特許第6095161号(P6095161)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6095161
(24)【登録日】2017年2月24日
(45)【発行日】2017年3月15日
(54)【発明の名称】プレス加工装置
(51)【国際特許分類】
   B30B 15/28 20060101AFI20170306BHJP
   B30B 13/00 20060101ALI20170306BHJP
   B30B 15/00 20060101ALI20170306BHJP
   B30B 15/06 20060101ALI20170306BHJP
   B21D 39/02 20060101ALN20170306BHJP
   B30B 1/30 20060101ALN20170306BHJP
【FI】
   B30B15/28 L
   B30B13/00 Z
   B30B15/00 A
   B30B15/06 H
   !B21D39/02 E
   !B30B1/30
【請求項の数】1
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2013-68214(P2013-68214)
(22)【出願日】2013年3月28日
(65)【公開番号】特開2014-188567(P2014-188567A)
(43)【公開日】2014年10月6日
【審査請求日】2016年3月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002967
【氏名又は名称】ダイハツ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107423
【弁理士】
【氏名又は名称】城村 邦彦
(74)【代理人】
【識別番号】100120949
【弁理士】
【氏名又は名称】熊野 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100155457
【弁理士】
【氏名又は名称】野口 祐輔
(72)【発明者】
【氏名】古瀬 信浩
(72)【発明者】
【氏名】中野 純
【審査官】 豊島 唯
(56)【参考文献】
【文献】 特開平02−030400(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B30B 1/10 − 1/30
B30B 13/00 −15/28
B21D 39/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下型と、上型と、前記上型を昇降駆動する駆動手段とを備えたプレス加工装置であって、
前記駆動手段が、モータと、前記モータの回転駆動力を前記上型の昇降駆動力に変換する変換機構とを有するものであり、
前記変換機構と前記上型との連結部において、前記変換機構が、前記上型を下方から支持すると共に、前記上型に対する下方への移動が許容され
プレス加工が完了して前記上型を停止させた後、前記モータを駆動し続けて前記変換機構をさらに降下させることを特徴とするプレス加工装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プレス加工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば下記特許文献1及び2には、油圧シリンダで上型を昇降駆動してプレス加工を行うプレス加工装置が示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−263158号公報
【特許文献2】特開平7−284858号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、それ程大きな駆動力を必要としないプレス加工装置の場合、油圧シリンダのような駆動手段は出力が過剰である場合がある。一般に、油圧シリンダのような大出力の駆動手段は駆動速度が遅いため、出力が過剰であると、上型の駆動速度が必要以上に遅くなり、タクトタイムが長くなってしまう。
【0005】
そこで、本発明者らは、プレス加工の駆動手段として、一対のチェーンと、一対のチェーンを駆動するモータとを有するものを検討した。この駆動手段は、一対のチェーンを互いに噛み合わせて鉛直方向に延びる一本の棒状にし、その上端を上型に取付け、一対のチェーンをモータで駆動することによりラムを昇降するものである。この駆動手段は、駆動力はそれ程大きくない一方で、駆動速度が速いため、上型の昇降速度を速くしてタクトタイムの短縮を図ることが可能となる。
【0006】
