特許第6095155号(P6095155)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6095155冷凍装置及び冷凍装置の冷媒漏れ検知方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6095155
(24)【登録日】2017年2月24日
(45)【発行日】2017年3月15日
(54)【発明の名称】冷凍装置及び冷凍装置の冷媒漏れ検知方法
(51)【国際特許分類】
   F25B 49/02 20060101AFI20170306BHJP
【FI】
   F25B49/02 520D
   F25B49/02 520E
【請求項の数】6
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2012-285523(P2012-285523)
(22)【出願日】2012年12月27日
(65)【公開番号】特開2014-126337(P2014-126337A)
(43)【公開日】2014年7月7日
【審査請求日】2015年10月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】000213493
【氏名又は名称】中野冷機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088720
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 眞一
(72)【発明者】
【氏名】櫻井 政幸
(72)【発明者】
【氏名】坂井 毅
【審査官】 柿沼 善一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−164265(JP,A)
【文献】 特開2012−211723(JP,A)
【文献】 特開2006−220342(JP,A)
【文献】 特開2009−079842(JP,A)
【文献】 国際公開第2008/035418(WO,A1)
【文献】 特開2012−047364(JP,A)
【文献】 特開2001−012830(JP,A)
【文献】 特開2010−107187(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25B 49/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧縮機、凝縮器、受液器、減圧部及び蒸発器に加え、冷媒を循環させる冷媒配管及び液冷媒を冷却する過冷却部を備え、
前記圧縮機の出口側の高圧圧力を検出する高圧圧力検出部と、
前記過冷却部の出口側の液配管温度を検出する液配管温度検出部と、
前記圧縮機の出口側のガス配管温度を検出するガス配管温度検出部と、
前記高圧圧力検出部により検出された前記高圧圧力、前記液配管温度検出部により検出された前記液配管温度、及び、前記ガス配管温度検出部により検出された前記ガス配管温度から、冷媒漏れの有無を判断する判断部と、を備える冷凍装置であって、
前記判断部は、前記高圧圧力検出部により検出された前記高圧圧力から冷媒の凝縮温度を算出し、算出した凝縮温度と前記液配管温度との温度差である過冷却度を求めるとともに、算出した凝縮温度と前記ガス配管温度との温度差である吐出過熱度を求め、前記過冷却度の所定期間の平均値及び前記吐出過熱度の所定期間の平均値を算出し、算出した過冷却度の所定期間の平均値及び吐出過熱度の所定期間の平均値を前記過去データとして登録し、次に算出した過冷却度の所定期間の平均値及び吐出過熱度の所定期間の平均値を前記過去データと比較し、冷媒漏れの有無を判断する冷凍装置において、
前記判断部は、算出した過冷却度の所定期間の平均値及び吐出過熱度の所定期間の平均値を過去データとして順次登録し、
操作者からの入力操作を受け付ける入力部と、
前記入力部に対する前記操作者の入力操作に応じて、前記登録した複数の過去データの中から前記冷媒漏れの有無の判断に用いる過去データを設定する設定部と、をさらに備えることを特徴とする冷凍装置。
【請求項2】
前記圧縮機は複数台設けられており、
前記ガス配管温度検出部は前記圧縮機毎に設けられており、
前記判断部は、前記圧縮機毎のガス配管温度検出部によりそれぞれ検出されたガス配管温度のうち温度が一番高いガス配管温度と凝縮温度との温度差を前記吐出過熱度として求めることを特徴とする請求項1に記載の冷凍装置。
【請求項3】
前記凝縮器の出口側の配管温度又は前記受液器の出口側の配管温度を検出する配管温度検出部をさらに備え、
前記判断部は、前記高圧圧力検出部により検出された前記高圧圧力にかえて、前記配管温度検出部により検出された前記凝縮器の出口側の配管温度又は前記受液器の出口側の配管温度を用いることを特徴とする請求項1又は2に記載の冷凍装置。
【請求項4】
圧縮機、凝縮器、受液器、減圧部及び蒸発器に加え、冷媒を循環させる冷媒配管及び液冷媒を冷却する過冷却部を備える冷凍装置の冷媒漏れ検知方法であって、
