特許第6095203号(P6095203)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6095203水素生成装置及び水素生成装置を備えた燃料電池システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6095203
(24)【登録日】2017年2月24日
(45)【発行日】2017年3月15日
(54)【発明の名称】水素生成装置及び水素生成装置を備えた燃料電池システム
(51)【国際特許分類】
   C01B 3/04 20060101AFI20170306BHJP
   C01B 3/56 20060101ALI20170306BHJP
   H01M 8/10 20160101ALI20170306BHJP
   H01M 8/0606 20160101ALI20170306BHJP
   H01M 8/06 20160101ALI20170306BHJP
【FI】
   C01B3/04 B
   C01B3/56 Z
   H01M8/10
   H01M8/06 R
   H01M8/06 B
【請求項の数】4
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2012-220194(P2012-220194)
(22)【出願日】2012年10月2日
(65)【公開番号】特開2014-70012(P2014-70012A)
(43)【公開日】2014年4月21日
【審査請求日】2015年9月10日
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成17年度、独立行政法人科学技術振興機構、独創的シーズ展開事業「委託開発、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願」
(73)【特許権者】
【識別番号】304019399
【氏名又は名称】国立大学法人岐阜大学
(73)【特許権者】
【識別番号】000253075
【氏名又は名称】澤藤電機株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】392019857
【氏名又は名称】株式会社アクトリー
(74)【代理人】
【識別番号】110000659
【氏名又は名称】特許業務法人広江アソシエイツ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】神原 信志
(72)【発明者】
【氏名】三浦 友規
(72)【発明者】
【氏名】増井 芽
【審査官】 磯部 香
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2011/028478(WO,A1)
【文献】 特開2011−078876(JP,A)
【文献】 国際公開第2006/120860(WO,A1)
【文献】 特開2004−359508(JP,A)
【文献】 特開2005−285626(JP,A)
【文献】 特開2001−283885(JP,A)
【文献】 特開2007−029862(JP,A)
【文献】 特開2009−097422(JP,A)
【文献】 特表2008−545603(JP,A)
【文献】 神原信志他,パルスプラズマによる水素キャリアからの無触媒水素製造,日本機械学会熱工学コンファレンス講演論文集,日本,一般社団法人日本機械学会,2012年11月16日,Vol.2012,p.439-440
【文献】 神原信志,水素キャリア(アンモニア)からの常温無触媒水素製造法,OHM,日本,2012年 5月12日,Vol.99, No.5,p.2-3
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 3/04
C01B 3/56
H01M 8/06
H01M 8/0606
H01M 8/10
JSTPlus(JDreamIII)
JST7580(JDreamIII)
JSTChina(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アンモニアから水素を生成する水素生成装置であって、
プラズマ反応器と、前記プラズマ反応器の内側に配置された状態で高電圧パルス電源に接続されている高電圧電極と、前記プラズマ反応器の外側で前記高電圧電極と対向する位置に配置されている接地電極と、アンモニアを含むガスを前記プラズマ反応器に供給するガス供給手段と、を備えており、
前記高電圧電極が水素分離膜を含んで構成され、
前記高電圧パルス電源から供給される電力によって前記水素分離膜が前記接地電極との間で放電し、前記ガスに含まれるアンモニアをプラズマとすることによって水素を生成することを特徴とする水素生成装置。
【請求項2】
