特許第6095198号(P6095198)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6095198
(24)【登録日】2017年2月24日
(45)【発行日】2017年3月15日
(54)【発明の名称】磁気記録媒体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   G11B 5/84 20060101AFI20170306BHJP
   G11B 5/667 20060101ALI20170306BHJP
   G11B 5/738 20060101ALI20170306BHJP
【FI】
   G11B5/84 Z
   G11B5/667
   G11B5/738
【請求項の数】8
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2012-39218(P2012-39218)
(22)【出願日】2012年2月24日
(65)【公開番号】特開2013-175254(P2013-175254A)
(43)【公開日】2013年9月5日
【審査請求日】2015年1月29日
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)国等の委託研究の成果に係る特許出願(平成22年度経済産業省「産業技術研究開発(高機能複合化金属ガラスを用いた革新的部材技術開発)」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願)
(73)【特許権者】
【識別番号】000002004
【氏名又は名称】昭和電工株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】504157024
【氏名又は名称】国立大学法人東北大学
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(74)【代理人】
【識別番号】100094400
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 三義
(74)【代理人】
【識別番号】100163496
【弁理士】
【氏名又は名称】荒 則彦
(74)【代理人】
【識別番号】100146879
【弁理士】
【氏名又は名称】三國 修
(72)【発明者】
【氏名】井上 明久
(72)【発明者】
【氏名】西山 信行
(72)【発明者】
【氏名】竹中 佳生
(72)【発明者】
【氏名】樋渡 誠
【審査官】 斎藤 眞
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−165393(JP,A)
【文献】 特開2007−250094(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G11B 5/62−5/858
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
非磁性基板の上に、非磁性カップリング膜を挟んで積層されている反強磁性結合された複数の軟磁性合金膜を有する非晶質のみの軟磁性裏打ち層を形成する裏打ち層形成工程と、
前記軟磁性裏打ち層の上に、熱式インプリント法を用いて磁気的に分離された磁気記録パターンを有する垂直磁気記録層を形成するパターニング工程とを備える磁気記録媒体の製造方法であって、
前記裏打ち層形成工程において、前記軟磁性合金膜と前記非磁性カップリング膜との間に非晶質の歪み緩和膜を設け、非晶質のみの軟磁性裏打ち層とすることを特徴とする磁気記録媒体の製造方法。
【請求項2】
前記パターニング工程が、前記軟磁性裏打ち層の上に、金属ガラス膜を設け、熱式インプリント法を用いて前記金属ガラス膜の表面に前記磁気記録パターンに対応する凹凸を形成するインプリント工程と、
前記金属ガラス膜の上に、垂直磁気記録層となる膜を形成し、前記垂直磁気記録層となる膜の表面を平坦化することにより前記垂直磁気記録層となる膜を磁気的に分離して、前記磁気記録パターンを形成する平坦化工程とを有することを特徴とする請求項1に記載の磁気記録媒体の製造方法。
【請求項3】
前記金属ガラス膜が、PdCuNiP、PdCuPtP、ZrAlNiCu、ZrAlAgCu、TiCuNiSi、ZrCuNiSi、HfCuNiSi、CuZrTi、NiNbTiZrからなる群から選ばれる何れか1種またはその合金からなることを特徴とする請求項2に記載の磁気記録媒体の製造方法。
【請求項4】
前記非磁性カップリング膜が、RuまたはRu合金からなることを特徴とする請求項1〜請求項3の何れか一項に記載の磁気記録媒体の製造方法。
【請求項5】
前記歪み緩和膜の平均原子間距離が、前記軟磁性合金膜の平均原子間距離と前記非磁性カップリング膜の平均原子間距離との間である、または、前記軟磁性合金膜および/または前記非磁性カップリング膜の平均原子間距離と同じであることを特徴とする請求項1〜請求項4の何れか一項に記載の磁気記録媒体の製造方法。
【請求項6】
前記歪み緩和膜の飽和磁化(Ms)が、前記軟磁性合金膜の飽和磁化以上であることを特徴とする請求項1〜請求項5の何れか一項に記載の磁気記録媒体の製造方法。
【請求項7】
前記軟磁性合金膜が、Co、Fe、B、Nbを含有し、これら元素の含有量が、Coをa原子%、Feをb原子%、Bをx原子%、Nbをy原子%としたときに、80≦a+b≦84、14≦a/b≦17、14≦x≦17、0.5≦y≦3の関係を満足するものであることを特徴とする請求項1〜請求項6の何れか一項に記載の磁気記録媒体の製造方法。
【請求項8】
前記歪み緩和膜が、Co、Ni、Feからなる群から選ばれる何れか1種またはその合金からなることを特徴とする請求項1〜請求項7の何れか一項に記載の磁気記録媒体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気記録再生装置の一種であるハードディスク装置(HDD)等で使用される磁気記録媒体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
垂直磁気記録方式は、磁気記録媒体に備えられた磁気記録層の磁化容易軸を、媒体の面内方向から媒体の面に垂直方向に向ける方式である。垂直磁気記録方式は、記録ビット間の境界である磁化遷移領域付近での反磁界が小さく、記録密度が高くなるほど静磁気的に安定となって熱揺らぎ耐性が向上するため、面記録密度の向上に適した方式であることが知られている。
【0003】
また、垂直磁気記録方式の磁気記録媒体において、非磁性基板と垂直磁気記録層との間に、軟磁性合金からなる軟磁性裏打ち層を設けた場合には、磁気記録媒体がいわゆる垂直2層媒体として機能するものとなるため、高い記録能力が得られる。このような磁気記録媒体において、軟磁性裏打ち層は、磁気ヘッドからの記録磁界を還流させる役割を果たしている。軟磁性裏打ち層として、飽和磁束密度が高く、保磁力が低く、透磁率の高い軟磁性合金膜を用いることで、磁気記録媒体の記録再生効率を向上させる効果が得られる。
【0004】