前記圧縮機の出口側の高圧圧力から冷媒の凝縮温度を算出し、算出した凝縮温度と前記過冷却部の出口側の液配管温度との温度差である過冷却度を求めるとともに、算出した凝縮温度と前記圧縮機の出口側のガス配管温度との温度差である吐出過熱度を求め、前記過冷却度の所定期間の平均値及び前記吐出過熱度の所定期間の平均値を算出し、算出した過冷却度の所定期間の平均値及び吐出過熱度の所定期間の平均値を過去データとして記憶し、次に算出した過冷却度の所定期間の平均値及び吐出過熱度の所定期間の平均値を前記過去データと比較し、冷媒漏れの有無を判断する冷凍装置の冷媒漏れ検知方法において、
前記冷凍装置は、操作者からの入力操作を受け付ける入力部を備えており、 算出した過冷却度の所定期間の平均値及び吐出過熱度の所定期間の平均値を過去データとして順次登録し、
前記入力部に対する前記操作者の入力操作に応じて、前記登録した複数の過去データの中から前記冷媒漏れの有無の判断に用いる過去データを設定することを特徴とする冷凍装置の冷媒漏れ検知方法。
【請求項5】
前記圧縮機は複数台設けられており、
前記複数台の圧縮機毎のガス配管温度のうち温度が一番高いガス配管温度と凝縮温度との温度差を前記吐出過熱度として求めることを特徴とする請求項4に記載の冷凍装置の冷媒漏れ検知方法。
【請求項6】
前記高圧圧力にかえて、前記凝縮器の出口側の配管温度又は前記受液器の出口側の配管温度を用いることを特徴とする請求項4又は5に記載の冷凍装置の冷媒漏れ検知方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷凍装置及び冷凍装置の冷媒漏れ検知方法に関する。
【背景技術】
【0002】
スーパーマーケットやコンビニエンスストアなどの各種店舗においては、冷蔵食品や冷凍食品、生鮮食品などの商品陳列のため、ショーケースや冷蔵庫などの冷凍装置が用いられている。この冷凍装置は、通常、圧縮機や凝縮器、蒸発器などを備えており、冷媒による熱交換によって各種商品を保冷する。このような冷凍装置の冷媒回路から冷媒が漏れだすと、冷媒不足により冷却能力が低下してしまう。
【0003】
ここで、前述の冷媒漏れ(冷媒漏洩)を検知する方法としては、冷凍装置の受液器の液面を検出して冷媒漏れを検知する方法や機器各部の温度変化から冷媒漏れの傾向を検知する方法が主流となっている。また、過冷却度を用いて冷媒漏れを検知する方法が提案されており(例えば、特許文献1及び特許文献2参照)、さらに、低圧圧力、高圧圧力及び過冷却度を冷媒漏れ検知の要素とする方法も提案されている(例えば、特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−226704号公報
【特許文献2】特開2012−211723号公報
【特許文献3】特許第4151679号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前述のような各技術では、高価なセンサや複雑なシステム、複雑な計測ソフトなどが必要となるので、冷媒漏れ検知のために装置が複雑化し、コストが高くなってしまう。また、前述のように過冷却度のみで冷媒漏れ検知を行うと、冷凍装置の運転状況が季節や昼夜などに変化するショーケースの冷却では誤検知が発生してしまうことがある。さらに、微量な冷媒漏れが発生した場合には、過冷却度の変化量か小さいため、精度良く冷媒漏れを検知することは困難である。
【0006】
また、低圧圧力、高圧圧力及び過冷却度を冷媒漏れ検知の要素とする方法では、低圧圧力は冷媒漏れによって変化するが、その変化量は小さい傾向にあり、冷媒漏れ検知には複雑な計算や演算が必要となってしまう。特に、近年のスーパーマーケット店舗では、省エネルギー化のため圧縮機の回転数を制御して運転を行うインバータ冷凍機が主流となっているが、このインバータ冷凍機は目標低圧値になるように圧縮機の回転を制御するため、冷媒漏れ傾向になってもその低圧圧力の変化量は小さく、精度良く冷媒漏れを検知することは困難である。
【0007】
本発明は上記を鑑みてなされたものであり、その目的は、簡略な構成及び低コストで冷媒漏れを精度良く検知することができる冷凍装置及び冷凍装置の冷媒漏れ検知方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る冷凍装置は、圧縮機、凝縮器、受液器、減圧部及び蒸発器に加え、冷媒を循環させる冷媒配管及び液冷媒を冷却する過冷却部を備える冷凍装置であって、圧縮機の出口側の高圧圧力を検出する高圧圧力検出部と、過冷却部の出口側の液配管温度を検出する液配管温度検出部と、圧縮機の出口側のガス配管温度を検出するガス配管温度検出部と、高圧圧力検出部により検出された高圧圧力、液配管温度検出部により検出された液配管温度、及び、ガス配管温度検出部により検出されたガス配管温度から、冷媒漏れの有無を判断する判断部とを備える。
【0009】
また、前述の冷凍装置において、判断部は、高圧圧力検出部により検出された高圧圧力から冷媒の凝縮温度を算出し、算出した凝縮温度と液配管温度との温度差である過冷却度を求めるとともに、算出した凝縮温度とガス配管温度との温度差である吐出過熱度を求め、過冷却度の所定期間の平均値及び吐出過熱度の所定期間の平均値を算出し、算出した過冷却度の所定期間の平均値及び吐出過熱度の所定期間の平均値に応じて、冷媒漏れの有無を判断することが望ましい。
