(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
窓部を有するカバー体を備えた工作機械において、一定の間隔をあけて気密状に接合された二枚の透明又は半透明の窓板から構成される前記窓部の前記気密状態を検出する方法であって、
前記窓板間の空間内を加圧又は減圧状態にして、前記空間内の圧力を検出し、
前記検出した圧力を基に、前記空間内の気密状態の適否を判別するようにした方法において、
前記空間内の圧力を随時又は定期的に検出し、
検出した圧力が、予め設定した許容範囲外の圧力となったとき、前記気密状態が不適当であると判断するようにし、
前記空間内の圧力が、前記許容範囲の上限又は下限より内側の所定範囲として設定された圧力修正範囲内の圧力となったことが所定時間又は所定回数検出されたとき、前記空間内を加圧又は減圧して、前記空間内の圧力を、前記許容範囲内であり且つ前記圧力修正範囲外である所定の圧力とするようにしたことを特徴とする工作機械窓部の気密状態検出方法。
窓部を有するカバー体を備えた工作機械において、一定の間隔をあけて気密状に接合された二枚の透明又は半透明の窓板から構成される前記窓部の前記気密状態を検出する装置であって、
前記窓板間の空間内の圧力を検出する圧力センサと、
前記圧力センサによって検出された圧力値を基に、前記空間内の気密状態の適否を判別し、その判別結果を外部へ出力する判別部と、
前記空間内を加圧又は減圧する圧力調整機構とを設けて構成し、
前記判別部は、前記圧力センサによって検出される前記空間内の圧力値が随時又は定期的に入力され、入力された圧力値が、予め設定した許容範囲外の値となったとき、前記気密状態が不適当であると判断し、
更に、前記判別部は、前記圧力センサによって検出される圧力値が、前記許容範囲の上限又は下限より内側の所定範囲として設定された圧力修正範囲内の値となったことが所定時間又は所定回数検出されたとき、前記圧力調整機構を駆動し、前記空間内を加圧又は減圧して、前記空間内の圧力を、前記許容範囲内であり且つ前記圧力修正範囲外である所定の圧力とすることを特徴とする工作機械窓部の気密状態検出装置。
【背景技術】
【0002】
通常、工作機械には、安全面及び環境面を考慮して、加工領域と外部領域とを仕切るカバー体が設けられており、このカバー体には、外部から加工領域内を観察できるように、窓部が設けられている。
【0003】
このような窓部を備えたカバー体の一例として、従来、特開平3−166037号公報(特許文献1)に開示されたカバー体が知られている。この特許文献1に開示されたカバー体(具体的にはスライドドア)は板状のポリカーボネートから構成され、窓部となる部分の内側(加工領域側)にガラス板が装着された構造を備えている。
【0004】
このカバー体によれば、これを構成するポリカーボネート板が極めて高い靭性、及び高い耐衝撃性を備えているため、例えば、操作ミスやプログラムの作成ミスによって、工具とワークとが衝突するといった不測の事故が発生したとしても、この衝突により工具やワークが外部に飛び出すのを確実に防止することができる。
【0005】
一方、ポリカーボネート板は、上記のように高靭性及び高耐衝撃性を有する反面、硬度についてはさほど高くなく、即ち、耐摩耗性についてはそれほど高くなく、このため、例えば、切削などによって生じる切屑が表面に当ると、表面が切屑により削り取られて粗くなり、同部を介した透視性(視認性)が悪くなるという欠点を有している。
【0006】
そこで、上記従来のカバー体では、切屑によってポリカーボネート板の表面が粗くなるのを防止し、その良好な視認性を維持するために、ポリカーボネート板の窓部となる部分の内側(加工領域側)に、耐摩耗性の高いガラス板を装着した構造を採用している。
【0007】
斯くして、上記構成を備えた従来のカバー体によれば、加工領域側に配置したガラス板により、切屑に起因した視認性(外部からの良好な観察性)の悪化を防止することができるとともに、高靭性及び高耐衝撃性を有するポリカーボネート板により、工具やワークが外部に飛び出すのを確実に防止することができ、高い安全性を確保することができる。
【0008】
ところで、近年、前記ポリカーボネート板は、耐摩耗性が低いという欠点の他に、クーラントに対する耐性が低く、長時間クーラントに接触すると、長所としての高靭性及び高耐衝撃性が低下するという欠点があることが判明している。
【0009】
