特許第6095300号(P6095300)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6095300
(24)【登録日】2017年2月24日
(45)【発行日】2017年3月15日
(54)【発明の名称】染色プラスチックレンズの製造方法
(51)【国際特許分類】
   G02C 7/02 20060101AFI20170306BHJP
   C08J 7/02 20060101ALI20170306BHJP
   D06P 1/16 20060101ALI20170306BHJP
   D06P 3/00 20060101ALI20170306BHJP
   D06P 5/00 20060101ALI20170306BHJP
【FI】
   G02C7/02
   C08J7/02 ZCEZ
   D06P1/16 B
   D06P3/00 F
   D06P5/00 D
【請求項の数】7
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2012-189780(P2012-189780)
(22)【出願日】2012年8月30日
(65)【公開番号】特開2014-47255(P2014-47255A)
(43)【公開日】2014年3月17日
【審査請求日】2015年8月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】000113263
【氏名又は名称】HOYA株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100078732
【弁理士】
【氏名又は名称】大谷 保
(74)【代理人】
【識別番号】100119666
【弁理士】
【氏名又は名称】平澤 賢一
(74)【代理人】
【識別番号】100171022
【弁理士】
【氏名又は名称】平澤 玉乃
(72)【発明者】
【氏名】三科 美佐
(72)【発明者】
【氏名】上坂 昌久
【審査官】 中川 裕文
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−048114(JP,A)
【文献】 特開2006−065036(JP,A)
【文献】 特開平06−313801(JP,A)
【文献】 特開2003−177204(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02C 1/00− 13/00
B29C 71/04
C08J 7/00− 7/02
7/12− 7/18
G03B 21/132
21/56− 21/64
D06P 1/00− 1/673
1/90
3/00− 5/22
7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記工程(1)及び工程(2)を有する染色プラスチックレンズの製造方法であって、水溶液(Y)中の、下記一般式(1)で示される化合物(C)に対する界面活性剤(B)の含有量が質量比で1.5以上であり、染色液中の化合物(C)の濃度が150mg/L以上であり、前記プラスチックレンズが屈折率1.60以上のプラスチックレンズである、染色プラスチックレンズの製造方法。
工程(1):分散染料(A)を含有する水溶液(X)と、水に界面活性剤(B)と下記一般式(1)で示される化合物(C)とを添加し攪拌して化合物(C)を溶解させた水溶液(Y)とを混合して、染色液を調製する工程
工程(2):前記染色液中で屈折率1.60以上のプラスチックレンズを染色する工程
【化1】

(式中、R〜Rは、それぞれ独立に、OH基、炭素数1〜10のアルコキシ基又は水素原子を表し、かつR〜Rの少なくとも1つはOH基である。)
【請求項2】
前記プラスチックレンズが、含硫ウレタン系樹脂又はポリスルフィド系樹脂からなる、請求項1に記載の染色プラスチックレンズの製造方法。
【請求項3】
前記一般式(1)で示される化合物(C)が、融点90℃以下の化合物である、請求項1又は2に記載の染色プラスチックレンズの製造方法。
【請求項4】
前記一般式(1)で示される化合物(C)が、2,2’−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン及び2,2’−ジヒドロキシベンゾフェノンから選ばれる1種以上である、請求項に記載の染色プラスチックレンズの製造方法。
【請求項5】
水溶液(Y)中の化合物(C)に対する界面活性剤(B)の含有量が質量比で3.0〜8.0の範囲である、請求項1〜のいずれかに記載の染色プラスチックレンズの製造方法。
【請求項6】
水溶液(Y)中の化合物(C)に対する界面活性剤(B)の含有量が質量比で5.1〜8.0の範囲である、請求項1〜5のいずれかに記載の染色プラスチックレンズの製造方法。
【請求項7】
染色液中の化合物(C)の濃度が400〜1000mg/Lの範囲である、請求項1〜6のいずれかに記載の染色プラスチックレンズの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、染色プラスチックレンズの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ジエチレングリコールビスアリルカーボネートに代表されるプラスチックレンズは、浸漬染色法等の、染料を含む染色液にレンズ基材を浸漬させる方法による染色が容易であるという利点を有し、ファッション性が要求される眼鏡レンズ分野で広く用いられている。しかしながら、ジエチレングリコールビスアリルカーボネートよりも高屈折率のプラスチックレンズは、通常硫黄の含有量が多いことから疎水性であるため、染色液が浸透しにくく、浸漬染色法による染色が困難であった。
上記の問題を改善するために、例えば特許文献1には、分散染料、界面活性剤、及び染色促進剤として特定のベンゾフェノン系化合物を含有する水浴中でプラスチックレンズを染色する、プラスチックレンズの染色方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平6−313801号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の実施例1には、予め、染色促進剤である特定のベンゾフェノン系化合物と界面活性剤とを水に添加した溶液を調製し、この溶液の上澄み液を、別途調製した分散染料を含む水溶液に添加し、染色液を得る方法が開示されている。
