(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記従来の透過性地下水浄化壁1では、浄化杭2と遮水杭3が接合部Tを介して交互に配設されているため、遮水杭3により地下水の流れを阻害し、さらに、遮水杭3と交互に配設された浄化杭2の中央にのみ透過性の浄化剤6を充填しているため、汚染物質を浄化する能力が低かった。
【0006】
また、透過性地下水浄化壁1を構築する場合には、所定の深さまで掘削作業を行った後で、各ライナープレート4,4′の組立作業を完了させ、次に、コンクリート5を打設すると共に、浄化剤6を充填し、最後に発生土7を充填する必要があるため、組付工数が多くなり、その分、構築時間が長くなると共に高コストであった。
【0007】
さらに、透過性の浄化剤6として、鉄粉等の金属還元剤と活性炭等の吸着剤と砕石との混合物を用いた単独の有害物質(汚染物質)への適用であるため、複数で汚染された複合汚染に対する対応ができなかった。
【0008】
そこで、本発明は、前記した課題を解決すべくなされたものであり、短時間かつ低コストで構築することができ、地下水の流れを阻害することなく、常に高い浄化能力を維持することができる複合汚染対応型の透過性地下水浄化壁及び該透過性地下水浄化壁を用いる地下水浄化方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1の発明は、汚染地下水の下流域の地中に、該汚染地下水の流れ方向に対して交差するように汚染物質を浄化する浄化剤を含有した透過性の壁本体を鉛直方向に配設して成る透過性地下水浄化壁において、種類の異なる前記浄化剤を別々に含有した前記透過性の壁本体を複数列に併設したことを特徴とする。
【0010】
請求項2の発明は、請求項1記載の透過性地下水浄化壁であって、前記汚染地下水の下流域の地中に、複数の粒状物杭により前記複数列の壁本体をそれぞれ形成し、この複数列のうちの少なくとも1列を締め固め形成したことを特徴とする。
【0011】
請求項3の発明は、汚染地下水の流域の地中に揚水井戸を配設し、この揚水井戸の全周を囲むように汚染物質を浄化する浄化剤を含有した透過性の壁本体を鉛直方向に環状に配設して成る透過性地下水浄化壁において、種類の異なる前記浄化剤を別々に含有した前記透過性の壁本体を複数列で環状に併設したことを特徴とする。
【0012】
請求項4の発明は、請求項3記載の透過性地下水浄化壁であって、前記汚染地下水の流域の地中に、複数の粒状物杭により前記複数列で環状の壁本体をそれぞれ形成し、この複数列のうちの少なくとも1列を締め固め形成したことを特徴とする。
【0013】
請求項5の発明は、汚染地下水の下流域の地中に、該汚染地下水の流れ方向に対して交差するように汚染物質を浄化する浄化剤を含有した透過性の壁本体を鉛直方向に配設して成る透過性地下水浄化壁において、種類の異なる前記浄化剤をそれぞれ含有した前記透過性の壁本体を単列に配設したことを特徴とする。
【0014】
請求項6の発明は、請求項5記載の透過性地下水浄化壁であって、前記汚染地下水の下流域の地中に、連続壁状に締め固められた複数の粒状物杭により前記単列の壁本体を形成したことを特徴とする。
【0015】
請求項7の発明は、汚染地下水の流域の地中に揚水井戸を配設し、この揚水井戸の全周を囲むように汚染物質を浄化する浄化剤を含有した透過性の壁本体を鉛直方向に環状に配設して成る透過性地下水浄化壁において、種類の異なる前記浄化剤をそれぞれ含有した前記透過性の壁本体を単列で環状に配設したことを特徴とする。
【0016】
請求項8の発明は、請求項7記載の透過性地下水浄化壁であって、前記汚染地下水の流域の地中に、連続壁状に締め固められた複数の粒状物杭により前記単列で環状の壁本体を形成したことを特徴とする。
【0017】
請求項9の発明は、汚染地下水の下流域の地中に、該汚染地下水の流れ方向に対して交差するように汚染物質を浄化する浄化剤を含有した透過性地下水浄化壁を鉛直方向に配設し、この透過性地下水浄化壁に前記汚染地下水を透過させて該汚染地下水を浄化する地下水浄化方法において、種類の異なる前記浄化剤を別々に含有しかつ複数列に併設した前記透過性地下水浄化壁に、前記汚染地下水をそれぞれ透過させて該汚染地下水を浄化することを特徴とする。
【0018】
