(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記一方の半割スラスト軸受の、前記クランク軸の回転方向後方側の前記スラストリリーフの周方向端面におけるスラストリリーフ深さと、前記他方の半割スラスト軸受の、前記クランク軸の回転方向前方側の前記スラストリリーフの周方向端面におけるスラストリリーフ深さとが、前記一対の半割スラスト軸受の前記周方向端面同士の突合せ部の径方向の全長に亘って互いに一致していることを特徴とする請求項1に記載のスラスト軸受。
前記各スラストリリーフの前記周方向端面におけるスラストリリーフ深さが、該スラストリリーフの径方向の全長に亘って一定であることを特徴とする請求項1又は2に記載のスラスト軸受。
前記各スラストリリーフの前記周方向端面におけるスラストリリーフ深さが、該スラストリリーフの内側端部で最大であり、外側端部へ向かって浅くなっていることを特徴とする請求項1又は2に記載のスラスト軸受。
前記各半割スラスト軸受の少なくとも前記クランク軸の回転方向後方側の前記スラストリリーフが、2つの平面部、2つの曲面部、又は平面部及び曲面部からなることを特徴とする請求項1から5までのいずれか一項に記載のスラスト軸受。
前記各半割スラスト軸受の前記クランク軸の回転方向後方側の前記スラストリリーフが、前記半割スラスト軸受の周方向端面と隣接する第1曲面部と、前記摺動面と隣接する平面部とからなり、前記第1曲面部は、径方向から見て、摺動面側から背面側に向かって凸状の曲面であることを特徴とする請求項7に記載のスラスト軸受。
前記各半割スラスト軸受の前記クランク軸の回転方向後方側の前記スラストリリーフが、前記半割スラスト軸受の周方向端面と隣接する第1曲面部と、前記摺動面と隣接する第2曲面部とからなり、前記第1曲面部は、径方向から見て、摺動面側から背面側に向かって凸状の曲面であり、また前記第2曲面部は、前記背面側から前記摺動面側に向かって凸状の曲面であることを特徴とする請求項7に記載のスラスト軸受。
前記各半割スラスト軸受の、前記クランク軸の回転方向後方側の前記スラストリリーフは、内側端部におけるスラストリリーフ長さが、前記半割軸受の対応する軸線方向端部における前記クラッシュリリーフのクラッシュリリーフ長さよりも大きくなるように形成されていることを特徴とする請求項10に記載の軸受装置。
前記クランク軸の回転方向後方側の前記スラストリリーフの内側端部におけるスラストリリーフ長さをL2とし、前記半割軸受の対応する軸線方向端部における前記クラッシュリリーフのクラッシュリリーフ長さをCLとしたとき、式:L2≧CL×1.5を満たすことを特徴とする請求項11に記載の軸受装置。
前記各半割スラスト軸受の、前記クランク軸の回転方向前方側の前記スラストリリーフは、内側端部におけるスラストリリーフ長さが、前記半割軸受の対応する軸線方向端部における前記クラッシュリリーフのクラッシュリリーフ長さよりも小さくなるように形成されていることを特徴とする請求項11又は12に記載の軸受装置。
前記クランク軸の回転方向前方側の前記スラストリリーフの内側端部におけるスラストリリーフ長さをL1とし、前記半割軸受の対応する軸線方向端部における前記クラッシュリリーフのクラッシュリリーフ長さをCLとしたとき、式:L1≦CL×1.5を満たすことを特徴とする請求項13に記載の軸受装置。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
【実施例1】
【0017】
(軸受装置の全体構成)
まず、
図1、4及び5を用いて本発明のスラスト軸受10を有する軸受装置1の全体構成を説明する。
図1、4及び5に示すように、シリンダブロック2の下部に軸受キャップ3を取り付けて構成された軸受ハウジング4には、両側面間を貫通する円形孔である軸受孔5が形成されており、側面における軸受孔5の周縁には円環状凹部である受座6、6が形成されている。軸受孔5には、一方向に回転するクランク軸のジャーナル部11を回転自在に支承する半割軸受7、7が円筒状に組み合わされて嵌合される。受座6、6には、クランク軸のスラストカラー12を介して軸線方向力f(
図5参照)を受ける半割スラスト軸受8、8が円環状に組み合わされて嵌合される。
【0018】
図4に示すように、主軸受を構成する半割軸受7のうち、シリンダブロック2側(上側)の半割軸受7の内周面には潤滑油溝71が形成され、潤滑油溝71から外周面に貫通する貫通孔72が形成されている(
図18及び19も参照)。なお、潤滑油溝は、上下両方の半割軸受に形成することもできる。
【0019】
また半割軸受7には、半割軸受7同士の当接面に隣接して、両端にクラッシュリリーフ73、73が形成されている(
図4参照)。クラッシュリリーフ73は、半割軸受7の周方向端面に隣接する領域の壁厚が、周方向端面に向かって徐々に薄くなるように形成された壁厚減少領域である。クラッシュリリーフ73は、一対の半割軸受7、7を組み付けたときの突合せ面の位置ずれや変形を吸収することを企画して形成される。
