特許第6095011号(P6095011)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6095011エレベーターのドア制御装置およびその方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6095011
(24)【登録日】2017年2月24日
(45)【発行日】2017年3月15日
(54)【発明の名称】エレベーターのドア制御装置およびその方法
(51)【国際特許分類】
   B66B 13/12 20060101AFI20170306BHJP
【FI】
   B66B13/12 F
【請求項の数】6
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2014-21149(P2014-21149)
(22)【出願日】2014年2月6日
(65)【公開番号】特開2015-147645(P2015-147645A)
(43)【公開日】2015年8月20日
【審査請求日】2015年11月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000236056
【氏名又は名称】三菱電機ビルテクノサービス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110423
【弁理士】
【氏名又は名称】曾我 道治
(74)【代理人】
【識別番号】100111648
【弁理士】
【氏名又は名称】梶並 順
(74)【代理人】
【識別番号】100122437
【弁理士】
【氏名又は名称】大宅 一宏
(74)【代理人】
【識別番号】100147566
【弁理士】
【氏名又は名称】上田 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100161171
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 潤一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100161115
【弁理士】
【氏名又は名称】飯野 智史
(72)【発明者】
【氏名】菅原 正行
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 茂雄
(72)【発明者】
【氏名】福永 寛
【審査官】 今野 聖一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−298191(JP,A)
【文献】 特開2010−202335(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/027450(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 13/00 − 13/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
出入口を開閉する乗場側ドアの係合ローラにかご側ドアの係合ベーンが係合し、モータにより前記かご側ドアを開閉駆動させることで係合した前記乗場側ドアも開閉駆動させるエレベーターのドア駆動装置において、
前記モータの回転を検出するモータ回転検出部と、
ドアの速度指令値を発生する速度指令部と、
前記かご側ドアと乗場側ドアに関する機械的パラメータを記憶する機械的パラメータ記憶部と、
前記モータ回転検出部からのモータの実回転と前記速度指令部の速度指令値または前記速度指令値に基づくモータのための電流指令値とから、前記かご側ドアと乗場側ドアの係合を検出し、係合検出時の前記モータ回転検出部のモータ回転位置を出力する係合検出部と、
前記係合検出時の前記モータ回転位置に対して前記機械的パラメータに基づき補正を行い、補正されたモータ回転位置を前記かご側ドアの位置に換算した値と前記かご側ドアの全閉位置の差を、全閉状態における前記係合ベーンと係合ローラの係合ギャップとして出力する位置補正部と、
を備えたことを特徴とするエレベーターのドア制御装置。
【請求項2】
前記位置補正部の出力する係合ギャップを記憶する係合ギャップ記憶部をさらに備えたことを特徴とする請求項1に記載のエレベーターのドア制御装置。
【請求項3】
前記機械的パラメータ記憶部が、1つの機械的パラメータから他の機械的パラメータを求める変換式または変換テーブルを記憶していることを特徴とする請求項1または2に記載のエレベーターのドア制御装置。
【請求項4】
前記全閉の状態を、全閉位置近傍に設けられた全閉状態検出用センサが全閉状態を検出し、かつ前記モータ回転検出部の出力に基づくモータの回転速度が零、かつ前記速度指令部の速度指令値に対する電流指令値をトルクに換算したモータのトルクが零または戸閉側に所定の大きさであることから判定することを特徴とする請求項3に記載のエレベーターのドア制御装置。
【請求項5】
前記全閉の状態を、全閉位置近傍に設けられた全閉状態検出用センサが全閉状態を検出した状態とした場合に、前記位置補正部が前記係合ギャップ記憶部に初回値との偏差を記憶させることを特徴とする請求項2に記載のエレベーターのドア制御装置。
【請求項6】
出入口を開閉する乗場側ドアの係合ローラにかご側ドアの係合ベーンが係合し、モータにより前記かご側ドアを開閉駆動させることで係合した前記乗場側ドアも開閉駆動させるエレベーターのドア駆動装置において、
前記モータの実回転と速度指令値または前記速度指令値に基づくモータのための電流指令値とから、前記かご側ドアと乗場側ドアの係合を検出し、係合検出時のモータ回転位置を求める工程と、
前記係合検出時の前記モータ回転位置に対して前記かご側ドアと乗場側ドアに関する機械的パラメータに基づき補正を行い、補正されたモータ回転位置を前記かご側ドアの位置に換算した値と前記かご側ドアの全閉位置の差を、全閉状態における前記係合ベーンと係合ローラの係合ギャップとして求める工程と、
を備えたことを特徴とするエレベーターのドア制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、エレベーターのドアパネルの開閉制御を行うエレベーターのドア制御装置における、かごドアの係合ベーンと乗場ドアの係合ローラ間距離である係合ギャップの推定に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、かごドアの全閉を検出するかごドア全閉認識用センサの動作時から、乗場ドアとかごドアとが係合した時のドア速度指令値とドア速度の偏差を検出するまで(ドア速度指令値とドア速度の偏差から乗場ドアとかごドアの係合を判定)のモータ回転センサの位置変化量を係合ギャップとして検出する制御装置が開示されている。
