(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6095131
(24)【登録日】2017年2月24日
(45)【発行日】2017年3月15日
(54)【発明の名称】液状炭化水素の加工の際の汚染の低減方法
(51)【国際特許分類】
C10G 75/04 20060101AFI20170306BHJP
【FI】
C10G75/04
【請求項の数】26
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2014-553662(P2014-553662)
(86)(22)【出願日】2013年1月29日
(65)【公表番号】特表2015-508829(P2015-508829A)
(43)【公表日】2015年3月23日
(86)【国際出願番号】EP2013000254
(87)【国際公開番号】WO2013113491
(87)【国際公開日】20130808
【審査請求日】2015年7月9日
(31)【優先権主張番号】102012001821.5
(32)【優先日】2012年1月31日
(33)【優先権主張国】DE
(31)【優先権主張番号】102012004882.3
(32)【優先日】2012年3月10日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】398056207
【氏名又は名称】クラリアント・ファイナンス・(ビーブイアイ)・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【弁理士】
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【弁理士】
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100139527
【弁理士】
【氏名又は名称】上西 克礼
(74)【代理人】
【識別番号】100164781
【弁理士】
【氏名又は名称】虎山 一郎
(72)【発明者】
【氏名】フォイステル・ミヒャエル
(72)【発明者】
【氏名】アンドリン・ドミンコ
(72)【発明者】
【氏名】クルル・マティアス
【審査官】
村松 宏紀
(56)【参考文献】
【文献】
特表2012−500887(JP,A)
【文献】
特表2002−503749(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C10G 1/00−99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
100〜550℃の温度範囲での液状炭化水素媒体の熱処理の際の防汚剤としての、二つの第一OH基及び少なくとも一つの第二OH基を含むポリオールと、C16〜C400アルキル基またはC16〜C400アルケニル基を有するジカルボン酸またはそれの無水物またはそれのエステルとを重縮合させることによって製造することができる、窒素含有率が1000重量ppm以下のヒドロキシル基含有ポリエステルの使用。
【請求項2】
ポリエステルのOH価が少なくとも40mgKOH/gである、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
ジカルボン酸またはそれの無水物またはそれのエステルが、C16〜C40アルキル基またはC16〜C40アルケニル基を有する、請求項1または2に記載の使用。
【請求項4】
ジカルボン酸が、C16〜C40アルキル−またはC16〜C40アルキ(ケニ)ルコハク酸またはそれの無水物である、請求項3に記載の使用。
【請求項5】
ジカルボン酸またはそれの無水物またはそれのエステルのアルキルまたはアルケニル基が18〜36個のC原子を含む、請求項1〜4のいずれか一つに記載の使用。
【請求項6】
アルキルまたはアルケニル基がα−オレフィンから誘導される、請求項3〜5のいずれか一つに記載の使用。
【請求項7】
ジカルボン酸またはそれの無水物またはそれのエステルが、C41〜C400アルキル基またはC41〜C400アルケニル基を有する、請求項1または2に記載の使用。
【請求項8】
ジカルボン酸のアルキルまたはアルケニル基が分岐状である、請求項7に記載の使用。
【請求項9】
アルキルまたはアルケニル基がポリオレフィンから誘導される、請求項7または8に記載の使用。
【請求項10】
ポリオレフィンが、C原子数3〜6のオレフィンから誘導される、請求項9に記載の使用。
【請求項11】
ポリオレフィンがポリ(イソブテン)である、請求項10に記載の使用。
【請求項12】
ポリオールがモノマー構造であり、3個から10個のC原子並びに1個から6個の第二OH基を含み、但し、OH基の数はC原子1個当たり1個を超えない、請求項1〜11のいずれか一つに記載の使用。
【請求項13】
ポリオールがポリマー構造であり、6個から150個のC原子及び2個から50個の第二OH基を含み、但し、OH基の数はC原子1個当たり最大でも1個である、請求項1〜11のいずれか一つに記載の使用。
【請求項14】
ポリオールが、グリセリン及びモノマー単位数が2〜10のそれのオリゴマーから選択される、請求項1〜11のいずれか一つに記載の使用。
【請求項15】
ポリエステルが次の構造式(A)に相当する、請求項1〜14のいずれか一つに記載の使用。
【化1】
式中、
R
1〜R
4基のうちの一つは、C
16〜C
400アルキルまたはアルケニル基を表し、そして
R
1〜R
4基のうちの残りは、互いに独立して、水素またはC原子数1〜3のアルキル基を表し、
R
5は、C−C単結合またはC原子数1〜6のアルキレン基を表し、
R
16は、少なくとも一つのヒドロキシル基を有する、炭素原子数3〜10の炭化水素基を表し、
nは、1〜100の数を表し、
mは、3〜250の数を表し、
pは、0または1を表し、そして
qは、0または1を表す。
【請求項16】
R1〜R4基のうちの一つが線状C16〜C40アルキルまたはアルケニル基を表す、請求項15に記載の使用。
【請求項17】
R1〜R4基のうちの一つがC41〜C400アルキルまたはアルケニル基を表す、請求項15に記載の使用。
【請求項18】
R16が次の一般式(2)の基を表す、請求項9に記載の使用。
−(CH2)r−(CH(OH))t−(CH2)s− (2)
式中、
tは、1〜6の数を表し、
r、sは、互いに独立して、1〜9の数を表し、そして
t+r+sは、3〜10の数を表す。
【請求項19】
ポリエステルの分子量が、2,000g/モルと100,000g/モルの間である、請求項1〜18のいずれか一つに記載の使用。
【請求項20】
液状炭化水素媒体が、原油または原油から得ることができる留分である、請求項1〜19のいずれか一つに記載の使用。
【請求項21】
液状炭化水素媒体が、石油化学製品であるかまたは伝熱媒体として使用される炭化水素である、請求項1〜20のいずれか一つに記載の使用。
【請求項22】
液状炭化水素媒体が生物由来のものである、請求項1〜21のいずれか一つに記載の使用。
【請求項23】
200と550℃の間の温度で行われる、請求項1〜22のいずれか一つに記載の使用。
【請求項24】
