特許第6095042号(P6095042)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6095042サーバー、遠隔リハビリテーション方法、情報生成方法、情報生成プログラム、及び遠隔リハビリテーションシステム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6095042
(24)【登録日】2017年2月24日
(45)【発行日】2017年3月15日
(54)【発明の名称】サーバー、遠隔リハビリテーション方法、情報生成方法、情報生成プログラム、及び遠隔リハビリテーションシステム
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/02 20060101AFI20170306BHJP
   A61B 5/22 20060101ALI20170306BHJP
   A61H 1/00 20060101ALN20170306BHJP
   G06Q 50/24 20120101ALN20170306BHJP
【FI】
   A61B5/02 310A
   A61B5/02ZIT
   A61B5/22
   !A61H1/00
   !G06Q50/24
【請求項の数】10
【全頁数】27
(21)【出願番号】特願2012-156247(P2012-156247)
(22)【出願日】2012年7月12日
(65)【公開番号】特開2014-18213(P2014-18213A)
(43)【公開日】2014年2月3日
【審査請求日】2015年7月3日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】504139662
【氏名又は名称】国立大学法人名古屋大学
(74)【代理人】
【識別番号】110000637
【氏名又は名称】特許業務法人樹之下知的財産事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100095728
【弁理士】
【氏名又は名称】上柳 雅誉
(74)【代理人】
【識別番号】100107261
【弁理士】
【氏名又は名称】須澤 修
(72)【発明者】
【氏名】荻上 隆
(72)【発明者】
【氏名】上瀧 忠介
(72)【発明者】
【氏名】山田 純生
【審査官】 高田 亜希
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−213528(JP,A)
【文献】 特開2004−136105(JP,A)
【文献】 特開2003−265441(JP,A)
【文献】 特開2003−334269(JP,A)
【文献】 特開2010−267267(JP,A)
【文献】 特開2007−209679(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/00−5/22
A61H 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者に適用する脈拍数範囲を含むリハビリテーション情報を外部から受信するリハビリテーション情報受信部と、
前記リハビリテーション情報を外部から参照可能な状態にするリハビリテーション情報公開部と、
前記患者から計測された脈拍数と当該脈拍数が計測された計測時刻とを含む脈拍計測情報を受信する脈拍計測情報受信部と、
前記脈拍計測情報に基づドキュメント情報を生成するドキュメント情報生成部と、
前記ドキュメント情報を外部から閲覧可能な状態にするドキュメント情報公開部と、を有し、
前記ドキュメント情報は、それぞれ一週間での総運動時間、前記脈拍数範囲より低い脈拍数で運動した累積時間、前記脈拍数範囲内の脈拍数で運動した累積時間、及び、前記脈拍数範囲より高い脈拍数で運動した累積時間を、前記一週間毎に示すグラフを含むことを特徴とするサーバー。
【請求項2】
請求項1に記載のサーバーにおいて、
前記脈拍数範囲内の脈拍数で運動した累積時間を、前記脈拍数範囲の上限値から中央値までの脈拍数で運動した累積時間と、前記脈拍数範囲の中央値から下限値までの脈拍数で運動した累積時間とに区分して示すことを特徴とするサーバー。
【請求項3】
サーバーと指導者用端末と患者用端末と生体情報計測装置とを用いた遠隔リハビリテーション方法であって、
前記指導者用端末が、患者に適用する脈拍数範囲を含むリハビリテーション情報を前記サーバーに送信することと、
前記サーバーが、前記リハビリテーション情報を受信することと、
前記サーバーが、前記リハビリテーション情報を前記患者用端末から取得可能にすることと、
前記患者用端末が、前記サーバーから前記リハビリテーション情報を取得することと、
前記患者用端末が、前記リハビリテーション情報を前記生体情報計測装置に送信することと、
前記生体情報計測装置が、前記リハビリテーション情報を受信することと、
前記生体情報計測装置が、前記リハビリテーション情報に基づいて、前記脈拍数範囲を設定することと、
前記生体情報計測装置が、前記患者の脈拍数を計測することと、
前記生体情報計測装置が、計測された脈拍数と当該脈拍数が計測された計測時刻とを含む脈拍計測情報を記憶することと、
前記生体情報計測装置が、前記脈拍計測情報を前記患者用端末に送信することと、
前記患者用端末が、前記脈拍計測情報を受信することと、
前記患者用端末が、前記脈拍計測情報を前記サーバーに送信することと、
前記サーバーが、前記脈拍計測情報を受信することと、
前記サーバーが、前記脈拍計測情報に基づいて、それぞれ一週間での総運動時間、前記脈拍数範囲より低い脈拍数で運動した累積時間、前記脈拍数範囲内の脈拍数で運動した累積時間、及び、前記脈拍数範囲より高い脈拍数で運動した累積時間を、前記一週間毎に示すグラフを含むドキュメント情報を生成することと、
前記サーバーが、前記ドキュメント情報を前記指導者用端末から閲覧可能にすることと、を含むことを特徴とする遠隔リハビリテーション方法。
【請求項4】
請求項3に記載の遠隔リハビリテーション方法において、
前記脈拍数範囲内の脈拍数で運動した累積時間は、前記脈拍数範囲の上限値から中央値までの脈拍数で運動した累積時間と、前記脈拍数範囲の中央値から下限値までの脈拍数で運動した累積時間とに区分して示されることを特徴とする遠隔リハビリテーション方法。
【請求項5】
情報処理装置により実行され、患者のリハビリテーションの状態を把握可能なドキュメント情報を生成する情報生成方法であって、
前記患者に適用される脈拍数範囲を含むリハビリテーション情報を外部から受信し、
前記患者から計測された脈拍数、及び、当該脈拍数が計測された計測時刻を含む脈拍計測情報を受信し、
前記脈拍計測情報に基づいて、それぞれ一週間での総運動時間、前記脈拍数範囲より低い脈拍数で運動した累積時間、前記脈拍数範囲内の脈拍数で運動した累積時間、及び、前記脈拍数範囲より高い脈拍数で運動した累積時間を、前記一週間毎に示すグラフを含むドキュメント情報を生成することを特徴とする情報生成方法。
【請求項6】
請求項5に記載の情報生成方法において、
前記脈拍数範囲内の脈拍数で運動した累積時間は、前記脈拍数範囲の上限値から中央値までの脈拍数で運動した累積時間と、前記脈拍数範囲の中央値から下限値までの脈拍数で運動した累積時間とに区分して示されることを特徴とする情報生成方法。
【請求項7】
情報処理装置により実行され、患者のリハビリテーションの状態を把握可能なドキュメント情報を生成する情報生成プログラムであって、
前記情報処理装置に、
前記患者に適用される脈拍数範囲を含むリハビリテーション情報を外部から受信させ、
前記患者から計測された脈拍数、及び、当該脈拍数が計測された計測時刻を含む脈拍計測情報を受信させ、
前記脈拍計測情報に基づいて、それぞれ一週間での総運動時間、前記脈拍数範囲より低い脈拍数で運動した累積時間、前記脈拍数範囲内の脈拍数で運動した累積時間、及び、前記脈拍数範囲より高い脈拍数で運動した累積時間を、前記一週間毎に示すグラフを含むドキュメント情報を生成させることを特徴とする情報生成プログラム。
【請求項8】
請求項7に記載の情報生成プログラムにおいて、
前記脈拍数範囲内の脈拍数で運動した累積時間は、前記脈拍数範囲の上限値から中央値までの脈拍数で運動した累積時間と、前記脈拍数範囲の中央値から下限値までの脈拍数で運動した累積時間とに区分して示されることを特徴とする情報生成プログラム。
【請求項9】
それぞれ互いにネットワーク接続される指導者用端末、サーバー及び患者用端末と、
前記患者用端末と情報を送受信可能に接続される生体情報計測装置と、を備え、
前記指導者用端末は、患者に適用する脈拍数範囲を含むリハビリテーション情報を前記サーバーに送信し、
前記サーバーは、受信された前記リハビリテーション情報を前記患者用端末に送信し、
前記患者用端末は、受信された前記リハビリテーション情報を前記生体情報計測装置に送信し、
前記生体情報計測装置は、受信された前記リハビリテーション情報に基づいて、前記脈拍数範囲を設定するとともに、前記患者から計測された脈拍数と、前記脈拍数が計測された計測時刻とを含む脈拍計測情報を前記患者用端末に送信し、
前記患者用端末は、受信された前記脈拍計測情報を前記サーバーに送信し、
