(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6095114
(24)【登録日】2017年2月24日
(45)【発行日】2017年3月15日
(54)【発明の名称】スポンジボールの回収方法及び回収装置
(51)【国際特許分類】
B08B 9/02 20060101AFI20170306BHJP
B08B 9/057 20060101ALI20170306BHJP
F28G 1/12 20060101ALI20170306BHJP
E02B 5/08 20060101ALI20170306BHJP
【FI】
B08B9/02
B08B9/057
F28G1/12 C
E02B5/08
【請求項の数】9
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-101910(P2013-101910)
(22)【出願日】2013年5月14日
(65)【公開番号】特開2014-221460(P2014-221460A)
(43)【公開日】2014年11月27日
【審査請求日】2016年3月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】596133119
【氏名又は名称】中電プラント株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000211307
【氏名又は名称】中国電力株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100138955
【弁理士】
【氏名又は名称】末次 渉
(74)【代理人】
【識別番号】100109449
【弁理士】
【氏名又は名称】毛受 隆典
(74)【代理人】
【識別番号】100168103
【弁理士】
【氏名又は名称】鍵下 幹朗
(72)【発明者】
【氏名】桧和田 正司
(72)【発明者】
【氏名】立脇 由哲
(72)【発明者】
【氏名】野村 直樹
【審査官】
遠藤 邦喜
(56)【参考文献】
【文献】
特開昭57−130616(JP,A)
【文献】
特開平10−197195(JP,A)
【文献】
特開昭52−103191(JP,A)
【文献】
特開平10−039093(JP,A)
【文献】
特開平11−051594(JP,A)
【文献】
特開2002−294668(JP,A)
【文献】
米国特許第5433229(US,A)
【文献】
実開昭54−137263(JP,U)
【文献】
特開平10−088550(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B08B 9/02
B08B 9/057
F28G 1/12
E02B 5/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
放水路に抑止スクリーンを配置してスポンジボールの下流への流出を抑止し、
下流側の面から前記抑止スクリーンへ向けて突出した捕集部を有する捕捉スクリーンを前記抑止スクリーンの上流側に配置し、
前記抑止スクリーンの上流側で旋回する前記スポンジボールを前記捕捉スクリーンの下流側の面で捕捉し、
捕捉した前記スポンジボールを前記捕集部で捕集する、
ことを特徴とするスポンジボールの回収方法。
【請求項2】
前記捕捉スクリーンの下端と前記放水路の底面とを所定間隔離間させて前記捕捉スクリーンを配置し、
前記捕捉スクリーンの上流側から前記捕捉スクリーンの下端と前記放水路の底面との間を通過し、乱流によって旋回する前記スポンジボールを前記捕捉スクリーンで捕捉する、
ことを特徴とする請求項1に記載のスポンジボールの回収方法。
【請求項3】
前記抑止スクリーンと前記捕捉スクリーンとを所定間隔離間させて前記捕捉スクリーンを配置し、
前記抑止スクリーンと前記捕捉スクリーンで挟まれた領域内を旋回する前記スポンジボールを前記捕捉スクリーンで捕捉する、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載のスポンジボールの回収方法。
【請求項4】
前記抑止スクリーンとして、それぞれ独立に昇降可能な上流側抑止スクリーンと下部に掻き上げ部を有し前記上流側抑止スクリーンの下流側に配置される下流側抑止スクリーンとを用い、
