(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
建築基準法に則した木造建物は、一定量以上の耐力壁と天井面の剛性を確保することで地震や暴風に対して抵抗する構造となっている。
【0007】
新築で木造本堂を建築する場合は、現行法規に則した設計を行う必要があるため、一般的に(1)建物の内部や外周部に耐力壁を設け、(2)天井面に構造用合板などを配置し、(3)さらに耐力壁を設けた軸組に補強用の金物を設けることで木造建築物の強度を向上させている。
【0008】
しかし、伝統的な構法で建築された社寺の本堂などは、建築基準法に定められている壁量や天井面(以下、「水平構面」と称する)の剛性を確保することが難しい。
【0009】
本堂はその使用用途から、
図1に示すように、建物外周部にしか耐力壁7を配置できず、前記(1)を満たすことができない。また、耐力壁7の間隔が広くなるため、水平構面には非常に大きな剛性が必要となり、木材による火打や水平ブレース等だけで補強することが難しくなる。
【0010】
また、
図2に示すように、伝統的な構法で建築された社寺などの本堂は、内陣の天井8bと外陣の天井8aのようにレベルが異なる場合がある。このような場合、構造用合板張りのような同一平面内に補強材を設置する方法で水平構面を固めることができず、前記(2)を満たすことができない。
【0011】
また、社寺等の木造建物は、利用者の目に入る箇所に補強用の金物を設けることができず、前記(3)を満たすことが難しい。さらに、使用上の要望から、壁を設けられないことが多い。さらに、開口部を塞ぐ斜材(ブレース)の設置も難しい。
【0012】
また、伝統構法による木造建物の小屋梁面は、大径の木材を重ねて井桁に組んでいるため直交する梁のレベルが異なる。すなわち、直交する梁は同一平面内に位置しない。そのため、水平方向に必要な剛性や耐力を補強するための火打や水平ブレース等を設置することが困難となる。
【0013】
また、既存の木造本堂を改修する場合は、上記に加えて歴史的な経緯や文化財としての価値や意匠に配慮(見た目が変わらない)した補強計画が求められるので、更に制約が大きくなる。
【0014】
上記特許文献1〜5は、何れも以上の問題、つまり、「木造本堂の耐力壁を増設せずに耐震性能を向上させる」ことの実現は難しいと考えられる。
【0015】
以上示したようなことから、伝統木造建物において、耐力壁を増設することなく耐震性能を向上させることが課題となる。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は、前記従来の問題に鑑み、案出されたもので、その一態様は、水平方向に設けられた下側梁と、水平方向かつ前記下側梁に対して直交方向に設けられた上側梁と、を井桁状に配置した伝統木造建物の水平構面制振補強方法であって、前記下側梁に固定される下側固定部と、前記上側梁に固定される上側固定部と、一端が前記下側固定部に固定された下側プレートと、一端が前記上側固定部に固定された上側プレートと、前記下側プレートと前記上側プレートが重なる箇所に介装された弾性体と、有するダンパーを前記下側梁と前記上側梁とに固定することを特徴とする。
【0017】
また、他の態様として、水平方向に設けられた下側梁と、水平方向かつ前記下側梁に対して直交方向に設けられた上側梁と、を井桁状に配置した伝統木造建物の水平構面制振補強方法であって、前記下側梁に固定される下側固定部と、前記上側梁に固定される上側固定部と、一端が前記下側固定部に固定された下側プレートと、一端が前記上側固定部に固定された上側プレートと、前記下側プレートと前記上側プレートとを跨いで架設するプレートと、前記下側プレートと前記プレート、および、前記上側プレートと前記プレートが重なる箇所に介装された弾性体と、を有するダンパーを前記下側梁と前記上側梁とに固定することを特徴とする。
【0018】
また、他の態様として、水平方向に設けられた下側梁と、水平方向かつ前記下側梁に対して直交方向に設けられた上側梁と、を井桁状に配置した伝統木造建物の水平構面制振補強方法であって、前記下側梁に固定される下側固定部と、前記上側梁に固定される上側固定部と、一端側が前記下側固定部に係止され、他端側が前記上側固定部に係止されたダンパー本体と、を有するダンパーを前記下側梁と前記上側梁とに固定することを特徴とする。