液状炭化水素媒体を100℃と550℃との間の温度で熱処理する間に該媒体の汚染を低減する方法であって、前記熱処理の前に及び/または前記熱処理の間に、請求項1〜19のいずれか一つに定義されるヒドロキシル基含有ポリエステルを液状炭化水素に添加する、前記方法。
【請求項25】
炭化水素の熱処理のためのプラントの耐用期間を長める方法であって、前記熱処理の前に及び/または前記熱処理の間に、請求項1〜19のいずれか一つに定義されるヒドロキシ基含有ポリエステルを、加工すべき炭化水素媒体に添加する、前記方法。
【請求項26】
200〜550℃の温度で進行する、請求項24または25に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高温下での加工、例えば製油所プロセスの時の液状炭化水素の汚染の低減方法に関する。
【背景技術】
【0002】
炭化水素、例えば原油及び石油加工の中間生成物、並びに石油化学製品及び石油化学中間生成物は、加工の時に、一般的に100℃と550℃の間の温度、しばしば200℃と550℃の間の温度に加熱される。
加熱システム及び熱交換システムにおいても、伝熱媒体として使用される炭化水素はこのような温度に曝される。事実上これらの全てのケースにおいて、使用された炭化水素は、高められた温度下において、不所望な分解生成物または副生成物を形成し、これらは、伝熱器の高温の表面上に堆積及び富化し得る。これらの堆積物の形成は、一般的に、比較的不安定の化合物、例えば酸化された及び/または酸化可能な炭化水素、並びにオレフィン性不飽和化合物の存在が原因であるが、高分子量の有機化合物及び無機汚染物もその要因である。具体的なケースでは、堆積及び富化する不純物は、加工すべき原材料または前生成物に既に含まれていることもある。鉱油蒸留物の具体的なケースでは、それに使用された原油が、一般的に、堆積物を招く成分、例えばアルカリ金属及びアルカリ土類金属塩、遷移金属含有化合物もしくは錯体、例えば硫化鉄もしくはポルフィリン類、硫黄含有化合物、例えばメルカプタン類、窒素含有化合物、例えばピロール類、カルボニル基もしくはカルボキシル基含有化合物、並びに多環式芳香族類、例えばアスファルテン類及び/もしくはコークス粒子を含む。更に、加工に使用される炭化水素は、事実上常に少量の溶解した酸素を含む。
【0003】
炭化水素の加工の時に高められた温度で形成し、そして流体と接触する表面上に付着する堆積物は、汚染物(汚染堆積物)と称される。これらは、特に、パイプ、機械または熱交換器の高温の内面に形成する。
【0004】
これらの堆積物によって、上記のプロセスにおいて、パイプライン及び容器の穴が次第に小さくなり、それによってプロセス処理量ばかりでなく、伝熱も損なわれる。しばしば、堆積物はフィルタースクリーン、バルブ及びトラップを閉塞させ、それによって、清浄及びメンテナンスのためのプラントの停止を余儀なくする。加えて、全てのケースにおいて、これらの堆積物は望ましくない副生成物であり、これらは、目的生成物の収量を低減させ、それにより同様にプラントの経済性を低下させる。熱交換システムの場合には、堆積物は、存在する表面上に絶縁層を形成し、これが伝熱を制限してしまう。その結果、これらの堆積物により、たびたび清浄のためのプラントの停止、一部ではそれの交換もが必要となる。それ故、これらの汚染物は、工業的に非常に望ましくない。
【0005】
上記の堆積物は、通常は高分子量材料であり、それらの稠度は、タールからゴム及び“ポップコーン”を介してコークスにまで達し得る。それらの組成は様々な性質であることができ、そして多くの場合に詳細な分析が不可能である。多くの場合に、これらは、コークス様の性質である炭素含有相、ポリマー及び/または縮合物からなる組み合わせを含み、これらは、炭化水素またはそれに含まれる不純物から様々なメカニズムを介して形成されたものである。他の堆積物成分は、第一に塩化マグネシウム、カルシウム及びナトリウムから組成される塩である。この際、ポリマー及び/または縮合物の形成は、加工すべき炭化水素中に汚染物として存在している金属化合物、例えば銅または鉄の化合物による触媒反応が原因である。これらの金属化合物は、例えば、変性性鎖分岐の促進によって炭化水素の酸化速度を加速させ得る。この際生ずるフリーラジカルは、酸化反応及び重合反応を引き起こし得、これは樹脂及び沈降物の形成を招く。この際、多くの場合に、比較的不活性な炭素含有堆積物が、より粘着性の強い縮合物またはポリマーによって封入される。
【0006】
汚染堆積物は、石油化学製品が製造または精製される石油化学の分野において普遍に見られる。この環境での堆積物は、第一には、ポリマーの性質を有し、石油化学的プロセスの経済性に対し劇的に影響を及ぼす。石油化学的なプロセスとしては、例えば、エチレンまたはプロピレンの製造、または塩素化炭化水素の精製などが挙げられる。生物由来原料の加工、例えば脂肪酸及び例えば脂肪酸エステルなどのその誘導体の加工の時にも、汚染が観察される。
【0007】
堆積物の形成を防ぐために、多くの場合に、油溶性の極性窒素化合物が使用される。これは、主に、アルキルもしくはアルケニルコハク酸またはその無水物と、場合によりなお更に誘導体化されているポリアミンとの反応生成物である。
【0008】
例えば、US3271295(特許文献1)は、鉱油精製の時の伝熱器中の金属表面上への堆積物を避けるための、アルキルもしくはアルケニルコハク酸無水物とポリアミンとの反応生成物を開示している。
【0009】
WO2011/014215(特許文献2)は、鉱油の精製のためのプラントにおいて堆積物を防ぐための、ポリアミンとC
10〜C
800アルキルもしくはアルケニルコハク酸無水物とからなるモノ及びビスイミドの使用を開示している。
【0010】
US5342505(特許文献3)は、高められた温度下での加工の間の液状炭化水素中での防汚剤としての、ポリ(アルケニル)スクシンイミドとエポキシアルカノールとの反応生成物の使用を開示している。
【0011】
US5171420(特許文献4)は、液状炭化水素の加熱の時の堆積物を避けるための、アルケニルコハク酸無水物、ポリオール、ヒドロキシル基含有アミン、ポリアルキレンコハク酸イミド及びポリオキシアルキレンアミンからの反応生成物を開示している。実施例で実証されている好ましい実施形態では、強く分岐した構造をもたらす多官能性試薬が使用されている。
【0012】
ジカルボン酸とポリアミンとの反応生成物は通常は比較的小さい分子量を有する、というのも、ジカルボン酸は、第一アミンとの縮合の時には、優先してイミドへと反応し、そしてジアミドは生じないかまたは小割合でしか生じないからである。通常は、縮合は、ポリアミンの第一アミノ基と各々一つのジカルボン酸との反応に制限され、そのため、典型的には、結果生ずる分子量は3,000g/モル以下となる。それ故、汚染を効率的に防ぐために望ましい、より大きな分子量は、この方法では得られない。
【0013】
加えて、生態学的な観点から、窒素含有量ができるだけ少ない添加物を使用することが望ましい。それによって、液状炭化水素の熱処理の際に得られる生成物並びに場合により生ずる副生成物及び残渣の窒素含有量の上昇を低めることができる。液状炭化水素の熱処理自体の時だけでなく、その生じる生成物、副生成物及び残渣のその後の使用の時も、窒素化合物の高められた含有量は、望ましくない副生成物及び二次生成物を招く恐れがある。例えば、それらを燃焼した時に酸化窒素類が生ずる。