【0003】
特許文献2には、かごドアの全閉を検出するかごドア全閉認識用センサの動作時に、戸閉方向に一定の大きさのトルクを発生しドア速度が速度零である全閉状態から、かごドアが乗場ドアに係合した際のモータトルクの時間微分値が最大となる位置(モータトルクの時間微分値から乗場ドアとかごドアの係合を判定)までのモータ回転センサの位置変化量を係合ギャップとして検出する制御装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−298191号公報(図1、段落0013)
【特許文献2】特開2010−202335号公報(図1及び段落0035-0036)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
エレベータードアのかごドアと乗場ドアが全閉している状況下で、かごドアの係合ベーンと乗場ドアの係合ローラ間距離である係合ギャップは、階床全てにおいて適正な仕様を満たす必要がある。
【0006】
係合ギャップは、据付時の設定ミスや、経年変化による形状変化、かごドア・乗場ドアの変形により適正な仕様が満たされない場合には、エレベーターかごが昇降時にかごドアの係合ベーンが乗場ドアの係合ローラに接触し機器が損傷したり、着床後のドア開閉において異音や振動を発生する要因となる。
【0007】
そのため、係合ギャップが適正な仕様内で維持されるよう、定期的にメンテナンスされ、一般的にはミリメートル単位の精度が要求される。係合ギャップは、人を介した目視や計測によりチェックすることができるが、全階床をメンテナンスすることは保守員の負荷が大きい。そこで、戸開動作時におけるモータの制御情報から、かごドアの係合ベーンが乗場ドアの係合ローラに接触する状態(係合)を検出することで、検出時点のモータ回転センサの位置変化量を係合ギャップとして推定する手法が考えられる。しかし、ドアパネルもしくはその付属物に取り付けられている係合ベーンの位置は、かごドアと乗場ドアの係合時の衝撃によるドアパネルのねじれに起因して、モータの回転位置から推測されるドア位置とは、必ずしも一致しない。
【0008】
上記特許文献1では、係合検出時のモータの回転位置変化量を係合ギャップとして検出する。
上記特許文献2では、係合検出時のモータの回転位置をかごドアの位置に換算し、係合ギャップとして検出する。
【0009】
上記の制御装置においては、モータの回転位置変化量または回転位置からかごドアの開閉方向への移動距離を求めている。しかし、係合ベーンがかごドアパネルの重心位置に無い場合には、係合のタイミングにおいて、かごドアと乗場ドアの衝突に起因する衝撃力が係合ベーンに作用しており、かごドアと係合ベーンの位置が一致せず、ミリメートル単位の精度が要求される係合ギャップを正確に推定することができない。
【0010】
この発明は、上記のような問題点を解決するためになされたものであり、乗場ドアとかごドアとの間の係合ギャップをより高精度で推定できるエレベーターのドア制御装置等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この発明は、出入口を開閉する乗場側ドアの係合ローラにかご側ドアの係合ベーンが係合し、モータにより前記かご側ドアを開閉駆動させることで係合した前記乗場側ドアも開閉駆動させるエレベーターのドア駆動装置において、前記モータの回転を検出するモータ回転検出部と、ドアの速度指令値を発生する速度指令部と、前記かご側ドアと乗場側ドアに関する機械的パラメータを記憶する機械的パラメータ記憶部と、前記モータ回転検出部からのモータの実回転と前記速度指令部の速度指令値または前記速度指令値に基づくモータのための電流指令値とから、前記かご側ドアと乗場側ドアの係合を検出し、係合検出時の前記モータ回転検出部のモータ回転位置を出力する係合検出部と、前記係合検出時の前記モータ回転位置に対して前記機械的パラメータに基づき補正を行い、補正されたモータ回転位置を前記かご側ドアの位置に換算した値と前記かご側ドアの全閉位置の差を、全閉状態における前記係合ベーンと係合ローラの係合ギャップとして出力する位置補正部と、
を備えたことを特徴とするエレベーターのドア制御装置等にある。
【発明の効果】
【0012】
この発明では、乗場ドアとかごドアとの間の係合ギャップをより高精度で推定できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】この発明の一実施の形態によるエレベーターのドア制御装置を含むドア駆動装置の概略構成図である。
図2】この発明の一実施の形態に係る各乗場側のドア駆動部の概略構成図である。
図3】かご側の係合ベーンと乗場側の係合ローラとの係合状態を説明するための図である。
図4】この発明の実施の形態1によるエレベーターのドア制御装置の制御機能ブロック図である。
図5】この発明の実施の形態1における係合ギャップ推定の効果を説明するための図である。
図6】この発明の実施の形態1に係る係合時のかごドアのねじれを説明するための図である。
図7】この発明の実施の形態1に係るかごドアの運動モデルの一例を示す図である。
図8】この発明の実施の形態2によるエレベーターのドア制御装置の制御機能ブロック図である。
図9】この発明の実施の形態2における係合ギャップ推定の効果を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
この発明では、かごドアの係合ベーンと乗場ドアの係合ローラの係合ギャップを、モータの回転センサから得られるドア位置変化量にドアパネルのねじれ等のドアの機械的な変化量による補正を加えて推定することで、物件毎に異なるドアの大きさや各階毎の乗場意匠の違い等に係らず、係合ギャップを高精度で推定でき、これにより例えば保守負荷等が軽減できる。
【0015】
以下、この発明によるエレベーターのドア制御装置等を各実施の形態に従って図面を用いて説明する。なお、各実施の形態において、同一もしくは相当部分は同一符号で示し、重複する説明は省略する。
【0016】
実施の形態1.
