(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6095302
(24)【登録日】2017年2月24日
(45)【発行日】2017年3月15日
(54)【発明の名称】シリンダーベッドミシン
(51)【国際特許分類】
D05B 71/02 20060101AFI20170306BHJP
【FI】
D05B71/02
【請求項の数】4
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2012-195635(P2012-195635)
(22)【出願日】2012年9月6日
(65)【公開番号】特開2014-50488(P2014-50488A)
(43)【公開日】2014年3月20日
【審査請求日】2015年7月6日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000113229
【氏名又は名称】ペガサスミシン製造株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079636
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 晃一
(72)【発明者】
【氏名】山中 正巳
(72)【発明者】
【氏名】久原 俊雄
【審査官】
山本 杏子
(56)【参考文献】
【文献】
特開2005−027846(JP,A)
【文献】
特開昭57−107188(JP,A)
【文献】
特開2006−181249(JP,A)
【文献】
特開2009−247803(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D05B 1/00−97/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベッドより側方に突出し、筒状の布地が被せて挿入されるシリンダー部を備え、該シリンダー部は針落ち孔の前後に送り歯用溝孔を形成した針板を上面に取付けると共に、前記送り歯用溝孔に配置される送り歯を出没させながら前後動させる送り機構と、上下動する上針と協働して縫い目を形成するルーパを内蔵したシリンダーベッドミシンにおいて、上記シリンダー部は、シリンダー本体と、該シリンダー本体の前面に開閉可能に取付けられる前面カバーとで構成し、シリンダー本体内に納められて給油される送り機構は、送り歯を備えた送り台を有し、該送り台がシリンダー本体より油切り装置を通り油切りされて前後動かつ上下動し、シリンダー本体と前面カバーとの間に形成される、給油の行われない空間内に突出し、該送り台の突出部分に前記送り歯を取付けると共に、ベッド内に設けたルーパ駆動機構に連結されるルーパを前記給油の行われない空間内に配置し、また送り歯用溝孔はシリンダー本体の前面と前面カバーとの間の前記送り歯とルーパが配置される前記給油の行われない空間に連通して開口し、シリンダー本体とは連通することなく、シリンダー本体を密閉構造とすることを特徴とするシリンダーベッドミシン。
【請求項2】
一端にルーパが取り付けられるルーパ軸は、ベッドの側壁に取り付けられるブッシュに回動かつ軸方向にスライド可能に軸支されて、前記ベッドより前記空間内にシリンダー本体の延出方向と平行に突出して配置されることを特徴とする請求項1に記載のシリンダーベッドミシン。
【請求項3】
前記空間内には上針の上下動と同期して揺動し、上針が針板下に降下したとき上針に接近して上針の上下動を案内する針受けが設けられ、針受けは針受け軸の一端に取り付けられ、針受け軸は前記ルーパ軸と上下方向に平行をなしてシリンダー本体前面の膨出部に回動可能に軸支されると共に、針受け軸一端が前記膨出部より前記空間内に突出することを特徴とする請求項2に記載のシリンダーベッドミシン。
【請求項4】
前記ルーパ軸が軸支されるブッシュの先端にオイルシールが取り付けられていることを特徴とする請求項2または3に記載のシリンダーベッドミシン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、筒状の布地を縫製するのに使用されるシリンダーベッドミシンに関する。
本発明において、前後とは布送り方向における前後方向をいい、左右とはミシンを正面から見たときの左右方向をいう。また上下とはミシンの上下方向をいう。
【背景技術】
【0002】