【0010】
また、前述の冷凍装置において、判断部は、算出した過冷却度の所定期間の平均値及び吐出過熱度の所定期間の平均値を過去データとして登録し、次に算出した過冷却度の所定期間の平均値及び吐出過熱度の所定期間の平均値を過去データと比較し、冷媒漏れの有無を判断することが望ましい。
【0011】
また、前述の冷凍装置において、判断部は、算出した過冷却度の所定期間の平均値及び吐出過熱度の所定期間の平均値を過去データとして順次登録し、操作者からの入力操作を受け付ける入力部と、入力部に対する操作者の入力操作に応じて、登録した複数の過去データの中から冷媒漏れの有無の判断に用いる過去データを設定する設定部とをさらに備えることが望ましい。
【0012】
また、前述の冷凍装置において、圧縮機は複数台設けられており、ガス配管温度検出部は圧縮機毎に設けられており、判断部は、圧縮機毎のガス配管温度検出部によりそれぞれ検出されたガス配管温度のうち温度が一番高いガス配管温度と凝縮温度との温度差を吐出過熱度として求めることが望ましい。
【0013】
また、前述の冷凍装置において、凝縮器の出口側の配管温度又は受液器の出口側の配管温度を検出する配管温度検出部をさらに備え、判断部は、高圧圧力検出部により検出された高圧圧力にかえて、配管温度検出部により検出された凝縮器の出口側の配管温度又は受液器の出口側の配管温度を用いることが望ましい。
【0014】
本発明に係る冷凍装置の冷媒漏れ検知方法は、圧縮機、凝縮器、受液器、減圧部及び蒸発器に加え、冷媒を循環させる冷媒配管及び液冷媒を冷却する過冷却部を備える冷凍装置の冷媒漏れ検知方法であって、圧縮機の出口側の高圧圧力、過冷却部の出口側の液配管温度及び圧縮機の出口側のガス配管温度から、冷媒漏れの有無を判断する。
【0015】
また、前述の冷凍装置の冷媒漏れ検知方法において、高圧圧力から冷媒の凝縮温度を算出し、算出した凝縮温度と液配管温度との温度差である過冷却度を求めるとともに、算出した凝縮温度とガス配管温度との温度差である吐出過熱度を求め、過冷却度の所定期間の平均値及び吐出過熱度の所定期間の平均値を算出し、算出した過冷却度の所定期間の平均値及び吐出過熱度の所定期間の平均値に応じて、冷媒漏れの有無を判断することが望ましい。
【0016】
また、前述の冷凍装置の冷媒漏れ検知方法において、算出した過冷却度の所定期間の平均値及び吐出過熱度の所定期間の平均値を過去データとして記憶し、次に算出した過冷却度の所定期間の平均値及び吐出過熱度の所定期間の平均値を過去データと比較し、冷媒漏れの有無を判断することが望ましい。
【0017】
また、前述の冷凍装置の冷媒漏れ検知方法において、冷凍装置は、操作者からの入力操作を受け付ける入力部を備えており、算出した過冷却度の所定期間の平均値及び吐出過熱度の所定期間の平均値を過去データとして順次登録し、入力部に対する操作者の入力操作に応じて、登録した複数の過去データの中から冷媒漏れの有無の判断に用いる過去データを設定することが望ましい。
【0018】
また、前述の冷凍装置の冷媒漏れ検知方法において、圧縮機は複数台設けられており、複数台の圧縮機毎のガス配管温度のうち温度が一番高いガス配管温度と凝縮温度との温度差を吐出過熱度として求めることが望ましい。
【0019】
また、前述の冷凍装置の冷媒漏れ検知方法において、高圧圧力にかえて、凝縮器の出口側の配管温度又は受液器の出口側の配管温度を用いることが望ましい。
【発明の効果】
【0020】
本発明に係る冷凍装置又は冷凍装置の冷媒漏れ検知方法によれば、圧縮機の出口側の高圧圧力、過冷却部の出口側の液配管温度及び圧縮機の出口側のガス配管温度に応じて、冷媒漏れの有無が判断される。これにより、高価なセンサや複雑なシステム、複雑な計測ソフトなどを必要とせず、冷媒漏れを確実に検知することが可能となるので、簡略な構成及び低コストで冷媒漏れを精度良く検知することができる。
【0021】
また、過冷却度及び吐出過熱度のそれぞれの平均値に応じて、冷媒漏れの有無を判断する場合には、冷媒漏れの誤検知を少なくして検知精度を高めることができる。過冷却度や吐出過熱度は冷凍機の運転状況の変化(例えば、昼夜や季節など)に応じて変動するため、冷媒漏れの判断に過冷却度及び吐出過熱度のそれぞれの平均値を用いることによって、検知精度を高めることが可能となる。
【0022】
また、過冷却度の所定期間の平均値及び吐出過熱度の所定期間の平均値を過去データとして記憶し、次に算出した過冷却度の所定期間の平均値及び吐出過熱度の所定期間の平均値を過去データと比較し、冷媒漏れの有無を判断する場合には、過去データではなく所定の規定値と比較する場合に比べ、早期の冷媒漏れ検知や検知精度の向上を実現することができる。過冷却度や吐出過熱度は冷凍機のメーカーや機種、設置状況などに応じて異なるため、比較値として所定の規定値を用いると、検知の遅れや誤検知が発生することがある。このため、比較値として過去データを用いることによって、早期の冷媒漏れ検知や検知精度の向上を実現することが可能となる。
【0023】
