特許第6095156号(P6095156)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6095156
(24)【登録日】2017年2月24日
(45)【発行日】2017年3月15日
(54)【発明の名称】光触媒ガラス
(51)【国際特許分類】
   C03C 10/02 20060101AFI20170306BHJP
   C03C 3/062 20060101ALI20170306BHJP
   B01J 35/02 20060101ALI20170306BHJP
   B01J 37/08 20060101ALI20170306BHJP
   B01J 23/78 20060101ALI20170306BHJP
【FI】
   C03C10/02
   C03C3/062
   B01J35/02 J
   B01J37/08
   B01J23/78
【請求項の数】3
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2013-22250(P2013-22250)
(22)【出願日】2013年2月7日
(65)【公開番号】特開2014-152062(P2014-152062A)
(43)【公開日】2014年8月25日
【審査請求日】2016年1月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】305027401
【氏名又は名称】公立大学法人首都大学東京
(73)【特許権者】
【識別番号】000125347
【氏名又は名称】学校法人近畿大学
(74)【代理人】
【識別番号】100150876
【弁理士】
【氏名又は名称】松山 裕一郎
(72)【発明者】
【氏名】久冨木 志郎
(72)【発明者】
【氏名】岩沼 準
(72)【発明者】
【氏名】秋山 和彦
(72)【発明者】
【氏名】西田 哲明
【審査官】 吉野 涼
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−263180(JP,A)
【文献】 特開2001−259436(JP,A)
【文献】 Shiro Kubuki, et al.,Hyperfine Interact,2012年10月12日,Vol.218,P.41-45
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03C 1/00−29/00
B01J 23/78
B01J 35/02
B01J 37/08
JSTPlus/JST7580(JDreamIII)
INTERGLAD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルカリ金属酸化物0〜30重量部、アルカリ土類金属酸化物0〜30重量部、遷移金属酸化物x重量部、及びSiOが(70−x)重量部(ただし、これらの総合計は100重量部で、xは30〜65の数である)を含有する組成物から成り、
上記アルカリ金属酸化物がNaO、上記アルカリ土類金属酸化物がCaO、上記遷移金属酸化物がFeであり、
ヘマタイト相(α−Fe)の結晶相が形成された結晶化ガラスである、
光触媒ガラス。
【請求項2】
上記xが50である請求項1記載の光触媒ガラス
【請求項3】
請求項1記載の光触媒ガラスの製造方法であって、
NaO、CaO、Fe、及びSiOを混合して成る混合物を1000〜1400℃で加熱して溶融させた後冷却して得られる光触媒ガラス前駆体を、600〜1200℃で加熱処理することを特徴とする光触媒ガラスの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光触媒ガラスに関し、さらに詳しくは、可視光で光触媒活性を示し、合成が容易で大量生産が可能な光触媒ガラスに関するものである。
【背景技術】
【0002】
酸化チタンに代表される光触媒は、光を照射することにより触媒作用を示す触媒であり、幅広い分野で用いられている。その中でアナターゼ型の酸化チタンはバンドギャップが大きく触媒活性が高いのでよく用いられている。