前記上流側抑止スクリーンが前記放水路に配置された状態で、前記下流側抑止スクリーンを下降させて前記放水路に配置した後、前記上流側抑止スクリーンを上昇させて前記放水路から引き上げて清掃し、
前記上流側抑止スクリーンを下降させて前記放水路に再度配置した後、前記下流側抑止スクリーンを上昇させて、前記上流側抑止スクリーンと前記下流側抑止スクリーンとの間に留まった前記スポンジボールを前記掻き上げ部で掻き上げ、前記上流側抑止スクリーンの上流側に前記スポンジボールを落として前記捕捉スクリーンで捕捉させる、
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載のスポンジボールの回収方法。
【請求項5】
放水路に設置されスポンジボールの流出を抑止する抑止スクリーンと、
前記抑止スクリーンの上流側に配置される捕捉スクリーンと、
前記捕捉スクリーンの下流側の面から前記抑止スクリーンへ向けて突出して設置される捕集部と、を備え、
前記抑止スクリーンの上流側で旋回する前記スポンジボールを前記捕捉スクリーンの下流側の面で捕捉し、捕捉された前記スポンジボールを前記捕集部に捕集させる、
ことを特徴とするスポンジボール回収装置。
【請求項6】
前記捕集部は上方が開口した網体である、
ことを特徴とする請求項5に記載のスポンジボール回収装置。
【請求項7】
前記捕捉スクリーンを昇降させる昇降装置を備える、
ことを特徴とする請求項5又は6に記載のスポンジボール回収装置。
【請求項8】
前記捕捉スクリーンを前記放水路に沿って移動させる移動装置を備える、
ことを特徴とする請求項5乃至7のいずれか一項に記載のスポンジボール回収装置。
【請求項9】
前記抑止スクリーンとして、それぞれ独立に昇降可能な上流側抑止スクリーンと前記上流側抑止スクリーンの下流側に配置される下流側抑止スクリーンと、を備え、
前記下流側抑止スクリーンの下部に掻き上げ部を有し、
前記下流側抑止スクリーンが下降して前記放水路に配置された後、前記上流側抑止スクリーンが上昇して前記放水路から引き上げられ、
前記上流側抑止スクリーンが下降して前記放水路に再度配置された後、前記下流側抑止スクリーンが上昇し、前記上流側抑止スクリーンと前記下流側抑止スクリーンとの間に留まった前記スポンジボールを前記掻き上げ部で掻き上げ、前記掻き上げ部が前記上流側抑止スクリーンの上端まで上昇して前記スポンジボールを前記上流側抑止スクリーンの上流側に落として前記捕捉スクリーンで捕捉させる、
ことを特徴とする請求項5乃至8のいずれか一項に記載のスポンジボールの回収装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スポンジボールの回収方法及び回収装置に関する。
【背景技術】
【0002】
火力発電所や原子力発電所などの蒸気タービンを回転させて発電を行う施設では、蒸気タービンから排出された蒸気を復水器で冷却して回収している。復水器では、海水などの冷却水を通す多数の細管を備え、この細管を介して冷却水と蒸気との間で熱交換を行い、蒸気を冷却して水に戻している。熱交換に用いられた冷却水は放水路を通じて海に排水される。
【0003】
復水器の細管にスケール等が付着すると熱伝導率の低下が生じる。このため、冷却水にスポンジボールを混入させ、スポンジボールで細管に付着したスケール等の除去を行っている。スポンジボールは復水器の出口側に設置される捕集器で収集され、再度冷却水に混入されて再利用される。
【0004】
万が一、全てのスポンジボールを捕集器で回収できなかった場合、スポンジボールが放水路を通じて海へ流出する可能性がある。このため、スポンジボールが海へ流出しないよう、放水路にはスポンジボールを回収する装置が設置される。
【0005】
例えば、特許文献1では、放水路を横断して配置され、スポンジボールを捕捉するスクリーンと、スクリーンの下部に捕捉したスポンジボールを受ける受け部を有する回収装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平10−39093号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1では、放水路における水流が整流の場合ではスポンジボールが捕捉スクリーンに捕捉され得る。しかしながら、乱流が生じる放水路もある。乱流が生じる放水路では、スポンジボールが捕捉スクリーンに捕捉されず、乱流に乗って捕捉スクリーンの上流側を回遊することになる。その結果、受け部でスポンジボールを受けることができず、スポンジボールの回収ができないという課題がある。
