特許第6095309号(P6095309)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6095309
(24)【登録日】2017年2月24日
(45)【発行日】2017年3月15日
(54)【発明の名称】並継竿
(51)【国際特許分類】
   A01K 87/00 20060101AFI20170306BHJP
【FI】
   A01K87/00 610Z
   A01K87/00 630C
【請求項の数】5
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2012-212172(P2012-212172)
(22)【出願日】2012年9月26日
(65)【公開番号】特開2014-64520(P2014-64520A)
(43)【公開日】2014年4月17日
【審査請求日】2015年8月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002439
【氏名又は名称】株式会社シマノ
(74)【代理人】
【識別番号】100093687
【弁理士】
【氏名又は名称】富崎 元成
(74)【代理人】
【識別番号】100149342
【弁理士】
【氏名又は名称】小副川 義昭
(72)【発明者】
【氏名】谷口 一真
(72)【発明者】
【氏名】松本 聖比古
(72)【発明者】
【氏名】岩田 壮司
【審査官】 大熊 靖夫
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭52−141379(JP,A)
【文献】 特開2001−314141(JP,A)
【文献】 特開平09−290463(JP,A)
【文献】 特開平09−182547(JP,A)
【文献】 特開2002−218867(JP,A)
【文献】 特開2006−320235(JP,A)
【文献】 特開2011−004614(JP,A)
【文献】 特開2008−011816(JP,A)
【文献】 特開2009−039011(JP,A)
【文献】 実開平06−041470(JP,U)
【文献】 特開平11−289925(JP,A)
【文献】 特開昭63−317320(JP,A)
【文献】 米国特許第03830008(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01K 87/00−87/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
竿先側竿体の元側端部を竿元側竿体の竿先側開口端内に嵌合して連結する並継竿であって、前記竿先側竿体の元側端部の外周面を元側端に至る程縮径する逆テーパ状に形成し、前記竿元側竿体の竿先側端部の内周面を、元側程縮径する逆テーパ状に形成するとともに前記逆テーパ状の内周面の元側には元側程拡径する正テーパ状内周面を形成し、
前記竿元側竿体の前記逆テーパ状内周面と前記正テーパ状内周面との接続点を基準点として、前記逆テーパ状内周面側と前記正テーパ状内周面側に亘る一定範囲において、ガラス強化繊維製のプリプレグシートを最内層として巻回し、
前記最内層の内周面が円滑面に形成してある並継竿。
【請求項2】
前記竿元側竿体の前記最内層の外側に、プリプレグテープを螺旋状に巻回した内側テープ層と、前記内側テープ層の外側に軸芯方向全長に亘る長さの中間プリプレグシートを巻回した中間シート層と、前記中間シート層の外側にプリプレグテープを逆方向の螺旋状に巻回した外側テープ層とを形成し、前記内外テープ層におけるテープを、径方向視において交差するように形成してある請求項1記載の並継竿。
【請求項3】
前記竿元側竿体の外周面を元側程拡径する正テーパ状外周面に形成してある請求項1又は2記載の並継竿。
【請求項4】
前記最内層におけるガラス強化繊維製プリプレグシートの竿先側端辺は竿軸線に対して直交する方向に切断され、前記ガラス強化繊維製プリプレグシートの竿元側端辺は竿軸線に対して直交する方向から傾斜する状態に切断してある請求項1〜3のうちのいずれか一つに記載の並継竿。
【請求項5】