例えば、特許文献1には、熱強化ガラスとしての所定の性状を有し、かつ光触媒作用をも兼ね備えた熱強化ガラスとして、熱強化されたガラス基板の少なくとも一つの面に光触媒層を有することを特徴とするガラス成形体、及びガラス基板の表面に、スパッタリングを用いてアモルファス二酸化チタンの層を施与し、次に、全体を加熱してアモルファス二酸化チタンをアナターゼ型二酸化チタンに相転移させ、次に、全体をより高温に加熱した後、急冷して熱強化することを特徴とするガラス成形体が提案されている。
しかしながら、アナターゼ型酸化チタンは、結晶学的に不安定であるため合成が困難であるということや、紫外光によってのみ触媒活性を示し紫外光より長波長すなわち低エネルギーの可視光線の照射では触媒活性は発現しないという問題がある。
そこで、このようなアナターゼ型の光触媒の問題点を解消する光触媒の開発が行われている。
例えば、特許文献2には、可視光線領域の光も利用できる優れた光触媒性を有する可視光線応答型光触媒として、蒸着法あるいはスパッタリング法により形成した酸化チタン薄膜でありアナターゼ型酸化チタンとルチル型酸化チタンとの混晶構造を有する酸化チタンを主成分とする薄膜からなる可視光線応答型光触媒が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−137603号公報
【0004】
【特許文献2】特開2004−255332号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献2にかかる提案は、可視光における光触媒活性が未だ不十分であり、スパッタリング法での合成のため、大量に生産することは極めて困難であるという問題がある。
このため、アナターゼ型酸化チタンにおける問題点を解消し、可視光で光触媒活性を示し、合成が容易で大量生産が可能な光触媒の開発が要望されているのが現状である。
【0006】
したがって、本発明の目的は、可視光で十分な光触媒活性を示し、合成が容易で大量生産が可能な光触媒を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解消すべく鋭意検討した結果、各種金属酸化物を混合して特定の温度条件で焼成処理を行って得られたガラスが光触媒活性を有することを知見し、最適な金属酸化物の組み合わせや配合比率についてさらに改良を進め、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は以下の各発明を提供するものである。
1.アルカリ金属酸化物0〜30重量部、アルカリ土類金属酸化物0〜30重量部、遷移金属酸化物x重量部、及びSiOが(70−x)重量部(ただし、これらの総合計は100重量部で、xは30〜65の数である)を含有する組成物から成る光触媒ガラス。
2.上記アルカリ金属酸化物がNaO、上記アルカリ土類金属酸化物がCaO、上記遷移金属酸化物がFeである1に記載の光触媒ガラス。
3.上記組成物を高温で加熱処理して得られる1〜2のいずれかに記載の光触媒ガラス。
4.1記載の光触媒ガラスの製造方法であって、
上記アルカリ金属酸化物の原料、上記アルカリ土類金属酸化物の原料、上記遷移金属酸化物、及び上記SiOが(70−x)重量部を混合して成る混合物を高温で加熱処理する
ことを特徴とする製造方法。
5.上記の高温で加熱処理は、1000〜1400℃で加熱して溶融させた後冷却して得られる光触媒ガラス前駆体を、600〜1200℃で加熱処理することにより行う
4に記載の製造方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明の光触媒ガラスは、可視光で十分な光触媒活性を示し、合成が容易で大量生産が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、実施例1で得られた光触媒ガラスの効果を測定した結果を示す図である。
図2図2は、比較例1で得られた熱処理ガラスの効果を測定した結果を示す図である。
図3図3は、実施例1で得られた光触媒ガラスの効果を可視光照射なしの条件で測定した結果を示す図である。