前記プラズマ反応器が、円筒形であり、
前記高電圧電極が前記プラズマ反応器の中に同心円状に配置された円筒形の水素分離膜を備えており、
前記プラズマ反応器と前記水素分離膜との間に放電空間が形成されており、且つ前記水素分離膜の内側に内室が形成されており、
前記ガス供給手段が前記放電空間に接続されてアンモニアを含むガスを供給し、
前記水素分離膜が前記接地電極との間で放電し、且つ前記水素分離膜が前記放電空間で生成された前記水素を通過させて前記内室に導入することを特徴とする請求項1記載の水素生成装置。
【請求項3】
燃料電池と、水素生成装置と、を備えた燃料電池システムであって、
前記水素生成装置が、
プラズマ反応器と、
前記プラズマ反応器の内側に内室を形成するように配置されており高電圧パルス電源に接続されている水素分離膜を含む高電圧電極と、
前記プラズマ反応器の外側で前記高電圧電極と対向する位置に配置されている接地電極と、
前記プラズマ反応器と前記高電圧電極との間の放電空間にアンモニアを含むガスを供給するガス供給手段と、
前記高電圧電極の前記内室に接続されている水素流路と、を備えており、
前記水素分離膜が前記接地電極との間で放電し、前記ガス供給手段から供給されたガスに含まれているアンモニアが前記放電空間でプラズマとなることによって水素が生成され、前記水素分離膜が前記生成された水素を通過させて前記内室に導入し、さらに前記水素流路が前記内室に導入された前記水素を前記燃料電池に供給することを特徴とする燃料電池システム。
【請求項4】
前記燃料電池が排出する水素オフガスを前記プラズマ反応器に導入するオフガス導入路を備えており、
前記水素分離膜が、前記オフガス導入路によって前記プラズマ反応器に導入された前記水素オフガスに含まれる水素を通過させることにより、前記水素オフガスから水素を分離精製して前記燃料電池に供給することを特徴とする請求項3に記載の燃料電池システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水素を生成する装置と、この水素生成装置を備えた燃料電池システムに関する。特に、常温常圧で、効率よくアンモニアから水素を生成する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
水素は、燃焼したときの排出物が水であり、一般的な化石燃料のように温室効果ガスを発生させないことから、クリーンエネルギーとして利用の拡大が望まれている。一方で水素は、液化が困難であり、金属と反応しやすく、酸素と混合して爆発しやすいといった特性があるため、輸送や貯蔵が困難となっている。従って、水素を多く含む物質を水素の担体として貯蔵し、エネルギー源として使用する直前に担体から水素を取り出す技術の確立が望まれている。
【0003】
水素の担体としては、従来から、炭化水素系燃料やアンモニアが知られている。特許文献1には、Pt,Rh,Pd,Ruなどの貴金属触媒を用いた分解器を用い、400℃以上の高温条件でアンモニアから水素を製造する技術が開示されている。特許文献2には、ニッケル/アルミナ触媒を使用して、アンモニアガスを800℃〜900℃で分解して水素を製造する技術が開示されている。特許文献3には、アルミニウムとコバルトとからなる酸化物を含む触媒を使用して、540〜630℃の温度でアンモニアを分解して水素を製造する技術が開示されている。
【0004】
アンモニアを原料とした水素を製造する場合、これまでは種々の触媒を用いて400℃以上の温度で反応させる製造方法が採用されていた。これらの方法は、高価な触媒や高温の熱源が必要となるために水素の製造コストが高く、またアンモニアが残留するといった問題が残されている。このため、より安価で、効率よく、しかも安定的に水素を製造できる技術が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−40602号公報
【特許文献2】特開2005−145748号公報
【特許文献3】特開2012−71291号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明はかかる実情に鑑みてなされものであって、その目的は、アンモニアから効率よく水素を生成する水素生成装置を提供することにある。同時に、効率よく生成した水素を使用して発電を行う燃料電池システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、アンモニアから水素を生成する水素生成装置である。本発明の水素生成装置は、プラズマ反応器と、プラズマ反応器の内側に配置されて高電圧パルス電源に接続されている高電圧電極と、プラズマ反応器の外側で高電圧電極と対向する位置に配置されている接地電極と、アンモニアを含むガスを前記プラズマ反応器に供給するガス供給手段と、を備えている。高電圧電極は、水素分離膜を含んで構成されている。本発明の水素生成装置は、高電圧電極が高電圧パルス電源から供給される電力によって前記接地電極との間で放電し、この放電によってガス供給手段から供給されたガスに含まれているアンモニアがプラズマとなり、プラズマの中の水素ラジカルが再結合することによって、水素を生成することを特徴とする。
