(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
複数の自走式作業機械に搭載された稼働データ収集装置と、中央に設けられたサーバとの間で固定局を介してデータの授受を行う作業機械の稼働データ収集システムにおいて、
前記稼働データ収集装置は、他の稼働データ収集装置と通信を行う移動局通信制御部と、前記固定局を介して前記サーバとの通信を行う固定局通信制御部と、自作業機械の稼働データと他作業機械の稼働データとを記憶する稼働データ記憶部と、ある時間間隔に対する前記サーバとの通信接続時間の割合を算出する通信確立割合算出部とを有し、
前記サーバは、前記通信確立割合算出部が算出した前記通信接続時間の割合が最も高い稼働データ収集装置を選択し、選択した稼働データ収集装置の稼働データ記憶部を中継して別の他作業機械の稼働データを収集する
ことを特徴とする作業機械の稼働データ収集システム。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、作業機械として鉱山等で用いられるショベルやダンプトラック(以下、「ダンプ」と略す)を例にとって本発明の作業機械の稼働データ収集システムの実施の形態を図面を用いて説明する。
図1は本発明の作業機械の稼働データ収集システムの一実施の形態の全体構成を示す概略図、
図2は本発明の作業機械の稼働データ収集システムの一実施の形態の動作を説明する概略図である。
【0017】
図1に示すように、鉱山の採石場では、ショベル1Aやダンプ1Bなどの自走式の作業機械1が使用されており、それらの作業機械1の稼働データを収集する稼働データ収集システム300が用いられている。この稼働データ収集システム300では、採石場の近傍もしくは遠隔の管理センタ201に、サーバ200が設置されている。また、ショベル1Aやダンプ1Bなどには、GPS衛星405を利用して自機の位置を取得する位置取得装置(図示せず)と、各種センサ(図示せず)が搭載されている。そして、ショベル1Aやダンプ1Bなどに搭載した稼働データ収集装置100A、100Bは、各種センサで取得した稼働データを収集して蓄積するとともに、無線通信回線400を介してサーバ200に送信するようになっている。なお、401は固定局である。
【0018】
ショベル1Aは、超大型の油圧ショベルであって、走行体2と、この走行体2上に旋回可能に設けた旋回体3と、運転室4と、旋回体3の前部中央に設けたフロント作業機5と、を備えて構成される。フロント作業機5は、旋回体3に回動可能に設けたブーム6と、このブーム6の先端に回動可能に設けたアーム7と、そのアーム7の先端に取り付けられたバケット8とで構成されている。また、運転席4の中には、ショベル1Aの部位ごとの動作状態に関わる状態量を収集するためのコントローラネットワーク9が設けられている。なお、稼働データ収集装置100Aは、運転室4のなかに設置されており、運転室4の上部等の見通しの良い場所に固定局通信アンテナ103Aと移動局通信アンテナ102Aが設置されている。
【0019】
また、ダンプ1Bは、本体を形成するフレーム505と、運転室504と、前輪501および後輪502と、フレーム505の後方部分に設けられたヒンジピン(図示せず)を回動中心として上下方向に回動可能な荷台503と、この荷台503を上下方向に回動させる左右一対のホイストシリンダ(図示せず)と、を備えて構成される。また、運転室504の中には、ダンプ1Bの部位毎の動作状態にかかわる状態量を収集するためのコントローラネットワーク509が設けられている。なお、稼働データ収集装置100Bは、運転室504の中に設置されており、運転室504の上部等の見通しの良い場所に固定局通信アンテナ103Bと移動局通信アンテナ102Bが設置されている。
【0020】
次に
図2を用いて稼働データ収集システムの動作手順について説明する。作業機械1のダンプ1Bに搭載した稼働データ収集装置100Bは、作業機械1(ダンプ1B及びショベル1A)の稼働データを収集するとともに、作業機械1(ダンプ1B及びショベル1A)の1運行周期を計測する。ここで1運行周期とは、ダンプ1Bがショベル1Aの掘削物を積載、運搬し、放土場に放土して再びショベル1Aに戻るまでの時間をいう。
【0021】
鉱山現場では、作業エリアごとに複数の作業機械1(ダンプ1B及びショベル1A)がグループとなって作業にあたっており、ダンプ1Bは基本的に同じルートを走行する繰り返し動作を行っている。ダンプ1Bの稼働データ収集装置100Bは、他の作業機械1であるショベル1Aに搭載した稼働データ収集装置100Aと通信接続可能であった時間を計測し、1運行周期に対する通信接続可能時間の割合を示す移動局間通信確立割合を計算する。また、ダンプ1Bの稼働データ収集装置100Bは、固定局401を介してサーバ200と通信接続可能であった時間を計測し、1運行周期に対する通信接続可能時間の割合を示す固定局間通信確立割合を計算する。
