【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記のような製造方法を採ることによって、リーマ加工を施す場合の不都合が解消されるものではあるが、次のような欠点もある。
つまり、竿元側竿体の全長に亘る長さのプリプレグをマンドレルに巻回した場合に、マンドレルの逆テーパ部から正テーパ部に係る部分で皺より等が発生するという課題がある。
そうだからと言って、従来技術公報の第4図に示すように、全長に亘る長さのプリプレグを大小片のプリプレグに分断してマンドレルに巻回した場合に、皺よりは解消する可能性もあるが、竿体としては、逆テーパ部から正テーパ部に変化する部位が、小径であるために、この部分で強度的に弱い面が見られた。
【0008】
本発明の目的は、竿元側竿体における竿先側端部の逆テーパ内周面が円滑な面を呈しながら、かつ、竿元側竿体の逆テーパ面から正テーパ面での強度低下を来すことが少ない並継竿を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
〔構成〕
請求項1に係る発明の特徴構成は、竿先側竿体の元側端部を竿元側竿体の竿先側開口端内に嵌合して連結する並継竿であって、前記竿先側竿体の元側端部の外周面を元側端に至る程縮径する逆テーパ状に形成し、前記竿元側竿体の竿先側端部の内周面を、元側程縮径する逆テーパ状に形成するとともに前記逆テーパ状の内周面の元側には元側程拡径する正テーパ状内周面を形成し、
前記竿元側竿体の前記逆テーパ状内周面と前記正テーパ状内周面との接続点を基準点として、前記逆テーパ状内周面側と前記正テーパ状内周面側に亘る一定範囲において、ガラス強化繊維製のプリプレグシートを最内層として巻回し、
前記最内層の内周面が円滑面に形成してある点にあり、その作用効果は次の通りである。
【0010】
〔作用〕
つまり、竿元側竿体の逆テーパ状内周面と正テーパ状内周面との接続点を基準点として、逆テーパ状内周面側と正テーパ状内周面側に亘る一定範囲において、ガラス強化繊維製のプリプレグシートを最内層として巻回した。
竿体の全長に亘ってガラス強化繊維製のプリプレグシートを施すのではなく、逆テーパ状内周面と正テーパ状内周面の接続点を基準点としてその基準点を境にして一定範囲にだけ施すこととしたので、ガラス強化繊維製のプリプレグシートを、マンドレルの逆テーパ状の外周面と正テーパ状の外周面とに隙間なく、ぴったり密着する状態で巻回することができる。
このことによって、マンドレルの逆テーパ部分と正テーパ部分とが互いに軸芯方向に離間しようとすることを、ガラス強化繊維製のプリプレグシートで抑制することができ、最内層の上に巻回される上層部に変形や捻じれ等が発生することが抑制される。
【0011】
さらに、マンドレルの逆テーパ状の外周面と正テーパ状の外周面との最も縮径した谷間部分にガラス強化繊維製のプリプレグシートを施すことができるので、最内層の外周面を、マンドレルの逆テーパ状の外周面に比べて、逆テーパ状の度合いを小さくすることができる。
これによって、竿元側竿体の前記逆テーパ状内周面と前記正テーパ状内周面との接続点部位の厚みを厚くすることができ、この部位で強度低下を抑制することができる。
【0012】
しかも、ガラス強化繊維製のプリプレグシートを前記した接続点部位の外周面側に施すこととしたので、最内層の外周面が、マンドレルの逆テーパ状の外周面と正テーパ状の外周面との最も縮径した谷間部分を埋める働きをし、最内層の上に巻き付けられる外層部分の巻き付けを良好に行えるようになる。
【0013】
〔効果〕
したがって、リーマ加工具によって、強化繊維や樹脂が荒らされることのない、最内層の内周面を円滑面に形成する状態を維持しながら、マンドレルの離間を阻止する有効な最内層の配置によって、竿元側竿体の前記逆テーパ状内周面と前記正テーパ状内周面との接続点部位での強度低下、及び、プリプレグの皺寄り変形を阻止し、それでいて、逆テーパ状内周面と正テーパ状内周面を有する趣の異なる釣り操作が可能な並継竿を提供できるに至った。
【0014】
〔構成〕