また、磁気記録媒体については、今後更に高記録密度を達成することが要求されている。このため、垂直磁気記録層の更なる高保磁力化、高信号対雑音比(SNR)、及び高分解能を達成することが要求されている。また、近年では、線記録密度の向上と同時にトラック密度の増加によって面記録密度を上昇させようとする努力も続けられている。
【0005】
最新の磁気記録装置においては、トラック密度は400kTPIにも達している。トラック密度を上げていくと、隣接するトラック間の磁気記録情報が互いに干渉し合い、トラック間の境界領域における磁化遷移領域がノイズ源となりSNRを損なうという問題が生じ易くなる。このことはそのままビットエラーレート(BER)の悪化につながるため、記録密度の向上に対して障害となっている。
【0006】
また、面記録密度を上昇させるためには、磁気記録媒体上の各記録ビットのサイズをより微細なものとし、各記録ビットに可能な限り大きな飽和磁化と磁性膜厚を確保する必要がある。その一方で、記録ビットを微細化していくと、1ビット当たりの磁化最小体積が小さくなり、熱揺らぎによる磁化反転で記録データが消失するという問題が生じてしまう。
【0007】
例えば、記録密度が2Tbpsiになると、1ビットの占める面積は最大で322平方nm(円相当径で約18nm)であり、隣接するビット間の相互作用を考慮した場合の有効エリアは、約193平行nm(円相当径で約14nm)にまで狭くなる。この面積でデータを熱的に安定保持し得る粒径を確保しようとすると、磁気記録装置で必要とされるSNRを維持するための磁性粒子数を確保できなくなる。一方で、SNRを維持するために磁性粒子を微細化して磁性粒子数を確保すると、磁性粒子1つ当たりの体積の減少から来る熱的な不安定さによって、記録した磁気データを維持できなくなる。
【0008】
また、磁気記録媒体のトラック密度を上げていくとトラック間の距離が近づくので、磁気記録再生装置において、極めて高精度のトラックサーボ技術が必要となる。このため、磁気記録再生装置では、記録時に幅広にデータを書き込む一方、再生時に記録時よりも幅狭にデータの読み込みを行って、隣接トラックからの影響をできるだけ排除する方法が一般に用いられている。しかしながら、この方法は、トラック間の影響を最小限に抑えることができる反面、再生出力を十分得ることが困難であり、十分なSNRを確保することは難しい。
【0009】
また、磁気記録媒体における熱揺らぎの問題を解決し、十分なSNRおよび出力を確保する方法の一つとして、記録媒体表面にトラックに沿った凹凸を形成し、トラック同士を物理的に分離することによってトラック密度を上げようとする試みがなされている。
例えば、特許文献1には、軟磁性層の凸部および凹部を反映した凹凸部を有し、凸部領域に周囲と磁気的に分断された記録領域を持つ強磁性層を有する磁気記録媒体が提案されている。
このような磁気的に分離されたトラックパターンを有する磁気記録媒体は、一般にディスクリートトラック媒体と呼ばれている。
【0010】
また、更なる高記録密度化を図るために、トラックの長手方向(円周方向)についても1ビット毎に凹凸を形成して磁性粒子同士を物理的に分離し、トラック間とビット間の両方が磁気的に分離された磁気記録パターンとすることで、1つの磁性粒子を1ビットとして記録する磁気記録媒体が提案されている。このような磁気記録媒体は、ビットパターンド媒体と呼ばれている。
【0011】
ビットパターンド媒体では、磁気記録パターンにおいてトラック間とビット間の両方が磁気的に分離されているので、これらの間で生じる磁気的な相互作用が抑制される。その結果、記録データの安定性を高めることができる。また、ビットパターンド媒体では、1ビットが単一の磁性粒子からなるものであるため、境界の乱れによる遷移ノイズが抑制され、SNRが向上されることから、より緻密な磁気記録が可能となる。
【0012】
一般に、ディスクリートトラック媒体やビットパターンド媒体などの、いわゆるパターンド媒体を製造する際には、磁性層の上に磁気記録パターンに対応した形状のマスク層を形成し、このマスク層を用いてエッチング加工して、磁性層を磁気記録パターンに対応した形状にパターニングしている。
【0013】
また、特許文献2には、ディスクリートトラック媒体やパターンド媒体を実現できる技術として、軟磁性金属ガラスの第1層の表面に熱式インプリントにより凹凸パターンを形成し、第1層の凹凸パターンの凹部を埋める状態で非磁性の第2層を形成し、第1層及び第2層の上側に記録層を設ける垂直磁気記録媒体の製造方法が記載されている。
【0014】
また、特許文献3には、非磁性基板上に裏打磁性層を介して垂直磁化膜が設けられた垂直磁気記録媒体において、裏打ち磁性層を強磁性層/非磁性層/強磁性層の3層構造とし、強磁性層同士を反強磁性結合させることにより、裏打磁性層の磁壁から発生する漏れ磁束が再生ヘッドに流入するのを防ぐとともに、裏打磁性層中に存在する磁壁が容易に動かないように固定し、低ノイズ特性を持つ垂直磁気記録媒体を実現する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】特開2004−164692号公報
【特許文献2】特開2010−165392号公報
【特許文献3】特開2001−331920号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
従来のパターンド媒体の製造方法では、一般に、マスク層を用いて磁性層に対して物理的な凹凸加工を施して、磁気的に分離された磁気記録パターンを有する磁気記録層を形成している。そして、磁気記録パターンを形成した後、不要となったマスク層をドライエッチング又はウェットエッチングを用いて磁気記録層上から除去している。このため、従来のパターンド媒体の製造方法では、磁気記録層上からマスク層を除去する際に、磁気記録層が汚染されたり溶解されたりして磁気的な特性が損なわれてしまうという問題があった。
【0017】
この問題を解決するために、例えば、特許文献2に記載の技術のように、軟磁性金属ガラスに熱式インプリントにより凹凸パターンを形成し、この凹凸パターンを用いて磁気的に分離された磁気記録パターンを有する磁気記録層を形成することが考えられる。この場合、マスク層を形成することなく、磁気記録パターンを有する磁気記録層を形成でき、マスク層の除去に起因する磁気特性の低下を生じさせることなく、磁気記録パターンを有する磁気記録層を簡易かつ低コストで形成できる。
【0018】
しかしながら、特許文献2に記載の技術では、軟磁性金属ガラスに熱式インプリントにより凹凸パターンを形成するので、熱式インプリントを行うことによって、熱式インプリントを行う前に非磁性基板上に積層されている膜に、磁気記録媒体の磁気特性を低下させる一因となる悪影響を生じさせる場合があった。具体的には、熱式インプリントに伴う加熱やスタンパによる加圧によって、熱式インプリントを行う前に非磁性基板上に積層されている膜に歪みが導入されたり、積層膜の界面部において元素の拡散が生じたりして、製造された磁気記録媒体の磁気特性が低下する恐れがあった。
【0019】