図4図4は、比較例1で得られた熱処理ガラスの効果を可視光照射なしの条件で測定した結果を示す図である。
図5図5は、実施例1及び2で得られた光触媒ガラス及び比較例1で得られた熱処理ガラスの効果を測定した結果を示す図である。
図6図6は、比較例3〜5で得られた光触媒ガラス前駆体の効果を測定した結果を示す図である。
図7図7は、実施例1で得られた光触媒ガラスの効果を質量分析装置で測定した結果を示す図である。
図8図8は、比較例1で得られた熱処理ガラスの効果を質量分析装置で測定した結果を示す図である。
図9図9は、実施例1で得られた光触媒ガラスの効果を質量分析装置で測定した結果を示す図である。
図10図10は、比較例1で得られた熱処理ガラスの効果を質量分析装置で測定した結果を示す図である。
図11図11は、実施例1及び2で得られた光触媒ガラス並びに比較例1及び2で得られた熱処理ガラスのメスバウアースペクトルを示す図である。
図12図12は、実施例1及び2で得られた光触媒ガラス並びに比較例1及び2で得られた熱処理ガラスのX線回折パターンを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明をさらに詳細に説明する。
本発明の光触媒ガラスについて説明する。
本発明の光触媒ガラスは、アルカリ金属酸化物、アルカリ土類金属酸化物、遷移金属酸化物、及びSiOを配合して得られる組成物から成る光触媒ガラスである。
ここで、一般にガラスとは液体を溶融状態から冷却したとき、結晶せずに固化し、原子の配列が液体に似た不規則な状態になっている物質をいう。
本発明の光触媒ガラスは、アモルファスなガラス内に結晶が析出したいわゆる結晶化ガラスで、且つ光を照射することにより触媒作用を示すものを意味する。
【0011】
<アルカリ金属酸化物>
上記アルカリ金属酸化物としては、NaO、LiO、KOが好ましく挙げられ、NaOが特に好ましく挙げられる。
上記アルカリ金属酸化物上記特定の配合量は、上記4成分の合計量100重量部に対し0〜30重量部の割合であり、10〜20重量部の割合で含有するのが本発明の所望の効果を得る上で好ましい。
上記アルカリ金属酸化物の割合が上記組成物100重量部に対し30重量部を超えると、光触媒活性が得られない。
【0012】
<アルカリ土類金属酸化物>
上記アルカリ土類金属酸化物としては、CaO、SrO、BaOが好ましく挙げられ、CaOが特に好ましく挙げられる。
上記アルカリ土類金属酸化物としては、上記酸化物に加えてマグネシウムの酸化物、MgOも含まれる。
上記アルカリ土類金属酸化物上記特定の配合量は、上記4成分の合計量100重量部に対し0〜30重量部の割合であり、10〜20重量部の割合で含有するのが本発明の所望の効果を得る上で好ましい。
上記アルカリ金属酸化物の割合が上記組成物100重量部に対し30重量部を超えると、光触媒活性が得られない。
【0013】
<遷移金属酸化物>
上記遷移金属酸化物としては、Fe、FeO、Feが好ましく挙げられ、Feが特に好ましく挙げられる。
上記遷移金属酸化物の上記特定の配合量は、上記4成分の合計量100重量部に対し、x重量部(xは30〜65の数を示すのが本発明の所望の効果を得るうえで好ましい)である。
上記xが30未満であるか、又は65を超えると、光触媒活性が減少する。
【0014】
<二酸化ケイ素>
上記二酸化ケイ素(SiO)の上記特定の配合量は、上記4成分の合計量100重量部に対し、(70−x)重量部の割合である。この範囲外の場合には光触媒活性が低下する。
【0015】
(その他の成分)
本発明の光触媒ガラスの原料としての上記組成物は、上記4成分のみからなるものでもよいが、上記4成分に加えて本発明の効果を損なわない範囲で他の成分を含有させてもよい。
このような他の成分としては、例えば、MnO、CuO、CuO等が挙げられる。
【0016】
そして、本発明の光触媒ガラスは上記組成物を、特定の加熱処理をする等して得られるものである。
ここで、上記の特定の加熱処理は高温での加熱処理であり、上記組成物(又は後述する組成物原料)を混合して混合物を得、それを1つのステップで加熱処理を行ってもよいが、好ましくは高温の加熱処理を2回行う。