【0019】
また、その一態様として、前記下側固定部と前記上側固定部は、前記下側梁の両側面,前記上側梁の両側面から挟み込んで固定することを特徴とする。
【0020】
また、その一態様として、前記上側固定部は、前記上側梁の側面に当接する平面部と、平面部の下端から折曲して延設された折曲部と、平面部の上端側と折曲部に形成されたボルト孔と、を有する2つの側面板と、前記上側梁の下面に当接し、その両端側にボルト孔が形成された下面板と、前記一方の側面板の平面部のボルト孔と他方の側面板の平面部のボルト孔、一方の側面板の折曲部のボルト孔と下面板のボルト孔、他方の側面板の折曲部のボルト孔と下面板のボルト孔、にそれぞれ挿通されるボルトと、前記側面板の折曲部と前記下面板との間に設けられ、中央にボルトを挿通する孔を有する部材と、を備えたことを特徴とする。
【0021】
また、別の態様として、前記上側固定部は、前記上側梁の側面に当接する平面部と、平面部の下端から折曲して延設された折曲部と、平面部の上端側と折曲部に形成されたボルト孔と、を有する2つの側面板と、前記上側梁の下面に当接し、その両端側にボルト孔が形成された下面板と、前記一方の側面板の平面部のボルト孔と他方の側面板の平面部のボルト孔、一方の側面板の折曲部のボルト孔と下面板のボルト孔、他方の側面板の折曲部のボルト孔と下面板のボルト孔、にそれぞれ挿通されるボルトと、を備え、前記側面板の平面部のボルト孔は鉛直方向の長孔に形成されたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、伝統木造建物において、耐力壁を増設することなく、耐震性能を向上させることが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本願発明は、利用者の目に入らない一つの水平構面にダンパーを設け、耐力壁を増設せずに耐震性能を向上させるものである。
【0025】
以下、本願発明における伝統木造建物の水平構面制振補強方法の実施形態1〜4を
図1〜
図8に基づいて詳述する。
【0026】
[実施形態1]
図1は本実施形態1における伝統木造建物の平面図、
図2は本実施形態1における伝統木造建物の部分断面図を示す。
【0027】
図2に示すように、本実施形態1における伝統木造建物は地盤上に礎石1を据え、礎石1上に垂直柱2を設け、この垂直柱2に貫3や下側梁4などの横構造材を接合している。さらに、
図2,
図3に示すように、下側梁4に対して直交して上側梁5が接合されている。また、
図2に示すように、下側梁4,上側梁5の上方には、屋根6が設けられている。
【0028】
各部は貫やホゾなどの伝統的構法に基づいて接合されており、木造住宅のような取付金物等による強固な接合ではない。そのため、変形時における木材同士のめり込みによる剛性を考慮して設計する必要がある。また、アンカーボルトなどの金物を極力使用していない。屋根6の葺き材は、瓦や銅版、茅葺など種々あるが限定しない。本実施形態1の柱脚部は、礎石立ちを適用しているが、土台立ちなど他の構成でもよい。
【0029】
図3に示すように、天井裏(小屋梁面)の直交する下側梁4と上側梁5は大径の木材を重ねて井桁状に組まれているため、レベルが異なる。本実施形態1では、このレベルの異なる下側梁4と上側梁5とに火打ち形式のダンパー10を固定する。
【0030】
次に、
図4に基づいて、本実施形態1におけるダンパー10を説明する。
図4に示すように、ダンパー10は、上側梁5を挟持固定する上側固定部9aと、下側梁4を挟持固定する下側固定部9bと、一端側が上側固定部9aに固定され他端側が上側梁5に対して直交する方向に延設された上側プレート16と、一端側が下側固定部9bに固定され、他端が下側梁4に対して直交する方向に延設された下側プレート17と、上側プレート16と下側プレート17との重なる箇所に介装された弾性体(例えば、粘弾性体)18と、を有する。
【0031】
上側固定部9aは、
図4(b)に示すように、2枚の側面板11,12と、1枚の下面板13と、を備える。下側固定部9bは、
