【実施例】
【0031】
以下、本発明を実施例によって詳細に説明するが、本発明は以下の記載に限定して解釈されるものではない。
【0032】
実施例1:強磁性酸化鉄粒子の製造(その1)
(A)板状の形状を有するゲータイト粒子の調製
30gの塩化第二鉄を150gの水に溶解した。また、45gの水酸化ナトリウムと90gのエタノールアミンを1100gの水に溶解した。塩化第二鉄の水溶液は冷凍庫で−1.8℃に、水酸化ナトリウムとエタノールアミンの水溶液は冷凍庫で−6.4℃に冷却した。いずれの水溶液も多量のイオンが溶解しているので氷点が低いため、0℃以下で凍らない温度まで冷却した。次に、室温環境で後者の水溶液を撹拌しながらそこに前者の水溶液を滴下した後、30分間撹拌を続けることで、鉄水酸化物を含む沈殿物を得た。滴下混合直後の懸濁液の温度は−2.5℃で、30分間混合後の懸濁液の温度は2.0℃であった。前述の通り、最終的に得られる板状の形状を有する強磁性酸化鉄粒子の大きさは、両水溶液の混合に際しての温度によりほぼ決まり、この温度が低いほど粒子の大きさは小さくなる。次に、この沈殿物を室温環境で1日間放置して熟成させた後、沈殿物を分取し、オートクレーブに仕込んで130℃で2時間水熱反応に付した後、水で洗浄してナトリウムイオンやエタノールアミンを除去してから空気中で乾燥させることでゲータイト粒子を得た(ゲータイトであることはX線回折での構造解析により確認)。得られたゲータイト粒子の透過型電子顕微鏡(TEM)写真を
図1に示す。この方法によって得たゲータイト粒子は平均長径が約30nmで平均短径が約15nmであり、短径に対する長径の比は約2であった。また、走査電子顕微鏡(SEM)による観察により、この粒子は厚みが約5nmの板状の形状を有していることが確認できた(厚みに対する長径の比は約6)。
【0033】
(B)板状の形状を有するゲータイト粒子のヘマタイト粒子への変換
(A)で得たゲータイト粒子を空気中で250℃で10分間加熱脱水することでヘマタイト粒子を得た(ヘマタイトであることはX線回折での構造解析により確認)。得られたヘマタイト粒子のTEM写真を
図2に示す。この方法によって得たヘマタイト粒子はゲータイト粒子が有していた板状の形状を保持するものであるが、粒子の表面にゲータイト粒子の脱水反応によって形成された多数の孔(大きさは概ね10nm以下)や凹凸を有していた。
【0034】
(C)多価アルコール中での湿式還元による板状の形状を有するヘマタイト粒子のマグネタイト粒子への変換
(B)で得たヘマタイト粒子500mgにテトラエチレングリコール100gを加え、超音波分散処理を2時間行って均一な分散液を得た。得られた分散液をステンレス製容器に入れて蓋をした状態でオーブンの中で290℃で2時間加熱処理した。2時間後、オーブンの中で自然冷却して室温に戻ってから容器を取り出し、容器中の分散液を水で洗浄してテトラエチレングリコールを除去した後、空気中で乾燥させることでマグネタイト粒子を得た(マグネタイトであることはX線回折での構造解析により確認)。得られたマグネタイト粒子のTEM写真を
図3に示す。この方法によって得たマグネタイト粒子はゲータイト粒子が有していた板状の形状を保持するものであるが、粒子の表面に多数の孔(大きさは概ね10nm以下)や凹凸を有していた。得られたマグネタイト粒子の保磁力は155Oe、飽和磁化は72.1emu/g、磁気ヒステリシス曲線の角型比は0.42であった(DMS社製の試料振動型磁力計を用いて最大印加磁界13000Oeで測定)。E.Kitaらの方法(J.Phys.D.43(2010)474011)に従ってこのマグネタイト粒子の発熱特性を調べた結果、優れた発熱特性を有していた。また、空気中で乾燥させる前の水に懸濁状態にあるマグネタイト粒子500mgをビーカーに入れ、水200gを加えて超音波分散処理を2時間行って均一な分散液を得た後、静置して水中のマグネタイト粒子がビーカーの底部に沈殿しだすまでの時間を測定したところ約60分であり、このマグネタイト粒子は水に対して優れた分散安定性を有することがわかった。