そこで、現在では、窓部以外のカバー体を板金から構成するとともに、窓部として、加工領域側にガラス板を配置する一方、外部側にポリカーボネート板を配置し、且つこれらを一定間隔をあけて気密状に接合した構成が採用されている。
【0010】
このような構成の窓部によれば、ポリカーボネート板がクーラントと接触するのを防止することができ、クーラントによって当該ポリカーボネート板の靭性及び耐衝撃性が低下するのを防止することができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
ところが、一定間隔をあけてガラス板とポリカーボネート板とを気密状に接合した構成の窓部においても、以下に説明するような問題があった。
【0013】
即ち、この窓部において、ガラス板とポリカーボネート板との接合部の気密性が確保されている場合には、ガラス板とポリカーボネート板との間にクーラントが侵入する余地はなく、したがって、クーラントによってポリカーボネート板の靭性及び耐衝撃性が低下することはないが、従来、この気密性が必ずしも保障されていなかったのである。
【0014】
例えば、従来、窓部の製造時において、ガラス板とポリカーボネート板との間の気密性を検出する方法が提案されておらず、したがって、製造時点において、必ずしも当該気密性が保障されているとは言えないのが現状である。
【0015】
また、製造時点において前記気密性が担保されていたとしても、シール部材のクーラントに対する耐性が十分でない場合もあり、この場合には、シール部材の経時的な劣化によって気密性が損なわれるおそれがある。
【0016】
更に、工作機械の運転中に、窓部には様々な荷重が作用する。例えば、カバー体をスライドさせるといった操作によって荷重が作用し、切屑やクーラントが衝突することによっても荷重が作用する。また、切削熱や各種発熱源から伝わる熱に起因した歪みによっても荷重が作用する。このような荷重は窓部に変形をもたらし、この変形が長期にわたって繰り返されると、前記接合部の気密性が損なわれる可能性がある。
【0017】
また、ガラス板に過度の荷重が作用してこれに亀裂が生じ、このために、気密状態が損なわれる場合もある。
【0018】
このように、上記構成の窓部において、従来、その気密性は必ずしも保障されたものではなかった。
【0019】
当然のことながら、ポリカーボネート板には耐用年数が設定され、前記窓部を定期的に交換する運用となっているが、その前に、前記気密性の不良によりガラス板とポリカーボネート板との間にクーラントが侵入して、当該ポリカーボネート板にクーラントが接触する事態に陥ると、ポリカーボネート板が予定よりも早く劣化して、その靭性及び耐衝撃性が著しく低下するおそれがある。
【0020】
このような状態で、上述した不測の事故が発生すると、ガラス板とポリカーボネート板から構成される窓部を工具やワークが貫通して外部に飛び出すといった重大な事故となりかねない。
【0021】
本発明は、以上の背景に鑑みなされたものであって、前記窓部の気密性が良好に保たれているかどうかを検出する検出方法及び検出装置の提供を、その目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0022】
上記目的を達成するための本発明は、窓部を有するカバー体を備えた工作機械において、一定の間隔をあけて気密状に接合された二枚の透明又は半透明の窓板から構成される前記窓部の前記気密状態を検出する方法であって、
前記窓板間の空間内を加圧又は減圧状態にして、前記空間内の圧力を検出し、
前記検出した圧力を基に、前記空間内の気密状態の適否を判別するようにした工作機械窓部の気密状態検出方法に係る。
【0023】
この発明によれば、まず、前記窓板間の空間内を加圧又は減圧状態にする。そして、この状態で前記空間内の圧力を検出する。気密状態が良好な状態であれば、空間内の圧力に変動を生じないが、気密状態が保たれていない場合には、空間内の圧力が変動することになる。即ち、加圧状態であれば徐々に圧力が減少し、減圧状態であれば徐々に圧力が上昇する。したがって、検出した圧力から、前記空間内の気密状態の適否を判別することができる。
【0024】
そして、この検出方法は、前記空間内の圧力を検出する圧力センサと、前記圧力センサによって検出された圧力値を基に、前記空間内の気密状態の適否を判別し、その判別結果を外部へ出力する判別部とを備えた気密状態検出装置によって、これを実施することができる。また、前記空間内を加圧又は減圧状態にするには、適宜、加圧ポンプ又は減圧ポンプなどを備えた圧力調整装置を用いて実施することができる。
