特許第6095192号(P6095192)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6095192
(24)【登録日】2017年2月24日
(45)【発行日】2017年3月15日
(54)【発明の名称】ニードル周回手段及び巻線機
(51)【国際特許分類】
   H02K 15/095 20060101AFI20170306BHJP
【FI】
   H02K15/095
【請求項の数】9
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2017-500402(P2017-500402)
(86)(22)【出願日】2016年10月27日
(86)【国際出願番号】JP2016081832
【審査請求日】2017年1月5日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】510054049
【氏名又は名称】E−Tec株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100143111
【弁理士】
【氏名又は名称】青山 秀夫
(72)【発明者】
【氏名】細野聖二
(72)【発明者】
【氏名】小島昌男
【審査官】 土田 嘉一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−316261(JP,A)
【文献】 特開平11−178290(JP,A)
【文献】 特開平2−211040(JP,A)
【文献】 特許第2717433(JP,B2)
【文献】 特開2002−330573(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 15/095
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
環状をなす複数の磁極ティースの周囲に、コイル線を巻線させるニードルの先端を、周回運動させるニードル周回手段において、
ステータコアの端面に沿って周方向に前記先端を揺動運動させる揺動運動手段と、前記磁極ティースがなす隙間に沿って軸方向に前記先端を直線運動させる直線運動手段と、前記揺動運動と前記直線運動を前記周回運動に合成させる周回軌道制御手段とを含み、
前記揺動運動手段は、揺動運動用のサーボモータと、前記揺動運動用のサーボモータが発生させた回転運動を前記揺動運動に変換させる揺動運動方向変換手段とを備え、
前記直線運動手段は、直線運動用のサーボモータと、前記直線運動用のサーボモータが発生させた回転運動を前記直線運動に変換させる直線運動方向変換手段とを備え、
前記揺動運動用のサーボモータと前記直線運動用のサーボモータが、いずれも独立された状態で基台に固定されると共に、一方向のみに回転運動を発生させ、
前記周回軌道制御手段が、前記周回運動の周回軌道を変更させるように、各々のサーボモータの回転速度を変更可能とさせている、
ことを特徴とするニードル周回手段。
【請求項2】
前記揺動運動方向変換手段は、回転運動を所定の振幅で揺動運動に変換させるカム機構を含み、
前記カム機構が、前記揺動運動用のサーボモータに発生させた回転運動を、往の揺動運動、停止状態、復の揺動運動、停止状態の順に繰り返す往復揺動運動に変換させる、
ことを特徴とする請求項1に記載のニードル周回手段。
【請求項3】
前記直線運動方向変換手段は、クランク機構を含み、
前記クランク機構が、竿体を円盤面から突出させた円盤と、コイル線を供給させる軸部に連結されると共に、前記ステータコアの端面方向に沿って延びる長孔を有する板体とを有し、
前記直線運動用のサーボモータに発生させた回転運動により円盤を回転させて、前記竿体を前記長孔に摺動させて、復の直線運動、往の直線運動の順に繰り返す往復直線運動に変換させる、
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のニードル周回手段。
【請求項4】
前記竿体を突出させる位置が、前記円盤の径方向に変更可能とされている、
ことを特徴とする請求項3に記載のニードル周回手段。
【請求項5】
前記周回軌道制御手段が、前記直線運動と前記揺動運動の対応する一周期の時間を同一として、周回軌道のいずれかの区域において、各々のサーボモータのいずれか一方の回転運動の速度を、他方のサーボモータの回転運動の速度に対して、相対的に加減速させることにより、前記先端の周回軌道が変更可能とされている、
ことを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載のニードル周回手段。
【請求項6】
前記周回軌道制御手段が、前記周回軌道をなす直線部において、
前記直線運動用のサーボモータの回転運動の速度を、前記揺動運動用のサーボモータの回転運動の速度に対して、相対的に加減速させることにより、前記直線部の長さを変化させる、
ことを特徴とする請求項5に記載のニードル周回手段
【請求項7】
前記周回軌道制御手段が、前記周回軌道をなす曲線部において、
前記曲線部の頂点の前後のいずれかにおいて、前記揺動運動用のサーボモータの回転運動の速度を、前記直線運動用のサーボモータの回転運動の速度に対して、相対的に加減速させることにより、前記曲線部の頂点の位置を、前記周回軌道を変更させる前の頂点の位置から偏らせる、
ことを特徴とする請求項5に記載のニードル周回手段。
【請求項8】
前記周回軌道制御手段が、前記直線運動と前記揺動運動の対応する一周期の時間を同一として、前記周回軌道をなす曲線部において、
各々のサーボモータの回転運動の速度を、同一の減速率で減速させ、
前記曲線部における巻線時間を長くさせる、
ことを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載のニードル周回手段。
【請求項9】
磁極ティースの周囲にコイル線を巻線させる直巻式巻線機において、
請求項1乃至請求項8のいずれか一項に記載のニードル周回手段を備えている、