【0014】
より高分子量のオリゴマー性またはポリマー性化合物、特により高分子量のオリゴマー性またはポリマー性窒素不含化合物は、高められた温度下での加工中の液状炭化水素の汚染を低減する目的では、これまで開示されていない。
【0015】
アルケニルコハク酸のより高分子量で、加えて窒素を含まない縮合物は、ポリオールとの縮合によって入手可能であるが、これらは、これまで、全く別の用途でしか使用されていない。
【0016】
例えば、EP0809623(特許文献5)は、アルキル−もしくはアルケニルジカルボン酸誘導体とポリアルコールからのオリゴマー性及びポリマー性ビスエステル、並びに可溶化剤、乳化剤及び/または洗浄活性物質としてのそれの使用を開示している。好ましいポリアルコールはグリセリン及びオリゴマー性グリセリンである。
【0017】
WO2008/059234(特許文献6)は、アルキルもしくはアルケニルコハク酸無水物とヒドロキシル基数が少なくとも3のポリオールとをベースとするオリゴエステル及びポリエステル、並びに乳化剤としてのそれの使用を開示している。更に、これらのポリマーは、油田において、気泡掘削流体中の発泡剤として、動的ガスハイドレート抑制剤として、及び水性掘削流体中の潤滑剤として適している。
【0018】
US4216114(特許文献7)は、C
9−18アルキルもしくはアルケニルコハク酸無水物と、OH基数が少なくとも3の水溶性ポリアルキレングリコール及びポリオールからの縮合生成物、並びに油中水型エマルションの分離のためのそれの使用を開示している。
【0019】
US3447916(特許文献8)は、炭化水素油の流動点を降下させるための、アルケニルコハク酸無水物、ポリオール及び脂肪酸からの縮合ポリマーを開示している。これらのポリマーでは、ポリオールのヒドロキシル基は、殆ど完全にエステル化されている。
【0020】
DE−A−1920849(特許文献9)は、炭化水素油の流動点を降下させるための、アルケニルコハク酸無水物、OH基数が少なくとも4のポリオール及び脂肪酸からの縮合ポリマーを開示している。好ましくは、縮合に使用される反応体の化学理論量は、OH基とカルボキシル基のモル数が等しくなるように、すなわち実質的に完全なエステル化が起こるように選択される。
【0021】
WO2011/076338(特許文献10)は、二つの第一OH基と少なくとも一つの第二OH基を含むポリオールと、C
16〜C
40アルキル基またはC
16〜C
40アルケニル基を有するジカルボン酸またはそれの無水物またはそれのエステルとの重縮合物を含む、中間蒸留物用の低温添加剤を開示している。
【0022】
汚染を抑制するためにまたは少なくとも軽減するために技術水準に従い使用される添加剤は、しばしば、それの作用になおも欠点を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0023】
【特許文献1】US3271295
【特許文献2】WO2011/014215
【特許文献3】US5342505
【特許文献4】US5171420
【特許文献5】EP0809623
【特許文献6】WO2008/059234
【特許文献7】US4216114
【特許文献8】US3447916
【特許文献9】DE−A−1920849(
【特許文献10】WO2011/076338
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0024】
それ故、炭化水素の熱処理の時、例えば加工及び精製プラント並びに熱交換システムにおいて装置の壁に難溶性の堆積物が形成するのを効果的に抑制するかまたは少なくとも軽減するための添加剤に対する要望がある。好ましくはこれらは窒素不含であるのがよい。具体的には、この要望は、原油の蒸留において、または蒸留プロセスの際に後に残る鉱油蒸留の留分の二次加工において存在している。
【0025】
驚くべきことに、C
16〜C
400アルキル基またはC
16〜C
400アルケニル基を有するジカルボン酸またはジカルボン酸無水物と、二つの第一OH基及び少なくとも一つの第二OH基を有するポリオールからの特定の重縮合物が上記の課題を解消することが見出された。この際、実質的に線状のポリマー骨格を有するより高分子量の縮合物が特に有用であることが分かった。
【課題を解決するための手段】
【0026】
すなわち、本発明の対象は、二つの第一OH基及び少なくとも一つの第二OH基を含むポリオールと、C
16〜C
400アルキル基またはC
16〜C
400アルケニル基を有するジカルボン酸またはその無水物またはそのエステルとを重縮合することによって製造することができるヒドロキシル基含有ポリエステルの、100〜550℃の温度範囲における液状炭化水素媒体の熱処理の際の防汚剤としての使用である。
【0027】
本発明の更に別の対象の一つは、100℃と550℃の間の液状炭化水素媒体の熱処理の際に該媒体中の汚染を低減する方法であって、熱処理の前及び/または熱処理の間に、二つの第一OH基及び少なくとも一つの第二OH基を含むポリオールを、C
16〜C
400アルキル基またはC
16〜C
400アルケニル基を有するジカルボン酸またはその無水物またはそのエステルと重縮合することによって製造することができるヒドロキシル基含有ポリエステルを、前記液状炭化水素に加える前記方法である。
【0028】
本発明の更に別の対象の一つは、100〜550℃の温度範囲で液状炭化水素媒体を熱処理するためのプラントの耐用期間を長める方法であって、プラント中で加工するべき液状炭化水素媒体に、その熱処理の前及び/または熱処理の間に、二つの第一OH基及び少なくとも一つの第二OH基を含むポリオールと、C
16〜C
400アルキル基またはC
16〜C
400アルケニル基を有するジカルボン酸またはその無水物またはそのエステルとを重縮合することによって製造することができるヒドロキシル基含有ポリエステルを添加する前記方法である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
上記ヒドロキシル基含有ポリエステルは、一般的に、C
16〜C
400アルキル基もしくは−アルケニル基(以下纏めて、C
16〜C
400アルキ(ケニ)ル基とも称する)含有ジカルボン酸とポリオールの第一ヒドロキシル基とを重縮合することによって得られる。第二OH基が実質的にエステル化されずに残ることが好ましい。すなわち、ヒドロキシル基含有ポリエステルの好ましい構造は、例えば、式(A)によって表すことができる。
【0031】
式中、
R
1〜R
4基のうちの一つは、C
16〜C
400アルキル基または−アルケニル基を表し、そして
R
1〜R
4基のうちの残りは、互いに独立して、水素またはC原子数1〜3のアルキル基を表し、
R
5は、C−C結合またはC原子数1〜6のアルキレン基を表し、
R
16は、炭素原子数3〜10の少なくとも一つのヒドロキシル基を有する炭化水素残基を表し、
nは、1〜100の数を表し、
mは、3〜250の数を表し、
pは、0または1を表し、そして
qは、0または1を表す。
【0032】
ヒドロキシル基含有ポリエステルA)の製造に適した好ましいC