また、磁気記録媒体において、非磁性基板と垂直磁気記録層との間に軟磁性裏打ち層を配置する場合には、軟磁性裏打ち層として、非磁性カップリング膜を挟んで複数の軟磁性合金膜が積層されることにより複数の軟磁性合金膜が反強磁性結合されたものを設けることが好ましい。しかし、このような軟磁性裏打ち層は、熱式インプリントを行う前に非磁性基板上に形成した場合に、特に、熱式インプリントに伴う加熱やスタンパによる加圧によって特性が低下しやすいものであるため、問題となっていた。
【0020】
本発明は、上記の事情に鑑みて提案されたものであり、マスク層を形成することなく熱式インプリントを用いることによって磁気記録パターンを形成することができ、しかも熱式インプリントに伴う軟磁性裏打ち層の歪みを防止できるとともに、軟磁性合金膜と非磁性カップリング膜との界面部での元素の拡散を防止でき、高い電磁変換特性を有する磁気記録媒体を製造できる磁気記録媒体の製造方法を提供することを目的とする。
また、本発明は、本発明の製造方法を用いて製造した高い電磁変換特性を有する磁気記録媒体を備えた磁気記録再生装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明者は、上記課題を解決するため、非磁性基板上に非磁性カップリング膜を挟んで複数の軟磁性合金膜が積層されることにより、複数の軟磁性合金膜が反強磁性結合されている軟磁性裏打ち層を、熱式インプリントを行う前に形成する場合に、軟磁性裏打ち層として、軟磁性合金膜と非磁性カップリング膜との間に歪み緩和膜を備えるものを形成することで、熱式インプリントに伴う軟磁性裏打ち層に対する悪影響を防止でき、優れた磁気特性を有する磁気記録媒体を製造できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0022】
本発明は、以下の手段を提供する。
(1)非磁性基板の上に、非磁性カップリング膜を挟んで積層されている反強磁性結合された複数の軟磁性合金膜を有する軟磁性裏打ち層を形成する裏打ち層形成工程と、前記軟磁性裏打ち層の上に、熱式インプリント法を用いて磁気的に分離された磁気記録パターンを有する垂直磁気記録層を形成するパターニング工程とを備える磁気記録媒体の製造方法であって、前記裏打ち層形成工程において、前記軟磁性合金膜と前記非磁性カップリング膜との間に歪み緩和膜を設けることを特徴とする磁気記録媒体の製造方法。
【0023】
(2)前記パターニング工程が、前記軟磁性裏打ち層の上に、金属ガラス膜を設け、熱式インプリント法を用いて前記金属ガラス膜の表面に前記磁気記録パターンに対応する凹凸を形成するインプリント工程と、前記金属ガラス膜の上に、垂直磁気記録層となる膜を形成し、前記垂直磁気記録層となる膜の表面を平坦化することにより前記垂直磁気記録層となる膜を磁気的に分離して、前記磁気記録パターンを形成する平坦化工程とを有することを特徴とする(1)に記載の磁気記録媒体の製造方法。
【0024】
(3)前記金属ガラス膜が、PdCuNiP、PdCuPtP、ZrAlNiCu、ZrAlAgCu、TiCuNiSi、ZrCuNiSi、HfCuNiSi、CuZrTi、NiNbTiZrからなる群から選ばれる何れか1種またはその合金からなることを特徴とする(2)に記載の磁気記録媒体の製造方法。
(4)前記非磁性カップリング膜が、RuまたはRu合金からなることを特徴とする(1)〜(3)の何れか一項に記載の磁気記録媒体の製造方法。
(5)前記歪み緩和膜の平均原子間距離が、前記軟磁性合金膜の平均原子間距離と前記非磁性カップリング膜の平均原子間距離との間である、または、前記軟磁性合金膜および/または前記非磁性カップリング膜の平均原子間距離と同じであることを特徴とする(1)〜(4)の何れか一項に記載の磁気記録媒体の製造方法。
【0025】
(6)前記歪み緩和膜の飽和磁化(Ms)が、前記軟磁性合金膜の飽和磁化以上であることを特徴とする(1)〜(5)の何れか一項に記載の磁気記録媒体の製造方法。
(7)前記軟磁性合金膜が、Co、Fe、B、Nbを含有し、これら元素の含有量が、Coをa原子%、Feをb原子%、Bをx原子%、Nbをy原子%としたときに、80≦a+b≦84、14≦a/b≦17、14≦x≦17、0.5≦y≦3の関係を満足するものであることを特徴とする(1)〜(6)の何れか一項に記載の磁気記録媒体の製造方法。
(8)前記歪み緩和膜が、Co、Ni、Feからなる群から選ばれる何れか1種またはその合金からなることを特徴とする(1)〜(7)の何れか一項に記載の磁気記録媒体の製造方法。
【0026】
(9)(1)〜(8)の何れか一項に記載の磁気記録媒体の製造方法を用いて製造された磁気記録媒体と、前記磁気記録媒体に対する情報の記録再生を行う磁気ヘッドとを備えることを特徴とする磁気記録再生装置。
【発明の効果】
【0027】
本発明の磁気記録媒体の製造方法は、非磁性基板の上に、非磁性カップリング膜を挟んで積層されている反強磁性結合された複数の軟磁性合金膜を有する軟磁性裏打ち層を形成する裏打ち層形成工程と、前記軟磁性裏打ち層の上に、熱式インプリント法を用いて磁気的に分離された磁気記録パターンを有する垂直磁気記録層を形成するパターニング工程とを備え、前記裏打ち層形成工程において、前記軟磁性合金膜と前記非磁性カップリング膜との間に歪み緩和膜を設けるので、歪み緩和膜によって、熱式インプリントに伴う軟磁性裏打ち層の歪みが防止されるとともに、軟磁性合金膜と非磁性カップリング膜との界面部における元素の拡散が防止される。
【0028】
その結果、本発明の磁気記録媒体の製造方法によれば、高い電磁変換特性を有し、記録再生特性の向上を図りつつ、更なる高記録密度化に対応可能な磁気記録媒体が得られる。
また、本発明の磁気記録媒体の製造方法では、熱式インプリント法を用いて磁気記録パターンを形成するので、マスク層を用いて磁性層に対して物理的な凹凸加工を施す場合と比較して、磁気記録媒体の生産性を著しく高めることができる。
また、本発明によれば、本発明の製造方法を用いて製造した高い電磁変換特性を有する磁気記録媒体を備えた磁気記録再生装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1図1は、本発明の磁気記録媒体の製造方法を用いて製造した磁気記録媒体の一例を示した断面図である。
図2図2は、図1に示す磁気記録媒体の製造方法を説明するための概略工程図であり、製造途中の磁気記録媒体を示した断面模式図である。
図3図3は、42.5Pd−30Cu−7.5Ni−20P膜のDSC曲線(Differential scanning calorimetry 曲線)を示したグラフである。
図4図4は、本発明の磁気記録再生装置の一例を示した斜視図である。
図5図5は、実施例1、比較例1〜3で製造した評価用サンプルのアニーリング温度と、2層の軟磁性合金膜の間に働くバイアス磁界(Hbias)との関係を示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下に、本発明の磁気記録媒体の製造方法及び磁気記録再生装置について、図面を参照して詳細に説明する。なお、以下の説明で用いる図面は、特徴をわかりやすくするために、便宜上特徴となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率などが実際と同じであるとは限らない。また、以下の説明において例示される材料、寸法等は一例であって、本発明はそれらに必ずしも限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲で適宜変更して実施することが可能である。
