特許第6095029号(P6095029)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6095029-重合方法 図000005
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6095029
(24)【登録日】2017年2月24日
(45)【発行日】2017年3月15日
(54)【発明の名称】重合方法
(51)【国際特許分類】
   C08F 210/18 20060101AFI20170306BHJP
【FI】
   C08F210/18
【請求項の数】7
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2015-536803(P2015-536803)
(86)(22)【出願日】2013年10月1日
(65)【公表番号】特表2015-532339(P2015-532339A)
(43)【公表日】2015年11月9日
(86)【国際出願番号】US2013062897
(87)【国際公開番号】WO2014058663
(87)【国際公開日】20140417
【審査請求日】2015年4月10日
(31)【優先権主張番号】13/650,971
(32)【優先日】2012年10月12日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】509004675
【氏名又は名称】エクソンモービル ケミカル パテンツ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100092093
【弁理士】
【氏名又は名称】辻居 幸一
(74)【代理人】
【識別番号】100082005
【弁理士】
【氏名又は名称】熊倉 禎男
(74)【代理人】
【識別番号】100084663
【弁理士】
【氏名又は名称】箱田 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100093300
【弁理士】
【氏名又は名称】浅井 賢治
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 さつき
(72)【発明者】
【氏名】ラヴィシャンカル ペリアガラム エス
(72)【発明者】
【氏名】リード アーロン エイチ
【審査官】 藤代 亮
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2011/087728(WO,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
・IPC
C08F 210/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
重合方法であって、以下の諸工程:
−80℃を超えかつ−30℃未満の第一の供給温度にて、溶媒中にエチレン、3〜12個の炭素原子を持つ少なくとも1種のα−オレフィンおよびジエンを含む供給材料を反応器に供給する工程、ここで該溶媒は第一の溶媒供給量にて供給され;
該反応器に、第一の触媒供給量にて触媒を供給する工程;および
該供給材料を該触媒と接触させて、エチレン−α−オレフィン−ジエンポリマーを含む反応混合物を形成する工程を含み、
該方法が、更に以下の諸工程:
該第一の供給温度を第二の供給温度に減じる工程、また該第二の供給温度は該第一の供給温度よりも少なくとも5℃低く;
該第一の溶媒供給量を第二の溶媒供給量に減じて、該反応混合物における該ポリマーの7質量%を超える濃度を達成する工程;および
該第一の触媒供給量を第二の触媒供給量に減じて、触媒効率を少なくとも10%高める工程を含み、
前記第一の触媒供給量の前記第二の触媒供給量への低減が、400を超える前記触媒効率を達成する、
ことを特徴とする前記方法。
【請求項2】
連鎖移動剤を、第一の連鎖移動剤供給量にて前記反応器に供給し、かつ該第一の連鎖移動剤供給量を第二の連鎖移動剤供給量まで高める工程を含む、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記第二の連鎖移動剤供給量が、前記エチレンの質量を基準として、前記反応器内に100ppm〜500ppmの量で該連鎖移動剤を導入する、請求項記載の方法。
【請求項4】
前記溶媒がn−ヘキサン、イソヘキサン、またはヘキサン異性体の混合物である、請求項1〜の何れか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記エチレン−α−オレフィン−ジエンポリマーが50〜1,000のMLRAを有し、ここでMLRAは、ASTM−D 1646 (1+4、125℃における)に従って測定されたムーニー緩和曲線下の面積である、請求項1〜の何れか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記エチレン−α−オレフィン−ジエンポリマーが2,000未満のcMLRAを有し、ここでcMLRAは、ムーニー粘度について補正されたMLRAであり、またMLRAは、ASTM−D 1646(1+4、125℃における)に従って測定されたムーニー緩和曲線下の面積であり、ムーニー粘度に対するMLRAの補正は、エチレン−α−オレフィン−ジエンポリマーの特定グレードに関するMLRAおよびML(ムーニー粘度)の全データ点に対してラインを近似的に適合させて、測定されたMLRAからcMLRAを算出するために使用する勾配を決定し、該特定のグレードのポリマーについて測定されたMLおよび該勾配を用いてMLRAを補正し、cMLRAを計算することによって実施される、請求項記載の方法。
【請求項7】
前記供給材料がエチレン、プロピレン、およびエチリデンノルボルネンを含む、請求項1〜の何れか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願との相互引照]
本件特許出願は、2012年10月12日付で出願された米国特許出願第13/650,971号に係る利益を請求し、かつこれに対する優先権を主張するものである。該米国特許出願の開示事項全体を、参考としてここに組入れる。
【0002】
本発明は、エチレン-α-オレフィンポリマーを形成するための重合方法および重合方法のエネルギー利用率、触媒利用率、および操作性を改善するための方法に関する。
【背景技術】
【0003】
エチレン-α-オレフィンポリマーを製造する重合法は、一般に、溶媒中にエチレンおよび少なくとも1種のα-オレフィン、および場合によりジエンを含む供給材料を、反応器に供給する工程、および次にチーグラー-ナッタ(Ziegler-Natta)触媒またはメタロセン触媒の存在下で重合を行って、該ポリマーを形成する工程を含む。このエチレンとα-オレフィンとの重合は、発熱工程である。従って、該方法が、例えばリキッド-フル(liquid-full)連続フロー攪拌槽型反応器を用いて、溶液法で行われる場合には、通常この重合熱を、例えば冷却された溶媒を用いて取除く必要がある。