【0020】
(スラスト軸受の構成)
次に、
図2〜5を用いて実施例1のスラスト軸受10の構成について説明する。本実施例1のスラスト軸受10は、一対の半割スラスト軸受8を組み合わせて円環形状となる。半割スラスト軸受8は、鋼製の裏金層に薄い軸受合金層を接着させたバイメタルによって、半円環形状の平板に形成される。半割スラスト軸受8は、中央の領域に軸受合金層によって構成された表面である摺動面81(軸受面)と、周方向両側の端面83、83に隣接する領域にスラストリリーフ82R、82Fとを備えている。摺動面81には、潤滑油の保油性を高めるために、両側のスラストリリーフ82R、82Fの間に2つの油溝81a、81aが形成されている。
【0021】
スラストリリーフ82R、82Fは、摺動面81の周方向両側の端面に隣接する領域に、端面に向かって徐々に壁厚が薄くなるように形成される壁厚減少領域であり、半割スラスト軸受8の周方向端面83の径方向全長に亘って形成される。スラストリリーフ82R、82Fは、半割スラスト軸受8を分割型の軸受ハウジング4内に組み付けた際の、各分割型軸受ハウジング2、3の端面同士の位置ずれ等に起因する、一対の半割スラスト軸受8、8の周方向端面83、83同士の位置ずれを緩和するために形成される。
【0022】
実施例1において、スラストリリーフ82R、82Fの表面は平面から構成されているが、曲面から構成することもできる。平面である場合、表面は単一の平面から構成されることができ、又は複数の平面を組み合わせて構成されていてもよい。曲面の場合にも、表面は単一の曲面から構成されることができ、又は複数の曲面を組み合わせて構成されていてもよい。さらに、スラストリリーフ82R、82Fの表面は、平面と曲面を組み合わせて(
図11)構成されていてもよい。
【0023】
図2及び4から理解されるように、本実施例の半割スラスト軸受8が軸受装置1の軸受ハウジング4に組み付けられたとき、一方向に回転するクランク軸の回転方向後方側に位置するように組み付けられる周方向端面83側のスラストリリーフ82R(以下、「後方側スラストリリーフ」と称する)の内側端部でのスラストリリーフ長さL2は、クランク軸の回転方向前方側に位置する周方向端面83側のスラストリリーフ82F(以下、「前方側スラストリリーフ」と称する)の内側端部でのスラストリリーフ長さL1と異なり、より長く形成されている。なお、実施例1では、後方側スラストリリーフ82Rのスラストリリーフ長さ及び前方側スラストリリーフ82Fのスラストリリーフ長さは、内側端部と外側端部の間で一定となるよう形成されている。
【0024】
ここで「スラストリリーフ長さ」とは、1つの半割スラスト軸受8の両端面83、83を通る平面(仮想分割面H)から垂直方向に測ったスラストリリーフの他端までの長さを意味する。より具体的には、内側端部でのスラストリリーフ長さL1、L2は、スラストリリーフ82F、82Rの表面が、摺動面81の内周縁と交わる点までの長さで定義される。
【0025】
また「クランク軸の回転方向後方側のスラストリリーフ」とは、1つの半割スラスト軸受8に着目した場合に、周方向両端部にあるスラストリリーフのうち、回転するクランク軸のスラストカラー12上の任意の点が最初に通過するスラストリリーフ82Rのことを意味し、また「クランク軸の回転方向前方側のスラストリリーフ」とは、任意の点が2番目に通過するスラストリリーフ82Fのことを意味する。
ところで、内燃機関のクランク軸は、運転時には一方向に回転する。このため当業者であれば、クランク軸の回転方向を考慮し、半割スラスト軸受の周方向両端面に隣接する2つのスラストリリーフのうち、どちらが「クランク軸の回転方向後方側のスラストリリーフ」であるか認定することができよう。また当業者であれば、本発明の開示にしたがって本発明のスラスト軸受10を設計、製造し、これを一方向に回転するクランク軸を支承する軸受装置に組み付けることが可能である。
【0026】
図3は、一対の半割スラスト軸受8の周方向端面83、83同士の突合せ部近傍を内側(
図2のY1矢視方向)から見た側面を示す。なお、
図2に示す一対の半割スラスト軸受8の紙面右側の周方向端面83、83同士の突合せ部近傍もまた、
図3と同様の構成である。
【0027】
摺動面81の部分において、半割スラスト軸受8の厚さは一定であり、
図3に示すように一対の半割スラスト軸受8、8は、摺動面81の部分で同じ厚さtを有している。半割スラスト軸受8の前方側スラストリリーフ82Fの表面及び後方側スラストリリーフ82Rの表面の周方向端面におけるスラストリリーフ深さRD(
図3)は同一である。また実施例1では、前方側スラストリリーフ82F及び後方側スラストリリーフ82Rの周方向端面におけるスラストリリーフ深さRDは、内側端部と外側端部の間で一定である。
