(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1の方法は、微生物が存在する天然の岩盤におけるクラックを対象としており、人工的に構築された地盤改良体には、微生物の存在は期待できない。
また、特許文献1の方法は、クラックの位置を把握した上で、クラックの位置に圧力を加えて二酸化炭素を注入している。しかし、地中に構築された遮水壁のクラック位置を把握して、クラック位置に圧力を加えて二酸化炭素を注入するのは現実的には困難である。
本発明は、上記事実に鑑み、水の流れを利用して二酸化炭素を供給し、地盤改良体で構築された遮水壁のクラックを閉塞させる遮水性能回復方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1に記載の発明に係る遮水壁の遮水性能回復方法は、地盤改良体で構築された遮水壁
の汚染土壌を囲む最外周部の内側に、水を注入又は揚水し、前記最外周部の前記内側と外側とで地下水位に高低差を発生させる工程と、前記最外周部の前記内側又は
前記外側の
前記地下水位が高い方へ二酸化炭素を注入する工程と、を有することを特徴としている。
【0006】
請求項1に記載の発明によれば、
地盤改良体で構築された遮水壁の汚染土壌を囲む最外周部の内側に、水を注入又は揚水し、最外周部の内側と外側とで地下水位に高低差を発生させる。最外周部の内側又は外側の地下水位が高い方へ二酸化炭素を注入する。
水位の高い地下水側へ注入(混入)された二酸化炭素が、水位差により地下水と共にクラックから遮水壁に滲入する。
これにより、下記化学反応式で示すように、水中に溶けたCO
32−がセメントペースト中のCa
2+を引き寄せ、炭酸カルシウムの結晶となり、セメントペーストなどに付着する。炭酸カルシウムの結晶が付着すると、水中のカルシウムイオンの減少を補うようにして、Ca
2+がコンクリートの内部から移動し、更にCO
32−と結合する。このような反応が繰り返され、炭酸カルシウムの結晶が次々と生成され、セメントペーストなどに付着沈殿して遮水壁のクラックが徐々に修復される。
H
2O+CO
2 ⇔ H
2CO
3 ⇔ H
++HCO
3− ⇔ 2H
++CO
32−
Ca
2++CO
32− ⇔ CaCO
3(pH
WATER > 8)
Ca
2++HCO
3− ⇔ CaCO
3+H
+(7.5<pH
WATER < 8)
【0007】
即ち、クラックへ流れ込む水の流れを利用することで、クラックの位置を特定しなくても、遮水壁の内部でクラックが閉塞され遮水壁の遮水性能が回復される。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の遮水壁の遮水性能回復方法において、前記遮水壁は格子状に構築され
ていることを特徴としている。
【0009】
請求項2に記載の発明によれば、格子状に構築された遮水壁
の最外周部の内側と外側とで地下水の水位に高低差を発生させ、地下水の水位の高い側へ二酸化炭素を注入
する。これにより、遮水壁の内部へ二酸化炭素が供給され、クラックの位置を特定しなくても、水の流れで遮水壁のクラックの修復を促進させることができる。
【0010】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の遮水壁の遮水性能回復方法において、
前記最外周部の前記外側を前記内側よりも前記地下水位が高くなるようにし、前記最外周部の前記外側に前記最外周部に沿って設けられた複数のボーリング孔
の隣接する一方から前記地下水を揚水
すると共に他方から前記二酸化炭素を注入し
、前記二酸化炭素を
前記最外周部の壁面に拡散させる
工程を有することを特徴としている。
【0011】
請求項3に記載の発明によれば、隣り合うボーリング孔の一方の水位を低くし、隣り合うボーリング孔の間で、地下水の水位に高低差でボーリング孔を含む面上の広い範囲に二酸化炭素を分布させることができ、遮水壁のクラックがどの位置にあったとしてもクラックへ二酸化炭素を注入させることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明は、上記構成としてあるので、水の流れを利用して二酸化炭素を供給し、地盤改良体で構築された遮水壁のクラックを閉塞させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
