(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明のプロセスは、炭化水素供給原料を、水素化処理触媒及び脱蝋触媒を含む触媒システムに接触させることを伴う。本発明はまた、水素化処理触媒及び脱蝋触媒を含む触媒システムも対象とする。水素化処理触媒は、それが、脱蝋触媒の失活(すなわち劣化)を起こし得る、ワックス質炭化水素供給原料中の芳香族種との接触に起因する早期の劣化から脱蝋触媒を守る又は保護するという点で、「保護層」と呼ばれ得る。好ましくは、本発明のプロセスは、反応条件が、脱蝋触媒が潤滑油の流動点目標を達成するために必要な温度に主導される、単一の反応器システム内で実施される。然るが故に、上流の水素化処理触媒の実際の温度は、脱蝋触媒の必要性によって指示された温度に対してやや低いか等しいこととなる。典型的な脱蝋触媒は、約550°F〜約750°Fの間の運転温度において運転される。実際のプロセス条件は、供給原料ワックス、供給原料の窒素含有量、供給原料の沸点範囲、LHSV、運転圧力、脱蝋触媒の処方並びに触媒活性及び劣化などの様々な因子に依存する。
【0012】
ある脱蝋用途、すなわちワックス質供給原料からの潤滑油の製造、についての層状触媒コンセプトの試験において、用いられる水素化処理触媒すなわち保護層の性質が、高い潤滑油収率の維持に対する鍵であることが見出された。触媒システムの保護層として、従来のシリカ−アルミナ基材上のPt/Pd触媒を用いた場合、システムの収率は600°Fまでの運転温度においては向上する、又は少なくとも維持される一方、この温度を超えると、一部の潤滑油生成物のディーゼル油及び灯油への分解が起こり、潤滑油生成物の収率低下を招くことが見出された。脱蝋触媒の上流の水素化処理触媒が低酸性度を有し、そのために、望ましからざるワックス質炭化水素供給原料の分解を最小化する新規な触媒システムの使用を通じて、約600°Fを超える温度において潤滑油収率を維持することが、本発明の目的である。水素化処理触媒の酸性度は、700°Fにおけるデカリン転化率の測定から推測することができる。本発明のプロセス及び触媒システムにおいて用いられる水素化処理触媒は、約10%未満、好ましくは約8%未満、より好ましくは約6%未満、最も好ましくは約4%未満の700°Fにおけるデカリン転化率を有する。
【0013】
定義
本発明は様々な修正及び代替の形態が可能である一方、その具体的な実施形態が本明細書に詳細に記載される。しかし、具体的な実施形態の本明細書における記載は、本発明を、開示された特定の形態に限定することを意図するものではなく、それとは逆に、本発明は、添付の特許請求の範囲によって規定される発明の本質及び範囲に入る全ての修正、等価物、及び代替に及ぶことを意図するものと理解されるべきである。
【0014】
次の用語は本明細書全体を通じて用いられ、別段の指示がない限りは、次の意味を有する。
【0015】
本明細書で使用する場合、「水素化処理」は、それらに限定されるものではないが、水素化脱硫、水素化脱窒素、水素化脱金属、水素化脱芳香族、及び不飽和化合物の水素化を含む、水素の存在下で不純物を除去又は低減するために実施される任意のプロセスを意味する。水素化処理の種類及び反応条件に依存して、水素化処理の生成物は、例えば、改良された粘度、粘度指数、飽和分含有量、低温特性、揮発性及び脱分極を示し得る。
【0016】
本明細書で使用する場合、「保護床」又は「保護層」は、脱蝋触媒の直上の上流の水素化処理触媒又は水素化処理触媒層をいう。
【0017】
本明細書で使用する場合、「モレキュラーシーブ」は、均一な大きさの細孔、空洞、又は中間部の空間を含み、それらの細孔、空洞、又は中間部の空間を通り抜けることができる程度に小さな分子はそれらの中に吸着される一方、より大きな分子は吸着されない、結晶性材料をいう。モレキュラーシーブの例としては、ゼオライト及び、それらに限定されるものではないが、SAPO(シリコアルミノリン酸塩)、MeAPO(メタロアルミノリン酸塩)、AlPO
4、及びELAPO(非金属置換アルミノリン酸塩群)を含むゼオライト類似体などの非ゼオライト系モレキュラーシーブが挙げられる。
【0018】
「目標流動点」は、潤滑油基油生成物の所望の流動点を意味する。目標流動点は、通常、−10℃未満、好ましくは−10℃〜−50℃の範囲内、最も好ましくは−10℃〜−30℃の範囲内である。一つの実施形態において、目標流動点は−30℃以下でもよい。
【0019】
本明細書で使用する場合、別段の明記がない限り、潤滑油の100%収率とは、脱蝋層の上流の保護層なしで生成する潤滑油の量であると解される。潤滑油収率の変化は、所与の供給原料を脱蝋条件下で脱蝋触媒単独上に流通させるときに、該供給原料に対して、目標流動点において生成する潤滑油の量(重量単位)を計り、該供給原料を、同じ脱蝋条件下、同じ目標流動点において、本発明の触媒システム(すなわち、脱蝋層の上流の保護層)上に流通させることによって生成する潤滑油の量(重量単位)を減じ、当該所与の供給原料を脱蝋条件下で脱蝋触媒単独上に流通させるときに、当該供給原料に対して、目標流動点において生成する潤滑油収量(重量単位)で除することによって算出される。例えば、本明細書で使用する場合、潤滑油収率の変化を算出するために、式(A−B)/Aを使用できる。「A」は、脱蝋触媒上で、所与の供給原料から目標流動点において生成した潤滑油の重量を指し、「B」は、脱蝋触媒の上流の水素化処理触媒を含む触媒システム上で、前記供給原料から、目標流動点において生成した潤滑油の重量を指す。例えば、「脱蝋温度範囲にわたって、目標流動点において、潤滑油収率が2%を超えて低下しない」とは、脱蝋触媒の上流の水素化処理触媒に対する潤滑油収率が、同じ温度において、同じ目標流動点に対して、同じ供給原料を脱蝋触媒単独上に流通させた場合の潤滑油収率よりも、2wt%以上低くなり得ることを意味する。
【0020】
本明細書で使用する場合、用語「大細孔ゼオライト」は、直径が約0.7nm〜約2.0nmの範囲の細孔の開口部を有するゼライトをいう。「大細孔ゼオライト」の例としては、これらに限定されるものではないが、Y型、FAU型、EMT型、ITQ−21型、ITQ−33型、及びERT型ゼオライトが挙げられる。
【0021】
本明細書で使用する場合、用語「中細孔ゼオライト」は、直径が約0.39nm〜約0.7nmの範囲の細孔の開口部を有するゼライトをいう。「中細孔ゼオライト」の例としては、フェリエライト、スティルバイト、SAPO−11、ZSM−5、SSZ−32、ZSM−48、及びZSM−23が挙げられる。
【0022】
本開示において用いられる場合、参照される元素の周期表は、the Chemical Abstract ServiceによりHandbook of Chemistry and Physics、第72版(1991−1992)中に公開されたCAS版である。
【0023】
「第VIII族金属」は、the Chemical Abstract ServiceによりHandbook of Chemistry and Physics、第72版(1991−1992)中に公開されたCAS版である周期表第VIII族から選択される金属を含む、元素状金属及び/又は金属化合物をいう。
【0024】
別段の明記がない限り、本明細書で使用する場合、接触反応域への供給速度は、触媒容積当たりの、1時間当たり供給原料の容積として報告される。本明細書において開示される供給速度は、時間の逆数(すなわちhr
−1)において報告され、これは液時空間速度(LHSV)とも呼ばれる。
【0025】
供給原料
本プロセスは、多種多様な供給原料を用いて稼働可能である。本発明に従って処理され得る炭化水素供給原料としては、概して高い流動点(約0℃を超える流動点)を有し、流動点を低下させることが望まれる油が挙げられる。一つの実施形態において、これらの炭化水素供給原料は、ワックス質供給原料と表され得て、ワックス質とは、低下された温度において、n−パラフィンの存在に起因して、供給原料が非常に高粘度になり、固化し、沈殿し、又は固体粒子を形成することを意味する。
【0026】
本発明のプロセスにおいて好ましく用いられる供給原料は、通常、500°F〜1300°Fの範囲で沸騰し、約3cStを超える動的粘度(100℃で測定される。)を有する。本発明のプロセスにおける使用に適した炭化水素供給原料は、例えば、原油、約100℃を超える標準沸点を有する石油留出油、軽油及び減圧軽油、常圧蒸留プロセスからの残油分、溶剤脱れきされた石油残油、シェール油、サイクル油、動植物由来の脂、ワックス及び油、石油ワックス及びスラックワックス、ワックス質石油供給原料、NAOワックス、並びに化学プラントプロセスにおいて生成するワックスから選択できる。16以上の炭素原子を有する、直鎖状n−パラフィン単独又はそれに僅かだけ分岐した鎖状パラフィンを伴ったもののいずれかを、本明細書において時々ワックスと呼ぶ。好ましい石油留出油は、約200℃〜約700℃の沸点範囲、より好ましくは約260℃〜約650℃の範囲内で沸騰する。好適な供給原料は、通常、重質直留軽油と定義されるこれらの重質留出油及び重質分解サイクル油、並びに従来のFCCへの供給原料及びその一部を含む。分解原料油は、様々な原料の熱又は接触分解から得られ得る。供給原料は、本プロセスに供給される前に、水素化処理及び/又は水素化分解プロセスに供し得る。これに代えて又はこれに加えて、供給原料は、本発明のプロセスに用いられる前に、芳香族並びにイオウ及び窒素含有分子を低減するために、溶剤抽出プロセス中で処理され得る。