【0025】
尚、前記空間内を減圧状態にする場合、漏洩部が存在し気密性が確保されていない場合には、この漏洩部から外部の気体が前記空間内に吸い込まれ、当該漏洩部付近にクーラントが存在する場合には、このクーラントが漏洩部から前記空間内に吸い込まれることになる。逆に、前記空間内を加圧状態にする場合、仮に漏洩部が存在したとしても、この漏洩部からは前記空間内の気体が吐出されるので、漏洩部付近にクーラントが存在したとしても、これが当該漏洩部から前記空間内に侵入することはない。したがって、前記空間内は、これを加圧状態にするのが好ましい。
【0026】
本発明において、前記圧力センサを用いた前記空間内の圧力検出は、これを随時又は定期的に検出するように
し、前記判別部は、前記圧力センサによって検出された圧力が、予め設定した許容範囲外の圧力となったとき、気密状態が不適当であると判断す
る。
【0027】
尚、
本発明に対する参考的な態様としては、判断の基準となる前記許容範囲を、前記空間内を加圧又は減圧状態にした初期状態からの経過時間に応じて変化させるようにしても良い。
【0028】
前記気密状態は、現実的には、完全な気密状態としにくく、実用面で支障のない範囲での漏洩は起こり得るし、これを許容することができる。この場合、前記空間内の圧力は、実用上支障のない範囲で経時的に徐々に変動する。したがって、判断基準の許容範囲を固定した場合、長時間が経過すると、前記空間内の圧力は実用上支障のない範囲での経時的な変動であるにも拘らず、設定した許容範囲外の圧力となり、前記判別部は気密状態が不適当であると判断することになる。
【0029】
そこで、上記のように、判断の基準となる前記許容範囲を、初期状態からの経過時間に応じて変化させる、即ち、実用上支障のない範囲で経時的に変動する前記空間内の圧力を予め想定し、この変動に応じて、前記判断基準となる許容範囲を徐々に変動させれば、前記判別部における判断処理において、実用上支障のない範囲での経時的な圧力変動をキャンセルすることができ、前記気密状態の適否を正確に判断することができる。
【0030】
また、本発明において、前記気密状態検出装置は、前記圧力センサによって検出される前記空間内の圧力が前記許容範囲の上限又は下限より内側の所定範囲として設定された圧力修正範囲内の圧力となったことが所定時間又は所定回数検出されたとき、前記圧力調整装置により、前記空間内を加圧又は減圧して、当該空間内の圧力を、前記許容範囲内であり且つ前記圧力修正範囲外である所定の圧力とす
る。
【0031】
上述したように、前記気密状態は、現実的には、完全な気密状態としにくく、前記空間内の圧力は、実用上支障のない範囲で経時的に徐々に変動する。そこで、前記空間内の圧力が前記許容範囲の上限又は下限より内側の所定範囲として設定された圧力修正範囲内の圧力となったことが所定時間又は所定回数検出されると、当該実用上支障のない範囲での経時的な圧力変動であると判断して、前記圧力調整装置により、前記空間内の圧力を、前記許容範囲内であり且つ前記圧力修正範囲外である所定の圧力に回復させる。このようにすれば、実用上支障のない範囲で経時的な圧力変動を生じる場合でも、判断基準となる許容範囲を固定した状態で、前記気密状態の適否を正確に判断することができる。
【0032】
また、本発明
に対する参考的な態様としては、前記気密状態検出装置は、前記圧力調整装置により前記空間内を加圧又は減圧しながら、前記圧力センサにより前記空間内の圧力を検出し、前記判別部において、検出圧力が所定時間内に予め定めた基準圧力に達しないとき、前記気密状態が不適当であると判断するようにしても良い。
【0033】
更に、本発明
に対する参考的な態様として、前記気密状態検出装置は、前記圧力センサにより前記空間内の圧力を随時又は定期的に検出し、前記判別部において、検出圧力が予め定めた変動範囲を超えて変動したとき、前記気密状態が不適当であると判断するようにしても良い。
【0034】
尚、本発明における前記窓部を構成する二枚の窓板には、加工領域側に配設される窓板としてガラス板を用いることができ、外部側に配設される窓板としてポリカーボネート板を用いることができるが、これは一例であり、これに限定されるものではない。本発明は、加工領域側に配設される窓板として高い耐磨耗性を備えた材料を用い、外部側に配設される窓板として高い靭性、高い耐衝撃性を備えるものの、クーラントに対する耐性が低い材料を用いた窓部に対して、好適に適用することができる。
