【実施例】
【0026】
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明の範囲は下記の実施例に限定されることはない。
【0027】
[実施例1]基質の調製
(1)(R)−2−(tert−ブトキシカルボニルアミノ)−5−(6−ヒドロキシベンゾ[d]チアゾール−2−イル)−5−オキソペンタン酸tert−ブチル(前駆体1)の調製
(1−1)2−ブロモ−6−メトキシベンゾ[d]チアゾールの調製
【化5】
【0028】
乾燥させた臭化銅(II)(2.70 g, 11.6 mmol)と亜硝酸イソブチル(2 mL, 15.0 mmol)とを、アルゴン雰囲気下、室温にてアセトニトリル(150 mL)に加えた後、6−メトキシベンゾ[d]チアゾール−2−アミン(1.80 g, 9.99 mmol)のアセトニトリル(50 mL)溶液を、同じく室温にて加えた。得られた混合物を、65℃に加熱し、この温度を保ちながらアルゴン雰囲気下で4時間撹拌した。
反応混合物を室温まで放冷した後、2 M塩酸(30 mL)を加え、クロロホルム(3×150 mL)で抽出した。合わせた有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥した後、溶媒を減圧留去した。得られた残渣を、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(シリカゲル200 g; ヘキサン:酢酸エチル(2:1))にて精製することによって、2−ブロモ−6−メトキシベンゾ[d]チアゾール(2.32 g, 収率95%)を、赤褐色固体として得た。生成物の物性測定値は、下記の通りである。
【0029】
2−ブロモ−6−メトキシベンゾ[d]チアゾール
IR (film) 1603, 1221 cm
-1.
1H NMR (400 MHz, CDCl
3)δ 7.85 (1 H, d, J = 8.8 Hz), 7.24 (1 H, d, J = 2.4 Hz), 7.06 (1 H, dd, J = 2.4, 8.8 Hz), 3.87 (3 H, s).
13C NMR (100 MHz, CDCl
3)δ 158.1, 146.8, 138.6, 135.5, 123.3, 115.8, 103.6, 55.9.
ESI-HRMS calcd for C
8H
679BrNOS 242.9353 (M+H)
+, found, m/z 243.9459.
【0030】
(1−2)2−ブロモベンゾ[d]チアゾール−6−オールの調製
【化6】
【0031】
2−ブロモ−6−メトキシベンゾ[d]チアゾール(555 mg, 2.28 mmol)を、アルゴン雰囲気下、室温にて塩化メチレン(10 mL)に溶解した。得られた溶液に、1 M三臭化ホウ素塩化メチレン溶液(4 mL)を、室温にて加えた。得られた混合物を、アルゴン雰囲気下、室温で7時間撹拌した。
反応混合物を氷水に加えた後、クロロホルム(3×30 mL)で抽出した。合わせた有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥した後、溶媒を減圧留去した。得られた残渣を、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(シリカゲル80 g; ヘキサン:酢酸エチル(3:1))にて精製することによって、2−ブロモベンゾ[d]チアゾール−6−オール(521 mg, 収率99%)を、褐色固体として得た。生成物の物性測定値は、下記の通りである。
【0032】
2−ブロモベンゾ[d]チアゾール−6−オール
IR (film) 3118, 1598 cm
-1.
1H NMR (400 MHz, CD
3OD)δ 7.72 (1 H, d, J = 8.8 Hz), 7.26 (1 H, d, J = 2.4 Hz), 6.97 (1 H, dd, J = 2.4, 8.8 Hz).
13C NMR (100 MHz, CD
3OD)δ 156.5, 145.6, 138.5, 134.8, 122.5, 116.0, 105.6.
ESI-HRMS calcd for C
7H
479BrNOS 228.9197 (M+H)
+, found, m/z 229.9303.