【0008】
本発明は、上記事項に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、乱流が生じる放水路でもスポンジボールの回収が可能なスポンジボールの回収方法及び回収装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1の観点に係るスポンジボールの回収方法は、
放水路に抑止スクリーンを配置してスポンジボールの下流への流出を抑止し、
下流側の面から前記抑止スクリーンへ向けて突出した捕集部を有する捕捉スクリーンを前記抑止スクリーンの上流側に配置し、
前記抑止スクリーンの上流側で旋回する前記スポンジボールを前記捕捉スクリーンの下流側の面で捕捉し、
捕捉した前記スポンジボールを前記捕集部で捕集する、
ことを特徴とする。
【0010】
また、前記捕捉スクリーンの下端と前記放水路の底面とを所定間隔離間させて前記捕捉スクリーンを配置し、
前記捕捉スクリーンの上流側から前記捕捉スクリーンの下端と前記放水路の底面との間を通過し、乱流によって旋回する前記スポンジボールを前記捕捉スクリーンで捕捉することが好ましい。
【0011】
また、前記抑止スクリーンと前記捕捉スクリーンとを所定間隔離間させて前記捕捉スクリーンを配置し、
前記抑止スクリーンと前記捕捉スクリーンで挟まれた領域内を旋回する前記スポンジボールを前記捕捉スクリーンで捕捉することが好ましい。
【0012】
また、前記抑止スクリーンとして、それぞれ独立に昇降可能な上流側抑止スクリーンと下部に掻き上げ部を有し前記上流側抑止スクリーンの下流側に配置される下流側抑止スクリーンとを用い、
前記上流側抑止スクリーンが前記放水路に配置された状態で、前記下流側抑止スクリーンを下降させて前記放水路に配置した後、前記上流側抑止スクリーンを上昇させて前記放水路から引き上げて清掃し、
前記上流側抑止スクリーンを下降させて前記放水路に再度配置した後、前記下流側抑止スクリーンを上昇させて、前記上流側抑止スクリーンと前記下流側抑止スクリーンとの間に留まった前記スポンジボールを前記掻き上げ部で掻き上げ、前記上流側抑止スクリーンの上流側に前記スポンジボールを落として前記捕捉スクリーンで捕捉させることが好ましい。
【0013】
本発明の第2の観点に係るスポンジボールの回収装置は、
放水路に設置されスポンジボールの流出を抑止する抑止スクリーンと、
前記抑止スクリーンの上流側に配置される捕捉スクリーンと、
前記捕捉スクリーンの下流側の面から前記抑止スクリーンへ向けて突出して設置される捕集部と、を備え、
前記抑止スクリーンの上流側で旋回する前記スポンジボールを前記捕捉スクリーンの下流側の面で捕捉し、捕捉された前記スポンジボールを前記捕集部に捕集させる、
ことを特徴とする。
【0014】
また、前記捕集部は上方が開口した網体であってもよい。
【0015】
また、前記捕捉スクリーンを昇降させる昇降装置を備えることが好ましい。
【0016】
また、前記捕捉スクリーンを前記放水路に沿って移動させる移動装置を備えることが好ましい。
【0017】
また、前記抑止スクリーンとして、それぞれ独立に昇降可能な上流側抑止スクリーンと前記上流側抑止スクリーンの下流側に配置される下流側抑止スクリーンと、を備え、
前記下流側抑止スクリーンの下部に掻き上げ部を有し、
前記下流側抑止スクリーンが下降して前記放水路に配置された後、前記上流側抑止スクリーンが上昇して前記放水路から引き上げられ、
前記上流側抑止スクリーンが下降して前記放水路に再度配置された後、前記下流側抑止スクリーンが上昇し、前記上流側抑止スクリーンと前記下流側抑止スクリーンとの間に留まった前記スポンジボールを前記掻き上げ部で掻き上げ、前記掻き上げ部が前記上流側抑止スクリーンの上端まで上昇して前記スポンジボールを前記上流側抑止スクリーンの上流側に落として前記捕捉スクリーンで捕捉させることが好ましい。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係るスポンジボールの回収方法及び回収装置では、乱流が生じる放水路であってもスポンジボールを回収することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】スポンジボールの回収装置の概略構成図である。
