特許第6095079号(P6095079)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6095079
(24)【登録日】2017年2月24日
(45)【発行日】2017年3月15日
(54)【発明の名称】タイヤ試験装置
(51)【国際特許分類】
   G01M 17/02 20060101AFI20170306BHJP
   G01L 5/00 20060101ALI20170306BHJP
   B60C 19/00 20060101ALI20170306BHJP
【FI】
   G01M17/02 B
   G01L5/00 Z
   B60C19/00 H
【請求項の数】3
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2015-195796(P2015-195796)
(22)【出願日】2015年10月1日
【審査請求日】2016年12月15日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000127570
【氏名又は名称】株式会社エー・アンド・デイ
(74)【代理人】
【識別番号】100087826
【弁理士】
【氏名又は名称】八木 秀人
(74)【代理人】
【識別番号】100139745
【弁理士】
【氏名又は名称】丹波 真也
(74)【代理人】
【識別番号】100168088
【弁理士】
【氏名又は名称】太田 悠
(74)【代理人】
【識別番号】100166327
【弁理士】
【氏名又は名称】舟瀬 芳孝
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 幸久
(72)【発明者】
【氏名】木戸 一希
(72)【発明者】
【氏名】市毛 達男
(72)【発明者】
【氏名】坂野 正昭
【審査官】 萩田 裕介
(56)【参考文献】
【文献】 特許第4367613(JP,B2)
【文献】 特許第4150351(JP,B2)
【文献】 国際公開第2014/171573(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01M 17/02
B60C 19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
タイヤが接地する路面に埋設されるプレートと、
該プレートに埋設状態で固定され、前記タイヤが接した際に接地力を計測する接地力センサと、
前記プレートにかかる荷重を計測するプレート用センサと、
を備えたことを特徴とするタイヤ試験装置。
【請求項2】
前記プレート用センサは、前記プレートを複数ヶ所で計測することを特徴とする請求項1に記載のタイヤ試験装置。
【請求項3】
前記プレート用センサの出力信号に基づいて、前記接地力センサの出力信号を取得することを特徴とする請求項1または2に記載のタイヤ試験装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はタイヤ試験装置に係り、特にタイヤが路面から受ける接地力を計測するタイヤ試験装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、走行車両のタイヤにかかる負荷(接地力)を正確に把握する試みが成されている。たとえば特許文献1は、柱部材にゲージを取り付けたセンサユニットが路面に埋設されており、このセンサユニットによってタイヤが通過する際の負荷を3次元的に計測できるようになっている。センサユニットは、タイヤの進行方向と直交する方向にライン状に複数配置されており、タイヤにかかる負荷をタイヤの幅方向に複数ヶ所で計測できるようになっている。これらのセンサユニットは、状況に応じて複数列が配置され、タイヤの進行方向においても負荷の分布や変動が計測できるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−162054
【特許文献2】特許第4367613号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上述したような計測装置では、タイヤがセンサユニット上をいつ通過するのか、どのセンサユニット上を通過するのか、分からないという問題があった。このため、精度の荒い測定しか実現できないという問題があった。
【0005】
特許文献2は、レーザー式のセンサを設けたり、タッチセンサを設けることによって、タイヤの位置や速度などの情報を所得している。しかし、特許文献2のように、別のセンサを設けた場合、これらの別センサをセンサユニットの信号に同期させたり、センサユニットとの位置関係を正確に求めなければならないという問題が生じ、さらにそれらの作業が正確に行われない場合は測定精度が低下するおそれがあった。
【0006】
本発明はこのような事情に鑑みて成されたものであり、タイヤが路面上で受ける荷重を正確且つ簡単に計測することができるタイヤ試験装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の発明は前記目的を達成するために、タイヤが接地する路面に埋設されるプレートと、該プレートに埋設状態で固定され、前記タイヤが接した際に接地力を計測する接地力センサと、前記プレートにかかる荷重を計測するプレート用センサと、を備えたことを特徴とするタイヤ試験装置を提供する。
【0008】