【0033】
(1−3)2−ブロモ−6−(tert−ブチルジメチルシリルオキシ)ベンゾ[d]チアゾールの調製
【化7】
【0034】
2−ブロモベンゾ[d]チアゾール−6−オール(794 mg, 3.45 mmol)を、アルゴン雰囲気下、室温にてN,N-ジメチルホルムアミド (42 mL)に溶解させ後、引き続き、tert-ブチルジメチルクロロシラン(1.75 g, 11.6 mmol)とイミダゾール(1.41 g, 20.7 mmol)とを、室温にて加えた。得られた混合物を、アルゴン雰囲気下、室温で24時間撹拌した。
反応混合物に飽和塩化アンモニウム水溶液(50 mL)を加えた後、クロロホルム(3×30 mL)で抽出した。合わせた有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥した後、溶媒を減圧留去した。得られた残渣を、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(シリカゲル80 g; ヘキサン:酢酸エチル(3:1))にて精製することによって、2−ブロモ−6−(tert−ブチルジメチルシリルオキシ)ベンゾ[d]チアゾール(1.13 g, 収率95%)を、褐色液体として得た。生成物の物性測定値は、下記の通りである。
【0035】
2−ブロモ−6−(tert−ブチルジメチルシリルオキシ)ベンゾ[d]チアゾール
IR (film) 1597, 1270 cm
-1.
1H NMR (400 MHz, CDCl
3)δ 7.79 (1 H, d, J = 8.8 Hz), 7.19 (1 H, d, J = 2.4 Hz), 6.94 (1 H, dd, J = 2.4, 8.8 Hz), 0.97 (9 H, s), 0.20 (6 H, s).
13C NMR (100 MHz, CDCl
3)δ 154.0, 147.3, 138.4, 135.9, 123.2, 120.3, 111.1, 25.7, 18.2, -4.4.
ESI-HRMS calcd for C
13H
1879BrNOSSi 343.0062 (M+H)
+, found, m/z 344.0168.
【0036】
(1−4)(R)−5−オキソピロリジン−1,2−ジカルボン酸ジtert−ブチルの調製
(1−4−1)(R)−5−オキソピロリジン−2−カルボン酸tert−ブチルの調製
【化8】
【0037】
(R)−5−オキソピロリジン−2−カルボン酸(3.21 g, 24.9 mmol)を、アルゴン雰囲気下、室温にて酢酸tert-ブチル(100 mL)に溶解した後、引き続き、60%過塩素酸水溶液(1.5 mL)を、室温で加えた。得られた混合物を、アルゴン雰囲気下、室温で24時間撹拌した。
反応混合物に飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(50 mL)を加えた後、クロロホルム(3×30 mL)で抽出した。合わせた有機層を、無水硫酸ナトリウムで乾燥した後、溶媒を減圧留去することによって、(R)−5−オキソピロリジン−2−カルボン酸tert−ブチル(4.62 g, 収率quant.)を、白色固体として得た。生成物の物性測定値は、下記の通りである。
【0038】
(R)−5−オキソピロリジン−2−カルボン酸tert−ブチル
IR (film) 3454, 1737 cm
-1.
1H NMR (400 MHz, CDCl
3)δ 5.97 (1 H, br), 4.16 (1 H, m), 2.38 (3 H, m), 2.11 (1 H, m), 1.48 (9 H, s).
13C NMR (100 MHz, CDCl
3)δ 177.8, 171.1, 82.5, 56.1, 29.4, 28.1, 24.9.
ESI-HRMS calcd for C
9H
15NO
3 185.1052 (M+H)
+, found, m/z 186.1113.
[α]
25D -1.11 (c 1.00, CHCl
3).
【0039】
(1−4−2)(R)−5−オキソピロリジン−1,2−ジカルボン酸ジtert−ブチルの調製
【化9】
【0040】
(R)−5−オキソピロリジン−2−カルボン酸tert−ブチル(367 mg, 1.98 mmol)と二炭酸ジ-tert-ブチル(0.55 mL, 24.6 mmol)とを、アルゴン雰囲気下、室温にてテトラヒドロフラン(10 mL)に溶解した後、N,N-ジメチル-4-アミノピリジン(58.4 mg, 0.478 mmol)を室温で加えた。得られた混合物を、アルゴン雰囲気下、室温で2時間撹拌した。
反応混合物に純水(25 mL)を加えた後、酢酸エチル(3×50 mL)で抽出した。合わせた有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥した後、溶媒を減圧留去した。得られた残渣を、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(シリカゲル300 g; ヘキサン:酢酸エチル(1:1))にて精製することによって、(R)−5−オキソピロリジン−1,2−ジカルボン酸ジtert−ブチル(591 mg, 収率quant.)を、黄色液体として得た。生成物の物性測定値は、下記の通りである。
【0041】
(R)−5−オキソピロリジン−1,2−ジカルボン酸ジtert−ブチル
IR (film) 1739,1717 cm
-1.