【
図2】捕捉スクリーンの側面図(
図2(A))及び正面図(
図2(B))である。
【
図3】スポンジボールの回収の際の動作を示す説明図である。
【
図4】スポンジボールの回収の際の動作を示す説明図である。
【
図5】スポンジボールの回収の際の動作を示す説明図である。
【
図6】上流側抑止スクリーンの清掃の際の動作を示す説明図である。
【
図7】上流側抑止スクリーンの清掃の際の動作を示す説明図である。
【
図8】上流側抑止スクリーンの清掃の際の動作を示す説明図である。
【
図9】他の形態に係るスポンジボールの回収装置の概略構成図である。
【
図10】実施例における水路のモデルの平面図である。
【
図12】実験2における実験条件を説明する図である。
【
図13】実験3における実験条件を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本実施の形態に係るスポンジボールの回収方法は、回収装置を利用して行われる。まず、回収装置1の構成について説明する。
【0021】
回収装置1は、
図1に示すように、捕捉スクリーン10、上流側抑止スクリーン20、下流側抑止スクリーン30及び駆動装置40を備える。
【0022】
捕捉スクリーン10は、
図2(A)、(B)に示すように、枠11と網12と吊り下げ部13と捕集部14を備える。捕捉スクリーン10は、上流側抑止スクリーン20及び下流側抑止スクリーン30の上流側に配置される。
【0023】
枠11は放水路Dの断面形状に応じた形状であり、ここでは矩形に形成されている。枠11は、金属等の硬材から構成される。枠11の横幅は放水路の幅より短く形成されている。
【0024】
網12は枠11内全域に張られている。網12の目はスポンジボールが流出しない程度に設定される。なお、枠11は、内側領域に格子状に骨組みが配置されて、補強されていてもよい。
【0025】
吊り下げ部13は枠11の上辺に設置されている。吊り下げ部13には孔が形成されており、この孔に駆動装置40のフック等がかけられ、駆動装置40によって捕捉スクリーン10が昇降可能に構成されている。
【0026】
捕集部14は、捕捉スクリーン10の網12に捕捉されたスポンジボールを捕集する機能を有する。捕集部14は、捕捉スクリーン10の下流側の面から突出して設置されている。捕集部14は、枠14aと網14bから構成されている。捕集部14の上方が開口しており、捕集部14の下流側への突出幅はスポンジボールの直径よりも大きく設定されている。
【0027】
上流側抑止スクリーン20は、放水路Dに配置され、スポンジボールの下流への流出を抑止する機能を果たす。上流側抑止スクリーン20は、放水路Dの断面形状に応じた形状の枠と、枠の全面に張られた網から構成される。網は水を通過させつつ、スポンジボールを通過させない網目を有する。上流側抑止スクリーン20は、不図示の昇降装置により、昇降可能に構成されている。
【0028】
下流側抑止スクリーン30は、上流側抑止スクリーン20の下流側に配置される。下流側抑止スクリーン30は、不図示の昇降装置により、昇降可能に構成されており、上流側抑止スクリーン20の清掃を行う際に放水路Dに配置され、上流側抑止スクリーン20と同様にスポンジボールの下流への流出を抑止する機能を果たす。下流側抑止スクリーン30は、水を通過させつつ、スポンジボールを通過させない程度の目の網から構成される。また、下流側抑止スクリーン30の下端には、掻き上げ部31を有する。掻き上げ部31は、下流側抑止スクリーン30の上流側の面から突出し、上流側抑止スクリーン20の下流側の面の近傍まで延在している。掻き上げ部31は、板体などから構成されており、下方に向けて傾斜させて設置されている。
【0029】
駆動装置40は、捕捉スクリーン10の昇降を行う。駆動装置40は、捕捉スクリーン10の昇降を行い得る装置であれば、どのような機構で構成されていてもよい。例えば、クレーン等のワイヤーの巻き上げ・下げ機構などが挙げられる。また、駆動装置40は、捕捉スクリーン10の昇降量を制御する不図示の制御装置に基づいて駆動される。
【0030】