ことを特徴とする直巻式巻線機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の磁極ティースを内面に備えた円環状断面のステータコアの内径側から、直巻方式により、磁極ティースにコイル線を巻線させる巻線機に関する。具体的には、コイル線を送出させる細筒体(以下、「ニードル」という。)の先端を、前記磁極ティースの周りの長円軌道に沿って駆動させるニードル周回手段、及び前記ニードル周回手段を備えた巻線機に関する。詳細には、高速で巻線することが可能であると共に、巻線されたコイル線の整列精度が高く、異なった形状のインシュレータを使う場合に、巻線機の組み替えを行わないでも、ニードルの軌道が変更可能なニードル周回手段、及び前記ニードル周回手段を備えた直巻式巻線機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、コイル線を送出させるニードルの先端を、磁極ティースがなす複数の隙間に、略長円軌道を描くように周回運動させて、磁極ティースの周りにコイル線を巻線させる巻線機がある。ニードルの先端を周回運動させる第1の技術として、特許文献1には、独立した複数のサーボモータを正転・逆転させて、ニードルの先端を磁極ティースの周りで周回運動させて巻線する巻線機の技術が開示されている。
【0003】
特許文献1に記載の技術によれば、ボールネジ機構とサーボモータとを有する3つの運動機構を積み重ねて、磁極ティースの隙間に沿う直線運動、磁極ティースの端面に沿う揺動運動を合成し、ニードルの先端を周回運動させると共に、磁極ティースの径方向にニードルの先端を進退運動させ、磁極ティースの周りに巻線が可能とされている。独立した複数のサーボモータを夫々正転・逆転し、ボールネジ機構によりニードルを往復運動させて巻線を行う巻線機は、大きなスペースを必要とするカム機構が不要であるという利点がある。また、各々のサーボモータが独立しているため、回転速度を任意に設定でき、磁極の間隔が変更された場合にも容易に対応できるとされている。
【0004】
周回運動をなす直線運動と揺動運動を反転させるためには、各々のサーボモータの回転を減速させて停止状態を経て逆転させる必要がある。しかし、高速で回転されているサーボモータを、短時間の間に停止させる場合には、微振動を伴うと共に、停止位置が目標値を超えるオーバーシュートの現象が発生する(図2(B)図参照)。ニードルの先端をスロット内に進入させる際に、オーバーシュートが発生すると、ニードルの先端が、磁極ティースがなす隙間を通過する軌道から外れて、磁極ティースのフランジ部と接触する可能性があった。
【0005】
ニードルの先端と磁極ティースのフランジ部の接触は、いずれかの損傷又は変形を発生させると共に、隣り合うコイル線同士が重なり、又は隙間があくという巻線の不揃いを発生させる可能性があった。また、下方の運動機構を高速で運動させると、上方の運動機構のサーボ制御部やモータ配線も運動されるため、それらが破損し易くなり、巻線機の耐久性が低くなるという課題もあった。このため、3つの運動機構を積み重ねるという技術によっては、巻線の整列精度を高いまま、高速で巻線させることができないという課題があった。
【0006】
ニードルの先端を周回運動させる第2の技術として、特許文献2及び特許文献3には、ひとつの駆動手段の回転運動により往復直線運動と往復揺動運動の2つの運動を発生させ、この2つの運動を合成させて、ニードルの先端を周回運動させる巻線機の技術が開示されている。
【0007】
特許文献2には、一つのモータの回転運動を一方向のみに回転させて、クランク機構によりステータコアの軸方向に沿う直線運動に変換させると共に、タイミングベルトを介して揺動運動にも変換させている。そして、直線運動と揺動運動とを合成させて、ニードルの先端を磁極ティースの周りに周回させている。この技術によれば、モータを高速で回転させても、オーバーシュートが発生しにくく、所定の軌道で巻線が繰り返される限り、巻線が不揃いになりにくいという利点があった。
【0008】
一方、直巻方式によりコイル線を巻線する場合には、巻線積み重ねの基部をなすように、ステータコアの端面に、樹脂性のインシュレータが装着されている。インシュレータには、その内面側に、コイル線がステータコアの内方空間に外れないように、コイルエンド部を支える立設壁が形成されている。この立設壁の形状は、様々な形状のものが使われている。インシュレータを、立設壁の高さが高いものに変更すると、立設壁とニードルの先端が接触して、いずれかの損傷又は変形を発生させる可能性があった。
【0009】
また、インシュレータを、立設壁の高さが低いものに変更すると、立設壁の頂部から離間した位置をニードルが通過することになり、コイル線が不要に引き出されることになる。ニードルから引き出されたコイル線の長さが、適切な長さを超えて長くなると、引き出されたコイル線が、鞭がしなるように振動して、巻線が不揃いになる可能性があった。特許文献2の技術によれば、ニードルの軌道を変更するためには、カム機構をなすカム自体を、別の形状のカムに交換しなければならないため、インシュレータの形状を変更すると、巻線機を組み替える必要があるという課題があった。
【0010】
特許文献3には、ステータコアを変更して、コイル線の巻線形状を変更する場合でも、ステータコアに応じた専用の巻線機を使う必要がなく、又は治具の交換が必要ないとされている巻線機の技術が開示されている。特許文献3に記載の技術によれば、ニードルの軌道を変更させるために、カムに接するアームの支点位置を変更させている。これにより、直線運動方向と揺動運動方向のいずれの方向にも、ニードルの周回軌道が変更可能とされ、ステータコアが機種変更されても対応できるとされている。
【0011】
しかし、この技術によれば、一つのモータで発生させた回転運動を、モータに連結された2つのカム板とからなるカム機構により、直線運動と揺動運動に変換させている。このため、大きなカム機構が必要となり、高速で運動させることが困難であり、高速で巻線することができず、電動子の製造時間が長くなり、生産効率が低いという課題があった。また、この技術によっても、ニードルの軌道を変更できる範囲が限定され、インシュレータが変更された場合には、変更されたインシュレータに応じた最適な軌道を周回させることができないという課題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
特許文献1:特開2000−316261号公報
特許文献2:特開2002−330573号公報
特許文献3:特開平11−178290号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明が解決しようとする課題は、高速で巻線させることが可能であると共に、巻線されたコイル線の整列精度が高く、異なった形状のインシュレータを使う場合に、巻線機の組み替えを行わなくても、ニードルの軌道が変更可能とされているニードル周回手段、及びニードル周回手段を備えた直巻式巻線機を提供することを課題としている。
