【実施例】
【0026】
本発明に係る繊維強化プラスチック製品の部分修復方法をプラスチック基板の処理に適用した例について説明する。
プラスチック基板には、炭素繊維を強化繊維としたプラスチック基板(CFRP)と、グラスファイバーを強化繊維としたプラスチック基板(GFRP)を使用した。これらのプラスチック基板は、炭素繊維には、トレカ製のカーボンファイバー(Torayca Cloth CO6343)を使用し、グラスファイバーにはユニチカ製のグラスファイバー(Glass Rosen Cloth R300N100V)を使用し、これらの強化繊維にエポキシ樹脂(Nagase Chemtex:XNR6815)と硬化剤(Nagase Chemtex:XNH6815)を浸透させ、室温で24時間硬化させた後、さらにポスト硬化として50℃で12時間硬化処理を行って作製した。プラスチック基板の損傷深さを1mm程度と仮定し、基板のポリマー部分の厚さを2.5mm程度とした。
【0027】
(実施例1)
上述した方法によって作製したカーボンファイバーを強化繊維とするプラスチック基板(CFRP)の表面に、酸化クロム(Cr
2O
3)粉末を直径10mmの範囲にわたり、約20-50μmの厚さで敷きつめた(酸化物半導体を付着させる工程)。
次に、酸化クロムを敷きつめた基板上にロッドヒータの端面(頭部)を接触させて酸化クロムとともに基板を加熱した。空気中、450℃、10分加熱することにより、ロッドヒータの端面が接触していたプラスチック基板の表面にカーボンファイバーの繊維があらわれ、ポリマー成分が完全に除去されたことを確認した(ポリマー成分を除去する工程)。
その後、修復作業として、上述のエポキシ樹脂と硬化剤とからなるポリマーをスプレーで塗布し、カーボンファイバーの繊維内に浸透させ、残っている基板表面にならった厚さに被覆した後、硬化させることにより、元のプラスチック基板の状態に修復することができた(ポリマーを硬化させる工程)。
【0028】
(実施例2)
カーボンファイバーを強化繊維とするプラスチック基板(CFRP)の表面に、マスクを通して、10×30mmの範囲にわたり、酸化クロム(Cr
2O
3)の分散液をスプレーで塗布した。酸化クロムの分散液は、ポリマーを1重量%含むケトン系溶剤に酸化クロムを10重量%入れ、ペイント・シェイカーで20分間、分散させて作製した。分散液の塗布厚は7μmである。
プラスチック基板の基板面とロッドヒータを平行にし、酸化クロムの分散液を塗布した位置の上方に、基板表面からロッドヒータの最下面位置までの間隔を10mmとし、ロッドヒータを500℃に加熱した状態で、空気中、10分加熱した。この加熱処理により、プラスチック基板の表面にカーボンファイバーの繊維が露出し、ポリマー成分が完全に除去されたことを確認した。
その後、修復作業として、上述したポリマーを、カーボンファイバーが露出した部位にスプレーで塗布し、繊維内に浸透させるようにして充填し、硬化させることにより、元のプラスチック基板の状態に修復することができた。
【0029】
(実施例3)
実施例2と同じCFRP試料を用いて、同じ方法により直径30mmの範囲にわたり、マスクを通して、酸化クロム(Cr
2O
3)の分散液をスプレーで塗布した。被処理部分の端に熱電対を置き、パラボラ付き赤外線ランプ(300W:焦点距離約35 mm)を用いて、CFRPの温度を観察しながら、被処理部分の温度が500℃近傍になるように投入電力を調節し、焦点距離の位置で5分間加熱した。
この加熱処理により、プラスチック基板の表面にカーボンファイバーの繊維が露出し、ポリマー成分が完全に除去されたことを確認した。
その後、修復作業として、上述したポリマーを、カーボンファイバーが露出した部位にスプレーで塗布し、繊維内に浸透させるようにして充填し、硬化させることにより、元のプラスチック基板の状態に修復することができた。
【0030】
(実施例4)
実施例3と同じCFRP試料を用いて、同じ方法により50×50mmの範囲にわたり、マスクを通して、酸化クロム(Cr
2O
3)の分散液をスプレーで塗布した。被処理部分の端に熱電対を置き、フレーム(ガスバーナー)を用いて、CFRPの温度を観察しながら、被処理部分の温度が500℃近傍になるようにバーナーをXY移動(走査)させて被処理部分を5分ほど加熱した。
この加熱処理により、プラスチック基板の表面にカーボンファイバーの繊維が露出し、ポリマー成分が完全に除去されたことを確認した。
その後、修復作業として、上述したポリマーを、カーボンファイバーが露出した部位にスプレーで塗布し、繊維内に浸透させるようにして充填し、硬化させることにより、元のプラスチック基板の状態に修復することができた。
【0031】
(実施例5)
実施例3と同様のフレーム(ガスバーナー)処理実験をグラスファイバーFRP(GFRP)で行なった。また、酸化物半導体として酸化クロムの代わりに酸化チタン(TiO
2)を使った。被処理部分の面積は50x50mm、処理時間は5分間であった。
この加熱処理により、プラスチック基板の表面にカーボンファイバーの繊維が露出し、ポリマー成分が完全に除去されたことを確認した。
その後、修復作業として、上述したポリマーを、グラスファイバーが露出した部位にスプレーで塗布し、繊維内に浸透させるようにして充填し、硬化させることにより、元のプラスチック基板の状態に修復することができた。
【0032】
(実施例6)
実施例3のパラボラ付き赤外線ランプの実験をグラスファイバーFRP(GFRP)で行なった。この場合にも直径30mmにわたり、マスクを通して、酸化チタン(TiO
2)の分散液をスプレーで塗布した。酸化チタンの分散液も実施例2と同様にして作製した。分散膜の厚さは約7μmである。加熱条件は実施例3と同じである。
この加熱処理により、プラスチック基板の表面にカーボンファイバーの繊維が露出し、ポリマー成分が完全に除去されたことを確認した。
その後、修復作業として、上述したポリマーを、グラスファイバーが露出した部位にスプレーで塗布し、繊維内に浸透させるようにして充填し、硬化させることにより、元のプラスチック基板の状態に修復することができた。
【0033】
上述した実施例に示すように、繊維強化プラスチックを部分的に補修する際には、損傷した表面層に存在するポリマーのみを除去する必要があり、これにはヒータのパワーを出来る限り表面に集中させ、短時間で処理するのがよい。これによって、ポリマー中に生成されるラジカルの作用により、損傷した個所のポリマー成分が効率的に分解、除去される。
【0034】
上記実施例では、平板状のプラスチック基板を処理対象物の例として説明したが、任意の形状のFRPでも処理することができる。特にフレーム法は、平板体以外の屈曲状のもの等にも適用できる点で有効である。本発明はプラスチック基板に限らず、各種の繊維強化プラスチック材からなる製品については、その形状や大きさを問わす、使用されている強化繊維の素材に関わらず、適用することができる。処理対象物を加熱する際の温度は、酸化物半導体を熱活性化させるに必要な温度(300℃〜500℃程度)であり、強化繊維プラスチック材に使用されている強化繊維は、このような加熱温度で損傷を受けることはない。
【0035】
本発明に係る強化繊維プラスチックの部分修復方法においては、以上、説明したように、処理対象物に内在する強化繊維をなんら損なうことなく、強化繊維プラスチックのポリマー成分のみを除去する方法によって処理するから、繊維強化プラスチックからなる製品の種類、形状、大きさ等を問わず、処理対象物の強度を損なうことなく処理対象物を処理することが可能であり、種々の用途にこの処理方法を利用することを可能にする。