(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の好ましい実施形態について添付図面を参照しながら説明する。
【0022】
[1.システムの全体構成]
図1及び
図2は、空間を、例えば、インテリジェントスペースとして機能させるためのシステム1を示している。システム1は、空間内にいる人間等に対して、情報サービス又は物理的なサービス等を提供するため空間内に設置される1又は複数のデバイス2を有している。本実施形態では、空間として、建造物の部屋内の空間を例として説明するが、空間としては、廊下、屋外の道路などの他の空間であってもよい。
なお、本実施形態では、システム1によって実現される機能的な空間を、「インテリジェントスペース」とよぶが、システム1が実現する機能的な空間は、スマートスペース、pervasive computing、sensor networkなどであってもよい。
【0023】
本実施形態では、前記デバイス2として、空間内の状況を検出するセンサ(センシングデバイス)21と、空間内で何らかの作用を生じさせる作用デバイス(サービスデバイス)22とが、含まれる。
【0024】
以下では、センサ21として、カメラ(イメージセンサ)を例として説明するが、センサ21としては、音響センサ、触覚センサ、その他空間における状況を検出することができる様々なセンサを採用することができる。
【0025】
作用デバイス22は、空間内において何らかの情報を人間に提示する作用を生じさせ、又は、何らかの物理的な作用を人間に与えるためのものであり、主に、空間内の人間へのサービス提供に用いられる。
以下では、
図2に示すように、作用デバイス22として、プロジェクタ22aと、照明22bを例として説明するが、作用デバイス22としては、スピーカー、スクリーン、ポインティングデバイス、スイッチなど、様々な機器を採用することができる。
【0026】
さらに、本実施形態では、デバイス2として、
図2に示すように、移動モジュール3に設けられて空間内を移動可能とされた移動可能デバイス21,22と、移動モジュール3が備わっていない据置デバイス23,24と、が含まれる。
【0027】
前述のセンサ21、プロジェクタ22a、及び照明22bは、移動モジュール3に設けられており、移動可能デバイスとされている。本実施形態の移動モジュール3は、空間を形成する天井面又は壁面に沿って移動可能とされており、床面上の移動は行わない。移動モジュール3の詳細については後述する。
【0028】
据置デバイス23,24としても、センサ23及び作用デバイス24それぞれが設けられている。据置デバイスとしてのセンサ23も、カメラ(イメージセンサ)であり、空間全体をカバーする画像を取得できるような位置に設置されている。
なお、据置デバイス23,24は省略してもよい。
【0029】
複数の移動モジュール3それぞれは、ネットワーク5経由で、コントローラ(制御サーバ)4と通信可能である。コントローラ4は、移動モジュール3を制御するための指令を移動モジュール3に与えたり、移動モジュール3から情報を取得したりすることができる。なお、本実施形態では、ネットワーク5としては、無線ネットワークが採用されるが、有線ネットワークであってもよい。
【0030】
移動可能デバイス21,22は、移動モジュール3を介して又は移動モジュール3を介さず自ら、ネットワーク5経由でコントローラ4と通信可能である。据置デバイス23,24も、ネットワーク5経由でコントローラ4と通信可能である。
コントローラ4は、デバイス2を制御するための指令をデバイス2に与えたり、デバイス2から情報を取得したりすることができる。
【0031】
コントローラ4は、センサ21,23からの検出情報(例えば、空間内を撮影した画像)に基づいて、対象体の位置などの空間内の状況を認識する。本実施形態において、センサ21,23によって位置が検出される「対象体」は、人間とする。ただし、検出の「対象体」には、人間に限られず、動物、車両、ロボット等、空間内において移動し得る様々なものがなり得る。
【0032】
コントローラ4は、コンピュータ(サーバ)によって構成されており、コンピュータにインストールされたコンピュータプログラムが、当該コンピュータによって実行されることで、コントローラ4としての各機能を発揮する。
