(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、複数の製品を製造する際に、熱交換器に生じる堆積物の増加を抑制することができる乳成分を含む製品の製造設備の運転方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決する本発明の第1の態様は、加熱用熱交換器を備え、乳成分を含む製品の製造設備の運転方法であって、乳成分を含む原料液を加熱用熱交換器で加熱処理する加熱工程と、所定量の原料液について前記加熱工程を実行した後、次の所定量の原料液について前記加熱工程を実行する前に、前記加熱用熱交換器に仕切り用水を流通させる濯ぎ工程を備え、前記濯ぎ工程では、前記仕切り用水として
硬度55以下に軟水化した水を前記加熱用熱交換器に流通させることを特徴とする乳成分を含む製品の製造設備の運転方法にある。
【0008】
第1の態様では、熱交換器に生じる堆積物の増加を抑制することができる。このように堆積物の増加が抑制される結果、原料液の加熱と冷却を連続して行う工程において、加熱若しくは冷却、又はその双方に要するエネルギーの増加を低減することができる。また、熱交換器に生じた堆積物を除去するために必要な水や洗剤の量、洗浄に要するエネルギーを削減することができ、また、洗浄に要する時間も節約することができる。さらに、堆積物の増加に伴う原料液の流れの抵抗が増加することを抑制できる。これにより、原料液を加圧及び送液するポンプの動力を削減することができる。
【0009】
本発明の第2の態様は、第1の態様に記載する乳成分を含む製品の製造設備の運転方法において、前記濯ぎ工程により、前記原料液と前記仕切り用水が混合した状態で加熱されることで前記加熱用熱交換器に形成される堆積物の増加を抑制し、当該堆積物を洗浄するために要する水、洗剤及びエネルギーを削減することを特徴とする乳成分を含む製品の製造設備の運転方法にある。
【0010】
第2の態様では、熱交換器に生じた堆積物を除去するために必要な水や洗剤の量、洗浄に要するエネルギーを削減することができ、また、洗浄に要する時間も節約することができる。
【0011】
本発明の第3の態様は、第1の態様に記載する乳成分を含む製品の製造設備の運転方法において、前記濯ぎ工程により、前記原料液と前記仕切り用水が混合した状態で加熱されることで前記加熱用熱交換器に形成される堆積物による前記加熱用熱交換器の総括伝熱係数の減少を緩和することを特徴とする乳成分を含む製品の製造設備の運転方法にある。
【0012】
第3の態様では、熱交換器に生じる堆積物の増加を抑制することができるので、熱交換器の総括伝熱係数の減少を緩和することができる。
【0013】
本発明の第4の態様は、第1から第3の何れか一つの態様に記載する乳成分を含む製品の製造設備の運転方法において、
前記原料液が供給され、前記原料液を前記加熱用熱交換器へ供給する一次側、及び前記加熱用熱交換器で加熱された前記原料液が供給される二次側を有し、前記二次側に供給された前記原料液を熱源として前記一次側の前記原料液を加熱する熱再生用熱交換器と、前記熱再生用熱交換器の二次側から供給された原料液を冷却する冷却用熱交換器と、前記加熱用熱交換器及び前記冷却用熱交換器を制御する制御装置とを備え、前記加熱工程では、前記制御装置は、前記加熱用熱交換器で加熱された後の原料液の温度を所定温度にし、かつ前記冷却用熱交換器で冷却されたあとの原料液の温度を所定温度にするように前記加熱用熱交換器及び前記冷却用熱交換器を制御し、前記濯ぎ工程では、前記熱再生用熱交換器及び前記加熱用熱交換器に前記仕切り用水を流通させることを特徴とする乳成分を含む製品の製造設備の運転方法にある。
【0014】
第4の態様では、原料液の加熱と冷却を連続して行う工程において、加熱若しくは冷却、又はその双方に要するエネルギーの増加を低減することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、複数の製品を製造する際に、熱交換器に生じる堆積物の増加を抑制することできる。このように堆積物の増加が抑制される結果、原料液の加熱と冷却を連続して行う工程において、加熱若しくは冷却、又はその双方に要するエネルギーの増加を低減することができる。
本発明によれば、熱交換器に生じた堆積物を除去するために必要な水や洗剤の量、洗浄に要するエネルギーを削減することができ、また、洗浄に要する時間も節約することができる。