【発明の効果】
【0035】
以上詳述したように、本発明に係る気密状態検出方法及び気密状態検出装置によれば、一定の間隔をあけて気密状に接合された二枚の透明又は半透明の窓板から構成される窓部の気密状態を正確に検出することができる。このため、外部側に配設される窓板としてクーラントに対する耐性が低い材料を用いている場合に、気密状態が不適当であると判断された際に、当該窓部を早期に新品に交換するなど、適切な予防措置を講じることでき、このような予防措置を講じることで、工具やワークが窓部を貫通して外部に飛び出すといった重大な事故が引き起こされるのを未然に防止することができる。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、本発明の具体的な実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
図1は、本実施形態に係る工作機械全体を示した斜視図であり、
図2は、本実施形態に係る気密状態検出装置の概略構成を示した説明図であり、
図3は、
図2の矢示A−A方向の部分断面図である。
【0038】
[工作機械及び窓部]
まず、本例の工作機械1及び窓部5について説明する。
図1に示すように、本例の工作機械1は具体的にはNC旋盤であり、そのベッド、主軸台や刃物台等の構造物が、2つの固定カバー(カバー体)2,3、及び矢示方向にスライド自在となったドアカバー(カバー体)4により覆われ、この固定カバー2,3及びドアカバー4によって加工領域とその外部とが仕切られた構成となっている。
【0039】
前記固定カバー2,3はそれぞれ金属板から構成され、ドアカバー4は窓部5を有し、この窓部5以外は金属板から構成されている。
【0040】
図2及び
図3に示すように、窓部5は、透明又は半透明で矩形をした同形のガラス板6及びポリカーボネート板7と、この他にスペーサ8、シール部材9及び枠体10から構成される。スペーサ8は、矩形をした枠状の部材で、ガラス板6とポリカーボネート板7との間の外周縁部に位置するように配設され、これらの間の間隔を画定する。
【0041】
また、シール部材9は同じく矩形をした枠状の部材からなり、
図3に示すように一体的に組みつけられたガラス板6、スペーサ8及びポリカーボネート板7からなる組立体の外周面を封止するようにこれらに接合される。また、枠体10は、断面L字状をした矩形の枠体であり、前記シール部材9の外周面及びその側面、並びにガラス板6の周縁側面を覆うようにこれらに接合されている。
【0042】
また、前記窓部5は、そのスペーサ8、シール部材9及び枠体10に、枠体10の外周面に開口するように貫通穴8a,9a,10aがそれぞれ形成され、更に、シール部材9の貫通穴9a内には、逆止弁12が気密状に埋設されている。そして、加圧ポンプ又は減圧ポンプなどを備えた圧力調整装置を用い、前記逆止弁12を介して、ガラス板6とポリカーボネート板7との間の空間11内を加圧又は減圧する。
【0043】
斯くして、この窓部5は、ガラス板6とポリカーボネート板7とが一定の間隔をあけて気密状に接合された構成を有するとともに、ガラス板6とポリカーボネート板7との間の空間11内が加圧又は減圧された状態となる。そして、このように構成された窓部5は、そのガラス板6が加工領域側に位置するように前記ドアカバー4の開口部に固設され、この窓部5を通して加工領域内を観察できるようになっている。
【0044】
[気密状態検出装置]
次に、本例の気密状態検出装置21について説明する。
図2に示すように、本例の気密状態検出装置21は、窓部5のガラス板6とポリカーボネート板7との間の空間11内に配設された圧力センサ22と、この圧力センサ22によって検出された前記空間11内の圧力値を基に、前記窓部5の気密状態の適否を判別する判別部23とから構成される。
【0045】
圧力センサ22には、静電容量式、金属ストレインゲージ式、圧電素子式等の各種の圧力センサを用いることができ、この圧力センサ22から出力される信号を取り出すための信号線22aが前記窓部5のスペーサ8、シール部材9及び枠体10を貫通して外部に導出されている。尚、この信号線22aは、スペーサ8、シール部材9及び枠体10の少なくとも一部においてこれを気密状に貫通している。即ち、この信号線22aを外部に導出することによって前記窓部5の気密状態が損なわれないようになっている。