【0033】
図3(a)は、プログラムの実行によって発揮されるコントローラ4の機能を示している。コントローラ4は、プログラムの実行によって発揮される機能ブロックとして、位置認識部41と、操作認識部42と、デバイス配置計算部43と、移動モジュール制御部44と、デバイス制御部45と、を備えている。
【0034】
位置認識部41は、センサ21,23からの検出情報(空間を撮像した画像)に基づいて、検出の対象体であるユーザ(人間)の空間内位置を認識する。また、位置認識部41は、必要に応じて、ユーザの顔の向き(視線方向)又は動作方向なども認識する。
【0035】
操作認識部41は、インテリジェントスペース内のユーザが行ったシステム1への操作を認識する。システム1への操作は、操作のための物理的な操作デバイスを介して行われてもよいが、プロジェクタ22aによって空間内のいずれかの場所に投影された操作画像(仮想的な操作デバイス)に対して、ユーザが操作のための動作を行うことでなされてもよい。また、システム1への操作は、ユーザの音声で行われてもよい。
仮想的な操作デバイスに対して行われた操作の認識は、カメラ21,23又は音響センサなどのセンサ2の検出情報に基づいて、操作のためのユーザの動作を解析することで行われる。
【0036】
コントローラ4は、操作認識部41によって認識された操作内容に応じて、作用デバイス22,24等に対する制御を行い、各デバイス22,24を適宜動作させる。
【0037】
デバイス配置計算部43は、位置認識部41によって認識されたユーザの位置に応じて、移動可能デバイス21,22の配置を計算する。デバイス配置計算部43は、例えば、ユーザの近傍であって、各デバイス2が機能を発揮するのに適した配置を計算する。
【0038】
移動モジュール制御部44は、デバイス配置計算部43によって計算されたデバイス配置に従って、デバイス2を搭載した各移動モジュール3の移動を制御し、移動モジュール3及び当該移動モジュール3に搭載されたデバイス2を、デバイス配置計算部43によって計算された位置へ移動させる。
【0039】
デバイス制御部45は、各デバイス2の動作を制御する。デバイス制御部45は、例えば、カメラ21に対しては、撮影のON/OFF、ズーム、パン、チルトなどの制御を行う。また、プロジェクタ22aに対しては、投影のON/OFF、投影画像の送信、パン、チルトなどの制御を行う。さらに、照明22bに対しては、照明のON/OFF、光量の調整、パン、チルトなどの制御を行う。
【0040】
[2.インテリジェントスペースの再構築処理]
本実施形態のシステム1では、移動可能デバイス2は、移動モジュール3によって位置を変更可能である。すなわち、インテリジェントスペースの再構築がリアルタイムで行える。
デバイス2がユーザの移動に追従して移動することで、空間内にデバイス2を多数設けなくても、デバイス2は、ユーザ(対象体)との関係において、適切に動作することができる。例えば、ユーザが空間のどの位置に移動しても、デバイス2はユーザの近傍又はデバイス2によるサービス提供のための適切な位置をとることができる。
【0041】
図4は、インテリジェントスペースの再構築処理の例を示している。
また、
図5は、再構築前の空間の様子を示している。つまり、
図5は、天井面を移動可能な移動モジュール3に搭載された複数の移動可能デバイス2(センサ21、プロジェクタ22a、照明22b)の、再構築前の配置を示している。
図5において、空間内にユーザ(人間)は存在しない。
【0042】
図6は、
図5に示す空間にユーザが入ってきた様子を示している。ユーザが空間に入ってくると、インテリジェントスペースの再構築が行われる。また、インテリジェントスペースの再構築は、ユーザの空間内移動に応じて、リアルタイムで行われる。
【0043】
空間内にユーザが入ってくると、空間全体をモニタリングするために位置固定的に設けられた据置センサ23の検出情報によって、コントローラ4の位置認識部41は、ユーザの出現及びその位置を認識する(ステップS1)。なお、ステップS1において、可能であれば、移動可能デバイス2であるセンサ21の検出情報を用いて位置認識を行ってもよい。
