特許第6095178号(P6095178)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6095178
(24)【登録日】2017年2月24日
(45)【発行日】2017年3月15日
(54)【発明の名称】フィルタインサート
(51)【国際特許分類】
   F01M 13/04 20060101AFI20170306BHJP
【FI】
   F01M13/04 B
【請求項の数】12
【外国語出願】
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-167512(P2015-167512)
(22)【出願日】2015年8月27日
(65)【公開番号】特開2016-61290(P2016-61290A)
(43)【公開日】2016年4月25日
【審査請求日】2015年11月5日
(31)【優先権主張番号】A 50644/2014
(32)【優先日】2014年9月15日
(33)【優先権主張国】AT
(73)【特許権者】
【識別番号】504344576
【氏名又は名称】ゲーエー ジェンバッハー ゲーエムベーハー アンド コー オーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100137545
【弁理士】
【氏名又は名称】荒川 聡志
(72)【発明者】
【氏名】ギュンター ウォール
【審査官】 小林 勝広
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭61−107916(JP,A)
【文献】 実開平06−034722(JP,U)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0211544(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 46/24
F01M 13/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガス流(G)から液滴を分離するためのフィルタインサート(1)であって、
粗分離のための濾過媒体、毛細管効果を備えた濾過媒体および精密分離のための濾過媒体(2、3、4)の層部分を備え、稼動時には浄化対象のガス流(G)を通流させる媒体パケット(M)と、
ガス流(G)から分離された液体(O)の放出流方向に関与する前記フィルタインサート(1)の下方領域に配置された底部(5)と、
を含み、
前記フィルタインサート(1)の放射方向に延びる液体(O)の通路(P)が、前記媒体パケット(M)の前記精密分離のための濾過媒体(4)と前記底部(5)との間に提供されているか、または、前記媒体パケット(M)内に提供されており、
前記媒体パケット(M)は毛細管効果を備えた少なくとも1つの層(3)を前記通路(P)の前後に有しており、
毛細管効果を備えた前記層(3)は、稼動時に、前記媒体パケット(M)を、毛細管効果によって部分的に気密状態で閉じる、
ことを特徴とする、フィルタインサート(1)。
【請求項2】
前記通路(P)は、ほぼまたは完全に、前記精密分離のための濾過媒体(4)を含まない、請求項1に記載のフィルタインサート(1)。
【請求項3】
前記毛細管効果を備えた濾過媒体(3)の層は、2cmから10cmの毛細管作用に関わる上昇高(HC)を有している、請求項2に記載のフィルタインサート(1)。
【請求項4】
前記毛細管効果を備えた濾過媒体(3)の複数の層部分が、前記媒体パケット(M)内に、ガス流(G)の通流方向で前記精密分離のための濾過媒体(4)の前後に配置されている、請求項1からの少なくとも1項に記載のフィルタインサート(1)。
【請求項5】
前記通路(P)は、前記フィルタインサート(1)の高さの0.5%と2%の間よりも小さい範囲の高さである、請求項1からのいずれか1項に記載のフィルタインサート(1)。
【請求項6】
前記通路(P)は5mmから20mmの高さである、請求項1からのいずれか1項に記載のフィルタインサート(1)。
【請求項7】
前記フィルタインサート(1)は略円筒形状であり、前記媒体パケット(M)は、粗分離のための濾過媒体、毛細管効果を備えた濾過媒体および精密分離のための濾過媒体(2、3、4)の、好適には巻き付け層部分を含んでいる、請求項1からのいずれか1項に記載のフィルタインサート(1)。
【請求項8】
前記フィルタインサート(1)は略立方体形状であり、前記媒体パケット(M)は、粗分離のための濾過媒体、毛細管効果を備えた濾過媒体および精密分離のための濾過媒体(2、3、4)の層状になった層部分を含んでいる、請求項1からのいずれか1項に記載のフィルタインサート(1)。
【請求項9】
請求項1からのいずれか1項に記載のフィルタインサート(1)を有した濾過装置(8)。