米国特許第7,119,157号は、EP(D)Mエラストマーの製造法を開示しており、該方法は、反応性溶媒を-80℃〜-100℃なる範囲の温度まで予備冷却する工程を含む。エチレン、少なくとも1種の、3〜18個の炭素を持つ高級α-オレフィン、および場合により少なくとも1種の、5〜15個の炭素を持つ共役または非-共役ジエンが、該予備冷却された溶媒の存在下で重合される。この方法によれば、該EP(D)Mエラストマーの収率は、たとえ従来の製造デバイスが変更されずに使用されようとも、反応温度を下げることによって高められる。更には、該EP(D)Mエラストマーの収率および該EP(D)Mエラストマーの回収率を調節する方法も与えられている。
【0004】
しかし、この型の方法におけるエネルギー利用率および触媒利用率は、特に大規模製造プラントにおいては、広範囲に渡って検討されてはいない。例えば、1時間当たり数トンのポリマーを製造する場合、その供給材料の-80℃またはそれ未満への予備冷却は、特にモノマーの供給量を高めた場合には、劇的なエネルギー消費量をもたらす恐れがあり、一方該ポリマーの収率を改善するために、該供給温度は減じられる。
従って、エチレン-α-オレフィンポリマーの製法の改善されたエネルギー利用率、触媒利用率、および操作性を提供し、一方で得られるポリマーの一定した属性をもたらし、かつ既存の重合プラントを変更することのない、該エチレン-α-オレフィンポリマーの製法に対するニーズがある。
【発明の概要】
【0005】
ここにおいては、重合法が提供され、該重合法は、溶媒中にエチレンと、3〜12個の炭素原子を持つ少なくとも1種のα-オレフィンとを含む供給材料を、反応器に供給する工程、ここで該供給材料は一定の供給温度にて該反応器に供給され、かつ該溶媒は一定の溶媒供給量にて供給され;一定の触媒供給量にて該反応器に触媒を供給する工程;および該供給材料を該触媒と接触させて、エチレン-α-オレフィンポリマーを含む反応混合物を形成する工程を含む。
1またはそれ以上の態様において、上記供給材料は、-30℃またはそれ未満、あるいは-40℃またはそれ未満であるが、-80℃を超えない供給温度にて上記反応器に供給され、また上記溶媒は、上記反応混合物中の上記ポリマーの濃度が、該反応混合物の質量を基準として5質量%を超えるような溶媒供給量にて、該反応器に供給される。
また、ここにおいては、重合法のエネルギー利用率を改善するための方法が提供され、ここで該重合法は、第一の供給温度にて、溶媒中にエチレンおよび3〜12個の炭素原子を持つ少なくとも1種のα-オレフィンを含む供給材料を反応器に供給する工程、ここで該溶媒は第一の溶媒供給量にて供給され;第一の触媒供給量にて触媒を該反応器に供給する工程;および該供給材料を該触媒と接触させて、エチレン-α-オレフィンポリマーを含む反応混合物を形成する工程を含み、かつ該エネルギー利用率を改善する方法は、該供給温度を第一の供給温度から第二の供給温度まで減じる工程、該溶媒供給量を、第一の溶媒供給量から第二の溶媒供給量まで減じる工程、および該触媒供給量を、該第一の触媒供給量から第二の触媒供給量まで減じる工程を含む。
【0006】
1またはそれ以上の態様において、上記第二の供給温度は、上記第一の供給温度よりも少なくとも1℃低く、および/または該第二の供給温度は、約-80℃〜約-40℃なる範囲にある。1またはそれ以上の態様において、上記第一の溶媒供給量は、上記反応混合物中の上記ポリマー濃度を、該反応混合物の質量を基準として、少なくとも0.1質量%高めることができ、および/または7質量%を超えるまでに高めることができるように、上記第二の溶媒供給量まで減じられる。1またはそれ以上の態様において、上記第一の触媒供給量は、上記触媒の効率を少なくとも10%高めることができ、および/または該触媒効率を、400を超えるまでに高めることができるように、上記第二の触媒供給量まで減じることができる。
1またはそれ以上の態様において、上記重合法は、更に上記反応器に、上記エチレンの質量基準で約100ppm〜約500ppmなる量の連鎖移動剤を導入する工程をも含む。
ここにおいて記載される上記方法においては、上記供給温度を減じ、上記溶媒供給量を減じ、および上記触媒供給量を減じることにより、重合熱を除去することができる。また、エネルギー利用率および触媒利用率も、触媒および溶媒の少量での使用により改善することができる。該生成するポリマーを回収する際に、触媒残渣および溶媒を回収するのに使用される物質、例えば蒸気および水があまり必要とされないために、エネルギー利用率および触媒利用率における更なる改善を実現し得る。好ましくは、本発明の方法は、既存の重合プラントを変更することなしに、かつ製造される上記ポリマーの諸特性を実質的に維持したまま、該ポリマーの生産速度を実質的に維持し得る。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、上記供給材料を、これが重合反応器内に入る前に、予備冷却するための冷却システムを説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
ここにおいては、エネルギー利用率について改善された重合法が提供される。この重合法は、第一の供給温度にて、溶媒中にエチレンおよび3〜12個の炭素原子を持つ少なくとも1種のα-オレフィンを含む供給材料を反応器に供給する工程、ここで該溶媒は、第一の溶媒供給量にて供給され;第一の触媒供給量にて、該反応器に触媒を供給する工程;および該供給材料を該触媒と接触させて、エチレン-α-オレフィンポリマーを含む反応混合物を形成する工程を含むことができる。ここにおいては、重合法のエネルギー利用率を改善する方法が提供され、ここで該方法は、該供給温度を、第一の供給温度から第二の供給温度まで減じる工程、該溶媒供給量を、第一の溶媒供給量から第二の溶媒供給量まで減じる工程、および該触媒供給量を、第一の触媒供給量から第二の供給量まで減じる工程を含む。
上記重合法は、-30℃またはそれ未満、あるいは-40℃またはそれ未満であり、かつ-80℃を超えない供給温度にて、溶媒中にエチレンおよび少なくとも1種の、3〜12個の炭素原子を持つα-オレフィンを含む供給材料を、反応器に供給する工程;および該反応器内で、該供給材料を触媒と接触させて、エチレン-α-オレフィン-ジエンポリマーを含む反応混合物を形成する工程を含むことができ、ここで該溶媒は、該反応混合物中の該ポリマーの濃度が、該反応混合物の質量を基準として、5質量%を超えるような溶媒供給量にて供給される。
【0009】