請求項10の発明は、請求項9記載の地下水浄化方法であって、前記汚染地下水の下流域の地中に、複数の粒状物杭によりそれぞれ形成すると共に少なくとも1列を締め固め形成した前記複数列の透過性地下水浄化壁に、前記汚染地下水をそれぞれ透過させて該汚染地下水を浄化することを特徴とする。
【0019】
請求項11の発明は、汚染地下水の流域の地中に揚水井戸を配設し、この揚水井戸の全周を囲むように汚染物質を浄化する浄化剤を含有した透過性地下水浄化壁を鉛直方向に環状に配設し、この透過性地下水浄化壁に前記汚染地下水を透過させて該汚染地下水を浄化する地下水浄化方法において、種類の異なる前記浄化剤を別々に含有しかつ複数列で環状に併設した前記透過性地下水浄化壁に、前記汚染地下水を透過させて該汚染地下水を浄化することを特徴とする。
【0020】
請求項12の発明は、請求項11記載の地下水浄化方法であって、前記汚染地下水の流域の地中に、複数の粒状物杭により前記複数列で環状にそれぞれ形成すると共に少なくとも1列を締め固め形成した透過性地下水浄化壁に、前記汚染地下水を透過させて該汚染地下水を浄化することを特徴とする。
【0021】
請求項13の発明は、汚染地下水の下流域の地中に、該汚染地下水の流れ方向に対して交差するように汚染物質を浄化する浄化剤を含有した透過性地下水浄化壁を鉛直方向に配設し、この透過性地下水浄化壁に、前記汚染地下水を透過させて該汚染地下水を浄化する地下水浄化方法において、種類の異なる前記浄化剤をそれぞれ含有しかつ単列に配設した前記透過性地下水浄化壁に、前記汚染地下水を透過させて該汚染地下水を浄化することを特徴とする。
【0022】
請求項14の発明は、請求項13記載の地下水浄化方法であって、前記汚染地下水の下流域の地中に、連続壁状に締め固められた複数の粒状物杭により前記単列に形成した透過性地下水浄化壁に、前記汚染地下水を透過させて該汚染地下水を浄化することを特徴とする。
【0023】
請求項15の発明は、汚染地下水の流域の地中に揚水井戸を配設し、この揚水井戸の全周を囲むように汚染物質を浄化する浄化剤を含有した透過性地下水浄化壁を鉛直方向に環状に配設し、この環状の透過性地下水浄化壁に、前記汚染地下水を透過させて該汚染地下水を浄化する地下水浄化方法において、種類の異なる前記浄化剤をそれぞれ含有しかつ単列で環状に配設した前記透過性地下水浄化壁に、前記汚染地下水を透過させて該汚染地下水を浄化することを特徴とする。
【0024】
請求項16の発明は、請求項15記載の地下水浄化方法であって、前記汚染地下水の流域の地中に、連続壁状に締め固められた複数の粒状物杭により前記単列で環状に形成した透過性地下水浄化壁に、前記汚染地下水を透過させて該汚染地下水を浄化することを特徴とする。
【発明の効果】
【0025】
以上説明したように、請求項1及び請求項9の発明によれば、汚染地下水の下流域の地中に、種類の異なる浄化剤を別々に含有した透過性の壁本体を複数列に併設したことで、地下水の流れを阻害することなく、複数列の透過性の壁本体により常に高い浄化能力を維持した状態で、汚染地下水を浄化して清浄な地下水にすることができる。これにより、自然流下の汚染地下水の工場等の敷地外への流出(拡散)を簡単かつ確実に防止することができる。また、地下水が複数の汚染物質で複合汚染されている場合でも、複数列の透過性の壁本体によりその汚染地下水を簡単かつ確実に浄化することができる。
【0026】
請求項2及び請求項10の発明によれば、汚染地下水の下流域の地中に、複数の粒状物杭により複数列の壁本体をそれぞれ形成し、この複数列のうちの少なくとも1列を締め固め形成したことで、複数列の透過性の壁本体を短時間かつ低コストで構築することができる。
【0027】
請求項3及び請求項11の発明によれば、汚染地下水の流域の地中に配設した揚水井戸の周囲に、種類の異なる浄化剤を別々に含有した透過性の壁本体を複数列で環状に併設したことで、地下水の流れを阻害することなく、複数列で環状の透過性の壁本体により常に高い浄化能力を維持した状態で、汚染地下水を浄化して清浄な地下水を揚水井戸に供給することができる。これにより、揚水により流速が早くなった汚染地下水の揚水井戸への流入を簡単かつ確実に防止することができる。また、地下水が複数の汚染物質で複合汚染されている場合でも、複数列で環状の透過性の壁本体によりその汚染地下水を簡単かつ確実に浄化することができる。
【0028】