しかしながら、染色促進剤であるベンゾフェノン系化合物は水への溶解性が低いため、染色液中のベンゾフェノン系化合物濃度を上げることが困難であり、その結果、プラスチックレンズの染色促進効果にも限界があった。また、染色液中でベンゾフェノン系化合物の溶け残りや析出が生じると、これがプラスチックレンズに付着して染色ムラが生じるなどの不具合もあった。
本発明は、染色液中でのプラスチックレンズの染色において、染色を促進することができ、かつ染色ムラを生じにくい染色プラスチックレンズの製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者等は、分散染料を含有する水溶液と、染色促進剤であるベンゾフェノン系化合物に対し界面活性剤を特定割合以上含有する水溶液とを混合して染色液を調製することにより、上記課題を解決しうることを見出した。
すなわち本発明は、下記工程(1)及び工程(2)を有する染色プラスチックレンズの製造方法であって、水溶液(Y)中の、下記一般式(1)で示される化合物(C)に対する界面活性剤(B)の含有量が質量比で1.5以上であり、染色液中の化合物(C)の濃度が150mg/L以上である、染色プラスチックレンズの製造方法である。
工程(1):分散染料(A)を含有する水溶液(X)と、界面活性剤(B)と下記一般式(1)で示される化合物(C)とを含有する水溶液(Y)とを混合して、染色液を調製する工程
工程(2):前記染色液中でプラスチックレンズを染色する工程
【0006】
【化1】
【0007】
(式中、R1〜R4は、それぞれ独立に、OH基、炭素数1〜10のアルコキシ基又は水素原子を表し、かつR1〜R4の少なくとも1つはOH基である。)
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、染色液中において、染色促進剤であるベンゾフェノン系化合物の溶け残りや析出を生じることなくその濃度を上げることができるので、プラスチックレンズの染色を促進することができ、かつ染色ムラのないプラスチックレンズを製造することができる。本発明のプラスチックレンズの製造方法は、特に染色が困難な高屈折率のプラスチックレンズに対しても有用である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[プラスチックレンズの製造方法]
本発明は、下記工程(1)及び工程(2)を有する染色プラスチックレンズの製造方法であって、水溶液(Y)中の、下記一般式(1)で示される化合物(C)に対する界面活性剤(B)の含有量が質量比で1.5以上であり、染色液中の化合物(C)の濃度が150mg/L以上である、染色プラスチックレンズの製造方法である。
工程(1):分散染料(A)を含有する水溶液(X)と、界面活性剤(B)と下記一般式(1)で示される化合物(C)とを含有する水溶液(Y)とを混合して、染色液を調製する工程
工程(2):前記染色液中でプラスチックレンズを染色する工程
【0010】
【化2】
【0011】
(式中、R1〜R4は、それぞれ独立に、OH基、炭素数1〜10のアルコキシ基又は水素原子を表し、かつR1〜R4の少なくとも1つはOH基である。)
【0012】
本発明の染色プラスチックレンズの製造方法では、予め、染色促進剤である上記一般式(1)で示される化合物(C)(以下、単に「化合物(C)」ともいう)と一定量以上の界面活性剤(B)とを混合した水溶液(Y)を調製し、これを分散染料(A)を含む水溶液(X)と混合して、染色液を調製する工程を含む。
上記化合物(C)は水への溶解性が低いため、染色液中の化合物(C)の濃度を上げるには限界があり、その結果、プラスチックレンズの染色促進効果にも限界があった。
本発明では、染色液に化合物(C)を直接添加せず、分散染料(A)とは別に化合物(C)を含む水溶液(Y)を予め調製する。ここで、水溶液(Y)に界面活性剤(B)を特定量以上添加することで、化合物(C)の濃度を化合物(C)単独での飽和濃度以上とすることができるため、染色液中の化合物(C)の濃度も高めることができ、プラスチックレンズの染色をより促進することができる。よって、一般に浸漬染色法等による染色が難しい高屈折率のプラスチックレンズであっても染色が可能になる。
また、水溶液(Y)における化合物(C)の溶け残りや析出も生じないため、水溶液(Y)を添加した染色液で染色しても染色ムラが生じない。
【0013】
<工程(1)>
工程(1)は、分散染料(A)を含有する水溶液(X)と、界面活性剤(B)と前記一般式(1)で示される化合物(C)とを含有する水溶液(Y)とを混合して、染色液を調製する工程である。
【0014】
(水溶液(X))
水溶液(X)は、染色液を調製する際に予め調製する水溶液であり、分散染料(A)を含有する。
【0015】
〔分散染料(A)〕
本発明に用いられる分散染料としては、アンスラキノン系やアゾ系等の分散染料が挙げられる。具体的には、C.Iディスパーズイエロー3、4、5、7、33、42等、C.Iディスパーズオレンジ1、3、11等、C.Iディスパーズレッド1、4、5、11、17、58等、C.Iディスパーズブルー1、3、7、43等、「FSPレッドBL」(双葉産業株式会社製、製品名)等が挙げられる。
これらの染料は、所望の色にプラスチックレンズを染色できるように、単独で又は2種以上を配合して用いることができる。
水溶液(X)中の分散染料(A)の含有量は、染色速度及び染料の溶解性の観点から、好ましくは1〜20g/Lの範囲、より好ましくは1〜10g/Lの範囲である。
【0016】
〔その他の成分〕
水溶液(X)は、分散染料(A)の分散性向上の観点、及びプラスチックレンズをムラなく染色する観点から、更に界面活性剤を含有することが好ましい。
本発明で用いられる界面活性剤としては、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルスルホコハク酸塩、ラウリル硫酸塩等の陰イオン系界面活性剤や、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル等の非イオン系界面活性剤等が挙げられる。使用しうる界面活性剤の市販品としては、陰イオン系界面活性剤である「ニッカサンソルト7000」(日華化学株式会社製)等が挙げられる。
これらの界面活性剤は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
水溶液(X)中の界面活性剤の含有量は、染色するプラスチックレンズの種類によって異なり一義的には決められないが、染色速度及び染色ムラ等を考慮して、0.5〜50g/Lの範囲が好ましく、1〜10g/Lの範囲がより好ましい。
【0017】
〔水溶液(X)の調製〕