(第1実施形態)
図1〜
図3を用いて、第1実施形態に係る遮水壁10の遮水性能回復方法について説明する。
図1、2の平面図、
図3の垂直断面図に示すように、遮水壁10は、地盤改良体で平面視が格子状に構築されている。本明細書では便宜上、最外周部10Gのみでなく、格子状部分10Nも含めた地盤改良体全体を遮水壁10と呼ぶ。遮水壁10には、汚染土壌(汚染水を含む)12が封じ込められている。
【0018】
遮水壁10は、完全ラップで施工された最外周部10Gで汚染土壌12を囲み、最外周部10Gの内部に施工された内部改良体10Nで平面視が格子状に構築されている。一例として、最外周部10Gの一辺がL1の正方形とされ、内部改良体10Nで、一辺がL2の正方形16個に分割された遮水壁10について説明する。
遮水壁10は、地表面32から上層の砂層18を貫通し、砂層18の下の粘土層20まで到達する深さに構築され、遮水壁10の下端部は粘土層20に根入れされている。これにより、遮水壁10の内部と外部との間で地下水の移動が禁止され、汚染土壌12及び汚染水を、遮水壁10の内部に封じ込めることができる。
【0019】
また、遮水壁10の内部地盤は、格子状に構築された内部改良体10Nで、一辺がL2の16個の正方形に分割されている。これにより、遮水壁10の内部地盤の液状化が抑制され、建物の耐震性を確保するとともに、汚染土壌12の封じ込め機能の向上に寄与することができる。
なお、一辺がL2で正方形に分割された16個の内部地盤を、その位置により区分けして、少なくとも一つの辺が最外周部10Gと接する部分を外側地盤42A〜42Lと呼び、外側地盤42A〜42Lで周囲が囲まれた部分を内側地盤44A〜44Dと呼ぶこととする(
図2参照)。
【0020】
遮水壁10は、セメントで土壌改良され、高い遮水性能を有しているが、地震によりクラックが発生する可能性がある。遮水壁10にクラックが発生すると、遮水壁10の遮水性能が低下する。特に、遮水壁10の最外周部10Gの遮水性能が低下すると、封じ込めた汚染土壌12及び汚染水が、遮水壁10の外部へ漏れ出す恐れがある。
本実施形態では、地中に構築された遮水壁10のクラックの修復手段として、炭酸カルシウム結晶が生成する化学反応を利用して、コンクリートのひび割れを自己修復する方法を用いている。具体的には、下記の方法で最外周部10Gの遮水性能を回復させる。
なお、炭酸カルシウム結晶を確実に確保するため、地下水に図示しない二酸化炭素を混入させた。これにより、地下水の流れを利用して、最外周部10Gのクラックの閉塞が可能となる。
【0021】
即ち、水位の高い地下水側へ注入された二酸化炭素が、水位差により地下水と共に最外周部10Gのクラックから遮水壁に滲入する。これにより、下記化学反応式で示すように、水中に溶けたCO
32−がセメントペースト中のCa
2+を引き寄せ、炭酸カルシウムの結晶となり、セメントペーストなどに付着する。炭酸カルシウムの結晶が付着すると、水中のカルシウムイオンの減少を補うようにして、Ca
2+がコンクリートの内部から移動し、更にCO
32−と結合する。このような反応が繰り返され、炭酸カルシウムの結晶が次々と生成され、セメントペーストなどに付着沈殿して遮水壁のクラックが徐々に修復される。
H
2O+CO
2 ⇔ H
2CO
3 ⇔ H
++HCO
3− ⇔ 2H
++CO
32−
Ca
2++CO
32− ⇔ CaCO
3(pH
WATER > 8)
Ca
2++HCO
3− ⇔ CaCO
3+H
+(7.5<pH
WATER < 8)
【0022】
上述したように、クラックへ流れ込む地下水の流れを利用することで、クラックの位置を特定しなくても、遮水壁の内部でクラックが閉塞され遮水壁の遮水性能を回復することができる。なお、遮水壁10のクラックは、遮水壁10の表面にランダムに広範囲に分布するので、地下水を有効に活用する下記構成を採用することで、遮水壁10の最外周部10Gを広い範囲で自己修復させることができる。