【0022】
次に、サーバ200はインターネットなどのネットワーク、および固定局401を介して作業機械1(ダンプ1B)に搭載した稼働データ収集装置100Bと通信を行い、作業機械1(ダンプ1B)から前記移動局間通信確立割合と前記固定局間通信確立割合を取得するとともに、前記作業機械1(ダンプ1B及びショベル1A)の稼働データを常時回収するように動作する。
【0023】
サーバ200は、固定局401の通信可能エリア外に例えば作業機械1(ショベル1A)が移動した際には、通信可能エリア外に移動した作業機械1(ショベル1A)に搭載した稼働データ収集装置100Aと最も通信接続の可能性の高い別の作業機械1(ダンプ1B)に搭載した稼働データ収集装置100Bを前記移動局間通信確立割合と前記固定局間通信確立割合に基づいて検索し、当該稼働データ収集装置100Bを仲介して前記通信可能エリア外に移動した作業機械1(ショベル1A)の稼働データを回収するように動作する。
【0024】
次に、
図3乃至
図6を用いて作業機械1に搭載される稼働データ収集装置100の構成を説明する。
図3は本発明の作業機械の稼働データ収集システムの一実施の形態を構成する稼働データ収集装置を示す概略構成図、
図4は本発明の作業機械の稼働データ収集システムの一実施の形態を構成する稼働データ収集装置の稼働データの構成例を示す表図、
図5は本発明の作業機械の稼働データ収集システムの一実施の形態を構成する稼働データ収集装置の端末登録情報の構成例を示す表図、
図6は本発明の作業機械の稼働データ収集システムの一実施の形態を構成する稼働データ収集装置の通信確立割合情報の構成例を示す表図である。
図3乃至
図6において、
図1及び
図2に示す符号と同符号のものは同一部分であるので、その詳細な説明は省略する。
【0025】
図3に示すように稼働データ収集装置100は、データ処理部120と、移動局通信制御部112と、固定局通信制御部113と、通信確立割合算出部130と、稼働データ受信部180と、通信確立割合記憶部140と、端末登録情報記憶部150と、稼働データ記憶部160と、コマンドファイル記憶部170とを備えている。
【0026】
稼働データ受信部180は、自車の作業機械1に設置されている各種センサで取得した稼働データを受信する。稼働データ受信部180は、自車の作業機械1から稼働データを逐次受信して稼働データ記憶部160に保存する。
図4に稼働データ受信部180が自車の作業機械1から受信する稼働データの構成例を示している。稼働データとしては、メッセージ形式で構成し、受信日時と部位系統IDと、センサIDと、センサ値とから構成されている。ここで、受信日時は、図示しない稼働データ収集装置100が有している内部時計で計測した稼働データの受信日時を示している。また、部位系統IDとは、自車の作業機械1を構成するエンジンやポンプなどの部位系統を同定するためのIDである。またセンサIDとは、前記部位系統ごとに取り付けられたセンサを特定するためのIDである。すなわち、部位系統IDとセンサIDの組み合わせによって、一意にセンサを特定できるようになっている。そして、センサ値とは当該センサにて計測された数値を示している。
【0027】
稼働データ受信部180が自車の作業機械1から受信した稼働データは稼働データ記憶部160に記憶される。稼働データ記憶部160は大きく2つの領域に分かれている。一方は自車の作業機械の稼働データを記憶する領域であり、他方は、他車の作業機械の稼働データを記憶する領域である。稼働データ受信部180から受信した稼働データは自車の作業機械の稼働データであるため、自車の作業機械の稼働データを記憶する領域に保存される。一方で、他車の作業機械の稼働データを記憶する領域には、サーバ200からの指令で他車の作業機械の稼働データを中継する場合に一時的に格納するための領域である。
稼働データは、一定時間間隔にファイル形式で記録され、日付名称のディレクトリに格納されている。従って、サーバ200からある特定の日の稼働データの送信要求が来た場合に、容易に稼働データの格納場所が分かるように構成されている。
【0028】