【0008】
発明者らは、常温大気圧の条件下で、放電によりアンモニアをプラズマとすることが可能であることを見出して、本発明をなすに至った。プラズマとなったアンモニアは、分解して水素ラジカルと窒素ラジカルとなり、このうちの水素ラジカルが再結合して水素を生成する。一方で、水素ラジカルと窒素ラジカルとが再結合することで、アンモニアが一定の割合で再生成する可能性がある。本発明の水素生成装置は、高電圧電極が有している水素分離膜によって、生成した水素を即時に分離することが可能となるため、アンモニアの再生成はほとんど起こらず、効率よく水素が取り出される。
【0009】
本発明の水素生成装置は、プラズマ反応器が、円筒形であり、高電圧電極がプラズマ反応器の中に同心円状に配置された円筒形の水素分離膜であることが好ましい。このような構成によって本発明の水素生成装置は、プラズマ反応器と水素分離膜との間に放電空間が形成され、且つ水素分離膜の内側に内室が形成される。ガス供給手段は、プラズマ反応器と水素分離膜との間の放電空間に接続されてアンモニアを含むガスを供給する。高電圧パルス電源から供給される電力によって、水素分離膜は高電圧電極として動作し、接地電極との間で放電することができる。この放電によって、アンモニアがプラズマとなり放電空間で水素が生成される。水素分離膜は、生成された水素を通過させて内室に導入する。
【0010】
本発明は更に、燃料電池と水素生成装置とを備えた燃料電池システムを提供する。本発明の燃料電池システムは、水素生成装置が、プラズマ反応器と、高電圧電極と、接地電極と、ガス供給手段と、水素流路とを備えている。高電圧電極は、プラズマ反応器の内側に内室を形成するように配置されており、高電圧パルス電源に接続されている水素分離膜を備えている。接地電極は、プラズマ反応器の外側の水素分離膜と対向する位置に配置されている。ガス供給手段は、プラズマ反応器と水素分離膜との間の放電空間にアンモニアを含むガスを供給する。水素流路は、水素分離膜の内室に接続されている。本発明の燃料電池システムは、高電圧電極が接地電極との間で放電することで、ガス供給手段から供給されたガスに含まれているアンモニアが放電空間でプラズマとなることによって水素が生成される。水素分離膜は、放電空間で生成された水素を通過させて内室に導入する。水素流路は、内室に導入された水素を、燃料電池に供給する。
【0011】
本発明の燃料電池システムは、燃料電池が排出する水素オフガスを前記プラズマ反応器に導入するオフガス導入路を備えることが好ましい。水素生成装置の水素分離膜は、プラズマ反応器に導入された水素オフガスの中に含まれている水素のみを通過させて、内室に導入する。これにより、水素オフガスから水素を分離精製して燃料電池に供給し、再利用することを可能とする。
【発明の効果】
【0012】
以上詳述したように、本発明に係る水素生成装置によれば、常温常圧(大気圧)の条件下で、アンモニアから水素を連続的に生成することが可能となる。
【0013】
通常、水素分離膜は、水素分離のために400℃から500℃の温度が必要であるが、本発明に係るプラズマ反応器ではプラズマが発する高い電子温度によって水素分離可能であり、外部から400−500℃の熱をかけなくとも水素分離できる。
【0014】
本発明に係る水素生成装置は、高価な触媒を使用せずに水素を生成することが可能であり、この結果従来よりも安価に装置を構成して、より低価格に水素を製造することができる。また、放電によってプラズマとなったアンモニアから水素を生成するために、触媒反応よりも水素の生成速度を速めることが容易である。
【0015】
本発明に係る水素生成装置は、高電圧電極の印加電圧とアンモニアの流量とを最適化することによって、原料のアンモニアに含まれる水素を100%水素ガスとして取り出すことが可能である。この結果、高効率で水素を製造可能であると同時に、残留アンモニアの処理が必要とならない。
【0016】
本発明に係る燃料電池システムは、従来よりも安価で効率よく水素が提供されるために、より低コストで発電を行うことができる。また、本発明に係る燃料電池システムは、燃料電池で発生する水素オフガスを再度水素発生装置で処理することにより、水素オフガスから水素を分離精製して燃料電池に供給し、再利用することを可能とする。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】実施形態に従った水素生成装置1の構成を模式的に示す鉛直方向断面図である。
図2】高電圧パルス電源から高電圧電極に印加される電圧波形を示した図である。