図4(c)に示すように、2枚の側面板14,15を備える。
【0032】
側面板11,12は、
図4(b)に示すように、上側梁5の側面に当接する平面部11a,12aと、平面部11a,12aの下端から折曲して延設された折曲部11b,12bと、で形成されている。
図4(b),(c)に示すように、平面部11a,12aの上端側にはボルトを挿通するボルト孔11c,12cが穿設されている。このボルト孔11c,12cは、高さ調整ができるように鉛直方向の長孔となっている。また、
図4(a)に示すように、折曲部11b,12bにもボルトを挿通するボルト孔11d,12dが穿設されている。
【0033】
下面板13は、上側梁5の下面に当接する平面部と、平面部の両端に形成されたボルト孔13a,13bと、が形成されている。このボルト孔13a,13bは、側面板11,12のボルト孔11d,12dに対応する位置に形成されている。
【0034】
側面板14,15は、
図4(c)に示すように、下側梁4の側面に当接する平面部14a,15aと、平面部14a,15aの下端から折曲して延設された折曲部14b,15bと、で形成されている。
図4(b),(c)に示すように、平面部14a,15aの下端側にはボルトを挿通するボルト孔14c,15cが穿設されている。また、折曲部14b,15bにもボルトを挿通するボルト孔14d,15dが穿設されている。
【0035】
上側プレート16はその一端側に側面板12のボルト孔12dと下面板13のボルト孔13bに対応する位置にボルトを挿通するボルト孔が形成され、他端側は上側梁5の下面とほぼ同じ高さで延設されている。下側プレート17は、一端側に側面板15のボルト孔15dに対応する位置にボルト孔17aが形成され、側面板14のボルト孔14dに対応する位置にボルト孔17bが形成され、他端側が下側梁4の上面とほぼ同じ高さで延設されている。そして、
図4(a)に示すように、延設された上側プレート16と下側プレート17の先端は重なる。そして、この上側プレート16と下側プレート17との間には弾性体18が介装される。
【0036】
次に、下側梁4と上側梁5に対して、ダンパー10を取り付ける方法を説明する。
【0037】
側面板11のボルト孔11cと側面板12のボルト孔12cにボルトを挿通し、ナットで締め付けることにより、側面板11の平面部11aと側面板12の平面部12aとで上側梁5を両側面から挟持する。また、側面板11のボルト孔11dと、部材24と、下面板13のボルト孔13aとにボルトを挿通し、ナットで締め付ける。また、側面板12のボルト孔12dと上側プレート16のボルト孔と部材24と下面板13のボルト孔13bとにボルトを挿通し、ナットで締め付ける。
【0038】
また、側面板14のボルト孔14cと側面板15のボルト孔15cとにボルトを挿通し、ナットで締め付けることにより、側面板14の平面部14aと側面板15の平面部15aとで下側梁4を両側面から挟持する。下側プレート17のボルト孔17aと側面板15のボルト孔15dとにボルトを挿通し、ナットで締め付ける。下側プレート17のボルト孔17bと側面板14のボルト孔14dとにボルトを挿通し、ナットで締め付ける。
【0039】
このように、本実施形態1によれば、レベルの異なる下側梁4と上側梁5に対し、ダンパー10を取り付けることができる。このダンパー10は、上側プレート16と下側プレート17との間に弾性体18が介装されているため、この弾性体18によりエネルギーを吸収することができ、伝統木造建物の耐震性を向上させることができる。
【0040】
また、本実施形態1によれば、耐震性を向上させるために、耐力壁を増設することがないため、古来より建立されてきた本堂形式を採用することができ、歴史的な経緯や文化財としての価値や意匠に配慮した補強をすることができる。
【0041】
さらに、本実施形態1では、ダンパー10を小屋梁面における下側梁4と上側梁5に取り付けている。小屋梁面に位置する水平構面内は利用者の目に入ることがないため、美観を損なうことがない。また、本実施形態1は、新築でも既存でも適用可能であり、現行法規に則した耐力を発揮することが可能となる。
【0042】
また、内陣と外陣との天井のレベルが異なる伝統構法の木造建築物にも適用可能であり、現行法規に則した耐力を発揮することが可能となる。