本発明によれば、堆積物の増加に伴う原料液の流れの抵抗が増加することを抑制できる。これにより、原料液を加圧及び送液するポンプの動力を削減することができる。
本発明によれば、堆積物の増加に伴い剥離した堆積物が原料液に混入するリスクを軽減することができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を実施するための形態について説明する。なお、実施形態の説明は例示であり、本発明は以下の説明に限定されない。
【0018】
〈実施形態1〉
図1は乳成分を含む製品の製造設備(以下、単に製造設備と称する)の概略図である。同図を用いて、本実施形態の製造設備における運転方法について説明する。製造設備Iは、乳成分を含む原料液から製品を製造する設備である。本実施形態では、乳成分を含む製品として牛乳を例にとり説明する。
【0019】
製造設備Iは、加熱用熱交換器10(以後、単に熱交換器10と称する)と、第1貯槽21及び第2貯槽22(これらを貯槽20とも総称する。)と、硬度調整装置30とを備えている。
【0020】
第1貯槽21及び第2貯槽22は、原料液として生乳を貯留している。第1貯槽21及び第2貯槽22は、開閉弁(図示せず)を介して製造ライン1に接続されている。また、製造ライン1には、貯槽20よりも下流側にポンプ2が設けられ、さらにポンプ2よりも下流側に熱交換器10が設けられている。ポンプ2は、貯槽20から生乳を熱交換器10に圧送する。
【0021】
熱交換器10は、原料液を熱媒体により間接的に加熱する装置である。熱交換器10の原料液が流通する部分を一次側11とし、原料液を加熱するための熱媒が流通する部分を二次側12とする。熱交換器10には、所定温度に加熱された熱媒体が熱媒体供給装置3から二次側12に供給される。一次側11と二次側12との間で熱交換され、一次側の原料液が所定温度に加熱される。なお、熱交換器10の構成は特に限定はなく、プレート式、シェルチューブ式などを用いることができる。
【0022】
製造ライン1の熱交換器10よりも下流には弁4が設けられ、その下流には次工程を実施する装置群(図示せず)が設けられている。また、製造ライン1は、弁4から分岐して、内部の流体を排出することが可能となっている。
【0023】
また、製造ライン1の貯槽20よりも上流側には、硬度調整装置30が設けられている。硬度調整装置30は、水の硬度を低減化する装置である。例えば、硬度調整装置30としては、イオン交換樹脂に水を通過させることで軟水化する装置が挙げられる。このような硬度調整装置30は、硬度を低減化した水を仕切り用水とし、製造ライン1を通じて熱交換器10に供給することで、一次側11の内面(以降、加熱表面と称する。)を濯ぐ。
【0024】
特に図示しないが、製造設備Iは、制御装置を備えている。貯槽20の開閉弁、ポンプ2、熱媒体供給装置3、弁4、熱交換器10、硬度調整装置30は、制御装置により制御される。例えば、制御装置は、開閉弁を開放し、ポンプ2を作動させることで、貯槽20から製造ライン1を通じて熱交換器10に生乳を供給する。また、制御装置は、熱媒体供給装置3により熱媒体の温度または流量を制御して熱交換器10に供給し、熱交換器10で生乳を所定の温度に加熱(殺菌)する。また、制御装置は、硬度調整装置30を作動させ、仕切り用水を熱交換器10に供給させることで熱交換器10内を濯ぐ。
【0025】
上述した構成の製造設備Iでは、所定量の原料液(以降、第1原料液と称する)について熱交換器10で加熱処理を実行した後、加熱した第1原料液を次工程の装置群に供給して牛乳を製造する。そして、次の所定量の原料液(以降、第2原料液と称する)について同様の工程を実行する前に、濯ぎ工程を実行する。
【0026】
第1貯槽21に貯留された原料液を第1原料液とし、第2貯槽22に貯留された原料液を第2原料液とする。まず、第1原料液について、熱交換器10による加熱工程及びその後の各種工程を実施する。第1原料液の所定量としては、第1貯槽21の全量とする。
【0027】
次に、第1貯槽21から第1原料液の全量が熱交換器10に供給され、その第1原料液から牛乳が製造された後、濯ぎ工程を実行する。具体的には、硬度調整装置30から仕切り用水を熱交換器10に流通させる。硬度調整装置30により、仕切り用水は硬度が低減化されている。具体的には、硬度調整装置30は、仕切り用水の硬度を60以下、好ましくは50以下にする。このような濯ぎ工程により、製造ライン1や熱交換器10に残留していた第1原料液は、硬度が低減化された仕切り用水とともに熱交換器10から排出される。また、仕切り用水は弁4から製造ライン1外へ排出される。
