(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6095267
(24)【登録日】2017年2月24日
(45)【発行日】2017年3月15日
(54)【発明の名称】三相永久磁石式同期モータ
(51)【国際特許分類】
H02K 21/22 20060101AFI20170306BHJP
【FI】
H02K21/22 M
【請求項の数】4
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2012-38656(P2012-38656)
(22)【出願日】2012年2月24日
(65)【公開番号】特開2013-176202(P2013-176202A)
(43)【公開日】2013年9月5日
【審査請求日】2015年2月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】509142069
【氏名又は名称】株式会社クリーンクラフト
(74)【代理人】
【識別番号】100075410
【弁理士】
【氏名又は名称】藤沢 則昭
(74)【代理人】
【識別番号】100135541
【弁理士】
【氏名又は名称】藤沢 昭太郎
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 研二
【審査官】
田村 惠里加
(56)【参考文献】
【文献】
特開2010−178442(JP,A)
【文献】
特開2010−098937(JP,A)
【文献】
特開2011−166868(JP,A)
【文献】
特開2007−295768(JP,A)
【文献】
特表平11−500897(JP,A)
【文献】
特開平09−037496(JP,A)
【文献】
特開2002−233122(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 21/00−21/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転子の磁極の数をPとし、固定子の溝の数をNとしたときの分数2N/3Pが整数でない、アウターロータ方式の三相の永久磁石式同期モータにおいて、
前記回転子の磁極の数を20、前記固定子の溝の数を24とし、
回転子の磁極の面に空隙を介して対面する固定子の歯の周方向の歯幅を固定子の溝ピッチの1/2にし、
前記回転子の、前記固定子に対向する面に溝を設けて嵌め込まれる永久磁石の形状は、前記固定子の歯と対向する面と当該永久磁石の外周面の形状を夫々外側に湾曲したものとし、前記永久磁石の外側の湾曲面を形成する円弧の両端と当該円弧の中心点とが形成する角度は、当該永久磁石の内側の湾曲面を形成する円弧の両端と前記中心点とが形成する角度よりも大きく設け、
前記回転子において、隣接する前記永久磁石同士の間に前記固定子に対向して凹部を設け、
前記回転子の極ピッチに対する永久磁石の幅の割合を2/3としたことを特徴とする、三相永久磁石式同期モータ。
【請求項2】
前記固定子の歯先の両側角部に曲がり面を施したことを特徴とする、請求項1に記載の三相永久磁石式同期モータ。
【請求項3】
前記固定子の歯の半径方向の断面を、歯先部から歯元部まで略等しくするか、歯先部に比して歯元部を大きくし、コイルを予め巻き付けた巻き線ユニットを歯先部から装着可能にしたことを特徴とする、請求項1又は2に記載の三相永久磁石式同期モータ。
【請求項4】
前記三相永久磁石式モータは電気自動車用のインホイールモータであることを特徴とする、請求項1〜3の何れかに記載の三相永久磁石式同期モータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、電気自動車の駆動用モータ等においてズムーズな回転が得られる好適な三相永久磁石式の同期モータに関するものである。
【背景技術】
【0002】
三相の永久磁石式同期モータにおいては、回転子の磁極の数をP、固定子の溝の数をNとした場合、2N/3Pが整数であるモータが一般的に使用されている。しかし、この種のモータではコギングトルクが大きいという問題がある。そこで、このコギングトルクを低減するため、2N/3Pが整数でない分数溝モータとし、磁極の数Pと溝の数Nとの組み合わせを特定することによりコギングトルクを低減する技術が提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、磁極の数をP、溝の数をNとしたとき、N/Pを、1<N/P≦1.2にすることにより、コギングトルクを低減できることが示されている。
【0004】
また、特許文献2には、磁極の数をP、溝の数をNとしたとき、溝数Nを
N=3×〔P/2−INT(P/10)〕にすることにより、コギングトルクを低減できることが示されている。但し、INT(P/10)はPを10で除した商の整数部の値を示す。
【0005】
【特許文献1】特開2003−250254号公報
【特許文献2】特開2003−032983号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前記特許文献1及び2には、モータを分数溝形式とし、磁極の数と溝の数とを所定の関係にすることにより、モータのコギングトルクが低減することが示されているが、磁極の数と溝の数を所定の関係にすることのみによっては、コギングトルクを十分に小さくすることはできない。