1H NMR (400 MHz, CDCl
3)δ 4.38 (1 H, dd, J = 2.4, 9.3 Hz), 2.48 (1 H, m), 2.35 (1 H, m), 2.20 (1 H, m), 1.90 (1 H, m), 1.41 (9 H, s), 1.39 (9 H, s).
13C NMR (100 MHz, CDCl
3)δ 173.7, 170.4, 149.3, 83.2, 82.2, 59.6, 31.1, 27.9, 27.8, 21.6.
ESI-HRMS calcd for C
14H
23NO
5 285.1576 (M+H)
+, found, m/z 286.1650.
[α]
25D +33.6 (c 1.00, CHCl
3).
【0042】
(1−5)(R)−2−(tert−ブトキシカルボニルアミノ)−5−(6−(tert−ブチルジメチルシリルオキシ)ベンゾ[d]チアゾール−2−イル)−5−オキソペンタン酸tert−ブチルの調製
【化10】
【0043】
2−ブロモ−6−(tert−ブチルジメチルシリルオキシ)ベンゾ[d]チアゾール(528 mg, 1.53 mmol)を、アルゴン雰囲気下、室温にてテトラヒドロフラン(15.3 mL)に溶解させることによって、溶液Aを調製した。また、(R)−5−オキソピロリジン−1,2−ジカルボン酸ジtert−ブチル(558 mg, 1.96 mmol)を、アルゴン雰囲気下、室温にてテトラヒドロフラン(10 mL)に溶解させることによって、溶液Bを調製した。
このようにして調製した溶液Aに、アルゴン雰囲気下、-78℃にて2.7 Mのn-ブチルリチウムヘキサン溶液(0.63 mL)を加えた後、10分間撹拌した。さらに、得られた混合物に、アルゴン雰囲気下、-78℃にて溶液Bを加えた後、-78℃を保ちながら2時間撹拌した。
反応混合物を室温に戻した後、飽和塩化アンモニウム水溶液 (50 mL)を加え、クロロホルム(3×30 mL)で抽出した。合わせた有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥した後、溶媒を減圧留去した。得られた残渣を、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(シリカゲル200 g; ヘキサン:酢酸エチル(5:1))、その後、ゲル浸透クロマトグラフィーにて精製することによって、(R)−2−(tert−ブトキシカルボニルアミノ)−5−(6−(tert−ブチルジメチルシリルオキシ)ベンゾ[d]チアゾール−2−イル)−5−オキソペンタン酸tert−ブチル(360 mg, 収率43%)を、黄色液体として得た。生成物の物性測定値は、下記の通りである。
【0044】
(R)−2−(tert−ブトキシカルボニルアミノ)−5−(6−(tert−ブチルジメチルシリルオキシ)ベンゾ[d]チアゾール−2−イル)−5−オキソペンタン酸tert−ブチル
IR (film) 1717 cm
-1.
1H NMR (400 MHz, CDCl
3)δ 7.99 (1 H, d, J = 9.2 Hz), 7.34 (1 H, d, J = 2.4 Hz), 7.07 (1 H, dd, J = 2.4, 9.2 Hz), 5.18 (1 H, d, J = 8.0 Hz), 4.30 (1 H, d, J = 6.0 Hz), 3.31 (2 H, m), 2.30 (1 H, m), 2.11 (1 H, m), 1.47 (9 H, s), 1.40 (9 H, s), 1.00 (9 H, s), 0.24 (6 H, s).
13C NMR (100 MHz, CDCl
3)δ 194.3, 171.5, 164.0, 156.1, 155.5, 148.6, 139.1, 126.2, 121.7, 111.9, 82.3, 79.9, 53.6, 34.5, 28.4, 28.1, 27.2, 25.7, 18.4, -4.2.
ESI-HRMS calcd for C
27H
43N
2O
6SSi 550.2533 (M+H)
+, found, m/z 551.2599.
[α]
25D -7.16 (c 1.00, CHCl
3).