【0027】
好ましくは、本発明に従って処理される炭化水素供給原料は、通常、約0℃を超える、更に通例としては、約20℃を超える初期流動点を有する。一つの実施形態において、供給原料は約50℃を超える流動点を有する。本発明のプロセスが完了した後に結果として得られる炭化水素生成物は、通常、0℃未満、より好ましくは約−10℃未満、最も好ましくは約−15℃未満に低下する流動点を有する。
【0028】
本明細書で使用する場合、用語「ワックス質炭化水素供給原料」は、石油ワックス、植物ワックス、及び動物由来のワックスを含む。本発明のプロセスにおいて用いられる供給原料は、約50%を超えるワックス、約70%を超えるワックスさえも含むワックス質供給原料でもよい。好ましくは、供給原料は、約5%〜約30%のワックスを含む。
【0029】
本発明のプロセスにおける使用に好適な供給原料の更なる例としては、軽油などのワックス質留出原料油、潤滑油原料、フィッシャー−トロプシュ合成によるものなどの合成油及び合成ワックス、高流動点のポリアルファオレフィン、フーツ油(foots oils)、アルファオレフィンワックスなどの合成ワックス、スラックワックス、脱油ワックス及びマイクロクリスタリンワックスが挙げられる。フーツ油は、ワックスから油分を分離することにより調製される。本プロセスは、広範な鉱油起源の供給原料を用いて稼働可能であり、優れた性能特性を有する様々な潤滑油基油を製造することができる。そのような特性としては、低流動点、低曇点、及び高粘度指数が挙げられる。潤滑油基油の品質及び脱蝋収率は、供給原料の品質及び本発明の触媒による処理に対する受容性に依存する。このプロセスのための供給原料は、減圧軽油及び減圧残油を含む原油の常圧残油分のみならず、合成ガスのフィッシャー−トロプシュ処理によって製造される供給原料にも由来する。好ましくは、本発明のプロセスにおいて用いられる炭化水素供給原料は、約10ppm未満の窒素、より好ましくは約2ppm未満の窒素を有する。潤滑油の製造に有用な任意の石油流を、本発明のプロセスにおける炭化水素供給原料として用いることができる。
【0030】
供給原料は、その供給原料のヘテロ原子、芳香族、アスファルテン、及び多環ナフテン含有量を低減するために、1つ又は複数の前処理ステップを経てもよい。この品質向上ステップは、溶剤抽出、ハイドロプロセッシング、又はこれら2つのステップの組み合わせにより達成することができる。窒素及び硫黄は貴金属含有触媒に対する触媒毒として作用するため、この発明のための好ましい供給原料は、ハイドロプロセッシングされた供給原料である。しかし、いくつかの、溶剤精製された抽出残分もまた、本発明の触媒による脱蝋に対して好適である。
【0031】
上記のように、炭化水素供給原料は、本発明のプロセスに先立って、水素化分解によって前処理されてもよい。水素化分解プロセスとしては、典型的には、250℃〜500℃の範囲の反応温度、30〜205バールの範囲以上の圧力、1バレル当たり2000〜20000標準立方フィート(SCF/B)の水素循環率、及び0.1〜10のLHSV(v/v hr)を含む。水素化分解触媒は、ハイドロプロセッシング技術の分野において周知であるが、典型的には、周期表第VIB族及び第VIII族より選択される1種又は複数の金属又はその化合物を含有するであろう。水素化分解触媒はまた、典型的には、シリカ、アルミナ、シリカ−アルミナ、シリカ−アルミナ−ジルコニア及びシリカ−アルミナ−チタニア複合物、酸処理クレー並びにそれらの組み合せなどの耐火性無機酸化物の担体材料をも含み、場合により、結晶質アルミノケイ酸塩であるゼオライト系モレキュラーシーブ(A型ゼオライト、フォージャサイト、X型ゼオライト及びY型ゼオライトなど)をもまた含み得る。
【0032】
水素化処理触媒
本発明の触媒システムは、好ましくは同一反応器内にある、保護層として作用する水素化処理触媒及び脱蝋触媒を含み、水素化処理触媒が脱蝋触媒の直上の上流にある。一つの実施形態において、水素化処理触媒及び脱蝋触媒は同一の温度にある。更なる実施形態において、水素化処理触媒は高活性触媒である。「高活性」とは、高液時空間速度(約1.0hr
−1を超えるLHSV)において、約550°F〜約750°Fの範囲の温度にわたり、水素化処理触媒が有効に稼働し得ることを意味する。好ましい実施形態において、水素化処理触媒は脱蝋触媒と同一反応器内にある。水素化処理触媒及び脱蝋触媒が同一反応器内にある場合、水素化処理触媒は、反応器内の全触媒の約5容量%〜約30容量%を構成する。全触媒容積は、水素化処理触媒容積に脱蝋触媒容積を加えた合計として表されることができる。好ましくは、水素化処理触媒は、全触媒容積の約10%〜約15%を構成する。水素化処理触媒と同一反応器内にある場合、脱蝋触媒は、全触媒の約75%〜約95%を構成し、好ましくは全触媒容積の約85%〜約90%を構成する。
【0033】
本発明の水素化処理触媒は、低酸性度の無機酸化物担体上に分散した第VIII族金属、好ましくは白金、パラジウム又はそれらの組み合せを含む。好ましい実施形態において、白金のパラジウムに対する比は、約5:1〜約1:5の間である。別の実施形態において、水素化処理触媒は白金−パラジウム合金を含み、合金中の白金のパラジウムに対するモル比は、約3:1と約1:3の間、好ましくは約2:1と約1:2の間である。触媒上に存在する白金及び/又はパラジウム金属の量は、0.01wt%〜5wt%、好ましくは0.2wt%〜2wt%の範囲であり得る。担体上に配置された白金−パラジウム合金の量は、炭化水素供給原料の水素化において効果的な触媒として作用するために十分でなければならない。一般的に、約1wt%を超える合金の添加は、触媒の活性を顕著には改善せず、従って、経済的に不利となる。しかし、1wt%を超える量は、普通、触媒の性能に対して有害とはならない。好ましい水素化処理触媒は、通常はより反応性の低い白金系触媒の硫黄耐性を維持しつつ、パラジウム系触媒の活性を示し、このようにして、広範な温度範囲にわたり優れた活性を有する水素化触媒を提供する。
【0034】
本技術分野において、例えばイオン交換、含浸、及び共沈殿などの、白金及びパラジウム金属又は白金及び/又はパラジウムを含む化合物を担体上に沈積させる多くの方法が公知である。一つの実施形態において、白金及び/又はパラジウム金属の含浸が、制御されたpHの下で実施される。別の実施形態において、pHを約9〜約10の範囲内に維持するために、含浸溶液が緩衝され得る。更なる実施形態において、白金及び/又はパラジウム金属の含浸が、酸性pH(すなわち7未満のpH)において実施される。更に別の実施形態において、白金及び/又はパラジウム金属の含浸が、塩基性pH(すなわち7を超えるpH)において実施される。供給原料中の芳香族種を水素化することが可能な触媒を生成するように、白金及び/又はパラジウムが担体上に分散されるとの条件において、白金及び/又はパラジウム金属を担体上に沈積させるために、任意のpH値を用い得る。白金及び/又はパラジウム金属は、普通、ハロゲン化物塩及び/又はアミン錯塩及び/又は鉱酸の塩などの金属塩として、含浸溶液に添加される。アンモニウム塩が、含浸溶液の調製において特に有用であることが判明した。用い得る金属塩の代表的なものは、硝酸塩、炭酸塩、炭酸水素塩並びに、酢酸塩、クエン酸塩及びギ酸塩などのカルボン酸塩である。パラジウムの場合、硝酸アンモニウム塩又は塩化物塩が、満足すべき結果を与えることが明らかとなった。しかし、白金族金属のその他の塩もまた使用可能であり、担体に含浸させるために用い得る。そのような場合、担体上での金属の最良の分布を得るために、含浸中に使用する最適pHを選択された特定の塩に対して決定することは、有用となり得る。
【0035】
含浸に続いて、含浸された担体は乾燥及び/又はか焼(calcine)され得る。場合により、含浸された担体は、乾燥する前に、それが含浸溶液との平衡を達成するために十分な時間の間、静置される。押出物に関しては、この時間は通常少なくとも2時間であり、最高24時間までの時間は、完成した触媒に対して有害ではない。所定の担体に対する好適な静置時間は、当業者により、例えば、含浸後に様々な時間が経った時点で乾燥を行って金属の分布を測定することにより、容易に決定され得る。場合により静置した後、触媒は乾燥され、か焼され、又は乾燥及びか焼される。調製された触媒はまた、本分野において従来そうされるように、水素により還元され、使用に供されうる。