この種のシリンダーベッドミシンは、ベッドから左側方に延出するシリンダー部を備え、該シリンダー部には、針板をシリンダー部上面に取付けると共に、送り機構とルーパを内蔵させ、送り機構は針板の針落ちの前後左右に形成される送り歯用溝孔内に配置された前送り歯及び後送り歯を針板より出没させながら前後動させて布送りを行い、ルーパは上下動する上針と協働してシリンダー部に被せて挿入された筒状の布地に縫い目を形成するようになっており、この種シリンダーベッドミシンの代表的な例の一つが下記特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8−112471号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
針板の送り歯用溝孔は送り歯の前後動を許容できるように前後(送り)方向に長く形成されているが、シリンダー部内の送り機構に給油された潤滑油が送り機構の動きにより飛散して送り歯の周り、とりわけ送り歯の前後の送り歯用溝孔から洩出し易く、洩出した油が布地を汚したり、或いは繊維屑等の埃が送り歯用溝孔からシリンダー部内に入り込み、潤滑油に混入して送り機構の摺接箇所に入って送り機構の動きに支障を来たす等の問題があった。
【0005】
本発明は、前記の問題を解消するため、シリンダー部を給油が行われる密閉構造のシリンダー本体と、該シリンダー本体の前面に開閉可能に取付けられる前面カバーとで構成し、針板の送り歯用溝孔がシリンダー本体と連通して開口しないようにし、これによりシリンダー本体内の潤滑油が送り歯用溝孔から漏出することがないようにしつつもシリンダー部の小型化を図ろうとするもので、そのためのシリンダーベッドミシンを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に係る発明は、ベッドより側方に突出し、筒状の布地が被せて挿入されるシリンダー部を備え、該シリンダー部は針落ち孔の前後に送り歯用溝孔を形成した針板を上面に取付けると共に、前記送り歯用溝孔に配置される送り歯を出没させながら前後動させる送り機構と、上下動する上針と協働して縫い目を形成するルーパを内蔵したシリンダーベッドミシンにおいて、上記シリンダー部は、シリンダー本体と、該シリンダー本体の前面に開閉可能に取付けられる前面カバーとで構成し、シリンダー本体内に納められて給油される送り機構は、送り歯を備えた送り台を有し、該送り台がシリンダー本体より油切り装置を通り油切りされて前後動かつ上下動し、シリンダー本体と前面カバーとの間に形成される
、給油の行われない空間内に突出し、該送り台の突出部分に前記送り歯を取付けると共に、ベッド内に設けたルーパ駆動機構に連結されるルーパを前記
給油の行われない空間内に配置し、また送り歯用溝孔はシリンダー本体の前面と前面カバーとの間の前記送り歯とルーパが配置される
前記給油の行われない空間に連通して開口し、シリンダー本体とは連通することなく、シリンダー本体を密閉構造とすることを特徴とする。
【0007】
請求項2に係る発明は、請求項1に係る発明において、一端にルーパが取り付けられるルーパ軸は、ベッドの側壁に取り付けられるブッシュに回動かつ軸方向にスライド可能に軸支されて、前記ベッドより前記空間内にシリンダー本体の延出方向と平行に突出して配置されることを特徴とする。
【0008】
請求項3に係る発明は、請求項2に係る発明において、前記空間内には上針の上下動と同期して揺動し、上針が針板下に降下したとき上針に接近して上針の上下動を案内する針受けが設けられ、針受けは針受け軸の一端に取り付けられ、針受け軸は前記ルーパ軸と上下方向に平行をなしてシリンダー本体前面の膨出部に回動可能に軸支されると共に、針受け軸一端が前記膨出部より前記空間内に突出することを特徴とする。
【0009】
請求項4に係る発明は、請求項2または請求項3に係る発明において、前記ルーパ軸が軸支されるブッシュの先端にオイルシールが取り付けられることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
請求項1に係る発明によると、シリンダー本体の前面より突出する送り台や、該送り台の突出部分に取付けた送り歯及びルーパには給油を必要とする箇所がなく、シリンダー本体とカバーで囲まれる空間内では給油が行われないため、送り歯用溝孔が前記空間と連通し、該空間の開口部となっていても、これより潤滑油が洩れ出て生地を汚すことはない。シリンダー本体内では給油が行われるが、シリンダー本体は密閉構造であり、送り歯用溝孔と連通していないため、潤滑油が洩れ出ることはない。また送り歯用溝孔から繊維屑等の埃がシリンダー本体内に入り込むようなことがあっても送り歯やルーパの動きに支障を来たすことはない。その上、ルーパの駆動機構はシリンダー部内には設けられず、ミシンベッド内に設けられるため、その分、シリンダー部を小型化することができる。
【0011】
