特許第6095290号(P6095290)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6095290-パネルの接合構造 図000002
  • 特許6095290-パネルの接合構造 図000003
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6095290
(24)【登録日】2017年2月24日
(45)【発行日】2017年3月15日
(54)【発明の名称】パネルの接合構造
(51)【国際特許分類】
   E04B 1/684 20060101AFI20170306BHJP
   F16J 15/10 20060101ALI20170306BHJP
   E04B 2/56 20060101ALI20170306BHJP
【FI】
   E04B1/684 B
   F16J15/10 T
   F16J15/10 C
   E04B2/56 621L
【請求項の数】2
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2012-165013(P2012-165013)
(22)【出願日】2012年7月25日
(65)【公開番号】特開2014-25226(P2014-25226A)
(43)【公開日】2014年2月6日
【審査請求日】2015年4月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】596066482
【氏名又は名称】明正工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096884
【弁理士】
【氏名又は名称】末成 幹生
(72)【発明者】
【氏名】永上 修一
【審査官】 蔵野 いづみ
(56)【参考文献】
【文献】 特開平03−208954(JP,A)
【文献】 実開昭61−170610(JP,U)
【文献】 実公平02−024815(JP,Y2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 1/684
E04B 2/56
F16J 15/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
パネル状の芯材の表面側および裏面側に外面材が貼られたパネルの側端部どうしを接合するパネルの接合構造であって、
一方の側端部に、表面側および裏面側の各外面材が突出する突出部を形成することにより側端部に沿って延びる溝状の凹部を形成し、
他方の側端部に、前記凹部内に嵌合され、嵌合状態で、該凹部を形成する前記表面側および裏面側の各外面材に対し、表面側および裏面側の各外面材がそれぞれ対向する凸部を形成し、
前記凹部に前記凸部を嵌合した接合部の表面側には、
前記一方の側端部の外面材と前記他方の側端部の外面材との間に、前記凹部の開口側から奥側に向かって、前記一方の側端部の外面材によって外部から遮蔽された状態に覆われて側端部に沿って延びる第1のシール空間部と第2のシール空間部とが設けられ、
前記第1のシール空間部には、第1のシール材が充填され、
前記第2のシール空間部には、第2のシール材が、前記凹部の内面と前記凸部の外面とに密着して設けられるとともに、この第2のシール材と前記第1のシール空間部との間に、側端部に沿って延びる表面側の中樋部が形成されていること
を特徴とするパネルの接合構造。
【請求項2】
前記接合部の裏面側には、前記一方の側端部の外面材と前記他方の側端部の外面材との間に、側端部に沿って延びる裏面側の中樋部が形成されていること
を特徴とする請求項1に記載のパネルの接合構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数が接合されて屋根や外壁等を構成する建材用のパネルの接合構造に関する。
【背景技術】
【0002】
工場や倉庫等の屋根や外壁等を、複数のパネルを接合することによって簡易に施工する場合がある。特に、一対の金属板の間に断熱材を芯材として挟んだ金属サンドイッチパネルは、密閉性や断熱機能に優れるため、例えば養鶏所等の畜舎やキノコ栽培棟等の農畜産施設の屋根用あるいは外壁用パネルとして需要が高まっている。
【0003】