【0036】
本発明において用いられる水素化処理触媒は、第VIII族金属に加えて、通常、アルミナ、シリカ、シリカ/アルミナ、チタニア、マグネシア、ジルコニア又はそれらの組み合せから調製される触媒担体を含む。触媒担体は、非晶質材料、結晶質材料又はそれらの組み合せを含むことができる。非晶質材料の例としては、それらに限定されるものではないが、非晶質アルミナ、非晶質シリカ、非晶質シリカ−アルミナ等が挙げられる。好ましい実施形態において、担体は非晶質アルミナである。シリカ及びアルミナの組み合せを用いる場合、担体中のシリカ及びアルミナの分布は、均一又は不均一のいずれかでもよい。例えば、従来の共沈殿又は共ゲル化技法に起因して、シリカ/アルミナ比が担体全体を通して均一である場合、通常均一な分布が得られる。いくつかの実施形態において、担体は、シリカ、シリカ/アルミナ、又はアルミナ系材料が分散するアルミナゲルからなる。アルミナゲルは「酸化物バインダ」とも呼ばれる。そのような材料が、最終的な触媒の水素化活性に悪影響を与えない、又は、過大な酸点の存在に起因する供給原料の有害な分解をもたらすことがないとの条件において、担体は、例えば他の無機酸化物又はクレー粒子などの、アルミナ又はシリカ以外の耐火性材料をも含み得る。通常、シリカ及び/又はアルミナは、全担体の少なくとも90重量パーセントを構成し、最も好ましくは、担体は、実質的に全てがシリカ及び/又はアルミナである。担体は、有害な分解反応をもたらし得る酸性プロトンを含み得る。通常、アルカリ及び/又はアルカリ土属カチオンは、担体中の酸性プロトンを中和するために用い得る。ナトリウム及びカリウムカチオンが、酸性プロトンを中和するために好ましく用いられる。酸性プロトンの一部又は全部を非酸性カチオンにより置換することによって、担体の酸性度は低減し得る。
【0037】
触媒担体は、それらに限定されるものではないが、ゼオライト、ゼオライト類似体(zeolite analogs)、モレキュラーシーブ、シリコアルミノリン酸塩、及びメタロアルミノリン酸塩を含む結晶性材料を含むことができる。本発明のプロセスにおいて有用な結晶性無機酸化物を、本明細書においてまとめて「モレキュラーシーブ」と呼ぶ。「ゼオライト類似体」とは、ゼオライト中のケイ素及び/又はアルミニウム原子の一部が、ゲルマニウム、ホウ素、チタン、リン、ガリウム、亜鉛、鉄、又はそれらの混合物などの、その他の四面体配位原子によって置換されることを意味する。本明細書で使用する場合、用語「非ゼオライト系モレキュラーシーブ」は、その骨格が、実質的に、酸素原子による四面体配位にあるケイ素及びアルミニウム原子のみから形成されないモレキュラーシーブをいう。
【0038】
ゼオライト、ゼオライト類似体、及び非ゼオライト系モレキュラーシーブは、概括的に、酸素原子を通して結合された四面体単位(TO
4/2、T=Si、Al、又はその他の四面体配位原子)から構成される三次元骨格を有する、結晶性ミクロポーラスモレキュラーシーブと表し得る。モレキュラーシーブ中の細孔は、しばしば、細孔の開口部を囲む四面体原子の数に応じて、小(8T原子)、中(10T原子)、及び大(12T原子以上)として分類される。A型ゼオライト(LTA)及びRho型ゼオライトは、8員環を境界とする小細孔を有するモレキュラーシーブの例であって、細孔の開口部は約3〜4.4Åであり、ZSM−5、ZSM−11、フェリエライトは、細孔の開口部が約3.9〜6.5Åである中細孔10員環の例であり、一方、X型ゼオライト、Y型ゼオライト、及びベータ型ゼオライトは、細孔の開口部が約6.5Åを超える、12員環を境界とする大細孔を有するゼオライトの例である。モレキュラーシーブは、細孔の開口部に加えて、内部に管状経路(channels)を有する。1次元状、2次元状、又は3次元状としての、ゼオライト内部の管状経路の分類が、R.M.Barrerにより、Zeolites,Science and Technology、F.R.Rodrigues、L.D.Rollman及びC.Naccache編、NATO ASI Series、1984中に示され、その分類は参照によりその全てが組み込まれる(特に75ページを見られたい。)。
【0039】
ゼオライト、ゼオライト類似体、又は非ゼオライト系モレキュラーシーブ中のT原子の素性に依存して、材料の特性が影響される。例えば、ゼオライト中のアルミニウムの存在は、ゼオライト骨格中に負電荷を導入し、ゼオライトの酸性に影響を与える。ゼオライト中のSi/Al比は約1から無限大まで変化することができる。下限は、負電荷を有する四面体単位が隣接すること(Al
−−O−Al
−)への忌避から生じる。2つのAlO
4四面体の結合は、そのようなことが起こることを排除するのに十分な程度にエネルギー的に不利であることが、一般的に認知されている。ゼオライト、ゼオライト類似体、又は非ゼオライト系モレキュラーシーブ骨格中の負電荷は、プロトン及びアルカリカチオンなどの骨格外カチオンによって補償される。骨格外プロトンの存在が、モレキュラーシーブの酸性をもたらす。水素化処理触媒の担体は、モレキュラーシーブの酸点が、例えばアルカリ又はアルカリ土類カチオンにより中和されるとの条件において、上述のようにモレキュラーシーブを含むことができる。通常、モレキュラーシーブ中の酸性プロトンは、ナトリウムカチオン又はカリウムカチオンなどの非酸性カチオンによってイオン交換され得る。
【0040】
水素化処理触媒の担体は、クレー(天然の又は合成の)などの層状物質を含むことができる。クレーは、ケイ素イオンのシートが四面体状に配位され、金属イオンのシートが八面体状及び/又は四面体状に酸素原子により配位される、層状ケイ酸塩として表し得る。クレーは、クレー構造中又は層間の間隙空間中へのプロトンの取り込みのために、酸性になり得る。酸性プロトンは、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、及びその他などの非酸性カチオンによって置換され得る。一部又は全ての酸性プロトンを非酸性カチオンによって置換することにより、クレーの酸性度は低減され得る。
【0041】
水素化処理触媒中の担体材料の種類に無関係に、本発明のプロセス及び触媒システムにおいて用いられる水素化処理触媒は、低酸性度を有する。「低酸性度」とは、担体中に、ブレンステッド及び/又はルイス酸点が僅かに存在する若しくは存在しない、又は、例えばブレンステッド酸性の場合には、酸性プロトンの非酸性カチオンへのイオン交換により、ブレンステッド及び/又はルイス酸点が中和されたことを意味する。例えば、酸性度を低減するためには、モレキュラーシーブは、水素化処理触媒中の担体又は担体の成分として存在する場合、好ましくはアルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属を含む。アルカリ金属又はアルカリ土類金属は、水素化処理触媒の合成中又はその後に、触媒担体中に組み込まれる。好ましくは、触媒担体中の酸点の少なくとも90%が、非酸性カチオンの導入によって中和され、より好ましくは少なくとも95%、最も好ましくは少なくとも99%が中和される。
【0042】
当業者に公知の多くの方法のうちの任意の方法により、潜在的酸点の数及び強度が測定され得る。例えば、N.Topsφeら、「ZSM−5型ゼオライトの酸特性に関する赤外線及び温度プログラム脱着による研究」(Infrared and Temperature−Programmed Desorption Study of the Acidic Properties of ZSM−5−Type Zeolites)、J.Catalysis 70、41−52(1981)は、酸型触媒の研究のための赤外線(IR)による方法を記載する。典型的には、約400°Fにおいて1気圧の水素中で還元された完成した触媒を用いて、酸点密度が測定される。有用なIR法は、触媒から揮発性物質、特に水を除去するために、自立性(self−supporting)の薄片の形態の触媒試料を、減圧下(約10
−6トール)で500℃にて加熱することを含む。触媒試料は12時間、450℃に保持され、その後、150℃まで冷却される。次に、予め、活性化されたリンデ5A型モレキュラーシーブ上で乾燥され、従来の凍結−排気−融解技法を用いて脱気された、既知量のピリジン蒸気(約1トール圧)が、触媒試料に投与される。試料の赤外線スペクトルは、例えば、ニコレ60SXRフーリエ変換赤外線(FT−IR)分光光度計を用いて採られる。1453cm
−1及び1543cm
−1帯域下の領域は、触媒表面上のプロトン(ブレンステッド)酸点の密度及び非プロトン(ルイス)酸点の密度の測定値を与える。ピリジンで飽和された触媒試料は、更に水蒸気で飽和され、赤外線スペクトルが再度走査される。水蒸気の添加が、ブレンステッド/ルイス酸点密度の比を変化させる。2回の赤外線走査のピーク面積は、ブレンステッド酸点上及びルイス酸点上に吸着されたピリジンの量を算出するために十分な詳細情報を提供する。総酸点密度は、ルイス及びブレンステッド酸の酸点密度の合計である。