移動局通信制御部112は、移動局通信アンテナ102を介して、他車の稼働データ収集装置100との通信接続をつかさどる。移動局間通信としては、例えば、無線LANのアドホックモード通信が相当し、端末間のP2P通信を実現する方式である。無線LANのアドホックモードの場合、SSID(Service Set IDentifier)と呼ばれるアクセスポイントの識別子について、すべての稼働データ収集装置100で同一に設定することで、複数の端末間での通信接続が可能となる。従って、移動局通信制御部112は、他車の稼働データ収集装置100に対して、通信接続可否を問う要求を送信し、それに対する応答を確認することで通信接続可否を確認する。従って、この応答を確認することで、他車の稼働データ収集装置100と実際にデータ通信を行っていない状況であっても通信接続可能となったタイミングや通信接続時間を認知することが可能となる。
【0029】
固定局通信制御部113は、固定局通信アンテナ103、固定局401を介してサーバ200との通信接続をつかさどる。固定局通信としては、例えば、無線LANのインフラモード通信が相当し、固定局401を親機、稼働データ収集装置100を子機とした通信形態をとる。無線LANのインフラモードの場合、SSIDを同一に設定することで複数の稼働データ収集装置100が固定局401と通信可能となる。ここで、固定局通信制御部113は、移動局通信制御部112とは別の構成をとり、別々のSSIDを設定することで独立に通信利用が可能なようになっている。また、固定局通信制御部113は、固定局401に対して通信接続可否を問う要求を送信し、それに対する応答を確認することで通信接続可否を確認する。従って、この応答を確認することで、固定局401と実際にデータ通信を行っていない状況であっても通信接続可能となったタイミングや通信接続時間を認知することが可能となる。
【0030】
端末登録情報記憶部150は、作業現場にて通信接続候補となる端末の一覧を示す端末登録情報を格納している。
図5に端末登録情報の構成例を示している。端末登録情報としては、端末の識別番号と、機種−号機と、IPアドレスと、機械属性と、作業エリアNoとで構成している。
【0031】
ここで、識別番号とは、端末を一意に同定するための番号であり、サーバ200は0で固定とする。それ以外に関しては異なる端末で番号が重複しないように設定することで簡易な番号で端末を特定することが可能となる。機種−号機とは、稼働データ収集装置100が搭載されている作業機械1を特定するための情報である。ここで、サーバ200に関しては、0で固定とする。IPアドレスとは、通信ネットワーク上で稼働データ収集装置100を一意に同定するための番地情報である。このIPアドレスを把握することで特定の稼働データ収集装置100との間でデータ通信を確立することが可能となる。機械属性とは、稼働データ収集装置100が搭載されている作業機械1の属性を知るための情報である。作業エリアNoは、作業機械1が動作している作業場所を認識し、同一作業エリアで稼働している他の稼働データ収集装置100を認識するための情報である。
【0032】
図5に示す端末登録情報によれば、0011号機のダンプを識別番号11の作業機械、0012号機のダンプを識別番号12の作業機械、0021号機のショベルを識別番号21の作業機械とし、これらは、それぞれ別個の稼働データ収集装置100を備え、同じ作業エリア100内に配置されている。
【0033】
図3に戻り、通信確立割合算出部130は、移動局通信制御部112と、固定局通信制御部113とから受信する他車の稼働データ収集装置100との通信接続可否情報、もしくは固定局401との通信接続可否情報に基づいて1運行周期に相当する時間を計算するとともに、1運行周期に対する他車の稼働データ収集装置100との通信確立割合と、1運行周期に対する固定局401との通信確立割合とを計算して、その結果を通信確立割合記憶部140に記憶する。
【0034】
図6に通信確立割合記憶部140に保存している情報を示す。通信確立割合記憶部140には、
図6(a)に示す通信確立割合算出部130が計測した1運行周期の計算結果と、
図6(b)に示す他車の稼働データ収集装置100、もしくはサーバ200との通信接続時間と1運行周期あたりの通信確立割合の2つの情報が格納されている。ここでは、自車の作業機械が識別番号11の作業機械1である場合を例に示している。通信確立割合算出部130の動作内容については後述する。
【0035】
図3に戻り、データ処理部120は、移動局通信制御部112と固定局通信制御部113を介して他車の稼働データ収集装置100やサーバ200と通信する際に、通信相手からの要求にこたえる処理を行うとともに、こちらからの要求をつかさどる処理を行う。状況としては以下の3つのケースに集約される。