しかし、上記の駆動手段を用いるに当たり、以下の問題が生じることが明らかとなった。すなわち、プレス加工を確実に施すためには、プレス加工が完了するまで上型を降下させる必要がある。しかし、プレス加工の完了と駆動手段の停止とを完全に一致させることは困難であるため、実際にはプレスが完了した後、少しの間駆動手段による駆動が続けられる。例えば、油圧シリンダで上型を駆動する場合であれば、プレス加工完了後、すなわち上型が停止された後、駆動を続けても大きな問題は生じない。一方、上型をチェーン及びモータからなる駆動手段で駆動する場合、プレス加工完了後、駆動を続けると、上型が停止された状態でモータがチェーンを駆動しようとするため、モータに負荷が加わる。このような動作を繰り返し行うことで、モータの寿命が短くなる恐れがある。
【0007】
以上のような問題は、上記の駆動手段を用いた場合に限らず、モータと、モータの回転駆動力を上型の昇降駆動力に変換する変換機構とを有する駆動手段を用いた場合に生じる。
【0008】
本発明が解決すべき技術的課題は、モータを有する駆動手段を用いたプレス加工装置において、モータの短寿命化を防止することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するために、本発明は、下型と、上型と、前記上型を昇降駆動する駆動手段とを備えたプレス加工装置であって、前記駆動手段が、モータと、前記モータの回転駆動力を前記上型の昇降駆動力に変換する変換機構とを有するものであり、前記変換機構と前記上型との連結部において、前記変換機構が、前記上型を下方から支持すると共に、前記上型に対する下方への移動が許容されたことを特徴とするプレス加工装置を提供する。
【0010】
このように、本発明のプレス加工装置では、変換機構(例えば一対のチェーン)と上型との連結部において、上型に対する変換機構の下方への移動が許容される。これにより、上型によるプレス加工が完了した後、モータによる駆動が続いた場合でも、上型を停止させたまま変換機構のみを降下させることができるため、モータへの負荷を軽減できる。
【発明の効果】
【0011】
以上のように、本発明のプレス加工装置によれば、モータに加わる負荷を軽減して、モータの長寿命化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】ワークの断面図である。
図2】ヘミング加工装置の側面図であり、図4のA方向から見た図である。
図3】ヘミング加工装置の側面図であり、図4のB方向から見た図である。
図4】ヘミング加工装置の下型の上面図である。
図5】下型をベースに対してスライドさせる様子を示す平面図である。
図6】ヘミング加工装置の上型の下面図である。
図7】第1駆動手段と上型との接続部分を示す斜視図である。
図8】第1駆動手段と上型との接続部分の拡大断面図である。
図9】第1駆動手段を下型から引き出す様子を示す断面図である。
図10】ヘミング加工装置の断面図である(プリヘム加工直前)。
図11】ヘミング加工装置の断面図である(プリヘム加工時)。
図12】ヘミング加工装置の断面図である(プリヘム加工後)。
図13】ヘミング加工装置の断面図である(本ヘム加工直前)。
図14】ヘミング加工装置のロック機構の断面図である。
図15】ヘミング加工装置の断面図である(本ヘム加工直前)。
図16】ヘミング加工装置の断面図である(本ヘム加工時)。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0014】
本実施形態では、ワークが自動車車体のドアのインナパネル1及びアウタパネル2であり(図1参照)、アウタパネル2のフランジ部2aにヘミング加工を施すことによりインナパネル1と一体化するヘミング加工方法を示す。このヘミング加工方法はヘミング加工装置200を用いて行われる。
【0015】
ヘミング加工装置200は、互いに接近離反可能な一対の金型(下型200a及び上型200b)と、一対の金型を駆動するプレス機とを備える。本実施形態のヘミング加工装置200は、図2及び図3に示すように、ベース201、ラム202、及びラム202を昇降駆動する第1駆動手段205を有するプレス機と、ベース201に設けられた下型200a及びラム202に設けられた上型200bとを備える。下型200a及び上型200bは、ワークの形状によって異なる汎用部であり、それぞれベース201及びラム202に対して着脱可能とされる。
【0016】
ベース201は、床面に載置される第1ベース201aと、第1ベース201aの上方に配された第2ベース201bと、第2ベース201bの上方に配された第3ベース208aとを有する。第1ベース201aは、平面視で略矩形状を成し、第1ベース201aの上面の四隅にガイド部材207が立設される。第2ベース201bは、平面視で略矩形状を成した枠体である。第2ベース201bの上面には、平行に延びる複数のレール201dが配される。第3ベース208aは、略矩形状を成した板材であり、中央に穴を有する。第3ベース208aは、レール201dの上に載置され、図示しない固定手段により第2ベース201bに固定される。
【0017】