【0043】
また、本実施形態1のダンパー10は、下側梁4,上側梁5を挟持して固定するため、既存木材の損傷を抑制することが可能となる。
【0044】
また、本実施形態1のダンパー10は小型かつ軽量に形成されているため、建物を解体しない改修工事でも、作業者1人で持ち運び、木造建物に設置することができる。
【0045】
また、側面板11と下面板13との間と、側面板12と下面板13との間に、部材24を介挿しているため、部材24の高さ寸法を変えることにより、下面板13と側面板11,12のボルト孔11c,12cに挿通されるボルトとの間の高さを調整することができる。その結果、異なる太さの梁に対しても側面板11,12を換えることなく適用することができる。
【0046】
また、同様に、側面板11,12のボルト孔11c,12cを長孔形状とすることにより、下面板13と側面板11,12のボルト孔11c,12cに挿通されるボルトとの間の高さを調整することができ、異なる太さの梁に対しても適用することができる。
【0047】
また、側面板11のボルト孔11cと側面板12のボルト孔12cに挿通するボルトと上側梁5との間に介在物23を設けることにより、仮にボルトとナットが緩んで梁5の両側面から挟持する力が弱まっても、ボルトが介在物23に引っかかりダンパー10の位置を維持することができる。
【0048】
[実施形態2]
本実施形態2は、実施形態1のダンパー10の構成を変更したものである。ダンパー10の構成以外は実施形態1と同様である。
図5に本実施形態2におけるダンパー10を示す。
【0049】
本実施形態2のダンパー10は、隣り合う2つの上側梁5に対し、それぞれ上側固定部9aと上側プレート16と、を設け、一対の上側プレート16は向かい合う方向に延出させている。また、隣り合う2つの下側梁4のうち一方には、下側固定部9bを設ける。本実施形態2の側面板11,12,14,15,上側プレート16は実施形態1よりも幅方向に広く形成されているが、その他は実施形態1と同様である。
【0050】
本実施形態2のダンパー10は、一端が下側固定部9bに固定された下側プレート19を設ける。下側プレート19の一端側には、ボルトを挿通するボルト孔19a,19bが形成されている。この下側プレート19のボルト孔19a,19bと側面板14,15のボルト孔14d,15dにボルトを挿通して、下側プレート19を側面板14,15と共に、下側梁4に固定する。下側プレート19の他端は他方の下側梁4の上に載せるだけで、特に固定しなくてもよい。
【0051】
そして、下側プレート19と上側プレート16の重なる箇所にそれぞれ弾性体18を介装する。
【0052】
このように、本実施形態2によれば、レベルの異なる下側梁4と上側梁5にダンパー10を設けることができ、伝統木造建物の耐震性の向上を図ることが可能となる。また、実施形態1と同様の作用効果を奏する。
【0053】
[実施形態3]
本実施形態3は、実施形態1,2のダンパー10の構成を変更したものである。ダンパー10の構成以外は実施形態1,2と同様である。
図6に本実施形態3におけるダンパー10を示す。
【0054】
本実施形態3のダンパー10は、隣り合う2つの上側梁5に対し、それぞれ上側固定部9aと上側プレート16と、を設け、一対の上側プレート16は向かい合う方向に延出している。また、隣り合う2つの下側梁4に対し、それぞれ下側固定部9bと下側プレート17と、を設け、一対の下側プレート17は向かい方向に延出している。本実施形態3の側面板11,12,14,15,下面板13,上側プレート16,下側プレート17は実施形態1よりも幅方向に広く形成されているが、その他は実施形態1と同様である。
【0055】
本実施形態3のダンパーは、隣り合う下側梁4,4に設けられた下側プレート17,17と、隣り合う上側梁5,5に設けられた上側プレート16,16を跨って架設する略矩形状のプレート20を有する。プレート20の四方の外縁と上側プレート16,16,下側プレート17,17の重なる箇所にそれぞれ弾性体18を介装する。
【0056】