請求項4及び請求項12の発明によれば、汚染地下水の流域の地中に配設した揚水井戸の周囲に、複数の粒状物杭により複数列で環状の壁本体をそれぞれ形成し、この複数列のうちの少なくとも1列を締め固め形成したことで、複数列で環状の透過性の壁本体を短時間かつ低コストで構築することができる。
【0029】
請求項5及び請求項13の発明によれば、汚染地下水の下流域の地中に、種類の異なる浄化剤をそれぞれ含有した透過性の壁本体を単列に配設したことで、地下水の流れを阻害することなく、単列の透過性の壁本体により常に高い浄化能力を維持した状態で、汚染地下水を浄化して清浄な地下水にすることができる。これにより、自然流下の汚染地下水の工場等の敷地外への流出(拡散)を簡単かつ確実に防止することができる。また、地下水が複数の汚染物質で複合汚染されている場合でも、単列の透過性の壁本体によりその汚染地下水を簡単かつ確実に浄化することができる。
【0030】
請求項6及び請求項14の発明によれば、汚染地下水の下流域の地中に、連続壁状に締め固められた複数の粒状物杭により単列の壁本体を形成したことで、単列の透過性の壁本体を短時間かつ低コストで構築することができる。
【0031】
請求項7及び請求項15の発明によれば、汚染地下水の流域の地中に配設した揚水井戸の周囲に、種類の異なる浄化剤をそれぞれ含有した透過性の壁本体を単列で環状に配設したことで、地下水の流れを阻害することなく、単列で環状の透過性の壁本体により常に高い浄化能力を維持した状態で、汚染地下水を浄化して清浄な地下水を揚水井戸に供給することができる。これにより、揚水により流速が早くなった汚染地下水の揚水井戸への流入を簡単かつ確実に防止することができる。また、地下水が複数の汚染物質で複合汚染されている場合でも、単列で環状の透過性の壁本体によりその汚染地下水を簡単かつ確実に浄化することができる。
【0032】
請求項8及び請求項16の発明によれば、染地下水の流域の地中に配設した揚水井戸の周囲に、連続壁状に締め固められた複数の粒状物杭により単列で環状の壁本体を形成したことで、単列で環状の透過性の壁本体を短時間かつ低コストで構築することができる。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0035】
<第1実施形態>
図1は本発明の第1実施形態の透過性地下水浄化壁を配設した地中の縦断面図、
図2は同透過性地下水浄化壁の一部を拡大して示す横断面図である。
【0036】
図1及び
図2に示すように、工場廃液等の汚染物質a,bを含有して流下する汚染地下水9の下流側流域の地中8には、汚染地下水9の流れ方向に対して交差するように透過性地下水浄化壁10Aを不透水層8aまで鉛直に配設してある。この透過性地下水浄化壁10Aは、種類の異なる汚染物質a,bを浄化する種類の異なる浄化剤A,Bを別々に含有した透過性の壁本体10を3列で一直線の連続壁状に併設することにより構成されている。具体的には、汚染地下水9の下流側流域の地中8に、図示しない強制昇降静的締め固め装置等の地盤改良施工機により、一直線の連続壁状に隣接して締め固められた複数の円柱状の砂杭(粒状物杭)11,12により3列の壁本体10をそれぞれ形成してある。この第1実施形態では、3列すべての壁本体10を複数の円柱状の砂杭11,12により締め固め形成してあるが、3列のうちの最上流側の壁本体10或いは最下流側の壁本体10の少なくとも1列を複数の円柱状の砂杭11の締め固めにより形成すれば良い。
【0037】
図2に示すように、3列のうちの最上流側の壁本体10と最下流側の壁本体10を形成する複数の円柱状の砂杭11の砂等の粒状物の杭材料には、汚染物質aを浄化する浄化剤Aを所定量充填してある。また、3列の中間に位置する壁本体10を形成する複数の円柱状の砂杭12の砂等の粒状物の杭材料には、汚染物質bを浄化する浄化剤Bを所定量充填してある。
【0038】
この汚染物質a及びその浄化剤Aとしては、例えば、フッ素及び該フッ素を除去するリン酸水素カルシウム二水和物と担持粒子とを含む処理剤が挙げられ、また、汚染物質b及びその浄化剤Bとしては、例えば、PFOA等の含フッ素化合物及び該含フッ素化合物を除去する粉末活性炭と担持粒子とを含む処理剤が挙げられる。
【0039】