本発明によれば、接地力センサが路面に直接埋設されるのではなく、プレートを介して埋設されており、且つ、そのプレートにかかる荷重を計測できるようになっている。したがって、タイヤが接地力センサの上を通過する直前には、タイヤがプレートに乗って荷重がかかるので、タイヤが接地力センサの上を通過するタイミングを把握することができる。これにより計測データ容量を現実的なサイズに抑え、サンプリング周期を短く設定して、精度の高い測定を行うことができる。
【0009】
また、本発明によれば、接地力センサをプレートに固定するので、プレート用センサと接地力センサとの位置関係が固定され、両方の計測信号の同期作業を比較的容易に行うことができる。さらに本発明によれば、接地力センサをプレートに固定するので、複数の接地力センサを組み込む場合であっても、正確に位置決めして取り付けることができる。
【0010】
請求項2に記載の発明は請求項1の発明において、前記プレート用センサは、前記プレートを複数ヶ所で計測することを特徴とする。本発明によれば、プレートの荷重重心を把握できるので、プレート上のタイヤの通過軌道を把握することができる。よって、センサに対するタイヤの進入角度や、タイヤの移動速度も把握することができる。さらにそれらを使うことによって、センサのデータ処理をより正確に行うことができる。
【0011】
請求項3に記載の発明は請求項1または2の発明において、前記プレート用センサの出力信号に基づいて、前記接地力センサの出力信号を取得することを特徴とする。本発明によれば、プレートの荷重に応じて接地力センサの出力信号を取得するので、より的確なサンプリングを行うことができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、接地力センサをプレートに固定し、そのプレートの荷重を計測するようにしたので、タイヤが接地力センサの上を通過するタイミングを把握でき、且つ、接地力センサの位置決め等を正確に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明に係るタイヤ試験装置の計測部の概略構成を示す斜視図
図2図1の計測部を路面に埋め込んだ状態を示す側面断面図
図3】接地力センサを示す斜視図
図4】タイヤ試験装置の構成を模式的に示すブロック図
【発明を実施するための形態】
【0014】
添付図面に従って本発明に係るタイヤ試験装置の好ましい実施形態について説明する。図1は、本発明が適用されたタイヤ試験装置10の計測部の概略構成を示す斜視図であり、図2はその計測部を路面に埋め込んだ状態の断面図である。
【0015】
タイヤ試験装置10の計測部は、走行車両のタイヤ12が通過する位置に配置されており、主としてプレート14、プレート用センサ16、接地力センサ18、ベース20で構成されている。
【0016】
プレート14及びベース20は、略同じ大きさの矩形状に形成されている。プレート14とベース20は上下に間隔をあけて配置されており、その間の四隅の位置にはそれぞれ、プレート用センサ16が配置されている。プレート用センサ16は、プレート14の荷重を計測するセンサであり、その構成は特に限定するものではないが、たとえばロードセルが用いられる。ロードセルの場合、起歪体の固定部がベース20に固定され、起歪体の可動部がプレート14に固定されるとともに、起歪体の変形部位に貼り付けられたゲージによってプレート14の荷重が検出される。各プレート用センサ16は後述の制御装置24に接続されており、制御装置24によってプレート14の荷重や荷重重心が算出される。
【0017】
図2に示すように、プレート14の中央位置には、凹部14Aがタイヤ12の幅方向に形成されており、この凹部14Aに複数の接地力センサ18が一列に並んで配置される。
【0018】
接地力センサ18は図3に示すように、柱状に形成された起歪体18Aと、その側面に貼り付けられたゲージ18Bとを備える。起歪体18Aはその下部がプレート14の凹部14Aに固定されており、接地力センサ18とプレート14が一体化されている。起歪体18Aの上部は、タイヤ12の進行方向(前後方向)に僅かに突出して形成されており、起歪体18Aの上面は、プレート14の上面と同一面を成すように形成される。また、起歪体18Aは、その下部を除き、プレート14に対して若干の隙間を持って配置されており、起歪体18Aが微妙に変形できるようになっている。一方、ゲージ18Bは、後述の制御装置24に接続されており、制御装置20において3分力(上下力、前後力、横力)を算出できるようになっている。なお、接地力センサ18の構成、特に起歪体18Aの形状は上述した例に限定されるものではなく、タイヤ12から受ける力を計測できるのであれば良い。また、図1には、10個の接地力センサ18を一列に並べた例を示したが、接地力センサ18の個数や配置はこれに限定するものではない。たとえば、より多くの(一例として60個程度の)接地力センサ18を一列に並べて配置したり、タイヤ12の進行方向に複数の列になるように配置したりしてもよい。
【0019】
上記の如く構成されたタイヤ試験装置10の計測部は、図2に示すように路面22の凹部22Aに配置される。路面22の凹部22Aは、プレート14よりも僅かに大きく形成されており、プレート14が凹部22Aの壁面に接触しないようになっている。また、凹部22Aの深さは、タイヤ試験装置10の計測部の高さに一致するようになっており、プレート14の上面と路面22が同一面を成すようになっている。
【0020】
