【実施例】
【0029】
以下、本発明に係る油脂分解用微生物製剤及び廃液処理方法の効果を確認するために行った試験例について説明する。
【0030】
(試験例1)
実際にグリーストラップ槽から採取した排水を使用して、本発明に係る油脂分解微生物(実施例)及び別の油脂分解微生物(比較例)の40℃、pH4における油脂分解能力を比較した。なお、前記本発明に係る油脂分解微生物としては、上述のバークホルデリア マルティボランス(
Burkholderia multivorans)R128株(
受託番号:NITE
P−1393)、及びその標準株であるNBRC−102086株を使用した(以下、試験例1〜4において同じ)。また、比較例(以下、対照区)の油脂分解微生物としては、市販の油脂分解微生物資材を使用した。
【0031】
まず、長野県松本市の和食レストランのグリーストラップ槽より採水した排水を7%HClでpH4.0に調整し、1000 mLビーカーに1000 mL分注した。この排水に1x10
8細胞/mLに調整した油脂分解微生物をそれぞれ10 mLずつ植菌し、40℃で4日間(96時間)、撹拌機を用いて撹拌し、n−ヘキサン抽出物質濃度(油脂濃度)の経時変化を測定した。なお、n−ヘキサン抽出物質の測定は、昭和49年環境庁告示第64号付表4に基づいて行った。
【0032】
上記の結果を
図1に示す。対照区の油脂分解微生物は、別途行った25℃での4日間処理では本発明の油脂分解微生物とほぼ同等の高い油脂分解能力を示したが、40℃、pH4での4日間の試験では、
図1に示すように、殆ど油脂を分解しなかった。一方、本発明に係る油脂分解微生物(
Burkholderia multivorans)およびその標準株であるNBRC−102086株は極めて強い油脂分解活性を示した。なお、対照区の微生物による油脂分解能力の至適温度は25℃であるが、40℃における油脂分解能力は25℃における油脂分解能力の50%以下であることから、対照区の微生物の油脂分解能力は40℃では顕著に抑制されていることが分かる。一方、本発明に係る油脂分解微生物による油脂分解能力の至適温度は35℃であるが、30℃〜45℃ではほぼ同等の油脂分解能を示す。このことから、対照区の油脂分解微生物と比べて本発明に係る油脂分解微生物は、35℃を超える高温でも油脂分解能力が低下せず、且つ、30℃〜45℃という広い温度範囲で油脂分解能力が変化しないことが確認された。
【0033】
(試験例2)
本発明に係る油脂分解微生物の各種pHにおける油脂分解能力を評価した。
【0034】
油脂分解能力は、以下の手順によって評価した。
(1)バッフルフラスコに培地100 mL、混合油脂(サラダ油:ラード油:牛脂=1:1:1(w/w))3000 ppm を加えたものに本発明に係る油脂分解微生物の前培養液を1%接種し、40℃、120 rpm で24時間振盪培養を行った。前記培地の組成は以下の表2の通りである。pH調整は、pH3〜6は塩酸で、pH7〜9はNaOHで行った。
【0035】
【表2】
【0036】
(2)培養終了後にオートクレーブ処理を行わずに、以下の手順でクロロホルム−メタノール抽出を行った。
まず、培養液全量を分液ロートに入れ、クロロホルム−メタノール(3:1(v/v))溶液40mLで培養フラスコを洗浄し、その洗液で培養液中の油脂分を抽出した。クロロホルム層(下層)のみを分取し、水層(上層)は再度クロロホルム−メタノール溶液40mLで抽出した。その後、クロロホルム層(下層)と水層(上層)をそれぞれ遠心管に移し,10000 rpm で10分間遠心分離後、これらを分液ロートに静かに戻し、クロロホルム層(下層)のみ分取した。
(3)その後、無水硫酸マグネシウムで脱水、ろ過した後、ろ液をナス型フラスコに取り、溶媒を減圧除去して残った油脂重量を測定した。
(4)対照区として、前培養液を接種しないものも同様に24時間振盪培養及び抽出を行い、残存油脂重量を測定した。
(5)対照区と実験区(前培養液を接種したもの)中の残存油脂量から、油脂分解率を下式により算出した。