(1)サーバ200から固定局通信制御部113を介して自車の作業機械の稼働データの送信要求を受けた場合の送信処理。
(2)サーバ200から固定局通信制御部113を介して他車の作業機械の稼働データの収集指示を受けた場合の他車の作業機械に対する稼働データの収集処理。
(3)他車の稼働データ収集装置100から移動局通信制御部113を介して自車の作業機械の稼働データの送信要求を受けた場合の自車の作業機械の稼働データの送信処理。
【0036】
(1)は、稼働データ収集装置100が固定局401の通信可能エリア内にいる場合にサーバ200から常時受け付ける稼働データの送信要求に対する応答処理である。
(2)は他車の稼働データ収集装置100が固定局401の通信可能エリア外に移動してしまった場合に、その稼働データ収集装置100から稼働データを回収するようにサーバ200から指示を受けた場合の応答処理である。サーバ200から他車の稼働データ収集装置100の稼働データの回収要求を受ける場合には、サーバ200からコマンドファイルが送信され、コマンドファイル記憶部170に保存される。データ処理部120は、そのコマンドファイルに基づいて指定の稼働データ収集装置100との間で通信を行い稼働データの回収処理を実行する。その場合にデータ処理部120は、他車の稼働データ収集装置100から受信した稼働データを稼働データ記憶部160の他車の作業機械の稼働データを記憶する領域に一時的に記録する。
【0037】
(3)は、自車の作業機械が固定局401の通信可能エリア外に移動してしまった場合に、他車の稼働データ収集装置100から自車の作業機械の稼働データの送信要求を受けた場合の送信処理である。
【0038】
次に、稼働データ収集装置100の通信確立割合算出部130が行う処理内容について詳細に説明する。
図3に戻り、通信確立割合算出部130は、移動局通信制御部112と、固定局通信制御部113とから受信する他車の稼働データ収集装置100との通信接続可否情報、もしくは固定局401との通信接続可否情報に基づいて
図6(a)に示す1運行周期を計算するとともに他車の端末との通信接続時間と通信確立割合とを計算する。
【0039】
まず、1運行周期の計算方法について説明する。1運行周期の計算方法は自車の作業機械がダンプ1Bの場合とショベル1Aの場合で計算手順が異なる。
自車の作業機械がダンプ1Bの場合の1運行周期の計算手順は以下となる。
(ステップ1):通信確立割合算出部130は、端末登録情報記憶部150を参照し、同一作業エリアNoで動作している作業機械のうちでショベルを抽出する。例えば、
図5のケースで自車の作業機械が“識別番号:11”のダンプであった場合、“識別番号:21”のショベルが選択される。
【0040】
(ステップ2):次に、通信確立割算出部130は、移動局通信制御部112から“識別番号:21”のショベルとの通信接続可否情報を抽出するようにし、当該“識別番号:21”のショベルとの通信接続が開始したタイミングと、一旦切断して再度通信接続するまでの時間を計測するようにする。この時間は、ダンプがショベルを離れて放土したのちに再度ショベルに戻ってくるまでの時間と考えられるため1運行周期に相当すると考えられる。
【0041】
次に、自車の作業機械がショベル1Aの場合の1運行周期の計算手順は以下となる。
(ステップ1):通信確立割合算出部130は、端末登録情報記憶部150を参照し、同一作業エリアNoで動作している作業機械のうちでダンプを抽出する。例えば、
図5のケースで自作業機械が“識別番号:21”のショベルであった場合、“識別番号:11”と“識別番号:12”のダンプが選択される。
【0042】
(ステップ2):次に、通信確立割算出部130は、移動局通信制御部112から“識別番号:11”と“識別番号:12”のダンプとの通信接続可否情報を抽出するようにし、当該“識別番号:11”と“識別番号:12”のダンプとの通信接続が開始したタイミングと、一旦切断して再度通信接続するまでの時間をそれぞれ計測して、平均値を求めるようにする。この時間は、それぞれのダンプがショベルを離れて放土したのちに再度ショベルに戻ってくるまでの時間と考えられるため1運行周期に相当すると考えられる。
【0043】
通信確立割合算出部130は、上記の方法にて1運行周期を計算し、
図6(a)に示した通信確立割合記憶部140の1運行周期に記録する。
【0044】
次に、通信確立割合算出部130の他の端末との通信接続時間の計算方法について説明する。
図3に戻り、通信確立割合算出部130は、前記した1運行周期の計測時間中に他の端末との通信接続可能時間を計測し、その時間の積算値を通信接続時間として