【請求項10】
請求項1からのいずれか1項に記載のフィルタインサート(1)を有した濾過装置(8)であって、前記通路(P)の高さ(HP)は、縁部の高さ(Hr)から接着層の高さ(HK)を差し引いた高さ(Hr−HK)より少ない、濾過装置(8)。
【請求項11】
請求項1からのいずれか1項に記載のフィルタインサート(1)を有した濾過装置(8)であって、前記通路(P)は接着層(K)の配置により、及び/又は前記精密分離のための濾過媒体(4)の領域の複数の陥没部を備えた底部(5)の形態で提供される、濾過装置(8)。
【請求項12】
請求項9から11のいずれかに記載の濾過装置(8)を有した内燃機関(9)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の前提部分の特徴を備えた、液体粒子をガス流(気体流)から分離させるためのフィルタインサート(フィルタ挿入体)と、そのようなフィルタインサートを有する濾過装置と、それらを有した内燃機関とに関する。
【背景技術】
【0002】
当該技術において往々に必要とされる機能はガス流から液滴を分離することである。
【0003】
この目的に使用される分離装置の多くは、大抵は円筒状であるフィルタインサート(フィルタカートリッジ)がハウジング内に装備され、ガス流がフィルタインサートを放射状に流通して浄化される。この場合には、フィルタインサート内を通流する流れは周囲表面から内側へ、またはその逆方向である。典型的なフィルタインサートは、固定部によってカバーの表面に固定される媒体パケット(濾過媒体のパケット)を含む。
【0004】
フィルタインサートで使用される濾過媒体は2つの主要な機能を提供しなければならない。すなわち、
様々なフィルタ(濾過)機構によって、すなわち主として深層濾過およびフィルタの合着によって搬入液を分離すること、並びに、
濾過媒体の低レベルの飽和を維持することでフィルタ内の低逆圧を維持するように濾過媒体から液体を継続的に放出させること。
【0005】
通常のフィルタデザインには、繊維径、細孔度および表面エネルギー等の適した物質特性を備えた1以上の異なる濾過媒体を有した構造体が関与する。一般的には粗分離(粗処理分離)手段が通流方向において精密分離手段の上流側に配置される。
【0006】
フィルタのデザインは、分離程度、排液および許容性逆圧に関する要求程度に応じて考察される。
【0007】
精密分離のための濾過媒体が、特に高度の分離のために要求される。典型的には、精密分離のための濾過媒体は小さな繊維径と小さな孔径を特徴とする。
【0008】
存在する弱点は、精密分離においては、例えばオイル等である吸収された液体が、稼動時に高い流れ抵抗が関与する通常の稼動条件下では濾過媒体から十分に搬出されないことである。
【0009】
分離された液体での濾過媒体の飽和を最小化するために、ガス流の方向での濾過媒体(粗分離のための物質および精密分離のための物質)からの排液状態を改善するには多大な努力が必要である。
【0010】
AT512506B1は、液滴をガス状物から分離する濾過装置を開示する。そこでは、濾過層の進入面に通流妨害壁が形成され、排液層に隣接する進入面の領域を覆い、やがて通流妨害壁は排液層の進入面を実質的に完全に覆う。
【0011】
DE202005004151U1は、収集された液体を重力の作用でスペーサ布体の底部縁部を越えて流し、その後に収集する濾過要素を説明する。
【0012】
DE69909284T2は、連合フィルタにおける改善を説明する。その文献によれば、フィルタは、微小繊維材料で成る第1オイル合着層と、排オイル材料で製造される第2層とを含んでおり、排液層が合着層からのオイルの受け入れに活用され、重力の作用でフィルタから流出するようにオイルの通路を提供する。
【0013】
US2010/031940A1は、軸方向の排液および封止を備えた、ブローバイガス濾過用の濾過装置を開示する。
【0014】
US8499749B2は、クランクケース通気システムのブローバイガスのためのフィルタを開示する。そこでは、分離された液体の排液穴がフィルタインサートの底部に提供されている。しかし、このような構造の弱点は、排液開口を通過するガスのバイパス(迂回路)の存在が必須であることである。このバイパスとは、ガスが排液開口から逃避でき、よって、濾過層の部分の全てを通過しないことである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】AT512506B1
【特許文献2】DE202005004151U1
【特許文献3】DE69909284T2
【特許文献4】US2010/031940A1
【特許文献5】US8499749B2
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