前記サーバーは、受信された前記脈拍計測情報に基づいて、それぞれ一週間での総運動時間、前記脈拍数範囲より低い脈拍数で運動した累積時間、前記脈拍数範囲内の脈拍数で運動した累積時間、及び、前記脈拍数範囲より高い脈拍数で運動した累積時間を、前記一週間毎に示すグラフを含むドキュメント情報を、前記指導者用端末に送信することを特徴とする遠隔リハビリテーションシステム。
【請求項10】
請求項9に記載の遠隔リハビリテーションシステムにおいて、
前記脈拍数範囲内の脈拍数で運動した累積時間は、前記脈拍数範囲の上限値から中央値までの脈拍数で運動した累積時間と、前記脈拍数範囲の中央値から下限値までの脈拍数で運動した累積時間とに区分して示されることを特徴とする遠隔リハビリテーションシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サーバー、遠隔リハビリテーション方法、情報生成方法、情報生成プログラム、及び遠隔リハビリテーションシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、心疾患の患者に対して、生活習慣病の改善に重点が置かれた運動リハビリテーションが取り入れられている。心疾患の患者は心臓にダメージを受けていることから、運動リハビリテーションを実践するにあたっては、心臓に過度の負担となる運動にならないように、また適度な運動負荷をかけることで効果的な運動リハビリテーションを実施できるように患者の脈拍数等の生体情報を計測する生体情報計測装置が必要とされている。
【0003】
また、心疾患等の生活習慣病の患者の増大に伴い、リハビリテーション施設に通う患者数が増大しているため、遠隔リハビリテーションのニーズが高まっている。
【0004】
特許文献1には、利用者の脈拍数が予め設定された脈拍数の上限値に達した場合に利用者に報知する生体活動計測装置が記載されている。また、利用者がどの程度の強さの運動をどの位の時間に渡って行ったかを把握できるようにするために、利用者の脈拍数が許容範囲脈拍数に収まっていた有効累積時間と、脈拍数が上限脈拍数からプラス10拍以内に収まっていた上限逸脱累積時間と、脈拍数が下限脈拍数からマイナス10拍以内に収まっていた下限逸脱累積時間とを計測することが記載されている。
【0005】
特許文献2には、リハビリテーション指導者が患者に適した運動処方プログラムを作成し、作成した運動処方プログラムを、通信回線を介して患者側端末装置に伝送し、運動処方プログラムに従って患者側端末装置のリハビリテーション機器によってリハビリテーションの実施が可能な遠隔リハビリテーションシステムが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003−265441号公報
【特許文献2】特開2002−191718号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載された生体活動計測装置は、医師が処方した処方脈拍数に応じて、脈拍数の上限値が設定されるようになっている。しかし、脈拍数の上限値は患者が自ら液晶表示部を介して設定する必要があり、患者にとって必ずしも利便性がよいものとはなっていなかった。
【0008】
また、特許文献2に記載された遠隔リハビリテーションシステムは、リハビリテーション指導者が作成した運動処方プログラムを患者側端末装置に伝送し、設定することが可能である。しかし、設定された運動処方プログラムが常に患者に最適な運動になるとは限らない。例えば、患者の体調が悪い時に、設定された運動処方プログラムに従って運動を行うと、心臓に過度の負担になってしまうことがあり、心疾患の患者の生命を危険にさらすことにもなりかねない。
【0009】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、患者にとって利便性がよく、かつ、患者の体調に応じた運動リハビリテーションが可能なサーバー、遠隔リハビリテーション方法、情報生成方法、情報生成プログラム、及び遠隔リハビリテーションシステムを実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、上述の課題を解決するためになされたものであり、以下の適用例として実現することが可能である。
【0011】
[適用例1]本適用例の生体情報計測装置は、患者に適用する脈拍数範囲の情報を含むリハビリテーション情報を受信するリハビリテーション情報受信部と、前記リハビリテーション情報に基づいて、前記脈拍数範囲を設定する脈拍数範囲設定部と、少なくとも前記脈拍数範囲を表示する表示部と、前記患者の脈拍数を計測する脈拍数計測部と、前記脈拍数計測部によって計測された脈拍数と当該脈拍数が計測された計測時刻とを含む脈拍計測情報を記憶する記憶部と、前記脈拍計測情報を送信する脈拍計測情報送信部と、を有する。
【0012】
本適用例に係る生体情報計測装置によれば、患者に適用する脈拍数範囲の情報を含むリハビリテーション情報を外部から受信し、受信したリハビリテーション情報に基づいて、生体情報計測装置に適用する脈拍数範囲を設定することができる。これにより、患者にとっては、自ら脈拍数範囲を設定する必要がなくなり、患者の利便性が向上する。また、医師等の指導者にとっては、患者に対して処方した脈拍数範囲を遠隔で設定することが可能となるため、リハビリテーションによる患者の健康の改善状況に応じて、患者に適した脈拍数範囲を適切な時期に設定することができ、遠隔リハビリテーションの効果を一層向上させることができる。
【0013】
本適用例では、外部から運動処方プログラムを受信するのではなく、脈拍数範囲の情報を含むリハビリテーション情報を受信する。この構成によって、患者の体調に応じた運動リハビリテーションを実現することができる。一般に、患者の体調が悪い場合には、比較的軽度な運動であっても、患者の脈拍数が設定された脈拍数範囲に到達しやすくなる。反対に、患者の体調が良好な場合には、比較的強度な運動をしなければ、患者の脈拍数が設定された脈拍数には到達しない。つまり、脈拍数範囲を設定することによって、患者の体調に応じた安全な運動リハビリテーションを実現することができる。
【0014】
また、例えば、患者が運動している時における患者の脈拍数を計測し、計測された脈拍数と当該脈拍数が計測された計測時刻とを含む脈拍計測情報を記憶し、記憶された脈拍計測情報を外部に送信する。これにより、患者の運動リハビリテーションの実施状況を指導者に遠隔で報告することが可能となり、指導者は患者の運動リハビリテーションの実施状況に基づき、患者の健康の改善状況を診断することができる。また、患者の健康の改善状況から、例えば、患者に適した新たな脈拍数範囲を適切な時期に設定することができる。
【0015】
さらに、表示部においては少なくとも脈拍数範囲を表示する。これにより、患者に設定された脈拍数範囲を意識させることができ、効果的な運動リハビリテーションを実現しやすくなる。本願発明者らが鋭意検討した結果、運動リハビリテーションにおいては、医師等の指導者によって設定された脈拍数範囲内で運動した時間が、患者の運動リハビリテーションの効果を向上させることがわかった。そこで、設定された脈拍数範囲を表示することによって、患者に対して設定された脈拍数範囲を意識させ、患者が設定された脈拍数範囲で運動することを促すことができる。
【0016】
[適用例2]上記適用例に係る生体情報計測装置であって、さらに、計測された脈拍数が前記脈拍数範囲の範囲内である脈拍数範囲計測時間を算出する脈拍数範囲計測時間算出部を有し、前記表示部は、前記脈拍数範囲計測時間を表示してもよい。
【0017】
本適用例に係る生体情報計測装置によれば、計測された脈拍数が設定された脈拍数範囲の範囲内である脈拍数範囲計測時間を算出し、算出された脈拍数範囲計測時間を表示する。これにより、患者に対して脈拍数範囲計測時間が長くなるように意識付けをさせることができるため、患者に対して、効果的な運動リハビリテーションができているか否かを一層意識させることができる。
【0018】
[適用例3]上記適用例に係る生体情報計測装置であって、前記脈拍数範囲計測時間算出部は、計測された脈拍数が前記脈拍数範囲の上限値から所定範囲内である上方範囲計測時間を算出し、前記表示部は、少なくとも前記上方範囲計測時間を表示してもよい。
【0019】
本適用例に係る生体情報計測装置によれば、計測された脈拍数が脈拍数範囲の上限値から所定範囲内である上方範囲計測時間を算出し、上方範囲計測時間を表示することができる。本願発明者らが鋭意検討した結果、脈拍数範囲の上限値に近い範囲内の脈拍数で長く運動すると、患者の運動リハビリテーションの効果が向上することがわかった。そこで、患者の脈拍数が、脈拍数範囲の上限値から所定範囲内である上方範囲計測時間を表示することによって、患者に効果的な運動リハビリテーションができているか否かを一層意識させることができる。
【0020】
[適用例4]上記適用例に係る生体情報計測装置であって、さらに、前記脈拍数範囲計測時間が第1の時間に到達した場合に、前記患者に通知する通知部、を有していてもよい。
【0021】
本適用例に係る生体情報計測装置によれば、脈拍数範囲計測時間が第1の時間に到達した場合に、患者に通知する。この構成によって、患者に対して十分な運動リハビリテーションが行われたことを通知することができる。前述の通り、脈拍数範囲内で運動した時間が患者の運動リハビリテーションの効果に寄与するため、脈拍数範囲計測時間が第1の時間に到達した場合には、十分な運動リハビリテーションが行われたと判断して、患者に通知を行う。これにより、効果的な運動リハビリテーションを実現することができる。