【0014】
本発明の第1の発明のニードル周回手段は、環状をなす複数の磁極ティースの周囲に、コイル線を巻線させるニードルの先端を、周回運動させるニードル周回手段において、ステータコアの端面に沿って周方向に前記先端を揺動運動させる揺動運動手段と、前記磁極ティースがなす隙間に沿って軸方向に前記先端を直線運動させる直線運動手段と、前記揺動運動と前記直線運動を前記周回運動に合成させる周回軌道制御手段とを含み、前記揺動運動手段は、揺動運動用のサーボモータと、前記揺動運動用のサーボモータが発生させた回転運動を前記揺動運動に変換させる揺動運動方向変換手段とを備え、前記直線運動手段は、直線運動用のサーボモータと、前記直線運動用のサーボモータが発生させた回転運動を前記直線運動に変換させる直線運動方向変換手段とを備え、前記揺動運動用のサーボモータと前記直線運動用のサーボモータが、いずれも独立された状態で基台に固定されると共に、一方向のみに回転運動を発生させ、前記周回軌道制御手段が、前記周回運動の周回軌道を変更させるように、各々のサーボモータの回転速度を変更可能とさせていることを特徴としている。
【0015】
各々のサーボモータが、いずれも一方向のみに回転されるだけであり、サーボモータの回転速度を変更させるだけで、回転方向を反転させる必要がない。これにより、ニードルを高速で運動させるために、サーボモータを高速で回転させても、オーバーシュートが発生しにくい。オーバーシュートが発生しにくいことにより、スロットの中にニードルが進入する位置においても、設定軌道から外れにくく、前記位置におけるコイル線の巻き乱れが防止できる。
【0016】
なお、一方向のみとは、ステータコアの一つの磁極ティースに巻線がされている間は、サーボモータの回転方向が反転されないことをいう。異なる磁極ティースに対しては、異なった方向にサーボモータが回転されて、電動子が製造されてもよいことは勿論のことである。
【0017】
各々のサーボモータが、いずれも独立された状態で基台に固定されているため、特許文献1に記載の技術のように、一方のサーボモータを有する機構が、他方のサーボモータを有する機構を支える必要がない。また、夫々のサーボモータの回転運動による振動が、他方のサーボモータに伝わることがなく、ニードルの先端が振動されにくい。
【0018】
また、周回軌道制御手段が、周回運動の周回軌道を変更させるように、各々のサーボモータの回転速度を変更可能とさせている。いずれか一方のサーボモータの回転速度を加減速させるだけでもよく、両方のサーボモータの回転速度を加減速させてもよい。周回軌道が、サーボモータの回転速度の加減速だけで変更されることにより、異なった形状のインシュレータに変更する場合でも、巻線機の組み替えを行うことなく、インシュレータの形状に応じた適切な周回軌道に沿ってニードルを周回させることが可能である。
【0019】
本発明の第1の発明によれば、高速で巻線させても、オーバーシュートによる振動が発生しにくく、ニードルの先端の軌道が設定された軌道から外れることがなく、巻線されたコイル線の整列精度を高くすることができる。また、異なった形状のインシュレータを使う場合に、巻線機の組み替えをしないでも、ニードルの先端をインシュレータの形状に応じた適切な周回軌道を運動させて、コイル線を高い整列精度で巻線させることが可能である。また、巻線機の耐久性も高くなる。
【0020】
本発明の第2の発明は、第1の発明のニードル周回手段であって、前記揺動運動方向変換手段は、回転運動を所定の振幅で揺動運動に変換させるカム機構を含み、前記カム機構が、前記揺動運動用のサーボモータに発生させた回転運動を、往の揺動運動、停止状態、復の揺動運動、停止状態の順に繰り返す往復揺動運動に変換させることを特徴としている。
【0021】
サーボモータにより発生された回転運動がカム機構に入力され、カム機構を介して、往の揺動運動、停止状態、復の揺動運動、停止状態の順で繰り返す往復揺動運動に変換され、往復揺動運動として出力される。ここで、停止状態とは、サーボモータの回転運動が継続して入力されていても、出力軸の揺動が停止されている状態をいう。揺動幅が変更可能なカム機構としてもよい。揺動幅が変更されれば、隣り合う隙間の間隔が変更されても適用可能な、換言すればスロット数が変わっても適用可能なニードル周回手段とすることが可能である。
【0022】
本発明の第2の発明によれば、一方向のみに回転されるサーボモータが発生させる回転運動を、カム機構、換言すれば遊びの発生しにくい運動方向変換手段により、ステータコアの軸心を中心とする往復揺動運動に変換させている。一方向のみに回転されるサーボモータによる回転運動であっても、ニードルをステータコアの周方向に往復するように、設定軌道からずれないように揺動させる。これにより、ニードルの先端の揺動運動の動作応答性が高くなり、高速巻線が可能になると共に、巻線されたコイル線の整列精度を高くすることが可能である。
【0023】
ニードルに往復揺動運動を伝達させるには、カム機構の出力軸による往復揺動運動を、変形されない軸体を組み合わせたリンク機構により伝達させると好適である。弛みや遊びの発生しにくいカム機構とリンク機構とにより、ニードルに揺動運動が伝達されるため、ニードルの先端の動作応答性を高くすることが可能である。これにより、巻線されたコイル線の整列精度を、より高くすることが可能である。
【0024】
本発明の第3の発明は、第1又は第2の発明のニードル周回手段であって、前記直線運動方向変換手段は、クランク機構を含み、前記クランク機構が、竿体を円盤面から突出させた円盤と、コイル線を供給させる軸部に連結されると共に、前記ステータコアの端面方向に沿って延びる長孔を有する板体とを有し、前記直線運動用のサーボモータに発生させた回転運動により円盤を回転させて、前記竿体を前記長孔に摺動させて、往の直線運動、復の直線運動の順に繰り返す往復直線運動に変換させることを特徴としている。
【0025】
一方向に回転される直線運動用のサーボモータが発生させた回転運動を、クランク機構により往復直線運動に変換させている。サーボモータの一方向の回転運動により、各運動時点において、竿体の上下方向の振幅に、正弦波の垂直成分の割合を乗じた変位幅の直線運動が抽出される。サーボモータの回転方向を反転させる必要がなく、往復直線運動が、遊びを発生させない機械機構により伝達される。これにより、ニードルの先端の往復直線運動の動作応答性が高くなり、高速巻線が可能になると共に、巻線されたコイル線の整列精度を高くすることが可能である。