また、入力部に対する操作者の入力操作に応じて、複数の過去データの中から冷媒漏れの有無の判断に用いる過去データを設定する場合には、過冷却度及び吐出過熱度の各変化量を用いて微量の冷媒漏れも検知することができる。例えば、微量の冷媒漏れの場合、比較する過去データが1日前など近いと、過冷却度や吐出過熱度の各変化量は小さく、冷媒漏れを検知することが困難な場合もあるが、このような場合でも、操作者が冷媒漏れの有無の判断に用いる過去データを自由に設定することができるため、確実に冷媒漏れを検知することが可能となる。
【0024】
また、複数台の圧縮機に合わせてガス配管温度検出部が複数個あるとき、各ガス配管温度のうち温度が一番高いガス配管温度と凝縮温度との温度差を吐出過熱度として求める場合には、吐出過熱度の変化量を確実に把握することが可能となるので、冷媒漏れの誤検知を少なくして検知精度を高めることができる。
【0025】
また、高圧圧力にかえて凝縮器の出口側の配管温度又は受液器の出口側の配管温度を用いる場合には、検出部故障や配線異常などの何らかの要因により高圧圧力を検出することができない状況でも、冷媒漏れを検知することが可能となり、装置信頼性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本発明の実施の一形態に係る冷凍装置の概略構成を示す図である。
図2】本発明の実施の一形態に係る冷凍装置が備える制御装置の概略構成を示すブロック図である。
図3】本発明の実施の一形態に係る過冷却度及び吐出過熱度と日数との関係の一例を示すグラフである。
図4】本発明の実施の一形態に係る過冷却度及び吐出過熱度と日数との関係の他の一例を示すグラフである。
図5】本発明の実施の一形態に係る冷媒漏れ検知処理の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明の実施の一形態について図面を参照して説明する。
【0028】
図1に示すように、本発明の実施形態に係る冷凍装置1は、冷媒を圧縮して凝縮する冷凍機2と、冷媒を減圧する複数の減圧部3と、減圧された冷媒を蒸発させる複数の蒸発器4と、それらの各部を接続して冷媒を循環させる冷媒配管5と、その冷媒配管5に接続されたインジェクション配管6と、各種制御を行う制御装置7とを備えている。
【0029】
冷凍機2は、冷媒を圧縮する圧縮機2aと、圧縮された冷媒を凝縮する凝縮装置2bと、凝縮された冷媒を貯留する受液器2cとを有している。凝縮装置2bは、冷媒を凝縮する冷媒回路となる凝縮器2b1や冷媒を過冷却する過冷却回路となる過冷却部2b2、送風用のファン2b3などを備えている。
【0030】
凝縮器2b1及び過冷却部2b2は、冷媒が凝縮器2b1を通過し、その後、受液器2cを通って過冷却部2b2を通過するように冷媒配管5により接続されている。詳しくは、凝縮器2b1の出口が受液器2cの入口に冷媒配管5を介して接続されており、その受液器2cの出口に過冷却部2b2の入口が冷媒配管5を介して接続されている。これにより、凝縮器2b1を通過した冷媒は過冷却部2b2を通過するため、その過冷却部2b2が過冷却熱交換器として機能することになる。このようにして、冷媒(液冷媒)が凝縮器2b1及び過冷却部2b2を通過して二度冷却されることになるので、凝縮液温度を下げ、過冷却を大きく取ることが可能となる。
【0031】
冷媒配管5は、冷凍機2の圧縮機2a、凝縮装置2b及び受液器2c、さらに、各減圧部3及び各蒸発器4を順次接続して冷媒を循環させる流路であり、例えば、銅管などの配管により構成されている。この冷媒配管5の流路に対し、各減圧部3及び各蒸発器4は、一つの減圧部3と一つの蒸発器4が直列に並んで一組となりショーケースや冷蔵庫などの筐体内に設けられ、その組毎に並列に接続されている。なお、減圧部3としては、例えば、膨張弁などを用いることが可能である。
【0032】
この冷媒配管5を流れる冷媒は、圧縮、凝縮、膨張及び蒸発の四工程を繰り返しながら冷媒配管5を循環する。詳述すると、圧縮機2aにより圧縮された高温高圧のガス冷媒は凝縮器2b1に流入して冷却され、凝縮熱を放出して液化し、受液器2cに貯留される。その後、受液器2cに貯留された常温高圧の液冷媒は過冷却部2b2により再度冷却されて各減圧部3に流入し、それらの減圧部3により減圧されて沸点が下げられた状態となる。この状態の低温低圧の液冷媒は各蒸発器4により沸騰蒸発し、周囲の熱を奪う(冷却)。蒸発した低圧ガス冷媒は圧縮機2aに流入し、圧縮機2aにより圧縮されて常温の空気により液化可能な高温高圧のガス冷媒となり、再び凝縮器2b1に流入する。
【0033】
このように冷媒が循環する冷媒配管5には、複数の開閉弁5aが設けられている。各開閉弁5aは、冷媒配管5の途中であって過冷却部2b2と各減圧部3との間に設けられている。特に、各開閉弁5aは減圧部3の入口側であってその入口の近傍に設けられており、各減圧部3に対する冷媒流入をそれぞれ調整する。これらの開閉弁5aは制御装置7に電気的に接続されており、その駆動が制御装置7により制御される。なお、各開閉弁5aとしては、例えば、電磁弁などを用いることが可能である。
【0034】