図6(b)に示した通信確立割合記憶部140の通信接続時間に記録する。例えば、自車の作業機械が“識別番号:11”であった場合、通信確立割合算出部130は、1運行周期を計測するために移動局通信制御部112から“識別番号:21”のショベルとの通信接続可否情報に基づいて通信接続開始のタイミングと、一旦切断したのちに再度通信接続するタイミングを計測している。この間に、“識別番号:12”のダンプと“識別番号:21”のショベルとの通信可能時間を積算することによって他車の稼働データ収集装置100との通信接続時間を計算することができる。一方で、固定局との通信接続時間については、固定局通信制御部113から受信するサーバ200との通信接続可否情報に基づいて計算することになる。
【0045】
通信確立割合算出部130は、上記の方法にて通信接続時間を計算し、
図6(b)に示した通信確立割合記憶部140の通信接続時間に記録する。
【0046】
次に、通信確立割合算出部130の他の端末との通信確立割合の計算方法について説明する。
通信確立割合算出部130は、上記で求めた1運行周期と通信接続時間との除算にて通信確立割合を計算し、
図6(b)に示した通信確立割合記憶部140の通信確立割合に記録する。
【0047】
次に、
図7乃至
図11を用いてサーバ200の構成を説明する。
図7は本発明の作業機械の稼働データ収集システムの一実施の形態を構成するサーバを示す概略構成図、
図8は本発明の作業機械の稼働データ収集システムの一実施の形態を構成するサーバの通信確立割合情報の構成例を示す表図、
図9は本発明の作業機械の稼働データ収集システムの一実施の形態を構成するサーバのデータ処理部の処理内容を示すフローチャート図、
図10は本発明の作業機械の稼働データ収集システムの一実施の形態を構成するサーバのデータ処理部のメインコマンドの構成例を示す表図、
図11は本発明の作業機械の稼働データ収集システムの一実施の形態を構成するサーバのデータ処理部のサブコマンドの構成例を示す表図である。
図7乃至
図11において、
図1乃至
図6に示す符号と同符号のものは同一部分であるので、その詳細な説明は省略する。
【0048】
図7に示すようにサーバ200は、データ処理部210と、固定局通信制御部220と、稼働データ記憶部230と、通信確立割合記憶部250と、端末登録情報記憶部260と、コマンドファイル記憶部240と、入出力処理部270とを備えている。
【0049】
固定局通信制御部220は、固定局401を介して稼働データ収集装置100との通信接続をつかさどる。固定局通信としては、無線LANのインフラモード通信が相当し、その場合、固定局401を親機、稼働データ収集装置100を子機とした通信形態をとる。
【0050】
データ処理部210は、固定局通信制御部220、固定局401を介して稼働データ収集装置100に対して稼働データの送信要求を出し、その応答に基づいて稼働データを受信して稼働データ記憶部230に保存する処理をメインで行う。データ処理部210の処理内容については後に詳述する。
【0051】
稼働データ記憶部230は、サーバ200が稼働データ収集装置100から受信した稼働データを保存している。
【0052】
端末登録情報記憶部260は、稼働データ収集装置100の端末登録情報記憶部150に格納されているものと同様の
図5に示した端末登録情報を記憶している。
【0053】
入出力処理部270は、稼働データ記憶部230と、通信確立割合記憶部250と、端末登録情報記憶部260とに記憶されている各種情報をモニタ等を利用して画面出力するとともに、情報の編集を可能にする。
【0054】
通信確立割合記憶部250は、複数の稼働データ収集装置100から受信した
図6に示した通信確立割合情報をもとに最新の通信確立割合情報を記憶している。
図8は、通信確立割合記憶部250が保存している通信確立割合情報の構成を示している。
図8に示すように、通信確立割合情報は、識別番号で示す作業機械1ごとに、1運行周期に対する固定局401との通信接続時間の割合で定義する固定局間通信確立割合と、他の作業機械1との通信接続時間の割合で定義する移動局間通信確立割合の最新値を保存している。
【0055】
図6に示した稼働データ収集装置100が有する通信確立割合が“識別番号:11”の作業機械1の通信確立割合であった場合、これをサーバ200の通信確立割合情報に反映するケースについて説明する。
図6の稼働データ収集装置100の通信確立割合情報において “識別番号:0”のサーバ200との間の通信確立割合が66.7%であることより、
