【0018】
以下、本発明の好適な実施形態について列記する。
(1)本実施形態のプラズマ反応器は、大気圧非平衡プラズマ反応器であり、常温大気圧下で気体のアンモニアを大気圧非平衡プラズマとすることができる。プラズマ反応器は、石英で円筒状に形成されており、プラズマ反応器の壁面が固体誘電体(絶縁物)として機能して、誘電体バリア放電を発生させる。
(2)本実施形態の高電圧電極は、水素分離膜とこの水素分離膜を支持する支持体とを備えている。水素分離膜の具体例としては、例えばパラジウム合金薄膜、ジルコニウム−ニッケル(Zr−Ni)系合金薄膜、バナジウム−ニッケル(V−Ni)系合金薄膜、ニオブ−ニッケル(Nb−Ni)系合金薄膜、および、ニオブ(Nb)と、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)およびモリブデン(Mo)よりなる群から選ばれる1種以上の金属と、バナジウム(V)、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)、タンタル(Ta)およびハフニウム(Hf)よりなる群から選ばれる1種以上の金属との合金よりなる薄膜などが挙げられる。本実施形態の水素分離膜は、パラジウム合金薄膜を特に好適に使用することができる。水素分離膜は、これらの金属を単層の膜として使用することが可能である。またはこれらの金属から選択される2以上の金属を積層して使用することができる。また、シリカ系分離膜や、ゼオライト系分離膜、ポリイミド分離膜、ポリスルホン分離膜などの非金属膜の水素分離膜であっても、これを支持する支持体を適度な孔を有する金属とすることで使用することができる。
(3)本実施形態の水素生成装置による水素の製造方法は、ガス供給手段が流量と濃度とを制御してアンモニアガスを供給する工程と、ガス供給手段が供給するアンモニアガスの流量と濃度の値に基づいて高電圧パルス電源が高電圧電極に供給する印加電圧と周波数とを調整する工程と、高電圧電極の水素分離膜と接地電極との間で放電を発生させてプラズマ反応器の中にアンモニアの大気圧非平衡プラズマを発生させる工程と、アンモニアの大気圧非平衡プラズマから発生した水素ガスに水素分離膜を通過させて分離する工程と、同じくアンモニアの大気圧非平衡プラズマから発生した窒素ガスを水素生成装置からパージする工程と、を含む。
(4)アンモニアの大気圧非平衡プラズマの中では、以下の化学式の反応が起きる。
NH
3+e → N+H+H
2+e (式1)
H+H → H
2 (式2)
N+N → N
2 (式3)
N+3H → NH
3 (式4)
ここで、式1はプラズマとなったアンモニアの分解状態を示しており、式2は水素ラジカル(H)の再結合による水素の生成を示しており、式3は窒素ラジカル(N)の再結合による窒素の生成を示しており、式4はアンモニアの再生成を示している。水素分離膜のない状態では、式4に示す様に一定の割合でアンモニアが再生成する。しかしながら本実施形態では、水素分離膜によって生成された水素が迅速に水素分離膜の内側の内室に導入されるため、アンモニアの再生成がほとんど起こらず、最終的にアンモニアに含まれる水素は100%水素ガスとして取り出される。
【実施例】
【0019】
以下、本発明の実施形態をより具体化した
水素生成装置と燃料電池システムの実施例について、図面を参照しつつ説明する。
【0020】
(実施例1)
図1から
図4を参照して、アンモニアから水素を生成するための水素生成装置とこの装置を使用して実施される水素生成方法の一例を説明する。
図1の水素生成装置1は、プラズマ反応器3と、高電圧電極5と、接地電極7と、ガス供給手段15とを備えている。
【0021】
プラズマ反応器3は、石英製であり、円筒形に形成されている。プラズマ反応器3の中には、高電圧電極5が収容されている。高電圧電極5は、円筒形の水素分離膜12と、水素分離膜12の両端を支持する円盤状の支持体13とを備えている。高電圧電極5は、高電圧パルス電源2に接続されており、高電圧が印加される。本実施例において、水素分離膜12はパラジウム合金の薄膜で形成されている。プラズマ反応器3の内壁に対して水素分離膜12が同心円状に配置されるように、プラズマ反応器3と支持体13との間にはOリング14が嵌め合わされている。この結果、プラズマ反応器3の内壁と水素分離膜12との間の空間は、一定の間隔が維持された放電空間4が形成されている。また、水素分離膜12の内側には、水素分離膜12と支持体13とでとり囲まれて閉空間となっている内室6が形成されている。