【0028】
ここで、「スラストリリーフ深さ」とは、半割スラスト軸受8の摺動面81を含む平面からスラストリリーフの表面までの軸線方向距離を意味する。換言すれば、スラストリリーフ深さは、摺動面81をスラストリリーフ82F、82R上まで延長して仮想摺動面とした場合に仮想摺動面から垂直に測った距離である。したがって周方向端面におけるスラストリリーフ深さRDは、半割スラスト軸受8の周方向端面におけるスラストリリーフの表面から仮想摺動面までの軸線方向距離として定義される。
【0029】
前方側スラストリリーフ82F、及び後方側スラストリリーフ82Rの具体的な寸法として、乗用車用等の小型内燃機関のクランク軸(ジャーナル部の直径が30〜100mm程度)に使用する場合、例えば半割スラスト軸受8の周方向端面83、83における摺動面81から前方側スラストリリーフ82F及び後方側スラストリリーフ82Rまでのスラストリリーフ深さRDは0.3mm〜1.0mmとすることができる。なお、前方側スラストリリーフ82Fと後方側スラストリリーフ82Rは、同じスラストリリーフ深さRDを有している。また、前方側スラストリリーフ82Fの内側端部でのスラストリリーフ長さL1は1mm〜5mmとすることができ、また後方側スラストリリーフ82Rの内側端部でのスラストリリーフ長さL2は5mm〜25mmとすることができる。なお、上述の寸法は一例に過ぎず、それぞれの寸法はこれらの範囲に限定されない。
【0030】
上述の前方側スラストリリーフ82Fのスラストリリーフ長さL1と後方側スラストリリーフ82Rのスラストリリーフ長さL2の数値は、範囲が一部重複している。しかし、これは軸受のサイズが大きくなるほどスラストリリーフ長さを大きくする必要があるからであり、したがってスラストリリーフ長さL1及びL2は、それぞれの数値範囲内で、L2>L1を満たすべきである。
【0031】
また、
図7に示すように、後方側スラストリリーフは、半割スラスト軸受8の周方向端面83から円周角度θ1で25°以下の範囲内に形成され、また一対の後方側スラストリリーフ及び前方側スラストリリーフは、円周角度θ2で30°以下の範囲に形成されることが好ましい。
【0032】
(作用)
次に、
図4、5、17A及び17Bを用いて、本実施例のスラスト軸受10の作用を説明する。
【0033】
(給油作用)
軸受装置1において、オイルポンプ(図示せず)から加圧されて吐出された潤滑油は、シリンダブロック2の内部油路から半割軸受7の壁を貫通する貫通孔72を通り、半割軸受7の内周面の潤滑油溝71に供給される。潤滑油溝71内に供給された潤滑油は、一部は半割軸受7の内周面に供給され、一部はジャーナル部表面に設けたクランク軸の内部油路のための開口(図示せず)を通ってクランクピン側へ送られ、また他の一部は主軸受を構成する一対の半割軸受7、7のクラッシュリリーフ73表面とクランク軸のジャーナル部11の表面との間の隙間を通って、半割軸受7、7の軸線方向両端から外部へ流出する。
【0034】
本実施例において、半割軸受7は半割スラスト軸受8と同心に配置され、且つ主軸受を構成する半割軸受7の周方向両端面を含む平面は、半割スラスト軸受8の周方向両端面を含む平面と平行になされ、それによりクラッシュリリーフ73の位置とスラストリリーフ82F、82Rの位置とが対応している。
【0035】
以下、本発明の作用について説明する。
【0036】
半割軸受7のクラッシュリリーフ隙間から外部へ流出した直後の潤滑油は、回転するクランク軸のジャーナル部の表面に付随して周方向に流れていたため、クランク軸11の回転方向の前方側へ移動しようとする慣性力により、
図17A及び17Bに示すように一方の半割スラスト軸受8の周方向端面と他方の半割スラスト軸8の周方向端面の突合せ部(当接部)の位置より、クランク軸の回転方向前方側へ向かって流れる(破線矢印)。
【0037】
本実施例のスラスト軸受10は、一対の半割スラスト軸受8、8を有し、半割スラスト軸受8の後方側スラストリリーフ82Rのスラストリリーフ長さL2が前方側スラストリリーフ82Fのスラストリリーフ長さL1よりも長い。この構成によれば、一方の半割スラスト軸受8の前方側スラストリリーフ82Fの表面と、他方の半割スラスト軸受8の後方側スラストリリーフ82R表面と、摺動面81を前方側スラストリリーフ82F表面及び後方側スラストリリーフ82R表面上まで延長してできる仮想摺動面とによって囲まれるスラストリリーフ隙間S(
図17B参照)の内側端部における長さの中央が、一方の半割スラスト軸受8の周方向端面83と他方の半割スラスト軸8の周方向端面83の突合せ部(当接部)よりクランク軸11の回転方向前方側に位置する。このため半割軸受7のクラッシュリリーフ隙間から流出し、一対の半割スラスト軸受8の周方向端面83、83同士の突合せ部(当接部)の位置よりもクランク軸11の回転方向前方側へ向かって流れる潤滑油はスラストリリーフ隙間Sに多量に流入し、摺動面81へ送られることができる。