【0044】
また、ステップS1のユーザ検出を据置センサ23の検出情報に基づいて行うことに代えて、コントローラ4が、空間内にユーザが不在の場合には、センサ21を搭載した第1移動モジュール31を、空間全体をモニタリング可能な位置(初期位置)に待機させておき、当該移動可能センサ21が、空間内にユーザに入ってきたユーザを検出するようにしてもよい。
【0045】
位置認識部41がユーザの位置を認識すると、デバイス配置計算部43は、認識したユーザ位置に基づいて、各デバイス3の適切な配置を計算する(ステップS2)。デバイス配置計算部43は、センサ21については、例えば、ユーザにより近い位置、又は複数のユーザが存在すれば、複数のユーザを同時に撮像できる位置を計算し、プロジェクタ22aであれば、例えば、ユーザが画像を視認可能な位置に対して当該画像を適切に投影できる位置を計算し、照明であれば、例えば、ユーザに光を当てることができる位置を計算する。なお、プロジェクタ22aの位置を計算する際には、ユーザの顔の向きなどを考慮してもよい。
【0046】
デバイス配置計算部43が各デバイス2の配置を計算すると、移動モジュール制御部44は、その計算結果に基づいて、移動モジュール3を移動させる(ステップS3)。
これにより、移動モジュール3に搭載された各デバイス2(センサ21、プロジェクタ22a、照明22b)が、デバイス配置計算部43によって計算された位置に移動する。したがって、各デバイス2は、空間において新たな配置をとり、再構築されたインテリジェントスペースとなる。
【0047】
センサ21を搭載した第1移動モジュール31が、移動モジュール制御部3からの指令に応じて移動して、当該センサ21がユーザ(対象体)を捉えると、位置認識部41は、当該センサ21の検出情報に基づいて、ユーザのより正確な位置を認識する。ユーザの新たな位置が新たに認識されると、デバイス配置計算部43は、新たなユーザ位置に基づいて、各デバイス3の適切な配置を再計算する。そして、移動モジュール制御部44は、再計算されたデバイス配置に基づいて、移動モジュール3を移動させる(ステップS4)。これにより、各デバイス2の位置が微調整され、より適切なデバイス配置(
図6参照)が得られる。
【0048】
図6では、各デバイス21,22b,22bは、ユーザの近傍に位置している。例えば、照明22bは、ユーザのほぼ上方に位置し、プロジェクタ22aは、ユーザの正面の壁面に映像投影できる位置に存在している。
【0049】
ステップS3及びS4におけるデバイス移動に際しては、それぞれのステップにおいて、全てのデバイス2を移動させてもよいし、ステップS3では、全てのデバイス2を移動させ、ステップS4では、センサ21が搭載された第1移動モジュール31だけを移動させるか、又は、プロジェクタ22a及び照明22bが搭載された第2及び第3移動モジュール32a,32bを移動させてもよい。
また、ステップS3及びS4におけるデバイス移動に際しては、ステップS3でセンサ21だけを移動させて、ステップS4で残りのデバイス22a,22b又は全デバイス2を移動させてもよい。
【0050】
さらに、
図7に示すようにユーザが空間内を移動すると、位置認識部41は、センサ21及び/又はセンサ23の検出情報に基づいて、ユーザの新たな位置を認識し(ステップS5)、コントローラ4は、ステップS2〜S4の処理を繰り返す。これにより、コントローラ4は、ユーザの移動に追従して、移動モジュール3(デバイス2)を移動させることができる。
【0051】
そして、作用デバイス2は、移動後の各位置において、適切に機能を発揮して、ユーザに対する情報提示などのサービスを提供することができる。
【0052】
[3.移動モジュール(移動システム)]
図8〜
図10は、本実施形態の移動モジュール3と、移動モジュール3が移動する移動面部材6と、を備えた移動システム7を示している。
移動面部材6は、空間を形成する天井面となる天井面部材、及び/又は、空間を形成する壁面となる壁面部材として用いられる。
【0053】
図8に示すように、移動面部材6は、略平坦な板状の本体61の表面に、複数の固定具62を設けて構成されている。本実施形態の固定具62は、ネジ穴63を有するナット具によって構成されている。