【0031】
以下、本発明の磁気記録媒体の製造方法の一例として、図1に示す磁気記録媒体の製造方法を例に挙げて説明する。図1は、本発明の磁気記録媒体の製造方法を用いて製造した磁気記録媒体の一例を示した断面図である。図1に示す磁気記録媒体10は、非磁性基板1の上に、バリア層2と軟磁性裏打ち層11と金属ガラス膜6と中間層7と垂直磁気記録層8と保護層9と潤滑膜(図示せず。)とが、この順で積層されたものである。
【0032】
「非磁性基板」
非磁性基板1としては、アルミニウム、アルミニウム合金等の金属材料からなる金属基板を用いてもよいし、ガラス、セラミック、シリコン、シリコンカーバイド、カーボン等の非金属材料からなる非金属基板を用いてもよい。
非磁性基板1に用いられるガラス材料としては、アモルファスガラス、結晶化ガラス等を挙げることができる。アモルファスガラスとしては、例えば、汎用のソーダライムガラス、アルミノシリケートガラス等を使用できる。また、結晶化ガラスとしては、例えば、リチウム系結晶化ガラス等を使用できる。
【0033】
「バリア層」
バリア層2は、非磁性基板1の成分や吸着した水分などが原因で生じるコロージョンを抑制する効果を有するものであり、必要に応じて形成される。
バリア層2としては、例えば、Cr、Cr合金、Ti、Ti合金など適宜選択することが可能である。また、バリア層2の厚みは2nm(20Å)以上であることが好ましい。
【0034】
「軟磁性裏打ち層」
図1に示す軟磁性裏打ち層11は、第一軟磁性合金膜3と、非磁性カップリング膜4と、第二軟磁性合金膜5と、非磁性カップリング膜4と第一軟磁性合金膜3との間に配置された第一歪み緩和膜Aと、非磁性カップリング膜4と第二軟磁性合金膜5との間に配置された第二歪み緩和膜Bとを有している。図1に示す軟磁性裏打ち層11は、非磁性カップリング膜4を挟んで積層されている複数の軟磁性合金膜(図1においては第一軟磁性合金膜3と第二軟磁性合金膜5)を有するものであり、第一軟磁性合金膜3と第二軟磁性合金膜5とは、非磁性カップリング膜4で反強磁性結合されている。
【0035】
軟磁性裏打ち層11は、磁気記録再生装置に備えられた磁気ヘッドから発生する磁束の基板面に対する垂直方向成分を大きくする機能と、垂直磁気記録層8の情報が記録される磁化方向をより強固に非磁性基板1と垂直な方向に固定する機能とを有している。これらの機能は、特に、記録再生用の磁気ヘッドとして単磁極構造を基本とした磁気ヘッドを用いる場合により顕著となる。
【0036】
軟磁性裏打ち層11は、磁壁を無くし、磁歪をゼロとし、表面の平坦性を高めるために、非晶質であることが望ましい。このため、熱式インプリントを行う前に非磁性基板1上に軟磁性裏打ち層11が形成されている場合、熱式インプリントに伴う軟磁性裏打ち層11の結晶化を避けることが好ましい。
【0037】
また、本実施形態の磁気記録媒体10では、軟磁性裏打ち層11が、非磁性カップリング膜4を挟んで積層されている反強磁性結合された複数の軟磁性合金膜3、5を有するものであるので、外部からの磁界に対する耐性、並びに垂直磁気記録媒体特有の問題であるWATE(Wide Area Track ErasureまたはWide Adjacent Track Erasure)現象に対する耐性を高めることができる。
【0038】
また、本実施形態においては、軟磁性裏打ち層11が、非磁性カップリング膜4を挟んで積層されている反強磁性結合された複数の軟磁性合金膜3、5を有するものであるので、2層の軟磁性合金膜3.5の間に働くバイアス磁界Hbiasを、50Oe以上とすることが可能である。逆に、非磁性カップリング膜を挟んで配置されている2層の軟磁性合金膜を反強磁性結合させない場合には、上記バイアス磁界Hbiasを50Oe以上とすることは困難である。
【0039】
(軟磁性合金膜)
本実施形態において、第一軟磁性合金膜3および第二軟磁性合金膜5に使用される軟磁性合金膜の材料は、同じであってもよいし、異なっていてもよい。軟磁性合金膜に使用される材料としては、後述する熱式インプリント法に伴う加熱によって結晶化されにくいものを用いることが好ましい。
【0040】
熱式インプリント法に伴う加熱によって結晶化されにくい材料としては、例えば、FeやNi、Coから選ばれる少なくとも1種を含むアモルファス若しくは微結晶構造の材料が挙げられる。
このような軟磁性合金膜の材料として具体的には、CoFe系合金(CoFeTaZr、CoFeZrNbなど)、FeCo系合金(FeCo、FeCoB、FeCoVなど)、FeNi系合金(FeNi、FeNiMo、FeNiCr、FeNiSiなど)、FeAl系合金(FeAl、FeAlSi、FeAlSiCr、FeAlOなど)、FeTa系合金(FeTa、FeTaC、FeTaNなど)、FeMg系合金(FeMgOなど)、FeZr系合金(FeZrNb、FeZrNなど)、FeC系合金、FeN系合金、FeSi系合金、FeP系合金、FeNb系合金、FeHf系合金、FeB系合金などが挙げられる。
【0041】
その他にも、結晶化されにくい軟磁性合金膜の材料として、Coを主成分とし、Zr、Nb、Ta、Cr、Mo等を少なくとも1種を含有し、アモルファス若しくは微結晶構造有するCo合金が挙げられる。
このような軟磁性合金膜の材料として具体的には、CoZr、CoZrNb、CoZrTa、CoZrCr、CoZrMoなどを好適なものとして挙げることができる。
【0042】
特に本発明では、軟磁性合金膜が、ナノ結晶粒子を含まないアモルファス構造を有する軟磁性合金(以下、「軟磁性合金A」という場合がある。)からなるものであることが好ましい。
このような軟磁性合金Aとしては、例えば、Co、Fe、B、Nbを含有し、これらの元素の含有量が、Coをa原子%、Feをb原子%、Bをx原子%、Nbをy原子%としたときに、80≦a+b≦84、14≦a/b≦17、14≦x≦17、0.5≦y≦3の関係を満足するものが挙げられる。
【0043】
軟磁性合金Aは、Co、Fe、B、Nbを上記の含有量で含有し、更にSiを含有し、Siの含有量をz原子%としたときに、0.5≦z≦6の関係を満足するものであってもよい。
半金属元素であるB(またはBおよびSi)は、主構成元素であるFe、Co対して負の混合熱を有するものであり、共晶を形成して軟磁性合金Aの融点を降下せしめものである。このような共晶合金を形成する軟磁性合金Aは、薄膜化されることにより、結晶構造を持たずアモルファス状態として固化し、良好な軟磁気特性を発現する軟磁性合金膜となる。
【0044】
また、上記の軟磁性合金Aからなる軟磁性合金膜は、ナノ結晶粒子を含まないものであるため、熱式インプリントを行うことに伴って生じるナノ結晶粒子を基点とした結晶化の進行が抑制され、磁歪及び保磁力の低い軟磁性合金膜となる。その結果、この軟磁性合金膜を備える軟磁性裏打ち層11の透磁率特性を高めることができ、磁気記録媒体10の電磁変換特性を向上させることができる。また、上記の軟磁性合金Aからなる軟磁性合金膜は、ナノ結晶粒子を含まないものであるため、表面が平滑で耐食性に優れたものとなる。