【0035】
実施例2:強磁性酸化鉄粒子の製造(その2)
実施例1の(A)で得たゲータイト粒子を実施例1の(C)に記載の方法と同様にして湿式還元することでマグネタイト粒子を得た(マグネタイトであることはX線回折での構造解析により確認)。この方法によって得たマグネタイト粒子は実施例1の(A)で得たゲータイト粒子が有していた板状の形状を保持するものであるが、粒子の表面に多数の孔(大きさは概ね10nm以下)や凹凸を有していた。得られたマグネタイト粒子の保磁力は160Oe、飽和磁化は74.8emu/g、磁気ヒステリシス曲線の角型比は0.40であった(DMS社製の試料振動型磁力計を用いて最大印加磁界13000Oeで測定)。E.Kitaらの方法(J.Phys.D.43(2010)474011)に従ってこのマグネタイト粒子の発熱特性を調べた結果、優れた発熱特性を有していた。また、このマグネタイト粒子の水に対する分散安定性を実施例1の(C)に記載の方法と同様にして評価したところ、水中のマグネタイト粒子がビーカーの底部に沈殿しだすまでの時間は約50分であり、実施例1の(C)で得たマグネタイト粒子と同様、水に対して優れた分散安定性を有することがわかった。
【0036】
実施例3:強磁性酸化鉄粒子の製造(その3)
(A)板状の形状を有するゲータイト粒子の調製
30gの塩化第二鉄を150gの水に溶解した。また、45gの水酸化ナトリウムと90gのエタノールアミンを1100gの水に溶解した。塩化第二鉄の水溶液は冷凍庫で−1.2℃に、水酸化ナトリウムとエタノールアミンの水溶液は冷凍庫で−3.8℃に冷却した。次に、室温環境で後者の水溶液を撹拌しながらそこに前者の水溶液を滴下した後、30分間撹拌を続けることで、鉄水酸化物を含む沈殿物を得た。滴下混合直後の懸濁液の温度は−0.8℃で、30分間混合後の懸濁液の温度は3.0℃であった。次に、この沈殿物を室温環境で1日間放置して熟成させた後、沈殿物を分取し、オートクレーブに仕込んで130℃で2時間水熱反応に付した後、水で洗浄してナトリウムイオンやエタノールアミンを除去してから空気中で乾燥させることでゲータイト粒子を得た(ゲータイトであることはX線回折での構造解析により確認)。得られたゲータイト粒子のTEM写真を
図4に示す。この方法によって得たゲータイト粒子は平均長径が約50nmで平均短径が約20nmであり、短径に対する長径の比は約2.5であった。また、SEMによる観察により、この粒子は厚みが約5nmの板状の形状を有していることが確認できた(厚みに対する長径の比は約10)。
【0037】
(B)板状の形状を有するゲータイト粒子のヘマタイト粒子への変換
(A)で得たゲータイト粒子を実施例1の(B)に記載の方法と同様にして加熱脱水することでヘマタイト粒子を得た(ヘマタイトであることはX線回折での構造解析により確認)。この方法によって得たヘマタイト粒子はゲータイト粒子が有していた板状の形状を保持するものであるが、粒子の表面にゲータイト粒子の脱水反応によって形成された多数の孔(大きさは概ね10nm以下)や凹凸を有していた。
【0038】
(C)多価アルコール中での湿式還元による板状の形状を有するヘマタイト粒子のマグネタイト粒子への変換
(B)で得たヘマタイト粒子を実施例1の(C)に記載の方法と同様にして湿式還元することでマグネタイト粒子を得た(マグネタイトであることはX線回折での構造解析により確認)。得られたマグネタイト粒子のTEM写真を
