(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6095130
(24)【登録日】2017年2月24日
(45)【発行日】2017年3月15日
(54)【発明の名称】薄膜太陽電池モジュールおよびそれを備えた温室
(51)【国際特許分類】
H01L 51/44 20060101AFI20170306BHJP
A01G 9/14 20060101ALI20170306BHJP
【FI】
H01L31/04 135
A01G9/14 Z
【請求項の数】8
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-514828(P2014-514828)
(86)(22)【出願日】2012年6月6日
(65)【公表番号】特表2014-522101(P2014-522101A)
(43)【公表日】2014年8月28日
(86)【国際出願番号】NL2012050392
(87)【国際公開番号】WO2012169885
(87)【国際公開日】20121213
【審査請求日】2015年5月1日
(31)【優先権主張番号】11169108.5
(32)【優先日】2011年6月8日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】508353293
【氏名又は名称】ネーデルランツ オルガニサティー フォール トゥーゲパスト−ナトゥールヴェテンシャッペリーク オンデルズーク テーエンオー
(74)【代理人】
【識別番号】100071870
【弁理士】
【氏名又は名称】落合 健
(74)【代理人】
【識別番号】100097618
【弁理士】
【氏名又は名称】仁木 一明
(74)【代理人】
【識別番号】100152227
【弁理士】
【氏名又は名称】▲ぬで▼島 愼二
(72)【発明者】
【氏名】ブロム,パウルス ヴィルヘルムス マリア
(72)【発明者】
【氏名】ギャラガン,ユリア
【審査官】
濱田 聖司
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2010/080446(WO,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2011/0048499(US,A1)
【文献】
特開2010−213684(JP,A)
【文献】
R.R.Lunt,"Transparent, near-infrared organic photovoltaic solar cells for window and energy-scavenging applications",Applied Physics Letters,Vol.98, No.11 (2011),113305
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 31/00−31/20
H01L 51/42−51/48
H02S 10/00−40/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
太陽放射を受け取り、350〜500nmの第1の波長バンドと600〜700nmの第2の波長バンドとを含む第1波長領域が少なくとも含まれないような波長領域であって且つ500〜600nmの波長バンドを含む第2波長領域が少なくとも含まれる波長領域中の太陽放射を、電気エネルギーへ変換するように構成された光電層(20)と、
前記光電層(20)により透過された第2波長領域の放射を選択的に反射するように、前記光電層(20)に対向して配置された選択的反射層(30)と、
少なくとも前記第2波長領域における放射を吸収して、電気エネルギーへ変換する追加の光電層(40)とを備え、
前記選択的反射層(30)が前記光電層(20)と前記追加の光電層(40)との間に配置される薄膜太陽電池モジュールであって、
420〜480nmの第3の波長バンドおよび620〜700nmの第4の波長バンド中の放射の少なくとも75%を透過するように、第1波長領域において実質的に透光性である、薄膜太陽電池モジュール。
【請求項2】
前記第1および第2の波長バンド中の放射の少なくとも50%を透過する、請求項1に記載の薄膜太陽電池モジュール。
【請求項3】
前記第1および第2の波長バンド中の放射の少なくとも75%を透過する、請求項2に記載の薄膜太陽電池モジュール。
【請求項4】
前記第1および第2の波長バンド中の放射の少なくとも90%を透過する、請求項3に記載の薄膜太陽電池モジュール。
【請求項5】