従って、本発明の目的は、従来技術の弱点がなく、良好な排液特性を備えたフィルタインサートを提供することである。本発明は、そのようなフィルタインサートを使用した濾過装置、およびそのような濾過装置を含んだ内燃機関の提供も意図する。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明のその目的は、請求項1の特徴を備えたフィルタインサートによって、および、請求項10に記載された濾過装置によって、さらに、請求項13に記載された内燃機関によって達成される。好適な実施態様はそれらの従属請求項に記載されている。
【0018】
フィルタインサートの放射方向(半径方向)に延びる液体の通路は、媒体パケット(媒体パック;media packet)の精密分離(精処理分離)のための濾過媒体(濾過物質)とフィルタインサートの底部との間、または媒体パケット内に提供され、よって、排液は容易にフィルタインサートの外部に流出することができる。この通路とは、ほぼまたは完全に濾過媒体を含まない流通路が提供されていることである。その結果、液体は実質的にさらに容易に流出し、濾過媒体の飽和およびそれに関連したフィルタインサートの流れ抵抗の増大に関する前述の問題を提起しない。
【0019】
“放射方向(半径方向)に延びる”とはフィルタインサートの略円筒状である基本形状に関係する。本願との関係では、それは通路が、主要液体放出流方向に連続した流通路を有していることを意味する。本発明は円筒形状以外の他の形状にも適用できることは理解されるであろう。もちろん通路は接線方向の要素も有することができる。通路は筒状間隙または個別通路の形態であってもよい。
【0020】
好適には、媒体パケットは少なくとも1つの精密フィルタ(精密濾過用フィルタ)を含んでいる。
【0021】
さらに好適には、通路にはほぼまたは完全に精密フィルタが含まれていない。なぜなら、精密分離に不可欠である精密フィルタは排液対象の液体に対して特に高い流れ抵抗とは対立するからである。
【0022】
好適には、媒体パケットは毛細管効果を備えた少なくとも1つの層を有している。
【0023】
毛細管効果を備えた層の存在の特に大きな利点は、液体で飽和した後に、それは気密状態になるが液体には透過性である(液体に対して開いている)。従って、媒体パケットは、液体の毛細管効果により飽和しているそれらの領域にて略気密状態で閉じている。例えばオイル等の液体に関して湿潤性である材料が毛細管効果を備えた濾過媒体のために選択される。この選択は濾過媒体に関連する液体の表面張力または界面張力に依拠する。
【0024】
液体がその内部で2cmから10cm、好適には2cmから5cmの上昇高に達するように濾過媒体が毛細管効果を備えていることが特に望ましいことが発見されている。この上昇高は実験によって容易に決定できる。湿潤状態では、毛細管効果を備えた濾過媒体は液体に対して開いている層を形成する。すなわち、例えばオイルである液体はそこを貫通するが、それは通常の稼動条件(例えば、20ミリバールから50ミリバールのフィルタ差圧)下では略気密である。
【0025】
好適には、毛細管効果を備えた層は、部分ごとに気密的に媒体パケットを、好適にはガスの流入側と放流側で閉じさせる。稼動時には、毛細管効果を備えた層は毛細管効果により底部に集まる液体から液体を吸い上げるが、層は上昇高まで気密状態になる。
【0026】
従って、媒体パケットは通常稼動差圧に対する所定の高さにまで(約50ミリバールまで、好適には20ミリバールまで)実質的に気密状態で閉じている。ガスは、濾過目的で提供されている媒体パケットの層をガスが通過して流れなければ、気密部を通過し、前述の通路を通って媒体パケットから排出されることはない。
【0027】
この効果は、放出されている液体を通過するが、液体で飽和していない媒体パケットの領域を通してガスを偏向させるサイホンに例えられる。
【0028】
本発明は、気密であるが液体を通過させる(液体に対して開いている)層が液体による所定の濾過媒体の飽和によって提供されるという理解を活用する。液体はそれでもその層を通過して搬出が可能である。
【0029】
しかし、液体で飽和すると、精密分離のための濾過媒体(精密フィルタ)は、液体が流れ去るときの液体に対する非常に高い流れ抵抗と対立する。従って、媒体パケット内に配置されている可能性が高い精密フィルタは濾過装置の全長に亘っては延びていない。換言すれば、精密分離のための濾過部は媒体パケット内の他の濾過媒体よりも短い。濾過装置の長さとは、ガス流の主要な貫通流方向に垂直である長さを意味する。
【0030】
従って、媒体パケット内には通路が存在し、それは精密分離のための濾過媒体を含まない。この通路により、精密分離のための濾過媒体は、稼動時に発生する液体のレベルによって実質的に影響を受けない状態であり続ける。
【0031】