図3】アンモニアガスの流量が0.6L/minの場合の、高電圧電極として水素分離膜を用いた場合と用いなかった場合の水素の収率の違いを示すグラフである。
図4】アンモニアガスの流量が0.8L/minの場合の、高電圧電極として水素分離膜を用いた場合と用いなかった場合の水素の収率の違いを示すグラフである。
図5】実施形態に従った燃料電池システム20の概要を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の好適な実施形態について列記する。
(1)本実施形態のプラズマ反応器は、大気圧非平衡プラズマ反応器であり、常温大気圧下で気体のアンモニアを大気圧非平衡プラズマとすることができる。プラズマ反応器は、石英で円筒状に形成されており、プラズマ反応器の壁面が固体誘電体(絶縁物)として機能して、誘電体バリア放電を発生させる。
(2)本実施形態の高電圧電極は、水素分離膜とこの水素分離膜を支持する支持体とを備えている。水素分離膜の具体例としては、例えばパラジウム合金薄膜、ジルコニウム−ニッケル(Zr−Ni)系合金薄膜、バナジウム−ニッケル(V−Ni)系合金薄膜、ニオブ−ニッケル(Nb−Ni)系合金薄膜、および、ニオブ(Nb)と、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)およびモリブデン(Mo)よりなる群から選ばれる1種以上の金属と、バナジウム(V)、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)、タンタル(Ta)およびハフニウム(Hf)よりなる群から選ばれる1種以上の金属との合金よりなる薄膜などが挙げられる。本実施形態の水素分離膜は、パラジウム合金薄膜を特に好適に使用することができる。水素分離膜は、これらの金属を単層の膜として使用することが可能である。またはこれらの金属から選択される2以上の金属を積層して使用することができる。また、シリカ系分離膜や、ゼオライト系分離膜、ポリイミド分離膜、ポリスルホン分離膜などの非金属膜の水素分離膜であっても、これを支持する支持体を適度な孔を有する金属とすることで使用することができる。
(3)本実施形態の水素生成装置による水素の製造方法は、ガス供給手段が流量と濃度とを制御してアンモニアガスを供給する工程と、ガス供給手段が供給するアンモニアガスの流量と濃度の値に基づいて高電圧パルス電源が高電圧電極に供給する印加電圧と周波数とを調整する工程と、高電圧電極の水素分離膜と接地電極との間で放電を発生させてプラズマ反応器の中にアンモニアの大気圧非平衡プラズマを発生させる工程と、アンモニアの大気圧非平衡プラズマから発生した水素ガスに水素分離膜を通過させて分離する工程と、同じくアンモニアの大気圧非平衡プラズマから発生した窒素ガスを水素生成装置からパージする工程と、を含む。
(4)アンモニアの大気圧非平衡プラズマの中では、以下の化学式の反応が起きる。
NH+e → N+H+H+e (式1)
H+H → H (式2)
N+N → N (式3)
N+3H → NH (式4)
ここで、式1はプラズマとなったアンモニアの分解状態を示しており、式2は水素ラジカル(H)の再結合による水素の生成を示しており、式3は窒素ラジカル(N)の再結合による窒素の生成を示しており、式4はアンモニアの再生成を示している。水素分離膜のない状態では、式4に示す様に一定の割合でアンモニアが再生成する。しかしながら本実施形態では、水素分離膜によって生成された水素が迅速に水素分離膜の内側の内室に導入されるため、アンモニアの再生成がほとんど起こらず、最終的にアンモニアに含まれる水素は100%水素ガスとして取り出される。
【実施例】
【0019】
以下、本発明の実施形態をより具体化した水素生成装置と燃料電池システムの実施例について、図面を参照しつつ説明する。
【0020】
(実施例1)
図1から図4を参照して、アンモニアから水素を生成するための水素生成装置とこの装置を使用して実施される水素生成方法の一例を説明する。図1の水素生成装置1は、プラズマ反応器3と、高電圧電極5と、接地電極7と、ガス供給手段15とを備えている。
【0021】
プラズマ反応器3は、石英製であり、円筒形に形成されている。プラズマ反応器3の中には、高電圧電極5が収容されている。高電圧電極5は、円筒形の水素分離膜12と、水素分離膜12の両端を支持する円盤状の支持体13とを備えている。高電圧電極5は、高電圧パルス電源2に接続されており、高電圧が印加される。本実施例において、水素分離膜12はパラジウム合金の薄膜で形成されている。プラズマ反応器3の内壁に対して水素分離膜12が同心円状に配置されるように、プラズマ反応器3と支持体13との間にはOリング14が嵌め合わされている。この結果、プラズマ反応器3の内壁と水素分離膜12との間の空間は、一定の間隔が維持された放電空間4が形成されている。また、水素分離膜12の内側には、水素分離膜12と支持体13とでとり囲まれて閉空間となっている内室6が形成されている。