本明細書において使用する上記用語「エチレン-α-オレフィンポリマー」は、エチレン-由来の単位、α-オレフィン-由来の単位、および場合によりジエン-由来の単位を含むポリマーを意味する。ここにおいて使用する上記用語「ポリマー濃度」とは、該ポリマー、溶媒、およびエチレン、α-オレフィン、および場合によりジエンを含む未反応モノマーを含有する上記反応混合物中の、該所望のエチレン-α-オレフィンポリマーの質量百分率を意味し、またポリマー生産速度対該反応器に対する溶媒およびモノマーの流量の比から決定することができる。
有用なα-オレフィンは、3〜20個、または3〜12個、または3〜8個の炭素原子を持つα-オレフィンを含む。適当な例示的α-オレフィンは、直鎖および分岐鎖非環式および脂環式α-オレフィンであり、プロピレン、ブテン-1、ペンテン-1、ヘキセン-1、オクテン-1、3-メチルブテン-1、4-メチルペンテン-1、5,5-ジメチルヘキセン-1、ビニルシクロペンタン、アリルシクロペンタン、およびビニルシクロヘキサンを含む。好ましいα-オレフィンはプロピレンである。
【0010】
上記エチレン-α-オレフィンポリマーがジエンを含む場合、該ジエンは、好ましくは非-共役ジエンである。適当な非-共役ジエンは、直鎖および分岐鎖非環式ジエン、例えば1,4-ヘキサジエン、1,5-ヘキサジエン、1,6-オクタジエン、5-メチル-1,4-ヘキサジエン、3,7-ジメチル-1,6-オクタジエン、3,7-ジメチル-1,7-オクタジエン、およびジヒドロミルセンとジヒドロ-オシメンとの混合異性体、および単環脂環式ジエン、例えば1,4-シクロヘキサジエン、1,5-シクロオクタジエン、1,5-シクロドデカジエン、4-ビニルシクロヘキセン、1-アリル-4-イソプロピリデンシクロヘキサン、3-アリルシクロペンテン、4-シクロヘキセン、および1-イソプロペニル-4-(4-ブテニル)シクロヘキサンを含む。多環脂環式縮合および架橋環式ジエンも適しており、テトラヒドロインデン;メチルテトラヒドロインデン;ジシクロペンタジエン;ビシクロ(2,2,1)ヘプタ-2,5-ジエン;2-メチルビシクロヘプタジエン;およびアルケニル、アルキリデン、シクロアルケニルおよびシクロアルキリデンノルボルネン、例えば5-メチレン-2-ノルボルネン、5-イソプロピリデンノルボルネン、5-(4-シクロペンテニル)-2-ノルボルネン;および5-シクロへキシリデン-2-ノルボルネンを含む。好ましいジエンは、5-エチリデン-2-ノルボルネン、1,4-ヘキサジエン、およびジシクロペンタジエンを含み、5-エチリデン-2-ノルボルネンが特に好ましい。
【0011】
有用な溶媒は、エチレン-α-オレフィン重合反応において使用される典型的な条件の下で液体である、5〜10個の炭素原子を持つ飽和脂環式および非環式炭化水素、芳香族炭化水素、およびハロゲン化炭化水素を含むことができる。例えば、該溶媒はn-ヘキサン、イソヘキサン、シクロヘキサン、2-メチルペンタン、イソペンタン、デカン、ベンゼン、トルエン、四塩化炭素、およびテトラクロロエチレンを含むことができる。好ましい溶媒はn-ヘキサン、イソヘキサン、またはヘキサン異性体の混合物である。
1またはそれ以上の態様において、上記溶媒中にエチレンとα-オレフィンとを含む上記供給材料は、予備冷却し、また一定の供給温度にて、あるいは上記第一の供給温度にて供給することができ、引続き-30℃またはそれ未満、あるいは-35℃またはそれ未満、あるいは-40℃またはそれ未満、あるいは-45℃またはそれ未満、あるいは-50℃またはそれ未満、あるいは-55℃またはそれ未満、あるいは-60℃またはそれ未満という、上記低減された第二の供給温度にて供給することができる。予備冷却する場合、該供給材料は、通常エネルギーの消費をもたらし、また該供給温度が低い程、該エネルギーの消費量は大きくなる。従って、エネルギー利用率を最適化するためには、該予備冷却された供給材料は、好ましくは-80℃またはこれを超え、あるいは-70℃またはこれを超え、あるいは-60℃またはこれを超え、あるいは-50℃またはこれを超える温度を持つ。該供給材料を予備冷却し、また上記温度の下限が上記温度の上限よりも低い限り、例えば-80℃よりも高くかつ-30℃よりも低く、あるいは-80℃よりも高くかつ-40℃よりも低く、あるいは-80℃よりも高くかつ-45℃よりも低く、あるいは-80℃よりも高くかつ-50℃よりも低く、あるいは-75℃よりも高くかつ-40℃よりも低く、あるいは-70℃よりも高くかつ-50℃よりも低い限り、本節において述べた如き任意の値どうしの間の供給温度にて、供給することができる。
【0012】
好ましくは、上記第二の供給温度は、反応器に供給する前に、少なくとも1℃、あるいは少なくとも2℃、あるいは少なくとも3℃、あるいは少なくとも5℃、あるいは少なくとも8℃、あるいは少なくとも10℃、あるいは少なくとも15℃、上記第一の供給温度よりも低いものであり得る。
上記供給材料が、第一の供給温度を持つように予備冷却され、また該第一の供給温度が、上記第二の供給温度まで、例えば追加の冷却によって更に下げられる場合、この供給温度の更なる低下は、任意の公知法を利用することによって実現できる。例えば、該供給温度の更なる低減はプロピレン、エチレン、アンモニア、または他のCFCまたはHCFCを主成分とする冷媒等の冷却剤の型を変更し、および/または該冷却剤の温度を下げることによって、実現することができる。あるいはまた、該供給温度の更なる低減は、より多くの該供給材料またはその全てさえをも、例えば熱交換器等の冷却デバイスに通すことにより実現することができる。
【0013】
溶媒およびエチレン、α-オレフィン、および場合によりジエンを含むモノマーは、一つの流れとして上記反応器に導入することができ、ここで該溶媒および異なる個々のモノマーの供給量は異なっていてもよい。エチレン、α-オレフィン、および随意のジエンの供給量(または「モノマー供給量」)は、上記ポリマーの所望の組成毎に異なる、1〜50,000kg/時なる範囲内であり得、また該溶媒の供給量(「溶媒供給量」)は、100〜500,000kg/時なる範囲内であり得る。一態様において、該溶媒は、第一の溶媒供給量にて供給され、次いで該第一の溶媒供給量は、更に上記第二の溶媒供給量まで低下される。本態様において、該第一の溶媒供給量および該第二の溶媒供給量両者は、上記範囲内の値であり得る。好ましくは、上記ポリマー濃度を、上記形成された反応混合物の質量を基準として、少なくとも0.1質量%、または少なくとも0.5質量%、または少なくとも1質量%、または少なくとも1.5質量%、または少なくとも2質量%高めることができるように、該溶媒供給量を、第一の溶媒供給量から第二の溶媒供給量まで下げることができる。