前記選択的反射層(30)の、前記2波長領域における放射の反射率が、少なくとも50%である、請求項1に記載の薄膜太陽電池モジュール。
【請求項6】
前記選択的反射層(30)の、前記第2波長領域における放射の反射率が、少なくとも75%である、請求項5に記載の薄膜太陽電池モジュール。
【請求項7】
前記選択的反射層(30)の、前記第2波長領域における放射の反射率が、少なくとも90%である、請求項6に記載の薄膜太陽電池モジュール。
【請求項8】
植物(53)を育てるための内部空間(52)を囲み、前記請求項のいずれか1つに記載の薄膜太陽電池モジュール(1)の少なくとも1つが設置された壁(51)を備える温室主枠構造物を備える光起電力温室(50)。
【発明の詳細な説明】
【0001】
[発明の分野]
本発明は、薄膜太陽電池モジュールに関する。
【0002】
更に、本発明は、薄膜太陽電池モジュールを備えた温室に関する。
[関連技術]
温室は、野菜、草花などの植物を育てるために重要である。昼間は、温室の中の植物は太陽光により照らされ、一方夜間(暗闇)は、人工光が使用される。重大な問題は、夜間に温室が植物の照明のために大量のエネルギーを消費することである。一方、昼間には植物は太陽光スペクトルの特定の部分のみを吸収し、太陽光スペクトルの残りの部分は使用されない。
【0003】
欧州特許第2230695号には、複数の直立した壁と、該直立した壁に支持された屋根とを備えた温室主枠構造物と、該屋根に設置され、光電層において太陽光の所定の光のバンドを選択的に吸収することにより太陽エネルギーを電気に変換する少なくとも1つの薄膜太陽電池モジュールとを備え、該少なくとも1つの薄膜太陽電池モジュールにより選択的に透過された該太陽エネルギーが、所定の植物による光合成を促進するための太陽光の光のバンドを含む、光起電力温室が開示されている。
【0004】
選択的に吸収する光電層に追加して、選択的に吸収する光電層の吸収帯とほぼ同じ範囲に反射帯を有する、選択的反射層を有する光電モジュールも公知である。このようにして、光電モジュールの効率が向上される。その例は、Y.Galagan, M.G.Debije,and P.Blom in “Semitransparent organic solar cells with organic wavelength
dependent Reflectors(波長依存有機反射板付き半透明有機太陽電池)” in APPLIED PHYSICS LETTERS 98,043302_2011に記載されている。
【0005】
温室には、多くの場合、夜間に内部の植物を照明するための追加の光源が設けられている。これらの光源からの放射のかなりの部分は、迷放射として漏出して、「光害」の問題を起している。「光害」は、夜間の過剰なまたは邪魔な光と定義される。温室からの「光害」の問題は、人口稠密な地域では大変重要である。環境中のこの過剰な光は、温室の近くに住む人々の健康に害(すなわち、睡眠不足)を与える可能性がある。この光害を減らし、更に、迷放射の少なくとも一部を電気エネルギーへ変換することが望まれている。欧州特許第2230695号で公知の薄膜太陽電池モジュールは、迷放射を変換することが可能であろう。しかしながら、選択的に吸収する光電層に追加して選択的反射層を有する光電モジュールを使用することは不可能であろう。この反射層は、光電層に適切な波長バンドの迷放射が光電層に到達する前にその迷放射を反射するであろう。温室の外部から受け取った太陽放射を変換することおよび温室内部の照射源からの迷放射を変換することの両方が可能であり、かつ変換効率が向上した光電モジュールを提供することが望まれている。
【0006】
他の光起電装置が、Lunt et al.により“Transparent, near−infrared organic photovoltaic solar cells for window and energy−scavenging applications(窓およびエネルギー捕捉用途のための透明近赤外有機光起電太陽電池)”,APPLIED PHYSICS LETTERS,vol.98,17 March 2011(2011−03−17),pages 113305−1 − 113305−3に開示されている。Luntは、スペクトルの可視部分で透明である光起電力電池(ITO/MoO3;CIAIPC−C60−;BCP/ITO)と赤外の放射を選択的に反射する反射板DBRとを有する光起電装置を開示している。Luntは、「これらの装置がλ=695と910nmの間で99%の高い反射率のため、構造物の冷却における同時のNIR遮断にも有用であることに注目している」と述べている。Luntは更に、「縦に一列に積み重ねた副電池に、より深い赤外領域で吸収する活性層を組み入れることで、ほぼ同一の可視透過率で、2%〜3%を超える効率がこの材料の組み合わせで可能であろう」ことを指摘している。