【0007】
そこで、この発明はこれらの従来技術を改善すべく、永久磁石式の同期モータにおいて、モータを分数溝形式とするとともに、固定子又は回転子の溝ピッチと溝の幅(歯の幅)との関係を特定の関係にすることにより、コギングトルクを著しく低減させる、三相永久磁石式同期モータを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1の発明は、回転子の磁極の数をPとし、固定子の溝の数をNとしたときの分数2N/3Pが整数でない、アウターロータ方式の三相の永久磁石式同期モータにおいて、前記回転子の磁極の数を20、前記固定子の溝の数を24とし、回転子の磁極の面に空隙を介して対面する固定子の歯の周方向の歯幅を固定子の溝ピッチの1/2にし、前記回転子の、前記固定子に対向する面に溝を設けて嵌め込まれる永久磁石の形状は、前記固定子の歯と対向する面と当該永久磁石の外周面の形状を夫々外側に湾曲したものとし、前記永久磁石の外側の湾曲面を形成する円弧の両端と当該円弧の中心点とが形成する角度は、当該永久磁石の内側の湾曲面を形成する円弧の両端と前記中心点とが形成する角度よりも大きく設け、前記回転子において、隣接する前記永久磁石同士の間に前記固定子に対向して凹部を設け、
前記回転子の極ピッチに対する永久磁石の幅の割合を2/3とした三相永久磁石式同期モータとした。
【0009】
また、請求項2の発明は、請求項1の発明において、前記
固定子の歯先の両側角部に曲がり面を施した、三相永久磁石式同期モータとした。
【0011】
また、請求項
3の発明は、請求項
1又は2の発明において、前記固定子の歯の半径方向の断面を、歯先部から歯元部まで略等しくするか、歯先部に比して歯元部を大きくし、コイルを予め巻き付けた巻き線ユニットを歯先部から装着可能にした、三相永久磁石式同期モータとした。
【0012】
また、請求項
4の発明は、請求項
1〜3の何れかの発明において、前記三相永久磁石式モータは電気自動車用のインホイールモータであるものとした。
【発明の効果】
【0013】
請求項
1〜4の発明によれば、モータを分数溝方式とし、
固定子の周方向の歯先幅を、溝ピッチの1/2にすることにより、コギングトルクを
ゼロにすることが出来る。また、特に請求項
3は、さらに、固定子の歯の断面を歯先部から歯元部まで略均一にするか又は歯先部に比して歯元部を大きくしているため、予めコイルが組み立てられた巻き線ユニットを歯先から装着可能にしているので、巻き線作業が容易になり、また、溝内の巻き線の占有率を高くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】この発明の実施例1のアウターロータ式モータの回転子と固定子の関係を示す断面図である。
【
図3】
図2に基づくコギングトルクの解析グラフ図である。
【
図4】この発明の実施例1の固定子の歯に巻き線ユニットの装着工程説明図である。
【
図5】この発明の実施例1の固定子の歯に巻き線ユニットを装着した断面図である。
【
図6】この発明の実施例2のアウターロータ式モータの回転子と固定子の関係を示す断面図である。
【
図7】この発明の実施例1のアウターローラ式モータを電気自動車のインホイールモータとして適用した概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
この発明は、回転子又は固定子の磁極の数をPとし、固定子又は回転子の溝の数をNとしたときの分数2N/3Pが整数でない、三相の永久磁石式同期モータにおいて、回転子又は固定子の磁極の面に空隙を介して対面する固定子又は回転子の歯の周方向の歯幅を固定子又は回転子の溝ピッチの略1/2にした三相の永久磁石式同期モータとした。
【0016】
これにより、コギングトルクを著しく低減することが出来る。
【実施例1】
【0017】
以下、この発明の実施例1を図に基づいて説明する。当該アウターロータ式モータ1は、略円形の固定子2と当該固定子2の外側を周方向に回転する円筒状の回転子3から構成されている。前記回転子3は内面に多数の永久磁石4を備え、その永久磁石4に対面して、前記固定子2の外周の所定間隔ごとに放射状に配設された複数本の歯5が配置されている。また、前記隣接する歯5の間には溝6が形成されている。
【0018】
そして、前記回転子3の磁極の数は20であり、固定子2の前記溝6の数は24である。従って、回転子3の磁極の数P、固定子2の溝の数Nとした場合、2N/3Pは0.8となり、分数溝となっている。また、固定子2の歯5の半径方向の断面は、歯先部から歯元部まで同大同形の方形となっている。また、図示は省略したが、前記固定子2の各歯5の外周にはコイルが巻き回される。
【0019】
図2は、回転子3の永久磁石4の幅L
1、極ピッチL
2と固定子2の歯5の歯幅L
3及び溝6の溝ピッチL
4の関係を示す。極ピッチL
2に対する磁石幅L
1の割合は0.6〜0.8程度にするのが一般的であるが、後述の解析に際しては、極ピッチL