好ましくは、上記反応器内の反応混合物における上記ポリマー濃度が、該反応混合物の質量を基準として、5質量%またはこれを超え、あるいは5.5質量%またはこれを超え、あるいは6質量%またはこれを超え、あるいは6.5質量%またはこれを超え、あるいは7質量%またはこれを超えることができるように、上記溶媒を一定の溶媒供給量にて、即ち上記第一の溶媒供給量にて、次いで上記低下された第二の供給量にて供給することができる。例えば、該反応混合物中の該ポリマー濃度が、該反応混合物の質量を基準として、5質量%〜20質量%、または6質量%〜15質量%、または7質量%〜15質量%となるように、該溶媒を一定の溶媒供給量にて、即ち該第一の溶媒供給量にて、次いで該低下された第二の供給量にて供給することができる。
【0014】
上記重合方法は発熱反応であり、またその熱収支は、上記供給温度、上記溶媒の型、上記溶媒供給量、上記の得られるポリマー、および該ポリマーの生産速度と密接に関連している。該重合が、リキッドフル(liquid full)連続フロー攪拌槽型反応器(Continued Flow Stirred-Tank Reactor; CFSTR)内で実施される場合、該熱収支は、以下の式、即ち式(1)によって記載することができる:
Ms×Cp×(Tr-Tf) = Mp×ΔH (1)
ここで、Msは溶媒供給量(lb/時)であり、Cpは該溶媒の熱容量(kJ/モル)であり、Trは華氏度(°F)での反応器温度であり、Tfは華氏度(°F)での供給温度であり、Mpはポリマー生産速度であり、またΔHは単位生産速度当たりの重合熱である。この式において、該溶媒供給量は該プラントの設計容量に制限され、該熱容量は該溶媒の型と関連しており、また該反応器温度は、典型的にモノマーの転化率およびポリマーの属性に及ぼす効果によって決定付けられる。即ち、この式に基けば、該ポリマーの生産速度は、出来る限り低い温度にて上記供給材料を供給することにより最大にすることができる。しかし、該ポリマーの生産速度も、該プラントの容量またはこの製造工程における他の装置により制限されるので、この式は、より低い供給温度が、該溶媒供給量の低減に係る利益を持つことができることを暗示している可能性がある。このことは、例えば上記回収工程における該溶媒の蒸発による回収が、最もエネルギー消費の多い段階であることから、エネルギー節減の点で直接的な利益をもたらし得る。
【0015】
重合工程のエネルギー利用率を改善するための上記方法は、上記第一の溶媒供給量から上記第二の溶媒供給量へと、該溶媒供給量を下げ、また以下の式、即ち式(2)に従って、上記第一の供給温度から上記第二の供給温度へと、該供給温度を下げる工程を含むことができる:
Ms2×(Tr-Tf2) ≧Ms1×(Tr-Tf1) (2)
ここで、Ms1は該第一の溶媒供給量(lb/時)を表し、またMs2は該第二の溶媒供給量(lb/時)を表し、Trは華氏度(°F)での反応器温度を表し、Tf1は華氏度(°F)での該第一の供給温度を表し、またTf2は華氏度(°F)での該第二の供給温度を表す。式(1)および(2)によれば、ここにおいて与えられる方法において、該第二のポリマー生産速度(Mp2)は、該溶媒供給量を下げ、かつ該供給温度を下げた後には、該第一のポリマー生産速度(Mp1)と同一またはこれよりも大きい可能性がある。該ポリマーの生産速度が、同一の値に維持されている場合には、エネルギーの節減は、該溶媒の回収のためのより低いエネルギー消費量によって実現できる。該ポリマーの生産速度が、該供給温度および該溶媒供給量を下げることにより増大する場合、エネルギーの節減は、たとえ全エネルギー消費量が、実質上同一の値に維持されていたとしても、該溶媒の回収のためのより低いエネルギー消費量により、および/またはポリマーの単位質量当たりの、ポリマー生産のためのより低いエネルギー消費量によって実現し得る。
【0016】
上記溶媒供給量の低減は、反応器の滞留時間の増大をもたらし得ることが分かった。実質的なレベルの長鎖分岐(「LCB」)を持つエチレン-α-オレフィンポリマーに関連して、この増大された滞留時間は、以下において説明されるように、ムーニーに対して補正されたムーニー緩和面積(Mooney Relaxation Area)(cMLRA)によって表されるような、高いLCBに導く可能性がある。
上記LCBにおける増加は、単位生産速度当たりの上記反応器に対する触媒供給量(または「触媒供給量」)における減少を通して、抑制することができることを見出した。このことは、有利なことに、触媒のより少ない利用および触媒効率の増大へと導く。ここにおいて使用する「触媒効率」なる用語は、使用した該触媒の単位質量当たりに製造される該エチレン-α-オレフィンポリマーの質量を意味し、またポリマー生産速度対該触媒供給量の比により評価できる。例えば、300gのエチレン-α-オレフィンポリマーが、1gの触媒を用いて製造できる場合には、該触媒効率は300であるものと決定される。
【0017】
上記触媒は一定の触媒供給量にて供給することができる。本発明の重合方法は、約300を超え、あるいは約350を超え、あるいは約400を超え、あるいは約450を超える触媒効率を持つことができる。上記供給温度が、上記第一の供給温度から上記第二の供給温度まで減じられ、かつ上記溶媒供給量が、上記第一の溶媒供給量から上記第二の溶媒供給量まで減じられる方法において、該触媒は、第一の触媒供給量にて供給することができ、次いで該供給量は、第二の触媒供給量まで減じることができる。好ましくは、該触媒効率が少なくとも5%、または少なくとも8%、または少なくとも15%、または少なくとも20%、または少なくとも25%、または少なくとも30%、または少なくとも35%高めることができるように、該第一の触媒供給量を該第二の触媒供給量まで減じることができる。好ましくは、触媒は、上記溶媒中にエチレン、少なくとも1種のα-オレフィン、および場合によりジエンを含む供給材料とは別途に、上記反応器に供給される。
同様に、触媒供給量が低減された結果としての、ムーニー粘度(ML)における増加が、また上記重合反応器への水素等の連鎖移動剤の添加を適切に調節することを通して、抑制し得ることも見出された。上記溶媒供給量が減じられる、1またはそれ以上の態様において、該連鎖移動剤供給量は、第一の連鎖移動剤供給量から第二の連鎖移動剤供給量まで高めることができる。好ましくは、上述の如く、かなりのLCBレベルを持つエチレン-プロピレン-ジエンポリマー(「EPDM」)を、該ポリマーが実質上一定のMLおよびcMLRAを持ち得るように製造するための重合法において、使用する該連鎖移動剤の量は、該所要レベルのLCBを与えるように変えることができる。
【0018】
好ましくは、上記LCBレベルに関連する諸特性の変動を防止するために、供給温度、溶媒供給量、または触媒供給量の変更に起因する、上記エチレン-α-オレフィンポリマーの分子量および分子量分布における変化も、水素等の連鎖移動剤の使用により最小化することができる。例えば、使用する該連鎖移動剤の量は、既に使用されていない場合には、上記反応器中のエチレンの質量を基準として、1〜約10,000ppm、または1〜1,000ppm、または1〜500ppm、または10〜500ppm、または100〜500ppmの量まで増やすことができる。