【0043】
触媒又は触媒担体の酸性度を測定する別な方法は、アンモニア吸着/脱着である。例えば、アンモニア又は別な窒素含有塩基は、触媒上に吸着される。吸着された全アンモニアは、例えば、アンモニア吸着の前後で触媒を秤量することによって、測定することができる。次に、吸着されたアンモニアは、段階的に試料を加熱し、脱着を質量変化によってモニターすることにより脱着できる。この方法は、触媒中に存在する酸点の見積もり並びに酸点の強度を(アンモニア脱着の容易さ又は困難さに基づき)与えることができる。
【0044】
触媒の酸性度を測定する技法は、触媒1グラム当たりのミリ当量(meq)の単位で、酸点の数を測定する。本明細書で使用する場合、「ミリ当量」は1ミリモルのルイス又はブレンステッド酸点をいう。吸着される塩基の量は、酸点密度及び各々の吸着性分子が吸着する酸点の数に関係する。塩基の各々の分子が単一の酸点に吸着するとき、1meq/g−触媒の酸点密度は、1ミリモルの塩基を1グラムの触媒上に吸着させることに等価である。好ましくは、本発明のプロセスで用いられる水素化処理触媒は、0.25meq/g未満、より好ましくは0.15meq/g未満、最も好ましくは0.1meq/g未満を含有することになろう。
【0045】
700°Fにおけるデカリン転化を用いて、水素化処理触媒が、本発明のプロセス及び触媒システムにおいて用いることが可能であるかを決定した。「デカリン転化」は、より低分子量の生成物を生成するデカリンの分解をいう。本発明者らは、約10%未満の700°Fにおけるデカリン転化率を有する水素化処理触媒を、本発明のプロセス及び触媒システムにおいて用い得ることを見出した。デカリン転化率は、間接的な水素化処理触媒の酸性度の測定である。一般的に、より低いデカリン転化率は、より低い触媒の酸性度を示し、それ故に、有害な供給原料の分解がより少ないことを示す。
【0046】
水素化処理触媒の細孔径分布及び細孔容積は様々になり得る。細孔はマクロポーラス、メソポーラス、又はそれらの組み合わせでもよい。本明細書で使用する場合、用語「マクロポーラス」(“macroporous”)は、水銀多孔度測定法で測定される、直径が約100nmを超える細孔を、その細孔の5%を超えて有する触媒をいう。本明細書で使用する場合、用語「メソポーラス」(“mesoporous”)は、水銀多孔度測定法で測定される、直径が約100nm未満の細孔を、その細孔の95%を超えて有する触媒をいう。好ましくは、水素化処理触媒は、メソポア及び/又はマクロポア及び約0.1cm
3/gを超える、より好ましくは約0.2cm
3/gを超える、最も好ましくは約0.3cm
3/gを超える、比較的大きな量の細孔容積を有する担体を含む。本発明において用いられる触媒に関する細孔径分布は、例えば、ASTM D4284、“Pore Volume Distribution of Catalysts by Mercury Intrusion Porosimetry”中に記載されるような水銀圧入多孔度測定法を用いて測定される。
【0047】
反応条件
水素化処理触媒によって実施される水素化反応は、水素の存在下、好ましくは約500psiaと4000psiaの間の範囲、より好ましくは約900psia〜約3000psiaの範囲の水素圧において行われる。水素化処理触媒に対する供給速度は、水素化処理触媒が脱蝋触媒と同一の反応器内にある場合、約3〜約50のLHSVの範囲、好ましくは約5〜約15のLHSVの範囲である。水素化処理触媒が脱蝋触媒とは別の反応器内にあるとき、供給速度は、約0.2〜約5.0のLHSVの範囲、好ましくは約0.2〜約2.0のLHSVの範囲である。水素供給(補充及びリサイクル)は、潤滑油基油1バレル当たり約1500〜約10,000標準立方フィートの範囲、好ましくは1バレル当たり約2000〜約5,000標準立方フィートの範囲である。
【0048】
水素化処理触媒は、所望の生成物及び供給原料の種類に応じて、様々な温度にて運転を行い得る。一つの実施形態において、水素化処理触媒は、供給原料中の芳香族を効果的に水素化することができ、留出物を形成する。芳香族を効果的に水素化するということは、水素化処理触媒が、供給原料中の芳香族の含有量を少なくとも10%、好ましくは少なくとも20%、最も好ましくは少なくとも30%低減することができることを意味する。好ましい実施形態において、水素化処理触媒は脱蝋触媒と同一反応器内にあり、そのため、脱蝋触媒と水素化処理触媒とは同一温度にある。一つの実施形態において、本発明のプロセスに対する典型的な温度範囲は約450°F〜750°Fの間である。一つの実施形態において、温度は約600°F〜700°Fの間である。更なる実施形態において、温度は約600°F〜675°Fの間である。
【0049】
脱蝋触媒
本技術分野において公知の任意の脱蝋触媒が、本発明の触媒システムにおける脱蝋触媒として用いられ得る。脱蝋触媒の例が、参照によりそれらの全てが本明細書に組み込まれる米国特許第7,141,529号及び米国特許第7,390,763号に記載される。好ましくは、脱蝋触媒は、多孔性無機酸化物などの担体上に水素化成分及び酸性成分を含む、水素化脱蝋触媒である。好適な無機酸化物担体としては、好ましくはアルミナと共に用いられる、シリカ、アルミナ、チタニア、マグネシア、ジルコニア、シリカ−アルミナ、シリカ−マグネシア、シリカ−チタニアなどが挙げられる。脱蝋触媒もまた、担体そのもの又は担体中に分散したゼオライトなどのモレキュラーシーブ、クレー、若しくはそれらの組み合わせであってよい酸性成分を含む。酸性成分の例としては、シリカライト又はアルミノケイ酸塩ゼオライトであるZSM−5などの分解活性を有する中間細孔結晶質モレキュラーシーブが挙げられる。一つの実施形態において、脱蝋触媒は、1種又は複数の第VIII族及び/又は第VIB族金属、アルミナ担体、及び中間細孔モレキュラーシーブを含む。そのような触媒は、例えば、70wt%のアルミナ中に30wt%のモレキュラーシーブが分散した混合物を押し出し、続いて第VIII族及び/又は第VIB族金属を含浸させることによって製造できる。
【0050】
通常、本発明において用いられる脱蝋触媒は、1)水素化成分、及び2)酸性成分を含む。好ましい水素化成分は、白金及び/又はパラジウムなどの第VIII族金属である。好ましい酸性成分は、中間細孔モレキュラーシーブである。
【0051】
脱蝋触媒の水素化成分
本発明において用いられる脱蝋触媒は水素化成分を含む。水素化は、有機化合物に対する水素の付加をもたらす化学反応として定義され得る。水素化反応の例としては、アルカンを与えるアルケンに対する水素付加、シクロアルカンを与える芳香族化合物に対する水素付加、及びアルコールを与えるアルデヒドに対する水素付加が挙げられる。第VIII族金属は、好ましい、本発明のプロセスにおいて用いられる脱蝋触媒中の水素化成分である。
【0052】
本明細書で使用する場合、用語「金属」又は「活性金属」(“active metal”)は、元素状態又は硫化物、酸化物、及びそれらの混合物などの何らかの形態にある、1種又は複数の金属を意味する。従って、この発明のプロセスにおいて利用される第VIII族金属は、その元素状態又は硫化物、又は酸化物、及びそれらの混合物などの何らかの形態にある、1種又は複数の金属を意味し得る。濃度は、金属成分が実際に存在する状態とは無関係に、それらが元素状態で存在するとして計算される。
【0053】
一つの実施形態において、脱蝋において用いられる第VIII族金属は、白金、パラジウム、及びそれらの混合物を含む。場合により、モリブデン、ニッケル、バナジウム、コバルト、タングステン、ロジウム、ルテニウム、亜鉛、イリジウム、金、銀、オスミウム及びそれらの混合物などのその他の触媒活性を有する金属が、脱蝋触媒の水素化成分中に含まれ得る。金属の量は、脱蝋触媒の約0.01〜約10wt%、好ましくは約0.1〜約5wt%、より好ましくは約0.2〜約1wt%の範囲である。炭化水素供給原料の水素化において、触媒として作用するために十分な活性金属が存在するとの条件において、脱蝋触媒の水素化成分中に用いられる第VIII族金属の量は変化し得る。一般的に、約1wt%を超える第VIII族金属を添加しても、触媒の活性を顕著に改良することはなく、そのため、経済的に不利となる。
【0054】
一つの実施形態において、第VIII族金属は担体上に分散される。好ましくは、担体は無機酸化物である。担体が、第VIII族金属を分散するために十分な表面積を提供するとの条件において、担体は、触媒的に活性であっても不活性であってもよい。加えて、触媒に、促進剤金属が添加され得る。米国特許第7,390,394号は、触媒活性を有する金属及び促進剤を有する無機酸化物の例を示し、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。本技術分野において、例えばイオン交換、含浸、及び共沈殿などの、白金及びパラジウム金属又は白金及び/又はパラジウムを含む化合物を担体上に沈積させる多くの方法が公知である。