前記中間シート層における中間プリプレグシートの竿先側端辺とその竿先側端辺に直交する巻始め端辺との交差位置に、前記竿先側端辺と前記巻始め端辺とのいずれにも斜交する切り取り面で切断され、竿先側端辺に向かうに連れて切り取り面が竿軸線から離れる状態に形成してある請求項記載の並継竿。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、竿先側竿体の元側端部を竿元側竿体の竿先側開口端内に嵌合して連結する並継竿であって、前記竿先側竿体の元側端部の外周面を元側端に至る程縮径する逆テーパ状に形成し、前記竿元側竿体の竿先側端部の内周面を、元側程縮径する逆テーパ状に形成するとともに前記逆テーパ状の内周面の元側には元側程拡径する正テーパ状内周面を形成してある並継竿に関する。
【背景技術】
【0002】
竿元側竿体の竿先側端部の内周面を元側程縮径する逆テーパ状に形成することによって、釣操作の趣がまし、釣り人の並継竿の選択の可能性が広がる。
このような竿元側竿体を形成するに、従来においては、竿元側竿体の竿先側端部の内周面をストレート面或いは元側程拡径する正テーパ状内周面に一旦形成し、その後、例えば、特願2007−205696号の第4図(イ)(ロ)に示すように、竿先側から竿元側竿体の竿先側端部の内部空間内にリーマ工具を差し入れて、研磨加工を施し、逆テーパ面を形成していた。
【0003】
しかし、このようにリーマ加工を施す場合には、リーマの切っ先と竿元側竿体の軸芯とが一致していないと、逆テーパ面の軸芯と竿元側竿体の軸芯とが芯ズレを起こし、竿元側竿体と竿先側竿体とが芯ズレを起こした状態で連結されることもある。
そのような芯ズレ状態を解消する為に、逆テーパ側を大径に加工し、竿先側端部の外周面との間に隙間を作った状態に形成し、その竿先側端部の外周面との間に形成された隙間を樹脂で埋めて、相手側の竿先側竿体の元側端部の外周面を、竿元側竿体の竿先側端部の内周面に継合させた際に、ガタツキのないように手当を施していた。しかし、経年変化により隙間を埋める樹脂が摩耗し、長期使用の間に、竿先側竿体と竿元側竿体との連結状態にガタツキが発生することも考えられた。
【0004】
上記した芯ズレがない状態であってもリーマ加工が行われた場合には、リーマ加工によって、竿元側竿体の竿先側内周面の表面は、強化繊維が切断され、かつ、強化繊維を覆う樹脂は削れ加工を受け、竿先側内周面の表面自体は荒れた状態になっており、これも、長い間の使用では、荒れた部分が摩耗して、ガタツキの原因になると考えられる。
【0005】
そこで、竿体自体ではなく、竿体を形成するマンドレルに着目し、上記したような不都合を解消する製造方法を提案するものがあった。
つまり、マンドレルを竿先側部分と竿元側部分との二分割構成し、マンドレルの竿先側部分の外周面を元側程縮径する逆テーパ状に形成する。そして、マンドレルにおいて竿先側に逆テーパ状の外周面と竿元側に正テーパ状の外周面を配置し、そのマンドレルにプリプレグを巻回し、焼成した後に、竿先側部分を竿先側に竿元側部分を竿元側に抜き出して、竿元側竿体を形成していた。
このように、マンドレルの竿先側部分を竿先側に抜き出すことによって、逆テーパ面であっても、リーマ加工を必要としない利点がある(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭52−141379号公報(図2
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記のような製造方法を採ることによって、リーマ加工を施す場合の不都合が解消されるものではあるが、次のような欠点もある。
つまり、竿元側竿体の全長に亘る長さのプリプレグをマンドレルに巻回した場合に、マンドレルの逆テーパ部から正テーパ部に係る部分で皺より等が発生するという課題がある。
そうだからと言って、従来技術公報の第4図に示すように、全長に亘る長さのプリプレグを大小片のプリプレグに分断してマンドレルに巻回した場合に、皺よりは解消する可能性もあるが、竿体としては、逆テーパ部から正テーパ部に変化する部位が、小径であるために、この部分で強度的に弱い面が見られた。
【0008】
本発明の目的は、竿元側竿体における竿先側端部の逆テーパ内周面が円滑な面を呈しながら、かつ、竿元側竿体の逆テーパ面から正テーパ面での強度低下を来すことが少ない並継竿を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