すなわち、上記組成物(又は組成物原料)を混合して高温で溶融する第1の加熱処理と、その後冷却して得られた光触媒ガラス前駆体を、再度高温で加熱処理する第2の加熱処理とを行うのが好ましい。
第1の加熱処理は1000〜1400℃の温度条件が好ましい。
温度が上記範囲外であると触媒活性がなくなる場合があるので上記範囲内とするのが好ましい。
また、第2の加熱処理は600〜1200℃の温度範囲、好ましくは800〜1000℃の温度範囲とするのが好ましい。温度が上記範囲外であると触媒活性がなくなる場合があるので上記範囲内とするのが好ましい。
このようにして得られる本発明の光触媒ガラスは、上記4成分が加熱処理により反応する等してガラス内にヘマタイト相(α−Fe)の結晶相が形成されたいわゆる結晶化ガラスである。
換言すると、本発明の光触媒ガラスは、上述の各成分からなり、ガラス内にヘマタイト相が形成されてなる結晶化ガラスである。ここでヘマタイト相の形成割合は特に制限されないが、全体の30〜50質量%程度が好ましい。
【0017】
なお、本発明の光触媒ガラスは、上述の加熱処理により得られるものに限定されず、例えば、上記組成物をゾルゲル法によりガラス化して成るものであってもよい。
【0018】
<製造方法>
本発明の光触媒ガラスの製造方法について詳細に説明する。
本発明の光触媒ガラスは、上記組成物について高温で加熱処理を行って製造することができる。すなわち、上述の第1及び第2の加熱処理を行って製造することができる。
【0019】
(組成物の製造)
上記組成物は、上記4成分をそのまま混合する等して調整することもできるが、特にアルカリ金属酸化物やアルカリ土類金属酸化物等については、これらの原料を遷移金属酸化物及びSiOに混合することで得ることができる(これらの原料を混合してなるものを以下「組成物原料」という)。
上記組成物の原料としては、NaCOやCaCO等の加熱により酸化物を形成する化合物を用いることができる。また、組成物を調整する際の各原料及び各成分の形状は特に制限されず、粉末状など種々形状とすることができ、特に粉末状とするのが各成分及び各原料が均一に混合されるので好ましい。粉末状とする際の粒径などは特に制限がないが、粒径が20〜100μmの範囲内であると特に好ましい。
(第1の加熱処理)
そして、本発明においては上記組成物(又は組成物原料)を上記の第1の加熱処理を行った後、冷却させることにより光触媒ガラス前駆体(組成物原料を用いた場合でも、光触媒ガラス前駆体は上記組成物からなるものとなる)を得る。加熱条件は上述のとおりであるが処理時間は30〜300分であるのが好ましく、30〜200分であるのがより好ましく、100〜200分であるのが最も好ましい。
このようにして得られる光触媒ガラス前駆体は、冷却して次の加熱処理を行うことにより本発明の光触媒ガラスとすることができるが、このように溶融させた後冷却して得られるものはアモルファスなガラス状であり、本発明の光触媒ガラス前駆体と言える。
上記溶融後の冷却は、氷水で冷却する等の手法により急冷することが好ましい。
上記の処理以外に、本発明の効果を損なわない範囲で、他の処理を行ってもよく、例えば、上記の溶融、急冷時に成形処理などを行ってもよい。
【0020】
(第2の加熱処理)
上記第2の加熱処理は、上述のように上記混合物を溶融させた後の光触媒ガラス前駆体を加熱することにより行う。この際の温度条件は上述のとおりであるが、処理時間は、100〜200分とするのが好ましい。
また、処理に用いる装置は、特に制限されず、例えば、電気炉等の装置を用いることができる。
(加熱処理の冷却)
上記加熱処理後には冷却を行うのが好ましく、この際の冷却は、加熱処理容器を氷水で冷却する、自然冷却する等の手法により行うことができる。
【実施例】
【0021】
以下、本発明について実施例及び比較例を示してさらに具体的に説明するが本発明はこれらに何ら制限されるものではない。
【0022】
〔実施例1〕(光触媒ガラスの製造:上記4成分の合計量に対しFeが50重量部)