また、冷媒配管5には、過冷却部2b2により過冷却された冷媒の冷媒温度、すなわち過冷却部2b2の出口側の液配管温度(液状態の冷媒が通過する冷媒配管5の配管温度)を検出する液配管温度検出部8が設けられており、さらに、凝縮器2b1と受液器2cとの間に存在する冷媒配管5の配管温度、すなわち凝縮器2b1の出口側の配管温度(気体と液体が混合した状態の冷媒が通過する冷媒配管5の配管温度)を検出する配管温度検出部9が設けられている。加えて、受液器2cと過冷却部2b2との間に存在する冷媒配管5の配管温度、すなわち受液器2cの出口側の配管温度(気体と液体が混合した状態の冷媒が通過する冷媒配管5の配管温度)を検出する配管温度検出部10が設けられている。
【0035】
液配管温度検出部8は、過冷却部2b2の出口側であってその過冷却部2b2と各開閉弁5aとの間に設けられており、制御装置7に電気的に接続されている。この液配管温度検出部8は、過冷却部2b2の出口側の液配管温度を測定し、測定した液配管温度を制御装置7に出力する。なお、液配管温度検出部8としては、様々なタイプの温度センサを用いることが可能である。
【0036】
配管温度検出部9は、凝縮器2b1の出口側であってその出口の近傍に設けられており、制御装置7に電気的に接続されている。この配管温度検出部9は、凝縮器2b1の出口側の配管温度を測定し、測定した配管温度を制御装置7に出力する。なお、配管温度検出部9としては、様々なタイプの温度センサを用いることが可能である。
【0037】
配管温度検出部10は、受液器2cの出口側であってその出口の近傍に設けられており、制御装置7に電気的に接続されている。この配管温度検出部10は、受液器2cの出口側の配管温度を測定し、測定した配管温度を制御装置7に出力する。なお、配管温度検出部10としては、様々なタイプの温度センサを用いることが可能である。
【0038】
また、冷媒配管5には、圧縮機2aの出口側の高圧圧力を検出する高圧圧力検出部11が設けられており、さらに、圧縮機2aと凝縮器2b1との間に存在する冷媒配管5の配管温度、すなわち圧縮機2aの出口側のガス配管温度(気体状態の冷媒が通過する冷媒配管5の配管温度)を検出するガス配管温度検出部12が設けられている。
【0039】
高圧圧力検出部11は、圧縮機2aの出口側であってその出口の近傍に設けられており、制御装置7に電気的に接続されている。この高圧圧力検出部11は、冷凍機2の高圧圧力を測定し、測定した高圧圧力を制御装置7に出力する。なお、高圧圧力検出部11としては、様々なタイプの圧力センサを用いることが可能である。
【0040】
ガス配管温度検出部12は、圧縮機2aの出口側であってその出口の近傍に設けられており、制御装置7に電気的に接続されている。このガス配管温度検出部12は、圧縮機2aの出口側の冷媒配管5のガス配管温度(吐出配管温度)を測定し、測定したガス配管温度を制御装置7に出力する。なお、ガス配管温度検出部12としては、様々なタイプの温度センサを用いることが可能である。
【0041】
インジェクション配管6は、過冷却部2b2と圧縮機2aとを接続する流路であり、例えば、銅管などの配管により構成されている。このインジェクション配管6には、開閉弁6a及び減圧部6bが設けられている。開閉弁6aは、インジェクション配管6の途中に設けられており、圧縮機2aに対する冷媒流入を調整する。なお、開閉弁6aとしては、例えば、電磁弁などを用いることが可能である。また、減圧部6bとしては、例えば、膨張弁などを用いることが可能である。
【0042】
制御装置7は、図2に示すように、各部を集中的に制御する制御部7aと、各種情報や各種プログラムなどを記憶する記憶部7bと、操作者からの操作を受け付ける入力部7cと、冷媒漏れの有無を判断する判断部7dと、冷媒漏れ検知に関する各種情報を設定する設定部7eとを備えている。
【0043】
制御部7aは、各種情報や各種プログラムに基づいて圧縮機2aや各開閉弁5a、6aなどを制御する。なお、制御部7aはタイマやカレンダなどを有しており、現在の日時や季節などを把握することが可能である。この制御部7aとしては、マイクロコンピュータなどを用いることが可能である。
【0044】
記憶部7bは、各種情報や各種プログラムなどの各種情報を記憶する記憶装置である。この記憶部7bとしては、例えば、各種メモリやHDD(ハードディスクドライブ)、SSD(ソリッドステートドライブ)などを用いることが可能である。
【0045】
入力部7cは、ユーザである操作者により入力操作される操作部であり、例えば、各種設定や指示など、様々な入力操作を受け付ける。この入力部7cとしては、例えば、ボタンやスイッチ、キーボードなどの入力デバイスを用いることが可能である。
【0046】
判断部7dは、高圧圧力検出部11により検出された高圧圧力と、液配管温度検出部8により検出された液配管温度(過冷却部2b2の出口側の配管温度)と、ガス配管温度検出部12により検出されたガス配管温度(圧縮機2aの出口側の配管温度)から、冷媒漏れの有無を判断する。
【0047】