図10に示すように、固定具62は、本体61の表面側に埋設されており、ネジ穴63は、本体61の表面61aにおいて開口している。
ネジ穴63には、移動モジュール3に設けられたネジ部(固定部)324b(後述)が螺合する。ネジ穴63にネジ部324bが螺合することで、移動モジュール3(及びデバイス2)を、移動面部材6に固定することができる。
【0054】
固定具62は、移動面部材6において、2次元状に規則的に配置されている。換言すると、移動面部材本体61の表面に2方向に直交する格子を想定した場合に、固定具62は当該格子の格子点となる位置に配置されており、隣接する固定具62の間隔(格子間距離)は全て一定とされている。
【0055】
図9及び
図10に示すように、移動モジュール3は、正面側にデバイス2を取り付け可能なモジュール本体31と、モジュール本体31に設けられた複数(4個)の脚部32と、複数の脚部32それぞれに設けられたネジ装置33と、を備えている。
【0056】
本実施形態のモジュール本体31は、デバイス2が取り付けられるベース部材として構成されている。デバイス2は、図示しないネジなどの固定部材によってモジュール本体31に取り付けられる。
本実施形態のモジュール本体31は、矩形状に形成されているが、デバイス2を支持できる構造であれば足り、その形状は特に限定されない。
【0057】
本実施形態の複数の脚部32は、矩形状のモジュール本体31の4隅それぞれに設けられている。脚部32は、モジュール本体31から背面側(移動面部材6側)に向けて延びるように設けられている。
【0058】
脚部32は、モジュール本体31に取り付けられた脚部本体321と、脚部本体321の内部に設けられたモータ322と、を備えている。モータ322は、そのモータ回転軸322aの軸方向Aが、モジュール本体31から移動面部材6側に向かう方向に設けられている。モータ回転軸322aは、ネジ装置33と接続されている。ネジ装置33は、モータ回転軸322aの回転によって、当該モータ回転軸322aの軸回りに回動可能とされている。
【0059】
複数(4個)のモータ322の回転軸322a同士の間隔は、固定具32の間隔と等しく設定されている。
モータ322は、複数の脚部32それぞれに設けられているため、各ネジ装置33は、独立して回動可能である。
【0060】
なお、本実施形態では、モータ回転軸322aとネジ装置33とは直結されているが、ギア等を介して連結されていてもよい。
また、脚部32をネジ装置33と一体的に設けておき、脚部32を、モジュール本体31に対して回転可能としてもよい。この場合も、ネジ装置33は、モータ回転軸322aの回転によって、当該モータ回転軸322aの軸回りに回動可能となる。
【0061】
ネジ装置33は、ネジ装置本体331と、モータ332と、モータ332のモータ回転軸332aに設けられたモータギア333と、モータギア333と噛み合うスクリューギア334と、を備えている。
【0062】
ネジ装置本体331は、脚部32のモータ回転軸322aに連結されており、モータ回転軸322aの回転によって回動可能である。また、ネジ装置本体331には、モータ332及びスクリューギア334が支持されている。
【0063】
スクリューギア334は、その軸方向が、軸方向A(移動面部材の表面と直交する方向)に対して平行になるように設けられている。スクリューギア334は、軸方向の一端側に、モータギア333と噛み合うギア部334aを備え、軸方向の他端側に、ネジ穴63に螺合するネジ部(固定部)334bを備えている。
【0064】
スクリューギア334は、モータ332の回転によって、スクリューギア軸心回りに回転することで、スクリューギア軸方向に移動可能である。モータ332の回転方向の切り替えによって、スクリューギア324は、移動面部材6に対して近接/離反移動が可能である。
【0065】
スクリューギア334のネジ部334bが(例えば、時計回りに)回転しながらネジ穴63内に挿入されることで、ネジ部334bがネジ穴63に螺合される。また、挿入時とは逆方向(例えば、反時計回り)にスクリューギア334を回転させることで、ネジ部334bがネジ穴63から抜け出る。