図1はこの発明の一実施の形態によるエレベーターのドア制御装置を含むドア駆動装置の概略構成図である。なお、図1にはかご側のドア駆動部が示されており、各乗場側のドア駆動部は図2に示されている。出入口を開閉するかご側のドアパネルであるかご(側)ドアパネル1(1A,1B)の上端には吊り手2がそれぞれに設けられている。出入口の上縁部には長手方向が水平方向になるように配置された桁3が設けられている。桁3には案内レール4が長手方向が水平方向になるように配置されて設けられている。吊り手2の上方に設けられたハンガーローラ5がレール4上に沿って移動することで吊り手2の水平移動、すなわちドアパネル1を開閉移動させる。
【0017】
同様に、吊り手2の下方に設けられたかごドアアップスラストローラ11が案内レール4の下方に移動可能に取り付けられ、ハンガーローラ5が案内レール4から脱落することを防止している。桁3には、プーリ6A,6Bが互いに離れてそれぞれ回転可能に取り付け(枢着)られている。ひと繋がりのリング状のベルト7が、プーリ6A,6Bの間に巻き掛け(張設)られている。連結具8A,8Bは一端がそれぞれドアパネル1A,1B(またはドアパネル1A,1Bの吊り手2)に、他端はベルト7のそれぞれ下部と上部に連結されている。
【0018】
モータ9はドア制御装置10の制御に従ってプーリ6Aを回転駆動する。ベルト7は伝導ベルトであり、一般的には歯付ベルトまたはVベルトが用いられる。桁3に回転可能に取り付けられ、ベルト7を回転させるために、ベルト7の形状に噛み合うように溝等が加工されているプーリ6A,6Bのプーリ間距離を変更することで、ベルト7の取付張力を調整することができる。モータ9が駆動(付勢)されると、対応したプーリ6Aが回転してベルト7が駆動される。そして、両側のドアパネル1A,1Bが連結具8A,8Bによってベルト7のそれぞれ下部と上部に連結されているので、ベルト7の移動によって互いに反対方向に動作して出入口を開閉する。
【0019】
図1の構成は両開きのドア機構であるが、連結具8をベルト7の上部または下部に連結することで、ドアパネル1は一方方向のみに動作して出入口を開閉する片開きとなる。また、エレベーターかごが着床しモータ9が駆動されるとき、かごドアパネル1または吊り手2に備えつけられた係合ベーン12と、図2に示す後述する乗場ドア側の乗場(側)ドアパネル14または吊り手15に取り付けられた係合ローラ13が接触、係合することで、かご側ドア(1)の駆動力を乗場側のドア(14)に伝達する。
【0020】
図2はこの発明の一実施の形態1に係る乗場側のドア駆動部の概略構成図である。図2図1と左右が逆に示されており、図1のかごドアパネル1Aと図2の乗場ドアパネル14A、図1のかごドアパネル1Bと図2の乗場ドアパネル14B、がそれぞれ対向するように配置されている。図2に示される乗場側ドアでは、出入口を開閉する乗場(側)ドアパネル14(14A,14B)の上端には吊り手15がそれぞれに設けられている。出入口の上縁部には長手方向が水平方向となるように配置された桁16が設けられている。桁16には案内レール17が長手方向が水平方向になるように配置されて設けられている。吊り手15の上方に設けられたハンガーローラ18がレール17に沿って移動することで吊り手15の水平移動、すなわちドアパネル14を開閉移動させる。
【0021】
同様に、吊り手15の下方に設けられた乗場ドアアップスラストローラ19が案内レール17の下方に移動可能に取り付けられ、ハンガーローラ18が案内レール17から脱落することを防止している。桁16には、プーリ20A、29Bが互いに離れてそれぞれ回転可能に取り付け(枢着)られている。ひと繋がりのリング状の連動ロープ21が、プーリ20A,20Bの間に巻き掛け(張設)られている。乗場(側)連結具34A,34Bは一端がそれぞれドアパネル14A,14B(またはドアパネル14A,14Bの吊り手15)に、他端は連動ロープ21のそれぞれ下部と上部に連結されている。連動ロープ21はロープもしくはベルトでもよい。
【0022】
乗場ドアパネル14Bまたはその吊り手15に取り付けられた係合ローラ13に加えられたかごドアの駆動力が、乗場ドアパネル14Bまたは吊り手15に取り付けられた連動ロープ21を介してもう一方の乗場ドアパネル14Aに伝達されることで、乗場ドア(14)は開閉する。図2の乗場ドア(14)には、図示しない錘やバネによる戸閉力発生機構が取り付けられ、かごが着床していない状態で乗場ドアが開かれた場合でも、自動で全閉するように機械的外力が作用する。同様に、図1のかごドア(1)にもかご内で閉じ込めが生じ、モータ9の電気的駆動力が失われた場合でも幼児がかごドア(1)をこじ開けて昇降路に落下しないように機械的な戸閉力発生機構が備え付けられる。そして、全開時にモータ9の駆動力が無い場合、または小さな駆動力のみでも全開を保持できるように機械的な戸開力発生機構が取り付けられる。