2に対する磁石幅L
1を2/3としている。また、前記歯5の歯幅L
3に対する溝ピッチL
4の割合は、概ね2倍となっている。
【0020】
そして、回転子3側の磁石起磁力(A)、固定子2の磁気サセプタンス(λ)、両者を掛け合わせた磁束密度(B)、これを2乗して磁気エネルギー分布(D=B
2)となる。そして、全周でDを積分して総磁気エネルギー量(Qm)、回転子3の回転方向の変異(x)、電磁力(F)とすると、電磁力(F)の計算アルゴリズムは以下となる。
【0021】
【数1】
【0022】
そして、数理解析ソフト(商品名「マスマティカ」)を用いて解析した結果を
図3に示す。
図3は溝ピッチL
4に対する歯幅L
3を変えてコギングトルクの最大値の動きを見たものである。
【0023】
磁極の数は20、溝の数(歯の数)を24とした場合のシミュレーション結果では、歯幅L
3/溝ピッチL
4=1/2のときにコギングトルクは実質ゼロとなる。なお、磁極の数、溝の数及び磁極数と溝数の関係を変更した場合にも、同様の傾向が示された。
【0024】
また、この発明では、
図1に示すように、各歯5の歯先部5aから両側に突出したウイングを取り去っている。この様な歯先部5aから歯元部5bまで断面形状が等しいか、歯先部5aから歯元部5bに行くにしたがって徐々に断面形状が大きくなっている場合は、
図4に示すように、予めボビン23にコイル24を巻き付けた巻き線ユニット25を多数製作し、これを固定子2の各歯5に、先端から挿入することにより、コイルの巻き付けが容易にできる。
【0025】
この巻き線ユニット25のコイル24の外側を巻き紙で固定するとか、或いは、コイル24を接着剤で固定するなどして公知の方法でボビン23に巻き付けたコイル24が崩れないようにする。また、各歯5に巻き線ユニット25を装着した後は、歯5に適宜固定し、コイル24を相互に結線する。
【0026】
また、上記の構成では、固定子2の外部でフライア等を用いてコイル24を巻くので、従来のノズル空間を考慮することなく潤沢に巻くことができ、かつ、矩形断面の導体などもコイルに活用できる。試算では、磁極数20、溝の数24個の場合、ノズル方式でのコイル巻きに比べ、1.5倍のコイルの収納が可能である。
【0027】
また、歯5に巻き線ユニット25を装着した後は、
図5に示すように、歯5の先端部に溝部26を設け、また、巻き線ユニット25のボビンの先端に前記溝部26に嵌合する突部27を設け、歯5に巻き線ユニット25を係止し、溝6から飛び出さないようにすることが出来る。また、歯先部5aの周方向先端部には、高周波のトルクノイズを防止するため、また、巻き線ユニット25の挿入を容易にするため、アールを付けることが望ましいた。
【実施例2】
【0028】
また、
図6は、この発明の歯の形状の実施例2を示すものである。図に示す通り、アウターロータの永久磁石4に対面する歯5´の歯先部5a´の幅を溝ピッチの1/2とし、当該歯5´の歯先部5a´以外の部分の歯幅を大きくしたものであり、他の構成は実施例1と同じである。
【0029】
この実施例2の場合も、分数溝の採用及びアウターロータを利用して前記巻き線ユニット25を各歯5に差し込むことが出来る。分数溝ゆえに歯頭(ウイング)がなくても磁束利用率は保持できる。また、積極的に歯幅を調整して脈動トルクを低減することが出来る。
【0030】
次に、この発明の三相永久磁石式同期モータを電気自動車のインホイールモータとして適用した時の概略構成図を
図7に示す。
【0031】
図示したように、固定子2とその外側の回転子3から成るアウターロータ式モータ1は、略円筒形状のリム8とディスク9から成るホイール10内に収容されている。ホイール10のディスク9は、シャフト11の端部に備わるフランジ12にボルト13により固定されている。フランジ12はボルト14によりモータ1の外側を被うモータカバー15と固定されている。
【0032】
従って、回転子3が回転することにより、その回転はモータカバー15、フランジ12、ホイール10の順に伝えられ、リム8に取り付けられたタイヤ16が回転する。固定子2は、その内側のインナーフレーム17に固定されており、インナーフレーム17とシャフト11の間にはベアリング18が介在されている。インナーフレーム17は、ボルト19によりナックル20に固定される。また、ディスクキャリパー21が前記ボルト19により前記ナックル20に固定され、前記シャフト11の外周に固定されたブレーキディスク22を把持自在となっている。
【0033】
なお、上記実施例ではアウターロータ式モータの例を示したが、この発明は、インナーロータ式モータにも適用できるものである。
【符号の説明】
【0034】
1 アウターロータ式モータ 2 固定子
3 回転子 4 永久磁石
5 歯 5a 歯先部
5b 歯元部 5´ 歯
5a´ 歯先部 6 溝
8 リム 9 ディスク
10 ホイール 11 シャフト
12 フランジ 13 ボルト
14 ボルト 15 モータカバー
16 タイヤ 17 インナーフレーム
18 ベアリング 19 ボルト
20 ナックル 21 ディスクキャリパー
22 ブレーキディスク 23 ボビン
24 コイル 25 巻き線ユニット
26 溝部 27 突部