【0045】
(1−6)(R)−2−(tert−ブトキシカルボニルアミノ)−5−(6−ヒドロキシベンゾ[d]チアゾール−2−イル)−5−オキソペンタン酸tert−ブチルの調製
【化11】
【0046】
(R)−2−(tert−ブトキシカルボニルアミノ)−5−(6−(tert−ブチルジメチルシリルオキシ)ベンゾ[d]チアゾール−2−イル)−5−オキソペンタン酸tert−ブチル(133 mg, 0.242 mmol)を、アルゴン雰囲気下、室温にてテトラヒドロフラン(3 mL)に溶解した。得られた溶液に、1 Mのフッ化テトラ-n-ブチルアンモニウムのテトラヒドロフラン溶液(1 mL)、酢酸(0.057 mL)、及び、純水(0.018 mL)からなる混合溶液を、アルゴン雰囲気下、室温にて0.3 mL加えた。得られた混合物を、アルゴン雰囲気下、室温で1時間撹拌した。
反応混合物に飽和塩化アンモニウム水溶液(20 mL)を加えた後、酢酸エチル(3×30 mL)で抽出した。合わせた有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥した後、溶媒を減圧留去した。得られた残渣を、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(シリカゲル80 g; ヘキサン:酢酸エチル(1:1))にて精製することによって、(R)−2−(tert−ブトキシカルボニルアミノ)−5−(6−ヒドロキシベンゾ[d]チアゾール−2−イル)−5−オキソペンタン酸tert−ブチル(前駆体1、100 mg, 収率95%)を、黄色固体として得た。生成物の物性測定値は、下記の通りである。
【0047】
(R)−2−(tert−ブトキシカルボニルアミノ)−5−(6−ヒドロキシベンゾ[d]チアゾール−2−イル)−5−オキソペンタン酸tert−ブチル
IR (film) 3322, 1729,1700 cm
-1.
1H NMR (400 MHz, CDCl
3)δ 7.89 (1 H, d, J = 9.0 Hz), 7.30 (1 H, d, J = 2.5 Hz), 7.09 (1 H, dd, J = 2.5, 9.0 Hz), 5.35 (1 H, d, J = 8.0 Hz), 4.28 (1 H, d, J = 5.2 Hz), 3.29 (2 H, m), 2.28 (1 H, m), 2.10 (1 H, m), 1.46 (9 H, s), 1.43 (9 H, s).
13C NMR (100 MHz, CDCl
3)δ 194.0, 171.6, 162.8, 157.1, 156.0, 147.7, 139.4, 126.4, 117.7,106.8, 82.7, 80.9, 53.7, 34.5, 28.4, 28.1, 27.1.
ESI-HRMS calcd for C
21H
28N
2O
6S 436.1668 (M+H)
+, found, m/z 437.1746.
[α]
25D -17.2 (c 1.00, CHCl
3).
【0048】
(2)3−ヒドロキシ−2−(6−ヒドロキシベンゾ[d]チアゾール−2−カルボキシアミド)プロパン酸(前駆体2)の調製
(2−1)6−ヒドロキシベンゾ[d]チアゾール−2−カルボニトリルの調製
【化12】
【0049】
6−メトキシベンゾ[d]チアゾール−2−カルボニトリル(766 mg、4.03 mmol)に、アルゴン雰囲気下、室温にてピリジニウムクロライド(19.5 g)を加えた。得られた混合物を、アルゴン雰囲気下で200℃に加熱することによって塩化ピリジニウムを融解させた後、200℃に保ちながら1時間撹拌した。
反応混合物を室温にまで放冷した後、2 M塩酸(250 mL)を加え、さらに、酢酸エチル(3×100 mL)で抽出した。合わせた有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥した後、溶媒を減圧留去した。得られた残渣を、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(シリカゲル85 g; ヘキサン‐酢酸エチル(1:1))にて精製することによって、6−ヒドロキシベンゾ[d]チアゾール−2−カルボニトリル(710 mg、収率89%)を、白色固体として得た。生成物の物性測定値は、下記の通りである。
【0050】
6−ヒドロキシベンゾ[d]チアゾール−2−カルボニトリル
mp 155-170℃ decomp.
IR(film): 3217, 2228 cm
-1.
1H NMR (400 MHz, CD
3OD)δ 7.94 (1 H, d, J = 6.8 Hz), 7.36 (1 H, d, J = 2.4 Hz), 7.13 (1 H, dd, J = 6.8, 2.4 Hz).
13C NMR (100 MHz, CD
3OD)δ 160.3, 147.3, 139.0, 133.9, 126.6, 119.6, 114.3, 107.0.
ESI-HRMS calcd for C
8H
4N
2OS
176.0044 (M+H)
+, found, m/z 177.0100.