【0023】
なお以下の説明等においては、かご側および乗場側のドアとした場合、パネル(1A,1B,14A,14B)、吊り手(2,15)、連結具(8A,8B)を含めたものを示すものとする。
【0024】
図3は係合ベーン12と係合ローラ13との係合状態を説明するための図である。エレベーターのかごは図示しない昇降路内を昇降することから、図1のかごドアパネル1に取り付けられた係合ベーン12は、昇降路内を移動する。一方、図2の乗場側の係合ローラ13は昇降路の内側に突き出ており、エレベーターのかごが昇降する際に、かご側の機器、特に係合ベーン12に接触すると、両者が損傷する。そのため、昇降時のドア全閉状態には図3の(a)に示されるようにかごドア(1)の係合ベーン12と乗場ドア(14)の係合ローラ13間の距離、つまり係合ギャップ22を一定に保つように機械系の調整を行う必要がある。
【0025】
係合ギャップ22が短ければ、据付時の設定ミスや、経年変化による形状変化、かごドア・乗場ドアの変形が生じた際に、機器が損傷する可能性が高くなるデメリットがある。一方、かごドアと乗場ドアの係合は、戸開時にはかごドアが乗場ドアが衝突することになるため、係合時の戸開速度は比較的低速度となる。係合ギャップ22が短ければ低速で駆動する区間が短く設定することができるため、ドア開閉の観点からは戸開時間短縮のメリットがある。逆に係合ギャップ22が長ければ、据付時の設定ミスや、経年変化による形状変化、かごドア・乗場ドアの変形が生じた際に、機器が損傷する可能性が低くなるメリットがある。しかし、戸開時間が長くなるというデメリットがある。一般的に、係合ギャップ22の仕様は、係合ギャップの距離の大きさと、各階床でのバラツキを考慮した許容精度幅(許容範囲)で決められるが、許容精度が小さければ、かごドアの係合ローラ13と乗場全階床の係合ベーン12の間の係合ギャップ22を調整する据付作業の難易度が高くなる。
【0026】
図3の(a)に示されるように、エレベーターが昇降する全閉時にはかごドアパネル1Bの係合ベーン12は乗場ドアパネル14Bの係合ローラ13と係合ギャップ22の距離分離れている。図3の(b)に示されるように、戸開指令によりかごドアパネル1Bが戸開を開始すると、かごドアパネル1B及び係合ベーン12が戸開し、係合ベーン12が係合ギャップ22分の距離を戸開方向に移動した時点で乗場ドアパネル14Bの係合ローラ13に接触し、衝突する。そして、前述した通り、かごドアパネル1Bが係合ベーン12と係合ローラ13の接触により駆動力を乗場ドアパネル14Bに伝達し、両者が一体となり開閉する。
【0027】
係合ベーン12は、乗場ドアパネル14Bの係合ローラ13を複数のベーンで挟み込んでもよく、複数の係合ローラがベーンを挟み込むことで駆動力を伝達してもよい。また、図1の係合ベーン12はかごドアパネル1に取り付けられているが、必ずしもかごドアパネルに取り付けられる必要はなく、かごドアパネル1とは異なる速度で移動してもよい。図1において示されるような複数の係合ベーン12で乗場側の係合ローラ13を挟む場合、全閉時における係合ベーン12間の距離は固定されるが、開閉動作と共に距離が変動してもよい。図3の(a)の係合ギャップ22は、全閉側の係合ベーン12と乗場側の係合ローラ13の距離を示しているが、全開側の係合ベーン12と乗場側の係合ローラ13の距離でもよい。
【0028】
以降において、全閉側の係合ベーン12と乗場側の係合ローラ13の距離である係合ギャップ22を測定する手段を示すが、全開側の係合ベーン12と乗場側の係合ローラ13の距離は、全閉時における係合ベーン12間の距離が既知であれば、乗場側の係合ローラ13の直径寸法から、各係合ベーン12と乗場側の係合ローラ13の距離である係合ギャップ22を測定することができる。
【0029】
基本的には、乗場ドア(1)の係合ローラ13は全閉側または全開側の係合ベーン12両者からおよそ中心の位置にいることが望ましく、いずれか一方の係合ギャップが長い場合には、残り一方が短く機器損傷の可能性が高まることになる。
【0030】
図4はこの発明の実施の形態1によるエレベーターのドア制御装置の制御機能ブロック図である。
制御部101は、速度指令部23、速度制御部24、電流制御部25、電流検出器26、モータ9、モータ回転検出部(回転位置センサ)27、速度演算部28、LPF(ローパスフィルタ)部29、加減算部m1,m2を含む。