このように、本実施形態3によれば、レベルの異なる下側梁4と上側梁5にダンパー10を設けることができ、伝統木造建物の耐震性の向上を図ることが可能となる。また、実施形態1と同様の作用効果を奏する。
【0057】
[実施形態4]
本実施形態4は、実施形態1〜3のダンパー10の構成を変更したものである。ダンパー10の構成以外は実施形態1と同様である。
図7に本実施形態4におけるダンパー10を示す。
【0058】
本実施形態4のダンパー10は、上側梁5に上側固定部9a、下側梁4に下側固定部9bと下側プレート17が設けられている。
【0059】
側面板12の折曲部12bおよび下面板13の側面板12側は実施形態1〜3よりも延設されており、その延設されている箇所に取付ピンを挿通する取付ピン挿通孔12e,13cが形成されている。
【0060】
また、側面板14の折曲部14bおよび下側プレート17の側面板14側は実施形態1〜3よりも延設されており、この延設されている箇所に取付ピンを挿通する取付ピン挿通孔14e,17cが形成されている。
【0061】
また、本実施形態4のダンパー10は、ダンパー本体22を有する。ダンパー本体22は、三枚のプレート22a,22b,22cと、プレート22aとプレート22bとの間、プレート22bとプレート22cとの間に弾性体18,18が介装されている。三枚のプレート22a,22b,22cのうち真ん中に位置するプレート22bは他のプレート22a,22cよりも長尺に形成されている。このプレート22bのプレート22a,22bと重ならない両端には、取付ピンを挿通する取付ピン挿通孔が形成されている。
【0062】
そして、側面板12の取付ピン挿通孔12eと、ダンパー本体22の取付ピン挿通孔と、下面板13の取付ピン挿通孔13cと、に取付ピンを挿通し、下側プレート17の取付ピン挿通孔17cと、ダンパー本体22の取付ピン挿通孔と、側面板14の取付ピン挿通孔に、取付ピン21a,21bを挿通することにより、ダンパー10を構成する。
【0063】
ここで、ダンパー本体22の取付ピン挿通孔に球面軸受を設けると、高さ調整をしてもスムーズに動作できるため、ダンパー効率が良くなる。
【0064】
このように、本実施形態4によれば、レベルの異なる下側梁4と上側梁5にダンパー10を設けることができ、伝統木造建物の耐震性の向上を図ることが可能となる。また、実施形態1と同様の作用効果を奏する。
【0065】
[木造社寺建築物の設計手順]
ここでは、伝統木造建物の構造解析をする設計手順と結果について示す。
【0066】
解析に用いた伝統木造建物は屋根が銅板葺、軸組は伝統構法によるものとなっており、水平構面にダンパー10を取付けた解析結果となっている。ダンパー10の取付け位置の検討は、以下の手順により行う。
1.伝統木造建物の仕口は、回転剛性をもつバネとして解析モデルを作成する。
2.上記解析モデルについて振動解析を行い、最も大きく揺れる水平面(小屋裏、天井面、床面など)を把握し、該当部位の水平構面にダンパー10の設置を行う。この際、現地で設置可能か否かについても検討を行う。
3.ダンパー10を配置したモデルと配置していないモデルについて振動解析を行い、ダンパー10の取付け前後で解析結果を比較し、効果が得られていることを確認する。
4.3により効果が得られなかった場合、ダンパー10の配置計画を見直し再度振動解析を行う。
【0067】
以下に実建物(木造本堂)を対象に行った解析結果を示す。本解析では、ダンパー10は小屋裏天井面に配置 している。
図8に示す模擬地震波3波について解析を行ったところ、入力波形によって効果にばらつきがあるが、応答変位では最大で約1割の低減効果が確認できた。また、建物負担せん断力は、最大で約2割の低減効果が確認できた。
【0069】
以上、本発明において、記載された具体例に対してのみ詳細に説明したが、本発明の技術思想の範囲で多彩な変形および修正が可能であることは、当業者にとって明白なことであり、このような変形および修正が特許請求の範囲に属することは当然のことである。
【0070】
本発明は木造本堂に限定した技術では無く、その他の木造建築物にも適用できる。また、実施形態1〜4では、粘弾性体18を用いた粘弾性ダンパーを適用したものについて説明したが、粘弾性ダンパー以外にもオイルダンパー、粘性ダンパー、摩擦ダンパーを用いても良い。