【0022】
[適用例5]上記適用例に係る生体情報計測装置であって、さらに、前記脈拍数の計測を開始してからの経過時間を計測する経過時間計測部、を有し、前記通知部は、前記経過時間が前記第1の時間よりも長い第2の時間に到達した場合に、前記患者に通知するようにしてもよい。
【0023】
本適用例に係る生体情報計測装置によれば、脈拍数の計測を開始してからの経過時間が第2の時間に到達した場合に、患者に通知する。前述の通り、脈拍数範囲計測時間が第1の時間に到達した場合には、十分な運動リハビリテーションが行われたと判断して患者に通知を行うが、脈拍数範囲計測時間が第1の時間に到達しない場合には、患者に通知がなされず、患者が運動を終了していいのかの判断が難しくなる。患者が心疾患の患者であれば、過度に運動し続けることによって患者の生命を危険にさらすことにもなりかねない。そこで、脈拍数の計測を開始してからの経過時間が第2の時間に到達した場合には、脈拍数範囲計測が第1の時間に到達していない場合であっても、患者に運動を終了していい旨を通知する。これにより、安全な運動リハビリテーションを実現することができる。
【0024】
[適用例6]本適用例の患者用端末は、サーバーから、患者に適用する脈拍数範囲の情報を含むリハビリテーション情報を取得するリハビリテーション情報取得部と、前記リハビリテーション情報を生体情報計測装置に送信するリハビリテーション情報送信部と、前記生体情報計測装置から、前記患者の計測された脈拍数と当該脈拍数が計測された計測時刻とを含む脈拍計測情報を受信する脈拍計測情報受信部と、前記脈拍計測情報を前記サーバーに送信する脈拍計測情報送信部と、を有する。
【0025】
本適用例に係る患者用端末によれば、サーバーから患者に適用する脈拍数範囲の情報を含むリハビリテーション情報を取得し、取得したリハビリテーション情報を生体情報計測装置に送信する。これにより、患者にとっては、自ら脈拍数範囲を設定する必要がなくなり、患者の利便性が向上する。また、医師等の指導者にとっては、患者に対して処方した脈拍数範囲を遠隔で設定することが可能となるため、リハビリテーションによる患者の健康の改善状況に応じて、患者に適した脈拍数範囲を適切な時期に設定することができ、遠隔リハビリテーションの効果を一層向上させることができる。さらに、患者自らが脈拍数範囲を設定することによる入力ミスを防止できるという効果も得ることができる。
【0026】
さらに、本適用例に係る患者用端末によれば、患者の計測された脈拍数と当該脈拍数が計測された計測時刻とを含む脈拍計測情報を生体情報計測装置から受信して、当該脈拍計測情報をサーバーに送信することができる。これにより、患者の運動リハビリテーションの実施状況を指導者に遠隔で報告することが可能となり、指導者は患者の運動リハビリテーションの実施状況に基づき、患者の健康の改善状況を診断することができる。また、患者の健康の改善状況から、例えば、患者に適した新たな脈拍数範囲を適切な時期に設定することができる。
【0027】
[適用例7]本適用例のサーバーは、指導者用端末から、患者に適用する脈拍数範囲の情報を含むリハビリテーション情報を受信するリハビリテーション情報受信部と、前記リハビリテーション情報を、患者用端末から取得可能状態にするリハビリテーション情報公開部と、前記患者用端末から、前記患者の計測された脈拍数と当該脈拍数が計測された計測時刻とを含む脈拍計測情報を受信する脈拍計測情報受信部と、前記脈拍計測情報に基づいて、前記計測された脈拍数が前記脈拍数範囲の範囲内である脈拍数範囲計測時間に関するドキュメント情報を生成するドキュメント情報生成部と、前記ドキュメント情報を前記指導者用端末から閲覧可能にするドキュメント情報公開部と、を有する。
【0028】
本適用例に係るサーバーによれば、指導者用端末から、患者に適用する脈拍数範囲の情報を含むリハビリテーション情報を受信して、受信したリハビリテーション情報を、患者用端末から取得可能状態にする。これにより、医師等の指導者にとっては、患者に対して処方した脈拍数範囲を遠隔で設定することが可能となるため、リハビリテーションによる患者の健康の改善状況に応じて、患者に適した脈拍数範囲を適切な時期に設定することができ、遠隔リハビリテーションの効果を一層向上させることができる。また、患者にとっては、患者用端末を用いてリハビリテーション情報を取得することで自ら脈拍数範囲を設定する必要がなくなり、利便性が向上する。
【0029】
さらに、本適用例に係るサーバーによれば、患者用端末から、患者の計測された脈拍数と当該脈拍数が計測された計測時刻とを含む脈拍計測情報を受信して、受信した脈拍計測情報に基づいて、計測された脈拍数が設定された脈拍数範囲の範囲内である脈拍数範囲計測時間に関するドキュメント情報を生成し、生成したドキュメント情報を指導者用端末から閲覧可能にする。これにより、患者の運動リハビリテーションの実施状況を指導者にわかりやすい形態で報告することが可能となり、指導者は患者の運動リハビリテーションの実施状況に基づき、患者の健康の改善状況を診断することが容易になる。また、患者の健康の改善状況から、例えば、患者に適した新たな脈拍数範囲を適切な時期に設定することができる。
【0030】
[適用例8]本適用例の遠隔リハビリテーション方法は、サーバーと指導者用端末と患者用端末と生体情報計測装置とを用いた遠隔リハビリテーション方法であって、前記指導者用端末が、患者に適用する脈拍数範囲の情報を含むリハビリテーション情報を前記サーバーに送信することと、前記サーバーが、前記リハビリテーション情報を受信することと、前記サーバーが、前記リハビリテーション情報を前記患者用端末から取得可能にすることと、前記患者用端末が、前記サーバーから前記リハビリテーション情報を取得することと、前記患者用端末が、前記リハビリテーション情報を前記生体情報計測装置に送信することと、前記生体情報計測装置が、前記リハビリテーション情報を受信することと、前記生体情報計測装置が、前記リハビリテーション情報に基づいて、前記脈拍数範囲を設定することと、前記生体情報計測装置が、前記患者の脈拍数を計測することと、前記生体情報計測装置が、計測された脈拍数と当該脈拍数が計測された計測時刻とを含む脈拍計測情報を記憶することと、前記生体情報計測装置が、前記脈拍計測情報を前記患者用端末に送信することと、前記患者用端末が、前記脈拍計測情報を受信することと、前記患者用端末が、前記脈拍計測情報を前記サーバーに送信することと、前記サーバーが、前記脈拍計測情報を受信することと、前記サーバーが、前記脈拍計測情報に基づいて、前記計測された脈拍数が前記脈拍数範囲の範囲内である脈拍数範囲計測時間に関するドキュメント情報を生成することと、前記サーバーが、前記ドキュメント情報を前記指導者用端末から閲覧可能にすることと、を含む。
【0031】
本適用例に係る遠隔リハビリテーション方法によれば、指導者用端末が、患者に適用する脈拍数範囲の情報を含むリハビリテーション情報をサーバーに送信し、サーバー、患者用端末を介して生体情報計測装置に適用する脈拍数範囲を設定することができる。これにより、患者にとっては、自ら脈拍数範囲を設定する必要がなくなり、患者の利便性が向上する。また、医師等の指導者にとっては、患者に対して処方した脈拍数範囲を遠隔で設定することが可能となるため、リハビリテーションによる患者の健康の改善状況に応じて、患者に適した脈拍数範囲を適切な時期に設定することができ、遠隔リハビリテーションの効果を一層向上させることができる。
【0032】
本適用例では、指導者用端末からは、運動処方プログラムを送信するのではなく、脈拍数範囲の情報を含むリハビリテーション情報を送信する。この構成によって、適用例1で説明したように、患者の体調に応じた安全な運動リハビリテーションを実現することができる。
【0033】
また、生体情報計測装置が計測した脈拍数と当該脈拍数が計測された計測時刻とを含む脈拍計測情報を、患者用端末を介してサーバーが受信し、サーバーが、受信した脈拍計測情報に関する情報に基づいて、計測された脈拍数が脈拍数範囲の範囲内である脈拍数範囲計測時間に関するドキュメント情報を生成し、生成したドキュメント情報を指導者用端末から閲覧可能にする。これにより、患者の運動リハビリテーションの実施状況を指導者にわかりやすい形態で報告することが可能となり、指導者は患者の運動リハビリテーションの実施状況に基づき、患者の健康の改善状況を診断することが容易になる。また、患者の健康の改善状況から、例えば、患者に適した新たな脈拍数範囲を適切な時期に設定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
図1】第1実施形態に係る遠隔リハビリテーションシステムの構成図。
図2】指導者用端末の機能ブロック図。
図3】リハビリテーション情報のデータ構造を示す図。
図4】サーバーの機能ブロック図。
図5】運動データのデータ構造を示す図。
図6】サーバーが生成する運動レポートを示す図。
図7】患者用端末の機能ブロック図。
図8】第1実施形態に係る生体情報計測装置の外観構成を示す図。
図9】生体情報計測装置の機能ブロック図。
図10】生体情報計測装置の表示画面を示す図。
図11】遠隔リハビリテーション方法を説明するフローチャート。
図12】第2実施形態に係る生体情報計測装置の機能ブロック図。
図13】第2実施形態に係る生体情報計測装置の表示画面の一例を示す図。
