切り換る。そこで
図2では、例えば、後述するように指向性合成の際に偏波方向の切り換えが必要となるサブアレーアンテナE,Fでは、各アンテナ素子2bをパッチアンテナで構成し、各アンテナ素子2bで複数の給電点に切り換えて給電がされるように複数本の制御線が接続されている。なお複数本の制御線の代わりにサブアレーアンテナE,F側に、駆動指令信号DSに従って各アンテナ素子2bに給電点を切り換えて給電を行う破線で示す給電点切換部3を設けるようにしてもよい。
【0017】
図4には、制御部100の制御によるアレーアンテナ装置1での指向性合成動作の一例を示す。
図4の(a)は、偏波方向PDがx軸方向のサブアレーアンテナEと偏波方向PDがz軸方向のサブアレーアンテナAとを指向性合成し、+側のz軸と+側のy軸の間の範囲のエリア内で所望の利得(最大放射方向)を得る場合の指向性合成動作を示す。
図4の(b)は、偏波方向PDがy軸方向のサブアレーアンテナEと偏波方向PDがz軸方向のサブアレーアンテナBとを指向性合成し、+側のz軸と+側のy軸の間の範囲のエリア内で所望の利得(最大放射方向)を得る場合の指向性合成動作を示す。
また
図4の(c)は、3つのサブアレーアンテナを指向性合成し、偏波方向PDがφ=0°〜90°の間の方向(例えば上面と下面が正方形でサブアレーアンテナA,Bが同じ性能であれば偏波方向はφ=45°)のサブアレーアンテナEと偏波方向PDがz軸方向のサブアレーアンテナAと偏波方向PDがz軸方向のサブアレーアンテナBとを指向性合成し、+側のz軸と+側のx軸と+側のy軸の間の範囲のエリア内で所望の利得(最大放射方向)を得る場合の指向性合成動作を示す。
また
図4の(d)は、偏波方向がz軸方向のサブアレーアンテナAと偏波方向がz軸方向のサブアレーアンテナBとを指向性合成し、+側のx軸と+側のy軸の間の範囲のエリア内で所望の利得(最大放射方向)を得る場合の指向性合成動作を示す。
【0018】
以上のようにして、サブアレーアンテナA,B,C,E,F、及びこれらのうちの例えば2つの隣接するサブアレーアンテナを組み合わせて指向性合成を行った場合の、アレーアンテナ装置1の全体での三次元の放射パターンの一例を
図5に示す。なお
図5はy軸の−側のサブアレーアンテナDは設けていない(デッドゾーン)場合のものである。
【0019】
さらに
図6には
図5の三次元の放射パターンをメルカトル図法で示した。破線枠で示すエリアは各サブアレーアンテナの単独サブアレーエリア(但しEx,Ey,Fx,Fyの添え字は偏波方向を示す)、実線枠で示すエリアは隣接する2つのサブアレーアンテナのヘテロサブアレー合成エリアを示す。
【0020】
なお、上述の例では側面のサブアレーアンテナ(実際にはサブアレーアンテナの各アンテナ素子)の偏波方向が上面及び下面と垂直(サブアレーアンテナが搭載された面内において垂直の意味:以下同様)なz軸方向の場合を示したが、上面及び下面と平行(サブアレーアンテナが搭載された面内において平行の意味:以下同様)なx軸方向およびy軸方向の場合も同様にこの発明を実施することが可能である。
【0021】
図7には、制御部100の制御によるアレーアンテナ装置1での指向性合成動作の別の例を示す。
図7の(a)は、偏波方向PDがy軸方向のサブアレーアンテナEと偏波方向PDがy軸方向のサブアレーアンテナAとを指向性合成し、+側のz軸と+側のy軸の間の範囲のエリア内で所望の利得(最大放射方向)を得る場合の指向性合成動作を示す。
図7の(b)は、偏波方向PDがx軸方向のサブアレーアンテナEと偏波方向PDがx軸方向のサブアレーアンテナBとを指向性合成し、+側のz軸と+側のy軸の間の範囲のエリア内で所望の利得(最大放射方向)を得る場合の指向性合成動作を示す。
また
図7の(c)は、3つのサブアレーアンテナを指向性合成し、偏波方向PDがφ=−90°〜0°の間の方向(例えば上面と下面が正方形でサブアレーアンテナA,Bが同じ性能であれば偏波方向はφ=−45°)のサブアレーアンテナEと偏波方向PDがy軸方向のサブアレーアンテナAと偏波方向PDがx軸方向のサブアレーアンテナBとを指向性合成し、+側のz軸と+側のx軸と+側のy軸の間の範囲のエリア内で所望の利得(最大放射方向)を得る場合の指向性合成動作を示す。
また
図7の(d)は、偏波方向PDがy軸方向のサブアレーアンテナAと偏波方向PDがx軸方向のサブアレーアンテナBとを指向性合成し、+側のx軸と+側のy軸の間の範囲のエリア内で所望の利得(最大放射方向)を得る場合の指向性合成動作を示す。
【0022】
このようにして、サブアレーアンテナA,B,C,E,F、及びこれらのうちの例えば2つの隣接するサブアレーアンテナを組み合わせて指向性合成を行っても、
図5、
図6で示したものと同様なアレーアンテナ装置1の全体での三次元の放射パターンが得られる。
【0023】