【0051】
(2−2)6−ヒドロキシベンゾ[d]チアゾール−2−カルボン酸メチルの調製
【化13】
【0052】
6−ヒドロキシベンゾ[d]チアゾール−2−カルボニトリル(633 mg、3.59 mmol)のメタノール溶液(50 mL)に、炭酸カリウム(496 mg、3.59 mmol)を室温にて加えた後、得られた混合物を、室温で24時間撹拌した。
反応混合物に2 M塩酸(3 mL)を加えた後、酢酸エチル(3×60 mL)で抽出した。合わせた有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥した後、溶媒を減圧留去した。得られた残渣を、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(シリカゲル100 g; ヘキサン‐酢酸エチル(1:1))にて精製することによって、6−ヒドロキシベンゾ[d]チアゾール−2−カルボン酸メチル(751 mg、収率94%)を、黄色固体として得た。生成物の物性測定値は、下記の通りである。
【0053】
6−ヒドロキシベンゾ[d]チアゾール−2−カルボン酸メチル
mp 197-200℃.
IR(film): 3157, 1739 cm
-1.
1H NMR (400 MHz, CD
3OD)δ 7.95 (1 H, d, J = 8.9 Hz), 7.37 (1 H, d, J = 2.3 Hz), 7.11 (1 H, dd, J = 2.3, 8.9 Hz), 4.01 (3 H, s).
13C NMR (100 MHz, CD
3OD)δ 163.6, 158.7, 155.9, 147.7, 139.3, 125.9, 118.3, 106.3.
ESI-HRMS calcd for C
9H
7NO
3S
209.0147 (M+H)
+, found, m/z 210.0203.
【0054】
(2−3)6−(メトキシメトキシ)ベンゾ[d]チアゾール−2−カルボン酸メチルの調製
【化14】
【0055】
6−ヒドロキシベンゾ[d]チアゾール−2−カルボン酸メチル(284 mg、1.35 mmol)のN,N-ジメチルホルムアミド溶液(5 mL)に、水素化ナトリウム(60 mg、1.50 mmol)とクロロメチルメチルエーテル(510 μL, 6.75 mmol)とを、室温にて加えた。得られた混合物を、室温で30分間撹拌した。
反応混合物に純水(10 mL)を加えた後、酢酸エチル(3×60 mL)で抽出した。合わせた有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥した後、溶媒を減圧留去した。得られた残渣を、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(シリカゲル80 g; ヘキサン‐酢酸エチル(1:1))にて精製することによって、6−(メトキシメトキシ)ベンゾ[d]チアゾール−2−カルボン酸メチル(207 mg、収率61%)を、黄色液体として得た。生成物の物性測定値は、下記の通りである。
【0056】
6−(メトキシメトキシ)ベンゾ[d]チアゾール−2−カルボン酸メチル
IR(film): 1743, 1093 cm
-1.
1H NMR (CDCl
3)δ 8.08 (1 H, d, J = 9.2 Hz), 7.57 (1 H, d, J = 2.5 Hz), 7.23 (1 H, dd, J = 2.5, 9.4 Hz), 5.23(2 H, s), 4.03(3 H, s), 3.48(3 H, s).
13C NMR (CDCl
3)δ 161.2, 157.2, 155.9, 148.5, 138.5, 126.2, 118.7, 106.9, 94.8, 56.3, 53.6.
ESI-HRMS calcd for C
11H
11NO
4S
253.0409 (M+H)
+, found, m/z 254.0486.
【0057】
(2−4)3−ヒドロキシ−2−(6−ヒドロキシベンゾ[d]チアゾール−2−カルボキシアミド)プロパン酸メチルの調製
【化15】
【0058】
6−(メトキシメトキシ)ベンゾ[d]チアゾール−2−カルボン酸メチル(232 mg, 0.91 mmol)のメタノール溶液(10 mL)に、トリエチルアミン (1.8 mL, 12.8 mmol)と、D体またはL体のセリンメチル塩酸塩(1.01 g, 6.39 mmol)とを室温で加えた。得られた混合物を、室温で3日間攪拌した。
反応混合物に2 M塩酸(3 mL)を加えた後、クロロホルム(3×60 mL)で抽出した。合わせた有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥した後、溶媒を減圧留去した。得られた残渣にトリフルオロ酢酸(3 mL)を加え、室温で30分間攪拌した。混合物を減圧濃縮し、得られた残渣を、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(シリカゲル100 g; ヘキサン‐酢酸エチル(1:1))にて精製することによって、3−ヒドロキシ−2−(6−ヒドロキシベンゾ[d]チアゾール−2−カルボキシアミド)プロパン酸メチル(207 mg、収率61%)を、白色固体として得た。生成物の物性測定値は、下記の通りである。
【0059】
3−ヒドロキシ−2−(6−ヒドロキシベンゾ[d]チアゾール−2−カルボキシアミド)プロパン酸メチル
IR(film): 3373, 3262, 1749, 1653 cm
-1.