水溶液(X)の調製方法には特に制限はないが、例えば、水に分散染料(A)及び必要に応じて界面活性剤を添加し、好ましくは50〜100℃に加熱して攪拌することにより調製することができる。加熱温度及び時間は、分散染料(A)の種類及び含有量に応じて適宜選択することができる。
【0018】
(水溶液(Y))
水溶液(Y)は、染色液を調製する際に予め調製する水溶液であり、界面活性剤(B)と前記一般式(1)で示される化合物(C)とを含有する。
【0019】
〔界面活性剤(B)〕
水溶液(Y)は、後述する化合物(C)の水への溶解促進の観点から、界面活性剤(B)を含有する。
本発明で用いられる界面活性剤(B)としては、前述した水溶液(X)に用いられるものと同様の界面活性剤が挙げられ、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルスルホコハク酸塩、ラウリル硫酸塩等の陰イオン系界面活性剤や、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル等の非イオン系界面活性剤等が挙げられる。使用しうる界面活性剤の市販品としては、陰イオン系界面活性剤である「ニッカサンソルト7000」(日華化学株式会社製)等が挙げられる。
これらの界面活性剤は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
界面活性剤(B)は、前述した水溶液(X)に用いた界面活性剤と同じものを用いてもよいし、異なる種類のものを用いてもよい。
【0020】
水溶液(Y)中の界面活性剤(B)の含有量は、後述する化合物(C)に対し、質量比で1.5以上であり、好ましくは1.5〜20の範囲、より好ましくは2.0〜10の範囲、更に好ましくは3.0〜8.0の範囲である。染色促進剤である化合物(C)に対する界面活性剤(B)の含有量が上記範囲であることにより、水溶液(Y)中の化合物(C)の濃度を化合物(C)単独での飽和濃度以上とすることができるため、染色液中の化合物(C)の濃度も高めることができ、プラスチックレンズの染色をより促進することができる。
【0021】
〔化合物(C)〕
水溶液(Y)は、染色促進剤である下記一般式(1)で示される化合物(C)を含有する。
【0022】
【化3】
【0023】
式中、R1〜R4は、それぞれ独立に、OH基、炭素数1〜10のアルコキシ基又は水素原子を表し、かつR1〜R4の少なくとも1つはOH基である。水への溶解性の観点から、上記アルコキシ基は、好ましくは炭素数1〜5であり、より好ましくは炭素数1〜3である。
化合物(C)は通常水に対してほとんど溶解性を示さず、融点以上の温度でオイル状になって若干水に溶けること、及び本発明では、染色液として水系溶液を用い、水の沸点以下の温度でオイル状になることが溶解度の点で好ましいことから、化合物(C)は、融点が90℃以下の化合物であることが好ましい。
また、化合物(C)は、上記一般式(1)中のR1〜R4の少なくとも2つがOH基であるベンゾフェノン系化合物が好ましく、2,2’−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン(融点約71℃)及び2,2’−ジヒドロキシベンゾフェノン(融点約63℃)から選ばれる1種以上が好ましい。
【0024】
水溶液(Y)中の化合物(C)の含有量は、使用する化合物(C)の種類によって異なり一義的には決められないが、染色速度及び溶解性の観点から、1〜20g/Lの範囲が好ましく、2〜15g/Lの範囲がより好ましく、5〜12g/Lの範囲が更に好ましい。水溶液(Y)中の化合物(C)の含有量が上記範囲であれば、化合物(C)の溶け残りが生じず、かつプラスチックレンズの染色促進効果を発現することができる。
【0025】
〔水溶液(Y)の調製〕
水溶液(Y)の調製方法には特に制限はないが、例えば、水に界面活性剤(B)及び化合物(C)を添加し、好ましくは70〜100℃に加熱して、化合物(C)が溶解するまで攪拌することにより調製することができる。加熱温度及び時間は、化合物(C)の種類及び含有量に応じて適宜選択することができる。
【0026】
(染色液)
本発明の工程(1)においては、前記水溶液(X)と水溶液(Y)とを混合して、染色液を調製する。染色液の調製方法に特に制限はなく、例えば、所望の染色温度に保温した水溶液(X)に、染色液中の化合物(C)の濃度が所望の濃度となる量の水溶液(Y)を添加して混合する方法が挙げられる。
染色液中の化合物(C)の濃度は、染色促進の観点から150mg/L以上であり、150〜2000mg/Lの範囲が好ましく、300〜1500mg/Lの範囲がより好ましく、400〜1000mg/Lの範囲が更に好ましい。本発明の染色プラスチックレンズの製造方法が工程(1)を有することにより、染色液中の化合物(C)の濃度を150mg/L以上まで高めることができ、これによりプラスチックレンズの染色が促進される。
【0027】
染色液中の分散染料(A)の含有量は、染色速度及び染料の溶解性の観点から、好ましくは1〜20g/Lの範囲、より好ましくは1〜10g/Lの範囲である。また、染色液中の界面活性剤の総含有量は、染色速度及び染色ムラ抑制の観点から、好ましくは0.6〜100g/Lの範囲、より好ましくは1〜50g/Lの範囲、更に好ましくは1〜20g/Lの範囲である。なお、染色液中の界面活性剤の総含有量とは、染色液中に含まれる、水溶液(X)に由来する界面活性剤、水溶液(Y)に由来する界面活性剤(B)、及びその他の界面活性剤の合計量をいう。
水溶液(X)と水溶液(Y)との混合比は、染色液中の分散染料(A)、界面活性剤、及び化合物(C)の含有量が好ましくは上記範囲となるように適宜選択することができる。
【0028】
<工程(2)>
工程(2)は、前記染色液中でプラスチックレンズを染色する工程である。
【0029】
(プラスチックレンズ)
本発明に用いられるプラスチックレンズの材質は、特に制限はなく、例えば、射出成形法により成形可能な熱可塑性樹脂製のレンズや、注型重合等により成形可能な、眼鏡用レンズ等に一般に用いられる熱硬化性樹脂製のレンズ等を用いることができる。
上記プラスチックレンズの材質としては、例えば、メチルメタクリレート単独重合体、メチルメタクリレートと1種以上の他のモノマーとの共重合体等の(メタ)アクリル系樹脂;ジエチレングリコールビスアリルカーボネート単独重合体、ジエチレングリコールビスアリルカーボネートと1種類以上の他のモノマーとの共重合体等のジエチレングリコールビスアリルカーボネート系樹脂;アクリロニトリル−スチレン共重合体;ハロゲン含有共重合体;スルフィド結合を有するモノマーの単独重合体、スルフィド結合を有するモノマーと1種以上の他のモノマーとの共重合体等のポリスルフィド系樹脂;ポリウレア樹脂;ポリカーボネート樹脂;ポリスチレン樹脂;ポリオレフィン樹脂;ポリ塩化ビニル樹脂;ポリエステル樹脂;ポリエチレンテレフタレート;ポリウレタン樹脂;ポリチオウレタン樹脂等の含硫ウレタン系樹脂;エポキシ樹脂等が挙げられる。