【0028】
次に、濯ぎ工程を実施した後、第2原料液について、熱交換器10による加熱工程及びその後の各種工程を実施する。第2原料液の所定量としては、第2貯槽22の全量とする。このように、熱交換器10では、第1原料液が流通したあとに仕切り用水を流通させ、その後に第2原料液を流通させるので、第1原料液と第2原料液とが混合してしまうことが防止されている。
【0029】
ここで、仮に、濯ぎ工程において硬度を低減化した仕切り用水ではなく、硬度を低減化していない仕切り用水(例えば硬度が80より高い水)で熱交換器10を濯ぐとする。この場合、第1原料液から仕切り用水に切り替えたとき、及び仕切り用水から第2原料液に切り替えたときに、熱交換器10の加熱表面に生じる堆積物の堆積速度は、操業時(第1原料液を熱交換器10に供給しているときや第2原料液を熱交換器10に供給しているとき)と比べて一時的に増大する。そして、仕切り用水の硬度が高いほど堆積速度は速い。上記した切り替え時は、仕切り用水に乳成分が混合することから、仕切り用水の硬度が堆積物の堆積速度に影響を及ぼしていると考えられる。
【0030】
一方、本実施形態の製造設備Iの運転方法によれば、濯ぎ工程においては硬度を低減した仕切り用水を用いる。これにより、第1原料液から仕切り用水に切り替えたとき、及び仕切り用水から第2原料液に切り替えたときに、乳成分が混合した仕切り用水が熱交換器10で加熱されても、熱交換器10の加熱表面に生じる堆積物の総量の増大を抑制することができる。これにより、堆積物による総括伝熱係数の減少を抑制できるので、熱交換器10において効率よく原料液を加熱することができる。
【0031】
また、熱交換器10に堆積した堆積物を除去するために必要な水や洗剤の量、洗浄に要するエネルギーを削減することができ、さらに、洗浄に要する時間も短縮することができる。そして、堆積物の増加に伴う原料液の流れの抵抗が増加することを抑制できる。これにより、原料液を加圧及び送液するポンプ2の動力を削減することができる。また、堆積物の増加に伴い剥離した堆積物が原料液に混入するリスクを軽減することができる。
【0032】
〈実施形態2〉
図2は乳成分を含む製品の製造設備の概略図である。同図を用いて、本実施形態の製造設備における運転方法について説明する。なお、実施形態1と同一のものには同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0033】
製造設備IIは、実施形態1の製造設備Iとは、熱再生用熱交換器13及び冷却用熱交換器14を備える点で相違する。具体的には、製造設備IIは、熱交換器10と、第1貯槽21及び第2貯槽22と、硬度調整装置30とを備え、さらに、熱再生用熱交換器13と、冷却用熱交換器14とを備えている。熱再生用熱交換器13及び冷却用熱交換器14の構成は特に限定はなく、プレート式やシェルチューブ式の熱交換器を用いることができる。
【0034】
熱再生用熱交換器13は、熱交換器10と同様の構成の装置である。熱再生用熱交換器13の一次側15には、貯槽20から原料液、又は硬度調整装置30から仕切り用水が供給される。一次側15を流通した原料液又は仕切り用水は、熱交換器10の一次側に送出される。熱再生用熱交換器13の二次側16には、熱交換器10で加熱された原料液又は仕切り用水が熱媒として供給される。二次側16を流通した原料液又は仕切り用水は、冷却用熱交換器14の一次側17に送出される。
【0035】
熱交換器10は、熱媒体供給装置3から二次側12に供給された熱媒体により、熱再生用熱交換器13で加熱された原料液又は仕切り用水を加熱する。熱交換器10の一次側11で加熱された原料液又は仕切り用水は熱再生用熱交換器13の二次側16に送出される。
【0036】
冷却用熱交換器14は、冷媒供給装置5から二次側18に供給された熱媒体により、熱再生用熱交換器13から一次側17に供給された原料液又は仕切り用水を冷却する。冷却用熱交換器14で冷却された原料液は、製造ライン1を経由して次工程の装置に送られる。また、冷却用熱交換器14で冷却された仕切り用水は、弁4から製造ライン1外へ排出される。
【0037】
また、熱交換器10では、一次側11から送出された原料液の温度が所定温度となるように、制御装置によりフィードバック制御されている。また、冷却用熱交換器14では、一次側17から送出された原料液の温度が所定温度となるように、制御装置によりフィードバック制御されている。