【0038】
内燃機関の運転時、特にクランク軸が高速回転する運転条件ではクランク軸に撓み(軸線方向の撓み)が発生してクランク軸の振動が大きくなり、この大きな振動によって、クランク軸にはスラスト軸受10の摺動面81へ向かう軸線方向力fが周期的に発生する。スラスト軸受10の摺動面81は、この軸線方向力fを受ける。
【0039】
本発明のスラスト軸受10は、クランク軸の軸線方向力fが作用しても、上述のように一対の半割軸受7のクラッシュリリーフ隙間から流出した潤滑油は、スラスト軸受10の回転前方側スラストリリーフ82Fと回転後方側スラストリリーフ82Rにより形成されるスラストリリーフ隙間Sに多量に流入しやすく、この多量の潤滑油が摺動面81へ送られる。スラスト軸受10の摺動面81は、多量の潤滑油が供給されることで、クランク軸のスラストカラー12面と直接に接触しにくくなる。
【0040】
本実施例のスラスト軸受10を構成する一対の半割スラスト軸受8は、後方側スラストリリーフ82Rのスラストリリーフ長さL2が前方側スラストリリーフ82Fのスラストリリーフ長さL1よりも大きい。本実施例のこの構成を、従来の周方向両端部に同じ長さのスラストリリーフを形成したスラスト軸受の構成と対比して説明すると、従来のスラスト軸受を構成する一対の半割スラスト軸受の同じ長さであるスラストリリーフによるスラストリリーフ隙間の径方向内側端部における長さの中央は、一対の半割スラスト軸受の周方向端面同士の突合せ部(当接部)に位置するが、本実施例の構成では、スラストリリーフ隙間Sの径方向内側端部における長さの中央が、周方向端面同士の突合せ部(当接部)よりもクランク軸の回転方向前方側に偏移されており、しかし摺動面81の面積の減少を伴わない。このため本発明のスラスト軸受10は、クランク軸の軸線方向の負荷を受ける(支える)能力も高いままである。これに対し、従来のスラスト軸受の構成の場合、主軸受(半割軸受)のクラッシュリリーフ隙間から流出した潤滑油の流入量を多くするために半割スラスト軸受の周方向両側のスラストリリーフの長さを大きくすると、スラスト軸受の摺動面の面積の減少を伴い、したがってスラスト軸受のクランク軸の軸線方向の負荷を受ける能力が低下する。
【0041】
また本実施例のスラスト軸受10を構成する一対の半割スラスト軸受8、8は、前方側スラストリリーフ82F及び後方側スラストリリーフ82Rの周方向端面でのスラストリリーフ深さRDがともに最大であり、且つ周方向端面83,83の径方向の全長に亘って一致する(したがって段差が発生しない)ように、周方向端面で互いに対応する厚さを有している。このため、一対の半割スラスト軸受8、8を分割型の軸受ハウジング4内に組み付けた際の各分割型軸受ハウジング2、3の端面同士の位置ずれ等に起因する、一対の半割スラスト軸受8、8の周方向端面83、83同士の位置ずれを緩和するというスラストリリーフの本来の作用が影響を受けることはない。
【実施例2】
【0042】
以下、
図6を用いて、実施例1とは別の形態の前方側スラストリリーフ82F及び後方側スラストリリーフ82Rをそれぞれ備える一対の半割スラスト軸受8Aから構成されるスラスト軸受10Aについて説明する。なお、実施例1で説明した内容と同一又は均等な部分の説明については同一符号を付して説明する。
【0043】
(構成)
まず、構成について説明する。本実施例のスラスト軸受10Aの構成は、スラスト軸受10Aを構成する一対の半割スラスト軸受8Aの前方側スラストリリーフ82F及び後方側スラストリリーフ82Rの形状を除いて、実施例1と概ね同様である。
【0044】
具体的には、本実施例の半割スラスト軸受8Aの後方側スラストリリーフ82Rの表面は平面によって構成されており、
図6に示すように、スラストリリーフ長さL2は、径方向の内側端部で最小(L2I)であり、外側端部で最大(L2O)となるように構成されている。前方側スラストリリーフ82Fの表面もまた平面によって構成され、
図6に示すように、スラストリリーフ長さL1が径方向の内側端部で最大(L1I)であり、外側端部で最小(L1O)となるように構成されている。
【0045】
一方、他の関係、例えば内側端部におけるスラストリリーフ長さL1Iと長さL2Iの関係や、前方側スラストリリーフのスラストリリーフ深さRDと後方側スラストリリーフのスラストリリーフ深さRDの関係は実施例1と同様である。
【0046】
実施例2のこの他の構成は実施例1と概ね同様であり、したがって実施例1と同様の作用効果を有している。
【実施例3】
【0047】
以下、
図7〜9を用いて、実施例1及び2とは別の実施形態の前方側スラストリリーフ82F及び後方側スラストリリーフ82Rをそれぞれ備える一対の半割スラスト軸受8Bから構成されるスラスト軸受10Bについて説明する。なお、実施例1及び2で説明した内容と同一又は均等な部分の説明については同一符号を付して説明する。
