(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6095187
(24)【登録日】2017年2月24日
(45)【発行日】2017年3月15日
(54)【発明の名称】コンクリート柱の耐震補強構造
(51)【国際特許分類】
E04G 23/02 20060101AFI20170306BHJP
【FI】
E04G23/02 F
【請求項の数】5
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2016-94249(P2016-94249)
(22)【出願日】2016年5月10日
【審査請求日】2016年9月30日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】593179783
【氏名又は名称】株式会社フジモト
(74)【代理人】
【識別番号】100119220
【弁理士】
【氏名又は名称】片寄 武彦
(74)【代理人】
【識別番号】100139103
【弁理士】
【氏名又は名称】小山 卓志
(74)【代理人】
【識別番号】100139114
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 貞嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100094787
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 健二
(72)【発明者】
【氏名】藤本 隆司
【審査官】
津熊 哲朗
(56)【参考文献】
【文献】
特開2015−086690(JP,A)
【文献】
特開平10−331436(JP,A)
【文献】
特開平11−159152(JP,A)
【文献】
特開2015−063890(JP,A)
【文献】
特許第5869717(JP,B1)
【文献】
特許第5832053(JP,B1)
【文献】
特開平04−106267(JP,A)
【文献】
特開2014−136924(JP,A)
【文献】
特開2007−138472(JP,A)
【文献】
実開平04−076867(JP,U)
【文献】
特開2015−129434(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04G 23/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コーナー部を曲面とした断面コ字形又は断面半円形の本体部の上下に内側に水平に伸びる上下水平補強リブと、本体部の両端から前方に伸び途中で直角に内側に折り曲げてさらに前方に伸びるように折り曲げた部分に固定ボルト用長孔を形成した連結リブを有し、コンクリート柱の一面側に上下方向に連設される補強部材と、
コンクリート柱の一面側にコンクリート柱の補強長さを有しアンカーボルトで固定される一対のL字形の固定部材と、
補強部材の連結リブに形成した固定ボルト用長孔とコンクリート柱に固定された固定部材に連通して固定するタイロッドと、
補強部材の外周に配置される繊維シートと、
コンクリート柱の一面側と補強部材との間の空隙に充填される固化剤と、
からなることを特徴とするコンクリート柱の耐震補強構造。
【請求項2】
前記補強部材の上下水平補強リブに複数の連結ボルト用孔を形成することを特徴とする請求項1に記載のコンクリート柱の耐震補強構造。
【請求項3】
下部構造に接する補強部材の下水平補強リブの連結ボルト用孔の上部に溶接で固定されるナットとナットに螺着される不陸調整用ボルトを備えることを特徴とする請求項2に記載のコンクリート柱補強構造。
【請求項4】
コンクリート柱の上下方向に所定間隔あけその突出部が前記タイロッドと干渉しない位置に配置されるあと施工アンカーを備えることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載のコンクリート柱の耐震補強構造。
【請求項5】
前記補強部材の上下方向の連結部外周に配置される重ね繊維シートを備えることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載のコンクリート柱の耐震補強構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリート柱の耐震補強構造に関する。