図14】第3実施形態に係る生体情報計測装置の表示画面の他の例を示す図。
図15】第3実施形態に係るサーバーが生成する運動レポートを示す図。
図16】変形例に係る生体情報計測装置の表示画面の一例を示す図。
図17】変形例に係る生体情報計測装置の表示画面の一例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下では、上述した本発明の内容を明確にするために、以下に示す順序に従って実施形態を説明する。
1.第1実施形態
1−1.遠隔リハビリテーションシステムの構成
1−1−1.指導者用端末の構成
1−1−2.サーバーの構成
1−1−3.患者用端末の構成
1−1−4.生体情報計測装置の構成
1−2.遠隔リハビリテーション方法の手順
1−3.作用効果
2.第2実施形態
3.第3実施形態
4.変形例
【0036】
1.第1実施形態
1−1.遠隔リハビリテーションシステムの構成
図1は、本実施形態に係る遠隔リハビリテーション方法を実現する遠隔リハビリテーションシステム100のシステム構成図である。本実施形態では、心筋梗塞や狭心症といった心臓疾患の患者(患者)を対象とする遠隔リハビリテーションを例として説明する。遠隔リハビリテーションシステム100は、指導者用端末104と、サーバー102と、患者用端末106と、生体情報計測装置108とを含む。サーバー102、指導者用端末104、及び患者用端末106はネットワーク接続によって、各種情報の送受信を行う。
【0037】
指導者用端末104は、遠隔リハビリテーションを指導する医者等の指導者が使用する端末である。また、患者用端末106は生体情報計測装置108と接続することが可能で、各種情報の送受信を行うことができる。生体情報計測装置108は、患者の身体に装着して患者の生体情報を計測する。生体情報としては患者の体温、血圧、脈拍数等があるが、本実施形態では生体情報が脈拍数の場合を例として説明する。
【0038】
なお、図1では患者用端末106と生体情報計測装置108とをそれぞれ2つ図示しているが、これに限られるものではなく、患者毎に患者用端末106と生体情報計測装置108とが遠隔リハビリテーションシステム100に含まれることとなる。患者用端末106と生体情報計測装置108の構成は複数存在する場合でも共通なため、以下の説明では、説明を簡略にするために1つの患者用端末106と1つの生体情報計測装置108について説明する。
【0039】
1−1−1.指導者用端末の構成
図2は、指導者用端末104の機能ブロック図である。指導者用端末104は、いわゆるパーソナルコンピューター(PC)であり、後述するリハビリテーション情報300をサーバー102に送信し、また、サーバー102が提供する運動レポート418(図4参照)を指導者が閲覧するために使用される。指導者用端末104は、コンピューター本体200と、表示装置202と、入力装置204とを有する。コンピューター本体200は、さらに演算処理部206と、通信部210と、記憶部208とを含む。
【0040】
記憶部208は、各種データ、各種プログラムを記憶する。記憶部208に記憶されるデータとしては、患者に適したリハビリテーションに関するリハビリテーション情報300がある。リハビリテーション情報300は患者毎に記憶される。また、記憶部208に記憶するプログラムとしては、リハビリテーション情報300をサーバー102に送信するためのリハビリテーション情報送信プログラム212がある。
【0041】
図3は、リハビリテーション情報300のデータ構造を示す図である。リハビリテーション情報300は、患者の識別情報である患者ID302と、患者に適用する脈拍数範囲の下限を表す下限脈拍数304と、当該脈拍数範囲の上限を表す上限脈拍数306とを含む。図3は、患者ID302として「000137」が、下限脈拍数304として「110」が、上限脈拍数306として「130」が記憶部208に記憶されていることを表している。リハビリテーション情報送信プログラム212を実行することによって、リハビリテーション情報300がサーバー102に送信される。
【0042】
通信部210は、ネットワーク接続のためのインターフェースである。
【0043】
演算処理部206は指導者用端末104を構成する各部、各装置を統括制御する。また、記憶部208に記憶された各種プログラムを読み出し、実行する。演算処理部206は例えばCPU(Central Processing Unit)である。演算処理部206が記憶部208からリハビリテーション情報送信プログラム212を読み出し、実行することによって、リハビリテーション情報300を、通信部210を介してサーバー102に送信する。すなわち、演算処理部206がリハビリテーション情報送信部として動作する。
【0044】
表示装置202は、演算処理部206の演算処理結果を表示し、また、入力装置204からの入力を受け付けるための画面インターフェースを表示する。表示装置202は例えば、液晶ディスプレイである。
【0045】
入力装置204は、演算処理部206に各種命令及び各種データを入力する際に使用するユーザーインターフェースである。入力装置204は例えば、キーボードやマウスで構成することができる。入力装置204は表示装置202と一体となったタッチパネル型のディスプレイで実現してもよい。
【0046】
1−1−2.サーバーの構成
図4は、サーバー102の機能ブロック図である。サーバー102はいわゆるネットワークサーバーである。サーバー102はWWW(World Wide Web)サーバーの機能を有する構成が好ましい。サーバー102は、演算処理部400と、記憶部402と、通信部404とを含む。
【0047】
記憶部402は、各種データ、各種プログラムを記憶する。記憶部402に記憶されるデータとしては、指導者用端末104から受信したリハビリテーション情報300、患者用端末106から受信した運動データ416、及び運動データ416を用いてサーバー102が生成する運動レポート418がある。リハビリテーション情報300、運動データ416、及び運動レポート418は患者毎に記憶される。また、記憶部402に記憶するプログラムとしては、リハビリテーション情報300を指導者用端末104から受信するためのリハビリテーション情報受信プログラム406、リハビリテーション情報300を患者用端末106が取得可能とするためのリハビリテーション情報公開プログラム408、患者用端末106から運動データ416を受信するための運動データ受信プログラム410、運動レポート418を生成するための運動レポート生成プログラム412、そして、運動レポート418を指導者用端末104から閲覧可能とするための運動レポート公開プログラム414がある。
【0048】
通信部404は、ネットワーク接続のためのインターフェースである。
【0049】
演算処理部400はサーバー102を構成する各部を統括制御する。また、記憶部402に記憶された各種プログラムを読み出し、実行する。演算処理部400は例えばCPUである。
【0050】
具体的には、演算処理部400が記憶部402からリハビリテーション情報受信プログラム406を読み出し、実行することによって、リハビリテーション情報300を、通信部404を介して指導者用端末104から受信する。すなわち、演算処理部400がリハビリテーション情報受信部として動作する。
【0051】
また、演算処理部400が記憶部402からリハビリテーション情報公開プログラム408を読み出し、実行することによって、リハビリテーション情報300を患者用端末106が取得可能とする、より具体的には、リハビリテーション情報300をWWWサーバーとして公開されている所定のフォルダーに格納する処理を行う。すなわち、演算処理部400がリハビリテーション情報公開部として動作する。
【0052】
また、演算処理部400が記憶部402から運動データ受信プログラム410を読み出し、実行することによって、運動データ416を、通信部404を介して患者用端末106から受信する。すなわち、演算処理部400が運動データ受信部(脈拍計測情報受信部とも呼称する)として動作する。
【0053】
図5は、運動データ416のデータ構造を示す図である。運動データ416は、後述する生体情報計測装置108で計測した患者の脈拍数に関するデータである。運動データ416は患者ID302と、測定日時データ502と、脈拍数データ504とを含む。なお、運動データ416は脈拍計測情報とも呼称する。
【0054】
患者ID302は患者の識別情報であり、リハビリテーション情報300に含まれる患者ID302と対応付けられている。言い換えると、同じ患者であれば、リハビリテーション情報300に含まれる患者ID302と、運動データ416に含まれる患者ID302は同一のIDとなる。
【0055】
測定日時データ502と脈拍数データ504とは関連付けられ、測定日時データ502が表す時刻に測定された脈拍数が脈拍数データ504で表される。運動データ416には所定の期間にわたる測定日時データ502及び脈拍数データ504が含まれる。図5の例では3週間分の測定日時データ502及び脈拍数データ504が含まれているが、これに限らず、1日分であってもよいし、1ヶ月分であってもよい。
【0056】