16〜C
400アルキル及び/または−アルキケニル基含有ジカルボン酸は、一般式(1)に相当する。
【0034】
式中、
R
1〜R
4基のうちの一つは、C
16〜C
400アルキルまたは−アルケニル基を表し、そして
R
1〜R
4基のうちの残りは、互いに独立して、水素またはC原子数1〜3のアルキル基を表し、そして
R
5は、C−C結合またはC原子数1〜6のアルキレン基を表す。
【0035】
特に好ましくは、R
1〜R
4基のうちの一つはC
16〜C
400アルキルまたは−アルケニル基を表し、一つはメチル基を表し、そして残りは水素を表す。具体的な実施形態の一つでは、R
1〜R
4基のうちの一つはC
16〜C
400アルキルまたは−アルケニル基を表し、そして残りは水素を表す。特に好ましい実施形態の一つでは、R
5はC−C単結合を表す。特に、R
1〜R
4基のうちの一つはC
16〜C
400アルキルまたは−アルケニル基を表し、残りのR
1〜R
4基は水素を表し、そしてR
5はC−C単結合を表す。
【0036】
アルキル−及び/またはアルケニル基含有ジカルボン酸またはその無水物の製造は、既知の方法に従い行うことができる。例えば、エチレン性不飽和ジカルボン酸をオレフィンとまたはクロロアルカンと一緒に加熱することによって製造することができる。通常は100℃と250℃の間の温度で行われる、エチレン性不飽和ジカルボン酸またはその無水物へのオレフィンの熱付加(エン反応)が好ましい。この際生ずるアルケニル基含有ジカルボン酸及びジカルボン酸無水物は、水素化してアルキル基含有ジカルボン酸及びジカルボン酸無水物にすることができる。オレフィンとの反応に好ましいジカルボン酸及びその無水物は、マレイン酸及び特に好ましくはマレイン酸無水物である。更に、イタコン酸、シトラコン酸及びそれの無水物、並びに上記の酸のエステル、特に例えばメタノール、エタノール、プロパノール及びブタノールなどの低級C
1〜C
8アルコールとのエステルが適している。
【0037】
第一の好ましい実施形態では、R
1〜R
4基のうちの一つは、線状C
16〜C
40アルキルまたは−アルケニル基を表す。このようなアルキ(ケニ)ル基含有ジカルボン酸またはそれの無水物の製造のためには、好ましくはC原子数16〜40のオレフィン、特にC原子数18〜36のオレフィン、例えばC原子数19〜32のオレフィンが使用される。特に好ましい実施形態の一つでは、異なる鎖長を有するオレフィンの混合物が使用される。好ましくは、C原子数18〜36のオレフィンの混合物、例えばC
20−C
22、C
20−C
24、C
24−C
28、C
26−C
28、C
30−C
36の範囲のオレフィンの混合物が使用される。オレフィン混合物は、上記の具体的な範囲と比べてより短鎖の及び/またはより長鎖のオレフィン、例えばヘキセン、ヘプテン、オクテン、ノネン、デセン、ウンデセン、ドデセン、テトラデセン及び/またはC原子数が40超のオレフィンを副次的な量で含むことができる。しかし、好ましくは、オレフィン混合物中の前記のより短鎖の及び長鎖のオレフィンの割合は、10重量%以下である。特に好ましくは、これは0.1〜8重量%、例えば1〜5重量%の間である。
【0038】
C
16〜C
40アルキ(ケニ)ル基含有ジカルボン酸またはそれの無水物の製造に特に好ましいオレフィンは、線状かまたは少なくともほぼ線状のアルキル鎖を有する。線状もしくほぼ線状とは、オレフィンの少なくとも50重量%、好ましくは70〜99重量%、特に75〜95重量%、例えば80〜90重量%が、C原子数16〜40、特にC原子数18〜36、例えばC原子数19〜32の線状部分を有することと理解される。具体的な実施形態の一つでは、鎖末端にC=C二重結合があるα−オレフィンが使用される。オレフィンとしては、特に工業的なアルケン混合物が有用であることが分かった。これらは、好ましくは、少なくとも50重量%、特に好ましくは60〜99重量%、特に70〜95重量%、例えば75〜90重量%の末端二重結合を含む(α−オレフィン)。その他、これらは、内部二重結合を有するオレフィン、例えば構造要素R
17−CH=C(CH
3)
2(R
17は、C原子数12〜36、特にC原子数14〜32、例えばC原子数15〜28のアルキル基を表す)を有するビニリデン二重結合含有オレフィンを50重量%まで、好ましくは1〜40重量%、特に5〜30重量%、例えば10〜25重量%の割合で含むことができる。更に、技術的な理由から存在する副成分、例えばパラフィンが副次的な量で、しかし好ましくは5重量%以下の量で存在し得る。特に好ましいものは、C
20〜C
24の範囲のC鎖長を有する線状α−オレフィンを少なくとも75重量%含むオレフィン混合物である。
【0039】
更に別の好ましい実施形態の一つでは、R
1〜R
4基のうちの一つはC
41〜C
400アルキルまたは−アルケニル基を表し、特にC
50〜C
300、例えばC
55〜C
200アルキルまたは−アルケニル基を表す。好ましくは、このアルキ(ケニ)ル基は分岐状である。更に好ましくは、これらのC
41〜C
400アルキ(ケニ)ル基は、炭素原子数が3〜6、特に3、4または5のモノオレフィンの重合によって製造することができるポリオレフィンから誘導される。ポリオレフィンのベース構造としての特に好ましいモノオレフィンは、プロピレン及びイソブテンであり、これらからポリ(プロピレン)及びポリ(イソブテン)がポリオレフィンとして生ずる。好ましいポリオレフィンは、少なくとも50モル%、特に少なくとも70モル%、就中少なくとも80モル%、例えば少なくとも85モル%のアルキルビニリデン含有率を有する。アルキルビニリデン含有率とは、ポリオレフィン中の式(3)の化合物に由来する構造単位の含有率のことである。
【0041】
式中、R
6またはR
7は、メチル、エチルまたはプロピルを表し、特にメチルを表し、そして他の基は、C
3〜C
6オレフィンのオリゴマーである。アルキルビニリデン含有率は、例えば、
1H−NMR分光法により決定することができる。ポリオレフィン中の炭素原子の数は41と400の間である。本発明の好ましい実施形態の一つでは、炭素原子数は50と3000の間、特に55と200の間である。C
41〜C
400アルキルまたは−アルケニル基がベースとするポリオレフィンは、例えばイオン重合によって得ることができ、そして商業製品として入手できる(例えばGlissopal(登録商標)、様々なアルキルビニリデン含有率及び分子量を有するBASF社のポリイソブテン)。異なるポリオレフィンの混合物も本発明において好適であり、この際、これらは、例えば、それらがベースとするモノマー、分子量及び/またはアルキルビニリデン含有率に関して異なることができる。
【0042】
好ましいヒドロキシル基含有ポリエステルは、C
16〜C
400アルキルまたは−アルケニル基含有アルキルまたはアルケニルコハク酸及び/またはその無水物と、二つの第一ヒドロキシル基及び少なくとも一つの第二ヒドロキシル基を有するポリオールとの反応によって製造することができる。
【0043】
好ましいポリオールは、モノマー性、オリゴマー性またはポリマー性構造であることができる。ここで、ポリマー及びオリゴマーは、まとめてポリマーと称する。式A)中のR