下型200aは、可動ベース208bと、下部成形型として機能するワーク受け部203とを備える。可動ベース208bは、第3ベース208aの中央に設けられた穴に配され、ベース201に対して昇降可能とされる。可動ベース208bが第3ベース208aの穴に嵌合することで、一枚のプレート208として一体化される。可動ベース208bは、後述する第2駆動手段により昇降駆動される。可動ベース208bの四隅にはガイド208aが設けられ、第3ベース208aにはガイド受け201eが設けられる。ガイド208aとガイド受け201eとが摺動することにより、可動ベース208bの第3ベース208aに対する昇降がガイドされる。
【0018】
下型200aは、レール201dに沿ってベース201に対してスライド可能とされる。成形型(本実施形態ではワーク受け部203)等を交換する際には、第2ベース201bと第3ベース208aとを固定する固定手段(図示省略)を解除し、図5に示すように下型200a及び第3ベース208aを、レール201d上を図8の上下方向にスライドさせてベース201から取り外す。そして、可動ベース208b上のワーク受け部203等を交換した後、下型200aを、レール201d上を図8の上下方向にスライドさせてベース201上の所定位置に配し、第2ベース201bと第3ベース208aとを図示しない固定手段で固定する。
【0019】
ワーク受け部203は、可動ベース208bの上面に固定される。ワーク受け部203は、ワークを下方から支持するものであり、図示例では、環状部203aと、環状部203aの内側に設けられた複数の補助部203bとからなる。環状部203aは、インナパネル1及びアウタパネル2の周縁部(フランジ部1a,2a)を下方から支持する位置に設けられる。環状部203aは、上型200bに設けられた本ヘム刃204と協働してワークにプレス加工を施す成形型として機能する。環状部203a及び補助部203bの上面は、アウタパネル2の形状に倣って形成される。尚、図示例では、簡略化のため、アウタパネル2やこれを押圧するワーク受け部203の上面及び本ヘム刃204の下面を平坦面で示しているが、実際にはこれらの面は曲面である。
【0020】
第2駆動手段206は、下型200aをベース201に対して昇降駆動するものである。第2駆動手段206は、第1駆動手段205よりも出力が大きいものが使用され、本実施形態では油圧シリンダ206a及びこれを駆動するサーボモータ206bで構成される(図2参照)。第2駆動手段206は、第1ベース201aと可動ベース208bとの間の空間に収容される。油圧シリンダ206aの本体は第1ベース201aに固定される。油圧シリンダ206aのピン206a1の上端は、可動ベース208bの下方に隙間を介して配される。油圧シリンダ206aを駆動してピン206a1を上昇させることで、ピン206a1の上端で可動ベース208bが押し上げられる。第2駆動手段206は例えば複数箇所に設けられ、本実施形態では4箇所に設けられる(図4参照)。
【0021】
ラム202は、ベース201に対して型締め型開き方向でスライド可能とされ、本実施形態では昇降可能とされる。ラム202は、図6に示すように平面視で略矩形状をなし、四隅にガイド部材207が挿通されるガイド穴202aが設けられる。ガイド部材207は、鉛直方向に延びる棒状部材であり、ガイド穴202aと摺動することでラム202の昇降をガイドしている。各ガイド部材207の上端は水平方向に延びる連結部材207aで連結される(図2参照)。尚、ガイド部材207は、必ずしも四隅に設ける必要はなく、例えば対角2箇所のみに設けてもよい。
【0022】
上型200bは、ラム202に固定されるプレート209と、上部成形型として機能する本ヘム刃204とを備える。プレート209は、ラム202の下面中央部に着脱可能に固定される。本ヘム刃204は、本ヘム加工を行うものであり、プレート209の下面に固定される。本ヘム刃204は、アウタパネル2の周縁に沿って環状に設けられ、ワーク受け部203の環状部203aと上下方向で対向している。
【0023】
第1駆動手段205は、ラム202及び上型200bを昇降するものであり、第2駆動手段206よりも駆動速度が速いものが使用される。本実施形態の第1駆動手段205は、チェーン及びこれを駆動するモータとで構成され、具体的には、図3に示すように一対のチェーン205aと、一対のチェーン205aを駆動するモータ205bと、各チェーン205aを収容する一対の収容箱205cとからなる。一対のチェーン205aは、モータ205bの回転駆動力を上型200bの昇降駆動力に変換する変換機構として機能する。具体的には、各収容箱205cから供給された一対のチェーン205aが、各収容箱205cの間で互いに噛み合って一本の鉛直方向の棒状部分205dが形成され、この棒状部分205dの上端にラム202が取り付けられる。モータ205bを図7の矢印方向に回転させることにより、各チェーン205aが収容箱205cから棒状部分205dに供給されて棒状部分205dが上方に延び、これにより上型200bが上昇する。一方、モータ205bを上記と反対方向に回転させることにより、各チェーン205aが棒状部分205dから収容箱205cに戻されて棒状部分が縮みながら降下し、これにより上型200bが降下する。