【0038】
例えば、熱交換器10の一次側11から送出された原料液の温度が130℃、冷却用熱交換器14の一次側17から送出された原料液の温度が5℃となるように、熱交換器10及び冷却用熱交換器14の熱媒の流量や温度を調節している。
【0039】
上述した構成の製造設備IIでは、貯槽20の原料液は、熱再生用熱交換器13及び熱交換器10により加熱(殺菌)され、冷却用熱交換器14において所定温度に冷却され、次工程に送られる。
【0040】
上述した構成の製造設備IIでは、所定量の原料液(以降、第1原料液と称する)について熱再生用熱交換器13及び熱交換器10で加熱処理を実行し、さらに冷却用熱交換器14で冷却処理を実行した後、第1原料液を次工程の装置群に供給して牛乳を製造する。そして、次の所定量の原料液(以降、第2原料液と称する)について同様の工程を実行する前に、濯ぎ工程を実行する。
【0041】
まず、第1原料液について、熱再生用熱交換器13及び熱交換器10による加熱工程及び冷却用熱交換器14による冷却工程を実施し、さらにその後の各種工程を実施する。第1原料液の所定量としては、第1貯槽21の全量とする。
【0042】
次に、第1貯槽21から第1原料液の全量が熱再生用熱交換器13、熱交換器10及び冷却用熱交換器14に供給され、その第1原料液から牛乳が製造された後、濯ぎ工程を実行する。具体的には、硬度調整装置30から仕切り用水を熱再生用熱交換器13、熱交換器10及び冷却用熱交換器14に流通させる。実施形態1と同様に、硬度調整装置30により、仕切り用水は硬度が低減化されている。このような濯ぎ工程により、熱再生用熱交換器13、熱交換器10及び冷却用熱交換器14に残留していた第1原料液は、硬度が低減化された仕切り用水とともに熱交換器10から排出される。また、仕切り用水は弁4から製造ライン1外へ排出される。
【0043】
次に、濯ぎ工程を実施した後、第2原料液について、熱再生用熱交換器13及び熱交換器10による加熱工程及び冷却用熱交換器14による冷却工程を実施し、さらにその後の各種工程を実施する。第2原料液の所定量としては、第2貯槽22の全量とする。このように、熱再生用熱交換器13、熱交換器10及び冷却用熱交換器14では、第1原料液が流通したあとに仕切り用水を流通させ、その後に第2原料液を流通させるので、第1原料液と第2原料液とが混合してしまうことが防止されている。
【0044】
上述したように、本実施形態の製造設備IIの運転方法によれば、濯ぎ工程においては硬度を低減した仕切り用水を用いる。これにより、第1原料液から仕切り用水に切り替えたとき、及び仕切り用水から第2原料液に切り替えたときに、乳成分が混合した仕切り用水が熱再生用熱交換器13及び熱交換器10で加熱されても、熱再生用熱交換器13及び熱交換器10の加熱表面に生じる堆積物の総量の増大を抑制することができる。これにより、堆積物による総括伝熱係数の減少を抑制できるので、熱再生用熱交換器13及び熱交換器10において効率よく原料液を加熱することができる。
【0045】
また、本実施形態の製造設備IIでは、熱交換器10の一次側11の出口において、原料液が所定温度となるようにフィードバック制御されている。熱交換器10の一次側11の入口における原料液の温度をTa、出口における原料液の温度をTc、これらの温度差をΔT1とする。この温度Tcが所定温度となるように熱媒体供給装置3が供給する熱媒の流量及び温度がフィードバック制御される。
【0046】
仮に、硬度を低減した仕切り用水を用いずに濯ぎ工程を実施したあとに、加熱工程を実施した場合における熱交換器10の一次側11の入口の温度をTbとする。上述したようなフィードバック制御がなされるため、熱交換器10の一次側11の出口の温度はTcである。この場合、熱再生用熱交換器13の一次側15において堆積物の総量が増大し、総括伝熱係数も減少するので、熱再生用熱交換器13では原料液に熱が伝わりにくくなる。この結果、原料液の温度Tbは、温度Taよりも低くなる。熱交換器10では、原料液が温度Tcとなるように加熱されるので、原料液は温度Tbから温度Tcまで加熱されることになる。これらの温度差をΔT2とする。
【0047】