【0026】
本発明の第4の発明は、第3の発明のニードル周回手段であって、前記竿体を突出させる位置が、前記円盤の径方向に変更可能とされていることを特徴としている。クランク機構による直線運動の距離は、円盤の中心から竿体の中心までを半径とする円の直径により決定されている。そのため、竿体を突出させる位置を変更させて、円盤の中心と竿体の中心との距離を変更させれば、ニードルの先端が直線運動される直線距離が変更可能となる。
【0027】
これにより、ステータコアの積層厚さが変更された場合でも、ひとつの巻線機により巻線を行うことができ、巻線機の汎用性が高くなる。また、同一機種のステータコアに、立設壁の高さが異なるインシュレータが装着された場合であっても、周回軌道をインシュレータの立設壁の高さに適合させることが可能である。
【0028】
本発明の第5の発明は、第1から第4の発明において、前記周回軌道制御手段が、前記直線運動と前記揺動運動の対応する一周期の時間を同一として、周回軌道のいずれかの区域において、各々のサーボモータのいずれか一方の回転運動の速度を、他方のサーボモータの回転運動の速度に対して、相対的に加減速させることにより、前記先端の周回軌道が変更可能とされていることを特徴としている。
【0029】
サーボモータの回転運動の速度変更をさせる区域は限定されず、周回軌道をなす直線部であってもよく、周回軌道をなす曲線部であってもよい。直線部と曲線部のいずれにおいても速度変更させてもよい。周回軌道をなす直線部においては直線運動を加減速制御し、周回軌道をなす曲線部においては揺動運動を加減速制御することが容易であり好適であるが、これに限定されない。
【0030】
直線運動と揺動運動の対応する一周期の時間が同一とされるため、周回軌道のいずれかの区域において、サーボモータの回転運動の速度が変化されても、ニードルの先端は、始端から変更された周回軌道を辿り、磁極ティースの周りを一回周回し、原位置に復帰される。
【0031】
また、対応する一周期の時間が同一とは、一回の周回運動における直線運動と揺動運動の一周期が同一であればよく、全ての周回運動について、一周期が同一であることに限定されない。例えば、コイル線が重ねて巻線される際に、下層のコイル線が巻線される一周期の時間と、上層のコイル線が巻線される一周期の時間が同一であることに限定されない。例えば、巻重ねる上層のコイル線を巻線させる一周期の時間を、下層のコイル線を巻線させる一周期の時間よりも長くしてもよい。
【0032】
これにより、巻線機を組み替えなくても、サーボモータの回転運動の速度を加減速させるだけで、ニードルの先端の周回軌道を、形状の異なるインシュレータに対応した周回軌道とすることが可能である。また、巻線の巻き重ね高さに応じた張力で巻線し、巻線されたコイル線の整列精度を高くすることが可能である。
【0033】
本発明の第6の発明は、第5の発明において、前記周回軌道制御手段が、前記周回軌道をなす直線部において、前記直線運動用のサーボモータの回転運動の速度を、前記揺動運動用のサーボモータの回転運動の速度に対して、相対的に加減速させることにより、前記直線部の長さを変化させることを特徴としている。
【0034】
例えば、直線部と曲線部とからなる周回軌道において、直線部において、揺動運動用のサーボモータの回転運動の速度を同一とし、揺動運動が停止した時間を同一としたままで、直線運動用のサーボモータの回転速度を加速させると、直線部を長くすることができる。そうすると、周回軌道の形状は、直線部が長くなることにより、曲線部においてはコイルエンド部の曲線始端が外方に移動し、円弧形状がやや高さが低くなった形状とされる。なお、周回軌道全体の高さは、変更されない。
【0035】
逆に、直線部において、揺動運動用のサーボモータの回転運動の速度を同一とし、揺動運動が停止した時間を同一としたままで、直線運動用のサーボモータの回転速度を減速させると、直線部を短くすることができる。そうすると、周回軌道の形状は、直線部が短くなることにより、曲線部においてはコイルエンド部の曲線始端が内方に移動し、円弧形状がやや高さが高くなった形状とされる。なお、周回軌道全体の高さが、変更されないことは、前記と同様である。
【0036】
これにより、巻線機を組み替えることなく、直線部の高さと曲線部の高さの比率を変えた周回軌道に、ニードルの先端を周回運動させることも容易となり、インシュレータの形状に応じて、コイル線を高い整列精度で巻線させることが可能である。
【0037】
本発明の第7の発明は、第5の発明において、前記周回軌道制御手段が、前記周回軌道をなす曲線部において、前記曲線部の頂点の前後のいずれかにおいて、前記揺動運動用のサーボモータの回転運動の速度を、前記直線運動用のサーボモータの回転運動の速度に対して、相対的に加減速させることにより、前記曲線部の頂点の位置を、前記周回軌道を変更させる前の頂点の位置から偏らせることを特徴としている。
【0038】
例えば、曲線部において、直線運動用のサーボモータの回転運動の速度を同一とし、揺動運動用のサーボモータの回転速度を減速させると、曲線部の始端から頂点までの距離が短くなり、曲線部の頂点の位置が曲線部の始端側に偏り、始端側に傾いた曲線軌道とすることが可能である。なお、ニードルが曲線部の頂点の位置を超えてからは、揺動運動用のサーボモータの回転速度を加速させて、一周期の時間を変えないようにすればよい。
【0039】
逆に、曲線部において、直線運動用のサーボモータの回転運動の速度を同一とし、揺動運動用のサーボモータの回転速度を加速させると、曲線部の始端から頂点までの距離が長くなり、曲線部の頂点の位置が曲線部の終端側に偏り、終端側に傾いた曲線軌道とすることが可能である。なお、ニードルが曲線部の頂点の位置を超えてからは、揺動運動用のサーボモータの回転速度を減速させ、一周期の時間を変えないようにすればよい。
【0040】
これにより、インシュレータにコイル線が接しにくいためコイル線が弛みやすく、巻線の整列精度が低くなりやすい、曲線部においてコイル線がインシュレータに接しやすいように、曲線部の頂点の位置を曲線部の始端側に偏らせた周回軌道で巻線し、巻線の整列精度を高くすることが可能である。また、インシュレータの立設壁の形状が左右非対称であっても、それに応じた周回軌道により巻線を行うことができることは勿論のことである。
【0041】