なお、アレーアンテナ装置1の基体10が立方体である場合、側面に設けられる各サブアレーアンテナA,B,C,Dはそれぞれ基体の上面及び下面と垂直又は平行(サブアレーアンテナが搭載された面内において垂直又は平行:以下同様)な方向の偏波方向を有し、上面と下面に設けられた各サブアレーアンテナE,Fは、2つのサブアレーアンテナの指向性合成を行う場合には、側面と垂直及び平行(サブアレーアンテナが搭載された面内において垂直及び平行:以下同様)な角度に偏波方向が切り換え可能なものとし、3つ以上のサブアレーアンテナの指向性合成を行う場合には、側面と垂直及び平行な角度を含む3つ以上の角度に偏波方向が切り換え可能なものとする。
【0024】
また、この発明のアレーアンテナ装置1は全ての面にサブアレーアンテナを設ける必要はなく、隣接する少なくとも2の面にサブアレーアンテナを設ければよい(以下同様)。
【0025】
実施の形態2.
図8はこの発明の実施の形態2によるアレーアンテナ装置の外観を概略的に示す図である。アレーアンテナ装置1の基体10aは例えば図示のような六角柱等の角柱形状を有する。
図8の六角柱からなる基体10aは6側面にサブアレーアンテナA1〜A6が、上面と下面にサブアレーアンテナE,Fがそれぞれ設けられている。各サブアレーアンテナA1〜A6,E,Fの指向性の中心方向(最大放射方向)をA1d〜A6d,Ed,Fdで示す。
【0026】
なお基体10aは金属性材料で構成され、金属性のコアのものでも、8枚の金属性の基板を張り合わせた内側が空洞のものでもよい。また、制御部100(
図2参照)は各サブアレーアンテナA1〜A6,E,Fに接続されて制御を行う。
【0027】
各サブアレーアンテナA1〜A6はそれぞれ、z軸方向を偏波方向PDとするアンテナ素子2aがマトリックス状に複数配列されてなる。各サブアレーアンテナE,Fはそれぞれ、偏波方向PDを指向性合成する側面に合わせて切り換え可能なアンテナ素子2bがマトリックス状に複数配列されてなる。
【0028】
このような角柱形状の基体10aのアレーアンテナ装置1の場合、例えばサブアレーアンテナEとサブアレーアンテナA1で指向性合成する場合には、サブアレーアンテナEのアンテナ素子2bの偏波方向PDをサブアレーアンテナA1が設けられた側面に垂直な方向に切り換える。これにより指向性の中心方向EdとA1d間の範囲のエリア内で所望の利得(最大放射方向)を得る指向性合成動作を行う。また、サブアレーアンテナEとサブアレーアンテナA2で指向性合成する場合には、サブアレーアンテナEのアンテナ素子2bの偏波方向PDをサブアレーアンテナA2が設けられた側面に垂直な方向に切り換える。これにより指向性の中心方向EdとA2d間の範囲のエリア内で所望の利得(最大放射方向)を得る指向性合成動作を行う。
【0029】
さらにサブアレーアンテナEとサブアレーアンテナA1とサブアレーアンテナA2で指向性合成する場合には、サブアレーアンテナEのアンテナ素子2bの偏波方向PDをサブアレーアンテナA1が設けられた側面に垂直な方向とサブアレーアンテナA2が設けられた側面に垂直な方向の間の方向に切り換える。これにより指向性の中心方向EdとA1dとA2d間の範囲のエリア内で所望の利得(最大放射方向)を得る指向性合成動作を行う。この指向性合成動作は他の側面に設けられたサブアレーアンテナでも同様なやり方で行われ、また下面に設けられたサブアレーアンテナFと側面に設けられたサブアレーアンテナとの指向性合成動作でも同様にして行われる。
【0030】
以上のようにして、サブアレーアンテナA1〜A6,E,F及びこれらのうちの例えば2つの隣接するサブアレーアンテナを組み合わせて指向性合成を行った場合の(但しサブアレーアンテナA1〜A6の設けられた側面のうちの1つはデッドゾーンとなる)、アレーアンテナ装置1の全体での三次元の放射パターンは上記
図5、
図6にしたものと類似したものとなる。
【0031】
なお上記説明では、アレーアンテナ装置1の基体10aの側面のサブアレーアンテナA1〜A6のアンテナ素子2aの偏波方向PDを
図8に示すようにz軸方向、すなわちアンテナ素子2aが搭載された側面内で上面及び下面に垂直な方向とした場合について説明したが、実施の形態1において
図7で説明したように、アンテナ素子2aが搭載された側面内で上面及び下面に平行な方向の場合についても同様にして指向性合成動作が可能である。
【0032】
アレーアンテナ装置1の基体10aが角柱状である場合、側面に設けられる各サブアレーアンテナA1〜A6はそれぞれ基体の上面及び下面と垂直又は平行な方向の偏波方向を有し、上面と下面に設けられた各サブアレーアンテナE,Fは、2つのサブアレーアンテナの指向性合成を行う場合には、各側面と垂直又は平行な角度に偏波方向が切り換え可能なものとし、3つ以上のサブアレーアンテナの指向性合成を行う場合には、任意の角度に偏波方向が切り換え可能なものとする。
【0033】
実施の形態3.