請求項2に関する発明によると、前記空間内においてルーパ及びルーパ軸には給油を必要とする箇所がないため、潤滑油が針板の送り歯揺溝孔を通じて針板上に漏出することがなく、しかもルーパ軸がシリンダー本体内に前後方向(布送り方向)に配置される従来例に比べ、ルーパ軸はシリンダー本体と平行に配置し、ルーパの駆動機構をミシンベッド内に設けているので、シリンダー部の小型化を図ることができる。
【0012】
請求項3に係る発明によると、請求項1に係る発明の上記効果に加え、前記空間内に設けられる針受けには、給油を必要とする箇所がなく、針受けを設けても潤滑油が針板上に洩れ出るおそれはないうえ、針受けが取り付けられる針受け軸はルーパ軸と上下方向に平行に配置されているので、シリンダー部の小型化を図るのに支障はない。
【0013】
請求項4に係る発明によると、ルーパ軸に付着する潤滑油がルーパ軸の軸方向の進退によって前記空間内に持ち出されるのを確実に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図3】針板と前面カバーを取外したシリンダーベッドミシンの要部の斜視図。
【
図4】前面カバーと針板を取外したシリンダー部の平面図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1は、ミシンベッド1より側方に延出するシリンダー部2を備えた二重環縫い用のシリンダーベッドミシン3を示すもので、シリンダー部2はシリンダー本体4と、該シリンダー本体4の前面にヒンジ5により回動可能に取付けられて開閉する前面カバー6よりなっている。この前面カバー6は、針板8の左右において針板8と面一をなし、後述する空間Sの上面を覆う上面カバー部6aと、シリンダー本体4の前面を覆って、前記上面カバー部6aと一体的に形成され、後述する空間Sの前面を覆う側面カバー部6bとよりなっている。
【0016】
図2において、9は針落ち、11は針落ち9の前後左右の両側に送り方向に沿って形成される送り歯用溝孔であり、12は針落ち9の後側の送り歯用溝孔11に配置される主送り歯、13は針落ち9の手前側の送り歯用溝孔11に配置される差動送り歯で、各送り歯12及び13はいずれも後述の送り機構によって送り歯用溝孔11を針板8より出没しながら前後動し、シリンダー部2に被せて挿入された布地をシリンダー部の延出方向と直交する前後方向に送り出すようになっている。14はシリンダー本体4の上面カバーであり、シリンダー本体4の端面は、
図1及び後述の
図3に示す端面カバー15で塞がれ固定されている。針板8は、針板ブラケット36の上面に止めネジ7、7で固定され、針板ブラケット36は上面カバー14の上面に取り付けられている。なお、前記前面カバー6はヒンジ5を支点として回動することにより開閉する代わりに、取外し可能に取付けられるようになっていてもよい。
【0017】
図3はミシンベッド1より側方に突出し、前面カバー6と針板8を取外したシリンダーベッドミシン3の要部の斜視図、
図4は前面カバー6と針板8を取外したシリンダー部2の平面図、
図5は同正面図、
図6は
図2のB−B線、
図7は同A−A線での断面図で、送り機構は主送り台16と、該主送り台16に並設される差動送り台17を有し(
図4参照)、各送り台16及び17はそれぞれシリンダー本体4の前壁4aに取付けた油切り装置18を通り油切りされて、シリンダー本体4内より該シリンダー本体4の手前側に突出し、前後動かつ上下動するようになっており、各送り台16、17の突出部分端部にはそれぞれ前述の主送り歯12と差動送り歯13を取付けている。
【0018】
主送り台16及び差動送り台17を含む送り機構は、ミシンベッド1内よりシリンダー本体4内に向けて配置される図示しない主軸に連結されて駆動され、シリンダー本体4内の送り機構は、密閉構造のシリンダー本体4内で給油が行われるが、この送り機構自体は、既知の構造で、本発明の特徴部分ではないので、図示を省略し、これ以上の説明は省略する。
【0019】
油切り装置18について概略説明すると、案内板21と、該案内板21の前面に被さり、案内板21と共に前記シリンダー本体4の前壁4aに止めネジ19によりネジ止めして固定される機枠22と、案内板21と桟枠22の間に配置され、両者により前後の動きを規制されて、上下動のみ可能な一対のシール板23よりなり、案内板21と桟枠22には前記主送り台16と差動送り台17が個別に前後動可能に通されると共に、各送り台16、17の上下動を許容する縦孔24が形成され、また一対のシール板23には主送り台16と差動送り台17が個別に前後動のみ可能に通される縦孔25が形成されている。
図7には主送り台用の縦孔24と25のみが示され、差動送り台用の縦孔は示されていないが、差動送り台用の縦孔は主送り台用の縦孔24及び25の奥側(ミシンベッド側)に縦孔24及び25と平行に形成されている。
【0020】