本発明の第8の発明は、第1から第4の発明において、前記周回軌道制御手段が、前記直線運動と前記揺動運動の対応する一周期の時間を同一として、前記周回軌道をなす曲線部において、各々のサーボモータの回転運動の速度を、同一の減速率で減速させ、前記曲線部における巻線時間を長くさせることを特徴としている。
【0042】
曲線部において各々のサーボモータの回転速度が、同一の減速率で減速されることにより、コイルエンド部の巻重ね部を形成させる時間を長くすることができる。一方、直線部において各々のサーボモータの回転速度を、同一の加速率で加速させれば、直線部を形成させる時間を短くすることができる。これにより、ニードルが一周する周回時間を変えないで、直線部を速く、曲線部を遅くし、全体の巻線時間を変えないで、コイルエンド部における巻線精度を高くすることが可能である。
【0043】
本発明の第9の発明の巻線機は、第1から第8の発明のニードル周回手段を備えていることを特徴としている。これにより、高速で巻線させることが可能であると共に、巻線されたコイル線の整列精度が高く、異なった形状のインシュレータを使う場合に、巻線機の組み替えを行わなくても、ニードルの軌道が変更可能な巻線機を提供することができる。
【発明の効果】
【0044】
・本発明の第1の発明によれば、高速で巻線させても、オーバーシュートによる振動が発生しにくく、ニードルの先端の軌道が設定された軌道から外れることがなく、巻線されたコイル線の整列精度を高くすることができる。また、異なった形状のインシュレータを使う場合に、巻線機の組み替えをしないでも、ニードルの先端をインシュレータの形状に応じた適切な周回軌道を運動させて、コイル線を高い整列精度で巻線させることが可能であるという有利な効果を奏する。また、巻線機の耐久性も高くなる。
・第2の発明によれば、ニードルの先端の揺動運動の動作応答性が高くなり、高速巻線が可能になると共に、巻線されたコイル線の整列精度を高くすることが可能である。
・第3の発明によれば、ニードルの先端の往復直線運動の動作応答性が高くなり、高速巻線が可能になると共に、巻線されたコイル線の整列精度を高くすることが可能である。
【0045】
・第4の発明によれば、ステータコアの積層厚さが変更された場合でも、ひとつの巻線機により巻線を行うことができ、巻線機の汎用性が高くなるという有利な効果を奏する。
・第5の発明によれば、巻線機を組み替えなくても、サーボモータの回転運動の速度を加減速させるだけで、ニードルの先端の周回軌道を、形状の異なるインシュレータに対応した周回軌道とすることが可能である。また、巻線の巻き重ね高さに応じた張力で巻線し、巻線されたコイル線の整列精度を高くすることが可能であるという有利な効果を奏する。
・第6の発明によれば、巻線機を組み替えることなく、直線部の高さと曲線部の高さの比率を変えた周回軌道に、ニードルの先端を周回運動させることも容易となり、インシュレータの形状に応じて、コイル線を高い整列精度で巻線させることが可能である。
【0046】
・第7の発明によれば、インシュレータにコイル線が接しにくいためコイル線が弛みやすく、巻線の整列精度が低くなりやすい、曲線部の前半までの時間を長くするように、曲線部の頂点の位置を曲線部の始端側に偏らせた周回軌道で巻線し、巻線の整列精度を高くすることが可能である。
・第8の発明によれば、ニードルが一周する周回時間を変えないで、直線部を速く、曲線部を遅くし、全体の巻線時間を変えないで、コイルエンド部における巻線精度を高くすることが可能である。
・第9の発明によれば、高速で巻線させることが可能であると共に、巻線されたコイル線の整列精度が高く、異なった形状のインシュレータを使う場合に、巻線機の組み替えを行わなくても、ニードルの軌道が変更可能な巻線機を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
図1】ニードル周回手段を備えた巻線機の構成を説明する斜視図(実施例1)。
図2】巻線状態とオーバーシュートを説明する説明図(実施例1)。
図3】巻線機の構成を断面により説明する説明図(実施例1)。
図4】クランク機構の構成を説明する説明図(実施例1)。
図5】周回運動とインシュレータを説明する説明図(実施例1)。
図6】直線部を長くした周回運動を説明する説明図(実施例2)。
図7】曲線部を始端側に傾けた周回運動を説明する説明図(実施例3)。
図8】曲線部を遅くした周回運動を説明する説明図(実施例4)。
【発明を実施するための形態】
【0048】
直線運動用のサーボモータと揺動運動用のサーボモータを一方向にのみ回転させるようにし、各々のサーボモータを、いずれも独立された状態で基台に固定させた。また、周回軌道制御手段により、各々のサーボモータの回転運動の速度を制御し、ニードルの先端の周回軌道を変更可能とした。
【実施例1】
【0049】
まず、図2を参照して、ステータコア70の磁極ティース71に、直巻式巻線機によりコイル線を巻線させる状態と、従来の巻線機で巻線速度を速くした場合に、発生し易かったオーバーシュートについて説明する。図2(A)図は理解を容易にするため、ステータコアの一部とコイル線を案内させる内筒60の先端部とを斜視図により説明している。なお、図2(A)図では、内筒60の想像線を一点鎖線で示している。ステータコア70は、環状をなす薄板が複数枚積層されてなり、その上下の端面にはインシュレータ80,80が装着される。
【0050】
ステータコア内面に突出されて形成された磁極ティース71に挟まれて、コイル線を巻線させるスロット73が、ステータコア70を貫通している。磁極ティース71の内方側は、周方向に突出されたフランジ部72とされ、隣り合うフランジ部72とフランジ部72とに挟まれた隙間に、コイル線を送出させるニードル64が通過される。ニードルは、内筒60の先端部に取り付けられたニードルヘッド部63の外面から放射状に3箇所、ステータコアの径方向に進退自在に装着されている。
【0051】
内筒60の下部から3本のコイル線90が供給され(図3参照)、ニードル64の先端は、コイル線を送出しながら、インシュレータ80が装着された磁極ティースのフランジ部72の周りを周回する。ニードルの先端が周回する毎に、コイル線一本分の太さの幅で径方向に進退される。それが繰り返されて、磁極ティース71にコイル線90が巻線される。
【0052】