【0024】
ここで、一対のチェーン205aの上端とラム202との連結部分を詳しく説明する。図7に示すように、ラム202に固定されたラム側ブラケット202bと、一対のチェーン205aの棒状部分205dの上端に固定されたチェーン側ブラケット205eとが固定部材で連結される。本実施形態では、図8に示すように、両ブラケット202b,205eに貫通穴202b1,205e1が形成され、この貫通穴202b1,205e1に固定部材としてのボルト241及びナット242が取り付けられる。ボルト241の頭部241aの下面とナット242の上面との上下方向間隔Mは、両ブラケット202b,205eの合計厚さNよりも若干(例えば数mm程度)大きく設定される。これにより、チェーン側ブラケット205eの下面とナット242の上面との間に微小隙間D(=M−N)が形成される。この微小隙間Dの分だけ、両ブラケット202b,205eの上下方向の離反が許容される。
【0025】
第1駆動手段205は、ベース201に対してスライド可能とされる。具体的には、図3に示すように、第1ベース201aの上に設けられたレール201fの上にスライド台205fが載置され、このスライド台205fの上に第1駆動手段205が設けられる。本実施形態では、図9に示すように、モータ205bの回転軸205gが減速機205hを介してギア205iに接続される。ギア205iは、一方のチェーン205aと噛み合っている。ギア205iの軸方向両側には、一対のベアリング205jが設けられる。一対のベアリング205j及び減速機205hが、スライド台205f上に固定される。第2ベース201bの中央に設けられたレール201dは、レール201dの延在方向に沿って設けられたリブ201d1で支持されている。リブ201d1には貫通穴201d2が形成され、この貫通穴201d2にモータ205bが挿通されている。一対のチェーン205aの上端とラム202との接続を解除し(すなわち図7のボルト241及びナット242をブラケット202b,205eから取り外し)、スライド台205fをスライドさせることにより、第1駆動手段205を手前側(下型200aから離反する側)に引き出すことができる(図9の点線参照)。これにより、下型200aの内部(第3ベース208a及び可動ベース208bの下方)に配されたモータ205bや減速機205hをベース201から引き出すことができるため、装置全体の省スペース化とメンテナンス作業性の向上とを両立させることができる。
【0026】
ヘミング加工装置200には、プリヘム機構220が設けられる。本実施形態のプリヘム機構220は、図10に示すように、下型200a側(プレート208上)に設けられたプリヘム刃221及びカム機構222と、上型200bに設けられたカムドライバ223とからなる。プリヘム刃221は、図4に示すようにワーク受け部203の周囲に設けられ、水平方向でワークに接近離反する方向にスライド自在とされる。図示例では、略矩形のベース201(第3ベース208a)の各辺に沿ってプリヘム刃221が設けられ、各プリヘム刃221が、ベース201の各辺と直交する方向にスライド自在とされる。
【0027】
カム機構222は、上型200bの降下による押し下げ力を、プリヘム刃221をワーク側へスライドさせる力に変換するものである。本実施形態のカム機構222は、プレート208(図示例では第3ベース208a)に固定された下側カム224と、下側カム224に沿ってスライドする上側カム225とからなる。上側カム225の上面225aには、水平方向の平坦面が設けられる。上側カム225の下面及び下側カム224の上面には、下方に向けて内側(ワーク側)へ傾斜した平行且つ平坦な傾斜面225b,224aが設けられる。上側カム225は、下側カム224の傾斜面224aに沿ってスライド可能とされる。上側カム225のワーク側の側面に、プリヘム刃221が固定される。
【0028】
カム機構222には、プリヘム刃221のワークに近接する側の移動を所定位置で規制するストッパ226が設けられる。図示例では、下側カム224の傾斜面224aの下端に、上側カム225の斜め下方向へのスライドを規制するストッパ226が設けられる。カム機構222には、上側カム225及びプリヘム刃221をワークから離反する側(図10の右側)に付勢する付勢手段227が設けられる。図示例では、付勢手段227がエアシリンダで構成され、上側カム225及びプリヘム刃221がワークから離反する側に常に付勢される。
【0029】
カムドライバ223は、上型200bのプレート209に固定された本体部223aと、本体部223aの下端に設けられた可動部223bとを有する。可動部223bは、カム機構222に当接する位置としない位置との間で移動可能とされる。図示例では、可動部223bが、図示しない駆動部によりピン223cを中心に回転可能とされる。本体部223a及び可動部223bの下面には、水平方向の平坦面が設けられる。