上記のうち、含硫ウレタン系樹脂又はポリスルフィド系樹脂からなるプラスチックレンズが好ましい。これらの樹脂からなるプラスチックレンズは難染色性であるため、本発明による効果がより顕著である。
【0030】
〔含硫ウレタン系樹脂〕
含硫ウレタン系樹脂としては、ポリイソ(チオ)シアネート化合物と、ポリチオール化合物、ポリオール化合物、及びヒドロキシ基を含むチオール化合物から選ばれる1種以上の化合物とを反応させて得られる樹脂が挙げられる。
【0031】
《ポリイソ(チオ)シアネート化合物》
ポリイソ(チオ)シアネート化合物としては、分子内に2個以上のイソ(チオ)シアネート基を有する化合物であれば、特に制限なく用いることができる。例えば、芳香環を有するポリイソ(チオ)シアネート化合物、脂肪族ポリイソ(チオ)シアネート化合物、及び脂環構造を有するポリイソ(チオ)シアネート化合物等が挙げられる。
芳香環を有するポリイソ(チオ)シアネート化合物としては、例えば、1,4−フェニレンジイソシアネート、メチル−1,3−フェニレンジイソシアネート、1,3−ビス(イソシアネートメチル)ベンゼン、メシチレントリイソシアネート、1,3−ビス(2−イソシアネートプロピル)ベンゼン、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、1,5−ジイソシアネートナフタレン、(3,3’−ジメチル−4,4’−ビフェニリレン)ジイソシアネート、1,3−ジイソチオシアネートベンゼン等が挙げられる。
【0032】
脂肪族ポリイソ(チオ)シアネート化合物としては、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート、リジンエステルトリイソシアネート、ヘキサメチレントリイソシアネート等が挙げられ、脂環構造を有するポリイソ(チオ)シアネート化合物としては、イソホロンジイソシアネート、ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、シクロヘキサンジイソシアネート、ビス(イソシアネートメチル)ビシクロヘプタン、トリス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、ビス(イソシアネートメチル)1,4−ジチアン、ビス(イソチオシアネートメチル)シクロヘキサン等が挙げられる。
上記ポリイソ(チオ)シアネート化合物は、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0033】
《ポリチオール化合物、ポリオール化合物、及びヒドロキシ基を含むチオール化合物から選ばれる1種以上の化合物》
ポリチオール化合物としては、分子内に2個以上のチオール基を有する化合物であれば、特に制限なく用いることができる。例えば、1,2−エタンジチオール、 1,1−プロパンジチオール、1,2−プロパンジチオール、1,3−プロパンジチオール、2,2−プロパンジチオール、1,6−ヘキサンジチオール、1,2,3−プロパントリチオール、1,1−シクロヘキサンジチオール、1,2−シクロヘキサンジチオール、2,2−ジメチルプロパン−1,3−ジチオール、3,4−ジメトキシブタン−1,2−ジチオール、2−メチルシクロヘキサン−2,3−ジチオール、1,1−ビス(メルカプトメチル)シクロヘキサン、2,3−ジメルカプト−1−プロパノール、エチレングリコールビス(2−メルカプトアセテート)、エチレングリコールビス(3−メルカプトプロピオネート)、ジエチレングリコールビス(2−メルカプトアセテート)、ジエチレングリコールビス(3−メルカプトプロピオネート)、1,2−ジメルカプトプロピルメチルエーテル、2,3−ジメルカプトプロピルメチルエーテル、2,2−ビス(メルカプトメチル)−1,3−プロパンジチオール、ビス(2−メルカプトエチル)エーテル、ビス(2−メルカプトエチル)スルフィド、ビス(2−メルカプトエチル)ジスルフィド、トリメチロールプロパンビス(2−メルカプトアセテート)、トリメチロールプロパンビス(3−メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(2−メルカプトアセテート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトプロピオネート)、2,5−ビス(メルカプトメチル)−1,4−ジチアン、ビス[(2−メルカプトエチル)チオ]−3−メルカプトプロパン、4,7−ビス(メルカプトメチル)−3,6,9−トリチアウンデカン−1,11−ジチオール、4,8−ビス(メルカプトメチル)−3,6,9−トリチアウンデカン−1,11−ジチオール、5,7−ビス(メルカプトメチル)−3,6,9−トリチアウンデカン−1,11−ジチオール等の脂肪族又は脂環を有するポリチオール化合物や、1,2−ジメルカプトベンゼン、1,3−ジメルカプトベンゼン、1,4−ジメルカプトベンゼン、1,2−ビス(メルカプトメチル)ベンゼン、1,3−ビス(メルカプトメチル)ベンゼン、1,4−ビス(メルカプトメチル)ベンゼン、1,2−ビス(メルカプトエチル)ベンゼン、1,3−ビス(メルカプトエチル)ベンゼン、1,4−ビス(メルカプトエチル)ベンゼン、1,2,3−トリメルカプトベンゼン、 1,2,4−トリメルカプトベンゼン、1,3,5−トリメルカプトベンゼン、1,2,3−トリス(メルカプトメチル)ベンゼン、1,2,4−トリス(メルカプトメチル)ベンゼン、1,3,5−トリス(メルカプトメチル)ベンゼン、1,2,3−トリス(メルカプトエチル)ベンゼン、1,2,4−トリス(メルカプトエチル)ベンゼン、1,3,5−トリス(メルカプトエチル)ベンゼン、2,2’−ジメルカプトビフェニル、4,4’−ジメルカプトビフェニル、4,4’−ジメルカプトビベンジル、2,5−トルエンジチオール、3,4−トルエンジチオール、1,4−ナフタレンジチオール、1,5−ナフタレンジチオール、2,6−ナフタレンジチオール、2,7−ナフタレンジチオール、 2,4−ジメチルベンゼン−1,3−ジチオール、4,5−ジメチルベンゼン−1,3−ジチオール、9,10−アントラセンジメタンチオール、1,3−ジ(p−メトキシフェニル)プロパン−2,2−ジチオール、1,3−ジフェニルプロパン−2,2−ジチオール、フェニルメタン−1,1−ジチオール、2,4−ジ(p−メルカプトフェニル)ペンタン等の芳香族ポリチオール化合物が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0034】