【発明の概要】
【0007】
本発明は、太陽放射を受け取り、
350〜500nmの第1の波長バンドと600〜700nmの第2の波長バンドとを含む第1波長領域
が少なくとも含まれないような波長領域であって且つ500〜600nmの波長バンドを含む第2波長領域
が少なくとも含まれる波長領域中の太陽放射を
、電気エネルギーへ変換するように構成された光電層と、その光電層により透過された第2波長領域の放射を選択的に反射するように、該光電層に対向して配置された選択的反射層と、少なくとも前記第2波長領域における放射を吸収して、電気エネルギーへ変換する追加の光電層とを備え、前記選択的反射層が前記光電層と前記追加の光電層との間に配置さ
れ、420〜480nm
の第3の波長バンドおよび620〜700nmの
第4の波長バンド中の放射の少なくとも75%を透過するように、該薄膜太陽電池モジュールが第1波長領域において実質的に透光性であることを特徴とする。
【0008】
本発明の第1の側面によれば、少なくとも第1波長領域において実質的に透光性であり、光電層が、太陽放射を受け取り前記少なくとも第1波長領域とは異なる少なくとも第2波長領域における太陽放射を電気エネルギーへ変換するように構成された、改良した薄膜太陽電池モジュールが提供される。前記薄膜太陽電池モジュールは、光電層により透過された該第2波長領域の放射を反射するために光電層に対向して配置された選択的反射層を有する。前記モジュールは、少なくとも前記第2波長領域における放射を吸収し電気エネルギーへ変換する追加の光電層を備える。前記選択的反射層は、光電層(以下、第1の光電層とも呼ばれる)と追加の光電層(以下、第2の光電層とも呼ばれる)との間に配置される。
【0009】
本発明の第1の側面による薄膜太陽電池モジュールは、例えば太陽放射のない場合に補助の照射が使用される温室での利用に特に適切である。第2波長領域内の補助の放射源からの迷放射は、第2の光電層により吸収され、電気エネルギーへ変換される。第1と第2の光電層の間に配置された選択的反射層は、両光電層の効率を向上させる。少なくとも第1波長領域は、350〜500nmの第1の波長バンドと600〜700nmの第2の波長バンドを備え、第2波長領域は500nmから600nmまでの波長
バンドを備える。
【0010】
上述したように、Luntは、光起電装置を有する副電池を積み重ねてもよいと述べている。しかしながら、Luntは、積み重ねた副電池は、互いに異なる感度範囲を有するべきであることを示唆している。すなわち、積み重ねた層のひとつは、赤外までより深く吸収する活性層を有するべきである。それとは非常に対照的に、本発明による薄膜太陽電池モジュールでは、光電層および追加の光電層は共に第2波長領域における放射を吸収・変換する。
【0011】
第1の光電層により直接吸収されない第2波長領域内の太陽放射は、選択的反射層により反射され、その後少なくとも部分的に吸収され電気エネルギーへ変換される。
【0012】
第1の光電層が光子放射の部分Cpaを吸収・変換し、選択的反射層が少なくとも第2波長領域においてCrrの反射率を有すると考えれば、部分(l−Cpa)*Crrが反射されて第1の光電層へ戻り、追加の部分Cpa*(l−Cpa)*Crrが、第1の光電層で吸収され電気エネルギーに変換される。従って、第2波長領域における薄膜太陽電池モジュールの吸収は、l+(l−Cpa)*Crrのファクターで改善される。第1波長領域における選択的反射層の透過率をCrtとすると、これは、薄膜太陽電池モジュールの選択性が(l+(l−Cpa)*Crr)*Crtにより改善されることを示している。
【0013】
同様に、第2の光電層により直接吸収されない第2波長領域内の迷放射が選択的反射層により反射され、その後少なくとも部分的に吸収され電気エネルギーへ変換される。
【0014】
実際、選択的反射層は、わずかな吸収損失で所望の高い反射スペクトルに近づくように設計することが可能である。例えば、選択的反射層は、第1波長領域の透過率を90%とし、第2波長領域の反射率を90%とすることが可能である。その場合、光子放射の部分Cpa=0.5を吸収・変換する光電層を有する薄膜太陽電池モジュールの選択性は、1.4のファクターで改善される。
【0015】