重合法のエネルギー利用率を改善する方法において、上記第一の供給温度から上記第二の供給温度への供給温度の低減、上記第一の溶媒供給量から上記第二の溶媒供給量への溶媒供給量の低減、および上記第一の触媒供給量から上記第二の触媒供給量への触媒供給量の低減は、一態様においては同時に達成することができ、またはもう一つの態様においては、任意の順序で別々に達成することができる。
【0019】
ここに記載する本発明の重合法において有用な触媒は、チーグラー-ナッタ(Ziegler-Natta)触媒を含むことができる。当分野においては、公知の任意のチーグラー-ナッタ触媒が有用であり得る。このような触媒は、元素周期律表の第4〜6族に属する遷移金属の化合物を含む。バナジウムおよびチタン化合物を含む触媒が好ましい。適当なバナジウム化合物は一般式:VOzXtを持つ化合物を含み、ここでzは0〜1の値であり、tは2、3または4なる値を持ち、およびzとtとの和は4またはそれ未満であり、またXは17に等しいかまたはこれを超える原子番号を持つハロゲン原子、アセチルアセトナート(AcAc)、ハロアセチルアセトナート、アルコキシドおよびハロアルコキシドからなる群から独立に選択される。適当な触媒の非限定的な例は、以下に列挙するものを含む:VOCl3、VCl4、VO(OC2H5)3、VO(AcAc)2、VOCl2(OC2H5)、VOCl2(OC4H9)、V(AcAc)3およびVOCl2(AcAc)。ここで、(AcAc)はアセチルアセトナートである。適当なチタン化合物は、TiCl3、TiCl4、および式:Ti(OR)4の化合物を含む。ここで、Rは1〜12個の炭素原子を持つ、非環式または脂環式で、一価の炭化水素基である。このようなチタンアルコキシドの例は、テトラブチルチタネート、テトライソプロピルチタネート、およびテトラ(2-エチルヘキシル)チタネートを含む。好ましい触媒系では、Ti(OC4H9)4またはVO(OC2H5)3の何れかとの組合せとして、VCl4またはVOCl3を使用する。
【0020】
有機アルミニウム化合物が、上記チーグラー-ナッタ触媒と共に使用される助触媒として有用である。適当な助触媒は、式:AlR'mX'nの化合物を含み、ここでR'はC1-C12アルキル、アルキルアリール、およびシクロアルキル基からなる群から選択される一価の炭化水素基であり、mは1〜3の数であり、X'は17に等しいかまたはこれを超える原子番号を持つハロゲン原子(Cl、BrおよびI)であり、またmとnとの和は3に等しく、その例は、例えばAl(C2H5)3、Al(C2H5)2Cl、Al(i-C4H9)2Cl、Al(i-C4H9)3およびAl(C2H5)Cl2を含む。このような化合物の混合物を使用することも可能である。好ましい触媒は、Al(C2H5)2ClおよびAl2(C2H5)3Cl3である。
ここに記載される本発明の重合法において有用な触媒は、メタロセン触媒または所謂シングルサイト触媒を含むことができる。ここにおいて、用語「メタロセン」とは、元素周期律表の遷移金属との組合せで、1種またはそれ以上のシクロペンタジエニル部分を含むように定義される。これらは、一般に元素周期律表の第3〜10族の遷移金属および重合中に該遷移金属との結合状態を維持する、少なくとも一つの補助的なリガンドを含む。好ましくは、該遷移金属はカチオン状態で使用され、また助触媒または活性剤によって安定化されている。特に好ましいものは、元素周期律表の第4族金属、例えばチタン、ハフニウム、またはジルコニウムのメタロセンであり、これらは重合において一価のカチオン状態で使用され、また以下においてより詳しく説明されるように、1または2個の補助的なリガンドを含んでいる。
【0021】
好ましくは、上記メタロセン触媒は、嵩高なリガンドを持つ遷移金属触媒である。用語「嵩高なリガンド」は、1またはそれ以上のヘテロ原子を含む環式基であり得る基を形成する複数の結合原子、好ましくは炭素原子を含む。該嵩高なリガンドは、メタロセン型のシクロペンタジエニル誘導体であり得、これは単核または多核リガンドであり得る。1またはそれ以上の嵩高なリガンドを該遷移金属に結合し得る。該嵩高なリガンドは、均質な重合効果を与えるように、該重合中所定の位置に留まっているものと考えられる。他のリガンドを、該遷移金属に結合または配位することができ、これらは好ましくは助触媒または活性剤、例えばヒドロカルビルまたはハロゲン-離脱基によって分離可能である。好ましくは、該遷移金属原子は元素周期律表の第4、5または6族の遷移金属である。より好ましくは、該遷移金属原子は第4族の遷移金属原子を含む。有用なメタロセン触媒は、WO 99/41294において記載されているようなものであり得る。該文献の開示事項を参考としてここに組入れる。
上記メタロセン触媒は、助触媒と共に使用し得る。有用な助触媒はアルモキサン、好ましくは蒸気圧浸透圧法により測定した値として、4〜30なる平均オリゴマー化度を持つメチルアルモキサンを含むことができる。アルモキサンは、直鎖アルカンに対する溶解度を与えるべく、あるいはスラリーとして使用されるように変性することができるが、一般的にはトルエン溶液で使用し得る。このような溶液は、未反応のトリアルキルアルミニウムを含む可能性があり、また該アルモキサンの濃度は、1L当たりのモルAlとして示すことができ、その数値は、オリゴマーを形成すべく反応しなかったあらゆるトリアルキルアルミニウムを含む。該アルモキサンは、これを助触媒として使用する場合、上記遷移金属に対して、50またはこれを超え、好ましくは100またはこれを超え、かつ好ましくは1,000またはそれ未満、好ましくは500またはそれ未満なるモル比にて、一般的にモル過剰状態で使用し得る。
【0022】
メタロセンは、また非-配位性アニオン(または「NCA」)であり得る助触媒と共に使用し得る。ここで使用するような用語「非-配位性アニオン」とは、弱く配位したアニオンを含み、また該配位は、何れにしても、該不飽和モノマー成分の挿入を可能とするような重合の進行によって立証されるように、十分に弱いものであり得る。該非-配位性アニオンは、当分野において説明されている方法の何れかにおいて、該メタロセンと共に供給され、またこれと反応し得る。該非-配位性アニオンは、ハロゲン化され、テトラアリール-置換された第10〜14族の非-炭素系元素を主成分とするアニオン、とりわけ該アリール基上の、あるいはこれらアリール基上のアルキル置換基の水素原子と置換されたフッ素原子を含むものであり得る。該非-配位性アニオンは、助触媒として使用される場合には、該遷移金属成分に対してほぼ等モル量、例えば少なくとも0.25、または少なくとも0.5、または少なくとも0.8で、かつ4未満、または2未満、または1.5未満なる量で使用し得る。