図4の説明に戻り、演算処理部400は記憶部402から運動レポート生成プログラム412を読み出し、実行することによって、記憶部402に記憶されている運動データ416から運動レポート418を生成する。すなわち、演算処理部400が運動レポート生成部(ドキュメント情報生成部とも呼称する)として動作する。
【0057】
図6は、運動レポート生成プログラム412が生成する運動レポート418の一例を示す図である。運動レポート生成プログラム412は、記憶部402に記憶されている運動データ416とリハビリテーション情報300とを参照して、患者毎に運動レポート418を作成する。運動レポート418は、HTML(Hyper Text Markup Language)形式で作成することが好ましい。なお、運動レポート418をドキュメント情報とも呼称する。
【0058】
図6の横軸は4週間を1週間単位に区分していることを表し、縦軸は1週間分の運動時間の累積を時間で表している。なお、本実施形態では脈拍を計測するのは患者が運動する時という前提がある。そのため、脈拍計測時間を患者の運動時間とみなして、以下説明する。
【0059】
図6のそれぞれの縦棒グラフは、該当する1週間分の総運動時間を表し、縦棒グラフのうち、白い部分は、患者に適した脈拍数範囲(目標)よりも低い脈拍数で運動した累積時間を表している。また、縦棒グラフの斜線部分は、患者に適した脈拍数範囲内の脈拍数で運動した累積時間を表している。縦棒グラフの横線部分は、患者に適した脈拍数範囲よりも高い脈拍数で運動した累積時間を表している。
【0060】
図4の説明に戻り、演算処理部400は記憶部402から運動レポート公開プログラム414を読み出し、実行することによって、記憶部402に記憶されている運動レポート418を指導者用端末104から閲覧可能とする、より具体的には、運動レポート418をWWWサーバーとして公開されている所定のフォルダーに格納する処理を行う。すなわち、演算処理部400が運動レポート公開部(ドキュメント情報公開部とも呼称する)として動作する。
【0061】
指導者は、公開された運動レポート418を、指導者用端末104を用いて閲覧することによって、患者の運動リハビリテーションの実施状況を遠隔で確認、分析することができる。
【0062】
1−1−3.患者用端末の構成
図7は、患者用端末106の機能ブロック図である。患者用端末106は、いわゆるパーソナルコンピューター(PC)である。患者用端末106は、コンピューター本体700と、表示装置702と、入力装置704とを有する。コンピューター本体700は、さらに演算処理部706と、通信部710と、記憶部708と、接続インターフェース712とを含む。
【0063】
記憶部708は、各種データ、各種プログラムを記憶する。記憶部708に記憶されるデータとしては、リハビリテーション情報300と運動データ416とがある。また、記憶部708に記憶するプログラムとしては、リハビリテーション情報300をサーバー102から取得するためのリハビリテーション情報取得プログラム714、リハビリテーション情報300を生体情報計測装置108に送信するためのリハビリテーション情報送信プログラム716、生体情報計測装置108から運動データ416を受信するための運動データ受信プログラム718、及び、サーバー102に運動データ416を送信するための運動データ送信プログラム720がある。
【0064】
通信部710は、ネットワーク接続のためのインターフェースである。
【0065】
接続インターフェース712は、生体情報計測装置108との接続のためのインターフェースであり、例えば、USB(Universal Serial Bus)や、IEEE1394等のシリアルインターフェースで実現される。
【0066】
演算処理部706は患者用端末106を構成する各部、各装置を統括制御する。また、記憶部708に記憶された各種プログラムを読み出し、実行する。演算処理部706は例えばCPUである。
【0067】
具体的には、演算処理部706が記憶部708からリハビリテーション情報取得プログラム714を読み出し、実行することによって、リハビリテーション情報300を、通信部710を介してサーバー102から取得する。すなわち、演算処理部706がリハビリテーション情報取得部として動作する。
【0068】
また、演算処理部706が記憶部708からリハビリテーション情報送信プログラム716を読み出し、実行することによって、リハビリテーション情報300を、接続インターフェース712を介して生体情報計測装置108へ送信する。すなわち、演算処理部706がリハビリテーション情報送信部として動作する。
【0069】
また、演算処理部706が記憶部708から運動データ受信プログラム718を読み出し、実行することによって、運動データ416を、接続インターフェース712を介して生体情報計測装置108から受信する。すなわち、演算処理部706が運動データ受信部(脈拍計測情報受信部とも呼称する)として動作する。
【0070】
また、演算処理部706が記憶部708から運動データ送信プログラム720を読み出し、実行することによって、運動データ416を、通信部710を介してサーバー102へ送信する。すなわち、演算処理部706が運動データ送信部(脈拍計測情報送信部とも呼称する)として動作する。
【0071】
表示装置702は、演算処理部706の演算処理結果を表示し、また、入力装置704からの入力を受け付けるための画面インターフェースを表示する。表示装置702は例えば、液晶ディスプレイである。
【0072】
入力装置704は、演算処理部706に各種命令及び各種データを入力する際に使用するユーザーインターフェースである。入力装置704は例えば、キーボードやマウスで構成することができる。入力装置704は表示装置702と一体となったタッチパネル型のディスプレイで実現してもよい。
【0073】
1−1−4.生体情報計測装置の構成
図8は、本実施形態に係る腕装着型の生体情報計測装置108の外観構成と、使用の態様を示す図である。生体情報計測装置108は、腕時計構造を有する装置本体800を備えている。装置本体800には、腕時計における12時方向から患者の腕に巻きついて6時方向で固定されるリストバンド803が設けられており、装置本体800は、リストバンド803によって患者の腕から着脱自在となっている。本実施形態において生体情報計測装置108は脈拍計である。
【0074】
装置本体800には、表示部808が設けられている。詳細は後述するが、表示部808には、現在時刻及び患者の脈拍数が表示されるようになっている。装置本体800の外周部の2時方向には、ボタンスイッチ811が設けられており、ボタンスイッチ811の押下によって表示部808の表示が切り替わるようになっている。ボタンスイッチ811の他にも、装置本体800の外周部の7時方向には、ボタンスイッチ812が設けられており、また、11時方向には、ボタンスイッチ813が設けられている。ボタンスイッチ812,813の各々は、患者が各種情報を入力する際に用いられる。
【0075】
さらに、装置本体800の表面(表示部808が設けられた面)には、開始・終了ボタン816が設けられている。開始・終了ボタン816は、患者が運動時に生体情報計測装置108に対して、脈拍数の計測の開始及び終了を指示するために用いられる。
【0076】
また、装置本体800の6時方向の外周部には、コネクター部805が設けられている。コネクター部805には、コネクターピース806が着脱自在に取り付けられている。コネクターピース806には、ケーブル801の一端が接続されている。一方、ケーブル801の他端には、患者の脈拍数を計測するための脈波センサーユニット802が接続されている。脈波センサーユニット802は、センサー用固定バンド804によって、患者の指の根元に固定される。この構成において、コネクターピース806がコネクター部805と着脱自在になっているため、患者がコネクターピース806をコネクター部805から外すことにより、本装置を腕時計としても利用できるようになっている。
【0077】
また、コネクター部805に不図示のケーブルを取り付けることによって、患者用端末106と接続できるようになっている。このような構成にすることで、生体情報計測装置108と患者用端末106とが通信可能に接続される。すなわち、コネクター部805が後述する接続インターフェース906として機能する。
【0078】
図9は、生体情報計測装置108の機能的構成を示すブロック図である。
【0079】
記憶部914は、演算処理部904によって実行される制御プログラムや各種データを記憶する。記憶部914に記憶されるデータとしては、患者が運動リハビリテーションをする際に適した脈拍数の上限値及び下限値を示す脈拍数範囲926と、運動データ416とがある。また、記憶部914に記憶するプログラムとしては、リハビリテーション情報300を患者用端末106から受信するためのリハビリテーション情報受信プログラム918、リハビリテーション情報300に含まれる脈拍数範囲を設定する脈拍数範囲設定プログラム920、運動データ416を生成する運動データ生成プログラム922、及び、運動データ416を患者用端末106に送信するための運動データ送信プログラム924がある。
【0080】
演算処理部904は、生体情報計測装置108の各部の動作を制御するほか、各種演算処理を実行する。演算処理部904は例えばCPUである。
【0081】