【0046】
前記判別部23は、前記圧力センサ22により検出された圧力データを、前記信号線22aを介し受信して、受信した圧力データを基に前記空間11内の気密状態の適否を判別し、その判別結果を外部へ出力する機能部で、演算用のソフトウエアを備えたコンピュータ、又はハードウエアとしての演算回路などから構成される。
【0047】
[気密状態の適否判断手法]
次に、前記判別部23において前記気密状態の適否を判断するその手法について説明する。上記の如く構成された前記窓部5の空間11内が初期状態として加圧又は減圧されている場合、その気密状態が良好な状態であれば、前記空間11内の圧力に変動を生じないが、気密状態が良好でない場合には、前記空間11内の圧力が変動することになる。即ち、加圧状態であれば徐々に圧力が減少し、減圧状態であれば徐々に圧力が上昇する。したがって、前記圧力センサ22によって検出された圧力値から、前記空間11内の気密状態の適否を判断することができる。
【0048】
1.第1の態様
まず、判断手法の第1の態様について説明する。
【0049】
第1の態様として、前記判別部23は、前記圧力センサ22から出力される圧力データを、随時又は定期的にサンプリングして、サンプリングした圧力値が、予め設定した許容範囲外の値となったとき、気密状態が不適当であると判断し、その信号(不適信号)を外部に出力する態様を採ることができる。
【0050】
図4は、前記空間11内が初期状態として加圧されている場合の、当該空間11内の圧力変動の一例を示している。許容範囲としては、上限値(Pa)及び下限値(Pb)の両方を設定しても良いが、初期状態が加圧状態であれば、経時的に圧力が増すことはないので、下限値(Pb)のみの設定でも良い。前記判別部23は、サンプリングした圧力値が、下限値(Pb)を下回ったとき、気密状態が不適当であると判断し、不適信号を外部に出力する。
【0051】
一方、前記空間11内が初期状態として減圧されている場合の、当該空間11内の圧力変動の一例を
図5に示す。この場合も、許容範囲としては、上限値(Pa)及び下限値(Pb)の両方を設定しても良いが、初期状態が減圧状態であれば、経時的に圧力が更に減少することはないので、上限値(Pa)のみの設定でも良い。前記判別部23は、サンプリングした圧力値が、上限値(Pa)を上回ったとき、気密状態が不適当であると判断して、不適信号を外部に出力する。
【0052】
尚、前記空間11内を減圧状態とした場合、漏洩部が存在しその気密性が確保されていない場合には、この漏洩部から外部の気体が前記空間11内に吸い込まれ、当該漏洩部付近にクーラントが存在する場合には、このクーラントが漏洩部から前記空間11内に吸い込まれることになる。逆に、前記空間11内を加圧状態とした場合、仮に漏洩部が存在したとしても、この漏洩部からは前記空間11内の気体が吐出されるので、漏洩部付近にクーラントが存在したとしても、これが当該漏洩部から前記空間11内に侵入することはない。以上からすれば、前記空間11内の初期状態は、これを加圧状態にするのが好ましい。
【0053】
2.第2の態様
第2の態様として、前記判別部23は、判断の基準となる許容範囲を、前記空間11内を加圧又は減圧状態にした初期状態からの経過時間に応じて変化させた値に設定し、前記圧力センサ22から出力される圧力データを、随時又は定期的にサンプリングして、サンプリングした圧力値が、そのサンプリング時点に対応する許容範囲を外れた値となったとき、気密状態が不適当であると判断して、不適信号を外部に出力する態様を採ることができる。
【0054】
上述したように、本例の窓部5は、ガラス板6、スペーサ8及びポリカーボネート板7の外周面をシール部材9によって封止した構成を採用しているが、前記空間11の気密状態を完全なものとすることは、現実的には難しく、実用面で支障のない範囲、即ち許容可能な範囲での漏洩は起こり得る。この場合、前記空間11内の圧力は、実用上支障のない範囲で経時的に徐々に変動、即ち、初期状態が加圧状態であれば圧力が徐々に低下し、初期状態が減圧状態であれば、圧力が徐々に上昇する。したがって、判断基準としての許容範囲を固定した場合、長時間が経過すると、前記空間11内の圧力は実用上支障のない範囲での経時的な圧力変動であるにも拘らず、設定した許容範囲外の圧力となって、前記判別部23において、気密状態が不適当であると判断されるという不都合を生じる。