油脂分解率(%)=[(対照区の残存油脂重量−実験区の残存油脂重量)/対照区の残存油脂重量]×100
【0037】
以上による油脂分解能力の評価試験(n=3)の結果を
図2に示す。グリーストラップの排水は通常pH3.5〜4.5と極めて低い値を示す。このような排水中で油脂を効率的に分解するためには、こうした酸性環境下で強い油脂分解能力を示す微生物が必要である。本発明に係る油脂分解微生物は、
図2に示す通り、pH3.5〜9で優れた油脂分解活性を示すので、グリーストラップ及びその後段の工程において使用できる極めて適用範囲の広い油脂分解微生物であるといえる。
【0038】
(試験例3)
本発明に係る油脂分解微生物の各種pHにおける油脂分解能力を試験例2とは別の培地を用いて評価した。本試験例3で用いた培地の組成を以下の表3に示す。培地の組成が異なる以外は、試験例2と同様にして行った。
【表3】
【0039】
上記による油脂分解能の評価試験(n=3)の結果を
図3に示す。試験例2ほどではないものの本試験例3においても、本発明に係る油脂分解微生物の油脂分解能力はpH3.5〜9の間で高い値を示した。
【0040】
(試験例4)
本発明に係る油脂分解微生物の各種温度における油脂分解能力を評価した。
【0041】
油脂分解能力の評価は、培地をpH4(pHは塩酸で調整)とし、培養温度を20℃〜50℃の間で種々に変えた点以外は、試験例1と同様にして行った。
【0042】
上記による油脂分解能力の評価試験(n=3)の結果を
図4に示す。本発明に係る油脂分解微生物の油脂分解能力は20℃〜35℃で急増し、40℃〜50℃で急減したが、35℃〜40℃ではほぼ一定であった。特に、30℃〜45℃では、3000 ppm のサラダ油:ラード:牛脂=1:1:1(w/w)から成る混合油脂を1日あたり約40%〜60%分解した。このように、本発明に係る油脂分解微生物は広い温度範囲で高い油脂分解能を示す油脂分解微生物であるといえる。
【0043】
(試験例5)
本発明に係る油脂分解微生物の各種温度における油脂分解能力を評価した。
【0044】
油脂分解能力の評価は、培地をpH4(pHは塩酸で調整)とし、培養温度を25℃〜45℃の間で種々に変えた点以外は、試験例2と同様にして行った。
【0045】
上記による油脂分解能力の評価結果を
図5に示す。本発明に係る油脂分解微生物の油脂分解能力は25℃〜35℃で急増し、35℃〜50℃で漸減した。そして、30℃〜45℃では、3000 ppm のサラダ油:ラード:牛脂=1:1:1(w/w)から成る混合油脂を1日あたり約40%〜60%分解した。このように、本発明に係る油脂分解微生物は広い温度範囲で高い油脂分解能を示す油脂分解微生物であるといえる。
【0046】
(試験例6)
本発明に係る油脂分解微生物としてバークホルデリア マルティボランスR128株及び標準株NBRC−102086を使用し、同微生物の各種pH及び各種温度における油脂分解能力を評価した。
油脂分解能力の評価は、培地をpH4とpH8の2種類とした点、及び培地温度を25℃と40℃の2種類とした点以外は、試験例1と同様にして行った。
【0047】
上記による油脂分解能力の評価結果を
図6に示す。
図6から明らかなように、本発明に係る油脂分解微生物はR128株と標準株はいずれも、25℃及び40℃いずれの温度条件下においても、pH4とpH8の双方で優れた油脂分解能力を発揮した。
【0048】
(試験例7)
本発明に係る油脂分解微生物としてバークホルデリア マルティボランスR128株を使用し、各種油脂に対する分解能力を評価した。
油脂分解能力の評価は、油脂の種類が異なる以外は、試験例1と同様にして行った。
上記による油脂分解能力の評価結果を下記の表4に示す。
【表4】
表4から明らかなように、本発明に係る油脂分解微生物は、オレイン酸や該オレイン酸のような不飽和脂肪酸を多く含む油脂に対して高い分解能力を発揮し、パルミチン酸やステアリン酸のような飽和脂肪酸に対する分解能力は低いことが分かった。