本装置18によると、図示省略の前記主軸の回転駆動により、主送り台16と差動送り台17が前後動しながら上下動すると、案内板21と桟枠22間の一対のシール板23が案内板21と桟枠22で挟まれて前後の動きを規制された状態で送り台16及び17の上下動に伴って上下動のみを行い、各送り台16、17がシール板23を通る際に付着する潤滑油を擦り取って油切りを行い、前記空間内に潤滑油を漏出することがないようにしている。
【0021】
ミシンベッド1の左側壁の側面1aより側方にシリンダー本体4と平行をなして突設されるブッシュ27には、ルーパ軸28が回動かつ軸方向、すなわちシリンダー本体4の延出方向(
図4の左右方向)にスライド可能に軸支され、ルーパ軸28は基部がミシンベッド1内において図示しないルーパ駆動機構に連結され、該ルーパ駆動機構により回動しながら軸方に進退するようになっており、ルーパ軸28の先端にはルーパ29がルーパ取付台31を介して取付けられ、ルーパ29はよく知られるように、上針と協働して二重環縫い目を形成するようになっている。図中、32はブッシュ27の先端部に取付けられ、ルーパ軸28の油切りを行うオイルシールである。
【0022】
図3に示す33は、前記ルーパ29と共にシリンダー本体4の手前の前面カバー6とシリンダー本体4との間の空間S内に配置される針受けで、該針受け33は針受け軸34の一端に取り付けられている。この針受け軸34はルーパ軸28の下方に位置し、ルーパ軸28と平行をなしてベッド側のシリンダー本体4基部におけるシリンダー本体4の前面4aより手前側に膨出する膨出部4bに軸回りに回動可能に軸支されると共に、針受け軸34の前記一端が前記膨出部4bより左側方に前記空間S内に突出している。また針受け軸34はシリンダー本体4内に配置され、前記主軸に連結される図示しない針受け駆動機構の一部を構成し、前記主軸により駆動されて上針26の上下動と同期して軸周りに揺動するようになっており、前記針受け軸34の揺動により、針受け33は上針26が針落ち9より針板8下に降下したとき、上針26に接近して針案内を行い、上針26が上昇すると、上針26から離間するようになっているもので、この針受け33も既知のものである。35は針受け軸34が軸支されるシリンダー本体前面4aの前記膨出部4bに設けられるオイルシールであり、このオイルシール35によりシリンダー本体4内の潤滑油が針受け軸34を通じて空間S内に漏洩するのを防止できるようにしている。
【0023】
本実施形態のシリンダーベッドミシンでは、
図2、
図6及び
図7に示されるように針板7の送り歯用溝孔11はシリンダー本体4と前面カバー6とで囲まれ、かつ前記ルーパ29や針受け33を配した空間Sに連通する開口となっているが、上面カバー14と端面カバー15及び油切り装置18で塞がれて密閉構造をなすシリンダー本体4とは連通せず、開口となっていない。これによりシリンダー本体4は密閉構造となっている。
【0024】
したがって本実施形態のシリンダーベッドミシンによると、給油が行われる送り機構及び針受け駆動機構は密閉構造のシリンダー本体4内に納まり、また同じく給油されるルーパ駆動機構はミシンベッド1内に配置され、シリンダー本体4と前面カバー6で囲まれる空間S内に突出する送り機構の送り台16、17、ルーパ軸28及び針受け軸34は油切されるため、前記空間Sと連通する送り歯用溝孔11を通って潤滑油が飛散し、針板上の布地を汚す、といった問題を生ずることがない。
【0025】
送り歯用溝孔11、とくに送り歯12、13前後の溝孔部分からは繊維屑等の埃が前記空間S内に入り込むおそれはあるが、埃が入り込んだとしても空間S内には潤滑油がなく、送り機構、ルーパ29及び針受け33の摺接箇所もないため、問題がなく、送り歯12、13、ルーパ29及び針受け33の動きに支障を来たすことはない。また、前述したように、シリンダー本体4は密閉構造となっているから、前記空間Sに入り込んだ埃がシリンダー本体4内に侵入し、該シリンダー本体4内に配置される各機構の駆動を阻害する恐れもない。
【0026】
またルーパ29の駆動機構はミシンベッド1内に配置され、シリンダー部内には設けられないため、その分シリンダー部2を小型化することができる。さらに、ルーパ軸28と針受け軸34は前記空間S内においてシリンダー本体4の延出方向と平行に、かつ上下に配置されているから、シリンダー本体4を密閉化しつつもシリンダー部2を小型化することができる。
【符号の説明】
【0027】
1・・ミシンベッド
2・・シリンダー部
3・・シリンダーベッドミシン
4・・シリンダー本体
6・・前面カバー
8・・針板
11・・送り歯用溝孔
12・・主送り歯
13・・差動送り歯
16・・主送り台
17・・差動送り台
18・・油切り装置
26・・上針
28・・ルーパ軸
29・・ルーパ
33・・針受け
S・・・空間