【0055】
脱蝋触媒の酸性成分
脱蝋触媒は更に酸性成分を含む。酸性成分は、モレキュラーシーブ、非晶質無機酸化物、及びクレーからなる群より選択される。好ましくは、酸性成分は、中細孔ゼオライト、シリコアルミノリン酸塩、又はボロケイ酸塩などの中細孔モレキュラーシーブである。より好ましくは、酸性成分は、1次元状(1−D)中細孔モレキュラーシーブであり、本明細書において「1次元状」は、非交差の平行な1次元の管状経路系として定義される。1次元状、2次元状、又は3次元状としてのゼオライト内部の管状経路の分類が、R.M.Barrerにより、Zeolites,Science and Technology、F.R.Rodrigues、L.D.Rollman及びC.Naccache編、NATO ASI Series、1984中に示され、その分類は参照によりその全てが組み込まれる(特に75ページを見られたい。)。1−Dゼオライトの例としては、カンクリナイト水和物、ローモンタイト、マーザイト;モルデナイト及びL型ゼオライトが挙げられる。
【0056】
好ましくは、中細孔モレキュラーシーブの細孔は、形が楕円であり、これは、細孔が、本明細書において小軸及び大軸と呼ぶ2つの異なる軸を示すことを意味する。本明細書で使用する場合、用語楕円(oval)は、特定の楕円又は長円形であることが必要との意味ではなく、2つの異なる軸を示す細孔であることをいう。本発明の実施において有用な触媒の1−D細孔は、従来のX線結晶構造測定法によって測定された、約3.9Åと約4.8Åの間の小軸及び約5.4Åと約7.1Åの間の大軸を有し得る。
【0057】
本発明のプロセスにおける使用のための中細孔径モレキュラーシーブの一つの例は、シリコアルミノリン酸塩SAPO−11である。SAPO−11は、角を共有する[SiO
2]四面体、[AlO
2]四面体及び[PO
2]四面体、[すなわち(Si
xAl
yP
z)O
2四面体単位]の分子骨格を含む。第VIII族金属水素化成分と組み合わせられると、SAPO−11はワックス質供給原料のワックス質成分を転化して、優れた収率、非常に低い流動点、低粘度及び高粘度指数を有する潤滑油を生成する。SAPO−11は米国特許第5,135,638号に詳細に開示され、該特許は全ての目的のために、参照により本明細書に組み込まれる。
【0058】
本発明のプロセスにおいて有用な中細孔径シリコアルミノリン酸塩モレキュラーシーブのその他の例は、SAPO−31及びSAPO−41であり、これらもまた、米国特許第5,135,638号に詳細に開示される。
【0059】
本発明のプロセスにおいて有用なモレキュラーシーブの更なる例としては、ZSM−12型、ZSM−21型、ZSM−22型、ZSM−23型、ZSM−35型、ZSM−38型、ZSM−48型、ZSM−57型、SSZ−32型、フェリエライト型及びL型のゼオライト、並びに、SM−3、SAPO−11、SAPO−31、SAPO−41、MAPO−11及びMAPO−31などのアルミニウムリン酸塩系のその他のモレキュラーシーブ材料が挙げられる。中細孔径モレキュラーシーブは好ましくは、SAPO−11、SM−3、SSZ−32、ZSM−22、又はZSM−23である。中細孔径モレキュラーシーブ触媒は、米国特許第5,282,958号、米国特許第7,468,126号、米国特許第6,204,426号、及びWO99/45085に教示され、これらは参照により本明細書に組み込まれる。
【0060】
脱蝋触媒は、結晶質材料に加えて、シリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニア、マグネシア、又はそれらの組み合わせなどの非晶質無機酸化物を含むことができる。無機酸化物は多孔質、好ましくはメソポーラスであり、酸点を供することにより、触媒の脱蝋活性に寄与し得る。いくつかの実施形態において、非晶質無機酸化物は、脱蝋触媒の水素化成分及び酸性成分の単なる担体として作用するが、それ自体は全く触媒活性を付与しないために、非反応性の場合もある。潤滑油のハイドロプロセッシング触媒の必要要件と整合して、担体は、高沸点供給原料の比較的嵩高い成分が、所望のハイドロプロセッシング反応が起こる触媒の内部細孔構造に入ることができるように、十分な細孔径及び細孔径分布を有しなければならない。この点で、触媒は通常、約40Åの最小細孔径を有し、すなわち、40Åの細孔径未満の細孔径を有する細孔が約5%以上であり、40〜400Åの範囲の細孔径を有する細孔が大部分であり、好ましくは200〜400Åの範囲の細孔径を有する細孔が約30%以下である。第1の段階に対して好ましい触媒は、少なくとも60%の40〜200Åの範囲にある細孔を有する。一つの実施形態において、無機酸化物は、脱蝋触媒に酸点を付与し、脱蝋触媒の活性を高め得る。別の実施形態において、無機酸化物は、水素化成分(すなわち、白金などの貴金属)及び酸性成分(すなわち、酸性ゼオライト)の非反応性担体として作用し得る。無機酸化物は共ゲルの形態でもよい。一つの実施形態において、脱蝋触媒は、アルミナ、貴金属、及びゼオライトを含む。別の実施形態において、脱蝋触媒は、15wt%〜85wt%の、アルミナ又はシリカ無機酸化物バインダと複合化されたゼオライトを含む。通常、アルミナなどのバインダは、脱蝋触媒の調製中に添加され得る。バインダは、脱蝋触媒の0wt%〜95wt%、好ましくは15wt%〜85wt%を構成し得る。
【0061】
モレキュラーシーブ中に触媒活性を有する金属を導入する技法は公知であり、先在する、イオン交換、含浸又はシーブ調製時の吸蔵などの、活性な触媒を形成するための、モレキュラーシーブの金属を組み込む技法及び処理を、本発明において用いることが好適である。
【0062】
脱蝋条件
本発明のプロセスにおいて、ワックス質供給原料の水素化処理触媒を用いた反応からの流出物の少なくとも一部が、脱蝋触媒を含む第2の触媒上で水素と接触せしめられる。採用される脱蝋条件は、用いる供給原料並びに潤滑油生成物における流動点、粘度指数、及び収率の所望のバランスに依存する。通常、脱蝋触媒反応は、水素の存在下、好ましくは約500psiaと4000psiaの間の範囲の水素圧において、より好ましくは約900psia〜約3000psiaの範囲で行われる。脱蝋触媒に対する供給速度は、約0.2〜約5.0のLHSVの範囲、好ましくは約0.5〜約2.5のLHSVの範囲である。水素供給補充は、潤滑油基油1バレル当たり約100〜約15,000標準立方フィートの範囲、好ましくは1バレル当たり約250〜約1,500標準立方フィートの範囲である。水素リサイクルは、潤滑油基油1バレル当たり約250〜約10,000標準立方フィートの範囲、好ましくは1バレル当たり約2500〜約5,000標準立方フィートの範囲である。温度は、約450°F〜約750°F、好ましくは約550°F〜約725°F、より好ましくは600°F〜約675°Fの範囲でもよい。
【0063】
生成物
一つの実施形態において、本発明のプロセスは潤滑油を生成する。潤滑油は、ASTM D−97により測定した場合、約0℃未満、好ましくは約−5℃未満、最も好ましくは約−10℃未満の流動点を有する。一つの実施形態において、潤滑油生成物は、−10℃〜−45℃の範囲の流動点を有する。潤滑油生成物は、水素化仕上げ触媒を含む1種又は複数の水素化処理触媒上で更に水素化処理することにより、所望の最終的な潤滑油生成物としての特性を獲得し得る。例えば、脱蝋触媒反応域からの潤滑油生成物の一部又は全ては、穏和に水素化処理又は水素化仕上げされ、所望の潤滑油規格に適合するように、着色物質を除去し、又は芳香族種を水素化し得る。通常、最終的な潤滑油生成物は、600〜1000°Fの範囲の初留点及び750〜1300°Fを超える範囲の終点を有する潤滑油となる。潤滑油生成物は通常、3〜30cStの100℃における粘度及び95〜170の範囲の、ASTM D445により測定される粘度指数を有する。
【0064】
以下の実施例は、説明のためのものであり、添付の特許請求の範囲に規定される発明の範囲を限定することを意図しない。
【実施例】
【0065】
(例1)
触媒Aを、窒素吸着/脱着により算出した150m
2/gの表面積、0.84cc/gの水銀圧入容積、及び0.075cc/gのマクロポア容積を有するアルミナ基材を用いて作製した。20g(揮発分を除く基準)のアルミナ基材に、18mlの脱イオン水を用いた1%HCl中、0.16グラムの塩化白金酸及び0.2グラムの二塩化パラジウムの溶液を用いて、初期湿潤法(incipient wetness)により含浸させて反応混合物を形成した。反応混合物を24時間浸漬させ、その後150℃で1時間乾燥し、続いて300℃で更に1時間か焼して、完成した水素化処理触媒を形成した。完成した触媒は、0.3wt%及び0.6wt%のPt及びPd含有量を、それぞれ有していた。