【0055】
そこで、上記のように、判断の基準となる前記許容範囲を、初期状態からの経過時間に応じて変化させる、即ち、実用上支障のない範囲で経時的に変動する前記空間11内の圧力を予め想定し、例えば、予め、実用上支障となるリークがない状態の前記空間11内の経時的な圧力変動を測定してその傾向を取得し、この変動傾向に応じて、前記判断基準となる許容範囲を徐々に変動させれば、前記判別部23における判断処理において、実用上支障のない範囲で経時的な圧力変動をキャンセルすることができ、前記気密状態の適否を正確に判断することができる。
【0056】
図6には、実用上支障となるリークがない状態の前記空間11内の経時的な圧力変動を予め測定してその傾向を取得し、この変動傾向に応じて徐々に変動させた許容範囲を示しており、その下限値Pbを一点鎖線で示し、上限値Paを二点鎖線で示している。前記判別部23は、上記のように、サンプリングした圧力値が、そのサンプリング時点に対応する許容範囲を外れた値となったとき、気密状態が不適当であると判断する。尚、前記許容範囲は、下限値Pbのみの設定でも良い。
【0057】
また、この態様においても、前記空間11内の初期状態は減圧状態であっても良い。減圧状態であっても、上記加圧状態と同様にして、前記経時的に変動させた許容範囲を設定することができ、同様に、実用上支障のない範囲で経時的に生じる圧力変動をキャンセルすることで、気密状態の適否を正確に判断することができる。また、この場合、前記許容範囲は、上限値Paのみの設定でも良い。
【0058】
尚、第2の態様においても、第1の態様と同様に、クーラントの侵入防止の観点から、前記空間11内の初期状態を加圧状態とするのが好ましい。
【0059】
3.第3の態様
第3の態様として、前記判別部23は、前記圧力センサ22から出力される圧力データを、随時又は定期的にサンプリングして、サンプリングした圧力値が、予め定めた変動範囲を超えて変動したとき、気密状態が不適当であると判断して、外部に不適信号を出力する態様を採ることができる。
【0060】
図7に、前記空間11内の初期状態が加圧状態である場合の圧力変動を示しているが、判別部23は、例えば、順次得られる圧力値(P1,P2,P3・・・)からその差分値((P1−P2),(P2−P3),(P3−P4)・・・)を変動値として算出し、算出した変動値と予め定めた基準値とを比較して、変動値が基準値を上回ったとき、気密状態が不適当であると判断する。
図7において、算出された変動値ΔPx,ΔPyが、基準値Psに対して、ΔPx<Ps<ΔPyであれば、判別部23はΔPyが算出されたとき、気密状態が不適当であると判断して、不適信号を外部に出力する。
【0061】
また、この態様においても、前記空間11内の初期状態を減圧状態とすることができるが、クーラントの侵入防止の観点からすれば、加圧状態とするのが好ましい。減圧状態とする場合も同様に、判別部23は、順次得られる圧力値からその差分値を変動値として算出し、算出した変動値と予め定めた基準値(基準となる変動値であって、基準変動範囲である)とを比較して、変動値が基準値を上回ったとき、気密状態が不適当であると判断する。
【0062】
次に、前記気密状態検出装置21の変形例について説明する。
【0063】
[気密状態検出装置の変形例1]
図8に、変形例1としての気密状態検出装置31を示す。同
図8に示すように、この気密状態検出装置31は、前記窓部5の空間11内に連通するように、前記スペーサ8、シール部材9及び枠体10を貫通して外部に導出された導出管32を備えている。尚、この導出管32は、スペーサ8、シール部材9及び枠体10の少なくとも一部においてこれを気密状に貫通している。即ち、導出管32を設けることで前記窓部5の気密状態が損なわれないようになっている。
【0064】
そして、前記導出管32の導出側端部には、その管路を封止するように前記圧力センサ22が接続され、この導出管32を介して前記空間11内の圧力が、当該圧力センサ22によって検出され、検出された圧力データが、信号線22aを介して判別部23に送信される。
【0065】