〔構成〕
請求項1に係る発明の特徴構成は、竿先側竿体の元側端部を竿元側竿体の竿先側開口端内に嵌合して連結する並継竿であって、前記竿先側竿体の元側端部の外周面を元側端に至る程縮径する逆テーパ状に形成し、前記竿元側竿体の竿先側端部の内周面を、元側程縮径する逆テーパ状に形成するとともに前記逆テーパ状の内周面の元側には元側程拡径する正テーパ状内周面を形成し、
前記竿元側竿体の前記逆テーパ状内周面と前記正テーパ状内周面との接続点を基準点として、前記逆テーパ状内周面側と前記正テーパ状内周面側に亘る一定範囲において、ガラス強化繊維製のプリプレグシートを最内層として巻回し、
前記最内層の内周面が円滑面に形成してある点にあり、その作用効果は次の通りである。
【0010】
〔作用〕
つまり、竿元側竿体の逆テーパ状内周面と正テーパ状内周面との接続点を基準点として、逆テーパ状内周面側と正テーパ状内周面側に亘る一定範囲において、ガラス強化繊維製のプリプレグシートを最内層として巻回した。
竿体の全長に亘ってガラス強化繊維製のプリプレグシートを施すのではなく、逆テーパ状内周面と正テーパ状内周面の接続点を基準点としてその基準点を境にして一定範囲にだけ施すこととしたので、ガラス強化繊維製のプリプレグシートを、マンドレルの逆テーパ状の外周面と正テーパ状の外周面とに隙間なく、ぴったり密着する状態で巻回することができる。
このことによって、マンドレルの逆テーパ部分と正テーパ部分とが互いに軸芯方向に離間しようとすることを、ガラス強化繊維製のプリプレグシートで抑制することができ、最内層の上に巻回される上層部に変形や捻じれ等が発生することが抑制される。
【0011】
さらに、マンドレルの逆テーパ状の外周面と正テーパ状の外周面との最も縮径した谷間部分にガラス強化繊維製のプリプレグシートを施すことができるので、最内層の外周面を、マンドレルの逆テーパ状の外周面に比べて、逆テーパ状の度合いを小さくすることができる。
これによって、竿元側竿体の前記逆テーパ状内周面と前記正テーパ状内周面との接続点部位の厚みを厚くすることができ、この部位で強度低下を抑制することができる。
【0012】
しかも、ガラス強化繊維製のプリプレグシートを前記した接続点部位の外周面側に施すこととしたので、最内層の外周面が、マンドレルの逆テーパ状の外周面と正テーパ状の外周面との最も縮径した谷間部分を埋める働きをし、最内層の上に巻き付けられる外層部分の巻き付けを良好に行えるようになる。
【0013】
〔効果〕
したがって、リーマ加工具によって、強化繊維や樹脂が荒らされることのない、最内層の内周面を円滑面に形成する状態を維持しながら、マンドレルの離間を阻止する有効な最内層の配置によって、竿元側竿体の前記逆テーパ状内周面と前記正テーパ状内周面との接続点部位での強度低下、及び、プリプレグの皺寄り変形を阻止し、それでいて、逆テーパ状内周面と正テーパ状内周面を有する趣の異なる釣り操作が可能な並継竿を提供できるに至った。
【0014】
〔構成〕
請求項2に係る発明の特徴構成は、前記竿元側竿体の前記最内層の外側に、プリプレグテープを螺旋状に巻回した内側テープ層と、前記内側テープ層の外側に軸芯方向全長に亘る長さの中間プリプレグシートを巻回した中間シート層と、前記中間シート層の外側にプリプレグテープを逆方向の螺旋状に巻回した外側テープ層とを形成し、前記内外テープ層におけるテープを、径方向視において交差するように形成してある点にあり、その作用効果は次の通りである。
【0015】
〔作用効果〕
最内層の上に巻き付け内側テープ層を形成するものとしてプリプレグテープを採用した。これによって、最内層と剥き出しのマンドレルとの境目においても皺よりなくプリプレグを巻回することができ、最内層と内側テープ層との密着性を良好なものにできる。したがって、内側テープ層の外周面を段差の少ない円滑なものにでき、上の層を形成するのが容易になる。
内側テープ層の外側には、軸芯方向全長に亘る長さの中間プリプレグシートを巻回して中間シート層を配置する。このように、中間位置に軸芯方向の全長に亘る中間プリプレグシートを配置することによって、竿元側竿体自体をしっかりしたものにできる。