ポリオール化合物としては、分子内に2個以上のヒドロキシ基を有する化合物であれば、特に制限なく用いることができる。例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ブチレングリコール、ネオペンチルグリコール、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ブタントリオール、1,2−メチルグルコサイド、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、ソルビトール、エリスリトール、スレイトール、リビトール、アラビニトール、キシリトール、アリトール、マニトール、ドルシトール、イディトール、グリコール、イノシトール、ヘキサントリオール、トリグリセロール、ジグリペロール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレート、シクロブタンジオール、シクロペンタンジオール、シクロヘキサンジオール、シクロヘプタンジオール、シクロオクタンジオール、シクロヘキサンジメタノール、ヒドロキシプロピルシクロヘキサノール、トリシクロ〔5,2,1,0,2,6〕デカン−ジメタノール、ビシクロ〔4,3,0〕−ノナンジオール、ジシクロヘキサンジオール、トリシクロ〔5,3,1,1〕ドデカンジオール、ビシクロ〔4,3,0〕ノナンジメタノール、トリシクロ〔5,3,1,1〕ドデカン−ジエタノール、ヒドロキシプロピルトリシクロ〔5,3,1,1〕ドデカノール、スピロ〔3,4〕オクタンジオール、ブチルシクロヘキサンジオール、1,1’−ビシクロヘキシリデンジオール、シクロヘキサントリオール、マルチトール、ラクチトール等の脂肪族ポリオール、ジヒドロキシナフタレン、トリヒドロキシナフタレン、テトラヒドロキシナフタレン、ジヒドロキシベンゼン、ベンゼントリオール、ビフェニルテトラオール、ピロガロール、(ヒドロキシナフチル)ピロガロール、トリヒドロキシフェナントレン、ビスフェノールA、ビスフェノールF、キシリレングリコール、テトラブロムビスフェノールA等の芳香族ポリオール、ジ−(2−ヒドロキシエチル)スルフィド、1,2−ビス−(2−ヒドロキシエチルメルカプト)エタン、ビス(2−ヒドロキシエチル)ジスルフィド、1,4−ジチアン−2,5−ジオール、ビス(2,3−ジヒドロキシプロピル)スルフィド、テトラキス(4−ヒドロキシ−2−チアブチル)メタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン(商品名ビスフェノールS)、テトラブロモビスフェノールS、テトラメチルビスフェノールS、4,4’−チオビス(6−tert−ブチル−3−メチルフェノール)、1,3−ビス(2−ヒドロキシエチルチオエチル)−シクロヘキサンなどの硫黄原子を含有したポリオール等が挙げられる。
ヒドロキシ基を含むチオール化合物としては、例えば、2−メルカプトエタノール、2,3−ジメルカプト−1−プロパノール、3−ヒドロキシ−2−ブタンチオール、3−メルカプトヘキサノール、3−メルカプト−2−メチルブタノール、3−メルカプト−3−メチルブタノール、3−メルカプト−2−メチルペンタノール等が挙げられる。
これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0035】
前記ポリイソ(チオ)シアネート化合物とポリチオール化合物とを反応させて含硫ウレタン樹脂を得る場合には、ポリイソ(チオ)シアネート化合物とポリチオール化合物との配合割合は、ポリイソ(チオ)シアネート化合物中のNCO基とポリチオール化合物中のSH基とのモル比(NCO基/SH基)は、0.5〜2.0の範囲であることが好ましく、0.95〜1.05の範囲であることがより好ましい。
NCO基の残存率が低い場合には、得られるプラスチックレンズの耐候性が良好であり、茶褐色に着色するなどの問題を生じない。またSH基の残存率が低い場合には、十分な耐熱性(Tg)が得られる。上記NCO基/SH基のモル比が1.0に近いほど、未反応のNCO基及びSH基の残存率が低くなり、未反応基の少ないことから耐候性及び耐熱性に優れるプラスチックレンズとすることができる。
【0036】
〔ポリスルフィド系樹脂〕
ポリスルフィド系樹脂としては、エポキシ基及び/又はエピスルフィド基を有する化合物と、ポリチオール化合物とを反応させて得られる樹脂等が挙げられる。ポリチオール化合物については前記と同様である。
【0037】
《エポキシ基及び/又はエピスルフィド基を有する化合物》
エポキシ基を有する化合物としては、ヒドロキノン、カテコール、レゾルシン、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールスルフォン、ビスフェノールエーテル、ビスフェノールスルフィド、ハロゲン化ビスフェノールA、ノボラック樹脂等の多価フェノール化合物とエピハロヒドリンの縮合により製造されるフェノール系エポキシ化合物;
エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、グリセリン、トリメチロールプロパントリメタクリレート、ペンタエリスリトール、1,3−及び1,4−シクロヘキサンジオール、1,3−及び1,4−シクロヘキサンジメタノール、水添ビスフェノールA、ビスフェノールA・エチレンオキサイド付加物、ビスフェノールA・プロピレンオキサイド付加物等の多価アルコール化合物とエピハロヒドリンの縮合により製造されるアルコール系エポキシ化合物;
アジピン酸、セバチン酸、ドデカンジカルボン酸、ダイマー酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、テトラヒドロフタル酸、メチルテトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、ヘキサヒドロイソフタル酸、ヘキサヒドロテレフタル酸、ヘット酸、ナジック酸、マレイン酸、コハク酸、フマール酸、トリメリット酸、ベンゼンテトラカルボン酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸、ナフタリンジカルボン酸、ジフェニルジカルボン酸等の多価カルボン酸化合物とエピハロヒドリンの縮合により製造されるグリシジルエステル系エポキシ化合物;