具体的には、演算処理部904が記憶部914からリハビリテーション情報受信プログラム918を読み出し、実行することによって、リハビリテーション情報300を、接続インターフェース906を介して患者用端末106から取得する。すなわち、演算処理部904がリハビリテーション情報受信部として動作する。
【0082】
また、演算処理部904が記憶部914から脈拍数範囲設定プログラム920を読み出し、実行することによって、リハビリテーション情報300を用いて生体情報計測装置108に脈拍数範囲926を設定する。すなわち、演算処理部904が脈拍数範囲設定部として動作する。
【0083】
また、演算処理部904が記憶部914から運動データ生成プログラム922を読み出し、実行することによって、運動データ416を生成する。すなわち、演算処理部904が運動データ生成部として動作する。
【0084】
また、演算処理部904が記憶部914から運動データ送信プログラム924を読み出し、実行することによって、接続インターフェース906を介して運動データ416を患者用端末106へ送信する。すなわち、演算処理部904が運動データ送信部(脈拍計測情報送信部とも呼称する)として動作する。
【0085】
接続インターフェース906は、患者用端末106と接続するためのインターフェースであり、例えば、USB(Universal Serial Bus)や、IEEE1394等のシリアルインターフェースで実現される。
【0086】
計時部912は、時刻を計時するものであり、計時結果を演算処理部904に出力する。入力部916は、上述したボタンスイッチ811〜813及び開始・終了ボタン816に対応するものであり、患者の各ボタン操作に応じた信号を演算処理部904に出力する。なお、計時部912は脈拍数の計測を開始してからの経過時間を計測してもよい。この場合、計時部912は経過時間計測部として機能する。
【0087】
通知部908は、音や振動等を用いて患者に通知をするものであり、例えば、演算処理部904からの指示に応じた音量のアラーム音を発生する。あるいは、振動モーターを備え、演算処理部904からの指示に応じた強さの振動を発生するものであってもよい。なお、通知部908はなくても構わない。
【0088】
脈波センサーユニット802は、患者の生体情報である脈波を検出し、脈波信号として脈拍数計測部910に出力する。脈波センサーユニット802の構成は公知のため、詳細な説明は省略するが、例えば、脈波センサーユニット802は、LEDとフォトトランジスターを備え、LEDから光を放射し、放射された光が患者の皮膚下の血管を介して反射され、フォトトランジスターにて受光されるものが好適である。フォトトランジスターに受光された光が光電変換された結果、脈波信号が得られる。
【0089】
脈拍数計測部910は、脈波センサーユニット802からの脈波信号から脈拍数を求める。脈拍数計測部910の構成は公知の技術を採用することができる。例えば、脈波信号を増幅、アナログ/デジタル変換し、FFT(高速フーリエ変換)を実行することによって、脈波信号の周波数成分を算出し、脈波スペクトル信号を求める。
【0090】
求めた脈波スペクトル信号から体動成分を除去し、脈波成分を求める。体動成分は例えば加速度センサーを用いることによって求めることができる。そして、求めた脈波成分の周波数fMmaxを(式1)に代入して脈拍数(拍/分)を算出する。
脈拍数(拍/分)=fMmax(Hz)×60 ・・・(式1)
求めた脈拍数は演算処理部904に出力される。脈拍数の計測は所定の間隔で計測を行う。例えば5秒間隔で計測する。
【0091】
表示部808は、上述したように各種情報を表示するものであり、演算処理部904の制御に従って画面表示を行う。
【0092】
図10は、表示部808による表示形態の一例を示す図である。現在時刻表示1002は現在時刻を表示する。図10では「10:30」を表示している。脈拍計測状態表示1004は脈拍の計測状態を表示する。例えばハートマークが点滅表示されている場合は、脈拍を計測している状態を表す。
【0093】
脈拍計測時間表示1006は、開始・終了ボタン816によって脈拍数の計測の開始が指示されてからの経過時間を表示する。図10では脈拍数の計測が開始されてから11分25秒が経過したことを表している。なお、脈拍計測時間表示1006はなくても構わない。
【0094】
脈拍数表示1008は、計測した脈拍数を表示する。図10では脈拍数として「58」(拍/分)を表示している。上限脈拍数表示1010は、脈拍数範囲設定プログラム920で設定された脈拍数範囲926の上限脈拍数を表示する。図10では上限脈拍数として「130」を表示している。下限脈拍数表示1012は、脈拍数範囲設定プログラム920で設定された脈拍数範囲926の下限脈拍数を表示する。図10では下限脈拍数として「110」を表示している。表示部808に上限脈拍数表示1010及び下限脈拍数表示1012を表示することによって、患者に設定された脈拍数範囲926を意識させることができ、効果的な運動リハビリテーションを実現しやすくなる。
【0095】
1−2.遠隔リハビリテーション方法の手順
図11は、前述した遠隔リハビリテーションシステム100を用いた遠隔リハビリテーション方法の手順の一例を説明するフローチャートである。なお、以下の説明では理解を容易にするために各ステップを時系列に沿って順に説明していくが、必ずしもこの順序で各ステップを行う必要はなく、各ステップの順序を入れ替えてもよいし、同時並行で各ステップを実行しても構わない。
【0096】
まず、指導者が指導者用端末104の入力装置204を用いて、患者に適したリハビリテーション情報300を作成する(ステップS1100)。具体的には患者が運動するのに適した脈拍数範囲に関する情報を生成する。
【0097】
次に、指導者用端末104がリハビリテーション情報送信プログラム212を実行して、作成されたリハビリテーション情報300をサーバー102に送信する(ステップS1102)。
【0098】
一方、サーバー102では、リハビリテーション情報受信プログラム406が実行されており、リハビリテーション情報受信プログラム406が、指導者用端末104からリハビリテーション情報300が送信されたことを検出すると、リハビリテーション情報300を受信する(ステップS1104)。
【0099】
次に、サーバー102では、リハビリテーション情報公開プログラム408を実行して、受信したリハビリテーション情報300を公開する(ステップS1106)。公開にあたっては、リハビリテーション情報300に含まれる患者ID302で表される患者が使用する患者用端末106から取得可能とし、他の患者用端末106からは取得できないようにしてもよい。
【0100】
一方、生体情報計測装置108を接続インターフェース906、接続インターフェース712を介して患者用端末106に接続すると(ステップS1108)、患者用端末106では、リハビリテーション情報取得プログラム714が実行され、サーバー102に公開されているリハビリテーション情報300を取得する(ステップS1110)。
【0101】
次に、患者用端末106では、リハビリテーション情報送信プログラム716が実行され、取得したリハビリテーション情報300を、接続インターフェース906、接続インターフェース712を介して生体情報計測装置108に送信する(ステップS1112)。
【0102】
一方、生体情報計測装置108では、リハビリテーション情報受信プログラム918を実行して患者用端末106からリハビリテーション情報300を受信する(ステップS1114)。次に、生体情報計測装置108は、脈拍数範囲設定プログラム920を実行して、受信したリハビリテーション情報300に含まれる上限脈拍数306、下限脈拍数304を生体情報計測装置108の脈拍数範囲926として設定する(ステップS1116)。その後、生体情報計測装置108と患者用端末106との接続を解除する(ステップS1118)。
【0103】
続いて、患者が腕に生体情報計測装置108を装着して運動リハビリテーションを行う。運動リハビリテーションに適した運動としては例えばウォーキングがある。具体的には、患者が生体情報計測装置108の開始・終了ボタン816を押下すると、脈波センサーユニット802、脈拍数計測部910を動作させて、脈拍数の計測を開始する(ステップS1120)。ここで、計時部912にて脈拍数の計測を開始してからの経過時間を計時してもよい。そして、患者が所定の時間(例えば30分間)運動を行う。
【0104】
脈拍数の計測中には、表示部808は、図10に示した表示を行い、現在の脈拍数に加え、設定されている脈拍数範囲926の上限脈拍数と下限脈拍数とを表示する。また、運動データ生成プログラム922を実行して、計測した脈拍数と計時時刻とを関連付けた運動データ416を生成し、生成された運動データ416を記憶部914に記憶する(ステップS1122)。運動データ416は、例えば5秒間隔で計測時刻と脈拍数とを関連付けたデータとして記憶部914に記憶される。記憶部914は例えば、1週間分の運動データ416を記憶することが可能である。
【0105】
脈拍数の計測を開始してから所定の時間が経過すると、通知部908にて患者に音あるいは振動によって通知し、患者は運動を終了する。また、生体情報計測装置108は、脈拍数の計測を終了する。この通知部908による通知はなくても構わないが、あった方が好ましい。その後、患者は生体情報計測装置108を腕から取り外す。
【0106】