係合ギャップ測定部102は、係合検出部30、位置補正部31、機械的パラメータ記憶部32、係合ギャップ記憶部33を含む。
【0031】
この発明によるエレベーターのドア制御装置では、概して、速度指令部23ではドアの速度指令値を発生し、モータ回転検出部27ではモータの回転を検出し、機械的パラメータ記憶部32はかご側ドアと乗場側ドアに関する機械的パラメータを記憶する。そして係合検出部30が、モータ回転検出部27からのモータの実回転位置と速度指令部23の速度指令値と速度演算部28のモータ実速度とから、かご側ドアと乗場側ドアの係合を検出し、係合検出時のモータ回転検出部27のモータ回転位置を出力する。位置補正部31は、係合検出時のモータ回転位置に対して機械的パラメータに基づき補正を行い、補正されたモータ回転位置をかご側ドアの位置に換算した値とかご側ドアの全閉位置の差を、全閉状態における係合ベーンと係合ローラの係合ギャップとして出力する。以下に詳細に説明する。
【0032】
速度指令部23は、かごドア(1)の開閉スタート時からの時間または、モータ9の回転位置(例えばモータ回転検出部27からの出力より得る)に基づいて、予め設定された値または後述する記憶された情報(最高速度、加減速度)に基づいて逐次算出された速度指令値を出力する。利用者を想定した通常用速度指令とは別に、係合ギャップを点検する目的の点検用速度指令値を生成するため、後述の機械的パラメータ記憶部32からの出力として最高速度または加減速度を速度指令部23に入力し、速度指令値は調整してもよい。係合時のかごドア(1)と乗場ドア(14)の衝撃をできるだけ低減するためには、戸開開始後に係合するまでの速度指令値を低速とすればよい。また、後述の係合検出部30において係合検出をし易くするためには、高速の速度指令値で衝突することでかごドア(1)と乗場ドア(14)の衝撃を大きくしてもよい。
【0033】
速度制御部24は、モータの実速度と速度指令値の誤差を補正する手段であり、速度指令部23の出力である速度指令値と、後述の速度演算部28とLPF部29により得られるモータの実速度とを入力とする。速度指令部23は開閉動作の目標となる速度指令値を出力するが、実際の駆動装置には、ゴミ詰まりなどの走行抵抗・ドアパネルの変形による摩擦ロス・駆動中の物体との接触といった外乱が生じるため、実速度との速度誤差を速度制御部24により補正する必要があり、一定の時間間隔で目標とする速度指令値V*に実速度Vが追従するようモータ駆動を制御するものである。速度制御部24は、一般的には伝達関数C(s)=Ksp+Ksi/sで示されるフィードバック制御器である。後述の係合検出部30において実速度を用いて係合検出をし易くするためには、ゲインKsp、Ksiのどちらか一方または両方を小さくすればよい。
【0034】
図4では、速度指令部23の出力である速度指令値と、速度演算部28とLPF部29により得られるモータの実速度とを加減算器m1に入力して誤差を求め、誤差が速度制御部24に入力されている。速度制御部24に加減算器m1を含めてもよい。そして誤差を補正した速度指令値を例えばモータ電流指令値として出力する。
また、上記伝達関数C(s)において、Kspはこのフィードバック制御の比例ゲイン、Ksiは積分ゲインである。
【0035】
電流制御部25はモータ電流指令値に基づいてモータ9に電流を供給するために、電流検出器26による検出電流値を帰還してモータ9に供給される電流値を制御する。電流制御部25の出力は、図示が省略されているPWM(パルス幅変調)インバータを介してモータ9に入力され、ドアの開閉を行うための駆動力を発生させる。
【0036】
電流制御部25は、速度制御部24からのモータ電流指令値を帰還した検出電流値に基づいて補正する。図4では速度制御部24からのモータ電流指令値と検出電流値を加減算器m2に入力して誤差を求め、誤差が電流制御部25に入力されている。電流制御部25に加減算器m2を含めてもよい。
【0037】
モータ9の回転を検出する回転位置センサ等からなるモータ回転検出部27は回転位置を出力する。一般的には、エンコーダやレゾルバといったセンサにより回転位置が検出されるが、回転位置センサの代わりに、電流検出器26で得られる検出電流値を用いてモータ回転位置または回転速度を推定してもよい。
【0038】
速度演算部28は、入力された回転位置を一定時間毎にサンプリングすることで、回転速度を演算し出力する。回転速度は、LPF部29において高周波領域の振動成分を除外し速度制御に必要となる低周波数領域を抽出するローパスフィルタ処理を実施し、フィルタ処理後の回転速度、すなわちモータ9の実回転速度Vを出力する。
【0039】