ネジ部334bがネジ穴63に螺合することで、ネジ装置33を有する脚部32は、移動面部材61に固定される。すなわち、移動モジュール3及びデバイス2は、移動面部材6に対して固定される。また、螺合を解除することもできるため、螺合(固定)とその解除を繰り返すことで、移動モジュール3を移動面部材6上で移動させることもできる(詳細は後述)。
なお、モータ332は、複数のネジ装置331それぞれに設けられているため、各スクリューギア334は、独立して、ネジ穴63への螺合(固定)とその解除が行える。
【0066】
移動モジュール3は、複数の脚部32それぞれにネジ部334bを備えているため、複数の脚部32のうちのいずれかを、移動面部材6(移動面)に固定しつつ、他の脚部32が固定されるネジ穴63(固定具42)を変更させることで、移動モジュール3全体を移動させることが可能となる。
【0067】
ネジ装置33は、脚部32のモータ322の回転軸322aの軸心から、スクリューギア334の軸心までの長さが、ネジ穴63(固定具62)の間隔の1/2に設定されている。したがって、ある脚部32に設けられたネジ装置33のネジ部(固定部)334bが、あるネジ穴(固定具)63に固定されている場合に、そのネジ部334bのネジ穴63への締結を解除し、そのネジ装置33を回転軸322a回りに180°回転させると、そのネジ部334bは、他のネジ穴63に挿入可能な位置に移動することができる。
【0068】
ネジ部334bが固定されるネジ穴63の変更は、4個の脚部32それぞれについて行える。また、移動モジュール3は、移動面に沿った任意の方向への移動が可能である。
【0069】
図3(b)に示すように、移動モジュール3の各モータ322,332及びデバイス3は、移動モジュール3に設けられた駆動制御部34によって制御される。駆動制御部34は、コントローラ4からの指令(移動モジュール制御情報、デバイス制御情報)を受け取って、当該指令に従って、モータ等を駆動制御する。
【0070】
図11は、移動モジュール3の移動の仕方の例を示している。
図11においてハッチングで示す部材は、移動した部材を直前の状態から移動した部材を示している。
図11(a)は、移動面6の左上角の位置(初期位置)において図示の姿勢で移動面6に固定されている。移動面6が壁面であるとすると、移動モジュール3は、壁面6に固定されているし、4つのネジ装置33が、ネジ穴63(固定具62)の位置から下方(重力方向)に垂れ下がった配置(安定状態配置)となっているため、移動モジュール3は、
図11(a)に示す姿勢を維持するためにエネルギーを必要としない。なお、
図11に示す格子は仮想的なものであり、格子点の位置にネジ穴63(固定具62)が設けられている。
【0071】
移動モジュール3が、
図11(a)の位置から
図11(f)の位置に移動するには、
図11(b)〜
図11(f)に示す動作を行う。なお、以下に説明する動作は、コントローラ4からの指令に基づいて駆動制御部34がモータ322,332を駆動制御することで行われる。
【0072】
まず、移動モジュール3は、
図11(a)の位置において、全ての脚部32のモータ322を回転させ、
図11(b)に示すようにモジュール本体31を右上方へ移動させる。
そして、移動モジュール3は、右下の脚部32に設けられたネジ装置33のネジ部334bによる締結を解除して、
図11(c)に示すように右下のネジ装置33を180°回転させ、その位置にあるネジ穴63(元のネジ穴の右隣のネジ穴)に対して、右下の脚部32に設けられたネジ装置33のネジ部334bを螺合させる。
【0073】
また、
図11(d)に示すように、左下の脚部32についても、ネジ装置33のネジ部334bを、同様に、元のネジ穴の右隣のネジ穴63に螺合させる。
さらに、
図11(e)(f)に示すように、右上及び左上の脚部32についても、ネジ装置33のネジ部334bを、同様に、元のネジ穴の右隣のネジ穴63に螺合させる。
このように、ネジ装置33の回転は、複数の脚部32それぞれにおいて順番に行われ、いずれかのネジ装置33の回転中も、他の3個のネジ装置33による固定が維持される。したがって、移動デバイス3は、移動中も移動面部材6への安定的な固定が維持される。