このようなパネルを接合する構造としては、一端側の接合端部に形成した溝状の凹部に他端側の接合端部に形成した凸部を嵌合させる形態が知られており、これに加えて、接合端部に装着した係合部材どうしを接合と同時に係合させて接合状態や止水性を確保する形態が提案されている(特許文献1等)。また、一般には接合部の境界に変成シリコン材等からなるシール材を埋め込むといった手法が採られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−168820号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献に記載の接合構造によっても止水性が十分に確保されない場合があり、また、上記シール材は紫外線に晒されることにより劣化が進行し、長期にわたる高い止水性が確保しにくいといった問題があった。
【0006】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであって、その主な目的は、紫外線による止水性の劣化が抑えられるとともに、従来よりも止水効果の向上が図られるパネルの接合構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のパネルの接合構造は、パネル状の芯材の表面側および裏面側に外面材が貼られたパネルの側端部どうしを接合するパネルの接合構造であって、一方の側端部に、表面側および裏面側の各外面材が突出する突出部を形成することにより側端部に沿って延びる溝状の凹部を形成し、他方の側端部に、前記凹部内に嵌合され、嵌合状態で、該凹部を形成する前記表面側および裏面側の各外面材に対し、表面側および裏面側の各外面材がそれぞれ対向する凸部を形成し、前記凹部に前記凸部を嵌合した接合部の表面側には、前記一方の側端部の外面材と前記他方の側端部の外面材との間に、前記凹部の開口側から奥側に向かって、前記一方の側端部の外面材によって外部から遮蔽された状態に覆われて側端部に沿って延びる第1のシール空間部と第2のシール空間部とが設けられ、前記第1のシール空間部には、第1のシール材が充填され、前記第2のシール空間部には、第2のシール材が、前記凹部の内面と前記凸部の外面とに密着して設けられるとともに、この第2のシール材と前記第1のシール空間部との間に、側端部に沿って延びる表面側の中樋部が形成されていることを特徴とする。
【0008】
本発明では、パネルの表面側が建物の表側に配され、裏面側が建物の内側に配されて施工される。すなわち表面側に雨水等の水分を受けるものとなり、その水分は、まず、第1のシール空間部に充填された第1のシール材によってパネルの内側への侵入が遮断される。この第1のシール材は第1のシール空間部内に充填され、第1のシール空間部は一方の側端部の外面材によって外部から遮蔽されているため紫外線に晒されることがない。したがって第1のシール材は紫外線による劣化が生じにくいものとなり、止水性が確保される。また、水分が第1のシール材で遮断されない場合、その水分は第2のシール空間部に入り、第2のシール材によってパネルの内側への侵入が遮断されるとともに表面側の中樋部を通じて外部に排水される。
【0009】
本発明では、前記接合部の裏面側には、前記一方の側端部の外面材と前記他方の側端部の外面材との間に、側端部に沿って延びる裏面側の中樋部が形成されている形態を含む。この形態では、第2のシール材でも水分が遮断されなかった場合、その水分は裏面側の中樋部に導かれて外部に排水され、止水効果の向上が図られる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、紫外線による止水性の劣化が抑えられるとともに、従来よりも止水効果の向上が図られるパネルの接合構造が提供されるといった効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の一実施形態の接合構造で接合された複数の屋根パネルで屋根が構成された建物を示す正面図である。
図2】一実施形態の接合構造の詳細を示す図であって図1のII部の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して本発明の一実施形態を説明する。
図1は、本発明の一実施形態の接合構造で接合された複数の屋根パネル10で屋根1が構成された畜舎等の建物を示している。この建物は、土台2上に外壁3が立てられ、外壁3上に切妻形式の屋根1が施工されている。
【0014】