そして、地中8の汚染地下水9が、種類の異なる浄化剤A,Bを別々に含有し、かつ、複数の円柱状の砂杭11,12により3列に各列の外縁が隣接するように配列された透過性地下水浄化壁10Aを成す各壁本体10を順次透過することにより、汚染地下水9に含まれる汚染物質a,bが浄化剤A,Bに反応・吸着されて除去され、浄化された清浄な地下水9′となる。
【0040】
このように、汚染地下水9の下流側流域の地中8に、種類の異なる浄化剤A,Bを別々に含有した透過性の壁本体10を3列に各列の外縁が隣接するように配列して透過性地下水浄化壁10Aとしたことにより、地下水の自然流下で、3列の透過性の壁本体10,10,10中の各浄化剤A,Bの反応・吸着により有害な汚染物質a,bを確実に除去して浄化することができる。これにより、エネルギーを必要とせず、また、メンテナンスフリーとなり、低コスト化をより一段と図ることができる。さらに、従来のように、鉛直遮水壁による封じ込めではなく、透過性の壁本体(浄化壁)10なので、広域的な地下水の流れを妨げない。さらに、多列の柱状体の透過性地下水浄化壁10Aを施工できるので、充填する浄化剤を変えることで、複合地下水汚染の拡散防止を簡単かつ確実に図ることができる。
【0041】
また、3列の透過性の壁本体10,10,10により透過性地下水浄化壁10Aを形成することで、最上流側の列の砂杭11の浄化剤Aが流動しても、最下流側の列の砂杭11の浄化剤Aにより汚染地下水9を確実に浄化することができ、常に高い浄化能力を維持した状態で、汚染地下水9を浄化して清浄な地下水9′にすることができる。これにより、自然流下の汚染地下水9の工場等の敷地外への流出・拡散を簡単かつ確実に防止することができる。さらに、地下水が複数の汚染物質a,bで複合汚染されている場合でも、3列の透過性の壁本体10,10,10によりその汚染地下水9を簡単かつ確実に浄化することができる。
【0042】
また、汚染地下水9の下流側流域の地中8に、一直線の連続壁状に締め固められた複数の砂杭11,12により3列の壁本体10,10,10をそれぞれ造成することで、3列の透過性の壁本体10,10,10から成る透過性地下水浄化壁10Aを短時間かつ低コストで構築することができる。この際に、砂杭11,12の砂等の粒状物の杭材料に有害な汚染物質の種類に応じた浄化剤A,Bを混入するので、透過性の大きな浄化壁としての透過性地下水浄化壁10Aを短時間かつ低コストで造成することができ、また、透過性地下水浄化壁10Aの壁厚を任意の壁厚に造成することができる。さらに、種類の異なる浄化剤A,Bを充填した砂杭11,12を各列の外縁が隣接するように接合させているので、透過性地下水浄化壁10Aの設置スペースを小さくすることができる。
【0043】
この第1実施形態では、
図1及び
図2に示すように、各列の外縁が隣接するように配列されて締め固められた複数の円柱状の砂杭11,12により、3列の壁本体10,10,10をそれぞれ造成して透過性地下水浄化壁10Aとしたが、この透過性地下水浄化壁10Aは、地下水の流速・流向を考慮し、周知の移流拡散解析により流出の防止が図られる適切な範囲に設置する。
【0044】
また、
図3(a)に示すように、円柱状の砂杭11,12の隣接部分を重ね合わせて3列の透過性の壁本体10,10,10を形成しても良く、さらに、
図3(b)に示すように、円柱状の砂杭11,12を隣接させることなく、千鳥状に少し離隔させて3列の透過性の壁本体10,10,10を形成しても良く、また、
図3(c)に示すように、略四角柱状の砂杭11,12を隣接させて矩形壁状にして3列の透過性の壁本体10,10,10を形成しても良い。どのタイプを用いるかは、帯水層の流速、原地盤と浄化剤A,Bの透水性、汚染状況等に応じて、周知の移流拡散解析を用いたシュミレーション解析により適切に選定する。
【0045】
さらに、強制昇降静的締め固め装置等の地盤改良施工機は、一般的には単軸であるが、3連に改造したケーシングを用いることで、多列の透過性地下水浄化壁10A或いは3種類までの浄化剤を含んだ砂杭を一度に施工することが可能となる。
【0046】
<第2実施形態>
図4は本発明の第2実施形態の透過性地下水浄化壁を配設した地中の横断面図である。
【0047】