【0048】
(構成)
まず、構成について説明する。実施例3のスラスト軸受10Bの構成は、スラスト軸受10Bを構成する一対の半割スラスト軸受8Bの前方側スラストリリーフ82F及び後方側スラストリリーフ82Rの形状を除いて、実施例1と概ね同様である。
【0049】
具体的には、本実施例の半割スラスト軸受8Bは、後方側スラストリリーフ82Rの表面が平面によって構成され、また
図7に示すように、スラストリリーフ長さL2が、径方向の内側端部において最小で、外側端部で最大となるように構成されている。前方側スラストリリーフ82F表面もまた平面によって構成されており、そして
図7に示すようにスラストリリーフ長さが径方向の内側端部において最小で、外側端部で最大となるように構成されている。
【0050】
図8は、
図7の矢視Y2方向から見た上側の半割スラスト軸受8Bのクランク軸の回転方向後方側の周方向端面83を示し、
図9は、
図7の矢視Y3方向から見た下側の半割スラスト軸受8Bのクランク軸の回転方向前方側の周方向端面83を示す。本実施例の半割スラスト軸受8Bでは、実施例1及び2と異なり、
図8及び9に示すように後方側のスラストリリーフ82R及び前方側のスラストリリーフ82Fは、周方向端面83、83において、摺動面81からのスラストリリーフ深さRDが、内側端部で最大(RD1)で、外側端部で最小(RD2)である。この場合も、前方側スラストリリーフ82F及び後方側スラストリリーフ82Rのスラストリリーフ深さRDは、周方向端面83の径方向の全長に亘って互いに整合するようになされている。なお、
図7に示す上側のスラスト軸受8Bの前方側のスラストリリーフ82F及び下側の半割スラスト軸受8Bの後方側のスラストリリーフ82Rも同様の構成である。
【0051】
スラストリリーフ82R、82Fの具体的な寸法として、乗用車用等の小型内燃機関のクランク軸(ジャーナル部の直径が30〜100mm程度)に使用する場合、スラストリリーフ82R、82Fの内側端部でのスラストリリーフ深さRD1、並びにスラストリリーフ長さL1及び長さL2は、実施例1と同様であり、一方、外側端部でのスラストリリーフ深さRD2は、0.15〜0.5mmとすることができる。しかし、上述の寸法は一例に過ぎず、これらの範囲に限定されない。
【0052】
なお、実施例3では、スラストリリーフ82R、82Fに流入した潤滑油が、スラストリリーフ82R、83Fの径方向の外側端部から外部へ流出し難くなり、摺動面へ供給されやすくなる。他の構成は、実施例1と概ね同様であり、実施例1と同様の作用効果を有する。
【実施例4】
【0053】
以下、
図10〜12を用いて、実施例1〜3とは別の形態の前方側スラストリリーフ82Fと後方側スラストリリーフ82Rを備える一対の半割スラスト軸受8Cから構成されるスラスト軸受10Cについて説明する。なお、実施例1〜3で説明した内容と同一又は均等な部分の説明については同一符号を付して説明する。
【0054】
(構成)
まず、構成について説明する。本実施例のスラスト軸受10Cの構成は、スラスト軸受10Cを構成する一対の半割スラスト軸受8Cの前方側スラストリリーフ82F及び後方側スラストリリーフ82Rの形状を除いて、実施例1と概ね同様である。
図11は、半割スラスト軸受8Cのクランク軸の回転方向後方側の周方向端面83付近を、内側(
図10のY4矢視方向)から見た側面を示し、
図12は、半割スラスト軸受8Cのクランク軸の回転方向の前方側の周方向端面83付近を、内側(
図10のY4矢視方向)から見た側面を示す。
【0055】
実施例4の半割スラスト軸受8Cでは、
図10に示されるように、後方側スラストリリーフ82Rの表面は、摺動面81側に隣接する平面と、半割スラスト軸受8Cの周方向端面83に隣接し且つ摺動面81側から反対面(背面)側に向かって凹状に窪んでいる曲面(円弧面)とによって構成されており、スラストリリーフ長さL2は、内側端部において最小(L2I)で、外側端部へ向かって長くなるように構成されている。
また前方側スラストリリーフ82Fの表面は、摺動面81側から反対面(背面)側に向かって凹状に窪んでいる曲面(円弧面)によって構成され、またスラストリリーフ長さL1は、
図10に示すように、内側端部と外側端部との間で一定に構成されている。
【0056】
内側端部において、後方側スラストリリーフ82Rのスラストリリーフ長さL2と前方側スラストリリーフのスラストリリーフ長さL1の関係については、実施例1と同様である。
前方側スラストリリーフ82Fの周方向端面83でのスラストリリーフ深さRD及び後方側スラストリリーフ82Rの周方向端面83でのスラストリリーフ深さRDは、スラストリリーフの径方向の全長に亘って一定であり、また互いに整合するようになされている。なお、
図10の右側に示される前方側スラストリリーフ82F及び後方側スラストリリーフ82Rも同様の構成である。