図5に示す。この方法によって得たマグネタイト粒子はゲータイト粒子が有していた板状の形状を保持するものであるが、粒子の表面に多数の孔(大きさは概ね10nm以下)や凹凸を有していた。得られたマグネタイト粒子の保磁力は175Oe、飽和磁化は80.2emu/g、磁気ヒステリシス曲線の角型比は0.44であった(DMS社製の試料振動型磁力計を用いて最大印加磁界13000Oeで測定)。E.Kitaらの方法(J.Phys.D.43(2010)474011)に従ってこのマグネタイト粒子の発熱特性を調べた結果、優れた発熱特性を有していた。また、このマグネタイト粒子の水に対する分散安定性を実施例1の(C)に記載の方法と同様にして評価したところ、水中のマグネタイト粒子がビーカーの底部に沈殿しだすまでの時間は約30分であり、実施例1の(C)で得たマグネタイト粒子と同様、水に対して優れた分散安定性を有することがわかった。
【0039】
実施例4:強磁性酸化鉄粒子の製造(その4)
実施例3の(A)で得たゲータイト粒子500mgと水500mgの混合物(空気中で乾燥させる前の水に懸濁状態にあるゲータイト粒子を完全に乾燥させることなく乾燥させてそのゲータイト量と含水量を知った上で調製したもの)にテトラエチレングリコール100gを加え、超音波分散処理を2時間行って均一な分散液を得た。得られた分散液をオートクレーブに仕込んで加圧状態で290℃で2時間加熱処理した(オートクレーブを用いたのは水の蒸発を防ぐため)。2時間後、オートクレーブ中の分散液を水で洗浄してテトラエチレングリコールを除去した後、空気中で乾燥させることでマグネタイト粒子を得た(マグネタイトであることはX線回折での構造解析により確認)。得られたマグネタイト粒子のTEM写真を
図6に示す。この方法によって得たマグネタイト粒子は実施例3の(A)で得たゲータイト粒子が有していた板状の形状よりも若干粗大化した形状を有するものであったが、基本的な形状は保持されているものであり、粒子の表面に多数の孔(大きさは概ね10nm以下)や凹凸を有していた。得られたマグネタイト粒子の保磁力は193Oe、飽和磁化は83.5emu/g、磁気ヒステリシス曲線の角型比は0.35であった(DMS社製の試料振動型磁力計を用いて最大印加磁界13000Oeで測定)。E.Kitaらの方法(J.Phys.D.43(2010)474011)に従ってこのマグネタイト粒子の発熱特性を調べた結果、優れた発熱特性を有していた。また、このマグネタイト粒子の水に対する分散安定性を実施例1の(C)に記載の方法と同様にして評価したところ、水中のマグネタイト粒子がビーカーの底部に沈殿しだすまでの時間は約20分であり、実施例1の(C)で得たマグネタイト粒子と同様、水に対して優れた分散安定性を有することがわかった。
【0040】
実施例5:強磁性酸化鉄粒子の製造(その5)
実施例1の(B)で得たヘマタイト粒子500mgに水500mgとテトラエチレングリコール100gを加え、超音波分散処理を2時間行って均一な分散液を得た。得られた分散液をオートクレーブに仕込んで加圧状態で290℃で2時間加熱処理した。2時間後、オートクレーブ中の分散液を水で洗浄してテトラエチレングリコールを除去した後、空気中で乾燥させることでマグネタイト粒子を得た(マグネタイトであることはX線回折での構造解析により確認)。この方法によって得たマグネタイト粒子は実施例1の(A)で得たゲータイト粒子が有していた板状の形状よりも若干粗大化した形状を有するものであったが、基本的な形状は保持されているものであり、粒子の表面に多数の孔(大きさは概ね10nm以下)や凹凸を有していた。得られたマグネタイト粒子の保磁力は161Oe、飽和磁化は75.1emu/g、磁気ヒステリシス曲線の角型比は0.38であった(DMS社製の試料振動型磁力計を用いて最大印加磁界13000Oeで測定)。E.Kitaらの方法(J.Phys.D.43(2010)474011)に従ってこのマグネタイト粒子の発熱特性を調べた結果、優れた発熱特性を有していた。また、このマグネタイト粒子の水に対する分散安定性を実施例1の(C)に記載の方法と同様にして評価したところ、水中のマグネタイト粒子がビーカーの底部に沈殿しだすまでの時間は約30分であり、実施例1の(C)で得たマグネタイト粒子と同様、水に対して優れた分散安定性を有することがわかった。
