【実施例】
【0021】
以下、本発明について実施例及び比較例を示してさらに具体的に説明するが本発明はこれらに何ら制限されるものではない。
【0022】
〔実施例1〕(光触媒ガラスの製造:上記4成分の合計量に対しFe
2O
3が50重量部)
組成物の原料として、アルカリ土類金属としてのNa
2CO
3粉末 0.256g(上記4成分の合計量100重量部に対してNa
2O換算で15重量部)、アルカリ土類金属としてのCaCO
3粉末 0.267g(上記4成分の合計量100重量部に対してCaO換算で15重量部)、遷移金属酸化物としてのFe
2O
3粉末 0.5g(上記4成分の合計量100重量部に対して50重量部)、およびSiO
2 0.2g(上記4成分の合計量100重量部に対して20重量部)を秤量し、白金るつぼに投入し混合した。
各粉末を投入した白金るつぼを電気炉に投入し第1の加熱処理として1400℃で1時間の条件で加熱し粉末を溶融させた。溶融処理後の白金るつぼの底を氷水に浸すことで急冷して該溶融物を固体化し、光触媒ガラス前駆体1.0gを得た。
次に、第2の加熱処理として、得られた光触媒ガラス前駆体1.0gを粉砕後、白金るつぼに投入し、電気炉を用いて1000℃、1時間の条件で加熱処理を行った。
加熱処理後、本発明の光触媒ガラス1.0gを得た。
得られた光触媒ガラスは、黒褐色で光沢のあるものであった。
【0023】
〔実施例2〕(光触媒ガラスの製造:上記4成分の合計量に対しFe
2O
3が30重量部)
遷移金属酸化物としてのFe
2O
3粉末を0.3g(上記4成分の合計量100重量部に対して30重量部)及びSiO
2を0.4g(上記4成分の合計量100重量部に対して40重量部)に変えた以外は、実施例1と同様にして、光触媒ガラス前駆体を得、該光触媒ガラス前駆体を第2の加熱処理し、本発明の光触媒ガラス1.0gを得た。
【0024】
〔比較例1〕(熱処理ガラスの製造:上記4成分の合計量に対しFe
2O
3が10重量部)
遷移金属酸化物としてのFe
2O
3粉末を0.1g(上記4成分の合計量100重量部に対して10重量部)及びSiO
2を0.6g(上記4成分の合計量100重量部に対して60重量部)に変えた以外は、実施例1と同様にして、光触媒ガラス前駆体を得、該光触媒ガラス前駆体を第2の加熱処理し、熱処理ガラス1.0gを得た。
ここで、熱処理ガラスとは上記光触媒ガラス前駆体を加熱処理したものをいう。
【0025】
〔比較例2〕(熱処理ガラスの製造:上記4成分の合計量に対しFe
2O
3が5重量部)
遷移金属酸化物としてのFe
2O
3粉末を0.05g(上記4成分の合計量100重量部に対して5重量部)及びSiO
2を0.65g(上記4成分の合計量100重量部に対して65重量部)に変えた以外は、実施例1と同様にして、光触媒ガラス前駆体を得、該光触媒ガラス前駆体を第2の加熱処理し、熱処理ガラス1.0gを得た。
【0026】
〔比較例3〕(光触媒ガラス前駆体の製造:上記4成分の合計量に対しFe
2O
3が10重量部)
第2の加熱処理以降の処理を行わない以外は、比較例1と同様にして、光触媒ガラス前駆体を得た。
【0027】
〔比較例4〕(光触媒ガラス前駆体の製造:上記4成分の合計量に対しFe
2O
3が30重量部)
第2の加熱処理以降の処理を行わない以外は、実施例2と同様にして、光触媒ガラス前駆体を得た。
【0028】
〔比較例5〕(光触媒ガラス前駆体の製造:上記4成分の合計量に対しFe
2O
3が50重量部)
第2の加熱処理以降の処理を行わない以外は、実施例1と同様にして、光触媒ガラス前駆体を得た。
【0029】
〔試験例1〕
実施例1で得られた光触媒ガラス及び比較例1で得られた熱処理ガラスを、それぞれ直径50〜100μmになるように粉砕した後0.08gを別々の容器に入れ、メチレンブルー溶液(10μmol/L濃度)20mLで浸漬させた。浸漬中は、以下の条件で可視光照射を行った。
条件:
装置:装置名:MH−100 Illuminator(Edmund Optics社製)
光源:metal halide