次にオーバーシュートについて、図2(B)図と図2(C)図を参照して簡単に説明する。図2(B)図の上図は揺動運動の時間経過に伴う振幅を示し、下図は直線運動の時間経過に伴う振幅を示している。また、図2(C)図はニードルの先端の周回軌道を示している。揺動運動の変位と直線運動の変位を合成して周回軌道が形成される。周回軌道において、上方頂部をα、上方の揺動運動の終端をβ、下方の揺動運動の始端をγ、下方底部をδ、下方の揺動運動の終端をε、上方の揺動運動の始端をζとし、図2(B)図と図2(C)図に示している。各記号は以下の図においても同一の位置を示している。
【0053】
従来の巻線機により、コイル線を高速で巻線しようとするとニードルの方向転換の際に、サーボモータの回転運動を急速に停止させる必要があり、揺動運動においては上方の揺動の終端βと、下方の揺動運動の終端εにおいて、オーバーシュートが発生していた。また、直線運動においては、上方頂部αと下方底部δにおいてオーバーシュートが発生していた。その結果、揺動運動と直線運動を合成させた周回運動においては、図2(C)図に示したように、α、β、δ、εの各点でニードルの先端が振動して、巻線の不揃いの原因の一つとなっていた。
【0054】
さて、実施例1では、直線運動方向変換手段にクランク機構を有し、揺動運動方向変換手段にカム機構を有するニードル周回手段1と、それを備えた巻線機を、図1図3から図5を参照して説明する。図1は、巻線機の構成の概要を説明する斜視図である。図3は、巻線機の構成を断面により説明する説明図である。図4は、クランク機構34の構成の一部を説明する説明図である。図5は、周回運動とインシュレータを説明する説明図である。
【0055】
巻線機は磁極ティースに、ニードルの先端を周回してコイル線を巻線させる直巻式の巻線機とされている。ニードル周回手段1は、ニードル64の先端をステータコアの軸方向に往復直線運動させる直線運動手段30と、ニードルの先端をステータコアの周方向に往復揺動運動させる揺動運動手段10と、周回軌道を変更させる周回軌道制御手段とを備えている。この外に、ニードルの先端をステータコアの径方向に進退運動させるニードル進退手段50(図1参照、破線で図示)と、コイル線を供給させる内筒60と、内筒の周囲に配設される外筒61とを備えている。なお、図1では、内筒60の想像線を一点鎖線で示している。
【0056】
まず、図1図3図4を参照して、ニードルをステータコアの軸方向に運動させる直線運動手段30を説明する。直線運動手段30は、一方向に回転される直線運動用のサーボモータ31と、サーボモータにより回転される円盤35と、円盤の中心軸36から偏心された位置に突出された竿体37と、ステータコアの軸方向に往復直線運動される板体38とを備えている。竿体37は、円盤の中心軸36との離間距離が変更可能なようにスライド手段43を介して円盤35に固定されている。
【0057】
サーボモータ31は、プーリ32とタイミングベルト33を介して、円盤の中心軸36に回転運動を伝達させている。前記中心軸36が回転されると、円盤35に備えられた竿体37が、円軌道を描くようにして、前記中心軸36の周りに回転される。板体38の中央部には、水平方向に伸びる長孔39が穿孔されており、前記長孔39に、竿体37が挿通されている(図1参照)。円盤35の回転に応じて、竿体37の上下方向の振幅に、正弦波の垂直成分の割合を乗じた変位幅の直線運動が抽出され、長孔を有する板体38を、竿体37が図上において垂直方向に移動させる。
【0058】
また、板体38には、内筒60を保持させる保持部40が備えられ、往復直線運動を内筒60に伝達させている。前記保持部40と内筒60の対向面には、夫々、水平方向に円周形状をなす円周溝41が彫られており、円周溝にベアリング42が嵌装されている(図3参照)。そのため、内筒60が往復揺動運動される際には、ベアリング42が滑動されて内筒60は自在に回転し、板体38が軸方向に往復直線運動される際には、ベアリング42が内筒60と板体38とを一体に連動させる。
【0059】
また、往復直線運動を発生させるサーボモータ31は、揺動運動発生用のサーボモータ11と、ニードルを進退させるサーボモータとから独立した状態で、基台91に固定されている(図3参照)。なお、図1においては、ニードル周回手段の構成の理解を容易にするため、基台の図示を省略している。ここで、独立した状態とは、いずれかのサーボモータが、他のサーボモータの重量を負担していない状態のことをいう。
【0060】
次に、図4を参照して、円盤面に備えられた竿体のスライド手段43を説明する。図4(A)図は、クランク機構34を平面図により説明する説明図を示し、図4(B)図は、竿体37の位置をスライドさせた状態を、側面図により説明する説明図を示している。図4(A)図には、竿体の位置を固定させるねじ軸体46の一部を破線で示し、図4(B)図には、竿体を中心軸側にスライドさせた状態を破線で示している。
【0061】
スライド手段43は、レールをなす嵌合凸部44と、前記嵌合凸部と嵌合される嵌合凹部45と、竿体37を位置固定させるねじ軸体46とからなっている。嵌合凸部44は、円盤面に沿って径方向に伸びて形成されている。嵌合凹部45は、竿体37の基端部に固着されている。嵌合凸部44と嵌合凹部45の嵌合部分の形状は、外方が縮小された断面形状の溝形状とされており、水平方向に遊びが発生しないように固定されている(図5(A)図参照)。ねじ軸体46は、嵌合凹部と嵌合凸部とが位置ずれがないように、嵌合凹部45の側面から嵌合凸部44に挿通される。
【0062】
クランク機構34において、板体38(図3参照)が往復直線運動される距離は、竿体37が旋回される際に描く円の直径により決定される。そのため、竿体37を嵌合凸部44に沿って摺動させ、円盤の中心軸36と竿体37との距離を変更させると(図4(B)図参照)、竿体37が描く円の直径が変更される。それに伴って、板体38が往復直線運動される距離も変更される。積層厚さが異なるステータコアに変更された場合には、竿体37の固定位置を嵌合凸部44に沿って摺動させ、往復直線運動の距離を変更させればよい。
【0063】
次に、図1図3を参照して、揺動運動手段10の構成を説明する。揺動運動手段10は、揺動運動用のサーボモータ11と、揺動運動方向変換手段をなすカム機構とを備えている。カム機構は、サーボモータ11から入力された一方向のみの回転運動を、往の揺動運動、停止状態、復の揺動運動、停止状態を順に繰り返す往復揺動運動に変換させる。
【0064】