該第2波長領域の放射を選択的に反射することにより、その放射の、そうしなければ失われていたであろう部分は、今は光電層に吸収され、一方、少なくとも第1波長領域における放射は邪魔されずに温室の内部へ透過される。追加で吸収された放射は電気エネルギーへ変換され、それにより変換エネルギーを高め、一方光合成に関与する波長バンドにおける太陽光の透過率は高く保持している。
【0016】
少なくとも第1波長領域は、350〜500nmの第1の波長
バンドと600〜700nmの第2の波長
バンドを備える。従って、薄膜太陽電池モジュールは、これら
第1および第2の波長
バンドにおける放射の少なくとも50%を透過すべきである。その範囲での透過が少なくとも75%であることが好ましい。その範囲での透過が少なくとも90%であることがより好ましい。
【0017】
前記実施態様では、第2波長領域は、500〜600nmである。選択的反射層は、第2波長領域における放射の少なくとも50%の反射率を有するべきである。その範囲での反射率が少なくとも75%であることが好ましい。その範囲での反射率が少なくとも90%であることがより好ましい。
【0018】
ここで参照したY.Galagan et al.の文献には、半透明有機太陽電池での使用のためのキラルネマチックコレステリック液晶の溶液処理可能な波長依存性有機反射板が記載されている。コレステリック液晶(CLC)は、太陽光スペクトルの幅狭のバンドのみを反射し、残りの波長はそのまま透過する。光電変換に適した未吸収光子のみが反射されて活性層をもう一度透過するように、前記反射バンドを有機太陽電池の吸収スペクトルと一致させる。このようにして、透明性を過大に失うことなく、半透明有機太陽電池の効率を向上することが可能である。更に、S.H.Chen, Photoracemization broadening of selective reflection and polarization band of glassy chiral−nematic films(ガラス状キラルネマチック膜の選択的反射・偏光バンドの光ラセミ化拡大),Liquid Crystals,2000,Vol.27,No.2,201−209を参照する。
【0019】
他の公知の方法は、例えば米国特許第7515336B2号公報、同第6847483号公報、同第6197224号公報に記載されている。複数の副層を備える選択的反射層を設計するためのソフトウェアも市販されており、例えばSoftware Spectra Inc製,http://www.sspectra.com/,のTFCalcソフトウェアパッケージがある。
【0020】
本発明の第2の側面によれば、改良された薄膜太陽電池モジュールを備えた温室が提供される。第2の側面による光起電力温室は、植物を育てるための内部空間を囲む壁を備えた温室主枠構造物を備え、上記請求項のいずれか1項に記載の少なくとも1つの薄膜太陽電池モジュールが該壁に設置されている。前記壁は壁の部分を有してもよく、例えば前記壁が直立した部分と屋根部分を有してもよい。あるいは、前記壁は、単一部として、例えば半球状部として形成してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0021】
これらおよび他の側面を、図面を参照してさらに詳しく記載する。
【
図1】クロロフィルa、bの吸収スペクトルを示す。
【
図3】昼間の、従来の薄膜太陽電池モジュールを備えた温室を示す。
【
図4】本発明の第1の側面による薄膜太陽電池モジュールの実施例を示す。
【
図5】夜間の、本発明の第2の側面による温室の実施例を示す。
【
図6】本発明の第1の側面による薄膜太陽電池モジュールの側面をより詳細に示す。
【0022】
異なる図面において同様の参照符号は、特に明記しない限り、同様の要素を示すものである。
【0023】
以下の詳細な説明では、本発明を十分に理解するために、多数の具体的な詳細が述べられている。しかしながら、本発明がこれらの具体的な詳細なしに実施可能であることは当業者には理解されるであろう。他の場合においては、公知の方法、手順、部品は、詳細に記載されていないが、これは本発明の側面を不明瞭にしないためである。
【0024】