波長:420〜750nm
光量:100W
また、比較対象として可視光照射を行わない試験も行った。
浸漬処理直後(0日)並びに浸漬処理開始後1日,2日,3日,4日,6日,8日及び10日にそれぞれの容器からメチレンブルー水溶液を採取し紫外可視分光光度計(装置名:UV−1700(SHIMADZU社製)以下同じ)を用いてスペクトル測定を行った。
その結果を
図1(実施例1の光触媒ガラスを可視光照射のもとで行った試験)、
図2(比較例1の熱処理ガラスを可視光照射のもとで行った試験)、
図3(実施例1の光触媒ガラスを可視光照射なしで行った試験)及び
図4(比較例1の熱処理ガラスを可視光照射なしで行った試験)に示す。
【0030】
〔試験例2〕
実施例1及び2で得られた光触媒ガラス、及び、比較例1で得られた熱処理ガラスを、それぞれ直径50〜100μmになるように粉砕した後0.08gを別々の容器に入れ、メチレンブルー溶液(10μmol/L濃度)20mLで可視光照射の下で浸漬させた。
また、ブランクとして上記のメチレンブルー溶液のみが入った容器も作成した。
なお、可視光照射は、試験例1と同じ条件で行った。
浸漬処理直後(0日)並びに浸漬処理開始後1日,2日,3日,4日,6日,7日及び10日にそれぞれの容器からメチレンブルー水溶液を採取し紫外可視分光光度計を用いてスペクトル測定を行い、200〜800nmの吸光度を測定し、メチレンブルー溶液の濃度を算出した。
その結果を
図5に示す。
【0031】
〔試験例3〕
比較例3〜5で得られた光触媒ガラス前駆体を、それぞれ直径50〜100μmになるように粉砕した後0.08gを別々の容器に入れ、メチレンブルー溶液(10μmol/L濃度)20mLで可視光照射の下で浸漬させた。
また、ブランクとして上記のメチレンブルー溶液のみが入った容器も作成した。
なお、可視光照射は、試験例1と同じ条件で行った。
浸漬処理直後(0日)並びに浸漬処理開始後1日,2日,3日,4日,6日,7日、8日及び10日にそれぞれの容器からメチレンブルー水溶液を採取し、試験例2と同様にして、メチレンブルー溶液の濃度を算出した。
その結果を
図6に示す。
【0032】
〔試験例4〕
実施例1で得られた光触媒ガラス及び比較例1で得られた熱処理ガラスを、それぞれ直径50〜100μmになるように粉砕した後0.08gを別々の容器に入れ、メチレンブルー溶液(10μmol/L濃度)20mLで可視光照射の下で浸漬させた。
なお、可視光照射は実施例1と同じで行い、比較対象として可視光照射を行わない試験も行った。
浸漬処理開始後10日にそれぞれの容器からメチレンブルー水溶液を採取し、エレクトロスプレーイオン化質量分析装置(装置名micro TOF II−SDT1(BRUKER社製))を用いて以下の条件で、質量スペクトルを測定した。
条件:
測定範囲:50〜400(m/z)
Polarity:positive
Capillary Exit:150V
Hexapole RF:40Vpp
その結果を
図7(実施例1の光触媒ガラスを可視光照射のもとで行った試験)、
図8(比較例1の熱処理ガラスを可視光照射のもとで行った試験)、
図9(実施例1の光触媒ガラスを可視光照射なしで行った試験)及び
図10(比較例1の熱処理ガラスを可視光照射なしで行った試験)に示す。
【0033】
〔試験例5〕(メスバウアースペクトル解析)
実施例1及び2で得られた光触媒ガラス、並びに、比較例1及び2で得られた熱処理ガラスの
57Fe−メスバウアースペクトル解析を行った。
メスバウアースペクトルの測定は室温にて等加速度法で測定を行った。異性体シフトの基準物質としてはα−Fe箔を用いた。
解析装置として、Mossbauer driving unit MDU−1200(Wissenschaftliche Elektronik社製)、Digital function generator DFG−1000(Wissenschaftliche Elektronik社製)、High Voltage Power Supply 456(ORTEC社製)、Amplifier 485(ORTEC社製)、Single channel analyzer SCA−550(ORTEC社製)、Multi−Channel Analyzer MCA−7700(SEIKO EG&G社製)を接続したものを使用した。