上記重合法における触媒、温度、および圧力を含む反応条件は、変えることができる。エチレン-α-オレフィンポリマーの重合にとって適した温度は、-50〜150℃、または0〜100℃、または10〜70℃なる範囲内であり得る。エチレン-α-オレフィンポリマーの重合にとって適した圧力は、上記重合反応器内の温度毎に変えることができる。一般に、該圧力は、上記溶媒を液相状態に維持するのに十分なレベルに保つことができる。該溶媒を液相状態に維持するための好ましい圧力は、0.2〜1.5MPa(20〜200psig)であり得る。
【0023】
好ましくは、上記エチレン-α-オレフィンポリマーは、該エチレン-α-オレフィンポリマーの質量を基準として、10質量%〜90質量%、または15質量%〜80質量%、または40質量%〜80質量%なるエチレン-由来の単位、および該エチレン-α-オレフィンポリマーの質量を基準として、90質量%〜10質量%、または85質量%〜20質量%、または60質量%〜20質量%なるα-オレフィン-由来の単位を含むことができる。好ましくは、上記ジエン-由来の単位の量は、該エチレン-α-オレフィンポリマーの質量を基準として、0.1質量%〜20質量%、または0.1質量%〜15質量%、または1質量%〜15質量%、または3質量%〜12質量%であり得る。エチレン、α-オレフィン、および随意のジエンの異なる供給量が、所望の組成上の多様性を得るために、上記反応系にとって有用であり得る。該供給量は、また該エチレン-α-オレフィンポリマーの種々の生産速度に応じて、および/または上記供給温度に対してさえも変えることができる。
好ましくは、上記エチレン-α-オレフィンポリマーは1、2、5、8、10、および15という任意の下限と、100、90、85、80、および75という任意の上限との間の、ASTM-1646により(1+4、125℃における)において測定されたムーニー粘度を持つことができる。例えば、該エチレン-α-オレフィンポリマーは、約5〜90、または8〜85、または10〜80、または15〜75なるムーニー粘度を持つことができる。
【0024】
上記エチレン-α-オレフィンポリマーは、かなりのレベルの長鎖分岐(「LCB」)を含むことができる。該長鎖分岐のレベルは、該ポリマーのムーニー緩和により特徴付けることができる。というのは、緩和時間が、該ポリマーの長鎖分岐により構築される高分子量種の存在に強く依存し、また高分子量巨大分子が徐々に緩み、結果として大きなムーニー緩和曲線(MLRA)下の面積へと導くからである。これは、MV 2000 E(アルファシステムズ(Alpha Systems)社により製造されたもの)またはムーニー緩和を測定できる等価な装置を用いて、ASTM D 1646(1+4、125℃にて)に従って測定し得る。MLRAは、ローター停止の1秒後に開始し、かつ応力緩和時間の100秒までの測定値を集めるべく継続して、ムーニー応力緩和を測定することにより表すことができる。MLRAは、以下の式、即ち式(3)に従って計算することができる:
MLRA = [100(a+1)-1]×[k/(a+1)] (3)
ここにおいて、「a」および「k」は、データサンプリングプロトコールが組み込まれた装置を利用し、また1〜100秒なる緩和時間内に測定された、log(ムーニートルク)対log(緩和時間)の最小二乗回帰ラインの、夫々勾配および切片である。
【0025】
MLRAは、上記ムーニー粘度の測定後に、ASTM D 1646(1+4、125℃にて)に従って測定され、また結果として該指数緩和曲線の開始点が、該ML値によって決定されるので、これは該ムーニー粘度と密接に関連付けられている。ムーニーに関して補正されたMLRA(「cMLRA」)は、該ムーニー粘度依存性の実質上の排除を可能とし、またその結果として上記エチレン-α-オレフィンポリマーのLCBレベルを表すのに使用し得る。ムーニー粘度に対するMLRAの補正は、エチレン-α-オレフィンポリマーの特定グレードに関するMLRAおよびMLの全データ点に対してラインを近似的に適合させて、測定されたMLRAからcMLRAを算出するために使用する勾配を決定し、また次に該特定のグレードのポリマーについて測定されたMLおよび該勾配を用いて、該cMLRAを計算することによって実施し得る。
上記エチレン-α-オレフィンポリマーは50〜1,000、または80〜800、または100〜500、または150〜300なる、ASTM D 1646(1+4、125℃にて)により測定された如きMLRAを持つことができる。該エチレン-α-オレフィンポリマーは2,000未満、または10〜1,000、または30〜800、または50〜500、または100〜350なるcMLRAを持つことができる。
【0026】
反応器内での重合の後、脱-触媒工程を実施して、得られる反応混合物中に残留しているあらゆる触媒残渣を除去することができる。任意の公知の脱-触媒工程が有用であり得る。例えば、脱灰工程を利用して、該反応を終了し、かつあらゆる触媒残渣を除去することができる。このような態様において、エチレン-α-オレフィンポリマー、溶媒、未反応モノマー、および該反応器から出てくる触媒残渣を含有する該反応混合物を、該反応混合物の量を基準として、50〜150体積%、または60〜80体積%なる量の、ヒドロキシド物質等の急冷剤(quench agent)、例えば冷却水、および0.001〜0.01質量%なる量の乳化剤と混合することができる。その後、該ヒドロキシド層を、比重の差により除去し、それにより該ヒドロキシド層中に溶解している該触媒残渣を除去する。この脱灰工程を多段階で行って、出来る限りの該触媒残渣を除去することができる。
上記脱灰工程後に得られるポリマー流は、固体ポリマー、未反応モノマー、および溶媒を含んでいる可能性がある。該溶媒の回収は、任意の公知方法で実施し得る。1またはそれ以上の好ましい態様において、該ポリマーの回収は水蒸気蒸留法で実施でき、該方法において、該脱灰工程および未反応モノマーの回収後に、該ポリマー流は、該溶媒を蒸発させるために、蒸気を用いて約95℃またはそれ以上の温度に維持されているストリッパーに移される。幾つかの態様において、該ポリマーの回収は「直接的乾燥法」によって実施でき、そこにおいて該ポリマー流は、熱処理、フラッシュ容器を用いた減圧、および次の熱的乾燥(押出(extrusion))によって回収できる。
【0027】
本発明の重合法において、所定のポリマー生産速度での上記溶媒供給量の低減は、ポリマー濃度の増加およびその結果としてのセメント粘度の増大へと導く可能性があるものと考えられている。ここにおいて使用する用語「セメント粘度(cement viscosity)」とは、上記反応混合物の粘度を意味する。ポリマー濃度に伴う該セメント粘度の増加は、ポリマーの分子量(ムーニー粘度)の関数であり、また該プラントの操作性、例えば急冷剤により該反応器の下流域において該重合が停止された後に、上記触媒残渣を除去する(脱灰)能力に対して、重要な影響を持つ。該脱灰工程は、該触媒残渣の炭化水素相から水性相への移動が、拡散制御されている質量移動制御工程であると考えられている。これは、典型的には攪拌された容器内の、向流式多段フロー工程において実現し得る。使用する段数は、一定粘度にある該ポリマーから該触媒残渣を除去するためのエネルギーの消費量を決定付ける。