また、駆動装置40は、ガイドレール41に沿って移動可能に構成されている。即ち、放水路Dの上流−下流方向に移動可能であり、捕捉スクリーン10を放水路Dに沿って移動させる。駆動装置40は捕捉スクリーン10を放水路Dに沿って移動させることが可能であれば、公知の種々の機構で構成されていてもよい。
【0031】
続いて、回収装置1を用いたスポンジボールの回収方法について説明する。
【0032】
通常時では、
図3に示すように、上流側抑止スクリーン20が放水路Dに配置されている。上流側抑止スクリーン20は、放水路Dを横切って配置される。スポンジボールSBは上流側抑止スクリーン20の網を通過できないので、上流側抑止スクリーン20の下流側へのスポンジボールSBの流出が抑制される。
【0033】
放水路Dにおける水の流れは、底面付近での流速が大きく、表層付近では流速が小さくなりやすい。この流速の差から、底面付近を流れる水が上昇流となり、矢印にて示すように、旋回流(乱流)が生じる。このため、放水路Dに流れ込んだスポンジボールSBも同様に、上流側抑止スクリーン20でその進行を阻まれて、乱流に乗って上流側抑止スクリーン20の上流側で旋回することになる。
【0034】
続いて、
図4に示すように、捕捉スクリーン10を下降させて、放水路Dに配置する。捕捉スクリーン10の下端と放水路Dの底面との間を所定間隔あけて、捕捉スクリーン10を配置する。
【0035】
捕捉スクリーン10を配置すると、スポンジボールSBは捕捉スクリーン10の下端と放水路Dの底面との間を通過し、捕捉スクリーン10と上流側抑止スクリーン20とで挟まれる領域に進入する。そして、スポンジボールSBは、上昇流に乗って上昇して旋回し、捕捉スクリーン10の下流側の面に捕捉される。
【0036】
一定時間経過後、
図5に示すように、捕捉スクリーン10を上昇させ、放水路Dから引き上げる。捕捉スクリーン10を引き上げる際には、捕集部14の上方が開口しているので、捕捉スクリーン10に捕捉されたスポンジボールSBが重力によって捕集部14に捕集される。
【0037】
以上のようにして、放水路Dに流れ込んだスポンジボールSBが回収される。このように、本実施の形態に係る回収装置1では、スポンジボールSBの海への流出を抑えるとともに、放水路Dで生じる乱流を利用し、上流側抑止スクリーン20の上流側で旋回するスポンジボールSBを回収することができる。
【0038】
なお、捕捉スクリーン10の下端と放水路Dの底面との間隔(
図4中に示すY)は、捕捉スクリーン10が設置される放水路Dや流れる水の流量に応じて適宜設定される。捕捉スクリーン10の下端と放水路Dの底面との間隔は、スポンジボールSBが通過できるよう、少なくとも、スポンジボールSBの直径よりも大きいことが要求される。一般的に、復水器に用いられるスポンジボールSBの直径は29mm前後であることから、捕捉スクリーン10の下端と放水路Dの底面との間隔は29mmよりも大きいことが要求される。また、捕捉スクリーン10の下端と放水路Dの底面との間隔は、水が上流側抑止スクリーン20に沿って上昇する上昇流れを阻害しない程度に設定されることが好ましい。例えば、捕捉スクリーン10の下端と放水路Dの底面との間隔を1m以上とすることが好ましい。
【0039】
また、捕捉スクリーン10と上流側抑止スクリーン20との距離、より詳細には、捕集部14の下流側先端と上流側抑止スクリーン20との距離(
図4中に示すX)は、捕捉スクリーン10が設置される放水路Dや流れる水の流量に応じて適宜設定されるが、少なくともスポンジボールSBの直径よりも大きいことが要求される。また、スポンジボールSBの上昇を妨げないよう設定されることが好ましく、捕捉スクリーン10と上流側抑止スクリーン20との距離をスポンジボールSBの直径の5倍以上とすることが好ましい。
【0040】
上流側抑止スクリーン20には、藻や微生物等により目詰まりが生じるので、定期的に清掃が行われる。上流側抑止スクリーン20の清掃を行う際、
図6に示すように、下流側抑止スクリーン30を下降させて放水路Dに配置した後、上流側抑止スクリーン20を上昇させ、水中から引き上げる。そして、上流側抑止スクリーン20の清掃が行われる。
【0041】
上流側抑止スクリーン20の清掃が終わった後、
図7に示すように、再度上流側抑止スクリーン20を下降させ、放水路Dに配置する。この際、上流側抑止スクリーン20と下流側抑止スクリーン30とで囲まれた領域に一部のスポンジボールSBが留まる。