【0023】
図1に示すように、遮水壁10の最外周部10Gの四周の外側地盤には、最外周部10Gを囲み、最外周部10Gと平行な位置(破線R1〜R4で囲む範囲)に、複数のボーリング孔が掘削されている。ボーリング孔は、用途により、地下水を揚水するための8個の揚水孔16A〜16Hと、二酸化炭素を地下水に混入させるための8個の注入孔14A〜14Hの2種類に分けられている。
【0024】
ここに、注入孔14A〜14Hと揚水孔16A〜16Hは、最外周部10Gから所定距離L3だけ離れた位置に、交互に一列に並べて掘削されており、注入孔14A〜14Hは、各辺の両端部と中央部に配置され、揚水孔16A〜16Hは、注入孔14A〜14Hの間にそれぞれ配置されている。
【0025】
揚水孔16A〜16Hには、図示しない揚水ポンプがそれぞれ取り付けられており、揚水ポンプで揚水孔16A〜16Hから地下水を汲み上げ、地下水の水位(地下水位)を下げることができる。これにより、揚水ポンプで地下水を汲み上げる揚水孔16A〜16Hの地下水位と、地下水を汲み上げない注入孔14A〜14Hの地下水位に高低差が生じる。この状態で、注入孔14A〜14Hから二酸化炭素を地下水に混入させる。これにより、地下水の流れを利用して、注入孔14A〜14Hと揚水孔16A〜16Hが掘削された、破線R1〜R4で囲まれた範囲の地下水に、二酸化炭素を広範囲に分布させることができる。
【0026】
図2の平面図、
図2のX−X線断面図である
図3に示すように、遮水壁10の上には建物22が建てられ、最外周部10Gの外側の地表面32上には、地下水を一時貯留する2つの水槽24A、24Bが設けられ、砂層18の地下水位26の下には、地下水が流れている。
また、水槽24A又は水槽24Bと、外側地盤42A〜42Lとの間には、斜めボーリングで掘削された斜め孔28がそれぞれ設けられ、外側地盤42A〜42Lから水槽24A又は水槽24Bへ、地下水を汲み上げることができる。また、水槽24A又は水槽24Bと内側地盤44A〜44Dとの間には、斜めボーリングで掘削された斜め孔30がそれぞれ設けられ、水槽24A又は水槽24Bから内側地盤44A〜44Dへ、地下水を注水することができる。
【0027】
これにより、外側地盤42A〜42Lの地下水を、斜め孔28を用いて汲み出して地下水位27を下げることができる。このとき、汲み出した地下水は、水槽24A又は水槽24Bに一時貯留させる。なお、水槽24A又は水槽24Bをなるべく小規模なものにするため、汲み出した地下水は、内側地盤44A〜44Dに移動させ、内側地盤44A〜44Dに貯留させる。
他の方法としては、一時的に全ての地下水を、水槽24A、24Bに貯留しておき、クラックの修復後に地下に戻す方法、或いは汲み上げた地下水を浄化して、処分するという方法等がある。しかし、これらの方法は、いずれも保管用の水槽24A、24Bが大規模になりコストが高くなる、水を浄化するコストが高くなる等の問題がある。
【0028】
ここに、斜め孔28、30の掘削は、地下水位26より上部(浅い位置)で行うものとし、斜め孔28、30の壁面を安定させるため、斜め孔28、30にはケーシングが挿入されている。また、斜め孔28、30の内部にフレキシブルホースを挿入し、フレキシブルホースの内部に水を流すことで、斜め孔28、30の止水性を確保している。
【0029】
本構成では、斜め孔28、30が、最外周部10G及び内部改良体10Nを貫通する構成である。しかし、貫通位置が地下水位26より上部(浅い位置)であるため、遮水壁10の内部地盤が液状化することはない。また、汚染土壌12及び汚染水の外部への漏出も生じない。また、後述するように、クラックの修復完了後には、斜め孔28、30をセメントミルクで閉塞することにより、長期的にも液状化や汚染物質の漏出は生じない。
【0030】