【0057】
図11に示す後方側スラストリリーフ82Rの曲面部の長さL2’(半割スラスト軸受8Cの周方向端面83を含む平面から垂直方向に測った長さ)は、
図12に示す前方側スラストリリーフ82Fのスラストリリーフ長さL1と概ね同じになされ、且つ内径端部と外径端部の間で一定である。後方側スラストリリーフ82Rの曲面部の内側端部における長さL2’は0.5〜3.5mmとすることができる。
後方側スラストリリーフ82Rの曲面部は、平面部と接続する位置での摺動面81からの深さRD’がスラストリリーフの径方向の全長に亘って一定となるよう形成されている。後方側スラストリリーフ82Rの曲面部の、平面部と接続する位置での摺動面81からの深さRD’は0.005mm〜0.1mmであることが好ましい。
【0058】
図11及び12に示すように、後方側スラストリリーフ82Rの曲面部と前方側スラストリリーフの曲面は、同じ曲率半径Rの円弧面とすることができる。しかし、後方側スラストリリーフ82Rの曲面部及び前方側スラストリリーフの曲面は、これに限定されず、楕円弧面や自由曲面であってもよい。
【0059】
後方側スラストリリーフ82Rの曲面部の長さL2’は、本実施例に限定されず、曲面部の長さが半割スラスト軸受の内側端部から外側端部へ向かって長くなるように、又は短くなるように構成されていてもよい。
また、
図11に示す後方側のスラストリリーフ82Rの摺動面81側の平面部は、
図13に示すように背面側から摺動面側81に向かって凸状に隆起する曲率半径R2の曲面に変えてもよい。なお、
図11では曲率半径R2の円弧面を示したが、これに限定されず、楕円弧面や自由曲面であってもよいことが理解されよう。
【0060】
同様に、
図11又は13に示す後方側のスラストリリーフ82Rの周方向端面83に隣接する曲面部は、平面に変更してもよい。さらに、後方側スラストリリーフ82Rの周方向端面83と隣接する曲面部又は平面部は、摺動面81側の曲面部又は平面部と接続する位置での摺動面81からの深さRD’が半割スラスト軸受8Cの内側端部から外側端部に向かって深くなるように、又は浅くなるように構成することもできる。
【0061】
なお、前方側スラストリリーフ82Fの表面は、後方側スラストリリーフ82Rの周方向端面83に隣接する曲面部又は平面部と同様に構成されることが好ましい。
【実施例5】
【0062】
次に、
図2〜5、18及び19を用いて、本発明のスラスト軸受を備える軸受装置1について説明する。なお、上記実施例で説明した内容と同一又は均等な部分の説明については同一の符号を付して説明する。
【0063】
本実施例では、実施例1で説明したスラスト軸受10を備える軸受装置1について説明するが、これに限定されることなく、実施例2〜4のスラスト軸受10A〜10Cを備える軸受装置1であっても以下と同様の作用効果を有することに留意すべきである。
【0064】
図4及び
図5に示すように、本実施例の軸受装置1は、シリンダブロック2と軸受キャップ3とを有する軸受ハウジング4と、クランク軸のジャーナル部11を回転自在に支承する2つの半割軸受7、7と、クランク軸のスラストカラー12を介して軸線方向力を受ける2つのスラスト軸受10(4つの半割スラスト軸受8)とを有している。
【0065】
軸受ハウジング4を構成するシリンダブロック2及び軸受キャップ3には、それらの接合箇所に、一対の半割軸受7、7を保持する保持孔としての軸受孔5が貫通形成されている。
【0066】
半割軸受7は、内周面の周方向両端部にクラッシュリリーフ73、73を備えている。またシリンダブロック2の側に配置される半割軸受7は、
図18及び19に示すように幅方向(軸線方向)の中央近傍に周方向に沿って形成された潤滑油溝71と、内周面側の潤滑油溝71から外周面に貫通する貫通孔72とを有している。
【0067】
一対の半割軸受7、7の軸線方向の各側には、一対の半割スラスト軸受8、8からなるスラスト軸受10が配設される。半割スラスト軸受8は半円環形状に形成され、半割軸受7の外径と半割スラスト軸受8の外径とは略同心に配置され、また半割軸受7の周方向両端面を通る水平面と半割スラスト軸受8の周方向両端面を通る水平面とは略平行に配設される。
【0068】
したがって、
図4に示すように、半割軸受7のクラッシュリリーフ73と半割スラスト軸受8のスラストリリーフ82とは一対一で対応している。
【0069】
実施例1で説明したように、半割スラスト軸受8においては、後方側スラストリリーフ82Rの内側端部のスラストリリーフ長さL2が、前方側スラストリリーフ82Fの内側端部のスラストリリーフ長さL1よりも大きくなれている。
このため、本実施例では、
