【実施例1】
【0009】
図1は、本発明の実施例1の発泡断熱シート1を示す断面図である。
この発泡断熱シート1は、原紙2と、該原紙2の外面上に積層された低融点の熱可塑性合成樹脂フィルムからなる発泡層3と、該発泡層3の外面上に積層された高融点の熱可塑性合成樹脂フィルムからなる発泡安定層4と、該発泡安定層4の外面上に印刷により形成される印刷層5と、前記原紙2の内面上に積層される高融点の熱可塑性合成樹脂フィルムからなる内面保持層6とからなっている。
【0010】
[原紙]
原紙2は、断熱発泡容器用に用いられる含水率を有する原紙であればよいが、例えば、100g/m
2〜400g/m
2位の坪量であって、約2〜10%、好ましくは4.5〜8%程度の含水率を有するものが使用される。
【0011】
[発泡層]
発泡層3は、低融点の熱可塑性合成樹脂フィルムからなっており、ポリエチレンが好ましいが、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリエステル、ナイロンなどのような公知の熱可塑性のフィルムが用いられる。
発泡のための加熱温度は、一般には、約110℃〜約200℃の範囲内であるが、原紙2および発泡層3の種類に応じて適宜定めることができる。
【0012】
[発泡安定層]
発泡安定層4は、発泡層3を発泡させるための加熱処理によっても発泡しない高い融点の熱可塑性合成樹脂フィルムであって、腰が強い(剛性がある)、又は発泡層の樹脂より伸びが悪い、又は水蒸気透過率が低い物性を有している。
例えば、水蒸気透過率の低い低密度ポリエチレン(LDPE)や高密度ポリエチレン(HDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)などを用いることができる。
【0013】
発泡安定層4は、その素材の比重の大小により発泡高さをコントロールすることができる。
また、発泡安定層4は、印刷インキを印刷する地色として適切な光沢、色調や明度とすることで、印刷の美麗性を向上させうる。
また、発泡安定層4の表面をミラー調や微細な凹凸を有するマット調にすることができる。
【0014】
これらの特徴に合わせて発泡安定層4に用いる熱可塑性合成樹脂フィルムの素材を適宜選択して用いることができる。
また、高融点の熱可塑性合成樹脂フィルムに充填剤を含有させて発泡安定層4としてもよい。
即ち、上記要件を満たす充填剤としては、例えば、酸化チタン、シリカ、または粘土系化合物などが挙げられる。
そこで、充填剤として酸化チタンを用いた場合について説明する。
【0015】
[発泡高さのコントロール]
発泡層3の発泡長さのコントロールを検証するため、最内層にLLDPEとLDPEのブレンド樹脂(融点129℃)、発泡層にLDPE(融点106℃)を用い、発泡安定層4となるLDPE(融点110℃、15μm厚)へ酸化チタン(比重4.1)を含有させた発泡安定層4を用いて、発泡テストを実施した。
発泡安定層4への酸化チタン含有量条件は、(1)1.9g/m
2(10wt%)、(2)4.7g/m
2(20wt%)、および(3)8.4g/m
2(30wt%)とした。
【0016】
テストの結果、酸化チタンの含有量の増加に伴い、発泡層3の発泡高さを抑制し安定させことが確認できた。
ただし、前記発泡安定層(15μm厚)4に対して、発泡層3のコントロールが可能となる範囲は下記の通りである。
酸化チタン含有量Xは以下の範囲が望ましい。
0g/m
2<X≦8.4g/m
2(酸化チタン30wt%)
上限値の8.4g/m
2を超えると、製膜の形成が不安定となり、ラミネートができなくなる。
【0017】
上記範囲は熱可塑性合成樹脂フィルムが15μmの場合の範囲であって、厚みが増えることで上限値も広がるが、製膜の形成が安定する範囲内が好ましい。
その他の充填剤においても同様であり、いずれも製膜の形成が不安定とならない範囲で発泡安定層4への含有量を増加させることで発泡層3の発泡高さを抑制し安定させることができる。