【0030】
ヘミング加工装置200は、ベース201とラム202とを連結してラム202の上昇を規制するロック機構230を有する。ロック機構230は、矩形状のベース201及びラム202の各コーナー付近に設けられる。ロック機構230は、図2及び図3に示すように、ラム202に設けられた上側ロック部材231と、ベース201に設けられた下側ロック部材232と、両ロック部材231,232を上下方向でロックする係止手段233とを有する。本実施形態では、図14に示すように、両ロック部材231,232に水平方向の貫通穴231a,232aが形成される。各貫通穴231a,232aは、それぞれ同径の円筒面状の内周面を有する。図示例では、各ロック機構230において、上側ロック部材231の両側に下側ロック部材232が設けられる。上側ロック部材231の上端には水平方向に突出した突出部231bが設けられ、この突出部231bをラム202に上方から当接させることにより、上側ロック部材231がラム202に吊り下げ状態で取り付けられる。下側ロック部材232は、第3ベース208aの上面に固定される。
【0031】
係止手段233は、ロック部材231,232の双方と上下方向で係合することで、これらの相対的な上下方向移動(特に型開き方向の移動)を規制するものである。本実施形態では、係止手段233が、係止ピン233aと、係止ピン233aを水平方向に進退させる駆動部233b(例えば電動シリンダやエアシリンダ)とで構成される。係止ピン233aは、円筒面状の外周面を有し、本実施形態では中実の円柱状を成している。係止ピン233aの外径は、第1及び第2ロック部材231,232の貫通穴231a,232aの内径よりも若干小さい。図4及び図6に示すように、各係止ピン233a及び貫通穴231a,232aの軸心方向Pは、当該係止ピン233aとラム202の中心O(ベース201の中心とほぼ一致)とを結ぶ直線L(本実施形態では、ベース201及びラム202の各コーナーにおける対角線)と略直交している。
【0032】
以下、本実施形態のヘミング加工方法の手順を説明する。
【0033】
まず、アウタパネル2のフランジ部2aの内側にシーラSを供給した後、そのシーラSの上にインナパネル1を重ねて配置する。このアウタパネル1及びインナパネル2をヘミング加工装置200に搬入して、ワーク受け部203の上にワークがセットする。この状態で、第1駆動手段205を駆動して上型200bを上端位置から降下させることにより、ワークに対してプリヘム加工を施す。このとき、図10に示すように、カムドライバ223は、可動部223bをカム機構222に当接可能な位置(本体部223aの下方)に配した状態となっている。この状態で上型200bを降下させることで、上型200bに設けたカムドライバ223がカム機構222の上側カム225の上方から当接する(図10の点線参照)。そのまま上型200bを降下させ続けることでカムドライバ223が上側カム225を下向きに押圧し、上側カム225及びプリヘム刃221が下側カム224の傾斜面224aに沿って内側(ワーク側)にスライドする(図11参照)。これにより、プリヘム刃221でアウタパネル2のフランジ部2aが内側に折り曲げられ、プリヘム加工が施される。そして、プリヘム刃221がストッパ226に当接したら、上型200bの降下を停止し、プリヘム加工が完了する。尚、プリヘム加工を施す間、本ヘム刃204はワーク、特にアウタパネル2のフランジ部2aに当接しない。
【0034】
プリヘム加工を完全に施すためには、プリヘム刃221がプリヘム加工完了位置に達するまで、すなわち上側カム225がストッパ226に当接するまで、上型200bを降下させる必要がある。従って、上側カム225がストッパ226に当接して上型200bの降下が規制された後、少しの間、第1駆動手段205のモータ205bによる駆動が続ける必要がある。本実施形態では、図8に示すように、上型200bのラム202に設けられたラム側ブラケット202bと第1駆動手段205のチェーン205aに設けられたチェーン側ブラケット205eとが、上下方向の離反を許容した状態で連結されている。これにより、上側カム225がストッパ226に当接して上型200bの降下が規制された後、ラム側ブラケット202bに対するチェーン側ブラケット205eの降下が隙間Dの分だけ許容されるため、チェーン205aの棒状部分205dの若干の降下が許容される。これにより、チェーン205aを駆動するモータ205bに負荷が加わる事態が回避され、モータ205bの寿命を延ばすことができる。
【0035】