図4に示すように、汚染地下水9の流域の地中8に揚水設備としての揚水井戸20を配設し、この揚水井戸20の全周を囲むように、透過性地下水浄化壁10Bを不透水層8aまで鉛直かつ円環状に配設してある。この円環状の透過性地下水浄化壁10Bは、種類の異なる汚染物質a,bを浄化する種類の異なる浄化剤A,Bを別々に含有した透過性の壁本体10を3列で円環壁状に併設することにより構成されている。具体的には、汚染地下水9の流域の地中8に配設された揚水井戸20の全周囲に、図示しない強制昇降静的締め固め装置等の地盤改良施工機により、円環壁状に隣接して締め固められた複数の円柱状の砂杭(粒状物杭)11,12により3列の壁本体10,10,10をそれぞれ形成してある。この第2実施形態では、3列すべての壁本体10を複数の円柱状の砂杭11,12により締め固め形成してあるが、3列のうちの最外側の壁本体10或いは最内側の壁本体10の少なくとも1列を複数の円柱状の砂杭11の締め固めにより形成すれば良い。
【0048】
3列のうちの最外側の壁本体10と最内側の壁本体10を形成する複数の円柱状の砂杭11の砂等の粒状物の杭材料には、汚染物質aを浄化する浄化剤Aを所定量充填してある。また、3列の中間に位置する壁本体10を形成する複数の円柱状の砂杭12の砂等の粒状物の杭材料には、汚染物質bを浄化する浄化剤Bを所定量充填してある。
【0049】
この汚染物質a及びその浄化剤Aとしては、例えば、フッ素及び該フッ素を除去するリン酸水素カルシウム二水和物と担持粒子とを含む処理剤が挙げられ、また、汚染物質b及びその浄化剤Bとしては、例えば、PFOA等の含フッ素化合物及び該含フッ素化合物を除去する粉末活性炭と担持粒子とを含む処理剤が挙げられる。
【0050】
そして、汚染地下水9の流域の地中8に設置した揚水井戸20で地下水を揚水すると、円環状の透過性地下水浄化壁10Bの外周側の流域の汚染地下水9が、種類の異なる浄化剤A,Bを別々に含有し、かつ、複数の円柱状の砂杭11,12により3列に各列の外縁が隣接するように配列された透過性地下水浄化壁10Bを成す各壁本体10を順次透過することにより、汚染地下水9に含まれる汚染物質a,bが浄化剤A,Bに反応・吸着されて除去され、浄化された清浄な地下水9′となって揚水井戸20から供給される。
【0051】
このように、汚染地下水9の流域の地中8に配設した揚水井戸20の周囲に、種類の異なる浄化剤A,Bを別々に含有した透過性の壁本体10を3列で円環状に各列の外縁が隣接するように配列して透過性地下水浄化壁10Bとしたことにより、地下水の流れを阻害することなく、3列で円環状の透過性の壁本体10,10,10から成る透過性地下水浄化壁10Bにより常に高い浄化能力を維持した状態で、汚染地下水9を浄化して清浄な地下水9′を揚水井戸20に供給することができる。これにより、揚水により流速が早くなった汚染地下水9の揚水井戸20への流入を簡単かつ確実に防止することができる。
【0052】
また、地下水が複数の汚染物質a,bで複合汚染されている場合でも、3列で円環状の透過性の壁本体10,10,10から成る円環状の透過性地下水浄化壁10Bによりその汚染地下水9を簡単かつ確実に浄化することができる。
【0053】
さらに、円環状の透過性地下水浄化壁10Bで汚染物質a,bが浄化剤A,Bに反応・吸着されて有害物質が除去され、清浄な地下水9′となって揚水井戸20で揚水できるので、水処理の必要性がなくなり、ランニングコストが生じない。
【0054】
また、汚染地下水9の流域の地中8に配設した揚水井戸20の周囲に、円環状で連続壁状に締め固められた複数の砂杭11,12により3列で円環状の壁本体10,10,10をそれぞれ形成したことで、3列で円環状の透過性の壁本体10,10,10から成る透過性地下水浄化壁10Bを短時間かつ低コストで構築することができる。この際に、砂杭11,12の砂等の粒状物の杭材料に有害な汚染物質の種類に応じた浄化剤A,Bを混入するので、透過性の大きな浄化壁としての透過性地下水浄化壁10Bを短時間かつ低コストで造成することができる。
【0055】
この第2実施形態では、各列の外縁が隣接して締め固められた複数の円柱状の砂杭11,12により3列の壁本体10,10,10をそれぞれ造成して透過性地下水浄化壁10Bとしたが、
図3(a)に示すように、円柱状の砂杭11,12の隣接部分を重ね合わせて3列の透過性の壁本体10,10,10を形成しても良く、さらに、
図3(b)に示すように、円柱状の砂杭11,12を隣接させることなく、千鳥状に少し離隔させて3列の透過性の壁本体10,10,10を形成しても良く、また、