サーボモータ11は、プーリ12とタイミングベルト13を介して、カム機構の入力軸15に回転運動を伝達させている。前記入力軸15が回転されると、カム機構により、サーボモータ11から入力された一方向のみの回転運動が往復揺動運動に変換される。カム機構は、入力軸15とカム部本体14と出力軸16とからなっている。入力軸15に回転運動が入力されると、カム部本体14において、図示していないカムフォロアがカム溝に沿って摺動されて、出力軸16に往復揺動運動が出力される。
【0065】
カム機構の出力軸16から、外筒61に、リンク機構20を介して往復揺動運動が伝達される。リンク機構20は、出力軸16に装着された揺動主動部21と、揺動主動部から延びる一対の連結竿23と、連結竿と連結される揺動従動部22を有している(図1参照)。リンク機構20は、いずれも剛性のある竿体等から構成されており、弛みや遊びが発生しにくく、動作応答性が高くされている(図3参照)。実施例1では、複数本のニードルを同時に進退させるために、内筒60と外筒61とに位相差を発生させるニードル進退手段50を介して、揺動従動部22の動作を、内筒60と外筒61とに伝達させている。
【0066】
具体的には、揺動従動部22の動作が、連結軸52を介して筐体部51に伝達される(図3参照)。そして、筐体部51に連結された軸受け部53を介して、内筒60に往復揺動運動が伝達される。なお、軸受け部53と内筒60との対向面には、直線溝54が備えられ、前記直線溝にベアリング55が嵌装されており、内筒60の直線運動が許容されている。また、筐体部51に内蔵されたウォーム56が、外筒に一体に固着されたウォームホイール57と咬合されており、ウォーム56を介して、外筒61に往復揺動運動が伝達される。
【0067】
ウォーム56が回転されていない状態では、ウォーム56とウォームホイール57との咬合位置が変化されず、内筒と外筒とに位相差は生じないため、筐体部51と内筒60と外筒61とが同期して往復揺動運動される。一方、ウォーム56が回転された場合には、ウォームホイール57の咬合位置が変化される。そうすると、外筒61が、筐体部51から伝達された往復揺動運動に、ウォーム56の回転分を加えた動作を行うことになり、外筒61と内筒60との間に位相差が発生し、ニードルが径方向に進退される。なお、ニードル進退手段50は一例であり、これに限定されない。
【0068】
ここで、図3を参照して、ニードル64の先端に、直線運動、揺動運動を伝達させる、内筒60の構成を簡単に説明する。図3には、ステータコア70を破線で示している。内筒60は、中心部にコイル線90を送出させる空間を有すると共に、先端部に、ニードルを装着させるニードルヘッド部63を備えている。ニードルヘッド部63には、内筒60と交差する方向に伸びるニードル64が、放射状に三本取付けられており、同時に三か所の磁極ティース71に巻線を行うことが可能とされている(図2(A)図参照)。
【0069】
各々のニードル64の下面には、カムフォロア65が取付けられている。また、ニードルヘッド部63は、ニードルが進退されるニードル摺動溝66を備えている。また、中間筒62の天面には、螺旋形状のカム溝67が刻設され、カム溝に前記カムフォロア65が摺動可能に嵌装されている。カムフォロア65が、カム溝67に沿って摺動されると、ニードル64が前記ニードル摺動溝66に沿って、ステータコアの周方向に進退運動される。
【0070】
内筒60は、中間筒62と連結されており、ニードルヘッド部63がステータコアの軸方向に往復直線運動される際には、内筒60と中間筒62とが連動して直線運動される。一方、ニードルヘッド部63がステータコアの周方向に往復揺動運動される際には、内筒60と中間筒62とは自在に回転可能とされている。外筒61は、中心部が中空とされた筒体とされ、内部に中間筒62と内筒60とが挿通されている。また、外筒61は、中間筒62と連結されており、中間筒62の直線運動を許容すると共に、周方向の回転運動については、外筒61と中間筒62とを連動させている。
【0071】
ここで、図5を参照して、本発明の周回軌道制御手段による周回軌道について説明する。図5(A)図は揺動運動方向の変位を示し、図5(B)図は直線運動方向の変位を示している。本発明の揺動運動用のサーボモータ11と直線運動用のサーボモータ31は、いずれも一方向のみに回転され、回転速度が変更されるだけであるためα、β、δ、εの各点においてオーバーシュートが発生しない(図5(A)図、図5(B)図参照)。そうすると、揺動運動と直線運動を合成させた周回運動も、振動によるぶれがない所定の軌道を通過する(図5(C)図)参照)。また、揺動運動と直線運動の対応する一周期の時間Tは同一とされている(図5(A)図、図5(B)図参照)。実施例2以降においても同様とされる。
【0072】
仮に、いずれかの点で、回転運動に不測の振動が発生しても、往復揺動運動の移動変位は、カム機構により制限されている。そのため、揺動運動の終端の位置が、磁極ティースがなす隙間を通過するように設定された位置から外れにくい。同様に、直線運動の移動距離についても、上述したように、竿体と円盤の中心軸との距離により決定されるため、周回軌道全体の高さが変化されることもない(図5(C)図参照)。
【実施例2】
【0073】
次に、図6を参照して、異なる形状のインシュレータに対応できるように、周回軌道制御手段により周回軌道を制御させたニードル周回手段2を説明する。図6(A)図は、略台形形状をなすように、上辺と下辺が平行とされ、上辺と下辺を垂直線と斜辺とにより繋いだ、上方が狭い六角形形状の立設壁82を有するインシュレータに適用した周回運動の例を示している。
【0074】
具体的には、前記垂直線の長さa(図6(A)図参照)だけ直線部の長さを長くして、略台形形状の立設壁82を有するインシュレータに対応できるように、周回軌道を変更させた例を示している。図6(B)図は、図6(A)図の周回軌道に合成される、ニードルの先端の揺動運動の変位を示している。図6(C)図は、図6(A)図の周回軌道に合成される、ニードルの先端の直線運動の変位を示している。
【0075】
さて、半円形状の立設壁に適した周回軌道(図6(A)図破線参照)を、そのまま略台形形状の立設壁82に適用すると、立設壁82の垂直辺と斜辺とがなす隅部83とニードルの先端68とが接触される(図6(A)図一点鎖線丸印参照)。そこで、実施例2のニードル周回手段2においては、周回軌道制御手段により、前記垂直線の長さa(図6(A)図参照)だけ直線部の長さを長くしている。
【0076】