患者は上記の所定の時間の運動リハビリテーションを任意の期間、例えば1週間行った後、生体情報計測装置108を患者用端末106に接続する(ステップS1124)。患者用端末106との接続を検出すると、生体情報計測装置108は、運動データ送信プログラム924を実行して、記憶部914に記憶された1週間分の運動データ416を患者用端末106に送信する(ステップS1126)。運動データ416の送信後、生体情報計測装置108は、患者用端末106との接続を解除する(ステップS1128)。
【0107】
一方、患者用端末106は、生体情報計測装置108との接続を検出すると、運動データ受信プログラム718を実行して、生体情報計測装置108から運動データ416を受信する(ステップS1130)。次に、患者用端末106は、運動データ送信プログラム720を実行して、運動データ416をサーバー102に送信する(ステップS1132)。
【0108】
サーバー102では、運動データ受信プログラム410が実行されており、運動データ受信プログラム410が、患者用端末106から運動データ416が送信されたことを検出すると、運動データ416を受信する(ステップS1134)。
【0109】
次に、サーバー102は、1週間に1回の間隔で運動レポート生成プログラム412を実行し、図6で例示した運動レポート418を生成する(ステップS1136)。続いて、サーバー102は、運動レポート公開プログラム414を実行して、生成した運動レポート418を公開する(ステップS1138)。公開にあたっては、指導者用端末104から閲覧可能とし、他の端末からは閲覧できないようにするのが好ましい。
【0110】
一方、指導者は、指導者用端末104を用いて、患者毎に公開された運動レポート418を閲覧する(ステップS1140)。指導者は患者毎に運動レポート418を確認して、個々の患者についてリハビリテーション情報300を更新するか否かを判断する(ステップS1142)。リハビリテーション情報300を更新する必要がなければ(ステップS1142:No)、何もせず終了し、リハビリテーション情報300を更新する必要があると判断した場合には(ステップS1142:Yes)、ステップS1100に移行してリハビリテーション情報300を作成する。具体的には、患者の運動リハビリテーションの結果、患者の健康状態に改善が見られる場合には、患者が運動するのに適した脈拍数範囲を上げること、又は下げることを行う。
【0111】
1−3.作用効果
本実施形態によれば、指導者用端末104が、患者に適用する脈拍数範囲の情報を含むリハビリテーション情報300をサーバー102に送信し、サーバー102、患者用端末106を介して生体情報計測装置108に適用する脈拍数範囲を設定することができる。これにより、患者にとっては、自ら脈拍数範囲を設定する必要がなくなり、患者の利便性が向上する。また、医師等の指導者にとっては、患者に対して処方した脈拍数範囲を遠隔で設定することが可能となるため、リハビリテーションによる患者の改善状況に応じて、患者に適した脈拍数範囲を適切な時期に設定することができ、遠隔リハビリテーションの効果を一層向上させることができる。
【0112】
ここで、指導者用端末104からは、運動処方プログラムを送信するのではなく、脈拍数範囲の情報を含むリハビリテーション情報300を送信する。この構成によって、患者の体調に応じた運動リハビリテーションを実現することができる。一般に、患者の体調が悪い場合には、比較的軽度な運動であっても、患者の脈拍数が設定された脈拍数範囲に到達しやすくなる。反対に、患者の体調が良好な場合には、比較的強度な運動をしなければ、患者の脈拍数が設定された脈拍数には到達しない。つまり、脈拍数範囲を設定することによって、患者の体調に応じた運動リハビリテーションを実現することができる。
【0113】
また、生体情報計測装置108が計測した脈拍数と当該脈拍数が計測された計測時刻とを含む運動データ416を、患者用端末106を介してサーバー102が受信し、サーバー102が、受信した運動データ416に基づいて、運動レポート418を生成し、生成した運動レポート418を指導者用端末104から閲覧可能にする。これにより、患者の運動リハビリテーションの実施状況を指導者にわかりやすい形態で報告することが可能となり、指導者は患者の運動リハビリテーションによる改善状況を把握して、患者に適した脈拍数範囲を適切な時期に設定することができる。
【0114】
生体情報計測装置108は、設定された脈拍数範囲を表示する。これにより、患者に設定された脈拍数範囲を意識させることができ、効果的な運動リハビリテーションを実現しやすくなる。運動リハビリテーションにおいては、医師等の指導者によって設定された脈拍数範囲内で運動した時間が、患者の運動リハビリテーションの効果を向上させる、という新たな知見に基づき、患者に設定された脈拍数範囲を表示することによって、患者に対して設定された脈拍数範囲を意識させることができる。
【0115】
2.第2実施形態
この発明は上述した第1実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能である。以下に第2実施形態、第3実施形態、及び変形例について説明するが、これら第2実施形態、第3実施形態、及び変形例の説明にあたっては、第1実施形態と同様の構成については同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0116】
図12は、第2実施形態における生体情報計測装置1200の機能ブロック図である。生体情報計測装置1200は、記憶部914に脈拍数範囲計測時間算出プログラム1202が記憶されている点において、第1実施形態の生体情報計測装置108と異なる。
【0117】
演算処理部904が記憶部914から脈拍数範囲計測時間算出プログラム1202を読み出し、実行することによって、脈拍数計測部910で計測された脈拍数が、設定された脈拍数範囲926の範囲内となった累計時間(脈拍数範囲計測時間)を算出する。すなわち、演算処理部904が脈拍数範囲計測時間算出部として動作する。
【0118】
累計時間の算出は、例えば、運動データ416を参照して、時系列において隣り合う(測定日時データ502が隣り合う)2つの脈拍数データ504がともに脈拍数範囲926の範囲内の場合、当該時系列において隣り合う時間分を累計時間に累積加算することによって実現することができる。
【0119】
脈拍数範囲計測時間算出プログラム1202で算出された累計時間は、脈拍数範囲計測時間1204として記憶部914に記憶され、表示部808に表示するように演算処理部904が制御する。
【0120】
図13は、第2実施形態における表示部808による表示形態の一例を示す図である。図13の表示形態と図10の表示形態とは、上限脈拍数表示1010及び下限脈拍数表示1012の表示位置が異なる点と、脈拍数範囲計測時間1204を表す脈拍数範囲計測時間表示1302が追加されている点で異なる。図13では、計測された脈拍数が脈拍数範囲「110〜130」内となった累計時間が15秒であることを表している。
【0121】
表示部808に脈拍数範囲計測時間表示1302を表示することによって、患者が脈拍数範囲計測時間を把握することができ、患者に対して脈拍数範囲計測時間1204が長くなるように意識付けをさせることができる。これにより、患者に対して効果的な運動リハビリテーションをできているか否かを一層意識させることができる。
【0122】
また、脈拍数範囲計測時間算出プログラム1202で脈拍数範囲計測時間1204を算出することに伴って、通知部908による患者への通知を次のようにしてもよい。
【0123】
第1実施形態では、脈拍数の計測を開始してから所定の時間(例えば30分間)が経過すると、通知部908にて患者に音あるいは振動によって通知し、この通知を受けて、患者は運動を終了するようになっていた。しかし、前述の通り、脈拍数範囲926内で運動した時間が患者の運動リハビリテーションの効果の向上に寄与するため、脈拍数範囲926内で十分な時間、運動することができていれば、所定の時間が経過する前に運動を終了してよいこともある。
【0124】
そこで、脈拍数範囲計測時間1204が所定の時間よりも短い第1の時間(例えば15分)に到達した場合に、通知部908が患者に通知するようにしてもよい。これにより、患者に対して所定の時間が経過する前であっても、十分な運動リハビリテーションが行われたことを通知することができる。これにより、一層効果的な運動リハビリテーションを実現することができる。
【0125】
ここで、所定の時間が経過するまでに、脈拍数範囲計測時間1204が第1の時間に到達しなかった場合には、通知部908が第1実施形態と同様に所定の時間(第2の時間とも呼称する)が経過した時に、患者に通知を出すようにしてもよい。その際、脈拍数範囲計測時間1204が第1の時間に到達した際に発する通知形態とは異なる通知形態にすることが望ましい。例えば、脈拍数範囲計測時間1204が第1の時間に到達した際に発する通知形態は、十分な運動リハビリテーションができたことを通知すべく肯定的なイメージを想起させる通知を行う。一方、脈拍数の計測を開始してから第2の時間が経過した時に発する通知形態は、十分な時間の運動を実施したけれども、脈拍数範囲926内で十分な運動ができなかったことを通知すべく、否定的なイメージを想起させる通知を行ってもよい。
【0126】