16は、好ましくは、以下の一般式(2)の基を表す。
【0044】
−(CH
2)
r−(CH(OH))
t−(CH
2)
s− (2)
【0045】
式中、
tは、1〜6の数を表し、
r及びsは、互いに独立して、1〜9の数を表し、そして
t+r+sは、3〜10の数を表す。
【0046】
モノマー性ポリオールでは、式A)中のnは1を表す。好ましいモノマー性ポリオールは、3個から10個、特に4個から6個のC原子を有する。更に、これらは、少なくとも1つの、好ましくは1つから6つの、例えば2つから4つの
第二OH基を有するが、ただしC原子1つあたり最大でも1つのOH基である。適当なモノマー性ポリオールは、例えば、グリセリン、1,2,4−ブタントリオール、1,2,6−トリヒドロキシヘキサン、並びに還元炭水化物及びこれの混合物である。ここで還元炭水化物とは、炭水化物から誘導されかつ二つの第一OH基並びに二つまたはそれ超の第二OH基を有するポリオールと解される。特に好ましい還元炭水化物は、4つから6つのC原子を有する。還元炭水化物の例は、エリトリトール、トレイトール、アドニトール、アラビトール、キシリトール、ズルシトール、マンニトール及びソルビトールである。特に好ましいモノマー性ポリオールはグリセリンである。
【0047】
ポリマー性ポリオールにおいて、式A)中のnは2〜100の数、好ましくは2〜50の数、特に好ましくは3〜25の数、就中4〜20の数を表す。好ましいポリマー性ポリオールは、6個から150個、特に8個から100個、就中9個から50個のC原子を有する。これらは、少なくとも1個、好ましくは2個から50個、特に3個から15個の第二OH基を有するが、但しC原子一つあたりOH基数は最大で1である。本発明において適したポリマー性ポリオールは、例えば、二つの第一OH基及び少なくとも一つの第二OH基を有するポリオールの重縮合によって製造することができる。好ましいポリマー性ポリオールはポリ(グリセリン)である。ポリ(グリセリン)とは、特に、グリセリンから重縮合によって誘導できる構造と解される。本発明において好ましいポリ(グリセリン)の縮合度は2と50の間、特に好ましくは3と25の間、とりわけ4と20の間、例えば5と15の間である。
同様に、縮合度が2と10の間であるポリグリセリンも好ましい。
【0048】
ポリ(グリセリン)の製造法は技術水準において既知である。これは、例えば、グリセリンに2,3−エポキシ−1−プロパノール(グリシド)を付加することによって行うことができる。更に、ポリ(グリセリン)の製造は、それ自体既知のグリセリンの重縮合によって行うことができる。重縮合の際の反応温度は一般的に150℃と300℃の間、好ましくは200℃と250℃の間である。グリセリンの重縮合は、通常は大気圧下で行われる。触媒作用をする酸としては、例えばHCl、H
2SO
4、有機スルホン酸類またはH
3PO
4を挙げることができ、触媒作用をする塩基としては、例えばNaOHまたはKOHを挙げることができる。触媒は、反応混合物の重量を基準にして好ましくは0.01〜10重量%、特に好ましくは0.1〜5重量%の量で反応混合物に添加される。グリセリンの重縮合は、溶媒を用いないで、または溶媒の存在下にも行うことができる。重縮合を溶媒の存在下に行う場合には、反応混合物中でのその割合は、好ましくは0.1〜70重量%、例えば10〜60重量%である。この際、好ましい有機溶媒は、アルキ(ケニ)ル含有ジカルボン酸、その無水物またはそのエステルとポリオールとの縮合にも使用されかつそれに好ましい溶媒である。グリセリンの重縮合は、一般的に3〜10時間必要とする。この方法は、他のポリオールの重縮合にも適宜適用可能である。
【0049】
アルキ(ケニ)ル含有ジカルボン酸、その無水物またはそのエステルとポリオールとからヒドロキシル含有ポリエステルへの反応は、好ましくは1:2〜2:1のモル比、特に好ましくは1:1.5〜1.5:1のモル比、特に1:1.2〜1.2:1のモル比、例えば当モルで行われる。特に好ましくは、反応は、過剰のポリオールを用いて行われる。この際、使用されるジカルボン酸の量を基準として1〜10モル%、特に1.5〜5モル%のモル過剰が特に有用であることが分かった。
【0050】
アルキル基含有ジカルボン酸、それの無水物またはそれのエステルとポリオールとの重縮合は、好ましくは、C
16〜C
400アルキルまたは−アルケニル置換ジカルボン酸またはそれの無水物またはエステルとポリオールとを、100℃を超える温度、好ましくは120と320℃の間の温度、例えば150と290℃の間の温度に加熱することによって行われる。ヒドロキシル基含有ポリエステルの作用効果に重要な分子量の調節のためには、通常は、反応水または反応アルコールの除去が必要であり、これは、例えば、蒸留して分離することよって行うことができる。適当な有機溶媒を用いた共沸分離もこのために適している。アルキ(ケニ)ル基含有ジカルボン酸、それの無水物またはそれのエステルとポリオールとの重縮合のための好ましい溶媒は、高沸点の低粘性有機溶媒である。特に好ましい溶媒は、脂肪族及び芳香族炭化水素並びにそれらの混合物である。溶媒として好ましい脂肪族炭化水素は、C原子数が9〜20、特にC原子数が10〜16である。これらは、線状、分枝状及び/または環状であることがきる。好ましくは、これらは飽和状または少なくともほぼ飽和状である。溶媒として好ましい芳香族炭化水素は、C原子数が7〜20、特に8〜16、例えばC原子数が9〜13である。好ましい芳香族炭化水素は、単環式、二環式、三環式及び多環式芳香族類である。好ましい実施形態の一つでは、これらは、一つまたはそれ超の、例えば二つ、三つ、四つ、五つまたはそれ超の置換基を有する。複数の置換基がある場合には、これらは同一かまたは異なることができる。好ましい置換基は、C原子数が1〜20、特に1〜5のアルキル基、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、tert−ペンチル基及びネオペンチル基である。適当な芳香族類の例は、アルキルベンゼン及びアルキルナフタレンである。例えば、脂肪族及び/または芳香族炭化水素または炭化水素混合物、例えばベンジン留分、燈油、デカン、ペンタデカン、トルエン、キシレン、エチルベンゼンまたは商業的な溶媒混合物、例えばソルベントナフサ、Shellsoll(登録商標)AB、Solvesso(登録商標)150、Solvesso(登録商標)200、Exxsol(登録商標)−、ISOPAR(登録商標)−及びShellsol(登録商標)D−タイプが特に適している。鉱油をベースとする溶媒の他に、再生可能な原料をベースとする溶媒、並びに合成炭化水素、例えばフィッシャー・トロプシュ法から得ることができる合成炭化水素も溶媒として適している。上記の溶媒の混合物も適している。重縮合が溶媒の存在下に行われる場合には、反応混合物中でのその割合は、好ましくは1〜75重量%、特に10〜70重量%、例えば20〜60重量%である。好ましくは、縮合は溶媒を用いないで行われる。
【0051】
重縮合を加速するためには、これを均一系触媒、不均一系触媒またはそれらの混合物の存在下で行うことが多くの場合に有用であることが判明した。この際、触媒としては、酸性の無機、有機金属または有機触媒及びこれらの触媒の複数種の混合物が好ましい。