【0022】
本実施例におけるプラズマ反応器3の外径は45mmであり、長さは490mmである。またプラズマ反応器3の内壁と水素分離膜12との距離は1.5mmである。
【0023】
プラズマ反応器3の外側に接した状態で、水素分離膜12と対向するように、水素分離膜12と同心円状に接地電極7が配置されている。水素分離膜12と接地電極7が対向しており、且つその間に石英製のプラズマ反応器3が配置したことで、プラズマ反応器は誘電体として機能して、水素分離膜12に高電圧を印加すると誘電体バリア放電を発生させることができる。
【0024】
ガス供給路9はガス供給手段15と放電空間4とを連通させており、ガス供給手段15から供給されたアンモニアを含むガスを放電空間4に供給する。ガス供給手段15は、プラズマ反応器3に供給するガスを保管するガスタンクと、電動弁等のバルブを含むガス混合手段と、供給されるガス圧及びガス組成を測定しつつその供給量を制御する制御手段とを備えている。本実施例において、ガス供給手段15から供給されるガスはアンモニア100%のガスである。ガス供給手段15は、アンモニア100%のガスを供給するほか、窒素等の不活性ガスとアンモニアとを混合した混合ガスを供給することができる。
【0025】
高電圧パルス電源2は、プラズマ反応器3の外部に設置されており、高電圧電極5に高電圧を印加する。本実施例で高電圧パルス電源2が高電圧電極5に印加する電圧波形の一例を図2に示す。図2の電圧波形は、波形保持時間Tが10μsと極めて短いために、電子エネルギー密度が高く、かつ消費電力が少ないという特徴をもつ。
【0026】
本実施例の水素生成装置1によって水素を製造する方法は、以下の第一から第四の工程を備えている。第一の工程は、ガス供給手段15がガス供給路9を経由して放電空間4に所定の流量でアンモニアガスを供給する工程である。第二の工程は、アンモニアガスの流量に基づいて、高電圧パルス電源2の印加電圧と周波数とを調整する工程である。本実施例におけるパルス電源2の周波数は、10kHzである。第三の工程は、高電圧電極5の水素分離膜12と接地電極7との間で誘電体バリア放電を発生させて、放電空間4の中にアンモニアの大気圧非平衡プラズマを発生させる工程である。第四の工程は、アンモニアの大気圧非平衡プラズマから発生した水素ガスを、水素分離膜12を通過させて内室6に移動させることで分離する工程である。
【0027】
本実施例のパラジウム合金の薄膜からなる水素分離膜12は、通常であれば、水素分離のために400−500℃の温度が必要である。しかしながら、本実施例のプラズマ反応器3では大気圧非平衡プラズマが発する約10000℃の高い電子温度によって、水素分離が進行する。即ち本実施例では、外部から400−500℃の熱を供給しなくとも、水素分離膜12は水素分離を行うことができる。
【0028】
第四の工程における水素ガスの放電空間4から内室6への移動は、内室6に接続された水素経路11に図示されないポンプを設置して、内室6を陰圧にすることで行われる。
【0029】
ガス供給手段15から供給されるアンモニアガスの流量を毎分0.6リットル(0.6L/min)に調整し、印加電圧3.5kVから15.0kVまで変化させたときの水素の収率の変化を、図3のグラフに示す。ここで、水素の収率とは、アンモニアから水素が生成した割合%を、以下の化学式(式5)に基づいて、計算式1で算出した値である。
2NH+e→N+3H+e (式5)
水素収率%=(3×反応器出口の水素モル流量mol/min)
÷(2×反応器入口のアンモニアモル流量mol/min)×100
(計算式1)
【0030】
図3の白抜き三角形の符号で示したグラフが、本実施例の水素生成装置1を用いた場合の水素の収率である。より高い電圧を印加するに従って、水素の収率が上がり、9.0kV以上の電圧を印加した時の水素の収率は100%となる。
【0031】
ガス供給手段15から供給されるアンモニアガスの流量を毎分0.8リットル(0.8L/min)に調整し、印加電圧3.5kVから15.0kVまで変化させたときの水素の収率の変化を、図4のグラフに示す。図4の白抜き三角形の符号で示したグラフが、本実施例の水素生成装置1を用いた場合の水素の収率である。アンモニアガスの流量が毎分0.6リットルの場合と同様に、より高い電圧を印加するに従って、水素の収率が上がり、9.0kV以上の電圧を印加した時の水素の収率は100%となる。しかしながら、印加電圧が9.0kVよりも低い場合の収率は、流量が毎分0.6リットルの場合のほうが毎分0.8リットルの場合よりも高くなっている。
【0032】