これにより、脈拍数範囲計測時間1204が第1の時間に到達しない場合であっても、患者に運動を終了してよい旨の通知を行うことができる。従って、患者が過度に運動し続けることに起因する患者の生命の危険が回避でき、安全な運動リハビリテーションを実現することができる。
【0127】
なお、第1の時間又は第2の時間は予め定められた時間としてもよいし、患者に応じて時間を可変としてもよい。患者に応じて時間を可変にする場合には、第1の時間又は第2の時間に関する情報をリハビリテーション情報300に含め、脈拍数範囲926と合わせて、患者毎に指導者が遠隔で生体情報計測装置1200に設定できるようにしてもよい。
【0128】
3.第3実施形態
図14は第3実施形態における表示部808による表示形態の一例を示す図である。図14の表示形態と図13の表示形態とは、脈拍数範囲計測時間表示1302の替わりに、上半分計測時間表示1402及び下半分計測時間表示1404を表示する点で異なる。
【0129】
上半分計測時間表示1402は、脈拍数計測部910で計測された脈拍数が、設定された脈拍数範囲926の上限値から所定範囲内となった累計の計測時間(上方範囲計測時間)を表している。所定範囲は脈拍数範囲926の中央値プラス1が好ましい。図14の例では、脈拍数が「121〜130」内となった累計時間が15秒であることを表している。
【0130】
下半分計測時間表示1404は、脈拍数計測部910で計測された脈拍数が、設定された脈拍数範囲926の下限値から所定範囲内となった累計の計測時間を表している。所定範囲は脈拍数範囲926の中央値が好ましい。図14の例では、脈拍数が「110〜120」内となった累計時間が3分7秒であることを表している。なお、下半分計測時間表示1404はなくてもよい。
【0131】
図14の表示形態を実現する場合には、脈拍数範囲計測時間算出プログラム1202は、脈拍数計測部910で計測された脈拍数が、設定された脈拍数範囲926の上半分(上限値から中央値まで)の範囲内となった累計時間と、設定された脈拍数範囲926の下半分(下限値から中央値まで)の範囲内となった累計時間とをそれぞれ算出する。
【0132】
本願発明者らが鋭意検討した結果、脈拍数範囲の上限値に近い範囲内の脈拍数で長く運動すると、患者の運動リハビリテーションの効果が向上することがわかった。そこで、患者の脈拍数が、脈拍数範囲の上限値から所定範囲内となった累積時間である上方範囲計測時間を表示することによって、患者に効果的な運動リハビリテーションをできているか否かを一層意識させることができる。
【0133】
なお、脈拍数範囲の上限値に近い範囲内の脈拍数で長く運動すると患者の運動リハビリテーションの効果が向上する、という知見に基づき、サーバー102が生成する運動レポートを図15のようにしてもよい。
【0134】
図15は第3実施形態においてサーバー102が生成する運動レポート1500の一例である。図15に示す運動レポート1500が図6に示す運動レポート418と異なる点は、縦棒グラフの内訳である。
【0135】
図15の縦棒グラフのうち、縦線部分は、患者に適した脈拍数範囲(目標)の下半分(下限値から中央値まで)の脈拍数で運動した累積時間を表している。また、縦棒グラフの斜線部分は、患者に適した脈拍数範囲の上半分(中央値から上限値まで)の脈拍数で運動した累積時間を表している。
【0136】
このようにすることによって、指導者が運動レポート1500を確認にあたって、患者が効果的な運動リハビリテーションを実施できているかをより把握しやすくなる。
【0137】
なお、図15に示す運動レポート1500をサーバー102が生成するためには、運動レポート生成プログラム412は、リハビリテーション情報300と運動データ416とを参照して、患者に適した脈拍数範囲(目標)の下半分(下限値から中央値まで)の脈拍数で運動した累積時間と、患者に適した脈拍数範囲の上半分(中央値から上限値まで)の脈拍数で運動した累積時間とをそれぞれ算出する必要がある。
【0138】
4.変形例
この発明は上述した実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能である。例えば次のような変形も可能である。
【0139】
4−1.生体情報計測装置の表示形態
生体情報計測装置の表示画面は、上述した実施形態で説明した例に限らず、以下のようにしてもよい。
【0140】
図16は、生体情報計測装置の表示画面の一例を示す図である。図16の表示画面は患者指示表示1602が表示されている点が特徴である。患者指示表示1602は、患者に対して右上向きの矢印によって脈拍数を上げるべきこと、右下向きの矢印によって脈拍数を下げるべきこと、あるいは右向きの矢印によって脈拍数を維持すべきことを指示するための表示である。患者指示表示1602を表示することによって、患者が、さらに強い運動をすべきか(脈拍数を上げるべきか)、運動強度が強すぎるので運動の強さを弱めるべきか(脈拍数を下げるべきか)、あるいは同じ強さの運動を続ければいいのか(脈拍数を維持すべきか)を把握しやすくなる。
【0141】
図17は、生体情報計測装置の表示画面の他の例を示す図である。図17の表示画面は脈拍数推移表示1702が表示されている点が特徴である。脈拍数推移表示1702は、脈拍数の計測を開始してからの脈拍数の推移を表示するものである。脈拍数の推移を表示することによって、患者が脈拍数の変化傾向を把握して、変化傾向に応じて運動の強さを調整することができる。また、患者の脈拍数変化が安定しない場合や、計測時間が長くなりデータ量が多くなってしまう場合には、脈拍数推移表示期間を狭くしても良い。例えば、脈拍数推移表示期間を2分に設定することで、現在の脈拍数の変化傾向を捕らえやすくなる。
【0142】
4−2.生体情報計測装置の形態
上述した実施形態では、生体情報計測装置として、腕時計型で患者の指から脈波を計測する装置を例として説明した。これに限らず、腕時計型で患者の手首から脈波を計測する装置であってもよいし、患者の胸に巻いて心拍を計測するベルト型の装置であってもよい。
【0143】
図8では、装置本体800の6時方向の外周部にコネクター部805が設けられ、コネクターピース806が着脱自在に取り付けられているという構成を例として説明したが、これに限るものではない。コネクター部805やコネクターピース806のような着脱機構を設けず、腕時計で用いるようなバンド部材を装置本体800に取り付けて患者の体に装置本体800を着脱するようにしてもよいし、伸縮機能を有する素材を装置本体800に取り付けて患者の体に装置本体800を着脱するようにしてもよい。
【0144】
4−3.運動リハビリテーションの種類
上述した実施形態では、運動リハビリテーションとしてウォーキングを例として説明したが、これに限らず、登山、ランニング、体操、ヨガ、水泳、水中でのウォーキング等、様々な運動リハビリテーションにも適用できる。水中での運動に適用する場合には、生体情報計測装置は十分な防水機能を備えていることが好ましい。
【0145】
4−4.適用する疾患の種類
上述した実施形態では、患者として心臓疾患の患者を例として説明したが、これに限らず、脳梗塞や末梢動脈疾患の患者を対象としても構わない。運動リハビリテーションは患者の血流を改善することを目的とするものであるから、動脈硬化により血管内皮機能障害や血管狭窄など血管機能の低下をきたすアテローム血栓症患者全般に適用することができる。あるいは、アテローム血栓症の予備軍であるメタボリック症候群の人々や、糖尿病、高血圧症、高脂血症といった生活習慣病の患者に適用してもよい。
【0146】
4−5.患者と指導者とのコミュニケーション
上述した実施形態では、遠隔リハビリテーションのため、患者と指導者とがコミュニケーションを取ることがほとんどないものとして説明したが、患者端末と指導者端末とを用いて相互にコミュニケーションを取ることができるようにしてもよい。具体的には、患者端末と指導者端末とがネットワークに接続しているため、インターネット電話を用いて、コミュニケーションを取ることができるようにしてもよい。これにより、遠隔リハビリテーションであっても指導者からの指導を受けられるようになり、患者の不安を軽減することができる。
【0147】
4−6.患者用端末
図7に示した患者用端末106は、いわゆるパーソナルコンピューターであるとして説明したが、これに限定するものではない。外部との通信機能を有する情報端末機器、例えばスマートフォンのような機器であってもよい。
【0148】
また、図7に示した患者用端末106ではリハビリテーション情報300を生体情報計測装置108に送信するためのリハビリテーション情報送信プログラム716を含む構成として説明したが、これに限定するものではない。リハビリテーション情報送信プログラム716を設けずに、サーバー102から取得したリハビリテーション情報300を、直接生体情報計測装置108に送るように構成しても良い。
【符号の説明】
【0149】
100…遠隔リハビリテーションシステム、102…サーバー、104…指導者用端末、106…患者用端末、108…生体情報計測装置、300…リハビリテーション情報、416…運動データ、418…運動レポート、908…通知部、910…脈拍数計測部、926…脈拍数範囲、1006…脈拍計測時間表示、1008…脈拍数表示。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17