図3(c)に示すように、略四角柱状の砂杭11,12を隣接させて矩形壁状にして3列の透過性の壁本体10,10,10を形成しても良い。どのタイプを用いるかは、帯水層の流速、原地盤と浄化剤A,Bの透水性、汚染状況等に応じて、周知の移流拡散解析を用いたシュミレーション解析により適切に選定する。
【0056】
さらに、強制昇降静的締め固め装置等の地盤改良施工機は、一般的には単軸であるが、3連に改造したケーシングを用いることで、多列の透過性地下水浄化壁10A或いは3種類までの浄化剤を含んだ砂杭を一度に施工することが可能となる。
【0057】
<第3実施形態>
図5は本発明の第3実施形態の透過性地下水浄化壁を配設した地中の縦断面図である。
【0058】
図5に示すように、工場廃液等の汚染物質a,bを含有して流下する汚染地下水9の下流側流域の地中8には、汚染地下水9の流れ方向に対して交差するように透過性地下水浄化壁10Cを不透水層8aまで鉛直に配設してある。この透過性地下水浄化壁10Cは、種類の異なる汚染物質a,bを浄化する種類の異なる浄化剤A,Bをそれぞれ含有した透過性の壁本体10を単列(1列)で一直線の連続壁状に配設することにより構成されている。具体的には、汚染地下水9の下流側流域の地中8に、図示しない強制昇降静的締め固め装置等の地盤改良施工機により、一直線の連続壁状に隣接して締め固められた複数の円柱状の砂杭(粒状物杭)13により単列の壁本体10を形成してある。
【0059】
この単列の壁本体10を形成する複数の円柱状の砂杭13の砂等の粒状物の杭材料には、汚染物質aを浄化する浄化剤A及び汚染物質bを浄化する浄化剤Bを所定量ずつそれぞれ充填してある。
【0060】
この汚染物質a及びその浄化剤Aとしては、例えば、フッ素及び該フッ素を除去するリン酸水素カルシウム二水和物と担持粒子とを含む処理剤が挙げられ、また、汚染物質b及びその浄化剤Bとしては、例えば、PFOA等の含フッ素化合物及び該含フッ素化合物を除去する粉末活性炭と担持粒子とを含む処理剤が挙げられる。
【0061】
そして、地中8の汚染地下水9が、種類の異なる浄化剤A,Bをそれぞれ含有し、かつ、複数の円柱状の砂杭13により単列に併設された透過性地下水浄化壁10Cを成す壁本体10を透過することにより、汚染地下水9に含まれる汚染物質a,bが浄化剤A,Bに反応・吸着されて除去され、浄化された清浄な地下水9′となる。
【0062】
このように、汚染地下水9の下流側流域の地中8に、種類の異なる浄化剤A,Bをそれぞれ含有した透過性の壁本体10を単列併設して透過性地下水浄化壁10Cとしたことにより、地下水の自然流下で、単列の透過性の壁本体10中の各浄化剤A,Bの反応・吸着により有害な汚染物質a,bを確実に除去して浄化することができる。これにより、エネルギーを必要とせず、また、メンテナンスフリーとなり、低コスト化をより一段と図ることができる。さらに、従来のように、鉛直遮水壁による封じ込めではなく、透過性の壁本体(浄化壁)10なので、広域的な地下水の流れを妨げない。さらに、単列の柱状体の透過性地下水浄化壁10Cを施工できるので、充填する浄化剤を変えることで、複合地下水汚染の拡散防止を簡単かつ確実に図ることができる。
【0063】
また、単列の透過性の壁本体10により透過性地下水浄化壁10Cを形成することで、常に高い浄化能力を維持した状態で、汚染地下水9を浄化して清浄な地下水9′にすることができる。これにより、自然流下の汚染地下水9の工場等の敷地外への流出・拡散を簡単かつ確実に防止することができる。さらに、地下水が複数の汚染物質a,bで複合汚染されている場合でも、単列の透過性の壁本体10によりその汚染地下水9を簡単かつ確実に浄化することができる。
【0064】
また、汚染地下水9の下流側流域の地中8に、一直線の連続壁状に締め固められた複数の砂杭13により単列の壁本体10を造成することで、単列の透過性地下水浄化壁10Cを短時間かつ低コストで構築することができる。この際に、砂杭13の砂等の粒状物の杭材料に有害な汚染物質の種類に応じた浄化剤A,Bをそれぞれ混入するので、透過性の大きな浄化壁としての透過性地下水浄化壁10Cを短時間かつ低コストで造成することができ、また、透過性地下水浄化壁10Cの壁厚を任意の壁厚に造成することができる。さらに、種類の異なる浄化剤A,Bをそれぞれ充填した砂杭13を接合させているので、透過性地下水浄化壁10Cの設置スペースを小さくすることができる。