1H NMR (400 MHz, CD
3OD)δ 7.92 (1 H, d, J = 8.8 Hz), 7.34 (1 H, d, J = 2.4 Hz), 7.07 (1 H, dd, J = 2.4, 8.8 Hz), 4.74 (1 H, t, J = 4.0, 7.2 Hz), 4.05 (1 H, dd, J = 4.0, 7.2 Hz), 3.80 (3 H, s).
13C NMR (100 MHz, CD
3OD)δ 171.8, 162.1, 159.8, 159.6, 147.8, 140.1, 126.2, 117.6, 62.8, 56.4, 53.1.
ESI-HRMS calcd for C
12H
12N
2O
5S
296.0467 (M+H)
+, found, m/z 297.0569.
D: [α]
25D -4.7 (c 1.00, CH
3OH).
L: [α]
25D +6.3 (c 1.00, CH
3OH).
【0060】
(2−5)3−ヒドロキシ−2−(6−ヒドロキシベンゾ[d]チアゾール−2−カルボキシアミド)プロパン酸の調製
【化16】
【0061】
D体またはL体の3−ヒドロキシ−2−(6−ヒドロキシベンゾ[d]チアゾール−2−カルボキシアミド)プロパン酸メチル(12.8 mg, 0.046 mmol)のメタノール溶液(1 mL)に、25 mM水酸化ナトリウム水溶液(5 mL)を室温で加えた。得られた混合物を、室温で25分間攪拌した。
反応混合物に2 M塩酸(0.1 mL)を加えた後、酢酸エチル(3×30 mL)で抽出した。合わせた有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥した後、溶媒を減圧留去することによって、3−ヒドロキシ−2−(6−ヒドロキシベンゾ[d]チアゾール−2−カルボキシアミド)プロパン酸(10.1 mg、収率100%)を、白色固体として得た。生成物の物性測定値は、下記の通りである。
【0062】
3−ヒドロキシ−2−(6−ヒドロキシベンゾ[d]チアゾール−2−カルボキシアミド)プロパン酸
IR(film): 3388, 2942, 1729, 1652 cm
-1.
1H NMR (CD
3OD)δ 7.90 (1 H, d, J = 8.8 Hz), 7.32 (1 H, d, J = 2.4 Hz), 7.04 (1 H, dd, J = 8.8 2.4 Hz), 4.65 (1 H, t, J = 3.4 Hz), 4.05 (1 H, dd, J = 3.4, 11.7 Hz), 3.96 (1 H, dd, J = 3.4, 11.7 Hz).
13C NMR (CD
3OD)δ 171.5, 160.6, 159.1, 157.4, 146.8, 138.7, 124.9, 117.1, 106.1, 61.5, 55.1.
ESI-HRMS calcd for C
11H
10N
2O
5S
282.0310 (M
++H), found, m/z 283.0379.
D: [α]
25D -8.9 (c 1.00, CH
3OH).
L: [α]
25D +10.2 (c 1.00, CH
3OH).
【0063】
[実施例2]環化反応
(1)(R)−2−(tert−ブトキシカルボニルアミノ)−5−(6−ヒドロキシベンゾ[d]チアゾール−2−イル)−5−オキソペンタン酸tert−ブチルからの環化反応
(1−1)酸性条件
【化17】
【0064】
(R)−2−(tert−ブトキシカルボニルアミノ)−5−(6−ヒドロキシベンゾ[d]チアゾール−2−イル)−5−オキソペンタン酸tert−ブチル(前駆体1、20.8 mg, 0.0476 mmol)を、アルゴン雰囲気下、室温にてトリフルオロ酢酸(1 mL)に溶解した。得られた混合物を、アルゴン雰囲気下、室温で24時間撹拌した。
反応混合物を減圧濃縮した後、得られた残渣を、分取薄層逆相シリカゲルカラムクロマトグラフィー(20 cm×20 cm×1.75 mm×1 枚; 純水:メタノール(1:1))にて精製することによって、(R)−5−(6−ヒドロキシベンゾ[d]チアゾール−2−イル)−3,4−ジヒドロ−2H−ピロール−2−カルボン酸(10.3 mg, 収率82%)を、褐色固体として得た。生成物の物性測定値は、下記の通りである。
【0065】
(R)−5−(6−ヒドロキシベンゾ[d]チアゾール−2−イル)−3,4−ジヒドロ−2H−ピロール−2−カルボン酸
IR (film) 3088, 2924, 1677 cm
-1.