図8のサーバ200の通信確立割合情報ではこれを反映して、“識別番号:11”の固定局間通信のカラムに66.7%を保存する。
また、
図6の稼働データ収集装置100の通信確立割合情報において “識別番号:12”と“識別番号:21”の通信確立割合がそれぞれ1.7%、10.0%であることより、
図8のサーバ200の通信確立割合情報ではこれを反映して、“識別番号:11”と“識別番号:12”が重なる移動局間通信のカラムには1.7%が保存され、“識別番号:11”と“識別番号:21”が重なる移動局間通信のカラムには10.0%が保存される。
【0056】
このサーバ200が有する通信確立割合情報は複数の作業機械1の稼働データ収集装置100から受信した通信確立割合情報に基づいているので、例えば、同一カラムに保存すべき情報を重ねて受信した場合には、時間的に最新の情報に上書き保存する。例えば、“識別番号:11”と“識別番号:12”が重なる移動局間通信のカラムにおいて、前記では“識別番号:11”の作業機械1からの情報を保存したが、その後に“識別番号:12”の作業機械1から通信確立割合情報を受信した場合には、それを最新情報として上書き保存する。
【0057】
次に、サーバ200のデータ処理部210における処理内容について
図9を用いて説明する。
まず、データ処理部210は、ステップ(S2000)において、端末登録情報記憶部260に記憶している
図5に示した端末登録情報を読み込む。
【0058】
次に、データ処理部210は、ステップ(S2100)において、図示しない内部時計により、現在日時を取得する。
【0059】
次に、データ処理部210は、ステップ(S2200)において、前記ステップ(S2000)と(S2100)とで取得した端末登録情報と現在日時とに基づいてメインコマンドファイルを作成すると共に、作成したメインコマンドファイルをコマンドファイル記憶部240のメインコマンド記憶用ディレクトリに保存する。
【0060】
図10は、データ処理部210が当該処理ステップで作成したメインコマンドの構成例を示している。
稼働データの取得はコマンドファイルを有している端末が主体となり、対象とする通信相手にアクセスして取得する形をとるため、コマンド形態としては“GET”と表現する。逆に、コマンドファイルを有する端末が主体となってデータを送信する場合には“PUT”と表現する。そして、引数が3種類存在する。第1引数は、通信対象相手とする作業機械1の識別番号である。第2引数は、取得すべき稼働データの生成元である作業機械1の識別番号である。第3引数は、稼働データの取得対象とする日付を指定する。
【0061】
すなわち、
図10に示しているメインコマンドファイルは、 “識別番号:11”と、“識別番号:12”と、“識別番号:21”を通信対象として、それぞれ同一識別番号の作業機械の2013年3月2日の稼働データを取得するように指示するメインコマンドファイルになっている。なお、メインコマンドファイルに関しては、第1引数の対象通信相手の作業機械1の識別番号と第2引数の取得すべき稼働データの生成元である作業機械1の識別番号は同一としている。
【0062】
図9に戻り、データ処理部210は、前記コマンドファイルの第1引数に指定している端末毎に(S2300)以降の処理を繰り返す。以下に1つの端末における処理を説明する。
【0063】
データ処理部210は、ステップ(S2300)において、対象とする識別番号の稼働データ収集装置100との間で通信接続が可能であるか否かを判断する。すなわち、データ処理部210は、当該処理ステップにおいて、固定局通信接続部220から受信している対象とする稼働データ収集装置100との通信接続可否情報を基に判断する。ここで、接続可能と判断した場合にはステップ(S2400)に進み、接続不可と判断した場合には、ステップ(S2700)に進む。
【0064】
データ処理部210は、ステップ(S2400)において、対象とする識別番号の稼働データ収集装置100との間で通信が接続されると、前記稼働データ収集装置100が有している通信確立割合情報を取得する。そして、データ処理部210は、取得した稼働データ収集装置100の通信確立割合情報に基づいて通信確立割合記憶部250の情報を更新する。
【0065】
データ処理部210は、ステップ(S2500)において、メインコマンドファイルの実行処理を行う。データ処理部210は、メインコマンドファイルのなかから対象とする識別番号が第1引数となっているコマンド行のみを検索して、当該コマンド行のみを実行する。すなわち、現在“識別番号:11”と通信接続が行われている場合には、“識別番号:11”が第1引数になっているコマンド行のみを実行し、“識別番号:11”の作業機械1の2013年3月2日の稼働データを取得するように通信処理を実行する。ここで、データ処理部210は、稼働データ記憶部230に保存されている“識別番号:11”の対象日の稼働データと“識別番号:11”の稼働データ収集装置100が有している対象日の稼働データとの差分に相当する未取得の稼働データのみを取得するように通信を行う。