組成物の原料として、アルカリ土類金属としてのNaCO粉末 0.256g(上記4成分の合計量100重量部に対してNaO換算で15重量部)、アルカリ土類金属としてのCaCO粉末 0.267g(上記4成分の合計量100重量部に対してCaO換算で15重量部)、遷移金属酸化物としてのFe粉末 0.5g(上記4成分の合計量100重量部に対して50重量部)、およびSiO 0.2g(上記4成分の合計量100重量部に対して20重量部)を秤量し、白金るつぼに投入し混合した。
各粉末を投入した白金るつぼを電気炉に投入し第1の加熱処理として1400℃で1時間の条件で加熱し粉末を溶融させた。溶融処理後の白金るつぼの底を氷水に浸すことで急冷して該溶融物を固体化し、光触媒ガラス前駆体1.0gを得た。
次に、第2の加熱処理として、得られた光触媒ガラス前駆体1.0gを粉砕後、白金るつぼに投入し、電気炉を用いて1000℃、1時間の条件で加熱処理を行った。
加熱処理後、本発明の光触媒ガラス1.0gを得た。
得られた光触媒ガラスは、黒褐色で光沢のあるものであった。
【0023】
〔実施例2〕(光触媒ガラスの製造:上記4成分の合計量に対しFeが30重量部)
遷移金属酸化物としてのFe粉末を0.3g(上記4成分の合計量100重量部に対して30重量部)及びSiOを0.4g(上記4成分の合計量100重量部に対して40重量部)に変えた以外は、実施例1と同様にして、光触媒ガラス前駆体を得、該光触媒ガラス前駆体を第2の加熱処理し、本発明の光触媒ガラス1.0gを得た。
【0024】
〔比較例1〕(熱処理ガラスの製造:上記4成分の合計量に対しFeが10重量部)
遷移金属酸化物としてのFe粉末を0.1g(上記4成分の合計量100重量部に対して10重量部)及びSiOを0.6g(上記4成分の合計量100重量部に対して60重量部)に変えた以外は、実施例1と同様にして、光触媒ガラス前駆体を得、該光触媒ガラス前駆体を第2の加熱処理し、熱処理ガラス1.0gを得た。
ここで、熱処理ガラスとは上記光触媒ガラス前駆体を加熱処理したものをいう。
【0025】
〔比較例2〕(熱処理ガラスの製造:上記4成分の合計量に対しFeが5重量部)
遷移金属酸化物としてのFe粉末を0.05g(上記4成分の合計量100重量部に対して5重量部)及びSiOを0.65g(上記4成分の合計量100重量部に対して65重量部)に変えた以外は、実施例1と同様にして、光触媒ガラス前駆体を得、該光触媒ガラス前駆体を第2の加熱処理し、熱処理ガラス1.0gを得た。
【0026】
〔比較例3〕(光触媒ガラス前駆体の製造:上記4成分の合計量に対しFeが10重量部)
第2の加熱処理以降の処理を行わない以外は、比較例1と同様にして、光触媒ガラス前駆体を得た。
【0027】
〔比較例4〕(光触媒ガラス前駆体の製造:上記4成分の合計量に対しFeが30重量部)
第2の加熱処理以降の処理を行わない以外は、実施例2と同様にして、光触媒ガラス前駆体を得た。
【0028】
〔比較例5〕(光触媒ガラス前駆体の製造:上記4成分の合計量に対しFeが50重量部)
第2の加熱処理以降の処理を行わない以外は、実施例1と同様にして、光触媒ガラス前駆体を得た。
【0029】
〔試験例1〕
実施例1で得られた光触媒ガラス及び比較例1で得られた熱処理ガラスを、それぞれ直径50〜100μmになるように粉砕した後0.08gを別々の容器に入れ、メチレンブルー溶液(10μmol/L濃度)20mLで浸漬させた。浸漬中は、以下の条件で可視光照射を行った。
条件:
装置:装置名:MH−100 Illuminator(Edmund Optics社製)
光源:metal halide
波長:420〜750nm
光量:100W
また、比較対象として可視光照射を行わない試験も行った。
浸漬処理直後(0日)並びに浸漬処理開始後1日,2日,3日,4日,6日,8日及び10日にそれぞれの容器からメチレンブルー水溶液を採取し紫外可視分光光度計(装置名:UV−1700(SHIMADZU社製)以下同じ)を用いてスペクトル測定を行った。
その結果を図1(実施例1の光触媒ガラスを可視光照射のもとで行った試験)、図2(比較例1の熱処理ガラスを可視光照射のもとで行った試験)、図3(実施例1の光触媒ガラスを可視光照射なしで行った試験)及び図4(比較例1の熱処理ガラスを可視光照射なしで行った試験)に示す。