【0066】
(例2)
触媒Bを、80%の擬ベーマイトアルミナ(Versal 250アルミナ、UOP)、10%のベーマイトアルミナ(Catapal B、Sasol)及び10%の摩砕したか焼アルミナ微粒子(325テーラーメッシュ(Tyler mesh)より小さい。)の混合物から作製した。アルミナ粉体を、Baker−Perkins混合機内で10分間乾燥混合し、その後、目標の揮発分62%まで、4%の硝酸を含む溶液を噴霧して湿性ドウ(dough)を形成した。湿性ドウを合計30分間混合し、その後、Loomis RAM押出機に移し、1/16インチのダイインサートを通して加圧し、押出成型物を形成した。押出成型物を高速空気流により130℃にて30分間乾燥し、空気中、680℃にて1時間か焼して、か焼アルミナ基材を形成した。得られたか焼アルミナ基材は、窒素吸着/脱着により算出した260m
2/gの表面積、0.62cc/gの水銀圧入容積及び0.001cc/gのマクロポア容積を有していた。次に、例1に概説したものと同様の手順を用いて、か焼アルミナ基材にPt及びPdを含浸させた。完成した触媒は、0.3wt%及び0.6wt%のPt及びPd含有量を、それぞれ有していた。
【0067】
(例3)
触媒Cを、窒素吸着/脱着により算出した192m
2/gの表面積、0.75cc/gの水銀圧入容積、及び0.01cc/gのマクロポア容積を有するアルミナ基材を用いて作製した。99g(揮発分を除く基準)のアルミナ基材に、pHを9.7に調整した、テトラアミン二硝酸塩としての3.1% Pt水溶液を用いて、初期湿潤法により含浸させて反応混合物を形成した。反応混合物を24時間浸漬させ、その後150℃で1時間乾燥し、続いて370℃で更に1時間か焼して、完成した触媒を形成した。完成した触媒は1wt%のPt含有量を有していた。
【0068】
(例4)
触媒Dを、75%の擬ベーマイトアルミナ(Versal 250アルミナ、UOP)、5%のベーマイトアルミナ(Catapal B、Sasol)、及び20%の摩砕したか焼アルミナ微粒子(325テーラーメッシュより小さい。)の混合物から作製した。アルミナ粉体を、小型のLittleford混合機内で10分間乾燥混合し、その後、目標の揮発分60%まで、1.7%の硝酸を含む溶液を噴霧して湿性ドウを形成した。湿性ドウを、合計10分間混合し、その後、15% NH
4OH溶液を用いて最終的な目標の揮発分61%まで逆中和し、更に10分間混合した。得られた湿性混合物を2インチの螺旋状部を設置したBonnot押出機に移し、1/16インチのダイインサートを通して押し出し、押出成型物を形成した。押出成型物を高速空気流により130℃にて30分間乾燥し、空気中、815℃にて1時間か焼して、アルミナ基材を形成した。アルミナ基材は、窒素吸着/脱着により算出した185m
2/gの表面積、0.84cc/gの水銀圧入容積及び0.05cc/gのマクロポア容積を有していた。10グラム(揮発分を除く基準)の基材に、pHを9.0に調整した、8.5mlの脱イオン水中、0.03グラムの白金(テトラアミン二硝酸塩として)及び0.06グラムのパラジウム(テトラアミン二硝酸塩として)の溶液を用いて、初期湿潤法により含浸させて、反応混合物を形成した。反応混合物を24時間浸漬させ、その後150℃で1時間乾燥し、続いて300℃で更に1時間か焼して、完成した水素化処理触媒を形成した。完成した水素化処理触媒は、0.3wt%及び0.6wt%のPt及びPd含有量を、それぞれ有していた。
【0069】
(例5)
触媒Eを、例4に記載したものと同様のか焼アルミナ基材を用いて作製した。10グラム(揮発分を除く基準)のか焼アルミナ基材に、希硝酸の添加によりpHを1.0に調整した、8.5mlの脱イオン水中、0.03グラムの白金(テトラアミン二硝酸塩として)及び0.06グラムのパラジウム(テトラアミン二硝酸塩として)の溶液を用いて、初期湿潤法により含浸させて、反応混合物を形成した。反応混合物を24時間浸漬させ、その後150℃で1時間乾燥し、続いて300℃で更に1時間か焼して、完成した水素化処理触媒を形成した。完成した水素化処理触媒は、0.3wt%及び0.6wt%のPt及びPd含有量を、それぞれ有していた。
【0070】
(例6)
触媒Fを、先に、参照により本明細書に組み込まれるUS5,393,408の例2に記載された製法を用いて、シリカアルミナ基材から作製した。シリカアルミナ基材は、窒素吸着/脱着により算出した415m
2/gの表面積、0.74cc/gの水銀圧入容積及び0.03cc/gのマクロポア容積を有していた。50グラム(揮発分を除く基準)のシリカアルミナ基材に、pHを9.0に調整した、45mlの脱イオン水中、0.15グラムの白金(テトラアミン二硝酸塩として)及び0.3グラムのパラジウム(テトラアミン二硝酸塩として)の溶液を用いて、初期湿潤法により含浸させて、反応混合物を形成した。反応混合物を24時間浸漬させ、その後150℃で1時間乾燥し、続いて400℃で更に1時間か焼して、完成した水素化処理触媒を形成した。完成した水素化処理触媒は、0.3wt%及び0.6wt%のPt及びPd含有量を、それぞれ有していた。
【0071】
(例7)
触媒Gを、例6に記載したものと同様のシリカアルミナ基材から作製し、白金及びパラジウム含有量がそれぞれ0.2wt%及び0.16wt%である以外は、例6に記載したものと同様の手順を用いて白金及びパラジウムを含浸させた。
【0072】
(例8)
触媒Hを、82%の、70:30のアルミナ対シリカ比を有するシリカ−アルミナ(Siral 30、Sasol)、14%のベーマイトアルミナ(Catapal B、Sasol)、及び4%の摩砕したか焼シリカ−アルミナ微粒子(350メッシュより小さい。)の混合物から作製した。アルミナ及びシリカ−アルミナ粉体を、小型のBaker−Perkins混合機内で20分間乾燥混合し、その後、目標の揮発分62%まで、4%の硝酸を含む溶液を噴霧して湿性ドウを形成した。湿性ドウを合計30分間混合し、その後、Loomis RAM押出機に移し、1/16インチのダイインサートを通して加圧し、押出成型物を形成した。押出成型物を高速空気流により130℃にて30分間乾燥し、空気中、680℃にて1時間か焼して、シリカ−アルミナ基材を形成した。得られたシリカ−アルミナ基材は、窒素吸着/脱着により算出した400m
2/gの表面積、0.74cc/gの水銀圧入容積及び0.03cc/gのマクロポア容積を有していた。10グラム(揮発分を除く基準)のシリカ−アルミナ基材に、pHを9.0に調整した、8.5mlの脱イオン水中、0.03グラムの白金(テトラアミン二硝酸塩として)及び0.06グラムのパラジウム(テトラアミン二硝酸塩として)の溶液を用いて、初期湿潤法により含浸させて、反応混合物を形成した。反応混合物を24時間浸漬させ、その後150℃で1時間乾燥し、続いて300℃で更に1時間か焼して、完成した水素化処理触媒を形成した。完成した水素化処理触媒は、0.3wt%及び0.6wt%の白金及びパラジウム含有量を、それぞれ有していた。
【0073】
(例9)
触媒Jを、例6に記載したものと同様のシリカ−アルミナ基材から作製し、シリカ−アルミナ基材の酸性度を抑制するために、16.4グラムのMgNO
3・2H
2O(硝酸マグネシウム無水物)を含浸溶液に添加した以外は、例6に記載したものと同様の手順を用いて白金及びパラジウムを含浸させた。完成した触媒は、それぞれ0.3wt%及び0.6wt%の白金及びパラジウム含有量、並びに3wt%のマグネシウム含有量を有していた。
【0074】
(例10)
触媒Kを、例6に記載したものと同様のシリカ−アルミナ基材から作製し、シリカ−アルミナ基材の酸性度を抑制するために、24.6グラムのMgNO
3・2H
2O(硝酸マグネシウム無水物)を含浸溶液に添加した以外は、例6に記載したものと同様の手順を用いてPt及びPdを含浸させた。完成した触媒は、それぞれ0.3wt%及び0.6wt%の白金及びパラジウム含有量、並びに、4.5wt%のマグネシウム含有量を有していた。
【0075】
(例11)
触媒Lを、例6に記載したものと同様のシリカ−アルミナ基材から作製し、シリカ−アルミナ基材の酸性度を抑制するために、5.6グラムのNa
2NO
3(硝酸ナトリウム)を含浸溶液に添加した以外は、例6に記載したものと同様の手順を用いてPt及びPdを含浸させた。完成した触媒は、それぞれ0.3wt%及び0.6wt%の白金及びパラジウム含有量、並びに3wt%のナトリウム含有量を有していた。
【0076】
(例12)
触媒Mを、例6に記載したものと同様のシリカ−アルミナ基材から作製し、シリカ−アルミナ基材の酸性度を抑制するために、11.3グラムのNa
2NO
3(硝酸ナトリウム)を溶液に添加した以外は、例6に記載したものと同様の手順を用いて白金及びパラジウムを含浸させた。完成した触媒は、それぞれ0.3wt%及び0.6wt%の白金及びパラジウム含有量、及び6wt%のナトリウム含有量を有していた。
