【実施例】
【0038】
図1に例示の工作機械を参照し、以下に、本文脈において関連のある工作機械の座標軸について説明する。機械ベッド10の右側(
図1を参照)には、ワークテーブル6が、水平面に配置され、ワーク2(
図1では不図示)、例えば、外歯車をクランプするために従来と同じように構成されている。よって、軸方向キャリッジ3(後に説明)の移動方向と同じ配向性を有する歯車軸Zが、垂直に向けられている。歯車2の歯車軸Z周りの回転方向は、Cで示されている。
【0039】
それ自体周知の設計によれば、機械ベッド10の左側(
図1を参照)に配置されている径方向キャリッジ1は、ワークテーブル6に対して直線移動可能に構成されている。ワークテーブル6にクランプされた歯車2に対する径方向の移動によって、径方向Xが定義される。径方向キャリッジ1の径方向位置は、本発明の方法の一実施の形態において、送り込みパラメータを表す。
【0040】
径方向キャリッジ1上には、軸方向キャリッジ3が、径方向Xに直交する軸方向Zに移動可能に配置されている。軸方向Zはまた、歯車軸の方向でもある。
【0041】
軸方向キャリッジ3上に傾斜可能に配置されているのは、接線方向キャリッジ9のスライド移動を案内するキャリッジベッドを有する更なるキャリッジ機構であり、これにより更なる(第3の)直線移動を行うことができる。
図1に示す位置において、接線方向キャリッジ9は、軸方向キャリッジ3に対して傾斜しておらず、接線方向キャリッジ9の移動軸Yは、X−Z平面に対して直角である。接線方向キャリッジ9が傾斜方向Aに傾斜すると、接線方向Yは、Z軸の垂直平面から傾斜角度Aだけ傾斜する。よって、傾斜移動は、径方向Xに対して直角の平面上で起きる。
【0042】
接線方向キャリッジ9上に配置されているのは、工具主軸7を有する工具ヘッド5である。工具主軸7は、Y方向(工具軸)に配向されるとともに、ワークテーブル上にクランプされた歯車2を加工するための工具を保持するように設計されている。ここで、図示の例の工具は、輪郭研削砥石車0である(
図2参照)。よって、輪郭研削砥石車0は、工具軸Yに対して直角に延在し、砥石車の回転平面と歯車軸Zとの間の傾斜角度は、工具軸YがZ軸(歯車軸)の垂直平面から傾斜する傾斜角度Aと等しい。接線方向における工具位置は、同様に、可能な送り込みパラメータを表す。工具軸周りの回転方向は、Sで示されている。
【0043】
例えば、右ねじれ外はすば歯車に対する従来の不連続輪郭研削のように、傾斜角度を歯車の歯のねじれ角に一致するように設定すると、接線方向キャリッジ9は、右ねじれ外はすば歯車(例えば、ねじれ角β=25°)のために、
図1における矢印Aの反対方向に傾斜させる必要があるが、左ねじれはすば歯車の場合の傾斜角度は、プラスとなる。
【0044】
ドレッシング装置の直線移動軸Z2及びドレッシング砥石車8の主軸の回転軸S2を有する追加キャリッジ4は、同様に全体設計の一部であるが、本発明を定義するために必要なものではないためさらには説明はしない。当業者にとっては周知の、軸X、Y、及びZ(Z2)に沿った各直線移動及び軸Z、C、S、及びX周りの各回転移動を行うための駆動機構についても同様である。
【0045】
図2a及び2bに、2つの異なる視線の方向から見た時の関連の軸X、Y、Z、及びAを、工作機械部分を除いた状態で概略的に示す。破線によって描かれるのは、非傾斜位置での輪郭研削ディスクであり、実線で描かれる輪郭研削ディスク0は、右ねじれ外はすば歯車を研削するために角度A=−27°傾斜させたものである。
【0046】
このように定義された機械軸を用いて、以下に本発明の第1実施例をさらに詳細に説明する。右ねじれ外はすば歯車(β=25°)は、径方向(X)送り込みによる不連続輪郭研削の両歯面(デュアル・フランク)プロセスで加工されるものである。この作業のために設けられる輪郭研削砥石車は、歯車2の所望の最終