プリヘム加工が完了したら、上型200bを第1駆動手段205により一旦上昇させる(図12参照)。このとき、プリヘム機構222の付勢手段227の付勢力で、上側カム225及びプリヘム刃221がワークから離反する側に移動し、初期位置に戻される。そして、上型200bを停止させた状態で、カムドライバ223の下面223dとカム機構222の上面(上側カム225の上面225a)との上下方向距離を大きくする。具体的には、カムドライバ223の可動部223bをピン223cを中心に回転させて、可動部223bをカム機構222と当接しない位置(本体部223aの側方)に退避させる。これにより、上下方向で対向するカムドライバ223の下面223d(本体部223aの下面)とカム機構222の上側カム225の上面225aとの上下方向距離H2が、可動部223bを回転させる前の上下方向距離H1よりも大きくなる(H2>H1)。この状態で再び上型200bを第1駆動手段205により降下させ、アウタパネル2のフランジ部2aの直上に本ヘム刃204が配されたら、上型200bを停止する(図13参照)。このとき、カムドライバ223と上側カム225は当接せず、プリヘム刃221はワークから退避した位置(詳しくは、本ヘム刃204及びワーク受け部203の上下方向間から退避した位置)に保持される。
【0036】
このとき、図14に示すように、ロック機構230を構成する上側ロック部材231が下側ロック部材232の間に挿入され、上側ロック部材231の下端が下側ロック部材232に当接することで、両ロック部材231,232の貫通穴231a,232aが同心上に配された状態となる。この状態で、ベース201とラム202とをロック機構230で連結する。本実施形態では、係止手段233の駆動部233bを駆動して係止ピン233aを前進させ、係止ピン233aが両ロック部材231,232の貫通穴231a,232aに挿通される(図14の点線参照)。こうして係止ピン233aが両ロック部材231,232と上下方向で係合することにより、ベース201とラム202との相対的な上下方向移動(本実施形態ではラム202の上昇)が規制される。
【0037】
こうしてベース201とラム202とがロック機構230で連結された状態で、アウタパネル2のフランジ部2aに本ヘム加工を施す。具体的には、図15及び図16に示すように、ロック機構230によりベース201とラム202とを連結した状態で、第2駆動手段206により下型200aを押し上げる。これにより、ベース201、ロック機構230、ラム202、及び本ヘム刃204を固定した状態で、可動ベース208b、ワーク受け部203、及びワーク(インナパネル1及びアウタパネル2)が上昇し、プリヘム加工が施されたアウタパネル2のフランジ部2aが本ヘム刃204に下方から押し付けられて、フランジ部2aがさらに折り曲げられる。このとき、複数(図示例では4個)の油圧シリンダ206aのピン206a1の突出量が等しくなるように、すなわち可動ベース208bが水平状態のまま上昇するように、各油圧シリンダ206aに接続されたサーボモータ206bが制御される。そして、第2駆動手段206の油圧シリンダ206a内の圧力が所定値となったら、サーボモータ206bを停止する。このとき、各油圧シリンダ206aを停止する圧力の所定値は、各部位に応じた値に設定される。以上により、アウタパネル2のフランジ部2aが完全に折り曲げられ、本ヘム加工が完了する。尚、図15及び図16では、便宜上、第2ベース201bやレール201dを省略している。
【0038】
本発明は、上記の実施形態に限られない。例えば、ワークは車体のドアのインナパネル1及びアウタパネル2に限られないことはもちろんであり、例えば車体のフードやバックドアのインナパネル及びアウタパネルであってもよい。また、ヘミング加工に限らず、絞り加工や曲げ加工等、他のプレス加工装置に本発明を適用してもよい。
【0039】
また、上記の実施形態では、第1駆動手段205としてチェーン及びモータを有するものを使用し、第2駆動手段206として油圧シリンダを有するものを使用した場合を示したが、これに限られない。例えば、第1駆動手段205としては、リードの大きいボールねじとサーボモータとで構成されたものや、リニアモータ等を使用することができる。また、第2駆動手段206としては、リードの小さいボールねじとサーボモータとで構成されたものや、トグルカムを油圧シリンダで駆動するもの、あるいは、トグルカム、ボールネジ、及びサーボモータを組み合わせたもの等を使用することができる。
【符号の説明】
【0040】
1 インナパネル
2 アウタパネル
200 ヘミング加工装置
200a 下型
200b 上型
201 ベース
202 ラム
202b ラム側ブラケット
203 ワーク受け部
204 本ヘム刃
205 第1駆動手段
205a チェーン(変換機構)
205b モータ
205c 収容箱
205d 棒状部分
205e チェーン側ブラケット
206 第2駆動手段
206a 油圧シリンダ
206b サーボモータ
207 ガイド部材
208b 可動ベース
220 プリヘム機構
230 ロック機構
241 ボルト
242 ナット
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
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