【0065】
この第3実施形態では、隣接して締め固められた複数の円柱状の砂杭13により単列の壁本体10を造成して透過性地下水浄化壁10Cとしたが、円柱状の砂杭13の隣接部分を重ね合わせて単列の透過性の壁本体10を形成しても良く、また、略四角柱状の砂杭を隣接させて矩形壁状に形成しても良い。どのタイプを用いるかは、帯水層の流速、原地盤と浄化剤A,Bの透水性、汚染状況等に応じて、周知の移流拡散解析を用いたシュミレーション解析により適切に選定する。
【0066】
<第4実施形態>
図6は本発明の第4実施形態の透過性地下水浄化壁を配設した地中の横断面図である。
【0067】
図6に示すように、汚染地下水9の流域の地中8に揚水設備としての揚水井戸20を配設し、この揚水井戸20の全周を囲むように、透過性地下水浄化壁10Dを不透水層8aまで鉛直かつ円環状に配設してある。この円環状の透過性地下水浄化壁10Dは、種類の異なる汚染物質a,bを浄化する種類の異なる浄化剤A,Bをそれぞれ含有した透過性の壁本体10を単列(1列)で円環壁状に併設することにより構成されている。具体的には、汚染地下水9の流域の地中8に配設された揚水井戸20の全周囲に、図示しない強制昇降静的締め固め装置等の地盤改良施工機により、円環壁状に隣接して締め固められた複数の円柱状の砂杭(粒状物杭)13により単列の壁本体10を形成してある。
【0068】
この単列の複数の円柱状の砂杭13の砂等の粒状物の杭材料には、汚染物質aを浄化する浄化剤A及び汚染物質bを浄化する浄化剤Bを所定量ずつそれぞれ充填してある。
【0069】
この汚染物質a及びその浄化剤Aとしては、例えば、フッ素及び該フッ素を除去するリン酸水素カルシウム二水和物と担持粒子とを含む処理剤が挙げられ、また、汚染物質b及びその浄化剤Bとしては、例えば、PFOA等の含フッ素化合物及び該含フッ素化合物を除去する粉末活性炭と担持粒子とを含む処理剤が挙げられる。
【0070】
そして、汚染地下水9の流域の地中8に設置した揚水井戸20で地下水を揚水すると、円環状の透過性地下水浄化壁10Dの外周側の流域の汚染地下水9が、種類の異なる浄化剤A,Bをそれぞれ含有し、かつ、複数の円柱状の砂杭13で単列に併設された透過性地下水浄化壁10Dを成す壁本体10を透過することにより、汚染地下水9に含まれる汚染物質a,bが浄化剤A,Bに反応・吸着されて除去され、浄化された清浄な地下水9′となって揚水井戸20から供給される。
【0071】
このように、汚染地下水9の流域の地中8に配設した揚水井戸20の周囲に、種類の異なる浄化剤A,Bをそれぞれ含有した透過性の壁本体10を単列で円環状に配設して透過性地下水浄化壁10Dとしたことにより、地下水の流れを阻害することなく、単列で円環状の透過性の壁本体10から成る透過性地下水浄化壁10Dにより常に高い浄化能力を維持した状態で、汚染地下水9を浄化して清浄な地下水9′を揚水井戸20に供給することができる。これにより、揚水により流速が早くなった汚染地下水9の揚水井戸20への流入を簡単かつ確実に防止することができる。
【0072】
また、地下水が複数の汚染物質a,bで複合汚染されている場合でも、単列で円環状の透過性の壁本体10から成る円環状の透過性地下水浄化壁10Dによりその汚染地下水9を簡単かつ確実に浄化することができる。
【0073】
さらに、円環状の透過性地下水浄化壁10Dで汚染物質a,bが浄化剤A,Bに反応・吸着されて有害物質が除去され、清浄な地下水9′となって揚水井戸20で揚水できるので、水処理の必要性がなくなり、ランニングコストが生じない。
【0074】
また、汚染地下水9の流域の地中8に配設した揚水井戸20の周囲に、円環状で連続壁状に締め固められた複数の砂杭13により単列で円環状の壁本体10を形成したことで、単列で円環状の透過性の壁本体10から成る透過性地下水浄化壁10Dを短時間かつ低コストで構築することができる。この際に、砂杭13の砂等の粒状物の杭材料に有害な汚染物質の種類に応じた浄化剤A,Bをそれぞれ混入するので、透過性の大きな浄化壁としての透過性地下水浄化壁10Dを短時間かつ低コストで造成することができる。
【0075】