このように、熱再生用熱交換器13では、原料液の温度を、熱交換器10の一次側11の入口温度として設定していた温度Taとすることができず、それより低い温度Tbで熱交換器10の一次側11に供給してしまう。この結果、熱交換器10では、当初設定していた温度Taより低い温度Tbから温度Tcに原料液を加熱することになる。つまり、熱交換器10の一次側11の入口と出口との温度差ΔT2が広がってしまうので、原料液を加熱するための熱媒の流量を増加し、又は温度を高めなければならない。
【0049】
一方、本実施形態の製造設備IIの運転方法では、硬度を低減化した仕切り用水を用いるので、熱再生用熱交換器13及び熱交換器10の加熱表面に生じる堆積物の総量の増大を抑制することができる。このため、表1に示すように、熱再生用熱交換器13では、原料液の温度を、熱交換器10の一次側11の入口温度として設定していた温度Taとすることができ、それより低い温度Tbとせずに熱交換器10に供給できる。
【0050】
この結果、熱交換器10では、当初設定していた温度Taから温度Tcに原料液を加熱することができる。つまり、熱交換器10の一次側11の入口と出口との温度差ΔT1は、従来の運転方法での温度差ΔT2よりも低いので、従来の運転方法と比較して、原料液を加熱するための熱媒の流量を増大させず、また、温度を高める必要がない。したがって、本実施形態の製造設備IIの運転方法によれば、加熱工程を実施する際に熱交換器10で加熱するために要するエネルギーを削減することができる。
【0051】
また、上述したエネルギーの削減効果は、熱再生用熱交換器13及び冷却用熱交換器14についても同様である。
【0052】
具体的には、本実施形態の製造設備IIでは、冷却用熱交換器14の一次側17の出口において、原料液が所定温度となるようにフィードバック制御されている。冷却用熱交換器14の一次側17の入口における原料液の温度をTd、出口における原料液の温度をTf、これらの温度差をΔT3とする。この温度Tfが所定温度となるように冷媒供給装置5が供給する熱媒の流量及び温度がフィードバック制御される。
【0053】
仮に、硬度を低減した仕切り用水を用いずに濯ぎ工程を実施したあとに、加熱工程を実施した場合における冷却用熱交換器14の一次側17の入口の温度をTeとする。上述したようなフィードバック制御がなされるため、冷却用熱交換器14の一次側17の出口の温度はTfである。この場合、熱再生用熱交換器13の一次側15において堆積物の総量が増大し、総括伝熱係数も減少するので、熱再生用熱交換器13では原料液に熱が伝わりにくくなる。この結果、原料液の温度Teは、温度Tdよりも高くなる。冷却用熱交換器14では、原料液が温度Tfとなるように冷却されるので、原料液は温度Teから温度Tfまで冷却されることになる。これらの温度差をΔT4とする。
【0054】
このように、熱再生用熱交換器13では、原料液の温度を、冷却用熱交換器14の一次側17の入口温度として設定していた温度Tdとすることができず、それより高い温度Teで冷却用熱交換器14の一次側17に供給してしまう。この結果、冷却用熱交換器14では、当初設定していた温度Tdより高い温度Teから温度Tfに原料液を冷却することになる。つまり、冷却用熱交換器14の一次側17の入口と出口との温度差ΔT3からΔT4に上がってしまうので、原料液を冷却するための熱媒の流量を増加し、又は温度を低くしなければならない。
【0056】
一方、本実施形態の製造設備IIの運転方法では、硬度を低減化した仕切り用水を用いるので、熱再生用熱交換器13の加熱表面に生じる堆積物の総量の増大を抑制することができる。このため、表2に示すように、熱再生用熱交換器13では、原料液の温度を、冷却用熱交換器14の一次側17の入口温度として設定していた温度Tdとすることができ、それより高い温度Teとせずに冷却用熱交換器14に供給できる。
【0057】
この結果、冷却用熱交換器14では、当初設定していた温度Tdから温度Tfに原料液を冷却することができる。つまり、冷却用熱交換器14の一次側17の入口と出口との温度差ΔT3は、従来の運転方法での温度差ΔT4よりも小さいので、従来の運転方法と比較して、原料液を冷却するための熱媒の流量を増大させず、また、温度を低くする必要がない。したがって、本実施形態の製造設備IIの運転方法によれば、加熱工程を実施する際に冷却用熱交換器14で冷却するために要するエネルギーを削減することができる。
【0058】