このことは、精密分離のための濾過媒体には、液体で飽和している状態では特に高い流れ抵抗が関与するという理由によって重要である。
【0032】
好適には、毛細管効果を備えた層は排液物質または分離媒体の形態である。
【0033】
精密分離のための濾過部は稼動時に発生する液体のレベルにまで延びるように提供することもできる。毛細管効果を備えた濾過媒体はガス通流妨害壁として機能し、精密分離のための濾過媒体と接着剤との間の中間間隙を通過する通流を妨害する。
【0034】
通路の高さは、好適にはフィルタインサートの高さの2%から0.5%を超えない範囲である。これで、排液作用と分離効果との間の特に良好な妥協が達成される。
【0035】
通常のフィルタ寸法では、特に、定置エンジンの場合のオイルミスト分離のためのフィルタインサートでは、通路は5mmから20mmの高さが特に好適である。
【0036】
好適には、毛細管効果を備えた濾過媒体の複数の層部分が、ガス流方向において精密分離のための濾過媒体の構造部の前方および後方で媒体パケット内、特に精密分離のための濾過媒体の構造部内に設置される。言い換えると、毛細管効果を備えた層部分は、精密分離のための部分内と、さらにその上流側および下流側に設置される。従って、精密分離のための部分は毛細管効果を備えた層によって好適には“パック化(packed)”される。
【0037】
フィルタインサートは異なる形態でもよい。例えば、円筒形状が適している。この場合には、濾過媒体の層部分は典型的には巻き付け状であるが、層状であってもよい。立方体状である場合には濾過層部分は層状である。通路の配向性に関連する円筒形状に関して上述した説明は、他の構造形状の場合にも同様に適用される。円筒状の場合の“放射方向(半径方向)”とは立方体形状の場合には“通流方向”に概念的に置換されるものである。
【0038】
上述したフィルタインサートは、オイルミストが付加されたガス、例えば、内燃機関のクランクケース通気システムのブローバイガスからのオイル滴の分離および放出に特に適している。
【0039】
本発明は添付図面を利用して以下でさらに詳細に解説されている。
【図面の簡単な説明】
【0040】
図1図1は、フィルタインサートの概略断面図である。
図2図2は、別実施例によるフィルタインサートの概略断面図である。
図3図3は、さらに別な実施例によるフィルタインサートの概略断面図である。
図4図4は、フィルタインサートの概略図である。
図5図5は、フィルタインサートの底面図である。
図6図6は、濾過装置を備えた内燃機関を図示する。
【発明を実施するための形態】
【0041】
図1は、ガス流Gから液体浮遊(懸濁)粒子を分離する、特にエアゾール運搬ガスから液滴を分離するためのフィルタインサート1の実施例を示している。図1のフィルタインサート1は円筒状である。回転対称形状が対称軸Sによって提供される。図面には回転対称構造物の左半分だけが断面図により提供されている。
【0042】
共同で媒体パケットMを提供する異なる濾過媒体が関与する構成層要素が図示されている。フィルタインサート1は高さがHである。
【0043】
ガスすなわちガス流Gはまず濾過媒体を通流し、毛細管効果を備えた第1濾過層3を介して精密フィルタ4を通流する。通流方向の構成の外側に構成されているのは、毛細管効果を備えた層3であり、そこを通って浄化処理済みのガス流がフィルタインサート1から離れる。
【0044】
ガス流Gは上方からフィルタインサート1内に中心的に流入する。進入ガス流Gはまず濾過媒体2内で大型液滴が排除される。その後、精密分離が精密フィルタ4内で実行される。ガス流Gは最後の濾過層を通過した後にフィルタインサート1から離れる。
【0045】
稼動時にフィルタインサート1は、ガス流Gを中心的に通過させ、好適には上方からフィルタインサート1内に流入させ、その下側にオイル放出部を有するハウジング(収容体)により包囲されている。このハウジングは図面の簡素化のために省略されている。当業者であれば、フィルタインサート1の挿入と交換とを許容するそのようなハウジングの設計には十分に精通しているであろう。
【0046】
明確性のため、媒体パケットMの個別の層は間隔を開けて図示されている。実際には、それらは密状態に詰められており、例えば、巻き付けられている。よって、精密フィルタ4を含まない部分(長さ=Hfree−H)を通過するガス流Gのためのバイパスは存在しないことも理解されよう。ガス流Gは精密フィルタ4を通過する。
【0047】
通路Pの前後に毛細管効果を備えた少なくとも1つの濾過層3が提供されることが機能の観点から必須であることが証明されている。
【0048】
液体Oは重力の作用で媒体パケットM内または媒体パケットM上をフィルタインサート1の底部5の方向に流れ、縁部Rを越えて流出する(縁部Rの矢印方向)。その点で、液体分離の量的に最大の割合は、ガス流に遭遇する、液体分離のための濾過媒体2(好適には粗フィルタ)のための濾過媒体によりそこで形成されている媒体パケットMの表面で発生する。