測定用試料として、光触媒ガラスまたは熱処理ガラスをよく粉砕した後、該粉砕物をセロハンテープで挟み込んだものを使用した。
また、線源にはRh マトリックスに分散させた線量925Bqの
57Coを使用した。
その結果を
図11に示す。
【0034】
〔試験例6〕(X線回折解析)
実施例1及び2で得られた光触媒ガラス、並びに、比較例1及び2で得られた熱処理ガラスのX線回折解析を行った。
X線回折分析は、粉末X線回折分析装置(装置名RINT−TTR III(Rigaku社製))を用いた。
光触媒ガラスまたは熱処理ガラスをよく粉砕した後、該粉砕物をガラス製サンプルホルダーの表面に掘った溝に平らに埋め込み、サンプルホルダーを装置の測定部に装着し、以下の条件で測定を行った。
条件:
装置:粉末X線回折分析装置(装置名RINT−TTR III(Rigaku社製))
X線の照射線源:Cu−Kα線
管電圧:50kV
管電流:300mA
サンプリング角度:0.02degree
走査速度:5degree/min
測定範囲:回折角2θ=10〜80
o
その結果を
図12に示す。
【0035】
以下、結果について説明する。
図1〜4は、実施例1で得られた光触媒ガラス及び比較例1で得られた熱処理ガラスで、可視光照射下または可視光照射なしの条件でメチレンブルー溶液を処理し、処理後のメチレンブルー溶液の紫外−可視スペクトルを経時的に測定した結果を示すチャートである。
なお、結果のチャート線の色は浸漬時間別の結果を示し浸漬経過日数が増加するにつれてチャートの線の色を薄く記載しており、浸漬開始直後(最も濃い色)、浸漬開始後1日,2日,3日,4日,6日,8日及び10日(最も薄い色)の結果を示している。
可視光照射下で酸化鉄含有量が高いもの(
図1:実施例1)で、メチレンブルーの分解が早いことが分かる。
【0036】
図5及び
図6は、比較例3〜5の光触媒ガラス前駆体、実施例1及び2の光触媒ガラス、及び、比較例1の熱処理ガラスで、可視光照射下または可視光照射なしの条件でメチレンブルー溶液を処理し、処理後のメチレンブルー溶液の紫外−可視スペクトルを測定することによりメチレンブルーの濃度を経時的に測定した結果である。
酸化鉄含有量が高く、加熱処理を行ったのもの(
図5:実施例1)で、メチレンブルーの分解が早いことが分かる。
【0037】
図7〜10は、実施例1で得られた光触媒ガラス、及び、比較例1で得られた熱処理ガラスで、可視光照射下または可視光照射なしの条件でメチレンブルー溶液を処理し、処理後10日後のメチレンブルー溶液をエレクトロスプレーイオン化質量分析で測定した結果である。
可視光照射下で酸化鉄含有量が高いもの(
図7:実施例1)で、分解生成物のピークが見られ、メチレンブルーの分解が顕著であることが分かる。
これらの結果から、本発明の光触媒ガラスは、可視光により十分な触媒活性を示すことがわかる。
【0038】
図11は、実施例1及び2で得られた光触媒ガラス、並びに、比較例1及び2で得られた熱処理ガラス、のメスバウアースペクトルを示す図である。図中の矢印で示したフィッティングラインは、ヘマタイト(α―Fe
2O
3)相の析出を示している。
実施例1及び2において、ヘマタイト相が析出しているのがわかる。
なお、比較例1及び2では、ヘマタイト相の析出は観測できなかった。
【0039】
図12は、実施例1及び2で得られた光触媒ガラス、並びに、比較例1及び2で得られた熱処理ガラスのX線回折パターンを示す図である。図中の丸印で示したピークは、ヘマタイト(α―Fe
2O
3)相を示している。
実施例1及び2において、ヘマタイト相が析出しているのがわかる。
なお、比較例1及び2では、ヘマタイト相の析出は、ほぼ観測できなかった。
これらの結果から、本発明の光触媒ガラスの光触媒活性は、ヘマタイト相の析出に起因すると推定される。