以下、本発明を、本発明の実施例を示した添付の図面を参照してより詳細に記載する。しかしながら、本発明は、他の多くの形態で実施可能であり、ここに示した実施例に限定されるものではない。むしろ、これらの実施例は、この開示を十分かつ完全なものとし、本発明の範囲を当業者に十分に知らしめるために記載される。図面において、各層や領域のサイズおよび相対サイズは、理解しやすいよう誇張されている。本発明の実施例は、本発明の理想的な実施例(および中間構造)の模式図である断面図を参照してここに記載される。従って、例えば製造技術および/または公差の結果として図面の形状が変化することは予期されるものである。このように、本発明の実施例は、ここに図示する部分の特定の形状に限定されると解釈すべきではなく、例えば製造に起因する形状の誤差も含むものである。而して、図面に示される領域は、模式的な性質のものであり、それらの形状は、装置の部分の実際の形状を示す意図ではなく、本発明の範囲を限定する意図ではない。
【0025】
要素または層が、他の要素または層「上に」、「に連結して」、または「に結合して」あると言及される場合は、それが、直接他の要素または層上に、連結して、または結合してあってもよいし、介在する要素または層が存在してもよいと理解されたい。対照的に、要素が、他の要素または層「上に直接」,「に直接連結して」、または「に直接結合して」あると言及されている場合は、介在する要素や層は存在しない。全体を通して、同じ要素は同じ符号で参照される。ここで使用するように、「および/または」という用語は、関連する記載の項目の1つまたは2つ以上の任意のすべての組み合わせを含むものである。
【0026】
第1、第2、第3などの用語が、様々な要素、成分、領域、層および/または区分を記載するためにここで使用されるが、これらの要素、成分、領域、層および/または区分は、これらの用語によって限定されるものではないことが理解されるであろう。これらの用語は、単に、1つの要素、成分、領域、層または区分を他の要素、成分、領域、層または区分から区別するために使用されるものである。従って、以下で述べる第1の要素、成分、領域、層または区分は、本発明の教示から逸脱することなく第2の要素、成分、領域、層または区分と呼ぶことが可能である。
【0027】
「の下に」、「の下方に」、「下部の」、「の上方に」、「上部の」などの空間的な相対関係を表す用語は、図面に示されるように、ひとつの要素または特徴の、他の要素または特徴に対する関係を記載するにあたって記述を容易にするためにここで使用されるものである。空間的な相対関係を表す用語は、使用中あるいは操作中の装置の、図面に描かれた方向以外の異なる方向を含むことを意図していると理解されるであろう。例えば、図面中の装置が逆さまになった場合、他の要素または特徴「の下方に」または「の下に」と記載された要素は、他の要素または特徴「の上方に」方向付けられるであろう。このように、例として挙げた「の下方に」という用語は、上方と下方の両方の方向を含むことが可能である。装置は、他の方向を向いていてもよく(90度回転、あるいは他の方向)、ここで使用する空間的な相対関係を表す記述は、適宜解釈されるものである。
【0028】
他に定義されない限り、ここで使用するすべての用語(技術・科学用語も含めて)は、本発明が属する分野の当業者により一般に理解されている意味と同じ意味を有する。更に、一般に使用される辞書で定義される用語は、関連する技術分野の文脈での意味と一致する意味を有すると解釈されるべきであり、ここでそのように明らかに定義されない限り理想化されたり極度に正式な意味で解釈されるものではないことが理解されるであろう。対立する場合は、定義も含めて本明細書が優先するであろう。更に、材料、方法、および例は、単に例示の目的であって、限定を意図するものではない。
【0029】
太陽光は、フルスペクトル光である。しかしながら、植物は光合成のためにスペクトルの一部だけを使用する。このことは、
図1に示す、植物における光合成を担う色素であるクロロフィルa、bの吸収スペクトルから明らかである。典型的には500〜600nmの間の幅広いスペクトル領域が光合成には適していない。
【0030】
図2は、Galagan et al.の引用文献で知られるような薄膜太陽電池モジュールを模式的に示すものである。この薄膜太陽電池モジュールは、光電層20と選択的反射層30を保持する基板10からなる。
【0031】
光電層20は、基板10と選択的反射層30との間に配置される。基板は、ガラスや、PETやPENホイルなどの透光性ポリマーであってもよい。光電層20は、ポリ3−ヘキシルチオフェン(P3HT)および[C60]PCBMの副層から構成される。選択的反射層30としては、コレステリック液晶(CLC)の副層を積み重ねたものが使用され、それぞれ約80nmの幅狭のバンドでのみ反射し、残りの波長はそのまま透過させる。そのような、それぞれの波長において反射帯を有するCLC副層を積み重ねたものが、光電層20の吸収バンドに一致する反射バンド集合体を有する選択的反射層30を形成する。この反射バンドを、第2波長領域における主に未吸収放射が光電層20へ反射されるように、有機太陽電池の吸収スペクトルと一致させる。使用される用途によっては、他の材料を光電層に使用することもできる。例えば、活性材料P3HTを、より規則正しい有機材料と交換して、光電層の吸収帯をより幅狭くすることもできる。