エチレンジアミン、1,2−ジアミノプロパン、1,3−ジアミノプロパン、1,2−ジアミノブタン、1,3−ジアミノブタン、1,4−ジアミノブタン、1,5−ジアミノペンタン、1,6−ジアミノヘキサン、1,7−ジアミノヘプタン、1,8−ジアミノオクタン、ビス(3−アミノプロピル)エーテル、1,2−ビス(3−アミノプロポキシ)エタン、1,3−ビス(3−アミノプロポキシ)−2,2’−ジメチルプロパン、1,2−、1,3−又は1,4−ビスアミノシクロヘキサン、1,3−又は1,4−ビスアミノメチルシクロヘキサン、1,3−又は1,4−ビスアミノエチルシクロヘキサン、1,3−又は1,4−ビスアミノプロピルシクロヘキサン、水添4,4’−ジアミノジフェニルメタン、イソホロンジアミン、1,4−ビスアミノプロピルピペラジン、m−又はp−フェニレンジアミン、2,4−又は2,6−トリレンジアミン、m−又はp−キシリレンジアミン、1,5−又は2,6−ナフタレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、2,2−(4,4’−ジアミノジフェニル)プロパン等の一級ジアミン、N,N’−ジメチルエチレンジアミン、N,N’−ジメチル−1,2−ジアミノプロパン、N,N’−ジメチル−1,3−ジアミノプロパン、N,N’−ジメチル−1,2−ジアミノブタン、N,N’−ジメチル−1,3−ジアミノブタン、N,N’−ジメチル−1,4−ジアミノブタン、N,N’−ジメチル−1,5−ジアミノペンタン、N,N’−ジメチル−1,6−ジアミノヘキサン、N,N’−ジメチル−1,7−ジアミノヘプタン、N,N’−ジエチルエチレンジアミン、N,N’−ジエチル−1,2−ジアミノプロパン、N,N’−ジエチル−1,3−ジアミノプロパン、N,N’−ジエチル−1,2−ジアミノブタン、N,N’−ジエチル−1,3−ジアミノブタン、N,N’−ジエチル−1,4−ジアミノブタン、N,N’−ジエチル−1,6−ジアミノヘキサン、ピペラジン、2−メチルピペラジン、2,5−又は2,6−ジメチルピペラジン、ホモピペラジン、1,1−ジ(4−ピペリジル)メタン、1,2−ジ(4−ピペリジル)エタン、1,3−ジ(4−ピペリジル)プロパン、1,4−ジ(4−ピペリジル)ブタン等の第二級ジアミンとエピハロヒドリンの縮合により製造されるアミン系エポキシ化合物;
3,4−エポキシシクロヘキシル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、ビニルシクロヘキサンジオキサイド、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)−5,5−スピロ−3,4−エポキシシクロヘキサン−メタ−ジオキサン、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシル)アジペート等の脂環式エポキシ化合物;
シクロペンタジエンエポキシド、エポキシ化大豆油、エポキシ化ポリブタジエン、ビニルシクロヘキセンエポキシド等の不飽和化合物のエポキシ化により製造されるエポキシ化合物;上述の多価アルコール、フェノール化合物とジイソシアネート及びグリシドール等から製造されるウレタン系エポキシ化合物等が挙げられる。これらは単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0038】
エピスルフィド基を有する化合物としては、ビス(β−エピチオプロピルチオ)メタン、1,2−ビス(β−エピチオプロピルチオ)エタン、1,3−ビス(β−エピチオプロピルチオ)プロパン、1,2−ビス(β−エピチオプロピルチオ)プロパン、1−(β−エピチオプロピルチオ)−2−(β−エピチオプロピルチオメチル)プロパン、1,4−ビス(β−エピチオプロピルチオ)ブタン、1,3−ビス(β−エピチオプロピルチオ)ブタン、1−(β−エピチオプロピルチオ)−3−(β−エピチオプロピルチオメチル)ブタン、1,5−ビス(β−エピチオプロピルチオ)ペンタン、1−(β−エピチオプロピルチオ)−4−(β−エピチオプロピルチオメチル)ペンタン、1,6−ビス(β−エピチオプロピルチオ)ヘキサン、1−(β−エピチオプロピルチオ)−5−(β−エピチオプロピルチオメチル)ヘキサン、1−(β−エピチオプロピルチオ)−2−〔(2−β−エピチオプロピルチオエチル)チオ〕エタン、1−(β−エピチオプロピルチオ)−2−[〔2−(2−β−エピチオプロピルチオエチル)チオエチル〕チオ]エタン等の鎖状有機化合物、テトラキス(β−エピチオプロピルチオメチル)メタン、1,1,1−トリス(β−エピチオプロピルチオメチル)プロパン、1,5−ビス(β−エピチオプロピルチオ)−2−(β−エピチオプロピルチオメチル)−3−チアペンタン、1,5−ビス(β−エピチオプロピルチオ)−2,4−ビス(β−エピチオプロピルチオメチル)−3−チアペンタン、1−(β−エピチオプロピルチオ)−2,2−ビス(β−エピチオプロピルチオメチル)−4−チアヘキサン、1,5,6−トリス(β−エピチオプロピルチオ)−4−(β−エピチオプロピルチオメチル)−3−チアヘキサン、1,8−ビス(β−エピチオプロピルチオ)−4−(β−エピチオプロピルチオメチル)−3,6−ジチアオクタン、1,8−ビス(β−エピチオプロピルチオ)−4,5−ビス(β−エピチオプロピルチオメチル)−3,6−ジチアオクタン、1,8−ビス(β−エピチオプロピルチオ)−4,4−ビス(β−エピチオプロピルチオメチル)−3,6−ジチアオクタン、1,8−ビス(β−エピチオプロピルチオ)−2,4,5−トリス(β−エピチオプロピルチオメチル)−3,6−ジチアオクタン、1,8−ビス(β−エピチオプロピルチオ)−2,5−ビス(β−エピチオプロピルチオメチル)−3,6−ジチアオクタン、1,9−ビス(β−エピチオプロピルチオ)−5−(β−エピチオプロピルチオメチル)−5−〔(2−β−エピチオプロピルチオエチル)チオメチル〕−3,7−ジチアノナン、1,10−ビス(β−エピチオプロピルチオ)−5,6−ビス〔(2−β−エピチオプロピルチオエチル)チオ〕−3,6,9−トリチアデカン、1,11−ビス(β−エピチオプロピルチオ)−4,8−ビス(β−エピチオプロピルチオメチル)−3,6,9−トリチアウンデカン、1,11−ビス(β−エピチオプロピルチオ)−5,7−ビス(β−エピチオプロピルチオメチル)−3,6,9−トリチアウンデカン、1,11−ビス(β−エピチオプロピルチオ)−5,7−〔(2−β−エピチオプロピルチオエチル)チオメチル〕−3,6,9−トリチアウンデカン、1,11−ビス(β−エピチオプロピルチオ)−4,7−ビス(β−エピチオプロピルチオメチル)−3,6,9−トリチアウンデカン等の分岐状有機化合物及びこれらの化合物のエピスルフィド基の水素の少なくとも1個がメチル基で置換された化合物;