【0042】
その後、下流側抑止スクリーン30を上昇させて、水中から引き上げるときに、掻き上げ部31が上流側抑止スクリーン20に沿って、スポンジボールSBを掻き上げる。そして、
図8に示すように、掻き上げ部31が上流側抑止スクリーン20の上端まで上昇すると、掻き上げ部31は傾斜して形成されているので、掻き上げられたスポンジボールSBは上流側抑止スクリーン20の上流側へと落とされる。
【0043】
上流側抑止スクリーン20の上流側へ戻されたスポンジボールSBは、上述したように、捕捉スクリーン10を下降させることにより、回収される。
【0044】
なお、放水路Dにおける水の流れが整流である場合では、
図9に示すように、捕集部14が捕捉スクリーン10の上流側から突出して設置されていてもよい。この場合、捕捉スクリーン10の下端が放水路Dの底面まで到達するように捕捉スクリーン10を放水路Dに配置すればよい。捕捉スクリーン10の下流側及び上流側の双方に捕集部14が設置されていることにより、水の流れが整流であっても乱流であってもスポンジボールSBの回収が可能である。
【実施例】
【0045】
一般的な水路の約1/25スケールのモデルを用いて、スポンジボールを回収できるか否か検証した。なお、スポンジボールは、一般的な大きさの1/25スケールにすると小さすぎて確認できないため、1/3スケール(直径:約10mm)のものを用いた。
【0046】
(実験1)
用いた水路のモデルを
図10、11に示す。3つの吐出口から3つの水路(水路5〜水路7)を通過し、4つの水路(水路1〜水路4)に分岐する水路を用いた。4つの水路(水路1〜水路4)にそれぞれ同じ構造の捕捉スクリーン10及び上流側抑止スクリーン20を配置した。捕集部14は各捕捉スクリーン10に2つ設置した。捕集部14は側板のない網棚であり、網棚の取付角度(θ)は、20°とした。
【0047】
捕捉スクリーン10と上流側抑止スクリーン20との間隔(捕集部14の先端と上流側抑止スクリーン20との間隔)を約20mmとして、上流側抑止スクリーン20の上流側に配置した。また、捕捉スクリーン10の下端と水路の底面との間隔は約120mmとした。
【0048】
そして、0.6m
3/minの流量(それぞれの吐出口の流量)で水を流した。また、流水にはスポンジボールSBを計50個混入させた。水を流し始めてから約1分経過後、それぞれの水路に配置した捕捉スクリーン10を水路から引き上げ、捕集部14に入っているスポンジボールSBの数を数えた。上記実験は2回行った。その結果を表1に示す。
【0049】
【表1】
【0050】
(実験2)
図12に示すように、3つの水路(水路5〜水路7)に捕捉スクリーン10をそれぞれ配置した。捕捉スクリーン10は、吐出口側の壁面から20mm離間させて配置した。その他の条件は実験1と同様にしてスポンジボールSBの回収を行った。上記実験は2回行った。その結果を表2に示す。
【0051】
【表2】
【0052】
本実験条件においては、捕集部14が下流側の面に設置された捕捉スクリーン10を上流側抑止スクリーン20の上流側に配置することで、捕捉スクリーン10がいずれの位置においても、スポンジボールSBを回収することができることを確認した。
【0053】
(実験3)
図13に示すように、上流側抑止スクリーン20の上流側の面に捕集部14を設置し、また、捕捉スクリーン10を配置しない以外、実験1と同様にしてスポンジボールSBの回収を行った。また、捕集部14である網棚の取付角度(θ)を0°、15°、30℃として、それぞれ行った。
【0054】
しかしながら、網板がいずれの角度であっても、捕集部14にはスポンジボールSBが入っていなかった。スポンジボールSBが上流側抑止スクリーン20に吸い寄せられるものの、水路の底面からの水流に押され、すぐにボールが上流側へと移動していたためである。乱流が生じる水路においては、上流側抑止スクリーン20の上流側の面に捕集部14が設置されていても、スポンジボールSBを回収できないことを確認した。
【符号の説明】
【0055】
1 回収装置
10 捕捉スクリーン
11 枠
12 網
13 吊り下げ部
14 捕集部
14a 枠
14b 網
20 上流側抑止スクリーン
30 下流側抑止スクリーン
31 掻き上げ部
40 駆動装置
41 ガイドレール
D 放水路
SB スポンジボール