以上説明した構成とすることで、格子状に構築された遮水壁10の外側地盤42A〜42Lから、地下水をポンプで水槽24A又は水槽24Bまで汲み上げ、地上に設置した水槽24A又は水槽24Bとの水位差により、内側地盤44A〜44Dへ地下水を移動させることができる。これにより、最外周部10Gの内側を外側より低くして、水位差を発生させることができ、水位の高い外側の地下水に二酸化炭素を注入して、地下水位の高低差で発生する地下水の流れで二酸化炭素を、最外周部10Gのクラックに滲入させることができる。
【0031】
また、揚水ポンプで、遮水壁10の外側の揚水孔16A〜16Hから地下水を汲み上げることで、最外周部10Gの外側の地下水位26に高低差を発生させることができる。この状態で、地下水位の高い注入孔14A〜14Hから二酸化炭素を注入し、地下水位の高低差で発生する地下水の流れで二酸化炭素を、遮水壁の壁面全体に拡散させることができる。
【0032】
これにより、地下水位26の高い最外周部10Gの外側へ二酸化炭素を注入することができる。この結果、最外周部10Gの内部へ二酸化炭素が供給され、クラックの位置を特定しなくても、地下水の流れで、最外周部10Gのクラックの修復を促進させることができる。
【0033】
以下に本実施形態における地下水の移動量、移動速度等の試算例を示す。
地下水位26の勾配を1/1000、遮水壁10の最外周部10Gの一辺L1を50m、内部地盤の分割寸法L2を12.5mとする。この場合、地下水位26の変化は50mで5cmとなる。また、注入孔14A〜14H及び揚水孔16A〜16Hと最外周部10Gとの所定距離L3を50cmとする。これは、本来、所定距離L3は短いほど望ましいため、ボーリングマシンの設置上の制約から、最小値を採用して50cmとした。
【0034】
遮水壁10の内部地盤の最外周部の12ブロック(外側地盤42A〜42L)では、斜め孔28内に設置した水中ポンプを用いて、地下水位27を10cm下げた。汲み上げた地下水を、一旦、水槽24A又は水槽24Bに貯留させ、遮水壁10の内部地盤の4ブロック(内側地盤44A〜44D)に注入した。この結果、内側地盤44A〜44Dの地下水位25は、外側地盤42A〜42Lとの体積比から、それぞれ30cm上昇する。
【0035】
また、地震時に生じたクラックにより、最外周部10Gの透水係数が10
-6cm/sから10
-4cm/sに低下したと仮定する。更に、地下水位26を地表面32の下方2m(GL−2.0m)とすると、1日当たり最外周部10Gへ入ってくる地下水の量Q1は以下となる。
Q1=A×v×t
=800cm×5000cm×4×10
-4cm/s×10cm/50cm
×86400s
=27,648,000cm
3 /日
【0036】
また、注入孔14A〜14H及び揚水孔16A〜16Hと、最外周部10Gとの間の地下水の量Q2は、所定距離L3を50cm、間隙比を0.3と仮定すると下記となる。
Q2=50cm×800cm×5000cm×4×0.3
=240,000,000cm
3
この地下水の量Q2が、全て最外周部10Gに流れ込み、地下水中の二酸化炭素が遮水壁と接触するのに要する時間tは、
t=240,000,000 ÷ 27,648,000
≒ 9日
となる。即ち、9日目から、地下水に混入させた二酸化炭素により生じたCO
32−が、最外周部10Gのセメント成分からのCa
2+と反応して、炭酸カルシウムCaCO
3を生じることで、最外周部10Gのクラックの閉塞を開始する。
【0037】
この反応が始まるまでの間、最外周部10Gに入ってきた地下水は、揚水ポンプで汲み上げて、内側地盤44A〜44Dに移動させる。移動によって上昇する内側地盤44A〜44Dの水位上昇量H1は、下記となる。
H1=0.5m×8m×50m×4÷25m÷25m
=1.28m
上述した最初の水位上昇量30cmと合計すると、地下水位25は1.58mとなる。
【0038】
二酸化炭素が最外周部10Gのクラック内に侵入して、炭酸カルシウムを析出し、最外周部10Gの透水係数が10
-4cm/sから10
-6cm/sに回復したとする。回復に20日間要するとすると、この間の透水係数を−4乗と−6乗の平均値である−5乗と仮定したとき、最外周部10Gに流れ込む地下水量Q3は以下の計算で求めることができる。