【0002】
従来、コンクリート柱の耐震補強構造として、前面部とこの前面部の両側における一対の側面部とを備えた枠体が、既存柱の幅方向に複数の鋼板を組み合わせて構成されるとともに、上記側面部を既存柱の上下方向に沿わせて、複数の上記枠体が既存柱の上下方向に積層され、上記前面部と既存柱の前面との間に上記側面部に相当する間隔が保たれており、この間隔にグラウト材を充填してなるコンクリート柱の補強構造において、既存柱の補強必要長さにほぼ対応する長さの一対のガイド部材を備えてお
り、ガイド部材は、上記枠体の側面部に接触する鋼板接触面と、既存柱あるいは既存柱に隣接する既存壁等の既存の構造体に接触する構造体接触面とを備えており、上記鋼板接触面を上記枠体における上記一対の側面部の設置間隔に合わせて既存柱の上下方向に沿わせており、上下方向に積層された上記枠体のすべての側面部が上記鋼板接触面に接触しており、上記構造体接触面を既存柱又は既存柱に隣接する既存の構造体に固定してなるコンクリート柱の補強構造が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015−86690号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来のコンクリート柱の耐震補強構造は、枠体が複数の鋼板を組み合わせて構成されているため組み立て作業に時間を要するという問題と、枠体が角部を有するため、枠体外周に繊維シートを配置する際、繊維シートが角部で損傷するという問題を有していた。
【0005】
本発明は、従来技術のもつ課題を解決する、構造が簡単で組み立て作業が容易で、外周に配置する繊維シートの変形による損傷を無くすことが可能なコンクリート柱の耐震補強構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のコンクリート柱の耐震補強は、前記課題を解決するために、コーナー部を曲面とした断面コ字形又は断面半円形の本体部の上下に内側に水平に伸びる上下水平補強リブと、本体部の両端から前方に伸び
途中で直角に内側に折り曲げてさらに前方に伸びるように折り曲げた部分に固定ボルト用長孔を形成した連結リブを
有し、コンクリート柱の一面側に上下方向に連設される補強部材と、コンクリート柱の一面側にコンクリート柱の補強長さを有しアンカーボルトで固定される一対のL字形の固定部材と、補強部材の連結リブに形成した
固定ボルト用長孔とコンクリート柱に固定された固定部材に連通して固定するタイロッドと、補強部材の外周に配置される繊維シートと、コンクリート柱の一面側と補強部材との間の空隙に充填される固化剤と、からなることを特徴とする。
【0007】
また、本発明の本発明のコンクリート柱の耐震補強構造は、前記補強部材の上下水平補強リブに複数の連結ボルト用孔を形成することを特徴とする。
【0008】
また、本発明のコンクリート柱の耐震補強構造は、下部構造と接する補強部材の下水平補強リブの連結ボルト用孔の上部に溶接で固定されるナットとナットに螺着される不陸調整用ボルトを備えることを特徴とする。
【0009】
また、本発明のコンクリート柱の耐震補強構造は、コンクリート柱に上下方向に所定間隔あけてあと施工アンカーをその突出部がタイロッドと干渉しない位置に配置することを特徴とする。
【0010】
また、本発明のコンクリート柱の耐震補強構造は、前記補強部材の上下方向の連結部外周に配置される重ね繊維シートを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
コーナー部を曲面とした断面コ字形又は断面半円形の本体部の上下に内側に水平に伸びる上下水平補強リブと、本体部の両端から前方に伸び
途中で直角に内側に折り曲げてさらに前方に伸びるように折り曲げた部分に固定ボルト用長孔を形成した連結リブを
有し、コンクリート柱の一面側に上下方向に連設される補強部材と、コンクリート柱の一面側にコンクリート柱の補強長さを有しアンカーボルトで固定される一対のL字形の固定部材と、補強部材の連結リブに形成した