係合検出部30は、速度演算部28から出力されるモータ回転速度である実速度を用いてかごドア(1)と乗場ドア(14)の係合を検出し、係合検出時のモータ回転位置(かごドア位置)を出力する。
【0040】
図5はこの発明の実施の形態1における係合ギャップ推定の効果を説明するための図である。(a)はモータ速度(実速度と速度指令)、(b)は実速度と速度指令の速度偏差、(c)はモータ回転位置(かごドア位置)のそれぞれ時間的変化を示す。図5に示されるように、時刻0の全閉状態から、戸開開始時刻t0、全開到達時刻tcとしたとき、かごドア(1)の係合ベーン12が乗場ドア(14)の係合ローラ13に衝突し戸開係合した時刻t1で、モータ回転速度(実速度)と速度指令の速度偏差が増大する。
【0041】
そこで、速度偏差が予め定められた所定の値または機械的パラメータに基づいて定められる値である閾値を超えた場合に、係合の検出時刻t1におけるモータ回転位置をかごドアの位置として出力する。モータ回転位置は、プーリ6の既知半径情報から、かごドアの開閉方向の位置に換算することができる。係合検出部30においてモータ回転速度に基づいて、係合を検出するために、速度演算部28の出力するモータ回転速度と、速度指令部23の出力する速度指令値との偏差を求め、またはその偏差にさらにノイズや高域の振動成分を除去するLPF処理を行った値を用いる。
【0042】
ただし、速度指令値を用いずにモータ回転速度である実速度のみを用いて係合を検出してもよい。たとえば、モータ実速度(モータ回転検出部27の出力)の時間微分を監視し、時間微分値が大きいときに係合を検出すればよい。一方、係合ギャップを測定するためには、戸開開始時刻t0における初期位置を基準とする必要がある。時刻t0におけるモータ回転位置を初期状態とすればよい。また、桁3に取り付けられ全閉近傍に設置されたドア位置検出センサである全閉検出用センサ(図示省略)は経年変化による位置変動が生じないことなら、該全閉検出用センサが全閉を検出した時点を基準となる時刻t0としてもよい。
【0043】
位置補正部31は、後述の機械的パラメータ記憶部32からの出力を用いて係合ギャップ22を推定するための図5の(c)に示す位置補正値を算出し、係合検出部30の出力であるモータ回転位置に加算することで係合ギャップを出力する。位置補正値を算出するために速度制御部24の出力である電流指令値に基づくモータトルクを用いてもよい。
【0044】
係合ギャップ検出において、位置補正部31が必要な原因は以下の通りである。一般的に、かごドア(1)の移動距離は開閉方向のみを想定することから、移動距離xは、
【0045】
x=rφ
但し
φ:モータ回転位置
r:プーリ半径
【0046】
として導かれる。しかし、係合ギャップ22の推定はミリメートル単位の高精度が求められるため、ベルト7の開閉方向(水平方向)の伸びを考慮する必要がある。ベルトの伸びは、ベルト7の剛性と、連結具8A,8B上部のベルト7と結合した掴み部に作用するかごドアおよび乗場ドアの質量から算出することができる。
【0047】
さらに、係合ギャップ22の推定にはかごドアの機械的特徴が影響を及ぼす。図6にはこの発明の実施の形態1に係る係合時のかごドアのねじれを説明するための図、図7にはこの発明の実施の形態1に係るかごドアの運動モデルの一例の図を示す。図6に示されるように、かごドアが乗場ドアに衝突し係合した際、かごドアパネル1Bの重心位置と係合ベーン12のかごドアへの取付位置が異なる場合には、重心周りの回転モーメントが発生し、例えばかごドアパネル1Bが重心周りにねじれることで、係合ベーン12も重心周りに回転することになる。この際の、かごドアパネル1B周りの運動に着目したドアモデルは図7で示される。
【0048】
図7に示されるように、かごドアと乗場ドアが係合した状態でハンガーローラ5が案内レール4上から浮き上がらずに接触している場合、下記の運動方程式が成立する。
【0049】
M(ダブルドット)x=Fc−Ff−Fn (1)
M(ダブルドット)y+2ky=Mg (2)
J(ダブルドット)θ+2kWθ=FcHa−FfHb+FnHc (3)
【0050】
但し、(図7参照)
M:かごドアパネル1Bの質量
J:ドア重心周りのかごドアパネル慣性モーメント
k:ハンガーローラ5のバネ剛性
Ha:ドア重心と連結具8B上部の掴み部との距離
Hb:ドア重心とかごドアパネル1B下端との距離
Hc:ドア重心と係合ベーン取付位置との距離
W:ドア重心とハンガーローラ5との距離
Fc:モータによるベルト駆動力
Ff:かごドアパネル1B下端に作用する摩擦力
Fn:乗場ドアによる慣性力
θ:かごドアパネル1Bの重心周りの角度