【0077】
水素化処理触媒A〜Mの水素化分解活性
水素化処理触媒A〜Mを、本発明の層状触媒システムにおける使用に対して試験した。デカリン転化率として測定される、700°Fにおいて10%未満の、分解活性を有する水素化処理触媒を、本発明のプロセス及び触媒システムにおいて用い得る。水素化処理触媒の分解活性を、42%のシス型及び58%のトランス型デカヒドロナフタレン、別名デカリン(C−10)からなるモデル供給混合物を用いて評価した。供給混合物中のシス型及びトランス型デカリンの厳密な比は、それぞれの成分がこの組成と±5%を超えて異ならない限り、肝要でないと予想される。
【0078】
デカリン転化
全ての触媒のスクリーニング試験に対して、WHSV、ガス速度、及び装置圧力を一定とした。供給原料及び生成物の炭化水素分布の分析を、オンラインGC分析を用いて実施した。全ての触媒の試験に対して、デカリンモデル化合物供給原料の導入に先立って、触媒をH
2流中で還元及び乾燥し、その後、アミン溶液により前処理した。
【0079】
触媒試験の手順は以下の通りである。
1)0.5gの破砕した24〜48メッシュの触媒を、典型的には、1/4インチのステンレス鋼管の中心に位置し、残余のデッドスペースに48〜80メッシュの不活性なアランダムを充填した反応器に充填した。
2)H
2流を常圧にて160ml/分に調節した。
3)反応器温度を750°Fまで徐々に昇温し、1時間保持した。
4)反応器温度を500°Fまで冷却した。
5)反応器を2000psigまで加圧し、H
2流を再調整して160ml/分(常圧基準)を確保した。
6)触媒を、n−へプタン(Aidrich 99%)中、500ppmのt−ブチルアミン(Aidrich 98%)の溶液にて、18時間、0.025ml/min(WHSV 2.05)の速度で、滴定した。
7)滴定供給原料を停止し、5ppmのt−ブチルアミン(Aidrich 98%)を加えたデカリン供給原料(Aidrich 99%)を、0.01ml/min(WHSV 1.08)の速度にて反応器に送り込んだ。
8)4時間の安定化の後、オンラインGCを用いて生成物流の試料採取を行うことにより、500°Fにおけるデカリン転化率を求めた。この温度では、デカリンの分解生成物への転化は僅かに起こるか又は起こらないため、データポイントを、未反応のデカリンのGCベースラインを確定するために使用した。
9)次に反応器温度を700°Fに昇温し、1時間安定化させた後、最終的なデカリン転化率の分析を繰り返した。典型的には、500°F及び700°Fの温度ポイントにおいて、2〜4のデータポイントを取り、平均値を出した。
【0080】
デカリン転化のための試験条件のまとめ
触媒量 0.5g
H
2流速 160ml/min
滴定供給原料液流速 0.025ml/min(WHSV 2.05)
デカリン供給原料液流速 0.01ml/min(WHSV 1.08)
システム全圧力 2000psig
【0081】
この方法を用いると、水素ガス流速及び液流速が比例して規模を変更される限りにおいて、より少量又はより多量の触媒が試験可能であることに留意されたい。
【0082】
データ解析
触媒の残存する分解活性は、500°F(この温度では軽質生成物への転化は想定されない。)との比較における、700°Fでの、シス型+トランス型デカリンの分解生成物への転化率に基づいた。デカリンの他のC
10異性体への開環転化は、重量パーセント基準で、非分解生成物として一緒にまとめた。それ故、イソデカリン(Iso Decalin)群は、n−C9よりも大きな分子量を有するこれらの生成物として定義され、トランス型デカリンを含む。異なる軽質分解生成物の相対的な分布に関しては、区別を行わない。
【0083】
FID分析を用い、全ての炭化水素に対する感度係数(response factor)を1と仮定して、所望のピーク及び群の面積パーセントを算出した。
分解転化率(%)=(1−[(700°Fでの全残存C
10)/(500°Fでの全残存C
10)])×100
【0084】
水素化処理触媒の試験結果
例1から例12中に記載した水素化処理触媒A〜Mの全てを、上記に概説したデカリン転化試験を用いて、分解活性について評価した。これらの結果を以下にまとめる。
【表1】
【0085】
10%未満のデカリン転化率を有する水素化処理触媒A、B、C、D、J、K、L、及びMは、本発明の触媒システム及び本発明のプロセスにおいて用いられる。10%未満のデカリン転化率を有する水素化処理触媒A、B、C、D、J、K、L、及びMは、本発明の層状触媒システムに用いられた場合、脱蝋温度範囲にわたり、目標流動点において、2%以内で潤滑油生成物の収率を維持する。10%未満のデカリン転化率を有する水素化処理触媒A、B、C、D、J、K、L、及びMは、本発明のプロセスに用いられた場合、脱蝋温度範囲にわたり、目標流動点において、潤滑油生成物の収率を維持する。10%を超えるデカリン転化率を有する従来の水素化処理触媒F、G、及びHは、本発明の触媒システムにおいても、本発明のプロセスにおいても用いることができない。触媒F、G、及びHは、脱蝋温度範囲にわたり、目標流動点において、2%を超える潤滑油収率低下をもたらす。
【0086】
目標流動点における潤滑油製造
(例13)
32.5のAPI度を有し、10%のワックス含有量及び5.4cStの100℃における粘度を有するワックス質水素化分解油を、水素化処理反応域、脱蝋反応域、及び水素化仕上げ反応域上において脱蝋した。水素化処理反応域中の水素化処理触媒は、10%未満の予想デカリン転化率を有する、非酸性の、カリウムで中和されたL型ゼオライト担体上の0.64wt%のPtであった。脱蝋反応域中の脱蝋触媒は、65%のSSZ−32を含む、アルミナで結合されたゼオライト触媒上の0.325wt%のPtであった。水素化仕上げ反応域中の水素化仕上げ触媒は、Siral 40及びアルミナ上に結合された0.2%のPt、0.16%のPdであった。用いたプロセス条件は、LHSV1.0、油に対するガス比4000scf/bbl及び全圧力2300psigであり、目標流動点は−15℃であった。反応温度は、水素化処理反応域については450°F、脱蝋反応域については600〜650°F(−15℃の目標流動点を達成するために調整)、そして水素化仕上げ反応域については450°Fであった。潤滑油収率は91%であった。
【0087】
(例14)
32.5のAPI度を有し、10%のワックス含有量及び5.4cStの100℃における粘度を有するワックス質水素化分解油を、第1の反応域、第2の反応域、及び第3の反応域上において脱蝋した。第1の反応域中の水素化処理触媒は、10%未満の予想デカリン転化率を有する、非酸性の、カリウムで中和されたL型ゼオライト担体上の0.64wt%のPtであった。第2の反応域中の脱蝋触媒は、65%のSSZ−32を含む、アルミナで結合されたゼオライト触媒上の0.325wt%のPtであった。第3の反応域中の水素化仕上げ触媒は、Siral 40及びアルミナ上に結合された0.2%のPt、0.16%のPdであった。用いたプロセス条件は、LHSV1.0、油に対するガス比4000scf/bbl及び全圧力2300psigであり、目標流動点は−15℃であった。反応温度は、水素化処理反応域については650°F、脱蝋反応域については600〜650°F(−15℃の目標流動点を達成するために調整)、そして水素化仕上げ反応域については450°Fであった。潤滑油収率は90.5%であった。
【0088】
(例15)(比較)
例15は、水素化処理反応域なしで、例13と同様の条件にて運転を行った。潤滑油収率は89%であった。
【0089】
例13〜15について、結果及び反応条件を以下の表2にまとめる。
【表2】
【0090】
上記の例13〜14は、本発明のプロセスを用いた場合、脱蝋温度(450°F及び650°F)において、目標流動点における潤滑油収率が約2%の範囲内で維持されることを例証している。例15は、水素化処理層がない場合の潤滑油収率を示す。
【0091】
(例16)
30.6のAPI度を有し、12%のワックス含有量及び6.15cStの100℃における粘度を有するワックス質水素化分解油を、第1の反応域、第2の反応域、及び第3の反応域上において脱蝋した。第1の反応域中の水素化処理触媒は、65%のデカリン転化率を有する触媒Gであった。第2の反応域中の脱蝋触媒は、65%のSSZ−32を含む、アルミナで結合されたゼオライト触媒上の0.325wt%のPtであった。第3の反応域中の水素化仕上げ触媒もまた触媒Gであった。プロセス条件は、脱蝋反応域基準のLHSV1.6、油に対するガス比4000scf/bbl及び全圧力2300psigであり、第1の反応域に対するLHSVは10hr