固定ボルト用長孔とコンクリート柱に固定された固定部材に連通して固定するタイロッドと、補強部材の外周に配置される繊維シートと、コンクリート柱の一面側と補強部材との間の空隙に充填される固化剤と、からなることで、組み立てが容易で補強部材の外周に配置される繊維シートが補強部材に角部が無いので引張応力により損傷することがなく、上下の水平補強リブが固化剤と一体化して耐震性能を向上することが可能になり、
本体部の両端から前方に伸び途中で直角に内側に折り曲げてさらに前方に伸びるように折り曲げた部分に固定ボルト用長孔を形成した連結リブとことにより、固定ボルトの位置合わせが容易になり、固定状態での部材の外側への突出量を減少させることが可能となる。
補強部材の上下水平補強リブに複数の連結ボルト用孔を形成することで、上下方向への補強部材の連設が容易に実施することが可能となる。
下部構造に接する補強部材の下水平補強リブの連結ボルト用孔の上部に溶接で固定されるナットとナットに螺着される不陸調整用ボルトを備えることで、下部構造に多少の不陸が存在しても正確に補強部材を上下方向に連設することが可能となる。
コンクリート柱に上下方向に所定間隔あけてあと施工アンカーをその突出部がタイロッドと干渉しない位置に配置することで、コンクリート柱と固化剤の一体化を向上させ耐震性能を向上させることが可能となる。
補強部材の上下方向の連結部外周に配置される重ね繊維シートを備えることで、連結部にも切れ目なく繊維シートを配置されるので減衰性、引張強度がより向上する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】(a)(b)(c)本発明の実施形態を示す図である。
【
図3】(a)(b)本発明の実施形態を示す図である。
【
図6】(a)(b)本発明の実施形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明のコンクリート柱の耐震補強構造の実施形態を図により説明する。
図1(a)(b)(c)は、コンクリート柱の耐震補強構造に用いる補強部材1の上面図、正面図、側面図である。
【0015】
補強部材1は、半円形の本体部2の上下に水平に内側に伸びる上水平補強リブ3と下水平補強リブ4が形成される。上水平補強リブ3と下水平補強リブ4には、連結ボルト用孔6が複数形成される。上水平補強リブ3には複数の位置決め用爪8が固定される。位置決め用爪8は、補強部材1を上下方向に連設する際正確に位置決めする。
【0016】
半円形の本体部2の両端から前方に伸びる連結リブ5が形成される。連結リブ5には、固定ボルト用孔7が形成される。固定ボルト用孔7は、固定ボルトの位置合わせを容易にするために長孔とする。連結リブ5は、前方に伸び途中で内側にほぼ直角に折り曲がる部分を形成し、内側に折り曲がった部分に固定ボルト用孔7を形成し、固定状態での部材の外側への突出量を減少させることが可能になる。また、連結リブ5の角部も曲面状にすることが望ましい。
【0017】
図2は、補強部材1の他の実施形態を示す図である。この実施形態では、本体部2が断面コ字形の角部を曲面状にしたもので他の構成は
図1に示される補強部材と同様であるので説明を省略する。
【0018】
補強部材1は、低価格で加工が容易で一定の強度を有する鋼等の金属や繊維補強樹脂等の樹脂で形成される。
【0019】
図3(a)(b)は、コンクリート柱9に固定される固定部材10の実施形態を示す図である。コンクリート柱9の一面側に補強対象長さに渡って一対の平行に伸びる断面L字形の固定部材10がアンカーボルト11で固定される。一対の断面L字形の固定部材9を連結部材12で連結することで平行を維持した状態でコンクリート柱9の一面側に一対の固定部材9を固定することが可能となる。固定部材9にはタイロッド挿通孔13が形成される。
【0020】
図4は、コンクリート柱9の一面側に補強部材1を固定部材10に固定した状態を示す上面図であり、
図5は、補強部材1と固定部材10の固定状態の拡大図である。補強部材1の本体部2の外周には繊維シート14が接着剤を介して配置される。繊維シート14の両端はフリーの状態にする。
【0021】