(ダブルドット):二階微分
x:水平方向軸
y:鉛直方向軸
【0051】
乗場ドアによる慣性力Fnは、かごドアが乗場ドアに衝突する状態において、衝突における係合ベーン12と係合ローラ13との接触時間がΔtであれば、
【0052】
Fn=M(シングルドット)x/Δt
【0053】
となる。一方、係合後にかごドアと乗場ドアが同一の速度で開閉した場合には、乗場ドアの質量Mnに対して、
【0054】
Fn=Mn(ダブルドット)x
【0055】
となる。
【0056】
式(1)〜(3)より求められるかごドアパネル1Bの重心周りの角度θとドア重心と係合ベーン取付位置の距離Hcから、
【0057】
係合ベーンの位置補正値=Hc×sinθ
【0058】
が算出される。ただし、かごドアが比較的早い速度で乗場ドアに衝突する場合には、かごドアと乗場ドアの衝突により、ハンガーローラ5が案内レール4から浮き上がる場合がある。このとき、ハンガーローラ5の浮き上がりは、案内レール4の下方にあるかごドアアップスラストローラ11によって浮き上がり量の上限が制限される。一般的にアップスラストローラ11は案内レール4の下方に強く接触するよう設置された場合、ドア開閉時に生じるロスが増大するため、少し接触するもしくは接触しない程度に調整される。浮き上がり量の上限値y0に対して、ハンガーローラ5とドア重心の距離Wから、かごドアパネル1Bの重心周りの角度θ=y0/Wとして求めることができる。位置補正部31において、浮き上がりの有無を判断するためには、モータの速度指令値または実速度を入力とすればよい。
【0059】
そして、モータ9によるベルト駆動力Fcはモータトルクから算出すればよい。係合直前は、かごドアパネル1Aと1Bの質量に応じた、モータトルクが各連結具8A,8B上部のベルト7と結合した掴み部に作用する。ただし、係合後はかごドアパネル1Bを駆動する駆動力Fcには、乗場ドアの質量Mkの質量相当分が加算されることになる。なお、係合直前のモータ回転速度が一定の速度であれば、モータによるベルト駆動力とかごドアパネル1A,1B下端に作用する摩擦力の総計は等しいことから、摩擦力Ffを推定すればよい。
【0060】
機械的パラメータ記憶部32は、前述の位置補正部31において用いられるドア機械的パラメータを全て記憶しており、読み出し可能である。前述の式(1)〜(3)に用いられるパラメータを記憶すればよい。但し、エレベータードアの一般的な機械的パラメータである出入口幅、出入口高さから、距離や質量に関するおおよそのパラメータを推定してもよい。エレベータードアでは、物件毎に出入口幅、出入口高さが異なる。また、階床毎に乗場ドアの意匠が異なれば、乗場側ドアの質量が異なる。そのため、各階毎の乗場ドアまたはかごドアと乗り場ドアの質量を保存してもよい。
【0061】
かごドアの係合ベーンのドア下端からの距離はHb+Hc、連結具8上部のベルト7と結合した掴み部のドア下端からの距離はHb+Haで求まるが、これらも予め保存しておいてもよい。また、かごドアの係合ベーンのドア下端からの距離、連結具8上部のベルト7と結合した掴み部のドア下端からの距離は、物件毎の出入口高さから類推しても良い。
例えば、ドア重心とかごドアパネル1B下端との距離Hbを出入口高さの半分とし、予め定められたHcとHaから上記の機械的パラメータを決定すれば良い。一般的にはドアの移動距離に関る出入口幅が保存されているため、出入口高さの情報をドア質量と出入口幅から類推しても良い。
上記のように前述の式(1)〜(3)に用いられるパラメータのうち、ベルト駆動力Fcは、速度制御部24の出力である電流指令値に基づくモータトルクより求め、ドアパネル下端に作用する摩擦力Ffおよび乗場ドアによる慣性力Fnはベルト駆動力Fcから上述の計算により求められる。
またその他の各機械的パラメータは基本的にかごドアと各階毎の乗り場ドア毎に機械的パラメータ記憶部32に予め格納しておけばよいが、上述の各推定、類推をするための変換式(関係式)、変換テーブル等を機械的パラメータ記憶部32に予め格納することで、メモリ使用量を減らすようにしてもよい。
【0062】
係合ギャップ記憶部33は、位置補正部31において出力された係合ギャップ22をメモリに記憶する。各階毎の係合ギャップ22を保存(係合ギャップ記憶部33がメモリ機能を含む)または、図示しない通信機能を用いて外部装置から係合ギャップ22の値を読み取ることで、直前に計測した一階床分の係合ギャップのみを保存してもよい。係合ギャップ22の推定値が要求される仕様範囲内であるかを係合ギャップ記憶部33において診断し、正常/異常の信号のみを記憶することでメモリ使用量を省いてもよい。
【0063】
実施の形態2.