歯面形状を生成するために、砥石車が最後の研削パスにおいて傾斜角度−27°で動作させることが必要となるように設計されている。つまり、輪郭研削砥石車は、ねじれ角よりも大きな絶対値の設計角度又は公称角度を有して、すなわち|A
0|=27°>25°=βとなるように、構成されている。従来の不連続輪郭研削では、本明細書の導入部分ですでに説明したとおり、この構成の輪郭研削砥石車を傾斜角度−27°に設定し、一連の等距離の送り込みステップを使用して歯車2の歯面から存在する取代qをプロセスにおいて取り除く。
【0047】
対照的に、本発明の好適な実施によれば、最初の送り込みステップのために、砥石ディスク0を設計角度A
0とは異なる傾斜角度Aに設定し、それによって、より大きな係合面積を、輪郭研削砥石車0と歯車2との間の相対的な条件として得、それにより、研削パスにわたって均一な量の材料を除去する。設定すべき傾斜角度Aを決定するために、
歯面形状のパラメータと、工具及び/又はワークの制御可能な移動軸に対して指定可能なパラメータとの間の数学的に予測可能な依存関係を使用する。径方向Xに送り込む際、取代q及びプロファイル角度ずれ量f
Hαは、
歯面形状の関連パラメータとして考えられる一方、移動軸に対して指定されるパラメータは、(最初の送り込みステップにおける)偏位傾斜角度A1と設計角度A
0との差δAとして表される傾斜角度設定と、最終の
歯面形状が得られる最大可能送り込みからのずれδXを用いて表される送り込みパラメータXとによって表わされる。
【0048】
これらの依存関係は、例えば、歯数、歯車の歯のモジュール及び圧力角等の定義された一組の更なるパラメータ並びに砥石車の直径のために計算することができ、取代q及びプロファイル角度ずれ量f
Hαについてグラフ3a〜3dに視覚的に表わされる。
図3aは、依存関係q(δX)を示し、
図3bは、依存関係f
Hα(δX)を示し、
図3cは、依存関係f
Hα(δA)を示し、
図3dは、依存関係q(δA)を示す。最初の2つのグラフ3a,3bは、傾斜角度A
kが設計角度A
0と等しい場合に適用可能である。残りの2つのグラフ3c,3dは、設計角度A
0からδAずれた角度Aを用いて最後の加工パスの後に設定されるプロファイル角度ずれ量f
Hα及び取代qを示している。
【0049】
これら依存関係に基づき、まず、最初の送り込みステップの傾斜角度A1及び送り込み量δX1を、最初の研削パス後に得られる取代qを逐次代入の入力量として入力することを起点として、ゼロに等しいプロファイル角度ずれ量f
Hαを得るような繰り返し逐次代入によって決定する。手作業で行う場合、逐次代入の第1のステップは、以下のように説明できる。第1の研削パスの後に得られる取代q=50μmについて、
図3aは、削り接触(スクレイピング・コンタクト)のための軸方向距離と最終の軸方向距離との間の約0.12mmの差を示している。
図3bによれば、δX=0.12mmの場合、プロファイル角度ずれ量f
Hαは、約17μmとなることが予測されるはずである。このプロファイル角度ずれ量は、傾斜角度を変更することによって補正される。−17μmの補正すべきプロファイル角度ずれ量に関し、
図3cのグラフは、傾斜角度の大きさを設計角度に対して約0.13°減少させる必要があることを示している。しかしながら、
図3dにおけるこの傾斜角度補正による取代の参照(ルックアップ)値は、目標値よりも約7μm大きい。これは、砥石車が、送り込みq=50+7=57μmで接触点に達することを意味している。しかしながら、接触点は送り込みq=50μmで起こるため、軸方向距離を、逐次代入の次のステップのために減少させる必要がある。その結果、逐次代入サイクルは、例えば、減少させた軸方向距離と関連付けられる送り込み量と組み合わせた傾斜角度の変更による送り込み補正の、目標送り込み量に対するずれが、特定の閾値、例えば10−2μmより小さくなって十分な収束基準値に達するまで、より短い軸方向距離で続けられる。