【0022】
本実施例におけるプラズマ反応器3の外径は45mmであり、長さは490mmである。またプラズマ反応器3の内壁と水素分離膜12との距離は1.5mmである。
【0023】
プラズマ反応器3の外側に接した状態で、水素分離膜12と対向するように、水素分離膜12と同心円状に接地電極7が配置されている。水素分離膜12と接地電極7が対向しており、且つその間に石英製のプラズマ反応器3が配置したことで、プラズマ反応器は誘電体として機能して、水素分離膜12に高電圧を印加すると誘電体バリア放電を発生させることができる。
【0024】
ガス供給路9はガス供給手段15と放電空間4とを連通させており、ガス供給手段15から供給されたアンモニアを含むガスを放電空間4に供給する。ガス供給手段15は、プラズマ反応器3に供給するガスを保管するガスタンクと、電動弁等のバルブを含むガス混合手段と、供給されるガス圧及びガス組成を測定しつつその供給量を制御する制御手段とを備えている。本実施例において、ガス供給手段15から供給されるガスはアンモニア100%のガスである。ガス供給手段15は、アンモニア100%のガスを供給するほか、窒素等の不活性ガスとアンモニアとを混合した混合ガスを供給することができる。
【0025】
高電圧パルス電源2は、プラズマ反応器3の外部に設置されており、高電圧電極5に高電圧を印加する。本実施例で高電圧パルス電源2が高電圧電極5に印加する電圧波形の一例を
図2に示す。
図2の電圧波形は、波形保持時間T
0が10μsと極めて短いために、電子エネルギー密度が高く、かつ消費電力が少ないという特徴をもつ。
【0026】
本実施例の水素生成装置1によって水素を製造する方法は、以下の第一から第四の工程を備えている。第一の工程は、ガス供給手段15がガス供給路9を経由して放電空間4に所定の流量でアンモニアガスを供給する工程である。第二の工程は、アンモニアガスの流量に基づいて、高電圧パルス電源2の印加電圧と周波数とを調整する工程である。本実施例におけるパルス電源2の周波数は、10
kHzである。第三の工程は、高電圧電極5の水素分離膜12と接地電極7との間で誘電体バリア放電を発生させて、放電空間4の中にアンモニアの大気圧非平衡プラズマを発生させる工程である。第四の工程は、アンモニアの大気圧非平衡プラズマから発生した水素ガスを、水素分離膜12を通過させて内室6に移動させることで分離する工程である。
【0027】
本実施例のパラジウム合金の薄膜からなる水素分離膜12は、通常であれば、水素分離のために400−500℃の温度が必要である。しかしながら、本実施例のプラズマ反応器3では大気圧非平衡プラズマが発する約10000℃の高い電子温度によって、水素分離が進行する。即ち本実施例では、外部から400−500℃の熱を供給しなくとも、水素分離膜12は水素分離を行うことができる。
【0028】
第四の工程における水素ガスの放電空間4から内室6への移動は、内室6に接続された水素経路11に図示されないポンプを設置して、内室6を陰圧にすることで行われる。
【0029】
ガス供給手段15から供給されるアンモニアガスの流量を毎分0.6リットル(0.6L/min)に調整し、印加電圧3.5
kVから15.0
kVまで変化させたときの水素の収率の変化を、
図3のグラフに示す。ここで、水素の収率とは、アンモニアから水素が生成した割合%を、以下の化学式(式5)に基づいて、計算式1で算出した値である。
2NH
3+e→N
2+3H
2+e (式5)
水素収率%=(3×反応器出口の水素モル流量mol/min)
÷(2×反応器入口のアンモニアモル流量mol/min)×100
(計算式1)
【0030】
図3の白抜き三角形の符号で示したグラフが、本実施例の
水素生成装置1を用いた場合の水素の収率である。より高い電圧を印加するに従って、水素の収率が上がり、9.0kV以上の電圧を印加した時の水素の収率は100%となる。
【0031】
ガス供給手段15から供給されるアンモニアガスの流量を毎分0.8リットル(0.8L/min)に調整し、印加電圧3.5
kVから15.0
kVまで変化させたときの水素の収率の変化を、
図4のグラフに示す。
図4の白抜き三角形の符号で示したグラフが、本実施例の水素生成装置1を用いた場合の水素の収率である。アンモニアガスの流量が毎分0.6リットルの場合と同様に、より高い電圧を印加するに従って、水素の収率が上がり、9.0kV以上の電圧を印加した時の水素の収率は100%となる。しかしながら、印加電圧が9.0kVよりも低い場合の収率は、流量が毎分0.6リットルの場合のほうが毎分0.8リットルの場合よりも高くなっている。