固定部材10に形成したタイロッド挿通孔13と連結リブ5に形成した固定ボルト孔7に両端に雄ネジを形成したタイロッド15を挿入する。タイロッド15の両端雄ネジには、固定部材側ナット16が螺着される。繊維シート14の両端にはタイロッド挿通孔が形成され、タイロッド15が挿入された繊維シート14に張力を加えて押えプレート17で押え、連結リブ側ナット18を螺着する。繊維シート14の両端に張力を付加するので、連結リブ5の角部も曲面にしておくことが望ましい。繊維シート14が張力を付加されて固定されるので、補強部材1の引張強度が向上する。
【0022】
コンクリート柱9には、上下方向に所定間隔であと施工アンカー19が配置される、あと施工アンカー19の配置は、あと施工アンカー19の突出部がタイロッド15と干渉しない位置にする。あと施工アンカー19は、コンクリート柱9と補強部材1の間の空間に充填されるコンクリート等の固化剤との定着性を向上させ、耐久性を向上することが可能となる。
【0023】
補強部材1とコンクリート柱9で囲まれた空間に軸方向筋20を配筋する。必要に応じてフープ筋、副筋を配筋しても良い。軸方向筋20の下端は下部構造に埋設固定する。
【0024】
図6(a)(b)は、補強部材1をコンクリート柱9の一面側に固定し上方向に連設していく状態を示す側面図と一部拡大図である。最下部に位置する補強部材1の下水平補強リブ4に形成した連結ボルト用孔6の上にナット22を溶着する。ナット22に不陸調整用ボルト23に螺着する。不陸調整ボルト23は、下部構造21の表面に不陸が存在する場合でも最下部に位置する補強部材1の水平度を正確に調整する。水平度を調整した補強部材1をタイロッド15により固定部材10に固定する。
【0025】
水平度が調整された補強部材1上に別の補強部材1を配置する。上に位置する補強部材1の位置決めは、下に位置する補強部材1の上水平補強リブ3に固定した位置決め用爪8により正確に位置決めする。下に位置する補強部材1の上水平補強リブ3に形成した連結ボルト用孔6と上に位置する補強部材1の下水平補強リブ5に形成した連結ボルト用孔6に連結ボルト24を挿通して固定する。次いで、上に位置する補強部材1をタイロッド15で固定部材に固定する。
【0026】
下に位置する補強部材1と上に位置する補強部材1の連結部外周に重ね繊維シート25を接着剤で固定する。連結部に重ね繊維シート25を配置することにより、補強部材1の外周に配置される繊維シート14の連続性が維持され、エネルギー減衰性と引張強度が向上する。
【0027】
上記工程を順次実施し、コンクリート柱9の補強対象まで補強部材の連設固定が完了すると型枠を設置し、コンクリート柱9と補強部材1に囲まれた空間にコンクリート等の固化剤を充填し固化させ、コンクリート柱9と補強部材1を一体化する。
【0028】
以上のように、本発明のコンクリート柱の耐震補強構造によれば、組み立てが容易で補強部材の外周に配置される繊維シートが補強部材に角部が無いので引張応力により損傷することがなく、上下の水平補強リブが固化剤と一体化して耐震性能を向上することが可能になる。
【符号の説明】
【0029】
1:補強部材、2:本体部、3:上水平補強リブ、4:下水平補強リブ、5:連結リブ、6:連結ボルト用孔、7:固定ボルト用孔、8:位置決め用爪、9:コンクリート柱、10:固定部材、11:アンカーボルト、12:連結部材、13:タイロッド挿通孔、14:繊維シート、15:タイロッド、16:固定部材側ナット、17:押えプレート、18:連結リブ側ナット、19:あと施工アンカー、20:軸方向筋、21:下部構造、22:ナット、23:不陸調整用ボルト、24:連結ボルト、25:重ね繊維シート
【要約】
【課題】構造が簡単で組み立て作業が容易で、外周に配置する繊維シートの変形による損傷を無くすことが可能なコンクリート柱の耐震補強構造を提供することを目的とする。
【解決手段】コーナー部を曲面とした断面コ字形又は断面半円形の本体部の上下に内側に水平に伸びる上下水平補強リブと、本体部の両端から前方に伸びる連結リブを形成し、コンクリート柱の一面側に上下方向に連設される補強部材と、コンクリート柱の一面側にコンクリート柱の補強長さを有しアンカーボルトで固定される一対のL字形の固定部材と、補強部材の両端の連結リブとコンクリート柱に固定された固定部材に連通して固定するタイロッドと、補強部材の外周に配置される繊維シートと、コンクリート柱の一面側と補強部材との間の空隙に充填される固化剤と、からなることを特徴とする。
【選択図】
図4