請求項2に係る発明の特徴構成は、前記竿元側竿体の前記最内層の外側に、プリプレグテープを螺旋状に巻回した内側テープ層と、前記内側テープ層の外側に軸芯方向全長に亘る長さの中間プリプレグシートを巻回した中間シート層と、前記中間シート層の外側にプリプレグテープを逆方向の螺旋状に巻回した外側テープ層とを形成し、前記内外テープ層におけるテープを、径方向視において交差するように形成してある点にあり、その作用効果は次の通りである。
【0015】
〔作用効果〕
最内層の上に巻き付け内側テープ層を形成するものとしてプリプレグテープを採用した。これによって、最内層と剥き出しのマンドレルとの境目においても皺よりなくプリプレグを巻回することができ、最内層と内側テープ層との密着性を良好なものにできる。したがって、内側テープ層の外周面を段差の少ない円滑なものにでき、上の層を形成するのが容易になる。
内側テープ層の外側には、軸芯方向全長に亘る長さの中間プリプレグシートを巻回して中間シート層を配置する。このように、中間位置に軸芯方向の全長に亘る中間プリプレグシートを配置することによって、竿元側竿体自体をしっかりしたものにできる。
更に、中間シート層の外側には、再び、プリプレグテープを巻回して外側テープ層を形成する。このように、外側テープ層によって、竿体として軸心方向個々の部分のテープによる緊締力を高めて、焼成前の最内層、内側テープ層、中間シート層、外側シート層の互いの接着緊密度を高めることができる。
しかも、内側テープ層と外側テープ層とは巻回方向が反対方向であるので、内側テープ層、中間シート層、外側シート層の互いの接着緊密度を更に高めると同時に捩じり荷重に対する対抗力も高く、元の姿勢への戻り反発力の高い竿元側竿体を提供できた。
【0016】
〔構成〕
請求項3に係る発明の特徴構成は、前記竿元側竿体の外周面を元側程拡径する正テーパ状外周面に形成してある点にあり、その作用効果は次の通りである。
【0017】
〔作用効果〕
竿元側竿体の外周面を元側程拡径する正テーパ状外周面に形成してあるので、通常の竿体と同様な外観を呈していながら、逆テーパ状内周面を備えており、通常の釣竿とは異な
る趣の釣り操作が可能である。しかも、その逆テーパ状内周面の存在だけでなく、逆テーパ状内周面と正テーパ状内周面との接続点部位が厚肉状態となるので、強度が強化され、かつ、厚肉状態故に、釣り竿は異なった動きを行い、更に、趣の異なる釣り操作が可能になる。
【0018】
〔構成〕
請求項4に係る発明の特徴構成は、最内層におけるガラス強化繊維製プリプレグシートの竿先側端辺は竿軸線に対して直交する方向に切断され、ガラス強化繊維製プリプレグシートの竿元側端辺は竿軸線に対して直交する方向から傾斜する状態に切断してある点にあり、その作用効果は次の通りである。
【0019】
〔作用効果〕
ガラス強化繊維製プリプレグシートの竿元側端辺は竿軸線に対して直交する方向から傾斜する状態に切断してあるので、マンドレルに巻回した場合に、ガラス強化繊維製プリプレグシートの竿元側端辺とマンドレルの外周面との接続部位の繋がりを段差のないものにでき、上に巻回される内側テープ層との密着性を良好なものにしている。
【0020】
〔構成〕
請求項5に係る発明の特徴構成は、中間シート層における中間プリプレグシートの竿先側端辺とその竿先側端辺に直交する巻始め端辺との交差位置に、前記竿先側端辺と前記巻始め端辺とのいずれにも斜交する切り取り面で切断され、竿先側端辺に向かうに連れて切り取り面が竿軸線から離れる状態に形成してある点にあり、その作用効果は次の通りである。
【0021】
〔作用効果〕
中間シート層におけるプリプレグシートの竿先側端辺とその竿先側端辺に直交する巻始め端辺との交差位置に、前記竿先側端辺と前記巻始め端辺とのいずれにも斜交する切り取り面で切断され、竿先側端辺に向かうに連れて巻始め端辺が竿軸線から離れる状態に形成してあるので、最内層として、前記竿元側竿体の前記逆テーパ状内周面と前記正テーパ状内周面との接続点を基準点として、前記逆テーパ状内周面側と前記正テーパ状内周面側に亘る一定範囲において、ガラス強化繊維製のプリプレグシートとの過剰な重なり代を抑制できて、中間シート層の外周面のテーパ構造を適切なものとすることができた。