【0030】
〔試験例2〕
実施例1及び2で得られた光触媒ガラス、及び、比較例1で得られた熱処理ガラスを、それぞれ直径50〜100μmになるように粉砕した後0.08gを別々の容器に入れ、メチレンブルー溶液(10μmol/L濃度)20mLで可視光照射の下で浸漬させた。
また、ブランクとして上記のメチレンブルー溶液のみが入った容器も作成した。
なお、可視光照射は、試験例1と同じ条件で行った。
浸漬処理直後(0日)並びに浸漬処理開始後1日,2日,3日,4日,6日,7日及び10日にそれぞれの容器からメチレンブルー水溶液を採取し紫外可視分光光度計を用いてスペクトル測定を行い、200〜800nmの吸光度を測定し、メチレンブルー溶液の濃度を算出した。
その結果を図5に示す。
【0031】
〔試験例3〕
比較例3〜5で得られた光触媒ガラス前駆体を、それぞれ直径50〜100μmになるように粉砕した後0.08gを別々の容器に入れ、メチレンブルー溶液(10μmol/L濃度)20mLで可視光照射の下で浸漬させた。
また、ブランクとして上記のメチレンブルー溶液のみが入った容器も作成した。
なお、可視光照射は、試験例1と同じ条件で行った。
浸漬処理直後(0日)並びに浸漬処理開始後1日,2日,3日,4日,6日,7日、8日及び10日にそれぞれの容器からメチレンブルー水溶液を採取し、試験例2と同様にして、メチレンブルー溶液の濃度を算出した。
その結果を図6に示す。
【0032】
〔試験例4〕
実施例1で得られた光触媒ガラス及び比較例1で得られた熱処理ガラスを、それぞれ直径50〜100μmになるように粉砕した後0.08gを別々の容器に入れ、メチレンブルー溶液(10μmol/L濃度)20mLで可視光照射の下で浸漬させた。
なお、可視光照射は実施例1と同じで行い、比較対象として可視光照射を行わない試験も行った。
浸漬処理開始後10日にそれぞれの容器からメチレンブルー水溶液を採取し、エレクトロスプレーイオン化質量分析装置(装置名micro TOF II−SDT1(BRUKER社製))を用いて以下の条件で、質量スペクトルを測定した。
条件:
測定範囲:50〜400(m/z)
Polarity:positive
Capillary Exit:150V
Hexapole RF:40Vpp
その結果を図7(実施例1の光触媒ガラスを可視光照射のもとで行った試験)、図8(比較例1の熱処理ガラスを可視光照射のもとで行った試験)、図9(実施例1の光触媒ガラスを可視光照射なしで行った試験)及び図10(比較例1の熱処理ガラスを可視光照射なしで行った試験)に示す。
【0033】
〔試験例5〕(メスバウアースペクトル解析)
実施例1及び2で得られた光触媒ガラス、並びに、比較例1及び2で得られた熱処理ガラスの57Fe−メスバウアースペクトル解析を行った。
メスバウアースペクトルの測定は室温にて等加速度法で測定を行った。異性体シフトの基準物質としてはα−Fe箔を用いた。
解析装置として、Mossbauer driving unit MDU−1200(Wissenschaftliche Elektronik社製)、Digital function generator DFG−1000(Wissenschaftliche Elektronik社製)、High Voltage Power Supply 456(ORTEC社製)、Amplifier 485(ORTEC社製)、Single channel analyzer SCA−550(ORTEC社製)、Multi−Channel Analyzer MCA−7700(SEIKO EG&G社製)を接続したものを使用した。
測定用試料として、光触媒ガラスまたは熱処理ガラスをよく粉砕した後、該粉砕物をセロハンテープで挟み込んだものを使用した。
また、線源にはRh マトリックスに分散させた線量925Bqの57Coを使用した。
その結果を図11に示す。
【0034】
〔試験例6〕(X線回折解析)
実施例1及び2で得られた光触媒ガラス、並びに、比較例1及び2で得られた熱処理ガラスのX線回折解析を行った。