【0050】
各送り込みとそれに続く加工パスの後、新たな減少させた送り込み量から、傾斜角度の新たな計算を行うことができる。このプロセスにおいて、傾斜角度の設定値A
kは、傾斜角度Anが設計角度A
0と等しくなるように設定された最後の送り込みステップnまで、設計角度A
0に連続的に近づく。よって、送り込みステップに続く加工パスで得られる取代qkが、目標値として与えられる。これはまた、例えば、最初の取代q0=100μmが、最終形状に至るまで、各パス毎に20μmずつ除去する4回の荒加工パスと1回の仕上げ加工パスで除去されるシーケンスで自動的に行われる。
【0051】
径方向送り込みで、逐次代入が収束しない場合、設計角度の大きさとねじれ角の大きさとの差が十分大きくないということになる。よって、適切に選択されたより大きな角度の設計角度を有する砥石車を使う必要がある。設計角度A
0を選択する際の考えられる開始点は、ねじれ角βと最大設計角度との間の中間の大きさの角度であり、これは、工具のその外径における必要な厚さを考慮する、所望の
歯面形状を生成するタスクにも適用可能である。あるいは、工具直径が大きくなるほど小さくなるこの最大可能設計角度を、直接最初の選択とすることもできる。
【0052】
もし関連する範囲の依存関係が、概ね
図3a〜3dの場合のように、線形関係からほんのわずかだけずれている場合、逐次代入法を、他の手法に置き換えることもできる。この他の手法では、以下の線形方程式系を解くことによって、未知の量が分かる。
Ωx=b、
(式中、ベクトルx=(δX,δA)は、未知の量を表し、ベクトルb=(qnom、0)は、目標値を表し、マトリクス値Ω11,Ω12,Ω21,及びΩ22は、(この順に)
図3a、3d、3b、及び3cのグラフにおけるそれぞれの傾きを表す)。
【0053】
しかしながら、この種の線形化が十分に正確な依存関係を表さない場合は、上記したコンピュータ支援による逐次代入手法をそのまま使用するのが好ましい。逐次代入手法においてf
Hαのための目標値が、ゼロではなくプロファイル角度ずれ量よりもいずれにせよ小さい(より低い)閾値に設定される場合であっても、従来の技術を用いる最初の研削パス後、より均一に材料が除去されるとともに逐次代入の収束範囲が増加するという利点がまだあるということを期待すべきである。
【0054】
図4a〜4dは、
図3a〜3dの近似の依存関係を示し、砥石車が、最後の研削パスにおいて傾斜角度−20°となるように、すなわち、ねじれ角β(ここでも(右ねじれ外はすば歯車の)25°に選択される)よりも小さい絶対値の設計角度を有して設計された場合を例示している。正負符号に関して、依存関係f
Hα(δX)及びq(δX)の傾きは、変わらないが、依存関係f
Hα(δA)及びq(δA)の傾きは符号が反転している。しかしながら、続く研削パスkを用いる各送り込みのための傾斜角度A
kの計算及びそれぞれの送り込み量の原則は同じである。
【0055】
接戦方向送り込みYでは、ねじれ角βを含む範囲内にある、工具の設計角度を使用することが可能である。よって、工具もまた、ねじれ角それ自身、径方向Xの送り込みでは満足度のより低い結果しか生み出さない手法で、設計することができる。
【0056】
図5a〜5dは、右ねじれ外はすば歯車の例の場合の、接戦方向送り込みの際に考慮すべき関連する依存関係を示す。ここで
β=25°及び設計角度|A
0|=27°、
すなわち、
図3のパラメータである。
【0057】
最後に、β=8.3°の内歯車及び絶対値13°の設計角度の例における、前記グラフに示すような近似の依存関係を、径方向送り込みの場合について
図6a〜6dに、接戦方向送り込みの場合について
図7a〜7dに示す。この場合も、すでに説明したようなdA及びdX(dY)の整合のプロセスを、取代q0から始まり
歯面毎に0.5mmを超える量に至るまで行うことができる。