図4に示すように、一対のスラスト軸受8の周方向端面同士の突合せ部に前方側スラストリリーフ82Fと後方側スラストリリーフ82Rによって形成されるスラストリリーフ隙間S(スラスト軸受10の径方向内側から見たときの前方側スラストリリーフ82Fの表面と、後方側スラストリリーフ82Rの表面と、摺動面81の仮想延長面とによって囲まれる隙間)の内側端部での長さの中央位置は、一対の半割軸受7のクラッシュリリーフ73の表面と半割軸受7の内周面75の仮想延長面とによって囲まれるクラッシュリリーフ隙間の中央位置に対して、クランク軸の回転方向の前方側に偏移している。
【0070】
また上述したスラストリリーフ長さL1とスラストリリーフ長さL2の関係に加えて、本実施例のスラスト軸受10を構成する一対の半割スラスト軸受8は半割軸受7に対して以下のような関係にある。
【0071】
すなわち、本実施例の半割スラスト軸受8では、後方側スラストリリーフ82Rの内側端部でのスラストリーフ長さL2が、対応する半割軸受7のクラッシュリリーフ73のクラッシュリリーフ長さCLよりも大きい。
また本実施例の半割スラスト軸受8では、前方側スラストリリーフ82Fの内側端部でのスラストリリーフ長さL1が、対応する半割軸受7のクラッシュリリーフ73のスラッシュリリーフ長さCL(
図18)よりも小さい。
【0072】
ここで、クラッシュリリーフ73の「クラッシュリリーフ長さCL」とは、半割スラスト軸受8が配設される側の軸線方向端部での、後方側スラストリリーフ82Rの位置又は前方側スラストリリーフ82Fの位置に対応して配置されるクラッシュリリーフ73の長さを意味する(
図4)。詳細には、クラッシュリリーフ長さCLは、半割軸受7の周方向両端面74、74が下端面となるように水平面上に置いたとき、この水平面からクラッシュリリーフ73の上縁までの高さである(
図18)。なお、半割軸受7の周方向端部の両側のクラッシュリリーフ73のクラッシュリリーフ長さは同じである。また実施例とは異なり、半割軸受7のクラッシュリリーフ73のクラッシュリリーフ長さは、半割軸受7の軸線方向に変化していてもよい。
【0073】
以下、本発明の作用について説明する。
半割軸受7のクラッシュリリーフ隙間から外部へ流出した直後の潤滑油は、回転するクランク軸のジャーナル部の表面に付随して周方向に流れていたため、クランク軸11の回転方向の前方側へ移動しようとする慣性力により、
図17A及び17Bに示すように一方の半割スラスト軸受8の周方向端面と他方の半割スラスト軸8の周方向端面の突合せ部(当接部)の位置より、クランク軸の回転方向前方側へ向かって流れる(破線矢印)。
本実施例の軸受装置1のスラスト軸受10は、一対の半割スラスト軸受8、8を有し、半割スラスト軸受8の後方側スラストリリーフ82Rのスラストリリーフ長さL2が前方側スラストリリーフ82Fのスラストリリーフ長さL1よりも長い。さらに、半割スラスト軸受8は、後方側スラストリリーフ82Rの内側端部でのスラストリーフ長さL2が、対応する半割軸受7のクラッシュリリーフ73のクラッシュリリーフ長さCLよりも長く、また前方側スラストリリーフ82Fの内側端部でのスラストリリーフ長さL1が、対応する半割軸受7のクラッシュリリーフ73のクラッシュリリーフ長さCLよりも短い。この構成によれば、一方の半割スラスト軸受8の前方側スラストリリーフ82Fの表面と、他方の半割スラスト軸受8の後方側スラストリリーフ82R表面と、摺動面81を前方側スラストリリーフ82F表面及び後方側スラストリリーフ82R表面上まで延長してできる仮想摺動面とによって囲まれるスラストリリーフ隙間S(
図17B参照)の内側端部における長さの中央が、一方の半割スラスト軸受8の周方向端面83と他方の半割スラスト軸8の周方向端面83の突合せ部(当接部)よりクランク軸11の回転方向前方側に位置する。このため半割軸受7のクラッシュリリーフ隙間から流出し、一対の半割スラスト軸受8の周方向端面83、83同士の突合せ部(当接部)の位置よりもクランク軸11の回転方向前方側へ向かって流れる潤滑油はスラストリリーフ隙間Sに多量に流入し、摺動面81へ送られることができる。
【0074】
内燃機関の運転時、特にクランク軸が高速回転する運転条件ではクランク軸に撓み(軸線方向の撓み)が発生してクランク軸の振動が大きくなり、この大きな振動によって、クランク軸にはスラスト軸受10の摺動面81へ向かう軸線方向力fが周期的に発生する。スラスト軸受10の摺動面81は、この軸線方向力fを受ける。
【0075】
本発明の軸受装置1のスラスト軸受10は、クランク軸の軸線方向力fが作用しても、上述のように一対の半割軸受7のクラッシュリリーフ隙間から流出した潤滑油は、スラスト軸受10の回転前方側スラストリリーフ82Fと回転後方側スラストリリーフ82Rにより形成されるスラストリリーフ隙間Sに多量に流入しやすく、この多量の潤滑油が摺動面81へ送られる。スラスト軸受10の摺動面81は、多量の潤滑油が供給されることで、クランク軸のスラストカラー12面と直接に接触しにくくなる。また本発明の軸受装置1のスラスト軸受10は、摺動面81の面積が減少していないので、クランク軸の軸線方向の負荷を受ける(支える)能力も高いままである。