この第4実施形態では、隣接して締め固められた複数の円柱状の砂杭13により単列の壁本体10を造成して透過性地下水浄化壁10Dとしたが、円柱状の砂杭13の隣接部分を重ね合わせて単列の透過性の壁本体10を形成しても良く、また、略四角柱状の砂杭を隣接させて矩形壁状に形成しても良い。どのタイプを用いるかは、帯水層の流速、原地盤と浄化剤A,Bの透水性、汚染状況等に応じて、周知の移流拡散解析を用いたシュミレーション解析により適切に選定する。
【0076】
尚、前記各実施形態によれば、複数列の透過性地下水浄化壁として3列の場合について説明したが、2列或いは4列以上でも良く、また、第1実施形態及び第2実施形態では、浄化剤A,B,Aを含んだ3列の透過性地下水浄化壁について説明したが、浄化剤A,A,Bや、浄化剤B,A,A、或いは、浄化剤B,A,B等の3列も複数列に含まれるものである。
【0077】
また、透過性地下水浄化壁の毛細管現象により汚染地下水を浄化した後の水が浸出するので、地表にサンドマットを構築して、浄化水を管理するようにしても良い。さらに、透過性地下水浄化壁の上部を固化材(不透水材料)で塞いで、地表面が泥状化するのを防ぐようにしても良い。また、鉛直遮水壁による誘導壁により汚染地下水を集水した箇所に、透過性地下水浄化壁を設置する組み合わせも可能である。
【0078】
さらに、汚染物質と浄化剤は、フッ素と該フッ素を除去するリン酸水素カルシウム二水和物と担持粒子とを含む処理剤や、含フッ素化合物と該含フッ素化合物を除去する粉末活性炭と担持粒子とを含む処理剤に限られるものではない。
【0079】
さらに、粒状物杭は砂を杭材料とした砂杭に限られるものではなく、また、杭間隔が離隔した複数の粒状物杭でも透過性地下水浄化壁の壁本体を形成することができるものである。
【0080】
また、前記各実施形態によれば、浄化剤Aにより汚染物質aとしてフッ素を除去する場合について説明したが、浄化剤Aにより放射性セシウム等を除去することが可能である。
【0081】
<実施例>
次に、透過性地下水浄化壁のより具体的な構成を、
図7(a),(b)に示す実施例で説明する。この実施例では、汚染物質aとその浄化剤Aとして、フッ素と該フッ素を除去するリン酸水素カルシウム二水和物と担持粒子とを含む処理剤(例えば、国際公開第2010/134573号参照)を使用し、また、汚染物質bとその浄化剤Bとして、PFOA等の含フッ素化合物と該含フッ素化合物を除去する粉末活性炭と担持粒子とを含む処理剤(例えば、特開2010−269241号公報参照)を使用する。
【0082】
(1)前提条件
・フッ素含有地下水濃度:5ppm
・耐用年数:30年
・地下水流速(v):10m/年
・透過性地下水浄化壁の深度:12m
・透過性地下水浄化壁と原地盤の透水係数
浄化剤Aを含有した壁本体:6.8×10
−2cm/sec(実験結果より採用)
浄化剤Bを含有した壁本体:1.04×10
−1cm/sec(実験結果より採用)
原地盤:1×10
−3〜10
−4cm/sec
(2)透過性地下水浄化壁の壁厚
浄化剤充填量の400倍(実験結果により推定)の通過水量まで効果を発揮すると想定した。
【0083】
図7(a)に示すように、透過性地下水浄化壁の厚さをt(m)、対象面積をSとし、反応時間、濃度ともに線形の関係とすると、以下のように想定される。
【0084】
・フッ素含有地下水濃度が5ppmの場合
1m×1m×tm×400倍=v×S
=10m/年×1m
2
400t(m
3)=10(m
3/年)
t=0.025 1/年
よって、
図7(b)に示すように、耐用年数30年とすると、浄化剤Aを含有した壁本体の厚さは、0.025×30=0.75mとなる。
【0085】
(3)実施例の効果
この実施例では、浄化剤Aを含有した壁本体が締め固め砂杭により、また、浄化剤Bを含有した壁本体が締め固めなしの砂杭により形成したことにより、地下水の自然流下で、3列の透過性の壁本体中の各浄化剤A,Bの反応・吸着により有害な汚染物質a,bを確実に除去して浄化することができる。
【0086】
また、浄化剤A,Bを含有した壁本体の各列の外縁がラップすることで、全体の構造をよりコンパクトにすることができる。これにより、透過性地下水浄化壁の設置スペースを小さくすることができる。
【0087】
また、砂杭の打設本数を減らすことができるため経済的となり、さらに、水流により流れ出した上流側の壁本体に充填されている浄化剤Aを、下流側の砂杭からなる浄化剤B,Aを含有した各壁本体で溜めることができ、浄化能力を長期間に渡って維持することができる。