また、本実施形態の製造設備IIの運転方法は、実施形態1の製造設備Iの運転方法と同様に、熱交換器10や熱再生用熱交換器13に堆積した堆積物を除去するために必要な水や洗剤の量、洗浄に要するエネルギーを削減することができ、また、洗浄に要する時間も短縮することができる。さらに、堆積物の増加に伴う原料液の流れの抵抗が増加することを抑制できる。これにより、原料液を加圧及び送液するポンプ2の動力を削減することができる。また、堆積物の増加に伴い剥離した堆積物が原料液に混入するリスクを軽減することができる。
【0059】
〈実施例〉
ここでは、実際の製造設備において、本発明の運転方法を適用した場合の実施例を示す。実施例として、
図1に示したような製造設備Iにおいて、第1原料液について加熱工程を含む一連の製造工程を実施した後、硬度を低減化した仕切り用水で濯ぎ工程を実施し、その後、第2原料液について加熱工程を含む一連の製造工程を実施した。これらの工程を実施している期間中、熱交換器に生じた堆積物の量を測定した。また、比較例として、硬度を低減化しない仕切り用水を用いて濯ぎ工程を実施し、それ以外は実施例と同様の工程を実施した。比較例に用いた仕切り用水の硬度は145であった。実施例に用いた仕切り用水の硬度は55であった。
【0060】
堆積物の量をFsとする。このFsは次式のとおり定義した。
U
0は、熱交換器に堆積物が生じていない状態における総括伝熱係数である。Uは、熱交換器に堆積物が生じた状態での総括伝熱係数である。Uの逆数からU
0の逆数を引いた差を堆積物の量Fsとした。総括伝熱係数は、伝熱量、熱交換器の入口及び出口の温度差、熱交換器の伝熱面積を元に、公知の方法により算出できる。
【0061】
図3は、比較例において熱交換器に生じた堆積物の量を時系列で表示したグラフであり、
図4は、実施例において、熱交換器に生じた堆積物の量を時系列で表示したグラフである。横軸は時間を表し、縦軸は堆積物の量Fsであり、その単位は(m
2・Hr・℃)/kJである。なお、堆積物の量Fsは上記式で計算した結果を10
5倍したものである。比較例及び実施例は、第1原料液の加熱工程を約4.5時間、次に濯ぎ工程を約30分 、 次に第2原料液の加熱工程を行った。図中の二本の縦線で挟まれた範囲が濯ぎ工程を実施した時間帯を表している。
【0062】
図3に示すように、比較例では、第1原料液の加熱工程では堆積物の量は3以下でほぼ一定であり、第2原料液の加熱工程では堆積物の量が増大している。濯ぎ工程における堆積物の堆積速度は、第1原料液及び第2原料液の加熱工程における堆積物の堆積速度よりも顕著に増大している。
【0063】
一方、
図4に示すように、実施例では、第1原料液の加熱工程では堆積物の量は3以下であり、第2原料液の加熱工程では、
図3に示した比較例よりも堆積物の堆積速度は低い。そして、濯ぎ工程の実施時において、堆積物の量Fsはほとんど増大していない。
【0064】
このように、本発明の運転方法によれば、濯ぎ工程で用いる仕切り用水の硬度を低減することで、濯ぎ工程における堆積物の堆積速度の増大を抑制することができ、堆積物の総量としても比較例より低減できることが明らかとなった。
【0065】
〈他の実施形態〉
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明の基本的な構成は上述したものに限定されるものではない。例えば、貯槽20として2つの第1貯槽21及び第2貯槽22を用いたが、これに限定されず、1つ又は3つ以上の貯槽から原料液を熱交換器へ供給するようにしてもよい。また、原料液として生乳を用いたが、乳成分が含まれる流体であれば生乳に限定されない。
【0066】
また、実施形態1及び実施形態2では、第1貯槽21や第2貯槽22に貯留された原料の全量を所定量の原料液としたが、このような量に限定されない。例えば、一つの貯槽に貯留された原料液を複数回分に分け、それぞれの分量を所定量の原料液としてもよい。
【0067】
また、実施形態1及び実施形態2では、第1原料液及び第2原料液のそれぞれについて加熱工程を含む一連の工程を実施する例を示したが、このような態様に限定されない。すなわち、加熱工程を一連の工程を3回以上実施してもよい。この場合はその一連の工程の間ごとに、硬度を低減化した仕切り用水を用いて濯ぎ工程を実施すればよい。
【解決手段】乳成分を含む原料液を熱交換器10で加熱処理する加熱工程と、所定量の原料液について前記加熱工程を実行した後、次の所定量の原料液について前記加熱工程を実行する前に、熱交換器10に仕切り用水を流通させる濯ぎ工程とを備え、前記濯ぎ工程では、前記仕切り用水として硬度調整装置30で軟水化した水を前記熱交換器10に流通させる。