【0052】
本発明の意味において、酸性の無機触媒としては、例えば硫酸、リン酸、ホスホン酸、次亜リン酸、硫酸アルミニウム水和物、ミョウバン、酸性シリカゲル及び酸性水酸化アルミニウムを挙げることができる。例えば一般式Al(OR
15)
3のアルミニウム化合物及び一般式Ti(OR
15)
4のチタネートも酸性無機触媒として使用可能であり、式中、R
15基は、それぞれ同じかまたは異なることができ、そして互いに独立して、C
1〜C
10アルキル基、例えばメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、n−ペンチル、イソペンチル、sec−ペンチル、ネオペンチル、1,2−ジメチルプロピル、イソアミル、n−ヘキシル、sec−ヘキシル、n−ヘプチル、n−オクチル、2−エチルヘキシル、n−ノニルもしくはn−デシル、C
3〜C
12シクロアルキル基、例えばシクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、シクロノニル、シクロデシル、シクロウンデシル、及びシクロドデシルから選択され、好ましいものはシクロペンチル、シクロヘキシル及びシクロヘプチルである。好ましくは、Al(OR
15)
3及びTi(OR
15)
4中のR
15基は、それぞれ同じであり、かつイソプロピル、ブチル及び2−エチルヘキシルから選択される。
【0053】
好ましい酸性有機金属触媒は、例えば、ジアルキルスズ酸化物(R
15)
2SnO(式中、R
15は上記で定義した通りである)から選択される。酸性有機金属触媒の特に好ましい代表物は、ジ−n−ブチルスズオキシドであり、これはいわゆるオキソスズとしてまたはFascat(登録商標)ブランドとして商業的に入手可能である。
【0054】
好ましい酸性有機触媒は、例えばホスフェート基、スルホン酸基、スルフェート基またはホスホン酸基を有する酸性有機化合物である。特に好ましいスルホン酸は、少なくとも一つのスルホン酸基、及びC原子数が1〜40、好ましくはC原子数が3〜24の、少なくとも一つの飽和もしくは不飽和の線状、分枝状及び/または環状炭化水素基を含む。特に好ましいものは芳香族スルホン酸、特に一つまたはそれ超のC
1〜C
28アルキル基、特にC
3〜C
22アルキル基を有するアルキル芳香族モノスルホン酸である。適当な例は、メタンスルホン酸、ブタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、キシレンスルホン酸、2−メシチレンスルホン酸、4−エチルベンゼンスルホン酸、イソプロピルベンゼンスルホン酸、4−ブチルベンゼンスルホン酸、4−オクチルベンゼンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、ジドデシルベンゼンスルホン酸、及びナフタレンスルホン酸である。酸性イオン交換体、例えば約2モル%のジビニルベンゼンで架橋されたスルホン酸基含有ポリ(スチレン)樹脂も酸性有機触媒として使用することができる。
【0055】
本発明の方法の実施に特に好ましいものは、ホウ酸、リン酸、ポリリン酸及びポリスチレンスルホン酸である。特に好ましいものは、一般式Ti(OR
15)
4のチタネート、具体的にはチタンテトラブチラート及びチタンテトライソプロピラートである。
【0056】
酸性の無機、有機金属または有機触媒を使用することを望む場合には、本発明では、0.01〜10重量%、好ましくは0.02〜2重量%の触媒が使用される。具体的な実施形態の一つでは、縮合は触媒を添加しないで行われる。
【0057】
好ましい実施形態の一つでは、反応混合物中において、分子量の調節のために、副次的な量のアルキ(ケニ)ル基含有ジカルボン酸、その無水物またはそのエステルを、C
1〜C
18モノカルボン酸、好ましくはC
2〜C
16モノカルボン酸、特にC
3〜C
14モノカルボン酸、例えばC
4〜C
12モノカルボン酸で置き換える。しかし、この際、最大でも20モル%、好ましくは0.1〜10モル%、例えば0.5〜5モル%のアルキ(ケニ)ル基含有ジカルボン酸、それの無水物またはそれのエステルが、一種以上のモノカルボン酸と置き換えられる。更に、副次的な量、例えば10モル%まで、特に0.01〜5モル%のアルキ(ケニ)ルコハク酸またはそれの無水物も、他のジカルボン酸、例えばコハク酸、グルタル酸、マレイン酸及び/またはフマル酸で置き換えることができる。特に好ましくは、ヒドロキシル基含有ポリエステルは、モノカルボン酸の不在下に製造される。
【0058】
他の好ましい実施形態の一つでは、反応混合物中において、分子量の調節のために、副次的な量のポリオールを、C
1〜C
30モノアルコール、好ましくはC
2〜C
24モノアルコール、特にC
3〜C
18モノアルコール、例えばC
4〜C
12モノアルコールと置き換える。この際、好ましくは、最大でも20モル%、特に好ましくは0.1〜10モル%、例えば0.5〜5モル%のポリオールを、一種以上のモノアルコールによって置き換える。特に好ましくは、ヒドロキシル基含有ポリエステルは、モノアルコールの不在下に製造される。更に、二つの第一ヒドロキシル基及び少なくとも一つの第二ヒドロキシル基を含有するポリオールは、最大でも10モル%、例えば0.01〜5モル%の副次的な量で、一種以上のジオールで置き換えることもできる。この際、例えばエチレングリコール、プロピレングリコール及び/またはネオペンチルグリコールなどのジオールが好ましい。特に好ましくは、ヒドロキシル基含有ポリエステルは、ジオールの不在下に製造される。
【0059】
他の好ましい実施形態の一つでは、反応混合物中において、分子量を高めるために、二つの第一OH基及び少なくとも一つの第二OH基を含有するポリオールの副次的な量を、三つ以上の第一OH基、例えば四つ、五つ、六つまたは七つ以上の第一OH基を有するポリオールで置き換える。この際好ましくは、最大でも10モル%、特に好ましくは0.1〜8モル%、例えば0.5〜4モル%の二つの第一OH基及び少なくとも一つの第二OH基を含有するポリオールが、三つ以上の
第一OH基を有するポリオールで置き換えられる。三つ以上の第一OH基を有する適当なポリオールは、例えばトリメチロールエタン、トリメチロールプロパン及びペンタエリトリトールである。
【0060】
本発明に従い使用されるヒドロキシル基含有ポリエステルの平均縮合度は、好ましくは4と200の間、特に好ましくは5と150の間、とりわけ7と100の間、就中10と70の間、例えば15と50の間の、ジカルボン酸及びポリオールからの繰り返し単位の数である。この際、縮合度とは、式(A)のm+p+qの合計であると解される。ヒドロキシル基含有ポリエステルのGPCを用いてTHF中でポリ(エチレングリコール)標準に対して決定した重量平均分子量Mwは、好ましくは2,000g/モルと600,000g/モルの間である。C
16〜C
40アルキ(ケニ)ル基含有ジカルボン酸から誘導されたポリエステルでは、重量平均分子量Mwは、特に好ましくは2,000と100,000g/モルの間、特に3,000と50,000g/モルの間、例えば4,000と20,000g/モルの間である。C
41〜C