【0074】
そして、移動モジュール3は、
図11(b)〜
図11(f)に示すような動作を、適宜繰り返すことにより、最終的に
図11(g)に示す位置に移動することができる。
【0075】
本実施形態では、移動モジュール3は、停止しているときにおいても、移動中においても、いずれかの固定具62に固定されている。したがって、コントローラ4は、移動面部材6における固定具62の位置を基準にして、移動モジュール3の位置を正確に把握することができる。
【0076】
コントローラ4が、移動モジュール3の各ネジ部324bが螺合しているネジ穴63の位置(座標)を把握しておき、それらのネジ穴63の位置と移動モジュール3の姿勢に基づいて、移動モジュール3の位置を把握する。
例えば、
図11(a)に示す移動モジュール3の位置の場合、
図12のA1の位置に移動モジュール3の中心が位置するが、このA1の位置は、移動モジュール3のネジ部324bが固定されているネジ穴63の座標(X
1,Y
1),(X
2,Y
1),(X
1,Y
2),(X
2,Y
2)と、移動モジュール3の姿勢によって計算できる。
【0077】
なお、移動モジュール3の姿勢は、脚部32に対するネジ装置33の角度によって検出でき、脚部32に対するネジ装置33の角度は、モータ322の回転量及び回転方向によって検出できる。
【0078】
同様に、
図12のA2の位置も、移動モジュール3のネジ部324bが固定されているネジ穴63の座標(X
3,Y
1),(X
4,Y
1),(X
3,Y
2),(X
4,Y
2)と、移動モジュール3の姿勢によって計算できる。
【0079】
さらに、位置A1,A2だけでなく、
図11に示す移動モジュール3の移動の仕方による移動モジュールの移動軌跡Rが、
図12に示すようになった場合、移動軌跡R上の任意の位置も、移動モジュール3のネジ部324bが固定されているネジ穴63の座標と、移動モジュール3の姿勢によって計算できる。
【0080】
本実施形態では、移動モジュール3の移動可能範囲は、固定具62が設けられている範囲及び位置に限定されるが、固定具62の位置を基準に移動モジュール3の位置を正確に検出することができる。
この結果、コントローラ4が把握する移動可能デバイス21,22の位置と移動可能デバイス21,22の実際の位置とに、誤差が生じ難い。したがって、移動可能デバイス21,22の位置を正確に把握して、インテリジェントスペースの適切な再構築が行える。
【0081】
また、本実施形態では、移動モジュール3が移動面部材6に固定されている状態を維持するため、電気などのエネルギーを必要としない。つまり、ネジ部(固定部)324がネジ穴63(固定具62)に螺合しているため、移動モジュール3は、移動面部材6に固定的に取り付けられた状態となる。したがって、センサ21、プロジェクタ22a、照明22bなどの移動可能デバイスを、位置固定的に使用する場合には、移動モジュールの電源をOFFにしておくことができ、エネルギーロスを抑えることができる。
【0082】
さらに、本実施形態の移動システム7においては、天井面又は壁面に固定具62が設けられて当該天井面及び/又は壁面が移動可能範囲に設定され、空間の底面である床面などは固定具62が設けられていない。したがって、移動モジュール3は、天井面又は壁面を移動することはできるが、床面は移動しない。よって、空間内のユーザ及びその他のものの移動又は設置の邪魔にならず、有利である。
【0083】
さらに、本実施形態では、複数(4個)の脚部32のうち、少なくとも3個の脚部32が常に移動面部材6のネジ穴63(固定具62)に固定された状態を維持しつつ、残りの一つの脚部32が固定されるネジ穴63(固定具62)の変更を行う。したがって、移動モジュール3は、常に、少なくとも3箇所で移動面部材6に固定され、移動面が天井面のような下方を向く面であったり、壁面のような垂直面であったりしても、安定した固定状態が得られる。なお、脚部32の数は、4である必要はなく、2以上であればよい。2以上の脚部32があれば、少なくとも1箇所で、移動モジュール3を移動面部材6に固定しつつ、移動することができる。
【0084】
[4.移動面に対する移動モジュールの固定機構の変形例]
[4.1 第1変形例]