図4はタイヤ試験装置10の構成を模式的に示すブロック図である。各プレート用センサ16と各接地力センサ18は制御装置24に接続されている。制御装置24は、アンプ、AD変換器、演算回路、メモリ等を内部に備えており、プレート用センサ16の信号や接地力センサ18の信号を増幅してAD変換し、各種の演算処理を行い、それらのデータを記録できるようになっている。演算処理としては、たとえばプレート用センサ16の信号に基づいてプレート14にかかる全荷重値や荷重重心を算出したり、接地力センサ18の信号に基づいて各接地力センサ18にかかる3分力を算出したりするようになっている。
【0021】
また、制御装置24は、プレート用センサ16の出力信号に基づいて、接地力センサ18のサンプリングの開始と終了を制御するようになっている。たとえば、プレート用センサ16にタイヤ12の荷重が加わり、所定値を超えた際に接地力センサ18のサンプリングを開始し、プレート用センサ16からタイヤ12の荷重が無くなった際に接地力センサ18のサンプリングを終了するように設定される。これにより、接地力センサ18のサンプリング時間が短くなるので、計測データ容量を気にすることなく、サンプリング周波数を高くすることができ、有効なデータ数を増やして精度の良い計測を行うことができる。
【0022】
制御装置24は、表示部26に接続されており、表示部26に各種の情報が表示される。たとえば、横軸に接地力センサ18の位置座標、縦軸に時間(或いは前後方向に変換した位置座標)を設定したときの垂直方向の荷重を表示したり、前後方向と横方向の荷重をベクトルで表示した図を表示したりすることができる。
【0023】
次に上記の如く構成されたタイヤ試験装置10の作用について説明する。
【0024】
従来のタイヤ試験装置10は、プレート用センサ16が無く、プレート14の荷重を計量することができない。このため、接地力センサ18の上をタイヤ12がいつ通過するか分からないという問題がある。その結果、接地力センサ18のサンプリング間隔を長く設定しなければならず、精度の良いデータの収集が難しいという問題があった。
【0025】
これに対して、本実施の形態では、プレート用センサ16を設けてプレート14の荷重を検出するとともに、プレート用センサ16の出力信号に基づいて接地力センサ18のサンプリングの開始と終了を決定している。したがって、プレート用センサ16のサンプリング間隔を無駄に長くする必要がなく、サンプリング間隔を短くして精度の高いデータ収集を行うことができる。
【0026】
また、本実施の形態では、プレート用センサ16を四個設けたので、プレート14の荷重重心を演算することができ、タイヤ12の通過軌道を正確に求める。これにより、従来は不可能であった、タイヤ14の通過軌道に基づいた接地力データの検証を行うことができる。たとえば、従来装置では、接地力が発生しない接地力センサ18があったとしても、タイヤ12が通過していないためなのか、タイヤ12の溝とセンサの位置が偶然重なっただけなのか分からなかった。これに対して、本実施の形態では、タイヤ12の通過軌道が分かるので、タイヤ12の溝の影響を正確に考慮することができる。
【0027】
また、本実施の形態によれば、プレート用センサ16を四個設けたことによって、接地力センサ18に対するタイヤ12の軌道や、タイヤ12の移動速度も把握することができる。したがって、たとえばタイヤ12がコーナーリングしながら進入した場合等であっても、タイヤ12の軌道に合わせて接地力センサ18のデータ処理を行うことができ、さらには、減速や加速しながら進入した場合であっても、それらの状況を加味して接地力センサ18のデータ処理を行うことができる。これにより、正確かつ迅速な解析処理を行うことができる。
【0028】
また、本実施の形態では、接地力センサ18で求めた荷重値の合計と、プレート用センサ16で求めた荷重の合計とを比較することによって、接地力センサ18の精度の検証を行うことができる。
【0029】
さらに、本実施の形態によれば、プレート14に接地力センサ18とプレート用センサ16が固定されているので、両方のセンサの位置関係を正確に設定することができる。したがって、従来のように別のセンサーを取り付けた場合には、両者の位置決め作業や同期作業に手間がかかるが、本実施の形態では、それらの作業を容易に行うことができる。
【0030】
なお、上述した実施の形態では、プレート用センサ16を4個設けたが、これに限定するものでは無く、1〜3個であっても5個以上であってもよい。ただし、プレート14の荷重重心を求めることができる点で3個以上が好ましい。また、プレート14の形状は矩形状に限定されるものでは無く、多角形や円形など様々な形状のものを用いることができる。
【0031】
また、上述した実施の形態では特に示さなかったが、ベース20に排水用開口を設けたり、ベース20にケーブルの取り回し用の溝を設けたりしてもよい。
【符号の説明】
【0032】
10…タイヤ試験装置、12…タイヤ、14…プレート、16…プレート用センサ、18…接地力センサ、20…ベース、22…路面、24…制御装置、26…表示部
【要約】
【課題】タイヤが路面上で受ける荷重を正確且つ簡単に計測することができるタイヤ試験装置を提供する。
【解決手段】タイヤ試験装置10は、タイヤ12が接地する路面22に埋設されるプレート14と、プレート14に埋設状態で固定され、タイヤ12が接した際に接地力を計測する接地力センサ18と、プレート14にかかる荷重を計測するプレート用センサ16と、を備える。このタイヤ試験装置10によれば、タイヤ12の接地力を接地力センサ18で測定できるとともに、タイヤがプレート14に及ぼす荷重をプレート用センサ16で測定できる。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4