【0018】
この実施例では、白インキを用いず発泡安定層4となる熱可塑性合成樹脂フィルムに充填剤を含有させるので、白インキよりも大量に含有させることができ、発泡高さのコントロールを広範囲に行うことができる。
即ち、白インキ(酸化チタン含有量30wt%とする)の場合、一般的にインキの塗布量は、2〜10g/m
2程度であるので、酸化チタンは単位面積あたり0.6〜3.0g/m
2程度含有することになる。
【0019】
これに対して、熱可塑性合成樹脂フィルムの場合、厚みが15μmの場合には、樹脂全体の重量は、最大で28.1g/m
2となり、含有される酸化チタンは単位面積あたり8.4g/m
2を含有することになる。
熱可塑性合成樹脂フィルムの厚みが30μmの場合には、樹脂全体の重量は、最大で56.2g/m
2となり、含有される酸化チタンは単位面積あたり16.9g/m
2含有することになる。
【0020】
これにより、酸化チタンなどの充填剤の含有量が印刷インキに比べて大量に含有しうることが分かる。
従って、例えば、発泡層3の発泡高さをインキに比してより低く発泡させる(抑制し安定させる)ことができ、スタック時のブロッキングを軽減させることができる。
【0021】
[光沢性のコントロール]
前述の酸化チタンの各含有量条件による発泡安定層4の光沢性のコントロールについて検証するため、発泡テストを実施した。
テスト結果、酸化チタン含有量の増加に伴い、発泡安定層4はその表面に形成される微細な凹凸が促進され、これに比例して光沢度(色調や明度)が低下することを確認した。
【0022】
ただし、発泡安定層4(厚み15μm)に対して、表面の光沢度変化を示す範囲を下記とする。
酸化チタン含有量X1の場合、
0g/m
2<X1≦4.7g/m
2(酸化チタン10wt%)
X1の範囲では発泡安定層4の表面はミラー調となる。
【0023】
酸化チタン含有量X2の場合、
4.7g/m
2<X2<8.4g/m
2(酸化チタン30wt%)
X2の範囲では発泡安定層4の表面はマット調となる。
従って、前記充填剤の含有量によって発泡安定層4の表面をミラー調やマット調にすることができる。
その他の充填剤においても同様であり、いずれも含有量を増加させることで除々にミラー調からマット調にコントロールすることができる。
【0024】
[グリップ性]
前述のように、酸化チタン含有量の増加に伴い、発泡安定層4はその表面に形成される微細な凹凸が僅かに大きくなり、紙コップ形状に成型した際、スリップしにくくなって、グリップ性を向上させることができる。
この場合も、酸化チタン以外の充填剤においても同様であり、いずれも含有量を調整することでグリップ性を向上させることができる。
【0025】
以上から、発泡安定層4が、熱可塑性合成樹脂フィルムに充填剤を含有させる場合には、その含有量によって、発泡の高さの抑制及び安定と、ミラー調からマット調にいたる光沢(色調や明度)と、表面の微細な凹凸によるグリップ性の各要素が関連しあってコントロールすることができるので、断熱容器の用途やデザインの美麗性に応じて、充填剤の最適な含有量を定めて、断熱容器を成形することができる。
【0026】
[印刷層]
前記発泡安定層4の外面には、適宜印刷を施して印刷層5を形成する。
印刷層5は、発泡安定層4の外面の全部又は一部に形成されるものでもよい。
この発明では、印刷の方法やインキの色彩、厚みなどは特に限定されない。
この印刷層5が形成された発泡断熱シート1は、例えば、容器の胴部として用いられ、容器が成形される。
この成形された容器は、加熱処理により加熱され、前記胴部11の発泡層3を発泡させて発泡断熱容器10が完成する(
図2参照)。
【0027】
断熱容器の形状は図示例に限定されない。
また、上記実施例では、発泡層と発泡安定層とはラミネートする場合を示したが接着剤を用いて積層する構成でもよい。
その他、この発明は、上記実施例に限定されるものではなく、要するにこの発明の要旨を変更しない範囲で種々設計変更することができる。