更に、中間シート層の外側には、再び、プリプレグテープを巻回して外側テープ層を形成する。このように、外側テープ層によって、竿体として軸心方向個々の部分のテープによる緊締力を高めて、焼成前の最内層、内側テープ層、中間シート層、外側シート層の互いの接着緊密度を高めることができる。
しかも、内側テープ層と外側テープ層とは巻回方向が反対方向であるので、内側テープ層、中間シート層、外側シート層の互いの接着緊密度を更に高めると同時に捩じり荷重に対する対抗力も高く、元の姿勢への戻り反発力の高い竿元側竿体を提供できた。
【0016】
〔構成〕
請求項3に係る発明の特徴構成は、前記竿元側竿体の外周面を元側程拡径する正テーパ状外周面に形成してある点にあり、その作用効果は次の通りである。
【0017】
〔作用効果〕
竿元側竿体の外周面を元側程拡径する正テーパ状外周面に形成してあるので、通常の竿体と同様な外観を呈していながら、逆テーパ状内周面を備えており、通常の釣竿とは異な趣の釣り操作が可能である。しかも、その逆テーパ状内周面の存在だけでなく、逆テーパ状内周面と正テーパ状内周面との接続点部位が厚肉状態となるので、強度が強化され、かつ、厚肉状態故に、釣り竿は異なった動きを行い、更に、趣の異なる釣り操作が可能になる。
【0018】
〔構成〕
請求項4に係る発明の特徴構成は、最内層におけるガラス強化繊維製プリプレグシートの竿先側端辺は竿軸線に対して直交する方向に切断され、ガラス強化繊維製プリプレグシートの竿元側端辺は竿軸線に対して直交する方向から傾斜する状態に切断してある点にあり、その作用効果は次の通りである。
【0019】
〔作用効果〕
ガラス強化繊維製プリプレグシートの竿元側端辺は竿軸線に対して直交する方向から傾斜する状態に切断してあるので、マンドレルに巻回した場合に、ガラス強化繊維製プリプレグシートの竿元側端辺とマンドレルの外周面との接続部位の繋がりを段差のないものにでき、上に巻回される内側テープ層との密着性を良好なものにしている。
【0020】
〔構成〕
請求項5に係る発明の特徴構成は、中間シート層における中間プリプレグシートの竿先側端辺とその竿先側端辺に直交する巻始め端辺との交差位置に、前記竿先側端辺と前記巻始め端辺とのいずれにも斜交する切り取り面で切断され、竿先側端辺に向かうに連れて切り取り面が竿軸線から離れる状態に形成してある点にあり、その作用効果は次の通りである。
【0021】
〔作用効果〕
中間シート層におけるプリプレグシートの竿先側端辺とその竿先側端辺に直交する巻始め端辺との交差位置に、前記竿先側端辺と前記巻始め端辺とのいずれにも斜交する切り取り面で切断され、竿先側端辺に向かうに連れて巻始め端辺が竿軸線から離れる状態に形成してあるので、最内層として、前記竿元側竿体の前記逆テーパ状内周面と前記正テーパ状内周面との接続点を基準点として、前記逆テーパ状内周面側と前記正テーパ状内周面側に亘る一定範囲において、ガラス強化繊維製のプリプレグシートとの過剰な重なり代を抑制できて、中間シート層の外周面のテーパ構造を適切なものとすることができた。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1図1(a)は、竿先側竿体と竿元側竿体との連結部分を示す並継竿の縦断側面図、(b)竿先側竿体と竿元側竿体との連結する前の状態を示す縦断側面図である。
図2図2(a)は、竿先側マンドレル部と竿元側マンドレル部を連結する前の状態を示す一部切欠き側面図、(b)は、竿先側マンドレル部と竿元側マンドレル部との連結後状態を示す縦断側面図、(c)は、最内層を構成するガラス強化繊維製プリプレグを示す展開図、(d)は、最内層をマンドレルに巻回した状態を示す側面図、(e)はプリプレグテープを巻回して内側テープ層を形成している状態を示す側面図である。
図3図3(f)は、中間シート層を形成するプリプレグシートを示す展開図、(g)は、プリプレグシートを巻回して中間シート層を形成した状態を示す側面図、(h)はプリプレグテープを巻回して外側テープ層及び補強プリプレグを巻回して補強層を形成している状態を示す側面図である。
図4図4は、竿元側竿体の竿先部分を示す縦断側面図である。