−1であった。生成物の目標流動点は−15℃であり、そのためには、脱蝋域を645°F〜655°Fに維持する必要があった。水素化処理反応域に対する反応温度を250°F〜700°Fで変化させ、水素化仕上げ反応域を450°Fに維持した。温度の潤滑油収率に対する影響を評価するために、反応域1の温度を650°F〜700°Fで変化させた。第1の反応域の170°F〜600°Fの温度範囲に対しては、潤滑油収率は94±1%であった。第1の反応域を650°Fに維持した場合、収率は2%低下して92%であった。収率低下は、665°Fにおいては概ね4%であり、680°F及び700°Fの温度においては、一層より大きかった。第1の反応域をバイパスした場合は、潤滑油収率は93.5%であった。結果を表3にまとめる。
【表3】
【0092】
(例17)
38.9のAPI度を有し、33%のワックス含有量及び4.1cStの100℃における粘度を有するワックス質水素化分解油を、第1の反応域、第2の反応域、及び第3の反応域上において脱蝋した。第1の反応域中の水素化処理触媒は、アルミナ担体上に含浸された0.5wt%のPt及び0.5wt%のLiを有し、10%未満の予想デカリン転化率を有する触媒であった。第2の反応域中の脱蝋触媒は、1.24wt%のCaでイオン交換され、次に0.5wt%のPtを含浸させたHSSZ−32ゼオライト粉体であった。第3の反応域中の水素化仕上げ触媒は触媒Gであった。プロセス条件は、脱蝋反応域基準のLHSV0.85Hr
−1、油に対するガス比4000scf/bbl及び全圧力2300psigであり、第1の反応域に対するLHSVもまた0.85であった。生成物の目標流動点は−15℃であり、そのためには、脱蝋域を595°F〜608°Fに維持する必要があった。水素化処理反応域に対する反応温度を450°F〜650°Fで変化させ、水素化仕上げ反応域を450°Fに維持した。潤滑油収率は74±0.5%であった。第1の反応域をバイパスした場合は、第2及び第3の反応域からの潤滑油収率は75%であった。結果を表4にまとめる。
【表4】
【0093】
(例18)
38.9のAPI度を有し、33%のワックス含有量及び4.1cStの100℃における粘度を有するワックス質水素化分解油を、第1の反応域、第2の反応域及び第3の反応域上において脱蝋した。第1の反応域中の水素化処理触媒は、65%のデカリン転化率を有する触媒Gであった。第2の反応域中の脱蝋触媒は、1.24wt%のCaでイオン交換され、次に0.5wt%のPtを含浸させたSSZ−32ゼオライト担体であった。第3の反応域中の水素化仕上げ触媒は触媒Gであった。プロセス条件は、LHSV0.85、油に対するガス比4000scf/bbl及び全圧力2300psigであった。生成物の目標流動点は概ね−40℃であり、そのためには、脱蝋域を610°F〜630°Fに維持する必要があった。水素化処理反応域に対する反応温度を650°とし、水素化仕上げ反応域を450°Fに維持した。潤滑油収率を下記の表5に示す。類似の条件下で運転した水素化処理層を欠くシステムと比較すると、水素化処理層のないシステムについての潤滑油収率が概ね18%大きかった。
【表5】
【0094】
上記例16及び例18は、脱蝋層の前にある水素化処理層中で高デカリン転化率を示す触媒を用いた場合、脱蝋温度(650°F以上)において、目標流動点における潤滑油収率低下(>2%)が起こることを例証している。例17(表4)は、水素化処理層中の触媒が低デカリン転化率を有する場合に、潤滑油収率を維持することを示している。
【0095】
(例19)
34.8のAPI度を有し、35%のワックス含有量及び7.9cStの100℃における粘度を有するワックス質水素化分解油を、第1の反応域、第2の反応域、及び第3の反応域上において脱蝋した。第1の反応域中の水素化処理触媒は、2.7%のデカリン転化率を有する触媒Dであった。第2の反応域中の脱蝋触媒は、アルミナで結合され、0.325wt%のPtを含み、マグネシウムにより促進された(助触媒化された)、65%のSSZ−32型ゼオライトを有する、貴金属が結合したゼオライト触媒であった。第3の反応域中の水素化仕上げ触媒は触媒Gであった。プロセス条件は、一体化した水素化処理及び脱蝋反応域基準のLHSV2.0、油に対するガス比4000scf/bbl及び全圧力2300psigであり、第1の反応域に対するLHSVが6.7、第2の反応域に対するLHSVが2.4であった。生成物の目標流動点は−16℃であり、そのためには、脱蝋域を680°Fに維持する必要があった。水素化処理反応域に対する反応温度を脱蝋域の温度と同一に維持し、水素化仕上げ反応域を450°Fに維持した。潤滑油収率は87.6%であった。第1の反応域がない場合における、類似の生成物の流動点におけるデータも提示するが、665°Fの温度を必要とし、85%の実測収率となる。
【表6】
この例から、本発明のプロセスによって、680°Fの温度において、潤滑油収率が維持される、及び向上さえすることが分かる。
【0096】
本発明には、本明細書に記載された教示及び裏付けのための例に照らして可能となる、多くの変化形が存在する。それ故、添付の特許請求の範囲内で、本発明は、本明細書に具体的に記載又は例示されるもの以外の形態で実施され得ると理解される。
本発明に包含され得る諸態様は、以下のように要約される。
[1].
ワックス質炭化水素供給原料を接触的に脱蝋して潤滑油を生産するためのプロセスであって、
a)第1の反応域内で、ワックス質炭化水素原料を、供給原料の芳香族含有量が低減される水素化処理条件下で水素化処理触媒に接触させて、第1の留出物を形成するステップであって、水素化処理触媒が、
i)無機酸化物担体上に担持された第VIII族金属を含み、
ii)10%未満の700°Fにおけるデカリン転化率を示し、
iii)触媒1g当たり0.25meq未満の酸点を含む
前記ステップ、及び
b)第2の反応域内で、第1の留出物の少なくとも一部を、脱蝋条件下で脱蝋触媒に接触させて潤滑油を生産するステップであって、潤滑油が第1の留出物の流動点よりも低い流動点を有する前記ステップを含む、
上記の潤滑油生産プロセス。
[2].
供給原料中の芳香族の含有量が少なくとも20%低減される、上記[1]項に記載のプロセス。
[3].
供給原料中の芳香族の含有量が少なくとも30%低減される、上記[1]項に記載のプロセス。
[4].
脱蝋温度範囲が450°F〜750°Fである、上記[1]項に記載のプロセス。
[5].
脱蝋温度範囲が600°F〜675°Fである、上記[4]項に記載のプロセス。
[6].
脱蝋条件と水素化処理条件とが同一である、上記[1]項に記載のプロセス。
[7].
目標流動点が−10℃〜−45℃の範囲にある、上記[1]項に記載のプロセス。
[8].
水素化処理触媒及び脱蝋触媒が同一反応器内にある、上記[1]項に記載のプロセス。
[9].
水素化処理触媒と脱蝋触媒とが約1:20〜約1:2の比にある、上記[1]項に記載のプロセス。
[10].
水素化処理触媒と脱蝋触媒とが約1:20〜約1:10の比にある、上記[9]項に記載のプロセス。
[11].
供給原料が約10ppm未満の窒素を含む、上記[1]項に記載のプロセス。
[12].
供給原料が約2ppm未満の窒素を含む、上記[1]項に記載のプロセス。
[13].
無機酸化物が非晶質材料を含む、上記[1]項に記載のプロセス。
[14].
無機酸化物が、シリカ、アルミナ、チタニア、マグネシア、ジルコニア、及びそれらの組み合わせからなる群より選択される、上記[13]項に記載のプロセス。
[
15].
無機酸化物が結晶質材料を含む、上記[1]項に記載のプロセス。
[16].
無機酸化物が、シリコアルミノリン酸塩、ゼオライト、メタロアルミノリン酸塩、及びそれらの組み合わせからなる群より選択される、上記[15]項に記載のプロセス。
[17].
第VIII族金属が、白金、パラジウム、又はそれらの組み合わせである、上記[1]項に記載のプロセス。
[18].
潤滑油の少なくとも一部を、第3の反応域中において、水素化仕上げ触媒に接触させるステップを更に含む、上記[1]項に記載のプロセス。
[19].
a)無機酸化物担体上に担持された第VIII族金属を含み、700°Fにおいて10%未満のデカリン転化率を示す水素化処理触媒、及び
b)第VIII族金属と、ゼオライト、ゼオライト類似体、非ゼオライト系モレキュラーシーブ、酸性クレー、又はそれらの組み合わせからなる群より選択される酸性成分とを含む脱蝋触媒
を含み、水素化処理触媒と脱蝋触媒とが約1:20〜約1:2の比にある、層状触媒システム。
[20].
水素化処理触媒の第VIII族金属が、白金、パラジウム、又はそれらの組み合わせである、上記[19]項に記載の層状触媒システム。
[21].
脱蝋触媒の第VIII族金属が、白金、パラジウム、又はそれらの組み合わせである、上記[19]項に記載の層状触媒システム。
[22].
無機酸化物が、シリカ、アルミナ、チタニア、マグネシア、ジルコニア、シリコアルミノリン酸塩、ゼオライト、メタロアルミノリン酸塩、及びそれらの組み合わせからなる群より選択される、上記[19]項に記載の層状触媒システム。