【0049】
この実施例では円筒リングの形状である濾過媒体2、3および4は、高さHである接着層Kによって底部5に結合されている。底部5は一般的に縁部Rを有した深絞りプレートの形態である。稼動時に、液体Oは底部5に集積し、液体レベルを発生させる。縁部Rの高さは、稼動するフィルタインサートで液体レベルが達成する高さを規定する。この実施例では、液体Oはフィルタインサートから放射方向(半径方向)に流出する。従って縁部Rの高さは安定稼動状態下で液体レベルの高さを規定する。
【0050】
図1の実施例では、縁部Rの高さは、稼動時に精密フィルタが液体レベル内に突き出ることがないように選択され、従って、そこから離れている。
【0051】
フィルタインサート1の稼動時には、高さHの通路Pが存在し、分離された液体が精密フィルタ4を通過して流れる必要がないので、従来よりも大幅に向上した液体の放出を許容する。
【0052】
毛細管効果を備えた濾過媒体3は、通路Pを精密フィルタ4の下流側で気密状態に閉じさせる。従って、ガス流Gは、まず精密フィルタ4を通って通過せずにはフィルタインサート1を離れられない。高さHは、毛細管効果を備えた濾過媒体3が液体で飽和した、すなわち気密である長さである。前述したように、Hは濾過媒体3の毛細管効果による液体の上昇高である。
【0053】
高さHfreeは、接着層Kと精密フィルタ4との間の高さである。
【0054】
図2の実施例では、底部Bの縁部Rまたは精密フィルタ4の長さは、フィルタインサート1の稼動時に精密フィルタ4が液体レベル内に延び入るように選択される。液体レベルの高さは縁部Rの高さによって規定される。通路の高さHは、図1の実施例と比べて、精密フィルタ4の液体レベル内への侵入深度の分だけ少ない。
【0055】
図3の実施例では、毛細管効果を備えた濾過媒体3の別な層部分が精密フィルタ4の層部分内に提供される。その結果、毛細管効果を備えた濾過媒体3の飽和部分の気密性妨害壁によって、ガス流は媒体パケット内でも偏向され、精密フィルタ4を通過しなければならない。これは反復性であることは理解されよう。すなわち、毛細管効果を備えた濾過媒体の複数の層部分は媒体パケット内に提供が可能である。
【0056】
これら図面は媒体パケットM内の少なくとも1つのそれぞれの精密フィルタ4を示している。本発明は、精密分離のための精密フィルタ4と、精密フィルタが無い部分によって形成された通路Pとを有した媒体パケットMには限定されない。通路Pは、媒体パケットM内に、例えば媒体パケットM内の開口あるいは通路の手段によって実現できる。それら開口または通路は、好適には媒体パケットMの下方領域に提供される。
【0057】
これら図面は、精密分離のための精密フィルタ4と毛細管効果を備えた濾過媒体3とで成る単一の連続物を図示している。その構成は反復可能であることは理解されよう。従って、複数の連続物形態の精密フィルタ4と毛細管効果を備えた濾過層3を提供することが可能である。
【0058】
通路Pが全角範囲360°で提供されず、その一部でのみ提供される形態も可能である。
【0059】
実際には、通路Pは、底部5で接着層Kが、好適には同心環状ビーズの形態となるようにも製造できる。この構造により、通路Pがそれによって実現するように、それぞれの濾過媒体と底部5との間には接着ビーズでの結合部が存在しない。
【0060】
図4は、フィルタインサート1が配置されている濾過装置8を図示する。図示するこの構造では、ガス流Gは上方から濾過装置8内に中心的に流入し、内側から外側にフィルタインサート1を通流する。液体Oは媒体パケットMで分離され、重力の作用で下方に流れる。それは底部5で外側に放射方向(半径方向)に流れ、液体放出部7を介してハウジング6から離れる。
【0061】
図5は、フィルタインサート1の底部5を図示する概略平面図であり、この場合には、この実施例では、媒体パケットM(ここでは図示せず)が底部5にその表面全体で結合しないように接着層Kが周囲的に閉じていないビーズの形態で適用されている。このように、液体Oの放出流のための通路Pを提供することも可能である。
【0062】
図6は、濾過装置8を備えた内燃機関9を示す。当業者であれば、ガス流Gから液体Oを分離する濾過装置8の循環経路の相互接続には精通しているであろう。よって、この関係ではその構成を詳細に説明することは不要であろう。
【符号の説明】
【0063】
使用用語リスト
1 フィルタインサート
2 液体分離のための濾過媒体
3 毛細管効果を備えた濾過媒体
4 精密分離のための濾過媒体
5 底部
6 ハウジング
7 液体放出部
8 濾過装置
9 内燃機関
G ガス、ガス流
K 接着層
O 液体
P 通路
R 縁部
S 対称軸
図1
図2
図3
図4
図5
図6