1H NMR (400 MHz, CD
3OD)δ 7.91 (1 H, d, J = 9.2 Hz), 7.35 (1 H, d, J = 2.5 Hz), 7.07 (1 H, dd, J = 2.5, 9.2 Hz), 4.96 (1 H, m), 2.51 (1 H, m), 2.29 (1 H, m).
13C NMR (100 MHz, CD
3OD)δ 173.7, 173.4, 158.3, 157.8, 147.2, 138.1, 124.7, 116.9, 106.0, 73.8, 35.1, 26.1.
ESI-HRMS calcd for C
12H
10N
2O
3S 262.0412 (M+H)
+, found, m/z 263.0490.
[α]
25D -26.5 (c 1.00, CH
3OH).
【0066】
(1−2)塩基性条件
【化18】
【0067】
(R)−2−(tert−ブトキシカルボニルアミノ)−5−(6−ヒドロキシベンゾ[d]チアゾール−2−イル)−5−オキソペンタン酸tert−ブチル(前駆体1、20.8 mg, 0.0476 mmol)を、アルゴン雰囲気下、室温にて4 M塩酸の酢酸エチル溶液(500μL)に溶解した。得られた溶液を、アルゴン雰囲気下、室温で24時間撹拌した。反応混合物のTLC分析(逆相(RP-18), 水:メタノール(1:2))を行った結果、この時点で、脱保護体と目的物である環化体((R)−5−(6−ヒドロキシベンゾ[d]チアゾール−2−イル)−3,4−ジヒドロ−2H−ピロール−2−カルボン酸)とが生成していた(脱保護体: Rf値原点付近、UV照射陽性、ニンヒドリン呈色陽性。環化体: Rf値=0.7付近、UV照射陽性、ニンヒドリン呈色陰性)。
反応混合物を減圧濃縮した後、得られた残渣をメタノールに溶解した(1.0 mL)。得られた溶液に、N,N-ジメチル-4-アミノピリジン、トリエチルアミン、または、水酸化ナトリウムのいずれかの塩基を室温にて3等量加え、室温のまま30分間撹拌した。この結果、いずれの場合においても、脱保護体、環化体共に化合物は分解してしまい、目的物である環化体を得ることはできなかった。
【0068】
(2)3−ヒドロキシ−2−(6−ヒドロキシベンゾ[d]チアゾール−2−カルボキシアミド)プロパン酸からの環化反応
【化19】
【0069】
(2−1)トリフルオロ酢酸
D体またはL体の3−ヒドロキシ−2−(6−ヒドロキシベンゾ[d]チアゾール−2−カルボキシアミド)プロパン酸(3.4 mg、0.0081 mmol)のジクロロメタン溶液(2 ml)に、アルゴン雰囲気下、0℃でトリフルオロ酢酸(10 μl)を加えた後、得られた混合物を0℃で30分間撹拌した。
反応混合物のTLC分析を行った結果、化合物は分解してしまい、D体及びL体のいずれの前駆体2からも、目的物である環化体を得ることはできなかった。
【0070】
(2−2)ジエチルアミノ硫黄トリフルオリド
D体またはL体の3−ヒドロキシ−2−(6−ヒドロキシベンゾ[d]チアゾール−2−カルボキシアミド)プロパン酸(2.8 mg、0.0067 mmol)に、アルゴン雰囲気下、7 mMジエチルアミノ硫黄トリフルオリドのジクロロメタン溶液(2 ml)を室温にて加えた。得られた混合物を、90度にまで加熱し、この温度を保ちながら30分間攪拌した。
反応混合物のTLC分析を行った結果、化合物は分解してしまい、D体及びL体のいずれの前駆体2からも、目的物である環化体を得ることはできなかった。
【0071】
(2−3)塩酸
D体またはL体の3−ヒドロキシ−2−(6−ヒドロキシベンゾ[d]チアゾール−2−カルボキシアミド)プロパン酸(5.4 mg、0.012 mmol)のジクロロメタン溶液(2 ml)に、アルゴン雰囲気下、2 M塩酸水溶液(50μL)を0℃にて加えた後、0℃を保ちながら30分間撹拌した。