図9はこの発明の実施の形態3によるアレーアンテナ装置の外観を概略的に示す図である。アレーアンテナ装置1の基体10bは例えば図示のような円柱形状を有する。
図9の円柱からなる基体10bは側面周囲がN(Nは1以上の整数)個の領域S1〜SNに分けられ、各領域にサブアレーアンテナAR1〜ARNが、上面と下面にサブアレーアンテナE,Fがそれぞれ設けられている。各サブアレーアンテナAR1〜ARN,E,Fの指向性の中心方向(最大放射方向)をAR1d〜ARNd,Ed,Fdで示す。
【0034】
なお基体10bは金属性材料で構成され、金属性のコアのものでも、金属性の複数の基板(例えば上面、下面、側面)を張り合わせた内側が空洞のものでもよい。また、制御部100(
図2参照)は各サブアレーアンテナAR1〜ARN,E,Fに接続されて制御を行う。
【0035】
各サブアレーアンテナAR1〜ARNはそれぞれ、z軸方向を偏波方向PDとするアンテナ素子2aがマトリックス状に複数配列されてなる。各サブアレーアンテナE,Fはそれぞれ、偏波方向PDを指向性合成する領域に合わせて切り換え可能なアンテナ素子2bがマトリックス状に複数配列されてなる。
【0036】
このような角柱形状の基体10bのアレーアンテナ装置1の場合、例えばサブアレーアンテナEとサブアレーアンテナAR1で指向性合成する場合には、サブアレーアンテナEのアンテナ素子2bの偏波方向PDをサブアレーアンテナAR1が設けられた領域S1に垂直な方向に切り換える。これにより指向性の中心方向EdとAR1d間の範囲のエリア内で所望の利得(最大放射方向)を得る指向性合成動作を行う。また、サブアレーアンテナEとサブアレーアンテナAR2で指向性合成する場合には、サブアレーアンテナEのアンテナ素子2bの偏波方向PDをサブアレーアンテナAR2が設けられた領域S2に垂直な方向に切り換える。これにより指向性の中心方向EdとAR2d間の範囲のエリア内で所望の利得(最大放射方向)を得る指向性合成動作を行う。
【0037】
さらにサブアレーアンテナEとサブアレーアンテナAR1とサブアレーアンテナAR2で指向性合成する場合には、サブアレーアンテナEのアンテナ素子2bの偏波方向PDをサブアレーアンテナAR1が設けられた領域S1に垂直な方向とサブアレーアンテナAR2が設けられた領域S2に垂直な方向の間の方向に切り換える。これにより指向性の中心方向EdとAR1dとAR2d間の範囲のエリア内で所望の利得(最大放射方向)を得る指向性合成動作を行う。この指向性合成動作は側面の他の領域に設けられたサブアレーアンテナでも同様なやり方で行われ、また下面に設けられたサブアレーアンテナFと側面の各領域に設けられたサブアレーアンテナとの指向性合成動作でも同様にして行われる。
【0038】
以上のようにして、サブアレーアンテナAR1〜ARN,E,F及びこれらのうちの例えば2つの隣接するサブアレーアンテナを組み合わせて指向性合成を行った場合の(但しサブアレーアンテナAR1〜ARNの設けられた領域S1〜SNのうちの1つはデッドゾーンとなる)、アレーアンテナ装置1の全体での三次元の放射パターンは上記
図5、
図6にしたものと類似したものとなる。
【0039】
なお上記説明では、アレーアンテナ装置1の基体10bの側面のサブアレーアンテナAR1〜ARNのアンテナ素子2aの偏波方向PDを
図9に示すようにz軸方向、すなわちアンテナ素子2aが搭載された領域の側面内で上面及び下面に垂直な方向とした場合について説明したが、実施の形態1において
図7で説明したように、アンテナ素子2aが搭載された領域の側面内で上面及び下面に平行な方向の場合についても同様にして指向性合成動作が可能である。
【0040】
アレーアンテナ装置1の基体10bが円柱状である場合、側面の周に亘って複数に分割された複数の領域に設けられる各サブアレーアンテナAR1〜ARNはそれぞれ基体の上面及び下面と垂直又は平行な方向の偏波方向を有し、上面と下面に設けられた各サブアレーアンテナE,Fは、2つのサブアレーアンテナの指向性合成を行う場合には、側面の該領域と垂直又は平行な角度に偏波方向が切り換え可能なものとし、3つ以上のサブアレーアンテナの指向性合成を行う場合には、任意の角度に偏波方向が切り換え可能なものとする。
【0041】
実施の形態4.