400アルキ(ケニ)ル基含有ジカルボン酸から誘導されるポリエステルでは、重量平均分子量Mwは、特に好ましくは3,000と500,000g/モルの間、特に5,000と200,000g/モルの間、とりわけ8,000と150,000g/モルの間、例えば10,000と100,000g/モルの間である。
【0061】
好ましくは、ヒドロキシル基含有ポリエステルの酸価は40mg/KOH/g未満、特に好ましくは30mgKOH/g未満、例えば20mgKOH/g未満である。酸価は、例えば、キシレン/イソプロパノール中のアルコール性テトラ−n−ブチルアンモニウム水酸化物溶液を用いたポリマーの滴定によって決定することができる。更に、該ポリエステルのヒドロキシル価は、好ましくは40と500mgKOH/gの間、特に好ましくは50と300mgKOH/gの間、特に60と250mgKOH/gの間である。ヒドロキシル価は、遊離のOH基をイソシアネートと反応させた後に
1H−NMR分光法を用いて、生じたウレタンの定量的決定によって求めることができる。
【0062】
好ましくは、本発明に従い使用されるヒドロキシル基含有ポリエステルは窒素を含まない。本発明において窒素を含まないとは、それの窒素含有率が1,000重量ppm以下、特に好ましくは100重量ppm以下、特に10重量%以下、例えば1重量ppm以下であることを意味する。窒素含有率は、例えばケルダール法により決定することができる。
【0063】
本発明において「液状炭化水素媒体」という用語は、多種多様な石油炭化水素並びに石油化学製品を表す。例えば、中でも、原油及びそれから得ることができる留分、例えばナフサ、ガソリン、燈油、ディーゼル、ジェット燃料、加熱油、軽油、減圧蒸留残油を含む石油炭化水素原料がこの定義に包含される。石油化学製品の例は、オレフィン系またはナフテン系プロセス流、芳香族炭化水素及びそれの誘導体、エチレンジクロライド及びエチレングリコールである。同様に、伝熱媒体として使用される炭化水素、例えば縮合及び/または置換芳香族類も“液状炭化水素媒体”という用語に包含される。更に、生物由来(バイオ)原料並びに生物由来原料を加工して得ることができる製品、例えば動物及び植物油脂及びそれの誘導体、例えば脂肪酸アルキルエステルもこの定義に包含される。また、液状炭化水素媒体は、炭化水素から構成されていない成分、例えば塩、ミネラル及び有機金属化合物を含むことができる。
【0064】
本発明に従い使用されるポリエステルは、0.5〜5,000重量ppm、特に好ましくは1.0〜1,000重量ppm、例えば2〜500重量ppmの量で液状炭化水素媒体に加えられる。該ポリエステルは、液状炭化水素媒体中に分散または溶解することができる。好ましくはこれらは溶解される。
【0065】
本発明に従い使用されるポリエステルは、より良好な取り扱い性のために、好ましくは、極性または非極性有機溶媒中に溶解もしくは分散して、及び濃厚物として、液状炭化水素媒体に加えられる。この際、好ましい溶媒は、ジカルボン酸とポリオールとの縮合反応用の溶媒として既に挙げた溶媒及び溶媒混合物である。特に好ましいものは芳香族溶媒である。好ましくは、濃厚物中のポリエステルの割合は、5〜95重量%、特に好ましくは10〜80重量%、特に20〜70重量%、例えば25〜60重量%である。
【0066】
液状炭化水素媒体へのポリエステルの添加は、好ましくは、その熱処理の前に行われる。これは、例えば液状炭化水素媒体の貯蔵容器中に非連続的に、または熱処理プラントへの供給ライン中に連続的に行うことができる。好ましくはこれは、液状炭化水素媒体の温度が、熱処理の最大温度よりも少なくとも10℃低い箇所、特に少なくとも20℃低い箇所、例えば少なくとも50℃低い箇所で行われる。高粘性の炭化水素媒体の時は特に、液状炭化水素媒体中へのポリエステルの混入を、静的または動的
混合装置を用いて援助することが多くの場合に有用であることが分かった。
【0067】
ヒドロキシル基含有ポリエステルの本発明による使用、及びそれらを利用する方法は、100℃超、
好ましくは100〜550℃、特に150と500℃の間、とりわけ200℃と480℃の間、例えば250℃と450℃の間での液状炭化水素媒体の加工または処理の時に格別な利点を示す。
【0068】
本発明に従い使用されるポリエステルは、一種以上の他の添加剤と一緒に使用することができる。好ましい他の添加剤は、流動点降下剤及び解乳化剤であり、後者は、特に、アルコキシル化されたアルキルフェノール−アルデヒド樹脂をベースとする。
【0069】
液状炭化水素媒体の熱処理の際のヒドロキシル基含有ポリエステルの本発明による使用は、従来技術の添加剤よりも優れた汚染の減少及び多くの場合に、それの大幅な抑制または一部ではそれどころか完全な抑制をももたらす。それによって、液状炭化水素の加工の時のエネルギー要求量が少なくなり、及びプラントの処理量並びに目的生成物の収量が高められる。
【0070】
本発明による方法は、一般的に、比較的高い温度での液状炭化水素媒体の加工の時の汚染の軽減または多くの場合に汚染の抑制にも適している。この際、方法のエネルギー要求量は低められ、そしてプラントの処理量並びに目的生成物の収量は高められる。軽減された汚染によって、堆積物を除去するためのメンテナンスのための操業停止の頻度は低められ、それ故、プラントの利用性が高められる。
【0071】
例えば、本発明による方法は、原油の蒸留の時、原油加工の中間生成物の加工の時、及び石油化学製品の加工の時、並びに石油化学中間生成物、例えばガス、油及び改質供給原料、塩素化炭化水素及びオレフィンプラントからの液状生成物、例えば脱エタン化からの底部相の加工の時に、汚染の軽減のために首尾良く使用された。同様に、該方法は、熱交換システムの“熱側”に加熱媒体して使用される炭化水素の汚染の軽減に及び多くの場合に汚染の抑制に首尾良く使用された。
【0072】
液状炭化水素の熱処理の時のそれの汚染を抑制または少なくとも軽減させることについての本発明に従い使用される添加剤の適性は、例えば、商業的に入手できるHLPS装置(高温液体プロセスシミュレーション)を用いて測定することができる。この際、熱処理すべき油は、中に加熱要素がある毛管を通して連続的にポンプ輸送される。汚染によって、次第に加熱要素上に堆積物が形成し、これが伝熱を損ねそして毛管の圧力低下を招く。汚染の程度の評価は、例えば、毛管の出口での温度低下を介して行うことができる。この際、試験期間の間の大きな温度低下は汚染の発生を示す。このような測定は、熱交換器での油の汚染傾向を評価するための目安と一般に見なされている。
【実施例】
【0073】
規定の組成を有する1−アルケンまたはポリ(イソブテン)の商業的に入手可能な混合物をα−オレフィンとして使用した。酸価は、反応混合物のアリコート部を、キシレン/イソプロパノール中のアルコール性テトラ−n−ブチルアンモニウム水酸化物溶液を用いて滴定することによって決定した。ヒドロキシル価は、ポリマーの遊離のOH基をイソシアネートと反応させた後に、
1H−NMR分光法を用いて、生じたウレタンの定量的決定によって求めた。記載の値は、溶媒を含まないポリマーの値である。分子量は、ポリ(エチレングリコール)標準に対するTHF中での親油性ゲル透過クロマトグラフィ及びRIデテクターを用いた検出を使用して決定した。
【0074】
使用したポリエステル:
【0075】
P1)当モル割合のC
20−24アルケニルコハク酸無水物(主成分として43%C
20オレフィン、35%C
22オレフィン及び17%C
24オレフィンを含み、この際90%がαオレフィンであり、7.5%が線状内部オレフィンである工業等級のC
20−24オレフィンと無水マレイン酸との熱縮合によって製造されたもの)とグリセリンとからできているコポリマー。上記反応体は、Shellsol(登録商標)AB(約185〜215℃の沸点範囲を有する芳香族溶媒混合物)中の50%濃度溶液として、攪拌しながら、酸価が一定となるまで150℃に加熱した。この際生ずる水は留去した。こうして製造されたポリマーの酸価は、7.8mgKOH/gであり、ヒドロキシル価は98mgKOH/gであり、そして重量平均分子量は6,100g/モルであった。
【0076】
P2)当モル割合のC
20/24アルケニルコハク酸無水物(主成分として43%C
20オレフィン、35%C
22オレフィン及び17%C
24オレフィンを含み、この際90%がα−オレフィンであり、7.5%が線状内部オレフィンである工業等級のC
20/24オレフィンと無水マレイン酸との熱縮合によって製造されたもの)と平均縮合度が3のポリ(グリセリン)とからできた、例P1)と同様にして製造されたコポリマー。このポリマーの酸価は6.5mgKOH/gであり、ヒドロキシル価は195mgKOH/gであり、そして平均重量分子量は8,700g/モルであった。
【0077】
P3)当モル割合のC
26/28アルケニルコハク酸無水物(主成分として57%C
26オレフィン、39%C
28オレフィン及び2.5%C
30+オレフィンを含み、この際、85%がα−オレフィンであり、4%が線状内部オレフィンであり、そして9%が分岐状オレフィンである工業等級のC
26−28オレフィンと無水マレイン酸との熱縮合によって製造されたもの)とグリセリンとからできている、例P1)と同様にして製造されたコポリマー。このポリマーの酸価は10.4mgKOH/gであり、ヒドロキシル価は68mgKOH/gであり、そして重量平均分子量は9,100g/モルであった。
【0078】
P4)例P1に記載のC
20/24アルケニルコハク酸無水物、0.7モル当量のグリセリン及び0.3モル当量のベヘン酸からできたコポリマー。このポリマーの酸価は15mgKOH/gであり、ヒドロキシル価は32mgKOH/gであり、そして重量平均分子量は1,800g/モルであった。
【0079】
P5)例P1と同様にして、当モル割合のC
20−24アルケニルコハク酸無水物とエチレングリコールとからできたコポリマー。こうして製造されたポリマーの酸価は、8.2mgKOH/gであり、ヒドロキシル価は2mgKOH/gであり、そして重量平均分子量は5,700g/モルであった(比較例)。
【0080】
P6)2モル当量のトリエチレンテトラミンと反応させた、例P1に記載のC
20−24アルケニルコハク酸無水物。反応体は、Shellsol AB中の50%濃度溶液として、攪拌しながら、酸価が一定となるまで150℃に加熱した。この際生じた水は留去した。こうして製造されたポリマーの酸価は10.2mgKOH/gであり、そして重量平均分子量は1,000g/モルであった(比較例)。
【0081】
P7)当モル割合のポリ(イソブテニル)コハク酸無水物(平均分子量Mnが1,000g/モルでありかつアルキルビニリデン含有率が87モル%のポリ(イソブテン)と無水マレイン酸との熱縮合によって製造されたもの)とグリセリンとからできている、例P1)と同様にして製造されたコポリマー。このポリマーの酸価は8.6mgKOH/gであり、ヒドロキシル価は47mgKOH/gであり、そして重量平均分子量は14,000g/モルであった。
【0082】
P8)当モル割合のポリ(イソブテニル)コハク酸無水物(平均分子量Mnが2,300g/モルでありかつアルキルビニリデン含有率が81モル%のポリ(イソブテン)と無水マレイン酸との熱縮合によって製造されたもの)と平均縮合度が5のポリ(グリセリン)とからできている、例P1)と同様にして製造されたコポリマー。このポリマーの酸価は7.8mgKOH/gであり、ヒドロキシル価は110mgKOH/gであり、そして重量平均分子量は21,000g/モルであった。
【0083】
高温の表面上での鉱油の汚染の抑制または軽減の能力に関しての添加物の効果を、Alcor社製の改造した高温液体プロセスシミュレーション(HLPS)装置を用いて試験した。このHLPS装置中に、試験すべき油を、攪拌及び加熱された貯蔵容器から、特殊鋼製毛管(=加熱毛管)中に据え付けられた電気加熱された加熱要素を介して連続的にポンプ輸送し、その後、貯蔵容器中に戻した。試験中、一方では、加熱のスイッチを入れた後に(加熱要素の表面温度は約400℃であった)達成される、特殊鋼製毛管の出口での油の最大温度を記録した(T1)。他方で、5時間の試験期間の後の同じ箇所での油の温度を記録した(T2)。汚染によって加熱要素上に形成した堆積物が低い熱伝導率を有するので、最初に達成された最大温度は間接的に汚染の程度と相関し(低い開始温度T1は、直ぐに始まった汚染を示唆する)、そしてT2とT1の温度差は直接的に汚染の程度と相関する。
【0084】
各々の試験において、約500mlの被験油試料を貯蔵容器中に充填し、そしてポンプ輸送性をよくするために約150℃に加温した。次いで、この油を、3ml/分の体積流量で、露呈した表面を有する清潔な加熱要素を備えた特殊鋼製毛管に通してポンプ輸送した。次いで、加熱要素を、試験油1では約400℃の温度に、試験2では約375℃の温度に、そして試験油3では約390℃の温度に加熱し、そしてその結果、毛管の出口で達した油の最大温度を記録した(T1)。5時間の実行時間の後、次いで特殊鋼製毛管の末端に隣する油温度(T2)を記録し、そして試験を終了した。高い最大温度T1及び低いΔT(ΔT=T2−T1)は、加熱要素の表面が絶縁性堆積物で僅かにしか覆われていないこと、それゆえ、汚染の有効な抑制を示している。
【0085】
以下の試験油を、添加剤の汚染低減効果の評価に使用した。
【0086】
【表1】
【0087】
粘度の決定はASTM D−445に従い、密度の決定はDIN EN ISO 12185に従い行った。流動点は、ASTM D−97に従い決定した。アスファルテン含有率の決定はIP 143に従い行った。
【0088】
試験油1での試験結果
【0089】
【表2】
【0090】
試験油2での試験結果
【0091】
【表3】
【0092】
試験油3での試験結果
【0093】
【表4】
【0094】
本発明の方法を使用した試験において5時間の反応期間の後に観察された温度低下は、他の方法または添加剤を使用した比較試験と比べて明らかに小さい。加えて、最初に、一般的により高い温度が観察される。どちらも、該添加剤またはそれらを利用した方法の本発明の使用の場合の加熱要素上でのより少ない堆積物を、それ故、汚染の効果的な抑制を意味している。応じて、本発明による方法は、堆積物を除去するためのプラントのメンテナンスを必要とする頻度が少なく、それ故、プラントのより長い耐用期間を可能にする。工業的なプラントでは多くの場合に油の目的温度が規定されるため、本発明による方法は、更にエネルギーの節約をもたらす。