屋根1は、傾斜方向に沿って延び横方向に間隔をおいて施工された複数の垂木6上に、横方向に沿って延び傾斜方向に間隔をおいて桟木7が固定され、これら桟木7上に複数の屋根パネル10が固定されて構成されている。
【0015】
屋根パネル10は長方形状であって、傾斜方向を長手方向に一致させて桟木7に固定される。屋根1の傾斜方向の長さは1枚の屋根パネル10で構成され、複数の屋根パネル10が横方向に接合されながら並べられて屋根1が施工される。
【0016】
図2に示すように、屋根パネル10は、表面側および裏面側の2枚の金属板(外面材)20,30の間にパネル状の断熱材からなる芯材40を挟んだ金属サンドイッチパネルである。金属板20,30は、例えば、溶融55%アルミニウム−亜鉛合金めっき鋼板(ガルバリウム鋼板)や亜鉛−アルミニウム6%−マグネシウム3%めっき鋼板(ZAM:登録商標)、あるいはカラー鋼板等が用いられる。また、芯材40は、例えばポリスチレン等の樹脂発泡材が用いられる。
【0017】
屋根パネル10の寸法は任意であるが、例えば縦方向長さは屋根1の傾斜方向長さに応じた寸法(例えば10000mm前後)を有し、幅は900mm程度、厚さは30〜50mm程度とされる。芯材40の両面に配設される金属板20,30は、芯材40に対し例えば接着剤による接着等の手段で貼り合わせられる。このような構成の屋根パネル10は、断熱機能に優れるといった特徴を有している。
【0018】
図2は、図1のII部の断面図であって、屋根パネル10の側端部どうしが接合された状態の断面を示している。図2で上側が屋根パネル10の表面側、下側が裏面側であり、屋根パネル10はこの上下の配置状態で屋根1として施工される。
【0019】
図2に示すように、屋根パネル10の縦方向(図2、矢印A方向である長手方向)すなわち屋根1として施工された状態での傾斜方向に延びる側端部のうち、一方の側端部(図2で屋根パネル10の右側端部)には、側端部の全長にわたって溝状の凹部11が形成されており、他方の側端部(図2で屋根パネル10の左側端部)には凹部11内に嵌合される凸部12が形成されている。
【0020】
一方の側端部の凹部11は、表面側および裏面側の各金属板20,30が芯材40から側方に突出する突出部21,31をそれぞれ形成することによって溝状に形成されている。表面側および裏面側の各突出部21,31は、いずれも外面側が側方に真っ直ぐ延びており、金属板20,30をそれぞれ内側に折り曲げ加工して形成され、芯材40の端面で凹部11の底部が構成されている。
【0021】
表面側の金属板20の突出部21の内面側には、内側への折り曲げ部22が先端に形成され、折り曲げ部22から奥側に向かって凸条部(係合部)23、重畳部24、芯材当接部25が連続して形成されている。折り曲げ部22は、外側の金属板20と平行状態で僅かに離間して形成されている。凸条部23は内側に矩形状に膨出して形成されたもので、全体的に凹部11の奥側(図2で左側)に傾斜している。重畳部24は外側の金属板20に重畳して芯材40の端面まで延びており、内側に直角に屈曲して内側に芯材40に当接する末端が芯材当接部25となっている。
【0022】
裏面側の金属板30の突出部31の内面側には、内側への折り曲げ部32が先端に形成され、折り曲げ部32から奥側に向かって重畳部34、芯材当接部35が連続して形成されている。折り曲げ部35は表面側の折り曲げ部22よりも大きなRで折り曲げられ、外面側の金属板20からしだいに離間する方向に延びてから外側の金属板20に向かって鈍角で突き当たるように屈曲している。重畳部34は外側の金属板30に重畳して芯材40の端面まで延びており、内側に直角に屈曲して外側に芯材40に当接する末端が芯材当接部35となっている。
【0023】
凹部11に嵌合される凸部12は、芯材40の厚さが表面側および裏面側で減じられ、その外面に金属板20,30が貼られて構成されている。凸部12の表面側の金属板20は、凹部11内に凸部12が嵌合した状態で表面側の突出部21の金属板20に対向し、先端方向に向かって、折り曲げ部22の内面が当接する平行段部26と、凸条部23が入り込んで係合する溝部(係合部)27と、傾斜部28と、芯材40の角部に嵌合する直角屈曲部29が連続して形成されている。
【0024】