図13は、移動面(移動面部材)に対する移動モジュール3の固定機構の第1変形例を示している。第1変形例では、球体71の係止による固定機構が採用されている。
【0085】
具体的には、移動面部材6に埋設された固定具62には、移動モジュール3の固定部432bが挿入される穴64を有し、当該穴64の内面に球体71が進入可能な凹部65が形成されている。
【0086】
移動モジュール3の固定部334bは、穴64に対して挿入される筒体72と、当該筒体72の先端付近の外周面から筒体72の径内外方向に移動自在に支持された球体71と、筒体72の内周側において軸方向移動自在に設けられたウォーム73と、当該ウォーム73に噛合するウォームホイール74と、を備えている。
固定部432b全体は、前述のスクリューギアと同様に、モータ332の回転によって、軸方向に移動可能(移動面部材6に対して近接離反可能)とされている。
【0087】
球体72は、板バネ75によって筒体72の内径方向に付勢されており、筒体72の外周面から径外方向に突出しないようになっている。
【0088】
固定部334bを固定具62に固定するには、
図13(a)に示す状態から、固定部432b全体を上方に移動させて、
図13(b)に示すように、筒体72の先端を穴64に挿入させる。そして、図示しないモータによってウォームホイール74を回転させて、ウォーム73を上方に移動させる。これにより、球体71が径外方向に移動して、凹部65に進入する。これにより、球体71が凹部65に係止して抜け止めとなり、固定部334bが固定具62に固定される。
【0089】
なお、ウォーム73は、ウォームホイール74に噛合しているため、ウォームホイールを回転させるモータに電源供給がなされてなくても、ウォーム73は自重で下方に移動することが防止され、固定状態が維持される。
【0090】
[4.2 第2変形例]
図14は、移動面(移動面部材)に対する移動モジュール3の固定機構の第2変形例を示している。第2変形例では、円弧状のフック81の係止による固定機構が採用されている。
【0091】
具体的には、移動面部材6に埋設された固定具62には、移動モジュール3の固定部432bが挿入される穴64を有し、当該穴64の上面に、フック81が挿入されるガイド穴67が形成されている。
【0092】
移動モジュール3の固定具334bは、先端が穴64に挿入される支持体82と、支持体82の先端に回転自在に支持された円弧状のフック81と、を備えている。フック81は、その外周面にウォームが形成されており、支持体82に設けられたウォームホイール84と噛合している。
固定部432b全体は、前述のスクリューギアと同様に、モータ332の回転によって、軸方向に移動可能(移動面部材6に対して近接離反可能)とされている。
【0093】
固定部334bを固定具62に固定するには、
図14(a)に示す状態から、固定部432b全体を上方に移動させて、
図14(b)に示すように、支持体82の先端を穴64に挿入させる。そして、図示しないモータによってウォームホイール84を回転させて、フック81を回転させ、ガイド穴67に進入させる。これにより、フック81がガイド穴67に係止して抜け止めとなり、固定部334bが固定具62に固定される。
【0094】
なお、フック81は、ウォームホイール84に噛合しているため、ウォームホイールを回転させるモータに電源供給がなされてなくても、フック81の回転が防止され、固定状態が維持される。
【0095】
[5.付記]
なお、上記において開示した事項は、例示であって、本発明を限定するものではなく、様々な変形が可能である。
例えば、上記実施形態では、一つの移動モジュール3に一つのデバイス2を搭載したが、複数の移動モジュール3に一つのデバイス2を搭載したり、一つの移動モジュール3に複数のデバイス2を搭載してもよい。
【0096】
また、移動モジュール3及びデバイス2への電源供給は、移動モジュール3又はデバイス2に搭載された電池によって行ってもよいし、移動面部材6からの無線又は有線給電によって行ってもよい。移動面部材6からの電源供給を行う場合、固定具62に給電ポイントを設けておき、移動モジュール3が当該給電ポイントを介して給電を受けられるようにすることができる。