図8はこの発明の実施の形態2によるエレベーターのドア制御装置の制御機能ブロック図である。また図9はこの発明の実施の形態2における係合ギャップ推定の効果を説明するための図である。(a)はモータ速度(実速度と速度指令)、(b)はモータトルク、(c)はモータ回転位置(かごドア位置)のそれぞれ時間的変化を示す。
【0064】
図8に示されるように、係合検出部30は速度制御部24の出力である電流指令値を用いてかごドアと乗場ドアの係合を検出し、係合検出時のモータ回転位置を出力する。電流指令値は、モータ9のトルク定数ktにより、トルク指令値と換算できる。そこで、図9に示されるように、全閉状態からの戸開開始時刻t0、全開到達時刻tcとしたとき、かごドア(1)の係合ベーン12が乗場ドア(14)の係合ローラ(13)に衝突し戸開係合した時点で、モータトルクが増大する(図9の(c)参照)。そこで、モータトルクが予め定められた所定の値または機械的パラメータに基づいて定められる値である閾値を超えた場合に、係合の検出時間t1におけるモータ回転位置をかごドアの位置として出力する。モータ回転位置は、プーリ6の既知半径情報から、かごドアの開閉方向の位置に換算することができる。係合検出部30においてモータトルクの時間微分を演算し、時間微分値が予め定められた所定の値より大きいときに係合を検出してもよい。
【0065】
一方、係合ギャップ22を測定するためには、戸開開始時刻t0における初期位置を基準とする必要がある。時刻t0におけるモータ回転位置を初期状態とすればよい。このとき、時刻t0以前は、ドアは全閉状態にある。このときに、モータトルクを零とすればかごドアの全閉状態におけるモータ回転位置を一定に保つことができ、ベルト7の取付張力が十分にあれば係合ベーンの初期位置とモータ回転初期位置を一致させることができる。ドア制御装置10が全閉状態を検出するためには、桁3に取り付けられ全閉近傍に設置された上述の全閉検出用センサ(図示省略)を設けて検出し、モータの回転速度がほぼ零または零、かつモータトルクが零または戸閉側に所定の大きさであるときであればよい。
【0066】
ベルト7の取付張力が緩んでいる場合、ベルト7のたるみやプーリ6A,6Bの歯との噛み合いに起因するガタの影響で係合ベーン12の初期位置とモータ回転初期位置が一致しない。この場合、モータトルクを戸閉側に所定の押付け力を発生するよう制御すればよい。押付け力による開閉方向のベルト7の伸びやたるみの影響を予測することで、初期位置のずれを補正することができる。例えば、押付け力とベルト7の剛性から伸び量を推測すればよい。また、上述の経年変化による位置変動が生じない上述の全閉検出用センサ(図示省略)が全閉から離れた位置に設置されていれば、ベルト7の取付張力が十分でなくても、モータトルクが戸開側に発生した後であるため、ベルト7のたるみの影響を抑制することができる。
【0067】
速度制御部24は、上記実施の形態と同様に、モータの実速度と速度指令値の誤差を補正する手段であり、速度指令部23の出力である速度指令値と、速度演算部28とLPF部29により得られるモータの実速度とを入力とする。速度指令部23は開閉動作の目標となる速度指令値を出力するが、実際の駆動装置には、ゴミ詰まりなどの走行抵抗・ドアパネルの変形による摩擦ロス・駆動中の物体との接触といった外乱が生じるため、実速度との速度誤差を速度制御部24により補正する必要があり、一定の時間間隔で目標とする速度指令値V*に実速度Vが追従するようモータ駆動を制御するものである。速度制御部24は、一般的には伝達関数C(s)=Ksp+Ksi/sで示されるフィードバック制御器である。係合検出部30においてトルクを用いて係合検出をし易くするためには、ゲインKsp、Ksiのどちらか一方もしくは両方を大きくすればよい。
【0068】
図8では、速度指令部23の出力である速度指令値と、速度演算部28とLPF部29により得られるモータの実速度とを加減算器m1に入力して誤差を求め、誤差が速度制御部24に入力されている。速度制御部24に加減算器m1を含めてもよい。そして誤差を補正した速度指令値を例えばモータ電流指令値として出力する。
【0069】
係合ギャップ記憶部33は、位置補正部31において出力された係合ギャップ22をメモリに記憶する。各階毎の係合ギャップ22を保存(係合ギャップ記憶部33がメモリ機能を含む)または、図示しない通信機能を用いて外部装置から係合ギャップの値を読み取ることで、直前に計測した一階床分の係合ギャップのみを保存してもよい。
【0070】
係合検出部30において、初期位置を上述の全閉検出用センサ検出時点とした場合には、上述の全閉状態と全閉検出用センサ検出までの位置を保存すれば、上述の全閉状態からの位置を検出することと等しくなる。また、全閉検出用センサ検出時点からの位置であれば、据付時からの係合ギャップ22の相対的な変化量を高い精度で推定することができる。全閉の状態を、全閉位置近傍に設けられた全閉状態検出用センサが全閉状態を検出した状態とした場合に、位置補正部31は係合ギャップ記憶部33に初回値との偏差を記憶させる。係合ギャップ22の推定値が要求される仕様範囲内であるか否かを係合ギャップ記憶部33または位置補正部31において診断し、正常/異常の信号のみを記憶することでメモリ使用量を省いてもよい。一方、上述の全閉状態におけるモータのトルクや速度を常に等しい状態で開閉することができれば、全閉検出用センサを用いずに、据付時からの係合ギャップ22の相対的な変化量を高い精度で推定することができる。
【0071】
なおこの発明は上記各実施の形態に限定されるものではなく、これらの可能な組み合わせを全て含むものである。
【符号の説明】
【0072】
1,1A,1B かご(側)ドアパネル、2,15 吊り手、3,16 桁、4,17 案内レール、5,18 ハンガーローラ、6A,6B プーリ、7 ベルト、8A,8B 連結具、9 モータ、10 ドア制御装置、11 かごドアアップスラストローラ、12 係合ベーン、13 係合ローラ、14,14A,14B 乗場(側)ドアパネル、19 乗場ドアアップスラストローラ、20A,20B プーリ、21 連動ロープ、22 係合ギャップ、23 速度指令部、24 速度制御部、25 電流制御部、26 電流検出器、27 モータ回転検出部、28 速度演算部、29 LPF部、30 係合検出部、31 位置補正部、32 機械的パラメータ記憶部、33 係合ギャップ記憶部、34A,34B 乗場(側)連結具、101 制御部、102 係合ギャップ測定部、m1,m2 加減算部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9