X線回折分析は、粉末X線回折分析装置(装置名RINT−TTR III(Rigaku社製))を用いた。
光触媒ガラスまたは熱処理ガラスをよく粉砕した後、該粉砕物をガラス製サンプルホルダーの表面に掘った溝に平らに埋め込み、サンプルホルダーを装置の測定部に装着し、以下の条件で測定を行った。
条件:
装置:粉末X線回折分析装置(装置名RINT−TTR III(Rigaku社製))
X線の照射線源:Cu−Kα線
管電圧:50kV
管電流:300mA
サンプリング角度:0.02degree
走査速度:5degree/min
測定範囲:回折角2θ=10〜80
その結果を図12に示す。
【0035】
以下、結果について説明する。
図1〜4は、実施例1で得られた光触媒ガラス及び比較例1で得られた熱処理ガラスで、可視光照射下または可視光照射なしの条件でメチレンブルー溶液を処理し、処理後のメチレンブルー溶液の紫外−可視スペクトルを経時的に測定した結果を示すチャートである。
なお、結果のチャート線の色は浸漬時間別の結果を示し浸漬経過日数が増加するにつれてチャートの線の色を薄く記載しており、浸漬開始直後(最も濃い色)、浸漬開始後1日,2日,3日,4日,6日,8日及び10日(最も薄い色)の結果を示している。
可視光照射下で酸化鉄含有量が高いもの(図1:実施例1)で、メチレンブルーの分解が早いことが分かる。
【0036】
図5及び図6は、比較例3〜5の光触媒ガラス前駆体、実施例1及び2の光触媒ガラス、及び、比較例1の熱処理ガラスで、可視光照射下または可視光照射なしの条件でメチレンブルー溶液を処理し、処理後のメチレンブルー溶液の紫外−可視スペクトルを測定することによりメチレンブルーの濃度を経時的に測定した結果である。
酸化鉄含有量が高く、加熱処理を行ったのもの(図5:実施例1)で、メチレンブルーの分解が早いことが分かる。
【0037】
図7〜10は、実施例1で得られた光触媒ガラス、及び、比較例1で得られた熱処理ガラスで、可視光照射下または可視光照射なしの条件でメチレンブルー溶液を処理し、処理後10日後のメチレンブルー溶液をエレクトロスプレーイオン化質量分析で測定した結果である。
可視光照射下で酸化鉄含有量が高いもの(図7:実施例1)で、分解生成物のピークが見られ、メチレンブルーの分解が顕著であることが分かる。
これらの結果から、本発明の光触媒ガラスは、可視光により十分な触媒活性を示すことがわかる。
【0038】
図11は、実施例1及び2で得られた光触媒ガラス、並びに、比較例1及び2で得られた熱処理ガラス、のメスバウアースペクトルを示す図である。図中の矢印で示したフィッティングラインは、ヘマタイト(α―Fe)相の析出を示している。
実施例1及び2において、ヘマタイト相が析出しているのがわかる。
なお、比較例1及び2では、ヘマタイト相の析出は観測できなかった。
【0039】
図12は、実施例1及び2で得られた光触媒ガラス、並びに、比較例1及び2で得られた熱処理ガラスのX線回折パターンを示す図である。図中の丸印で示したピークは、ヘマタイト(α―Fe)相を示している。
実施例1及び2において、ヘマタイト相が析出しているのがわかる。
なお、比較例1及び2では、ヘマタイト相の析出は、ほぼ観測できなかった。
これらの結果から、本発明の光触媒ガラスの光触媒活性は、ヘマタイト相の析出に起因すると推定される。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明の光触媒ガラスは、可視光で十分な光触媒活性を示すため、各種触媒として用いることができる他、太陽光パネル等への応用が可能である。
また、電力メーカーの高炉から排出される飛灰(フライアッシュ)を原料として用いて本発明の光触媒ガラスを製造することも可能であると考えられるので、各種施設から排出される無機系廃棄物を本発明の光触媒ガラスとしてリサイクルすることが可能である。
図1
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図5
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図10
図11
図12