【0045】
(非磁性カップリング膜)
非磁性カップリング膜4の材料としては、特に限定されないものの、Ru、Ir、Rhの中から選ばれる少なくとも1種又は2種以上を含む非磁性材料を用いることが好ましく、特にRuまたはRu合金を用いることが好ましい。
非磁性カップリング膜4の膜厚は、第一軟磁性合金膜3と第二軟磁性合金膜5との反強磁性結合が最大となるように適宜選択されること好ましく、通常は0.2nm〜4nmの範囲内とされている。
【0046】
(歪み緩和膜)
第一歪み緩和膜Aおよび第二歪み緩和膜B(歪み緩和膜A、B)は、熱式インプリントに伴う軟磁性裏打ち層11の歪みを防止するとともに、第一軟磁性合金膜3および第二軟磁性合金膜5と非磁性カップリング膜4との界面部での元素の拡散を防止するものである。
本実施形態において、第一歪み緩和膜Aと第二歪み緩和膜Bに使用される材料は、同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0047】
本実施形態においては、歪み緩和膜A、Bの平均原子間距離は、軟磁性合金膜3、5の平均原子間距離と非磁性カップリング膜4の平均原子間距離との間である、または、軟磁性合金膜3、5および/または非磁性カップリング膜4の平均原子間距離と同じであることが好ましい。このような歪み緩和膜A、Bは、熱式インプリント法に伴う軟磁性合金膜3、5と非磁性カップリング膜4との間の歪みや、軟磁性合金膜3、5と非磁性カップリング膜4との間での構成元素の拡散をより効果的に防止できるものとなる。
【0048】
本願発明における、歪み緩和膜A、B、軟磁性合金膜3、5、非磁性カップリング膜4の平均原子間距離の測定方法としては、公知の方法を用いることができる。例えば、E. A.Brandes,G.B.Brook,Smithells Metals Reference Book,seventh Ed.,Butterworth Heinemann,(1998)に記載されているように、X線回折結果により算出された平均原子間距離を用いることができる。
【0049】
具体的に、この測定方法を用いて測定した平均原子間距離は、CoFe基非晶質薄膜:約0.20nm、Ru:約0.27nm、Si:約0.24nm,Cr:約0.25nm、Fe:約0.25nm、Co:約0.25nm、Ni:約0.25nm、Cu:約0.26nmである。
【0050】
また、歪み緩和膜A、Bの飽和磁化(Ms)は、軟磁性合金膜3、5の飽和磁化以上であることが好ましい。このような歪み緩和膜A、Bは、軟磁性合金膜3、5と非磁性カップリング膜4との間で構成元素の拡散が若干生じても、軟磁性裏打ち層11の磁気特性の低下を防ぐことができるものであり、磁気記録媒体10の電磁変換特性を向上させることができるため、好ましい。
【0051】
飽和磁化(Ms)が高く、容易に軟磁性合金膜3、5の飽和磁化以上の歪み緩和膜A,Bが得られる材料としては、Co、Ni、Feからなる群から選ばれる何れか1種またはその合金を用いることが好ましい。
また、歪み緩和膜A,Bの材料として、歪み緩和膜A,Bの平均原子間距離やMsを調整するために、Co、Ni、Feからなる群から選ばれる何れか1種またはその合金に、Si、Cr、Cu、Ru、Ta、Mo、B、Zr、Nb、Ndを含有したものを用いてもよい。
【0052】
また、歪み緩和膜A,Bの膜厚は、1nm〜4nmの範囲内であることが好ましい。歪み緩和膜A,Bの膜厚を1nm以上とすることで、熱式インプリント法に伴う軟磁性合金膜3、5と非磁性カップリング膜4との間の歪みや、軟磁性合金膜3、5と非磁性カップリング膜4との間での構成元素の拡散をより効果的に防止できる。また、歪み緩和膜A,Bの膜厚を4nmより厚くとすると、歪み緩和膜A,Bの磁気特性の影響が大きくなり、軟磁性裏打ち層11からのノイズが増大し、SNR特性が不十分となる恐れがあるため好ましくない。
【0053】
「金属ガラス膜」
金属ガラス膜6は、図1に示すように、表面に垂直磁気記録層8の磁気記録パターン8aに対応する凹凸6aが形成されているものである。
金属ガラス膜6の材料としては、Zr,Cu,Ni,Pd,Ptをベースとする金属ガラス材料が挙げられる。具体的には、例えば、金属ガラス膜6の材料として、PdCuNiP、PdCuPtP、ZrAlNiCu、ZrAlAgCu、TiCuNiSi、ZrCuNiSi、HfCuNiSi、CuZrTi、NiNbTiZrなどを用いることができる。これらの材料からなる金属ガラス膜6は、熱インプリント加工を行うための加熱後に徐冷(例えば、1秒間に1℃や1秒間に0.02℃の冷却)しても結晶化せず、アモルファスと同様の構造を維持できるため、好ましい。
【0054】
上記の金属ガラス膜6の材料のうち、PdCuNiP、PdCuPtP、ZrAlNiCuは、ガラス形成能力が大きいという特徴を有し、ZrAlNiCuは、広い過冷却液体領域(127K)を有するという特徴を有し、(Ti,Zr,Hf)CuNiSiは、高強度(2000MPa)であるという特徴を有する。また、CuZrTiは高強度(2000MPa)であり、かつ高靭性(伸び40%以上)を有するという特徴を有している。更に、NiNbTiZrは高強度(2700MPa)であり、高耐食性、高耐磨耗性を有するという特徴を有している。
【0055】
また、例えば、金属ガラス膜6として、PdCuNiPを用いる場合は、組成比として、42.5Pd−30Cu−7.5Ni−20P(数字は原子%)を用いることができる。本組成物では、多量に含有されるPが、Pd合金をガラス化せしめている。
【0056】
「中間層」
中間層7は、中間層7の上に設けられる垂直磁気記録層8の配向や結晶サイズを制御するためのものである。中間層7は、図1に示すように、金属ガラス膜6に形成された磁気記録パターン8aに対応する凹部の内壁面に沿って形成されている。
【0057】
中間層7は、1層からなるものであってもよいが、第1中間層と第2中間層の2層構造としてもよい。
例えば、中間層7を第1中間層と第2中間層の2層構造とした場合、第1中間層は、Ni、Ni合金、Pt、Pt合金、Ta、Ta合金、Cr、Cr合金の何れかの材料から構成することが好ましい。
【0058】
第1中間層に用いるNi、Ni合金、Pt、Pt合金、Ta、Ta合金、Cr、Cr合金には、結晶サイズの低減、後述する第2中間層との結晶格子サイズの整合性を高めることを目的として、所定の元素を添加することができる。
具体的には、結晶サイズの低減を目的として添加する元素として、B、Mnなどを挙げることができ、添加量は6原子%以下とすることが好ましい。また、第2中間層との結晶格子サイズの整合性を高めることを目的として添加する元素としては、Ru、Pt、W、Mo、Ta、Nb、Ti等を挙げることができる。
【0059】
第1中間層の層厚は、1nm以上10nm以下の範囲とすることが好ましい。第1中間層の層厚が1nm未満になると、第1中間層を形成することによる効果が不十分となり、粒径の微細化の効果を得ることができず、また配向も悪化するので好ましくない。一方、第1中間層の層厚が10nmを超えると、結晶サイズが大きくなるため好ましくない。
【0060】