詳述すると、判断部7dは、高圧圧力から冷媒の凝縮温度を算出し、その算出した凝縮温度と液配管温度との温度差である過冷却度を求め、さらに、算出した凝縮温度とガス配管温度との温度差である吐出過熱度を求め、過冷却度の所定期間の平均値及び吐出過熱度の所定期間の平均値を算出する。その後、判断部7dは、求めた過冷却度の平均値及び吐出過熱度の平均値を過去データと比較して、冷媒漏れの有無を判断する(詳しくは、後述する)。なお、過去データ(過去の過冷却度の平均値及び吐出過熱度の平均値)は記憶部7bにより記憶されており、比較する際に読み込まれて用いられる。
【0048】
設定部7eは、入力部7cに対する操作者の入力操作に応じて、冷媒漏れ検知に関する各種情報を設定し、その設定した各種情報を記憶部7bに送信して登録する。これに応じて記憶部7bは各種情報を記憶することになる。
【0049】
なお、前述の判断部7dや設定部7eは、電気回路などのハードウエアで構成されても良く、あるいは、これらの機能を実行するプログラムなどのソフトウエアで構成されても良い。また、判断部7dや設定部7eはハードウエア及びソフトウエアの両方の組合せにより構成されても良い。
【0050】
ここで、冷媒漏れが発生した場合の過冷却度及び吐出過熱度の変化について図3及び図4を参照して説明する。なお、冷媒漏れによる過冷却度及び吐出過熱度の変化量はショーケース(あるいは冷蔵庫)ごとに異なるものである。
【0051】
図3及び図4は、異なるショーケースにおいて冷媒漏れが発生した場合の過冷却度と吐出過熱度の変化をそれぞれ示すグラフである。図3及び図4において、横軸は日数を表し、縦軸は過冷却度(K)及び吐出過熱度(K)を表す。特に、図3では、白三角(△)が過冷却度を示し、黒三角(▲)が吐出過熱度を示し、図4では、白四角(□)が過冷却度を示し、黒四角(■)が吐出過熱度を示す。
【0052】
なお、過冷却度及び吐出過熱度は、一日分の平均値(あるいは店舗の営業時間分の平均値でも良い)が取られて毎日算出されている。また、管理者がショーケースの庫内温度上昇などにより冷媒漏れを発見し、その報告を受けて保守者が冷媒を再封入した日が横軸の0点である。このため、例えば、横軸の−60は60日前のデータ(過去データ)である。
【0053】
図3に示すように、過冷却度(△)及び吐出過熱度(▲)は、冷媒漏れを発見した15日(横軸の−15)ぐらい前から変化しており、この冷凍装置の冷媒漏れは多く大量であり、短期間で発生している。このように変化量が大きい場合には、判定日の前日や数日前など、判定日に近い過去の過冷却度と吐出過熱度とを冷媒漏れの判定に用いても、過冷却度及び吐出過熱度の変化量が大きいので、冷媒漏れの判定が容易である。
【0054】
図4に示すように、過冷却度(□)及び吐出過熱度(■)は、冷媒漏れを発見した2カ月(横軸の−60)ぐらい前から変化しており、この冷凍装置の冷媒漏れは少なく微量であり、長い期間で発生している。図4に示す過冷却度(□)及び吐出過熱度(■)は、図3に示す過冷却度(△)及び吐出過熱度(▲)に比べても日々の変化量が小さい。このように変化量が小さい場合には、判定日の前日など、判定日に近い過去の過冷却度と吐出過熱度とを冷媒漏れの判定に用いると、過冷却度及び吐出過熱度の変化量が少なく、冷媒漏れの判定は困難となる。このため、比較する過去の過冷却度と吐出過熱度として、1ヵ月などの古いポイントの過冷却度及び吐出過熱度を用いることで、微量な冷媒漏れも容易に判定することが可能となる。
【0055】
次に、前述の冷凍装置1が行う冷媒漏れ検知処理について説明する。なお、冷凍装置1が備える制御装置7が各種プログラム及び各種情報に基づいて冷媒漏れ検知処理を実行する。
【0056】
図5に示すように、まず、制御装置7は設定部7eを用いて、入力部7cに対する操作者(例えば、ユーザ)の入力操作に応じて、比較する過去のデータとして何日前のデータを使用するか、すなわちT2日前を設定する(ステップS1)。例えば、操作者が入力部7cを操作して希望の数値を入力すると、その入力に応じて設定部7eがT2日前を設定して記憶部7bに登録する。
【0057】
なお、平均する期間(平均期間)であるT1期間、過冷却度の判定値である変化許容値T3及び吐出過熱度の判定値である変化許容値T4も、例えばユーザや保守作業員などにより前述と同様に予め設定されている。したがって、T1やT2、T3、T4は変更可能な数値である。
【0058】
次いで、制御装置7は判断部7dを用いて、運転条件がガス漏れ判定開始条件に適合したか否かを判断する(ステップS2)。例えば、判断部7dは、蒸発器4に対する除霜が終了してから所定の一定時間が経過したか否かを判定することによって、運転条件がガス漏れ判定開始条件に適合したか否かを判断する。なお、制御部7aはタイマ機能を有しており、除霜が終了してからの経過時間を計測することが可能である。
【0059】
ここで、一定時間とは、除霜後、蒸発器4に対応する負荷側のショーケースの庫内温度が安定する定常状態になる時間であり、記憶部7bに予め設定されている。除霜運転(霜取り運転)は、ショーケースの蒸発器4に付着した霜を除霜ヒータにより溶かす除霜(デフロスト)を行う運転である。このとき、除霜運転を行うショーケースに対応する開閉弁5aは閉じられ、そのショーケースの蒸発器4に対する冷媒供給は停止される。この除霜にかかる除霜時間は、例えば数十分から数時間までの範囲内で記憶部7bに設定されている。また、除霜運転は、例えば、毎日同時刻に実行されるように設定されている。