【0066】
ここで、メインコマンド実行時のサーバ200と稼働データ収集装置100との間の通信手順は以下となる。
(通信手順1)サーバ200は稼働データ収集装置100に対して稼働データ記憶部160の自車の作業機械の稼働データを記憶している領域に保存されている対象日の稼働データのファイルリストを要求して取得する。
【0067】
(通信手順2)サーバ200は、前記稼働データ収集装置100から受信した対象日の稼働データのファイルリストに基づいて未回収の稼働データファイルのリストを作成して稼働データ収集装置100に送信する。
【0068】
(通信手順3)稼働データ収集装置100は、サーバ200から受信した稼働データファイルのリストに記載されている稼働データファイルを稼働データ記憶部160から検索してサーバ200に対して送信する処理を行う。
【0069】
(通信手順4)サーバ200は稼働データ収集装置100から受信した稼働データファイルを稼働データ記憶部230に保存する。
【0070】
図9に戻り、データ処理部210は、ステップ(S2600)において、サブコマンドファイルの実行処理を行う。このサブコマンドファイルは、コマンドファイル記憶部240のサブコマンド記憶用ディレクトリに保存されるコマンドファイルであり、後述するステップ(S2700)の処理ステップで作成されたサブコマンドファイルを実行する。サブコマンドは、第1引数と第2引数の識別番号が異なるコマンドである。すなわち、通信対象とする作業機械1の稼働データ収集装置100から別の作業機械1の稼働データを取得するように指示するコマンドである。
【0071】
図11は、サブコマンドの構成例を示している。この例の場合、“識別番号:11”を対象に“識別番号:21”の稼働データを取得するように指示するコマンドとなる。
サブコマンドの実行を必要とするケースは、第2引数に指定した作業機械1との間の固定局間通信が不通となったために第1引数に指定した作業機械1を介して第2引数に指定した作業機械1の稼働データを取得するためである。従って、当該処理ステップでは大きく以下の2通りの処理を実行する。
【0072】
まず、第1の処理として、サブコマンドのうち第1引数に指定された作業機械1に対して第2引数に指定された作業機械1の稼働データを取得するためのコマンドファイルを生成して第1引数に指定された作業機械1に送信する。次に、第2の処理としてサブコマンドそのものを実行する。
【0073】
図11に示したサブコマンドを実行するケースを例にとって、サーバ200と稼働データ収集装置100との間の通信手順は以下となる。
(通信手順1)サーバ200は“識別番号:11”の稼働データ収集装置100に対して“識別番号:21”から稼働データを回収するための以下で記述されたコマンドファイルを送信する。ただし、既に送信済みの場合は当該ステップをスキップする。
“get 21 21 20130302”
(通信手順2)“識別番号:11”の稼働データ収集装置100はサーバ200から受信したコマンドファイルをコマンドファイル記憶部170に保存する。ただし、既に受信済みの場合には当該ステップをスキップする。
これを受けて、“識別番号:11”の稼働データ収集装置100のデータ処理部120は、移動局間通信制御部112を介して“識別番号:21”の稼働データ収集装置100と通信を行い上記コマンドに従って処理を実行する。この処理動作についてはサーバ200のステップ(S2500)の処理内容と同一であるためここでは説明を省略する。
【0074】
(通信手順3)サーバ200は“識別番号:11”の稼働データ収集装置100に対して、稼働データ記憶部160の他車の作業機械の稼働データを記憶している領域に保存されている“識別番号:21”の対象日の稼働データのファイルリストを要求して取得する。
【0075】
(通信手順4)サーバ200は、“識別番号:11”の稼働データ収集装置100から受信した“識別番号:21”の対象日の稼働データのファイルリストに基づいて“識別番号:21”の未回収の稼働データファイルのリストを作成して稼働データ収集装置100に送信する。
【0076】