また、第2中間層の材料としては、Ru又はRu合金を用いることが好ましい。
また、第2中間層の層厚は、16nm以下であることが好ましく、12nm以下であることがより好ましい。第2中間層を薄くすることで、磁気ヘッドと軟磁性裏打ち層11との距離が小さくなり、磁気ヘッドからの磁束を急峻にすることができる。よって、軟磁性裏打ち層11の厚みを薄くしても、軟磁性裏打ち層11の機能が十分に得られるものとなり、軟磁性裏打ち層11の厚みを薄くして生産性を向上させることが可能となる。
【0061】
「垂直磁気記録層」
垂直磁気記録層8は、媒体の面に垂直方向に磁化容易軸を有しているものであり、熱式インプリント法を用いて形成された磁気的に分離された磁気記録パターン8aを有するものである。垂直磁気記録層8の磁気記録パターン8aは、図1に示すように、金属ガラス膜6の磁気記録パターン8aに対応する凹部内に中間層7を介して形成されている。
磁気記録パターン8aの平面形状は、特に限定されないが、例えば、ディスクリートトラック媒体やビットパターンド媒体の垂直磁気記録層8として好適なパターン形状とされている。
【0062】
垂直磁気記録層8としては、少なくともCoとPtを含有し、更にSNR特性改善等の目的で、酸化物やCr、B、Cu、Ru,Ta、Zr等を添加したものなどを用いることができる。
垂直磁気記録層8に含有される酸化物としては、SiO、SiO、Cr、CoO、Ta、TiO等が挙げられる。このような酸化物の垂直磁気記録層8における体積率は15〜40体積%の範囲であることが好ましい。垂直磁気記録層8における酸化物の体積率が15体積%未満になると、SNR特性が不十分となる恐れがあるため好ましくない。一方、垂直磁気記録層8における酸化物の体積率が40体積%を超えると、高記録密度に対応するだけの保磁力が得られにくくなるため好ましくない。
【0063】
垂直磁気記録層8は、単層構造、若しくは組成の異なる材料からなる2層以上の構造とすることができる。特に、酸化物を含むグラニュラー構造の磁性層の上に、酸化物を含まない磁性層を順次積層した構造であることが好ましい。このような構成とすることにより、磁気記録媒体10の特性の制御・調整をより容易に行うことが可能となる。
【0064】
垂直磁気記録層8の層厚は、6〜20nmの範囲とすることが好ましい。垂直磁気記録層8が、酸化物を含むグラニュラー構造の磁性層を有するものである場合に、垂直磁気記録層8の厚さが上記範囲内であると、十分な出力を確保することができ、記録特性(OW特性)の悪化が生じることがなく、好ましい。
【0065】
また、垂直磁気記録層8として、Co/PtやCo/Pdの人工格子を用いてもよい。この場合、中間層7をPtまたはPdからなるものとすることで、より好ましく垂直磁気記録層8の配向制御を行うことができる。また、垂直磁気記録層8としてCo/Pdの人工格子を用い、金属ガラス膜6としてPdを主成分とするものを用いた場合には、金属ガラス膜6が、中間層7としての機能を兼ねるものとなるため、中間層7を設けななくてもよい。
【0066】
「保護層」
保護層28は、垂直磁気記録層8の腐食を防ぐと共に、磁気ヘッドが磁気記録媒体10に接触した際に媒体表面の損傷を防ぐためのものである。
保護層28としては、従来公知の材料を使用でき、例えば、C、SiO、ZrOを含むものなどを使用できる。保護層28の層厚を1nm以上5nm以下の範囲とした場合、保護層28を設けることによる効果が充分に得られるとともに、磁気ヘッドと磁気記録媒体10との距離を小さくできるので、高記録密度の点から望ましい。
【0067】
「潤滑膜」
潤滑膜には、従来公知の材料、例えば、パーフルオロポリエーテル、フッ素化アルコール、フッ素化カルボン酸等を用いることができる。
【0068】
<製造方法>
次に、図2を用いて、図1に示す磁気記録媒体10を製造する方法を説明する。図2は、図1に示す磁気記録媒体を製造する方法を説明するための概略工程図であり、製造途中の磁気記録媒体を示した断面模式図である。
図1に示す磁気記録媒体10を製造するには、まず、非磁性基板1の上に、従来公知の方法によりバリア層2(図2においては不図示)を形成する。
【0069】
次いで、図2(a)に示すように、バリア層2上に、第一軟磁性合金膜3と、第一歪み緩和膜Aと、非磁性カップリング膜4と、第二歪み緩和膜Bと、第二軟磁性合金膜5とを順次形成し、非磁性カップリング膜4を挟んで積層されている反強磁性結合された複数の軟磁性合金膜3、5を有する軟磁性裏打ち層11(軟磁性裏打ち層11の各層については図1参照)を形成する(裏打ち層形成工程)。
【0070】
次いで、軟磁性裏打ち層11の上に、熱式インプリント法を用いて磁気的に分離された磁気記録パターン8aを有する垂直磁気記録層8を形成する(パターニング工程)。
パターニング工程においては、まず、図2(b)に示すように、軟磁性裏打ち層11の上に、金属ガラス膜6を設ける。
【0071】
次いで、金属ガラス膜6までの各層が積層された非磁性基板1を、不図示の加熱ステージ上に搭載して加熱する。
図3は、42.5Pd−30Cu−7.5Ni−20P膜について、0.67K/sの昇温速度で加熱したときの温度と熱量との関係を測定した結果を示したグラフ(DSC曲線(Differential scanning calorimetry 曲線))である。本実施形態においては、非磁性基板1の加熱は、金属ガラス膜6が、DSC曲線においてガラス転移点温度(Tg)よりも高く、結晶化開始温度(Tx)よりも低い温度となるように行う。
【0072】
続いて、金属ガラス膜6のガラス転移点温度よりも高く、結晶化開始温度よりも低い温度に非磁性基板1を加熱した状態で、図2(c)に示すように、スタンパ24を用いて金属ガラス膜6を熱インプリント加工し、金属ガラス膜6の表面に磁気記録パターン8aに対応する凹凸6aを転写する(インプリント工程)。
なお、磁気記録媒体10がディスクリート・トラックメディア(DTM)である場合には、金属ガラス膜6の表面に凹凸6aとして、円周に沿った凹凸を形成する。また、磁気記録媒体10がビットパターンドメディア(BPM)である場合には、金属ガラス膜6の表面にビットパターン状の凹凸6aを形成する。
【0073】
本実施形態においては、裏打ち層形成工程において、軟磁性合金膜3、5と非磁性カップリング膜4との間に歪み緩和膜A、Bを設けているので、パターニング工程において金属ガラス膜6を熱インプリント加工しても、歪み緩和膜A、Bによって、熱式インプリントに伴う軟磁性裏打ち層11の歪みが防止されるとともに、軟磁性合金膜3、5と非磁性カップリング膜4との界面部における元素の拡散が防止される。
【0074】
また、金属ガラス膜6が、熱インプリント加工を行うための加熱後に徐冷(例えば、1秒間に1℃や1秒間に0.02℃の冷却)しても結晶化せず、アモルファスと同様の構造を維持できる材料からなるものである場合、金属ガラス膜6を熱インプリント加工しても、金属ガラス膜6に対して悪影響を来すことはなく、好ましい。
【0075】