【0060】
このような除霜運転後には、必ず復帰運転であるプルダウンが実行される。このプルダウンとは、除霜により上昇した庫内温度を所定の設定温度に復帰させることであり、プルダウン時間はその庫内温度が所定の設定温度に到達するまでの時間である。プルダウンでは、プルダウン時間を短縮するため、ひいては冷却対象である商品の品質低下を防止するため、通常冷凍機2はフル稼働の冷却運転を行い、庫内温度が所定の設定温度で安定すると、定常運転に戻る。この定常運転に戻ったタイミングがガス漏れ判定開始のタイミングとなる。
【0061】
ステップS2において、運転条件がガス漏れ判定開始条件に適合したと判断した場合には(ステップS2のYES)、T1期間の平均の過冷却度A及び吐出過熱度Bを算出し、それらの算出日(日付)に関連付けて記憶部7bに保存する(ステップS3)。一方、運転条件がガス漏れ判定開始条件に適合していないと判断した場合には(ステップS2のNO)、ステップS2に処理を戻し、運転条件がガス漏れ判定開始条件に適合することに待機する。
【0062】
前述のステップS3では、判断部7dは、高圧圧力から冷媒の凝縮温度を算出し、T1期間の平均の過冷却度A(過冷却度のT1期間の平均値)を求め、さらに、T1期間の平均の吐出過熱度B(吐出過熱度のT1期間の平均値)を求め、それらの算出日に関連付けて過去データとして記憶部7bに保存(登録)する。ここで、例えば、T1期間が1日に設定されている場合には、過冷却度及び吐出過熱度は対応する日付に関連付けられて毎日保存されることになる(図3又は図4参照)。
【0063】
なお、前述の高圧圧力を高圧圧力検出部11により検出することが何らかの要因(例えば、検出部故障や配線異常など)によって不可能である場合には、その高圧圧力から求める凝縮温度にかえて、配管温度検出部9により検出された配管温度(凝縮器2b1の出口側の配管温度)、あるいは、配管温度検出部10により検出された配管温度(受液器2cの出口側の配管温度)を凝縮温度として用いる。
【0064】
ステップS3の処理後、制御装置7は判断部7dを用いて、過去T2日前の過冷却度−過冷却度Aが変化許容値T3よりも大きいか否かを判断し(ステップS4)、過去T2日前の過冷却度−過冷却度Aが変化許容値T3よりも大きいと判断すると(ステップS4のYES)、次に、過去T2日前の吐出過熱度−吐出過熱度Bが変化許容値T4よりも大きいか否かを判断し(ステップS5)、過去T2日前の吐出過熱度−吐出過熱度Bが変化許容値T4よりも大きいと判断すると(ステップS5のYES)、冷媒漏れ有りと判定する(ステップS6)。
【0065】
ここで、例えば、T2日前がステップS1において1日前に設定されている場合には、
1日前の過冷却度と当日の過冷却度Aとの変化量を変化許容値T3と比較し、さらに、1日前の吐出過熱度と当日の吐出過熱度Bとの変化量を変化許容値T4と比較する。このとき、変化許容値T3及び変化許容値T4は適宜設定されており、一例として図3に示すように過冷却度及び吐出過熱度が変化する場合、冷媒漏れ有りと判定される。また、T2日前がステップS1において60日前に設定されている場合には、60日前の過冷却度と当日の過冷却度Aとの変化量を変化許容値T3と比較し、さらに、60日前の吐出過熱度と当日の吐出過熱度Bとの変化量を変化許容値T4と比較する。このときも、変化許容値T3及び変化許容値T4は適宜設定されており、一例として図4に示すように過冷却度及び吐出過熱度が変化する場合、冷媒漏れ有りと判定される。
【0066】
なお、ステップS4において、過去T2日前の過冷却度−過冷却度Aが変化許容値T3より大きくなくT3以下であると判断した場合(ステップS4のNO)、又は、ステップS5において、過去T2日前の吐出過熱度−吐出過熱度Bが変化許容値T4より大きくなくT4以下であると判断した場合(ステップS5のNO)には、冷媒漏れ無しと判定し、ステップS2に処理を戻す。また、ステップS6において冷媒漏れ有りを判定した場合には、冷媒漏れが発生していることをランプや音、表示部などの報知装置により報知する。
【0067】
このような冷媒漏れ検知処理では、過冷却度の平均値及び吐出過熱度の平均値が過去データに比べて許容値よりも大きくなっていた場合には、冷媒漏れが発生したと判断し(冷媒漏れ有り)、逆に過冷却度の平均値及び吐出過熱度の平均値が過去データに比べて許容値以下である場合には、冷媒漏れが発生していないと判断する(冷媒漏れ無し)。すなわち、高圧圧力、液配管温度(過冷却部2b2の出口側の配管温度)及びガス配管温度(圧縮機2aの出口側の配管温度)の三要素の測定のみで冷媒漏れを検知することが可能であり、簡略な構成で安価に冷媒漏れを検知することができる。また、過冷却度と吐出過熱度を過去のデータと比較することで、早期の冷媒漏れ検知を可能にし、誤検知を防いで検知の精度を高めることができる。さらに、過去のデータのポイントを1日から1ヵ月などの長い期間で選択可能にしたため、過去のデータのポイントを古いポイントに設定することが可能となり、微量の冷媒漏れも確実に検知することができる。