【0032】
比較例として、高電圧電極が水素分離膜を含まず、従って内室を形成しないプラズマ発生器を用いてアンモニアガスから水素を生成した場合の、印加電圧と水素の収率の関係を
図3と
図4に四角形の符号のグラフで示す。アンモニアガスの流量を毎分0.6リットルとした比較例の場合、印加電圧が9.0kVの場合の水素の収率は57.2%であり、印加電圧を15.0kVとした場合であっても水素の収率は89.8%であった。またアンモニアガスの流量を毎分0.8リットルとした比較例の場合、印加電圧が9.0kVの場合の水素の収率は33.0%であり、印加電圧を15.0kVとした場合であっても水素の収率は62.7%であった。
【0033】
比較例と実施例1とを比較すると、高電圧電極5が水素分離膜12を含み、内室6に選択的に水素を導入することで、アンモニアガスから水素を生成するときに収率が向上するという優れた効果が得られることは明らかである。この効果は、生成された水素が水素分離膜12を通過することによって迅速に水素分離膜12の内側の内室6に導入され、この結果アンモニアの再生成がほとんど起こらず、非常に効率の良い水素生成が行われることによる。本実施例では、アンモニアガスの流量にかかわらず、最適な印加電圧を選択することで、最終的にアンモニアに含まれる水素は100%水素ガスとして取り出すことができる。実施例1における水素製造エネルギー効率は、73.6mol−H
2/kWhであり、触媒を用いる水素製造法に比較して有意に高い。
【0034】
以上述べた様に、本実施例における水素生成装置1は、常温常圧(大気圧)の条件下で、アンモニアから水素を連続的に生成することが可能となる。水素生成装置1は、高価な触媒を使用せずに水素を生成することが可能であり、この結果従来よりも安価に装置を構成して、より低価格に水素を製造することができる。また、放電によってプラズマとなったアンモニアから水素を生成するために、触媒反応よりも水素の生成速度を速め、連続的に水素を生成することが可能である。これに加えて本実施例1の水素生成装置1は、原料のアンモニアに含まれる水素を100%水素ガスとして取り出すことが可能であるので、残留アンモニアの処理が必要とならない。
【0035】
(実施例2)
図5を参照して、アンモニアから水素を生成するための水素生成装置21と燃料電池31とを備える燃料電池システム20の一例を説明する。燃料電池システム20の水素生成装置21が備えている、高電圧パルス電源2と、プラズマ反応器3と、放電空間4と、高電圧電極5と、内室6と
、ガス供給手段15の構成は実施例1のそれぞれの手段を大型化したものであり機能が同一であるので、同一符号を付して重複説明を割愛する。
水素生成装置21には、実施例1の接地電極7を大型化した機能を有する接地電極が配置されている。
【0036】
水素流路22は、高電圧電極5の中に形成された内室6と燃料電池31とを連通させている。水素流路22にはポンプ23が配置されている。ポンプ23は
水素生成装置21が起動すると同時に稼働して、内室6の気体を吸引する。ガス供給手段15から供給されたアンモニアを原料として放電空間4で生成された水素は、
高電圧電極5が備えている水素分離膜12を通過して内室6に流入し、さらに水素流路22に導入されて燃料電池31に供給される。
【0037】
本実施例の燃料電池システム20は、燃料電池31が排出する水素オフガスをプラズマ反応器3の内部の放電空間4に導入するオフガス導入路24を備えている。オフガス導入路24から放電空間4に導入された水素オフガスの中に含まれる水素は、
高電圧電極5が備えている水素分離膜12を通過し、内室6と水素流路22とを経由して燃料電池31に供給される
。燃料電池31から排出される水素オフガスから水素を分離精製して再度燃料電池31に供給することにより、一層安価で効率のよい発電を行うことができる。
【0038】
本実施例で説明した水素生成装置及び燃料電池システムは、適宜変更が可能である。例えば、ガス供給手段15で供給するガスは、アンモニア単体ではなくアンモニアと不活性ガスの混合ガスとすることができる。また、液化アンモニアや尿素から発生したアンモニア単体またはそのアンモニアと不活性ガスの混合ガスとすることができる。その他、アンモニアの流量や高電圧電極と接地電極の距離を変更した場合には、印加する電圧を適宜調整することで、実施例と同等の収率で水素を生成することができる。