その後、凹凸6aの形成された金属ガラス膜6の上に従来公知の方法により中間層7を形成する。中間層7の厚さは、垂直磁気記録層8の膜厚分を考慮して、スタンパ24で金属ガラス6の表面に形成した凹部の深さよりも薄いことが好ましい。具体的には、中間層7の厚さは、金属ガラス6の表面に形成した凹部の深さよりも6nm以上薄いことが望ましい。中間層7の厚さと金属ガラス6の表面に形成した凹部の深さとの差が6nm未満である場合、後述する平坦化工程により磁気的に分離された垂直磁気記録層8の厚さが不足して、記録再生に必要な出力を得るのに十分な厚さを有するものとならない恐れがある。
【0076】
次いで、図2(d)に示すように、中間層7の上に垂直磁気記録層8となる膜8bを形成し、垂直磁気記録層8となる膜8bの表面を平坦化することにより垂直磁気記録層8となる膜8bを磁気的に分離して、図2(e)に示すように、磁気記録パターン8aを形成する(平坦化工程)。平坦化工程を行うことにより、図2(e)に示すように、磁気記録パターン8aの間に金属ガラス膜6の凸部が表出される。
【0077】
垂直磁気記録層8となる膜8bの平坦化処理方法としては、特に限定されないが、例えば、乾式法ではイオンミリング法、湿式法ではCMP(Chemical Mechanical Polishing)による研磨加工法を用いることができ、本発明では何れの方法も好適に用いることが可能である。
【0078】
このようにして磁気記録パターン8aを有する垂直磁気記録層8を形成した後、垂直磁気記録層8上に従来公知の方法により保護層9(図1参照)と潤滑膜(図示せず。)とをこの順で形成する。
以上の工程により、図1に示す磁気記録媒体10が得られる。
【0079】
本実施形態の磁気記録媒体10の製造方法では、非磁性基板1の上に、非磁性カップリング膜4を挟んで積層されている反強磁性結合された複数の軟磁性合金膜3、5を有する軟磁性裏打ち層11を形成する裏打ち層形成工程と、軟磁性裏打ち層11の上に、熱式インプリント法を用いて、磁気的に分離された磁気記録パターン8aを有する垂直磁気記録層8を形成するパターニング工程とを備え、裏打ち層形成工程において、軟磁性合金膜3、5と非磁性カップリング膜4との間にそれぞれ歪み緩和膜A、Bを設けるので、歪み緩和膜A、Bによって、熱式インプリントに伴う軟磁性裏打ち層11の歪みが防止されるとともに、軟磁性合金膜3、5と非磁性カップリング膜4との界面部における元素の拡散が防止される。その結果、本実施形態によれば、高い電磁変換特性を有する磁気記録媒体10が得られる。
【0080】
また、本実施形態の磁気記録媒体10の製造方法では、熱式インプリント法を用いて磁気記録パターン8aを形成するので、マスク層を用いて磁性層に対して物理的な凹凸加工を施す場合と比較して、磁気記録媒体10の生産性を著しく高めることができる。
【0081】
また、本実施形態の磁気記録媒体10の製造方法では、パターニング工程が、軟磁性裏打ち層11の上に、金属ガラス膜6を設け、熱式インプリント法を用いて金属ガラス膜6の表面に磁気記録パターン8aに対応する凹凸6aを形成するインプリント工程と、金属ガラス膜6の上に、垂直磁気記録層8となる膜8bを形成し、垂直磁気記録層8となる膜8bの表面を平坦化することにより垂直磁気記録層8となる膜8bを磁気的に分離して、磁気記録パターン8aを形成する平坦化工程とを有しているので、マスク層を形成することなく、磁気記録パターン8aを有する磁気記録層8を簡易に低コストで形成でき、マスク層の除去に起因する磁気特性の低下を生じさせることはない。
【0082】
また、本実施形態の磁気記録媒体10の製造方法において、金属ガラス膜6が、PdCuNiP、PdCuPtP、ZrAlNiCu、ZrAlNiCu、ZrAlAgCu、TiCuNiSi、ZrCuNiSi、HfCuNiSi、CuZrTi、NiNbTiZrからなる群から選ばれる何れか1種またはその合金からなるものである場合、インプリント工程において、金属ガラス膜6の表面に磁気記録パターン8aに対応する凹凸6aを形成する際の加熱後に徐冷(例えば、1秒間に1℃や1秒間に0.02℃の冷却)したとしても金属ガラス膜6が結晶化せず、アモルファスと同様の構造を維持できる。このため、金属ガラス膜6の上に形成した垂直磁気記録層8(および中間層7)の配向が良好なものとなり、より一層高い電磁変換特性を有する磁気記録媒体10が得られる。
【0083】
(磁気記録再生装置)
次に、本発明の磁気記録再生装置について説明する。図4は、本発明の磁気記録再生装置の一例を示した斜視図である。図4に示す磁気記録再生装置は、磁気記録媒体50と、磁気記録媒体50を回転駆動させる媒体駆動部51と、磁気記録媒体50に対する情報の記録再生を行う磁気ヘッド52と、この磁気ヘッド52を磁気記録媒体50に対して相対運動させるヘッド駆動部53と、記録再生信号処理系54とを備えている。
【0084】
図4に示す磁気記録再生装置においては、磁気記録媒体50として図1に示す磁気記録媒体10が備えられている。また、図4に示す記録再生信号処理系54は、外部から入力されたデータを処理して記録信号を磁気ヘッド52に送り、磁気ヘッド52からの再生信号を処理してデータを外部に送ることが可能となっている。また、磁気ヘッド52には、再生素子として巨大磁気抵抗効果(GMR)を利用したGMR素子などを有する高記録密度に適したものを用いることができる。
【実施例】
【0085】
以下、実施例により本発明の効果をより明らかなものとする。なお、本発明は、以下の実施例に限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲で適宜変更して実施することができる。
【0086】
(実施例1)
本実施例では、先ず、ガラス基板(MYG社製アモルファス基板MEL3、直径2.5インチ)上に、バリア層として厚さ8nmの60Cr−40Ti膜をDCマグネトロンスパッタ法により形成した。次いで、バリア層の上に、第一軟磁性合金膜として厚さ20nmの76Co−4.9Fe−14.7B−2.4Si−2Nb膜(平均原子間距離0.206nm、飽和磁化(Ms)1.0T)、第一歪み緩和膜として厚さ2nmのCo膜(平均原子間距離0.25nm、飽和磁化(Ms)1.7T)、非磁性カップリング膜として厚さ0.5nmのRu膜(平均原子間距離0.27nm)、第二歪み緩和膜として厚さ2nmのCo膜、第二軟磁性合金膜として厚さ20nmの76Co−4.9Fe−14.7B−2.4Si−2Nb膜をDCマグネトロンスパッタ法により順に形成した。
【0087】
その上に、金属ガラス膜として厚さ30nmの42.5Pd−30Cu−7.5Ni−20P膜をDCマグネトロンスパッタ法により形成した。その後、基板を340℃に加熱し、磁気記録パターンに対応するポジパターンを有するニッケル製のスタンプを60MPa(約600kgf/cm)の圧力で金属ガラス膜に10秒間押し付けて、金属ガラス膜を熱インプリント加工した後、スタンプを金属ガラス膜から分離し、金属ガラス膜の表面に磁気記録パターンに対応する凹凸を転写し、これを評価用サンプルとした。
【0088】
なお、金属ガラス膜に転写した凹凸のパターンは、1平方インチあたり2テラビット(Tbpsi)の磁気記録パターンに対応する形状であり、磁気記録媒体のデータ領域の凸部が直径10nmの円筒(ドット)状であり、凸部が円周方向に隣り合う凸部の間隔を17.96nmとして円周に沿って等間隔に配置されていることによりトラックを形成するものとした。また、凹凸のパターンには、途中トラックを円周方向に横切るように、256本のサーボ領域を設けた。なお、凹凸の形成された金属ガラス膜の層厚は、凸部が35nmであり、凹部が約10nmであった。