【0032】
光電層20の他の例を、
図6を参照してより詳細に説明する。
【0033】
薄膜太陽電池モジュールは、350〜500nmの波長バンドと600〜700nmの波長バンドとを備える第1波長領域において実質的に透光性である。特にフィルム型太陽電池モジュールは、420〜480nmおよび620〜700nmの波長バンドにおいて放射の少なくとも75%を透過すべきである。薄膜太陽電池モジュールは、500〜600nmの波長
バンドにおいて放射の少なくとも75%を遮断すべきである。示したパーセントは、光子放射の電力のパーセントである。光電層は、太陽放射を受け取り、前記少なくとも第1波長領域とは異なる500〜600nmの少なくとも第2波長領域における太陽放射を電気エネルギーへ変換するように構成されている。選択的反射層30は、光電層に対向して配置され、光電層により透過された第2波長領域における放射を選択的に反射する。選択的反射層は、例えばTiO2層およびZrO2層などの異なる屈折率を有する副層を積み重ねたものを備える。その代りにあるいはそれに追加して、3M製のデュアル輝度上昇フィルム(DBEF、商標名Vikuiti)またはポリマー分散型液晶フィルムなどの薄膜材料が使用できる。
【0034】
図3は、
図2に示すような薄膜太陽電池モジュールを備えた温室を模式的に示すものである。
図3に示す温室は、植物53が育つための内部空間52を囲む壁51を備える温室主枠構造物を備える。
図2を参照して記載したような薄膜太陽電池モジュール1が、壁に設置される。選択的反射層30は、光電層20と壁との間に配置される。
【0035】
昼間は、太陽放射2が薄膜太陽電池モジュール1の光電層20により受光される。350〜500nmの波長バンドと600〜700nmの波長バンドにおける太陽放射は実質的に透過され、それが温室50の内部52に並べた植物53における光合成を引き起こす。500〜600nmの波長領域における太陽放射は光電層20により部分的に吸収され、電気エネルギーへ変換されて電気システム60へ送達される。電気システム60は、例えば電気エネルギーを電源へ供給するのに適した形態に変換するDC/ACコンバータを備える。あるいは、電気システム60は蓄電設備を備えてもよい。
【0036】
図3Aは夜間の状態を示す。夜間は、温室の植物53は光源54により人工的に照射されてもよい。この光源には、薄膜太陽電池モジュール1から昼間に回収したエネルギーにより電力を供給してもよい。この場合、第2波長領域における放射が前記層30により反射されるので、光源54からの迷放射は実質的に弱められている。しかしながら、第2波長領域における放射は実質的に光電層20に到達せず、その放射の電気エネルギーへの変換は阻止されている。
【0037】
図4は、本発明の第1の側面による薄膜太陽電池モジュール1の実施例を示す。
図4に示す薄膜太陽電池モジュールは、前記選択的反射層30の反対側に配置される追加の光電層40を備える。従って、選択的反射層30は、第1の光電層20と第2の光電層40との間に配置される。
図4のモジュールの第1の光電層20および第2の光電層40は、
図2と同じ組成および寸法を有してもよい。選択的反射層30も、
図2と同じ組成および寸法を有してもよい。あるいは、異なる屈折率の副層を積み重ねたもの、例えば、TiO2層とZrO2層を積み重ねたものを使用してもよい。
【0038】
薄膜太陽電池モジュール1のどちら側に前記基板10を配置するかは重要ではない。ある実施例では、基板を薄膜太陽電池モジュール1の両側に配置し、それによって雨や雹などの環境条件から太陽電池モジュールを保護している。
【0039】
図5は、本発明の第1の側面による薄膜太陽電池モジュールを備える、本発明の第2の側面による温室を示す。夜間、第2波長領域の波長を有する光源54の迷放射は、光電層40により直接、または選択的反射層30により反射された後で少なくとも部分的に吸収される。このように、温室の外で迷放射が低減されるだけではなく、迷放射の一部が有用な電気エネルギーに変換される。薄膜太陽電池モジュールは、保護されるように温室の壁の内側に配置されることが好ましい。
【0040】