上記供給材料の追加の予備冷却は、最初はエネルギー消費量を増大する恐れがあるが、上記溶媒回収工程におけるエネルギー節減のために、依然としてエネルギー消費量における正味の減少がある。該回収工程は、本発明の上記エチレン-α-オレフィンポリマーの分離または回収において最もエネルギーを消費する工程であり得、これは考慮されるべきである。その間に、低減された触媒使用量および増大した触媒効率は、より低い触媒コストをもたらし並びに該ポリマー中の低い触媒残渣レベルに至るに必要とされ、かつ結果としてより高いエネルギー利用率を実現するに要する脱灰段数の減少をもたらす。
【実施例】
【0028】
本発明のより良好な理解は、以下の実施例に照らして得ることができ、該実施例は、例示の目的で述べられるものであって、本発明を限定するものと解釈すべきではない。
実施例
実施例1および2における重合はプロダクトA、即ちEPDMを製造するための既存のプラント内で、本発明に従って実施された。ここでEPDMは、その質量を基準として、約76質量%なるエチレン-由来の単位、約3.3質量%なる5-エチリデン-2-ノルボルネン(ENB)-由来の単位、および残部のプロピレン-由来の単位を含む。該EPDMは、24という目標ムーニー粘度(ML)を持つ。イソヘキサン中にエチレン、プロピレン、および5-エチリデン-2-ノルボルネン(ENB)を含む供給材料を、重合用の連続フロー攪拌式反応器に入れる前に、厳密に精製して、触媒毒として作用する可能性のある極性不純物を除去した。該供給材料とは別に供給された該触媒および助触媒は、バナジウムテトラクロリド(VCl4)およびエチルアルミニウムセスキクロリド(AlEt2Cl/AlEtCl2)であった。図1は、該供給材料を予備冷却するための冷蔵システムを示す。図1において、要素1378、202、204、205、および502は、冷却デバイスとしての熱交換器を表す。プロピレン流が、熱交換器204、202、205、および502における冷却剤として使用され、また冷却水流が、熱交換器1378において使用された。
【0029】
実施例1においては、上記供給材料を、上記反応器に入れる前に、図1に示したような冷蔵システムにより、-35℃まで予備冷却した。実施例2においては、上記供給温度を、熱交換器202および205の周りの制御システムにおける拘束を外すことによって、-35℃の上記第一の供給温度から-43℃の上記第二の供給温度まで低下させて、反応器201Aおよび201Bに入れる前に、これらの熱交換器により多くの該供給材料を流通させた。上記溶媒供給量を、実施例1における第一の溶媒供給量から実施例2における第二の溶媒供給量まで下げ、上記触媒供給量を、実施例1における第一の触媒供給量から実施例2における第二の触媒供給量まで下げたが、実施例2におけるモノマー供給量は、実施例1におけるものと同一の値に維持した。幾つかのプロセス条件を以下の表1に示す。
重合後、反応混合物が形成され、これはEPDM、触媒残渣、溶媒および未反応モノマーを含んでいた。次いで、実施例1および実施例2の各反応混合物を、以下の操作により分離した。該反応混合物を、該反応器から放出した。次に、冷却水を該反応器に添加した。次いで、その水性相を該反応混合物から分離して、該触媒残渣を除去した。冷却水は、該反応混合物が該触媒残渣を実質的に含まなくなるまで、多数回に渡り添加し、かつ分離することができる。上記脱灰工程に次いで、該反応混合物をストリッパーに移した。該ストリッパーは、ヘキサン異性体を蒸発させるために、蒸気を用いて約95℃またはこれより高い温度に維持された。
【0030】
【0031】
表1から、実施例1と比較して、実施例2では、低減された溶媒供給量のためにポリマー濃度が増大され、かつ触媒供給量の減少のために触媒効率が高められたことを理解することができる。上記脱灰段数は6から3に減じられた。これらの変化は、上記反応混合物から溶媒を分離するための水蒸気使用量をかなり節減した。エネルギー利用率および原料に係るその他の節減は、冷却水の消費量、電力および触媒の低減を含んでいた。実施例1の方法と比較した、実施例2の方法に従うユーティリティーおよび原料における通年換算の節減量を、以下の表2に示す。
【0032】
【0033】
実施例1および2各々において、プロダクトAに係る15個のサンプルを得、その粘度、MLRAおよびcMLRAを測定した。測定されたMLRAおよびMLに係るデータに基づいて、MLRAからcMLRAを算出するための勾配を、測定データとの適合から、MLRA=14.827×ML-179.1、およびR2= 0.9721として見積もった。次いで、24ML(プロダクトAの目標ML)における各サンプルのcMLRAを、該勾配を用いて、測定されたMLRAから算出した。結果を以下の表3に示す。製品のムーニー粘度およびムーニー応力緩和を、本明細書において記載の如く、ASTM法D 1646により(1+4、125℃における)において測定した。
【0034】
【0035】
表3から、これらサンプルの長鎖分岐レベルを表す、ムーニー粘度およびcMLRAは、実施例1および2のサンプルにおいて、実質的に同一の範囲内に維持されたことを理解することができる。即ち、実施例2の方法において、エネルギー利用率は改善され、また同時に該製品の属性が維持された。
本明細書において本発明の様々な局面を説明してきたが、本発明に係る更なる特定の態様は、以下のパラグラフにおいて述べられるものを包含する。
パラグラフ1:以下の諸工程を含む重合方法:溶媒中にエチレンおよび少なくとも1種の3〜12個の炭素原子を持つα-オレフィンを含有する供給材料を反応器に供給する工程、ここで該供給材料は約-30℃〜約-80℃なる範囲の温度にて供給され;および該反応器内で該供給材料を触媒と接触させて、エチレン-α-オレフィン-ジエンポリマーを含む反応混合物を形成する工程、ここで該溶媒は、該反応混合物中の該ポリマーの濃度が、該反応混合物の質量を基準として5質量%を超えるような溶媒供給量にて供給される。
パラグラフ2:上記供給温度が-40℃またはそれ未満である、パラグラフ1記載の方法。
パラグラフ3:上記ポリマー濃度が上記反応混合物の質量を基準として7質量%を超える、パラグラフ1または2記載の方法。
パラグラフ4:上記触媒を、その触媒効率が400を超えるような、触媒供給量にて供給する工程を含む、パラグラフ1〜3の何れかに記載の方法。
【0036】
パラグラフ5:上記触媒が元素周期律表における第4〜6族の遷移金属を含む、パラグラフ1〜4の何れかに記載の方法。
パラグラフ6:上記遷移金属がバナジウムまたはチタンである、パラグラフ5記載の方法。