Q3=A・v・t
=800cm×5000cm×4×10
-5cm/s×10cm/50cm
×1,728,000s
=55,296,000cm
3
【0039】
この地下水量Q3を内側地盤44A〜44Dに移動させるので、内側地盤44A〜44Dの地下水位25の上昇量H2は、下記となる。
H2=55.296m
3÷25m÷25m÷0.3(間隙比)
=0.29m
地下水位25は、1.58mと合わせて1.87mとなる。この結果から、最初の地下水位(GL−2.0)mに比べて、13cmの余裕があることがわかる。20日経過後、ボーリング孔内にセメントミルクを充填し、ボーリング孔を閉塞して作業終了となる。
【0040】
なお、石灰岩質の地盤(カルシウムが主成分の地盤)や、農地等でカルシウムを肥料として散布した地盤では、上述した化学反応が地盤中で生じてしまい、地盤の透水係数を下げることとなる。その結果、遮水壁にCO
32−が到達しない場合が考えられるため、適用においては注意が必要である。
【0041】
上述したように、本実施形態では、地下水中に溶けたCO
32−がセメントペースト中のCa
2+を引き寄せ、炭酸カルシウムの結晶となり、セメントペーストなどに付着する。炭酸カルシウムの結晶が付着すると、水中のカルシウムイオンの減少を補うようにして、Ca
2+がコンクリートの内部から移動し、更にCO
32−と結合する。このような反応が繰り返され、炭酸カルシウムの結晶が次々と生成され、セメントペーストなどに付着沈殿して遮水壁のクラックが徐々に修復される。
【0042】
この結果、地下水の流れを利用して二酸化炭素を供給することで、地盤改良体で構築された遮水壁10のクラックを閉塞させることができる。また、本実施形態においては、ボーリング費用が施工コストの大半を占めるため、従来技術である薬液注入や遮水壁の再施工による方法よりも安価となる。更に、地球温暖化物質である二酸化炭素の固定化という効果もあわせ持つものである。
【0043】
なお、本実施形態では、遮水壁10を一辺がL1の正方形で説明した、しかし、これに限定されることはなく、遮水壁10の平面視は長方形や、正方形と長方形の組み合わせ等でもよい。また、地下水に所定量以上の二酸化炭素が含まれている場合には、地下水に二酸化炭素を混入しなくてもよい。
【0044】
(第2実施形態)
図4を用いて、第2実施形態に係る遮水壁40の遮水性能回復方法について説明する。
図4の垂直断面図に示すように、遮水壁40は、建物22から鉛直下方にボーリング孔34、36を掘削する方法である点において、第1実施形態に係る遮水壁10と相違する。相違点を中心に説明する。
【0045】
遮水壁40は、遮水壁40の外部から内部への斜めボーリングは必要なく、建物22の内部から鉛直下方にボーリング孔34、36を掘削して構築される。
即ち、外側地盤42A〜42Lに、建物22の内部から鉛直下方に、それぞれボーリング孔34を掘削する。また、内側地盤44A〜44Dに、建物22の内部から鉛直下方にボーリング孔36を掘削する。
【0046】
外側地盤42A〜42Lと水槽24は、配管35でつながれており、揚水ポンプで汲み上げられた地下水は、配管35を通り水槽24へ貯留される。また、水槽24と内側地盤44A〜44Dは、配管37でつながれており、水槽24に貯留された地下水は、配管37を通り内側地盤44A〜44Dに注入される。なお、本実施形態で移動させる地下水の量や速度は、第1実施形態と同じである。
【0047】
この構成とすることにより、第1実施形態に係る遮水壁10と同様に、外側地盤42A〜42Lの地下水を汲み上げて、配管35を利用して、内側地盤44A〜44Dへ地下水を移動させることができる。この結果、外側地盤42A〜42Lの地下水位27を、砂層18の地下水位26より低くすることができ、最外周部10Gの内外で地下水位に高低差を発生させることができる。これにより、地下水位の高低差で発生する地下水の流れを、最外周部10Gの内部で発生させることができ、二酸化炭素による自己修復が可能となる。
【0048】