1,3−及び1,4−ビス(β−エピチオプロピルチオ)シクロヘキサン、1,3−及び1,4−ビス(β−エピチオプロピルチオメチル)シクロヘキサン、ビス〔4−(β−エピチオプロピルチオ)シクロヘキシル〕メタン、2,2−ビス〔4−(β−エピチオプロピルチオ)シクロヘキシル〕プロパン、ビス〔4−(β−エピチオプロピルチオ)シクロヘキシル〕スルフィド、2,5−ビス(β−エピチオプロピルチオメチル)−1,4−ジチアン、2,5−ビス(β−エピチオプロピルチオエチルチオメチル)−1,4−ジチアン等の環状脂肪族有機化合物及びこれらの化合物のエピスルフィド基の水素の少なくとも1個がメチル基で置換された化合物;
1,3−及び1,4−ビス(β−エピチオプロピルチオ)ベンゼン、1,3及び1,4−ビス(β−エピチオプロピルチオメチル)ベンゼン、ビス〔4−(β−エピチオプロピルチオ)フェニル〕メタン、2,2−ビス〔4−(β−エピチオプロピルチオ)フェニル〕プロパン、ビス〔4−(β−エピチオプロピルチオ)フェニル〕スルフィド、ビス〔4−(β−エピチオプロピルチオ)フェニル〕スルフォン、4,4’−ビス(β−エピチオプロピルチオ)ビフェニル等の芳香族有機化合物及びこれらの化合物のエピスルフィド基の水素の少なくとも1個がメチル基で置換された化合物などが挙げられる。これらは単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0039】
また、本発明に用いられるプラスチックレンズは、屈折率1.60以上のプラスチックレンズであることが好ましい。屈折率1.60以上のプラスチックレンズは難染色性であるため、本発明による効果がより顕著である。
本発明に好ましく用いられるプラスチックレンズの市販品としては、含硫ウレタン系プラスチックレンズ「EYAS」(HOYA株式会社製、屈折率1.60)、含硫ウレタン系プラスチックレンズ「EYNOA」(HOYA株式会社製、屈折率1.67)、ポリスルフィド系プラスチックレンズ「EYRY」(HOYA株式会社製、屈折率1.70)、ポリスルフィド系プラスチックレンズ「EYVIA」(HOYA株式会社製、屈折率1.74)等が挙げられる。
【0040】
(プラスチックレンズの前処理)
染色するプラスチックレンズは、分散染料(A)との親和性を高め、プラスチックレンズを均一に染色する観点から、染色液に浸漬する前に洗浄処理及び/又は表面処理等の前処理を行ってもよい。
洗浄処理としては、例えばオゾン処理、プラズマ処理等が挙げられる。プラスチックレンズの被染色面にオゾン処理やプラズマ処理を施しておくと、該レンズ表面に付着している有機物が取り去られ、また、プラスチックレンズ表面の親水性が高まることから、分散染料とプラスチックレンズ表面との親和性が良くなるものと考えられる。
オゾン処理、プラズマ処理に特に制限はなく、公知のオゾン処理装置やプラズマ処理装置を用いて洗浄処理を行えばよい。プラズマ処理におけるプラズマ出力は、好ましくは50〜500W、より好ましくは100〜300W、更に好ましくは200〜300Wであり、真空度は、好ましくは略真空圧下(例えば真空度1×10-3〜1×104Pa、より好ましくは1×10-3〜1×103Pa、更に好ましくは1×10-2〜5×102Pa)である。プラズマ出力及び真空度がこの範囲であれば、十分にプラスチックレンズの洗浄処理が行われる。
【0041】
必要に応じて上記前処理を行ったプラスチックレンズの染色方法としては、工程の簡便さの観点から、浸漬染色法が好ましい。
浸漬染色法を用いる場合、プラスチックレンズを染色する際の染色液の温度、及び染色液への浸漬時間については、プラスチックレンズの材質、分散染料(A)の種類、化合物(C)の種類等により適宜選択すればよいが、プラスチックレンズを均一に、かつ効率よく染色する観点から、染色液の温度は好ましくは50〜100℃、より好ましくは60〜98℃、更に好ましくは70〜95℃である。また、染色速度、加熱によるプラスチックレンズの変形等を抑制する観点、及び生産性の観点から、染色時間は好ましくは1〜120分、より好ましくは2〜60分である。
染色液から引き揚げたプラスチックレンズは、必要に応じて水洗や乾燥処理を行ってもよい。乾燥温度、乾燥時間等の条件は適宜選択することができる。
【0042】
[染色プラスチックレンズ]
以上のようにして製造された染色プラスチックレンズは、均一に染色され、例えば、眼鏡用レンズ、カメラレンズ、プロジェクターレンズ、望遠鏡レンズ、拡大鏡レンズ等として有用である。
得られた染色プラスチックレンズの染色濃度は、染色前後のプラスチックレンズの透過率の差を測定することにより評価され、具体的には実施例に記載の方法で測定することができる。なお、プラスチックレンズの染色濃度は、染色プラスチックレンズの用途や要求特性に応じて適宜選択することができる。
【実施例】
【0043】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
なお、各種測定は、以下の方法により行った。
【0044】
(1)プラスチックレンズの透過率
実施例及び比較例における染色前及び染色後のプラスチックレンズの波長525nmにおける透過率(それぞれT0、T1とする)は、分光光度計「U3410」((株)日立製作所製)を用いて測定した。なお、染色前後のプラスチックレンズの透過率の差(T0−T1)が大きいほど、染色が促進されたことを示す。
【0045】
(2)染色液中の化合物(C)の濃度
実施例及び比較例で調製した染色液中の化合物(C)の濃度は、高速液体クロマトグラフ装置「LC−20A」((株)島津製作所製)を用いて測定した。
【0046】
(3)染色プラスチックレンズの外観
実施例及び比較例で得られた染色プラスチックレンズの外観を目視観察した。表1において、染色ムラが見られないものを「A」、染色ムラが見られるものを「B」と表記した。
【0047】
(実施例1)
分散染料(A)として「FSPレッドBL」(双葉産業株式会社製)を5gと、界面活性剤として陰イオン系界面活性剤である「ニッカサンソルト7000」(日華化学株式会社製)3gとを1Lの水に添加し、85℃に加熱し保温して、水溶液(X)を調製した。