【0089】
(比較例1)
基板を340℃に加熱した後、金属ガラス膜の熱式インプリント加工を行わなかったこと以外は、実施例1と同様にして評価用サンプルを製造した。
【0090】
(比較例2)
実施例1の軟磁性裏打ち層に代えて、第一軟磁性合金膜として厚さ20nmの76Co−4.9Fe−14.7B−2.4Si−2Nb膜、非磁性カップリング膜として厚さ0.5nmのRu膜、第二軟磁性合金膜として厚さ20nmの76Co−4.9Fe−14.7B−2.4Si−2Nb膜をDCマグネトロンスパッタ法により順に形成し、第一歪み緩和膜および第二歪み緩和膜を設けなかった。その他の工程は、実施例1と同様にして評価用サンプルを製造した。
(比較例3)
基板を340℃に加熱した後、金属ガラス膜の熱式インプリント加工を行わなかったこと以外は、比較例2と同様にして評価用サンプルを製造した。
【0091】
実施例1、比較例1〜3で製造した評価用サンプルについて、基板の温度が400℃となるまでアニーリングを行い、試料振動型磁力計VSM (Vibrating Sample Magnetometer)を用いて軟磁性裏打ち層のバイアス磁界(Hbias)を測定した。その結果を図5に示す。
【0092】
図5は、実施例1、比較例1〜3で製造した評価用サンプルのアニーリング温度と、2層の軟磁性合金膜の間に働くバイアス磁界(Hbias)との関係を示したグラフである。図5に示すように、実施例1の軟磁性裏打ち層は、比較例2と比較して熱式インプリントに伴う加熱および加圧による磁気特性の変化が少なく、熱式インプリント加工を行わなかった比較例1と同等の磁気特性を有していることが確認できた。また、図4に示すように、実施例1の軟磁性裏打ち層は、比較例3と比較してバイアス磁界が大きく、加熱による磁気特性の低下が少ないことが確認できた。
【0093】
(実施例2)
実施例2では、まず、実施例1の評価用サンプルと同様にして、金属ガラス膜の表面に磁気記録パターンに対応する凹凸を転写するまでの工程を行った。
次に、凹凸の形成された金属ガラス膜の上に、中間層の第1中間層として94Ni−6Wターゲットを用いてDCマグネトロンスパッタ法により、厚さ5nmのNiW膜を形成し、第1中間層の上に第2中間層としてRuターゲットを用いてDCマグネトロンスパッタ法により、厚さ5nmのRu膜を形成した。
【0094】
次に、中間層の上に垂直磁気記録層となる膜として、厚さ8nmの60Co−10Cr−20Pt−10SiOからなる酸化物を含むグラニュラー構造の磁性層と、厚さ10nmの65Co−18Cr−14Pt−3Bからなる酸化物を含まない磁性層とを順に形成した。
【0095】
次に、垂直磁気記録層となる膜の表面を斜め方向からのイオンビームにより、金属ガラスの凸部の上面が表出するまで加工して平坦化した。このことにより垂直磁気記録層となる膜を磁気的に分離して、磁気記録パターンを形成し、垂直磁気記録層を得た。
なお、イオンビームの条件は、Arガスを5sccm、圧力を0.05Pa、高周波プラズマ電力を200w、加速電圧を1000V、引出し電圧を−500V、加工時間を90秒とした。
【0096】
次に、垂直磁気記録層の上に、CVD法により4nmの保護層を形成した。最後に、保護層の上にディッピング法により、パーフルオロポリエーテルからなる潤滑膜を形成して、実施例2のパターンド媒体を得た。
【0097】
このようにして得られた実施例2のパターンド媒体について、記録再生特性の評価を行った。記録再生特性は、米国GUZIK社製のリードライトアナライザRWA1632及びスピンスタンドS1701MPを用いて、信号/ノイズ比(S/N比)と記録特性(OW)とを測定し評価した。
その結果、実施例2のパターンド媒体のS/N比は14.1dB、OWは50.2dBであった。
【0098】
(実施例3)
軟磁性裏打ち層の第一軟磁性合金膜および第二軟磁性合金膜の材料として、79Co−5Fe−14.5B−1.5Nb膜(平均原子間距離0.205nm、飽和磁化(Ms)1.1T)を用い、歪み緩和膜の材料として70Co−30Fe(平均原子間距離0.256nm、飽和磁化(Ms)2.0T)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、金属ガラス膜の表面に磁気記録パターンに対応する凹凸を転写するまでの工程を行って評価用サンプルを製造した。
【0099】
(実施例4)
金属ガラス膜の材料として42Cu−42Zr−8Al−8Agを使用し、基板を455℃に加熱して金属ガラス膜を熱インプリント加工したこと以外は、実施例1と同様にして評価用サンプルを製造した。
【0100】
(実施例5)
金属ガラス膜の材料として55Zr−10Al−5Ni−30Cuを使用し、基板を440℃に加熱して金属ガラス膜を熱インプリント加工したこと以外は、実施例1と同様にして評価用サンプルを製造した。
【0101】
実施例3〜実施例5の評価用サンプルについて、試料振動型磁力計VSMを用いて軟磁性裏打ち層のバイアス磁界を測定した。
その結果、実施例3の評価用サンプルは114Oe、実施例4の評価用サンプルは75Oe、実施例5の評価用サンプルは83Oeの値が得られた。
【0102】
また、実施例3〜実施例5の凹凸の形成された金属ガラス膜の上に、それぞれ実施例2と同様にして潤滑膜を形成するまでの工程を行って実施例3〜実施例5のパターンド媒体を得た。
このようにして得られた実施例3〜実施例5のパターンド媒体について、実施例2のパターンド媒体と同様にして記録再生特性の評価を行った。
その結果、実施例3のパターンド媒体のS/N比は14.4dB、OWは52.0dB、実施例4のパターンド媒体のS/N比は13.8dB、OWは49.0dB、実施例5のパターンド媒体のS/N比は14.0dB、OWは49.5dBであった。
【0103】
(比較例4)
第一歪み緩和膜および第二歪み緩和膜を設けないこと以外は実施例2と同様にして、比較例4のパターンド媒体を作成した。
得られた比較例4のパターンド媒体について、実施例2のパターンド媒体と同様にして、記録再生特性の評価を行った。
その結果、比較例4のパターンド媒体のS/N比は12.9dB、OWは48.2dBであり、実施例2〜実施例5のパターンド媒体と比較して電磁変換特性が著しく低くなった。
【産業上の利用可能性】
【0104】
本発明は、磁気記録再生装置の一種であるハードディスク装置(HDD)等で使用される電磁変換特性の優れた磁気記録媒体を製造でき、その生産性を著しく高めることが可能である。
【符号の説明】
【0105】
1…非磁性基板、2…バリア層、3…第一軟磁性合金膜、4…非磁性カップリング膜、5…第二軟磁性合金膜、6…金属ガラス膜、6a…凹凸、7…中間層、8…垂直磁気記録層、8a…磁気記録パターン、9…保護層、10…磁気記録媒体、11…軟磁性裏打ち層、24…スタンパ、50…磁気記録媒体、51…回転駆動部、52…磁気ヘッド、53…ヘッド駆動部、54…記録再生信号処理系、A…第一歪み緩和膜、B…第二歪み緩和膜。
図1
図2
図3
図4
図5