【0041】
実施例6:強磁性酸化鉄粒子の製造(その6)
多価アルコールとしてトリエチレングリコールを用いることと加熱温度を270℃とすること以外は実施例1の(C)に記載の方法と同様にして湿式還元することでマグネタイト粒子を得た(マグネタイトであることはX線回折での構造解析により確認)。
【0042】
実施例7:強磁性酸化鉄粒子の製造(その7)
多価アルコールとしてジエチレングリコールを用いること以外は実施例5に記載の方法と同様にして湿式還元することでマグネタイト粒子を得た(マグネタイトであることはX線回折での構造解析により確認)。
【0043】
実施例8:強磁性酸化鉄粒子の製造(その8)
多価アルコールとしてエチレングリコールを用いること以外は実施例5に記載の方法と同様にして湿式還元することでマグネタイト粒子を得た(マグネタイトであることはX線回折での構造解析により確認)。
【0044】
実施例9:強磁性酸化鉄粒子の製造(その9)
実施例1の(A)で得たゲータイト粒子500mgにポリエチレングリコール(分子量:200〜600)100gを加え、超音波分散処理を2時間行って均一な分散液を得た。得られた分散液をオートクレーブに仕込んで加圧状態で290℃で2時間加熱処理した。2時間後、オートクレーブ中の分散液を水で洗浄してポリエチレングリコールを除去した後、空気中で乾燥させることでマグネタイト粒子を得た(マグネタイトであることはX線回折での構造解析により確認)。
【0045】
実施例10:強磁性酸化鉄粒子の製造(その10)
多価アルコールとしてグリセリンを用いることと加熱温度を280℃とすること以外は実施例1の(C)に記載の方法と同様にして湿式還元することでマグネタイト粒子を得た(マグネタイトであることはX線回折での構造解析により確認)。
【0046】
実施例11:表面修飾強磁性酸化鉄粒子の製造
表面修飾剤としてポリエチレングリコールと側鎖に亜リン酸基を有するポリスチレンのブロック共重合体であるPEG−b−PVBPを用いて実施例1で得たマグネタイト粒子の表面を修飾した。PEG−b−PVBPはUjiieらの論文に記載の方法に従って合成した(以下の合成スキーム参照)。実施例1で得たマグネタイト粒子0.8mgを100ccのスクリュー管に仕込み、さらにエタノール80gを加え、約4時間超音波分散した。得られた分散液を1週間静置しておくと一部の粒子がスクリュー管の底に沈殿した。スクリュー管内の上清を採取することでマグネタイト粒子の分散液を得た。次に、この分散液2.0gを10ccのスクリュー管に仕込んだ後、PEG−b−PVBPをマグネタイト粒子に対して重量比で50%になるように加え、超音波分散しながら溶解した。得られたPEG−b−PVBPを溶解したマグネタイト粒子の分散液をスクリュー管に入れ、蓋をした状態で50℃で2日間静置することにより、マグネタイト粒子の表面にPEG−b−PVBPを結合させた。スクリュー管の蓋を外して30℃の乾燥器に入れ、分散液を撹拌しながらエタノールを乾燥除去することで、粉末状の表面にPEG−b−PVBPを結合させたマグネタイト粒子を得た。この表面修飾マグネタイト粒子の磁気特性と発熱特性は、表面修飾する前のマグネタイト粒子のそれらと実質的な違いはなかった。また、この表面修飾マグネタイト粒子の水に対する分散安定性を実施例1の(C)に記載の方法と同様にして評価したところ、24時間経過後も水中の表面修飾マグネタイト粒子がビーカーの底部に沈殿しだす現象は認められず、この表面修飾マグネタイト粒子は水に対して極めて優れた分散安定性を有することがわかった。
【0047】
【化2】
【0048】
比較例1:表面にSiO
2被膜を有する強磁性酸化鉄粒子の製造
実施例1の(A)で得たゲータイト粒子(空気中で乾燥させる前のもの)を水に懸濁し、この懸濁液にケイ酸ナトリウムをゲータイト粒子に対してSiO