更に、この構成においては、遮水壁40の内部に鉛直下方向にボーリングを実施するため、斜めボーリングに比べて掘削するボーリングの距離を短くでき、経済的に安価に掘削できる。しかしながら、建物22の内部に配管35、37を設置する手間を要すること、また、建物22の躯体(耐圧盤等)を貫通してボーリングを行う必要があり、躯体鉄筋を切断する可能性がある。躯体鉄筋の切断は、躯体強度を低下させるので、十分な事前検討が必要である。他の構成は、第1実施形態と同じであり説明は省略する。
【0049】
(第3実施形態)
図5を用いて、第3実施形態に係る遮水壁50の遮水性能回復方法について説明する。
図5の垂直断面図に示すように、遮水壁50は、建物22から外側地盤42A〜42Lへ鉛直下方にボーリング孔54を掘削し、更に遮水壁50の外側へボーリング孔56を掘削する方法である。斜めボーリング孔が不要であり、ボーリング孔56の位置が、第2実施形態と相違する。相違点を中心に説明する。
【0050】
第3の実施形態に係る遮水壁50は、第1実施形態、第2実施形態と異なり、遮水壁50の外側地盤42A〜42Lの地下水位27を、砂層18の地下水位26より高くする方法である。このため、遮水壁50の外側に設けた揚水孔56から揚水ポンプで汲み上げた地下水を、配管57を用いて水槽24に貯留させた後、配管55を用いて、注水孔54から外側地盤42A〜42Lに注水する構成である。これにより、外側地盤42A〜42Lの地下水位27を、遮水壁50の外側の地下水位26より高くすることができる。なお、内側地盤44A〜44Dへのボーリング孔の掘削は不要である。
【0051】
これにより、内側の地下水位27が外側の地下水位26より高い状態で、最外周部10Gの内側と外側で水位差を設けることができる。即ち、外側地盤42A〜42Lに混入させた二酸化炭素を、最外周部10Gの内側と外側の水位差で最外周部10Gに供給することができる。なお、図示は省略するが、最外周部50Gの広範囲に渡り、二酸化炭素を最外周部50Gに浸み込ませるために、それぞれの外側地盤42A〜42Lに、注水孔54と並べて揚水孔を設け、揚水ポンプで揚水し、注水孔54と揚水孔との間で水位差を生じさせ、水流を作るのが望ましい。
【0052】
この構成とすることで、ボーリング孔54を、地下水を注入するための注入孔、及び二酸化炭素を地下水に混入させる注入孔に兼用することができる。但し、本実施形態は、遮水壁50の最外周部50Gから、遮水壁50の外部へと地下水を流出させるため、汚染土壌52は、全体が遮水壁50の内側地盤44A〜44Dの内部に収まっている場合に限られる。なお、ボーリング孔54は鉛直方向のボーリングを例に説明したが、これに限定されることはなく、第1の実施形態のような斜めボーリングでもよい。他の構成は、第2実施形態と同じであり、説明は省略する。
【0053】
(第4実施形態)
図6を用いて、第4実施形態に係る遮水壁60の遮水性能回復方法について説明する。
図6の断面図に示すように、遮水壁60は、地盤改良体で構築された山留め壁64である点において、第1実施形態に係る遮水壁10と相違する。相違点を中心に説明する。
【0054】
遮水を目的とし、地盤改良体で構築された建設工事で用いられる山留め壁64は、施工不良等に起因して、遮水性能が部分的に低く構築され、地下水が出水する漏水部66が生じる場合がある。この場合、根切りに伴って、地山部68から掘削部70へ向けて、地下水が出水する。
掘削部70の地盤表面72は、地山部68より下がっており、漏水部66が目視で確認できる。このため、広範囲に二酸化炭素を分散させる必要はなく、漏水部66の背面(地山部68)にボーリング孔62を掘削し、ボーリング孔62から地下水に二酸化炭素を混入させればよい。
【0055】
これにより、水位が高い地山部68側の地下水により、混入された二酸化炭素を漏水部66に運ぶことができる。この二酸化炭素の存在により、地盤改良体で構築された山留め壁の自己修復機能が促進され、山留め壁64の漏水部66を閉塞させることができる。
この結果、薬液注入により止水処理を行っている現状の対応方法に比べ、安価に漏水部66を修復することができる。