図6は、光電層20をより詳細に示すものである。
図4に示す追加の光電層40も同様の構成を有してもよい。光電層20または40は、第1の電極副層21、電子供与材料および電子受容材料の混合物を備える活性な副層22、および第2の電極副層24を含む副層を積み重ねたものを備える。あるいは、前記活性な副層は、供与材料を有する電子供与副副層と受容材料を有する電子受容副副層が互いに対向して配置された組み合わせとして提供されてもよい。しかしながら、電子供与材料と電子受容材料との混合物からなる単一の活性な副層22を有する
図6に示すような構成においては、大量のへテロ接合が得られ、供与体と受容体との間の界面が大きくなる。これは2層型よりもより効率的である。第1および第2の電極副層21,24は、例えば透明導電性酸化物(TCO)、すなわち、酸化インジウムスズ(ITO)などの金属酸化物や導電性ポリマーからなる透明導電性副層である必要がある。電極副層21,24はそれ自身で2層以上の副副層を備えてもよい。導電率を向上するために、電極副層21,24は、国際公開第2011/016725号公報、欧州特願公開第1693481号公報、国際公開第2010/016763号公報に記載されるような、金属グリッドと併用してもよい。
【0041】
実際の実施態様では、光電層20および追加の光電層40の各々は、埋め込み導電性グリッド、PEDOT:PSSなどの導電性ポリマーの層、供与体−受容体ブレンドを含む活性層、互いに異なる透明導電性材料の層を積み重ねた形態であってもよいカソード、および印刷金属グリッドを備えている。反転した構成では、光電層20および追加の光電層40は、第1の導電性グリッド、PEDOT:PSSなどの導電性ポリマーの層、酸化亜鉛層、供与体−受容体ブレンド、追加の導電性透明層、第2の導電性グリッドを備えてもよい。
【0042】
好適な電子供与材料としては、ポリチオフェン類、ポリアニリン類、ポリビニルカルバゾール類、ポリフェニレン類、ポリフェニルビニレン類、ポリシラン類、ポリチエニレンビニレン類、ポリイソチアナフタネン類、ポリシクロペンタジチオフェン類、ポリシラシクロペンタジチオフェン類、ポリシクロペンタジチアゾール類、ポリチアゾロチアゾール類、ポリチアゾール類、ポリベンゾチアジアゾール類、ポリ(チオフェンオキシド)類、ポリ(シクロペンタジチオフェンオキシド)類、ポリチアジアゾロキノキサリン、ポリベンゾイソチアゾール、ポリベンゾチアゾール、ポリチエノチオフェン、ポリ(チエノチオフェンオキシド)、ポリジチエノチオフェン、ポリ(ジチエノチオフェンオキシド)類、ポリテトラヒドロイソインドール類、およびそれらのコポリマーからなる群から選んでもよい。電子供与材料の例としては、ポリチオフェン類(例えば、ポリ(3−ヘキシルチオフェン)(P3HT))、ポリシクロペンタジチオフェン類(例えば、ポリ(シクロペンタジチオフェン−コベンゾチアジアゾール))、およびコポリマーからなる群から選ばれたポリマーが挙げられる。
【0043】
好適な電子受容材料としては、フラーレン類、無機ナノ粒子、オキサジアゾール類、ディスコチック液晶、カーボンナノロッド、無機ナノロッド、CN基含有ポリマー、CF3基含有ポリマー、およびそれらの組み合わせからなる群から選んでもよい。電子受容材料の例としては、置換フラーレン(例えば、フェニルC61酪酸メチルエステル(PCBM))が挙げられる。
【0044】
ここで使用されるように、「備える」、「備えている」、「含む」、「含んでいる」、「有する」、「有している」という用語またはそれらの任意の変形は、非排他的含有を包含することを意図している。例えば、羅列した要素を備えるプロセス、方法、製品、装置は、これらの要素のみに必ずしも限定されるものではなく、明確に羅列していない、あるいはそのようなプロセス、方法、製品、装置に本質的な他の要素を含むことができる。更に、明らかに逆を述べていない限り、「または」は、包括的な「または」を意味し、排他的な「または」を意味しない。例えば、AまたはBという条件は以下のいずれかによって満たされる:Aが真(または存在)であり、Bが偽(または非存在)である、Aが偽(または非存在)であり、Bが真(または存在)である、AおよびBの両方が真(または存在)である。
【0045】
また、不定冠詞の「a」または「an」を本発明の要素および成分を記載するために使用している。これは本発明の一般的な意味を与えるための単なる便宜のためである。この記載は、1つまたは少なくとも1つを含むように読解するべきであり、また、それ以外を意味することが明らかではない場合は、単数は複数を含むものである。