パラグラフ7:上記方法が、上記エチレンの質量を基準として、100〜500ppmなる量の連鎖移動剤の存在下で行われる、パラグラフ1〜6の何れかに記載の方法。
パラグラフ8:上記溶媒が、5〜10個の炭素原子を持つ脂環式および非環式炭化水素、芳香族炭化水素、芳香族炭化水素、およびハロゲン化炭化水素の少なくとも1種を含む、パラグラフ1〜7の何れかに記載の方法。
パラグラフ9:上記溶媒がn-ヘキサン、イソヘキサン、またはヘキサン異性体の混合物である、パラグラフ1〜8の何れかに記載の方法。
パラグラフ10:上記エチレン-α-オレフィンポリマーが、ASTM-D 1646によって測定された約10〜100のムーニー粘度(ML 1+4、125℃)を持つ、パラグラフ1〜9の何れかに記載の方法。
パラグラフ11:上記エチレン-α-オレフィンポリマーが約50〜約1,000なるMLRAを有し、ここでMLRAはASTM-D 1646(1+4、125℃における)に従って測定されたムーニー緩和曲線下の面積である、パラグラフ1〜10の何れかに記載の方法。
【0037】
パラグラフ12:上記エチレン-α-オレフィンポリマーが2,000未満のcMLRAを有し、ここでcMLRAはムーニー粘度につき補正されたMLRAであり、またMLRAはASTM-D 1646(1+4、125℃における)に従って測定されたムーニー緩和曲線下の面積である、パラグラフ1〜11の何れかに記載の方法。
パラグラフ13:上記エチレン-α-オレフィンポリマーが、該ポリマーの全質量を基準として、約10質量%〜約90質量%のエチレン-由来の単位、約90質量%〜約10質量%の少なくとも1種のα-オレフィン-由来の単位を含む、パラグラフ1〜12の何れかに記載の方法。
パラグラフ14:上記ポリマーが、該ポリマーの全質量を基準として、約0.1質量%〜約15質量%のジエン-由来の単位を含む、パラグラフ1〜13の何れかに記載の方法。
パラグラフ15:上記供給材料がエチレン、プロピレン、およびエチリデンノルボルネンを含む、パラグラフ1〜14の何れかに記載の方法。
パラグラフ16:重合法のエネルギー利用率を改善するための方法であり、ここで該重合法は、第一の供給温度にて、溶媒中にエチレンおよび3〜12個の炭素原子を持つ少なくとも1種のα-オレフィンを含む供給材料を反応器に供給する工程、ここで該溶媒は第一の溶媒供給量にて供給され;第一の触媒供給量にて触媒を該反応器に供給する工程;および該供給材料を、該触媒と接触させて、エチレン-α-オレフィンポリマーを含む反応混合物を形成する工程を含み、かつ該エネルギー利用率を改善する方法は、該第一の供給温度を第二の供給温度に減じる工程;該第一の溶媒供給量を第二の溶媒供給量に減じる工程;および該第一の触媒供給量を第二の触媒供給量に減じる工程を含む。
【0038】
パラグラフ17:上記第二の供給温度が、上記第一の供給温度よりも少なくとも1℃低い、パラグラフ16記載の方法。
パラグラフ18:上記第二の供給温度が、-40℃またはそれ未満であるが、-80℃を超える、パラグラフ16または17記載の方法。
パラグラフ19:上記第一の溶媒供給量の上記第二の溶媒供給量への低減が、上記反応混合物中の上記ポリマーの濃度を少なくとも1質量%増大する、パラグラフ16〜18の何れかに記載の方法。
パラグラフ20:上記第一の溶媒供給量の上記第二の溶媒供給量への低減が、上記反応混合物中の7質量%を超えるポリマー濃度を達成する、パラグラフ16〜19の何れかに記載の方法。
パラグラフ21:上記第一の溶媒供給量の上記第二の溶媒供給量への低減が、以下の式に従う、パラグラフ16〜20の何れかに記載の方法:
Ms2×(Tr-Tf2) ≧Ms1×(Tr-Tf1)
ここで、Ms1は該第一の溶媒供給量を表し、またMs2は該第二の溶媒供給量を表し、Trは上記反応器温度を表し、Tf1は上記第一の供給温度を表し、およびTf2は上記第二の供給温度を表す。
パラグラフ22:上記第一の触媒供給量の上記第二の触媒供給量への低減が、少なくとも10%上記触媒の効率を高める、パラグラフ16〜21の何れかに記載の方法。
【0039】
パラグラフ23:上記第一の触媒供給量の上記第二の触媒供給量への低減が、400を超える上記触媒効率を達成する、パラグラフ16〜22の何れかに記載の方法。
パラグラフ24:連鎖移動剤を第一の連鎖移動剤の比率にて上記反応器に供給する工程、および該第一の連鎖移動剤供給量を第二の連鎖移動剤供給量に高める工程を含む、パラグラフ16〜23の何れかに記載の方法。
パラグラフ25:上記第一の連鎖移動剤供給量の上記第二の連鎖移動剤供給量への低減が、上記エチレンの質量を基準として上記反応器における上記連鎖移動剤の量100ppm〜500ppmを達成する、パラグラフ16〜24の何れかに記載の方法。
パラグラフ26:重合方法であり、該方法は以下の諸工程:-80℃を超えかつ-30℃未満の第一の供給温度にて、溶媒中にエチレン、3〜12個の炭素原子を持つ少なくとも1種のα-オレフィンおよびジエンを含む供給材料を反応器に供給する工程、ここで該溶媒は第一の溶媒供給量にて供給され;該反応器に、第一の触媒供給量にて触媒を供給する工程;および該供給材料を該触媒と接触させて、エチレン-α-オレフィン-ジエンポリマーを含む反応混合物を形成する工程を含み、ここで該方法は、更に以下の諸工程:該第一の供給温度を第二の供給温度に減じる工程、および該第二の供給温度は該第一の供給温度よりも少なくとも5℃低く;該第一の溶媒供給量を第二の溶媒供給量に減じて、7質量%を超える該反応混合物における該ポリマーの濃度を達成する工程;および該第一の触媒供給量を第二の触媒供給量に減じて、少なくとも10%触媒の効率を高める工程を含む。
【0040】
本明細書において引用された全ての特許、特許出願、テスト手順、優先権証明書、論文、刊行物、マニュアル、およびその他の文書を、このような組入れが許されるあらゆる管轄区域に対して、完全に参考として組み入れる。全ての数値は、「約(about)」または「およそ(approximately)」なる語を伴って表示された値であり、また当業者によって予想されるであろう実験誤差および偏差を考慮している。数値的下限および数値的上限が、ここにおいて列挙されている場合には、任意の下限から任意の上限までの範囲が意図されている。
【0041】
本発明の例示的な態様を詳細に説明してきたが、様々な他の改良が、本発明の精神および範囲を逸脱することなしに、当業者にとって明らかであり、また当業者によって容易になし得るものであることが理解されよう。従って、ここに添付した特許請求の範囲に係る範囲は、本明細書において述べられた実施例および説明に限定されるものではなく、寧ろ特許請求の範囲は、本件開示に備わっている特許性のある新規事項に係る諸特徴全てを、本発明に係る分野における当業者によりその等価物として処理されるであろうあらゆる特徴を含めて、包含するものと解釈されるべきことを意図している。
図1