2に換算して重量比で10%になるように溶解した。ケイ酸ナトリウムを溶解した後の懸濁液はケイ酸ナトリウムが強アルカリ性のためpHは約10であった。このケイ酸ナトリウムを溶解した懸濁液を撹拌しながら希塩酸を加えてpHが7〜8の範囲になるように中和し、さらに3時間撹拌を続けることで、ゲータイト粒子をSiO
2被膜で表面被覆した。次に、SiO
2被膜で表面被覆したゲータイト粒子を水で洗浄してから乾燥させた後、空気中において500℃で1時間加熱脱水することでゲータイト粒子をヘマタイト粒子に変換し、さらに、このヘマタイト粒子を水素ガス中において380℃で1時間加熱還元することにより、ヘマタイト粒子をマグネタイト粒子に変換した(マグネタイトであることはX線回折での構造解析により確認)。この方法によって得たマグネタイト粒子は実施例1の(A)で得たゲータイト粒子が有していた板状の形状よりも若干収縮した形状を有するものであったが、基本的な形状は保持されているものであり、粒子の表面に多数の孔(大きさは概ね10nm以下)や凹凸を有していた。得られたマグネタイト粒子の保磁力は118Oe、飽和磁化は57.4emu/g、磁気ヒステリシス曲線の角型比は0.40であり、実施例1の(C)で得たマグネタイト粒子の磁気特性よりも劣るものであった(DMS社製の試料振動型磁力計を用いて最大印加磁界13000Oeで測定)。E.Kitaらの方法(J.Phys.D.43(2010)474011)に従ってこのマグネタイト粒子の発熱特性を調べた結果、実施例1の(C)で得たマグネタイト粒子の発熱特性よりも劣るものであった。また、このマグネタイト粒子の水に対する分散安定性を実施例1の(C)に記載の方法と同様にして評価したところ、水中のマグネタイト粒子がビーカーの底部に沈殿しだすまでの時間は約10分であり、実施例1の(C)で得たマグネタイト粒子よりも水に対する分散安定性が劣ることがわかった。
【0049】
比較例2:乾式還元による表面にSiO
2被膜を有さない強磁性酸化鉄粒子の製造
実施例1の(B)で得たヘマタイト粒子を水素ガス中において330℃で1時間加熱還元することにより、ヘマタイト粒子をマグネタイト粒子に変換した(マグネタイトであることはX線回折での構造解析により確認)。この方法によって得たマグネタイト粒子は粒径が約40nmの球状の形状を有するものであり、加熱処理によって粒子が焼結して板状の形状が変形してしまっていた。得られたマグネタイト粒子の保磁力は65Oe、飽和磁化は80.5emu/g、磁気ヒステリシス曲線の角型比は0.20であり、実施例1の(C)で得たマグネタイト粒子の磁気特性よりも劣るものであった(DMS社製の試料振動型磁力計を用いて最大印加磁界13000Oeで測定)。E.Kitaらの方法(J.Phys.D.43(2010)474011)に従ってこのマグネタイト粒子の発熱特性を調べた結果、実施例1の(C)で得たマグネタイト粒子の発熱特性よりも劣るものであった。また、このマグネタイト粒子の水に対する分散安定性を実施例1の(C)に記載の方法と同様にして評価したところ、水中のマグネタイト粒子がビーカーの底部に沈殿しだすまでの時間は約10秒であり、水に対する分散安定性がほとんどないことがわかった。
【0050】
まとめ:
多価アルコールの還元力は水素の還元力などと比較して弱いものであることが当業者に知られており、これまでその利用は還元が容易な金属イオンや金属アルコキシドを原料に用いる場合などに限られていたが、本発明において多価アルコールの還元力を利用してヘマタイト粒子をマグネタイト粒子に変換できるのは、粒子が小さい(長径が1μm未満)ことや、粒子が板状の形状を有する場合には粒子の表面積が大きいことで還元されやすいことなどが寄与しているものと推察される。
【0051】
製剤例1:
実施例1で製造したマグネタイト粒子を水に0.05〜5wt%の濃度の範囲で分散させた静脈内投与用分散組成物を調製した。