【0076】
半割軸受7のクラッシュリリーフ73の具体的な寸法として、乗用車用等の小型内燃機関のクランク軸(ジャーナル部の直径が30〜100mm程度)の場合、例えば、端面74における、摺動面75をクラッシュリリーフ上に延長させた仮想の延長面からのクラッシュリリーフ73の深さは0.01〜0.1mmであり、またクラッシュリリーフ長さCLは3〜7mmである。
【0077】
また、半割スラスト軸受8の後方側スラストリリーフ82Rの内側端部でのスラストリリーフ長さL2は、対応する位置にある半割軸受7のクラッシュリリーフのクラッシュリリーフ長さCLに関して、式:L2≧1.5×CLを満たしていることが好ましい。さらに、半割スラスト軸受8の前方側スラストリリーフ82Fの内側端部でのスラストリリーフ長さL1は、対応する位置にある半割軸受7のクラッシュリリーフ73のクラッシュリリーフ長さCLに関して、式:L1≦1.5×CLを満たしていることが好ましい。
【0078】
本実施例では、半割軸受7と半割スラスト軸受8が分離しているタイプのスラスト軸受10を用いた軸受装置1について説明したが、本発明はこれに限定されず、半割軸受7と半割スラスト軸受8が一体化したタイプのスラスト軸受10を用いる軸受装置1も含む。
【0079】
以上、図面を参照して、本発明の実施例1〜5を詳述してきたが、具体的な構成は、これらの実施例に限られず、本発明の要旨を逸脱しない程度の設計的変更は、本発明に含まれる。
【0080】
例えば
図14に示すように、位置決め及び回転止めのために、半径方向外側に突出する突出部を備える半割スラスト軸受を用いるスラスト軸受に本発明を適用することもできる。また、半割スラスト軸受の円周方向長さは、実施例1に示す半割スラスト軸受8等よりも所定の長さS1だけ短くすることもできる。また半割スラスト軸受8は、周方向端面近傍において内周面を半径Rの円弧状に切り欠くこともできる。
【0081】
このように半径Rの円弧状切欠を形成した場合、スラストリリーフ82F、82Rのスラストリリーフ長さL1、L2やスラストリリーフ深さRDは、円弧状切欠を形成しなかった場合のスラストリリーフ82F、82Rの上縁の延長線及びスラストリリーフ82F,82の表面の延長面を基準とした長さ及び深さによって表わすことができる。
【0082】
同様に、半割スラスト軸受8の摺動面側の径方向外側の縁部や内側の縁部には、周方向に亘って面取りを形成するもこともできる。その場合、内側端部及び外側端部におけるスラストリリーフ長さやスラストリリーフ深さは、面取りを形成しなかった場合の半割スラスト軸受の内径側端部及び外径側端部位置でのスラストリリーフ長さ及びスラストリリーフ深さによって表すことができる。
【0083】
また誤組付け防止のため、
図15に示すように一対の半割スラスト軸受8の2つの突合せ部のうち一方のみにおいて、それぞれの半割スラスト軸受8の周方向端面を傾斜端面83Bとして形成し、それにより傾斜端面同士の突合せ部とすることもできる。この場合、傾斜端面83Bは、傾斜していない他方の周方向端面を通る平面(事実上の半割平面H)に対して所定の角度θ3だけ傾斜して形成される。或いは、それぞれの周方向端面は、傾斜端面83Bに代えて、対応する凹凸形状等の他の形状であってもよい。
しかしいずれの場合も、スラストリリーフ長さL1、L2は、事実上の半割平面Hから、スラストリリーフ82RB、82FBの表面が摺動面81Bの内周縁と交わる点までの垂直方向の長さで定義されることが当業者には理解されよう。
【0084】
また
図16に示すように、半割スラスト軸受8Dの摺動面81に形成する油溝81aは、本発明の前方側スラストリリーフ82Fと後方側スラストリリーフ82Rを対にすることで突合せ部に形成される凹部182と同じ形状となるように摺動面81に形成することもできる。なお、本実施例では、1つの半割スラスト軸受に2つの油溝81aを摺動面81に形成しているが、本発明はこれに限定されず、1つ又は3つ以上の油溝を有していてもよい。なお、
図16では、油溝81aは、例として
図10に示したスラスト軸受10Cに形成されるスラストリリーフ隙間Sを有する形状の凹部にしたが、これに限定されるものではない。
【0085】
また上述した実施例では、1つの軸受装置1につき、本発明のスラスト軸受10を2個使用する場合について説明してきたが、本発明はこれに限定されるものではなく、軸受ハウジングの軸線方向のいずれか一方の端面に本発明のスラスト軸受10を使用し、他方の端面には、従来又は他の構成を有するスラストリリーフを備えたスラスト軸受を使用することでも所望の効果を得ることができる。また本発明のスラスト軸受10は、スラスト軸受10を構成する半割スラスト軸受8が半割軸受7の軸線方向の一方の端面、又は両方の端面に一体に形成された軸受の対であってもよい。