反応混合物のTLC分析を行った結果、化合物は分解してしまい、D体及びL体のいずれの前駆体2からも、目的物である環化体を得ることはできなかった。
【0072】
[実施例3]発光強度及び波長の測定
(1)溶液の調製
発光強度及び波長を測定するに当たって、まず、以下の4つの溶液を調製した。
溶液1:pH 6の50 mMリン酸カリウム緩衝液に、(R)−2−(tert−ブトキシカルボニルアミノ)−5−(6−ヒドロキシベンゾ[d]チアゾール−2−イル)−5−オキソペンタン酸tert−ブチル(前駆体1)、3−ヒドロキシ−2−(6−ヒドロキシベンゾ[d]チアゾール−2−カルボキシアミド)プロパン酸(前駆体2、D体を使用)、(R)−5−(6−ヒドロキシベンゾ[d]チアゾール−2−イル)−3,4−ジヒドロ−2H−ピロール−2−カルボン酸(環化体)、または、ホタルルシフェリンである基質を、100μMの濃度で溶解した溶液
溶液2:MgとATPとを、それぞれ200μMの濃度で含有する水溶液
溶液3:pH 8の500 mMリン酸カリウム緩衝液
溶液4:35%の濃度でグリセリンを含有するpH 8の50 mMリン酸カリウム緩衝液に、ホタルルシフェラーゼ(Photinus pyralis(ホタル)由来、Sigma-Aldrich社製またはPromega社製の組換え型)を10μg/mLの濃度で溶解した溶液
【0073】
(2)発光強度の測定
溶液1、3及び4を20μLずつ量り取り、均一に混合した後、測定機(アトー株式会社製ルミネッセンサーAB-2270-R)に入れた。測定機内の混合溶液に、暗下で溶液2を40μL加えることによって発光させ、この発光強度を測定した。
ホタルルシフェリンの発光強度を1とした場合の、他の各基質の発光強度の測定結果を、表1に示す。
【表1】
【0074】
表1が示すように、前駆体1及び2は、発光強度比において、バックグラウンドと有意な差がなく発光が観測されなかったのに対し、環化体は、バックグラウンドに対して非常に高い値を示し、ホタルルシフェリン誘導体の中でも強い光を発することが観測された。
【0075】
(3)発光波長の測定
上記「(2)発光強度の測定」において発光が観察された、環化体とホタルルシフェリンとについて、それぞれの発光波長を測定した。方法は、以下の通りである。
「(2)発光強度の測定」で調製した溶液1、3及び4を4.0μLずつ量り取り、均一に混合した後、測定機(アトー株式会社製微弱発光蛍光スペクトル測定装置AB‐1850)に入れた。測定機内の混合溶液に、暗下で溶液2を8.0μL加えることによって発光させ、この発光波長を測定した。
結果を、
図1に示す。なお、規格化強度は、環化体とホタルルシフェリンとのそれぞれについて、極大発光波長の強度を1とすることによって求めた。
【0076】
[実施例4]安定性の測定
(R)−5−(6−ヒドロキシベンゾ[d]チアゾール−2−イル)−3,4−ジヒドロ−2H−ピロール−2−カルボン酸(環化体)とホタルルシフェリンとの安定性を比較するべく、これら各化合物(5.0 mg)を、表2に示す溶媒(500μL)及び試薬(各化合物に対して約3等量)中で、空気存在下、室温にて1時間攪拌し、攪拌後に化合物が残存しているか、または、分解しているかを測定した。
結果を、表2に示す。例えば、「100%」と記載されている場合には、化合物が分解・変換などされることなく、元の化合物のまま100%回収できたことを示し、また、「分解」と記載されている場合には、化合物が分解・変換などされることによって、元の化合物が全く回収されなかったことを示す。
【表2】
【0077】
この結果、ホタルルシフェリンは、いずれのpH及び溶媒であっても容易に分解し不安定であるのに対し、環化体は、強酸〜中性領域において、水及び有機溶媒のいずれの中でも、全く分解せず極めて安定であることが示された。