図5図5は、インロー芯材を使用して、竿先側竿体と竿元側竿体とを連結した状態を示す、別実施構造の縦断側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本願発明は、竿先側竿体の元側端部を竿元側竿体の竿先側開口端内に嵌合して連結する並継竿において、今までにない趣きを感じることのできる釣り操作を楽しむことのできる竿構造を得ることを目的として、竿元側竿体の竿先側開口端内に逆テーパ状の内周面と正テーパ状の内周面とを強度低下を来すことが少ないものにして、長期に亘って安定したガタツキ等の少ない使い易い並継竿を提供する点にある。
【0024】
〔第1実施形態〕
図1、2に示すように、並継竿Aは、竿先側竿体1と竿元側竿体2とを連結して構成されている。つまり、竿側竿体1の元側端部の外周面を元側程縮径する逆テーパ面1aに形成し、竿元側竿体2の竿先側開口端内の内周面を逆テーパ面2aに形成して、竿先側竿体1の元側端部を竿元側竿体2の竿先側開口端内に嵌合している。
並継竿Aとして、連結される竿体の本数はこの二本に限定されるものではない。各竿体には、図示していないが、釣り糸ガイドが設けられ、かつ、手元竿にはリールシートを設けて、ルアーで釣りを楽しむ並継竿Aを提示する。
【0025】
並継竿Aにおける竿先側竿体1等は次のように製作される。つまり、炭素繊維等の強化繊維cを一方向に引き揃え、その引き揃え強化繊維群にエポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂(又は熱可塑性樹脂)を含浸させて、プリプレグシートを形成する。このプリプレグシートを略台形状に裁断した複数のものをマンドレルに巻回し、複数のプリプレグシートを巻回して構成した竿素材をマンドレルに巻回した状態で炉に入れて焼成し、焼成後マンドレルを脱芯して円筒状の竿素材を取り出しその竿素材を所定長に裁断して、仕上加工を施し竿体とする。
【0026】
プリプレグを構成する強化繊維としては、具体的には、炭素繊維以外にガラス繊維、アラミド繊維、アルミナ繊維等が使用でき、樹脂としては、エポキシ樹脂の他に、フェノール樹脂、ポリエステル樹脂等の熱硬化性樹脂やPV(E)等の熱可塑性樹脂が使用できる。また、プリプレグとしては、強化繊維を編み込んだ織り物に樹脂を含浸させて構成したものであってもよい。
【0027】
次に、竿元側竿体2の製造工程について、マンドレル3の構造から説明する。図2(a)(b)に示すように、マンドレル3は、竿先側マンドレル部3Aと竿元側マンドレル部3Bとで構成される。マンドレル3は、通常、鋼鉄、ステンレス、チタン等の鋼材で略円錐台状に形成され、クロムメッキ等で表面塗装を施されて形成されている。
【0028】
竿先側マンドレル部3Aは、先側端から元側端に掛けて、パイプ状を呈しており、外径が徐々に小さくなる逆テーパ面を有する略円錐台状に形成されている。竿元側マンドレル部3Bは、先側端から元側端に掛けて、円柱状を呈しており、外径が徐々に大きくなる正テーパ面を有する略円錐台状に形成してある。
竿元側マンドレル部3Bの先側端には、インロー芯部3bが形成してあり、竿先側マンドレル部3Aのパイプ状の内部空間を利用して形成されている元側の係合用孔3a内に係入可能に形成してある。
【0029】
以上のようになる竿先側マンドレル部3Aと竿元側マンドレル部3Bとにおいて、インロー芯部3bが元側に形成された係合用孔3a内に挿入係合され、インロー芯部3bの元側に形成された段差部3dが竿先側マンドレル部3Aの元側開口端3cに当接した状態で挿入係合が完了し、マンドレル3を一体連結形成する。その状態が図2(b)で示されている。
なお、竿先側マンドレル部3Aの竿先端部、及び、竿元側マンドレル部3Bの竿元端部には、工具係止用の孔3e、3fが形成してある。
この工具係止用の孔3e、3fに引っ掛け係止具を取付け、引き抜きシリンダ等を使用して、竿先側マンドレル部3Aと竿元側マンドレル部3Bとを分離するように構成してある。
【0030】
竿元側竿体2は、図4に示すように、最内層2Aと、その外側に内側テープ層2Bと、内側テープ層2Bの外側に中間シート層2Cと、その外側に外側テープ層2Dが形成されて、構成される。外側テープ層2Dの外側には竿先側と竿元側とに補強層2Eが設けられる。
【0031】
最内層2Aは、竿先側端から一定範囲の長さだけ設けられ、内側に竿元側程縮径する逆テーパ面2aと逆テーパ面2aの元側から更に元側程拡径する正テーパ面2bとからなる内周面を有している。