(通信手順5)“識別番号:11”の稼働データ収集装置100は、サーバ200から受信した“識別番号:21”の稼働データファイルのリストに記載されている稼働データファイルを稼働データ記憶部160の他車の作業機械の稼働データを記憶する領域から検索してサーバ200に対して送信する処理を行う。
【0077】
(通信手順6)サーバ200は“識別番号:11”の稼働データ収集装置100から受信した“識別番号:21”の稼働データファイルを稼働データ記憶部230に保存する。
【0078】
図9に戻り、データ処理部210のステップ(S2300)において、対象端末との間で通信接続不可であった場合のステップ(S2700)について説明する。ここでの処理は、通信接続が不可であった対象端末の稼働データを他の端末を仲介して回収するためのサブコマンドファイルの作成に関する処理である。
【0079】
データ処理部210は、ステップ(S2700)において、サブコマンドファイルを作成して、コマンドファイル記憶部240のサブコマンド記憶用ディレクトリに保存する。当該処理ステップにおける、サブコマンドの作成条件として、以下の3条件がある。
条件1:通信確立割合記憶部250に記憶している通信確立割合において、固定局間通信の通信確立割合がX%未満の場合に作成する。
条件2:通信確立割合記憶部250に記憶している通信確立割合において移動局間通信の通信確立割合が最も高い稼働データ収集装置100を第1引数に指定するように作成する。
条件3:条件2において、移動局間通信の通信確立割合が同程度の場合には、機械属性等に基づいて移動速度の小さい作業機械を優先するように選択する。
【0080】
条件1は、X%以上の割合でサーバ200と直接通信が確立している稼働データ収集装置100に関しては、サブコマンドファイルを作成せず、メインコマンドの実行時に稼働データを直接回収しようという考えに基づいている。例えばXを10%程度に設定した場合、
図8に示す通信確立割合の場合には、“識別番号:21”のみサブコマンドを作成して、他の稼働データ収集装置100を仲介して回収することになる。
【0081】
条件2は通信接続不可となった端末に対して最も移動局間通信が確立する可能性の高い稼働データ収集装置100を仲介するように決定しようという考えに基づいている。例えば、“識別番号:21”が対象端末の場合、
図8に示す通信確立割合に基づくと、移動局間通信の通信確立割合を比較して“識別番号:11”は10.0%の通信確立割合であるのに対して、“識別番号:12”は8.0%であり、“識別番号:21”と通信接続割合の最も大きい端末は“識別番号:11”であると判断することができる。
【0082】
条件3は、条件2において複数の端末が仲介の候補として挙がり、それぞれの通信確立割合が同程度であった場合には、通信接続の安定性を考慮するために作業機械1の機械属性や移動速度を比較して、移動の少ない作業機械を優先するように選択するための条件である。
以上の条件に基づいて当該処理ステップではサブコマンドファイルを作成してコマンドファイル記憶部240のサブコマンド記憶用ディレクトリに保存する。
【0083】
図9に戻り、データ処理部210は、ステップ(S2800)において、ステップ(S2100)で取得した日付が変わったか否かを判断し、日付が変わっていなければ、ステップ(S2300)に戻って処理を繰り返し、日付が変わっていれば、ステップ(S2900)に進む。
【0084】
データ処理部210は、ステップ(S2900)において、コマンドファイル記憶部240に記憶しているメインコマンドファイルとサブコマンドファイルとを削除し、ステップ(S2100)に戻る。
【0085】
以上のようにして、本発明の稼働データ収集システムのサーバ200は、メインコマンドに基づいてすべての稼働データ収集装置100から稼働データを回収するように動作し、ある作業機械1が通信可能エリア外に移動した場合には、前記作業機械1と同一作業エリアで動作している別の作業機械1のなかで、最も効率よく稼働データを回収できる作業機械1を固定局間通信確立割合と移動局間通信確立割合に基づいて決定し、サブコマンドにて当該作業機械1を介して前記固定局401の通信可能エリア外に移動した作業機械1の稼働データを回収するように動作することができる。
【0086】
上述した本発明の作業機械の稼働データ収集システムの一実施の形態によれば、鉱山現場の掘削場で掘削物を掘削するショベル1Aと、掘削場と放土場とを往復し掘削物を積載、運搬、放土するダンプ1Bとの運行パターンと、ダンプ1Bとショベル1Aのグループとに着目して、作業機械同士の接触の可能性を把握したので、通信の確実性を維持しつつ、通信コストの増大を防止できる作業機械の稼働データ収集システムを提供することができる。