比較例として、高電圧電極が水素分離膜を含まず、従って内室を形成しないプラズマ発生器を用いてアンモニアガスから水素を生成した場合の、印加電圧と水素の収率の関係を図3図4に四角形の符号のグラフで示す。アンモニアガスの流量を毎分0.6リットルとした比較例の場合、印加電圧が9.0kVの場合の水素の収率は57.2%であり、印加電圧を15.0kVとした場合であっても水素の収率は89.8%であった。またアンモニアガスの流量を毎分0.8リットルとした比較例の場合、印加電圧が9.0kVの場合の水素の収率は33.0%であり、印加電圧を15.0kVとした場合であっても水素の収率は62.7%であった。
【0033】
比較例と実施例1とを比較すると、高電圧電極5が水素分離膜12を含み、内室6に選択的に水素を導入することで、アンモニアガスから水素を生成するときに収率が向上するという優れた効果が得られることは明らかである。この効果は、生成された水素が水素分離膜12を通過することによって迅速に水素分離膜12の内側の内室6に導入され、この結果アンモニアの再生成がほとんど起こらず、非常に効率の良い水素生成が行われることによる。本実施例では、アンモニアガスの流量にかかわらず、最適な印加電圧を選択することで、最終的にアンモニアに含まれる水素は100%水素ガスとして取り出すことができる。実施例1における水素製造エネルギー効率は、73.6mol−H/kWhであり、触媒を用いる水素製造法に比較して有意に高い。
【0034】
以上述べた様に、本実施例における水素生成装置1は、常温常圧(大気圧)の条件下で、アンモニアから水素を連続的に生成することが可能となる。水素生成装置1は、高価な触媒を使用せずに水素を生成することが可能であり、この結果従来よりも安価に装置を構成して、より低価格に水素を製造することができる。また、放電によってプラズマとなったアンモニアから水素を生成するために、触媒反応よりも水素の生成速度を速め、連続的に水素を生成することが可能である。これに加えて本実施例1の水素生成装置1は、原料のアンモニアに含まれる水素を100%水素ガスとして取り出すことが可能であるので、残留アンモニアの処理が必要とならない。
【0035】
(実施例2)
図5を参照して、アンモニアから水素を生成するための水素生成装置21と燃料電池31とを備える燃料電池システム20の一例を説明する。燃料電池システム20の水素生成装置21が備えている、高電圧パルス電源2と、プラズマ反応器3と、放電空間4と、高電圧電極5と、内室6と、ガス供給手段15の構成は実施例1のそれぞれの手段を大型化したものであり機能が同一であるので、同一符号を付して重複説明を割愛する。水素生成装置21には、実施例1の接地電極7を大型化した機能を有する接地電極が配置されている。
【0036】
水素流路22は、高電圧電極5の中に形成された内室6と燃料電池31とを連通させている。水素流路22にはポンプ23が配置されている。ポンプ23は水素生成装置21が起動すると同時に稼働して、内室6の気体を吸引する。ガス供給手段15から供給されたアンモニアを原料として放電空間4で生成された水素は、高電圧電極5が備えている水素分離膜12を通過して内室6に流入し、さらに水素流路22に導入されて燃料電池31に供給される。
【0037】
本実施例の燃料電池システム20は、燃料電池31が排出する水素オフガスをプラズマ反応器3の内部の放電空間4に導入するオフガス導入路24を備えている。オフガス導入路24から放電空間4に導入された水素オフガスの中に含まれる水素は、高電圧電極5が備えている水素分離膜12を通過し、内室6と水素流路22とを経由して燃料電池31に供給される。燃料電池31から排出される水素オフガスから水素を分離精製して再度燃料電池31に供給することにより、一層安価で効率のよい発電を行うことができる。
【0038】
本実施例で説明した水素生成装置及び燃料電池システムは、適宜変更が可能である。例えば、ガス供給手段15で供給するガスは、アンモニア単体ではなくアンモニアと不活性ガスの混合ガスとすることができる。また、液化アンモニアや尿素から発生したアンモニア単体またはそのアンモニアと不活性ガスの混合ガスとすることができる。その他、アンモニアの流量や高電圧電極と接地電極の距離を変更した場合には、印加する電圧を適宜調整することで、実施例と同等の収率で水素を生成することができる。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明に係る水素生成装置は、分散型電源、非常用電源、燃料電池車等に適用可能である。
【符号の説明】
【0040】
,21 水素生成装置
2 高電圧パルス電源
3 プラズマ反応器
4 放電空間
5 高電圧電極
6 内室
7 接地電極
9 ガス供給路
11,22 水素流路
12 水素分離膜
13 支持体
14 Oリング
15 ガス供給手段
20 燃料電池システム
23 ポンプ
24 オフガス導入路
31 燃料電池
図1
図2
図3
図4
図5