ついで、予め1Lの水に、化合物(C)として2,2’−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノンを7.8gと、界面活性剤(B)として「ニッカサンソルト7000」を40g添加し、85℃に加熱して化合物(C)を溶解させ、水溶液(Y)を調製した。この水溶液(Y)を100ml量り取り、前記水溶液(X)に添加して混合し、染色液を得た。
なお、染色液中の2,2’−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン濃度は、663.6mg/Lであった。
85℃に保温した前記染色液に、含硫ウレタン系プラスチックレンズ「EYAS」(HOYA株式会社製、屈折率1.60、波長525nmにおける透過率90.0%)を5分間浸漬し、赤色の染色プラスチックレンズを得た。この染色プラスチックレンズの波長525nmにおける透過率は60.0%であり、色ムラもなく良好な外観であった。評価結果を表1に示す。
【0048】
(実施例2)
水溶液(X)の加熱温度及び染色温度を90℃としたこと以外は、実施例1と同様の方法で赤色の染色プラスチックレンズを得た。この染色プラスチックレンズの波長525nmにおける透過率は40.0%であり、色ムラもなく良好な外観であった。評価結果を表1に示す。
【0049】
(実施例3)
水溶液(X)の加熱温度及び染色温度を95℃とし、含硫ウレタン系プラスチックレンズ「EYAS」の替わりに含硫ウレタン系プラスチックレンズ「EYNOA」(HOYA株式会社製、屈折率1.67、波長525nmにおける透過率88.4%)を用いたこと以外は、実施例1と同様の方法で赤色の染色プラスチックレンズを得た。この染色プラスチックレンズの波長525nmにおける透過率は60.0%であり、色ムラもなく良好な外観であった。評価結果を表1に示す。
【0050】
(実施例4)
水溶液(X)の加熱温度を95℃としたこと以外は、実施例1と同様の方法で染色液を得た。
95℃に保温した前記染色液に、ポリスルフィド系プラスチックレンズ「EYRY」(HOYA株式会社製、屈折率1.70、波長525nmにおける透過率88.5%)を30分間浸漬し、赤色の染色プラスチックレンズを得た。この染色プラスチックレンズの波長525nmにおける透過率は70.0%であり、色ムラもなく良好な外観であった。評価結果を表1に示す。
【0051】
(実施例5)
ポリスルフィド系プラスチックレンズ「EYRY」の替わりに、ポリスルフィド系プラスチックレンズ「EYVIA」(HOYA株式会社製、屈折率1.74、波長525nmにおける透過率88.0%)を用いたこと以外は、実施例4と同様の方法で赤色の染色プラスチックレンズを得た。この染色プラスチックレンズの波長525nmにおける透過率は80.0%であり、色ムラもなく良好な外観であった。評価結果を表1に示す。
【0052】
(比較例1)
分散染料(A)として「FSPレッドBL」(双葉産業株式会社製)を5gと、界面活性剤として陰イオン系界面活性剤である「ニッカサンソルト7000」(日華化学株式会社製)3gを1Lの水に添加し、85℃に加熱し保温して、水溶液(X)を調製した。
ついで、予め1Lの水に、化合物(C)として2,2’−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノンを10gと界面活性剤(B)として「ニッカサンソルト7000」を10g添加し、85℃に保温した溶液を調製した。この溶液中には化合物(C)の溶け残りが生じていた。この上澄み液を100ml量り取り、前記水溶液(X)に添加して混合し、染色液を得た。
なお、染色液中の2,2’−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン濃度は41.9mg/Lであった。
85℃に保温した前記染色液に含硫ウレタン系プラスチックレンズ「EYAS」(HOYA株式会社製、屈折率1.60、波長525nmにおける透過率90.0%)を5分間浸漬し、赤色の染色プラスチックレンズを得た。この染色プラスチックレンズの波長525nmにおける透過率は85.0%であった。評価結果を表1に示す。
【0053】
(比較例2)
水溶液(X)の加熱温度及び染色温度を90℃としたこと以外は、比較例1と同様の方法で赤色の染色プラスチックレンズを得た。この染色プラスチックレンズの波長525nmにおける透過率は80.0%であった。評価結果を表1に示す。
【0054】
(比較例3)
水溶液(Y)を用いなかったこと以外は、実施例2と同様の方法で赤色の染色プラスチックレンズを得た。この染色プラスチックレンズの波長525nmにおける透過率は88.0%であり、わずかに着色した程度であった。評価結果を表1に示す。
【0055】
(比較例4)
水溶液(X)の加熱温度及び染色温度を95℃とし、含硫ウレタン系プラスチックレンズ「EYAS」の替わりに含硫ウレタン系プラスチックレンズ「EYNOA」(HOYA株式会社製、屈折率1.67、波長525nmにおける透過率88.4%)を用いたこと以外は、比較例1と同様の方法で赤色の染色プラスチックレンズを得た。この染色プラスチックレンズの波長525nmにおける透過率は80.0%であった。評価結果を表1に示す。
【0056】
(比較例5)
水溶液(X)の加熱温度及び染色温度を95℃としたこと以外は、比較例1と同様の方法で染色液を得た。
95℃に保温した前記染色液にポリスルフィド系プラスチックレンズ「EYRY」(HOYA株式会社製、屈折率1.70、波長525nmにおける透過率88.5%)を30分間浸漬し、赤色の染色プラスチックレンズを得た。この染色プラスチックレンズの波長525nmにおける透過率は85.0%であり、わずかに着色した程度であった。評価結果を表1に示す。
【0057】
(比較例6)
ポリスルフィド系プラスチックレンズ「EYRY」の替わりに、ポリスルフィド系プラスチックレンズ「EYVIA」(HOYA株式会社製、屈折率1.74、波長525nmにおける透過率88.0%)を用いたこと以外は、比較例5と同様の方法で赤色の染色プラスチックレンズを得た。この染色プラスチックレンズの波長525nmにおける透過率は88.0%であり、染色は認められなかった。評価結果を表1に示す。
【0058】
【表1】
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明によれば、染色液中において、染色促進剤であるベンゾフェノン系化合物の溶け残りや析出を生じることなくその濃度を上げることができるので、プラスチックレンズの染色を促進することができ、かつ染色ムラのないプラスチックレンズを製造することができる。本発明のプラスチックレンズの製造方法は、特に染色が困難な高屈折率のプラスチックレンズに対しても有用である。