溝部27は凸条部23に対応して全体的に凹部11の奥側(図2で左側)に傾斜して形成されており、凸条部23が溝部27に入り込むと、両者の間には側端部の長手方向に延びる空間(以下、第1のシール空間部)51が形成される。また、金属板20の突出部24と傾斜部28との間には、側端部の長手方向に延びる第2のシール空間部52が形成される。
【0025】
凸部12の裏面側の金属板30は、凹部11内に凸部12が嵌合した状態で裏面側の突出部31に対向し、先端方向に向かって、折り曲げ部32の内面が当接する傾斜段部36と、水平部38と、芯材40の先端部に嵌合する屈曲部39が連続して形成されている。
【0026】
屋根パネル10の側端部どうしを接合するには、はじめに、凹部11内の表面側の、金属板20の重畳部24から芯材当接部25にわたる直角の内隅部に断面円形状のゴム等の弾性部材からなるシール材(以下、第2のシール材)62を配設しておく。また、凸部12の溝部27内に、変成シリコン材等からなるシール材(以下、第1のシール材)61を埋め込んでおく。この後、相対的に凹部11に凸部12を挿入して嵌合させる。
【0027】
凹部11に凸部12が嵌合する際には、表面側においては突出部21の凸条部23が傾斜部28を弾性変形して乗り越え溝部27に入り込み、凸条部23の奥側の傾斜面が溝部27の内面に係合するとともに、折り曲げ部22の内面が平行段部26の外面に当接する。また、裏面側においては突出部31の折り曲げ部32の内面が傾斜段部36の外面に当接する。
【0028】
このように屋根パネル10の一方の側端部の凹部11内に他方の側端部の凸部12が接合した状態で、この接合部の表面側においては、折り曲げ部22の内面が平行段部26の外面に当接することにより、第1のシール空間部51と第2のシール空間部52は金属板20によって外部から遮蔽された状態に覆われる。そして、凸条部23と溝部27の底部との間の第1のシール空間部51に溝部27に埋め込まれた第1のシール材61が充填された状態となり、また、第2のシール材62は凸部12によって凹部11の内面に押圧され両者に密着して設けられた状態となる。そして第2のシール空間部52は側端部に沿って延びる表面側の中樋部71に形成される。さらに接合部の裏面側には、一方の側端部の金属板30と他方の側端部の金属板30との間に、側端部の長手方向に沿って延びる裏面側の中樋部72が形成される。
【0029】
上記一実施形態の屋根パネル10の接合構造によれば、表面側に雨水等の水分を受けるものであり、その水分は、まず、第1のシール空間部51に充填された第1のシール材61によって内側(建物の内部)への侵入が遮断される。この第1のシール材61は第1のシール空間部51内に充填され、第1のシール空間部51は表面側の金属板20によって外部から遮蔽されているため紫外線に晒されることがない。したがって第1のシール材61は紫外線による劣化が生じにくいものとなり、止水性能が長期にわたって維持される。
【0030】
次に、第1のシール材61の施工不良等に起因して水分が第1のシール材61で遮断されない場合には、水分は第2のシール空間部52に入り、第2のシール材62によって内側への侵入が遮断されるとともに、その水分は表面側の中樋部71を通じて落下し外部に排水される。さらに第2のシール材62でも水分が遮断されなかった場合、その水分は芯材40の端面間を通って裏面側の中樋部72に入り、この中樋部72に導かれて落下し、外部に排水される。
【0031】
以上のような3段階の水分遮断作用により、本実施形態の接合構造においては止水効果が顕著に発揮され、止水性能の向上が図られる。また、屋根パネル10どうしを接合する際に凹部11内に凸部12を挿入すると、凹部11側の金属板20からなる凸条部23が凸部12側の溝部27に係合し、嵌合状態が保持される。このため、接合の作業が容易となり、施工者の熟練度に左右されることなく確実に止水効果が発揮される屋根を施工することができる。
【0032】
なお、上記実施形態は本発明を屋根を構成する屋根パネルに適用したものであるが、本発明は建材用のパネルに広く適用することができ、特に止水効果が求められる屋根や外壁等を構成するパネルとして好適である。
【符号の説明】
【0033】
10…屋根パネル
11…凹部
12…凸部
20…金属板(外面材)
21,31…突出部
23…凸条部(係合部)
27…溝部(係合部)
40…芯材
51…第1のシール空間部
52…第2のシール空間部
61…第1のシール材
62…第2のシール材
71…表面側の中樋部
72…裏面側の中樋部
図1
図2