直線部の長さを長くするために、直線運動と揺動運動の一周期の時間Tを同一としたまま、揺動運動が停止状態とされている時間(図6(B)図において0からζ)を変えないで、直線運動用のモータの回転速度を速くして直線部の長さを長くさせている。具体的には、元の直線距離(H)に対する、直線距離に上下の垂直線の長さが加わった長さ(H+2×a)の割合((H+2×a)/H)を、揺直線運動用のサーボモータの回転速度に乗じて速度を加速させる。直線部の長さを変更後は、揺動運動の揺動時間(図2(B)図のζからβの間)を変えないで、直線運動用のサーボモータの回転速度を減速させればよい。
【0077】
直線部が長くなると、曲線部の起点の位置(図6(A)図、ζ点参照)が、磁極ティース71の上縁部よりも曲線部の頂部αに寄った位置となる。そうすると、略台形形状の立設壁の垂直辺と斜辺とがなす隅部83とニードルとが接触しない周回軌道とすることができる(図6(A)図参照)。この実施例では、直線運動用のサーボモータを加減速させる例を挙げたが、直線運動用のサーボモータに対して、揺動運動用のサーボモータを相対的に減速しても同一の効果が得られることは勿論のことである。
【実施例3】
【0078】
実施例3では、図7を参照して、周回軌道制御手段により、周回軌道における頂部の位置を、揺動運動の始端側に変更させたニードル周回手段3を説明する。図7(A)図に示す破線は、頂点の位置が磁極ティースの中央部に位置している変更前の状態を示し、実線は頂点の位置αを磁極ティースの中央部よりも揺動運動の始端側に変更させた状態を示している。また、周回軌道を変更させる前の頂点の位置を一点鎖線丸印で示している。
【0079】
図7(B)図に示す破線は頂点の位置を変更させる前の揺動運動の変位を示し、実線は頂点の位置αを磁極ティースの中央部よりも揺動運動の始端側に偏らせた状態の揺動運動の変位を示している。図7(C)図に示す実線は直線運動の変位を示し、頂点の位置を変更させる前も、変更させた後も直線運動の変位は変化していない。
【0080】
実施例3においては、直線運動用のサーボモータの回転速度は同一とされたままで、揺動運動用のサーボモータの回転速度だけが加減速されるように回転制御手段により制御されている。直線部の間は(図7の0からζの間)、どちらのサーボモータの回転速度は変化されていない。しかし、曲線部の始端から変更後の頂点に至るまでの間は、揺動運動用のサーボモータだけが減速される。
【0081】
そうすると、揺動運動の始端ζから頂点αに至るまでの距離が、頂点αから揺動運動の終端β間での距離より短くなり、曲線部の形状が揺動運動の始端側に傾いた形状とされる。ステータコアの下端面側においても同様にすれば、周回運動の周回軌道は、ステータコアからニードルの先端が進出する位置に偏った、長円軌道とされる。
【実施例4】
【0082】
実施例4では、図8を参照して、周回軌道制御手段により、周回軌道を変えないで、周回運動の速度のみを変更させるニードル周回手段4を説明する。図8(A)図は、周回運動の変更前後の周回軌道を示している。いずれも直線部においては(図8(B)図と図8(C)図における0からζとβからγの間)同一割合でサーボモータの回転速度を加速させ、曲線部においては(図8(B)図と図8(C)図におけるζからβとγからεの間)同一割合でサーボモータの回転速度を減速させ、周回軌道を合成させている。
【0083】
直線部においては周回運動が速くされ、曲線部においては周回運動が遅くされ、同一の周回軌道とされる。高速でニードルを周回運動させる際に、コイル線が弛みやすい曲線部については、時間をかけて精密な巻線を行うことができ、コイル線が弛みにくい直線部については、短時間でニードルを移動させることにより、同一の周回軌道による巻線がされた電動子を、同一の時間で高い巻線精度で製造することが可能である。
【0084】
(その他)
・実施例1では、カム機構の入力軸にプーリを装着させ、サーボモータの回転運動をタイミングベルトにより伝達させる構成を説明したが、タイミングベルトを省略し、サーボモータの駆動軸をインデックスカムの入力軸に直結させてもよいことは勿論のことである。直線運動手段においても同様に、サーボモータの駆動軸を、円盤の回転軸に直結させてもよい。サーボモータの駆動軸を直結させれば、動作応答性を更に高くすることができる。
・ニードル周回手段は、ステータコアの軸方向の両端面に、インシュレータを装着させた電動子に適用されてもよく、ステータコアの軸方向の両端面に取外し可能な巻線案内用の治具を沿わせた電動子に適用されてもよいことは、勿論のことである。
・今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の技術的範囲は、上記した説明に限られず特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0085】
1,2,3,4…ニードル周回手段、
10…揺動運動手段、11…サーボモータ、12…プーリ、13…タイミングベルト、14…カム部本体、15…入力軸、16…出力軸、
20…リンク機構、21…揺動主動部、22…揺動従動部、23…連結竿、
30…直線運動手段、31…サーボモータ、32…プーリ、33…タイミングベルト、34…クランク機構、35…円盤、36…中心軸、37…竿体、38…板体、39…長孔、40…保持部、41…円周溝、42…ベアリング、43…スライド手段、44…嵌合凸部、45…嵌合凹部、46…ねじ軸体、
50…ニードル進退手段、51…筐体部、52…連結軸、53…軸受け部、54…直線溝、55…ベアリング、56…ウォーム、57…ウォームホイール、
60…内筒、61…外筒、62…中間筒、63…ニードルヘッド部、64…ニードル、65…カムフォロア、66…ニードル摺動溝、67…カム溝、68…ニードルの先端、
70…ステータコア、71…磁極ティース、72…フランジ部、
80…インシュレータ、81,82…立設壁、83…隅部、
90…コイル線、91…基台
【要約】
【課題】高速で巻線させることが可能であると共に、巻線されたコイル線の整列精度が高く、異なった形状のインシュレータを使う場合に、巻線機の組み替えを行わなくても、ニードルの軌道が変更可能とされているニードル周回手段、及びニードル周回手段を備えた直巻式巻線機を提供すること
【解決手段】直線運動用のサーボモータと揺動運動用のサーボモータを一方向にのみ回転させるようにし、各々のサーボモータを、いずれも独立された状態で基台に固定させた。また、周回軌道制御手段により、各々のサーボモータの回転運動の速度を制御し、ニードルの先端の周回軌道を変更可能とした。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8