【0068】
ここで、現在主流となっている冷凍機は、圧縮機の吐出温度上昇を防ぐために冷凍機の液冷媒を使用して圧縮機の吐出温度を下げるインジェクション制御を行っている。さらに、省エネルギーを図るために液冷媒の過冷却とインジェクション制御を兼用した冷凍機も出てきている。このため、本実施形態では、冷凍機2の液冷媒で吐出温度(ガス配管温度)を下げるインジェクション制御に着目している。冷媒漏れ傾向が生じると過冷却度は小さくなるが、同時に吐出温度を下げるための冷媒も少なくなるため、吐出温度は上昇することになる。ただし、単に吐出温度を見るだけでは、夏場など、冷凍機の高圧圧力及び吐出温度が高くなる現象があるため、冷媒漏れ有無の判断に、凝縮温度とガス配管温度(吐出配管温度)との差である吐出過熱度を追加している。
【0069】
また、冷媒漏れが発生しているか否かを判断するための過冷却度や吐出過熱度の値としては、瞬時や1時間などの短期間のデータではなく、1日や店舗開店時間内などの平均値を用いることで、冷媒漏れの早期発見と誤検知を少なくして検知精度を高めることが可能である。さらに、冷凍機2の運転状況の変化で過冷却度や吐出過熱度は変動するが、特に、スーパーマーケットにあるショーケースを冷却する冷凍機の運転は昼夜や季節によって変化するため、冷媒漏れ有無の判断に一定期間の過冷却度や吐出過熱度の平均値を使用することが好適である。
【0070】
また、過冷却度と吐出過熱度の平均値からの冷媒漏れ有無の判断は、規定値(事前に決めた値)との比較ではなく、過去データとの比較を行うことで早期に冷媒漏れを検知することが可能になり、さらに、誤検知を抑えることが可能になる。特に、冷凍機2の過冷却度や吐出過熱度は冷凍機のメーカーや機種、設置状況に応じて異なるため、冷媒漏れ有無の判断を規定値で行うと、検知の遅れや誤検知が発生する可能性がある。このため、過去データ、すなわち過去の過冷却度及び吐出過熱度を用いて冷媒漏れの有無を判断することが望ましい。
【0071】
また、冷媒漏れ検知は、1日などの期間の過冷却度及び吐出過熱度のそれぞれの平均値を演算し、過去の過冷却度及び吐出過熱度との差を見て行われる。冷媒漏れ検知は、過去の過冷却度と吐出過熱度との差が許容値以上のときに、冷媒漏れと判定する。ただし、微量の冷媒漏れの場合、比較する過去のデータのポイントが1日前など近いと、過去の過冷却度や吐出過熱度との差が小さいため、冷媒漏れ有りと検知できない可能性がある。このため、今回、比較する過去のデータのポイントを選択可能とすることで、1ヵ月などの古いポイントでの比較を可能にしたため、過冷却度及び吐出過熱度の変化量で微量の冷媒漏れも検知することができる。
【0072】
以上説明したように、本発明の実施の一形態によれば、高圧圧力、液配管温度(過冷却部2b2の出口側の配管温度)及びガス配管温度(圧縮機2aの出口側の配管温度)から冷媒漏れの有無を判断することによって、高価なセンサや複雑なシステム、複雑な計測ソフトなどを必要とせず、冷媒漏れを確実に検知することが可能となるので、簡略な構成及び低コストで冷媒漏れを精度良く検知することができる。特に、高圧圧力から冷媒の凝縮温度を算出し、算出した凝縮温度と液配管温度との温度差である過冷却度を求めるとともに、算出した凝縮温度とガス配管温度との温度差である吐出過熱度を求め、それらの過冷却度の所定期間の平均値及び吐出過熱度の所定期間の平均値に応じて、冷媒漏れの有無を判断することから、冷媒漏れの誤検知を少なくして検知精度を高めることができる。
【0073】
ここで、例えば、スーパーマーケットで使用している冷凍機2は複数台の圧縮機2aを搭載していることがある。この場合にはその圧縮機2aの台数に合わせてガス配管温度検出部12も複数個設けられており、ガス配管温度が圧縮機2aの台数分存在することになる。このような場合には、ガス配管温度と凝縮温度との差である吐出過熱度を求めるとき、複数のガス配管温度の中から一番高いガス配管温度を用いるようにする。これにより、吐出過熱度の変化量を確実に把握することが可能となるので、冷媒漏れの誤検知を少なくして検知精度を高めることができる。
【0074】
なお、本発明は、前述の実施形態に限るものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々変更可能である。例えば、前述の実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態に亘る構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0075】
1 冷凍装置
2 冷凍機
2a 圧縮機
2b 凝縮装置
2b1 凝縮器
2b2 過冷却部
2b3 ファン
2c 受液器
3 減圧部
4 蒸発器
5 冷媒配管
5a 開閉弁
6 インジェクション配管
6a 開閉弁
6b 減圧部
7 制御装置
7a 制御部
7b 記憶部
7c 入力部
7d 判断部
7e 設定部
8 液配管温度検出部
9 配管温度検出部
10 配管温度検出部
11 高圧圧力検出部
12 ガス配管温度検出部
図1
図2
図3
図4
図5