図10はこの発明の実施の形態4によるアレーアンテナ装置の構成の一例を示す図である。
図10は
図1に示すアレーアンテナ装置1の他の具体的な構成例を示している。基体10は上面から下面の方向に複数枚の基板(11,12,13,14)を積層して構成されている。上面を構成する基板12の上面および下面を構成する基板12の下面には、基体の上面と下面に設けられるサブアレーアンテナを構成する、基板12の表面に形成されて複数の給電点を有するパッチアンテナ2bbがそれぞれ複数、マトリックス状に配列されている。
【0042】
また上下両側の基板12のそれぞれの内側の基板11には、基体の側面に設けられるサブアレーアンテナを構成する、ダイポールアンテナ2aaが基板周囲端部に沿って複数形成されている(端末側(D側)は除く)。上下2枚の基板11のダイポールアンテナ2aaでマトリックス状に配列されたサブアレーアンテナを形成している。なお基板11の上面に示されているダイポールアンテナ2aaはダイポールアンテナの一方のアンテナであり、他方のアンテナは基板11の裏面の端部に沿って同様に形成されている。また配列されたダイポールアンテナ2aaの基板11の内側には(裏面も同様)、内部への電波の侵入を阻止するためのグランドパターン5が形成されている。そして基板13,14はスペーサ用の基板であり、中央の基板14は端末側の基板に繋がっている。なお、基板13,14に制御部100を形成するようにしてもよい。
【0043】
このように、基板表面に形成し易いパッチアンテナ2bbと、基板端部に形成し易いダイポールアンテナ2aaの組み合わせは、アレーアンテナ装置1を基板を積層して立体構造で実現する際に特に有効な組み合わせである。
【0044】
なお、上記では立方体形状の基体を有するアレーアンテナ装置の場合について説明したが、基板の形状を変えれば、角柱状又は円柱状の基体を有するアレーアンテナ装置の実現も容易に可能である。
【0045】
また、この発明は上記各実施の形態に限定されるものではなく、基板形状、サブアレーアンテナの数や配置、さらに各サブアレーアンテナのアンテナ素子の種類や数や配列等は、用途に応じて適宜選択すればよい。
【0046】
なお、アレーアンテナ装置の全体での三次元の放射パターンに関し、立方体のアレーアンテナ装置の場合、従来のようにそれぞれのサブアレーアンテナを切り替えて単独で駆動させる場合、所望のエリア内で利得が10dBi(絶対利得)以上のビームフォーム(BF)を得るためには、各サブアレーアンテナに4×4配列のアンテナ素子が必要であった。そのため、5面(1面はデッドゾーン)で合計80素子のアンテナが必要であり、小型端末への実装が困難であった。
これに対してこの発明のように異なる面の複数のサブアレーアンテナを指向性合成するように同時に制御した場合、10dBi(絶対利得)以上の利得エリアを拡大する。
サブアレーアンテナのアンテナ素子を削減すると、サブアレーアンテナ単体がカバーできる10dBi以上の利得エリアが小さくなるが、ヘテロサブアレー指向性合成を併用し、サブアレーアンテナ単体の未カバーエリアを補償することで、所望のエリア内で利得が10dBi以上のBFを得ることができる。
これにより、全てのサブアレーアンテナのアンテナ素子を4×2配列にしても3次元BFが可能であり、サブアレーアンテナ単位のみを使う4×4配列の80素子に比べて、半分の40素子で3次元BFが可能となった。