最内層2Aは、逆テーパ状内周面側と前記正テーパ状内周面側に亘る一定範囲において、ガラス強化繊維製のプリプレグシート4を最内層として巻回している。
【0032】
図2(c)に示すように、ガラス強化繊維製のプリプレグシート4は、ガラス製強化繊維dを竿軸線Xに対して傾斜する状態でかつその繊維を交差する状態に編み込んだクロス繊維に、エポキシ樹脂やPET樹脂を含浸させて、シートに裁断されたものである。
ガラス強化繊維製のプリプレグシート4の竿先側端辺4aは竿軸線Xに対して直交する方向に切断され、竿元側端辺4bは竿軸線Xに対して直交する方向から傾斜する状態に切断してある。残りの2辺は、竿軸線Xに対して平行な辺を形成している。
【0033】
以上のように裁断されたガラス強化繊維製プリプレグシート4の竿先側端辺4aを、図2(d)に示すように、マンドレル3の竿先側マンドレル部3Aの先側端に合わせた状態で巻回する。ガラス強化繊維製プリプレグシート4は、竿先側マンドレル部3Aの逆テーパ状外周面と竿元側マンドレル部3Bの正テーパ状内周面との接続点を基準点として、逆テーパ状外周面側と正テーパ状外周面側に亘る一定範囲において巻回されている。
【0034】
次に、内側テープ層2Bについて説明する。図2(e)に示すように、内側テープ層2Bで使用されるものは、細幅の内側プリプレグテープ5であり、炭素製強化繊維が複数本平行にテープ長手方向に沿って配列されており、それにエポキシ樹脂等を含浸させてプリプレグテープとしている。
この内側プリプレグテープ5を、マンドレル3に巻き付けられた最内層2Aの上から、かつ、竿元側から順次螺旋状に巻回して、内側テープ層2Bを形成する。
【0035】
次に、中間シート層2Cを形成する。図3(f)に示すように、中間シート層2Cを形成するのは、略細長い台形状のプリプレグシート6である。プリプレグシート6は、炭素製強化繊維cを竿周方向及び竿軸線方向に平行に引き揃え交差配置したものにエポキシ樹脂等を含浸させてシート状に裁断されたものである。
プリプレグシート6の構成としては、次のようなものでもよい。
(a) 強化繊維cを竿周方向に引き揃えたシートと竿軸線方向に引き揃えたシートとを重ね合わせたバイアス式のものでもよい。
(b) 強化繊維cを竿周方向に引き揃えたシートだけで構成してもよい。
(c) 強化繊維cを竿軸線方向に引き揃えたシートだけで構成してもよい。
(d) 竿周方向に対して傾斜する状態の強化繊維cと、竿軸線方向に対して傾斜する状態の強化繊維cとを互いに交差する状態に編み込んだシートで構成してもよい。
上記したプリプレグシート6は、竿先側端辺6Aと竿元側端辺6Bとが竿軸線Xに対して直交する状態に裁断されており、内側テープ層2Bの上に最初に巻き付けられる巻始め端辺6Cは略竿軸線Xに平行に裁断され、巻終わり端辺6Dは、竿元側程竿軸線Xから離れる直線に裁断されている。そして、竿先側端辺6Aと、その竿先側端辺6Aに直交する巻始め端辺6Cとの交差位置に、竿先側端辺6Aと巻始め端辺6Cとのいずれにも斜交する切り取り面6aが形成されて、竿先側端辺6Aに向かうに連れて切り取り面6aが竿軸線Xから離れる状態に形成してある。
【0036】
中間シート層2Cの竿先側の形状において切り取り面6aによる切り欠き部分を設けているのは、最内層2Aを逆テーパ状内周面側と正テーパ状内周面側に亘る一定範囲において設けていることと密接に関係しており、中間シート層2Cを内側テープ層2Bの上に巻回した場合に、図3(g)に示すように、外周面のテーパ形状を元側程拡径する状態とするためである。
【0037】
次に、外側テープ層2Dについて説明する。図3(h)に示すように、外側テープ層2Dで使用されるものは、細幅の外側プリプレグテープ7であり、炭素製強化繊維cが複数本平行にテープ長手方向に沿って配列されており、それにエポキシ樹脂等を含浸させてプリプレグテープとしている。
この外側プリプレグテープ7を、マンドレル3に巻き付けられた中間シート層2Cの竿先側先端から順次螺旋状に巻回して、外側テープ層2Dを形成する。
【0038】
内側プリプレグテープ5と外側プリプレグテープ7とは、共に、竿軸線Xに対して傾斜する状態でかつ螺旋状を描くように巻回してあるが、その巻き付け方向は互いに反対方向であり、交差するように巻き付けられている。これによって、竿元側竿体2として強度の高い、特に捻じれに強い竿体を形成できる。
内側プリプレグテープ5と外側プリプレグテープ7の巻始め位置としては、竿先側又は竿元側のいずれでも選択でき、任意である。要は、互いに内側プリプレグテープ5と外側プリプレグテープ7とが反対向きに巻回されていればよい。
内側プリプレグテープ5と外側プリプレグテープ7の夫々の巻回形態としては、螺旋状に巻回された隣接する細い幅(テープ幅)同士が、一部重なるように、又は、密着するように、或いは、少し隙間を開ける状態のものでもよい。
【0039】
外側プリプレグテープ7を巻回した後には、図2(h)に示すように、竿先端と竿尻端とに軸芯長の短い補強プリプレグ8を巻回する。補強プリプレグ8は、強化繊維cを交差させる状態で編み込んだクロス繊維製のものである。竿先端と竿尻端に配置された補強プリプレグ8で補強層2Eを構成する。
ただし、図示はしていないが、強化繊維cを一方向に引き揃えたプリプレグを二枚揃え、互いに強化繊維cが交差するように重ねるバイアス式のものを使用してもよい。
【0040】
補強プリプレグ8を巻回した後には、図示していないが、セロハンテープを外側に巻回し、マンドレル3ごと焼成し、取り出した後、セロハンテープを剥離する。
その後、工具係止用の孔3e、3fを介して連係されたシリンダ(図示せず)によって、竿先側マンドレル部3Aを竿先側に、竿元側マンドレル部3Bを竿元側に引き出して、竿体とマンドレル3とを分離する。その後、所定の塗装、所定長さにカットして竿体を構成する。
このように、逆テーパ面2aを有する竿体であっても、竿先側マンドレル部3Aを竿先側に引き抜く製造方法の採用によって、リーマ加工を必要とせず、強化繊維c、dが切断されず、樹脂面が荒らされない円滑な内周面を得ることができる。
【0041】
〔別実施形態〕
(1) 中間シート層2Cとしては、一層分の巻き付け大きさ(1プライ)だけでなく、複数巻き(複数プライ)できるだけの大きさであってもよい。または、1プライ分のプリプレグシートを複数枚重ねるものでもよい。その場合には、強化繊維の引き揃え方向を各プリプレグシート毎に異なるものに設定する。
【0042】
(2) 竿元側竿体2を構成するのに、最内層2Aの外側に巻回する層として、内側テープ層2B、中間シート層2C、外側テープ層2Dを配置したが、竿先側に位置する竿体であれば、これらの内少なくともいずれか一つでもよく、また、更に、竿元側に位置する竿体であれば、これに加えて他のプリプレグを巻回してもよい。
【0043】
(3) 最内層2Aの構成としては、図示していないが、ガラス強化繊維dを交差させたクロス材を一枚使用しているが、二枚で構成するものでもよい。つまり、ガラス強化繊維dを竿軸芯Xに対して傾斜する状態で引き揃えた下側のプリプレグに対して、ガラス強化繊維dを竿軸芯Xに対して傾斜する状態で引き揃え、かつ、下側のプリプレグのガラス強化繊維dに対して交差する状態に配置した上側プリプレグを重ね合わせる、バイアス方式を採ってもよい。
【0044】
(4) 逆テーパ内周面2aを有する竿元側竿体2に連結される竿先側竿体1としては、図5に示すように、竿先側竿体1の竿元端にインロー芯材1Aを突出させたものでもよい。この場合には、インロー芯材1Aの外周面を竿元側程縮径する逆テーパ面1aに形成する。
ここでは、インロー芯材1Aが請求項1等に記載する竿先側竿体の元側端部に該当する。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本願発明は、並継部分に逆テーパ面を形成することによって、趣の異なる釣り操作を行うことのできる並継竿を提供するものである。
【符号の説明】
【0046】
1 竿先側竿体
2 竿元側竿体
2A 最内層
2B 内側テープ層
2C 中間シート層
2D 外側テープ層
2a 逆テーパ面
2b 正テーパ面
3 マンドレル
3A 竿先側マンドレル部
3B 竿元側マンドレル部
3a 係合用孔
3b インロー芯部
3c 元側開口端
3d 段差部
4 ガラス強化繊維製プリプレグシート
4a 竿先側端辺
5 内側プリプレグテープ
6 中間プリプレグシート
6A 竿先側端辺
6B 竿元側端辺
6C 巻始め端辺
6D 巻終り端辺
6a 切り取り面
7 外側プリプレグテープ
図1
図2
図3
図4
図5