斯くして、この気密状態検出装置31によっても、前記空間11内の圧力が圧力センサ22によって検出され、検出された圧力データを基に、判別部23において、前記窓部5の気密状態の適否が判断され、不適と判断された場合には、判別部23から外部に不適信号が出力される。
【0066】
尚、この判別部23における判断手法は、上述した第1の態様〜第3の態様のいずれの態様も採用することができる。
【0067】
[気密状態検出装置の変形例2]
図9に、変形例2としての気密状態検出装置41を示す。同
図9に示すように、この気密状態検出装置41は、圧力センサ22、判別部42及び圧力調整装置50から構成される。
【0068】
圧力調整装置50は、一端が、前記窓部5の空間11内に連通するように、前記スペーサ8、シール部材9及び枠体10を貫通して当該窓部5に接続される接続管53と、この接続管53にこれに介在するように配設された絞り弁54及び逆止弁55と、前記接続管53の他端に接続したポンプ52と、このポンプ52の作動を制御するポンプ制御部51とから構成される。
【0069】
前記接続管53は、スペーサ8、シール部材9及び枠体10の少なくとも一部においてこれを気密状に貫通しており、この接続管53を設けることで前記窓部5の気密状態が損なわれないようになっている。
【0070】
また、前記圧力センサ22は、前記接続管53の前記一端と前記逆止弁55との間から分岐する分岐管53aの端部に、その管路を封止するように接続され、この分岐管53a及び接続管53を介して前記空間11内の圧力を検出し、検出した圧力データを、信号線22aを介して判別部42に送信する。
【0071】
また、ポンプ52は、加圧ポンプ又は減圧ポンプから構成され、ポンプ制御部51は、所定の制御プログラム又は制御回路にしたがって前記ポンプ52の作動を制御するとともに、判別部42からの制御信号を受信し、受信した制御信号に応じて前記ポンプ52の作動を制御する。
【0072】
この気密状態検出装置41によれば、まず、ポンプ制御部51による制御の下、ポンプ52が駆動され、ポンプ52が加圧ポンプの場合には、前記空間11内が加圧され、ポンプ52が減圧ポンプの場合には、前記空間11内が減圧され、当該空間11内が初期状態としての加圧状態又は減圧状態となる。
【0073】
尚、接続管53には、絞り弁54を設けているので、接続管53の管路内を流通する気体は、当該絞り弁54の開度に応じた流量に制限され、前記空間11内は絞り弁54の開度に応じて徐々に加圧又は減圧される。
【0074】
また、接続管53には、逆止弁55を設けているので、ポンプ52を停止した後は、接続管53の管路内の気体の流通がこの逆止弁55によって制止され、前記空間11内は、加圧状態又は減圧状態が維持される。尚、
図9においては、加圧状態での逆止弁55を図示しているが、減圧する場合には、その向きが逆になる。
【0075】
そして、以上のようにして前記空間11内を初期状態とした後、前記圧力センサ22によって前記空間11内の圧力が検出され、検出された圧力データを基に、判別部42において、前記窓部5の気密状態の適否が判断され、不適と判断された場合には、判別部42から外部に不適信号が出力される。
【0076】
尚、この気密状態検出装置41では、前記圧力センサ22を、前記接続管53から分岐する分岐管53aに接続させたが、このような態様に代えて、前記気密状態検出装置21の場合と同様に、前記圧力センサ22を前記空間11内に配設した態様としても良い。このような態様を、
図9において、一点鎖線で示している。
【0077】
前記判別部42における判断手法としては、上述した第1の態様〜第3の態様のいずれの態様も採用することができるが、この他に、以下の第4の態様、第5の態様も採用することができる。
【0078】
[判断手法の第4の態様]
第4の態様として、本例の判別部42は、前記圧力センサ22によって検出される圧力が、前記許容範囲の上限又は下限より内側の所定範囲として設定された圧力修正範囲内の圧力となったことが所定時間又は所定回数検出されたとき、前記ポンプ制御部51に駆動信号を出力して前記ポンプ52を駆動し、これにより前記空間11内を加圧又は減圧して、当該空間11内の圧力を、前記許容範囲内であり且つ前記圧力修正範囲外となる所定の圧力に回復させる態様を採ることができる。
【0079】
例えば、
図10に示すように、判別部42は、許容範囲の下限(Pb)より内側(上側)に、所定範囲(Pb−Pb’間)の圧力修正範囲を設定し、前記圧力センサ22によって検出される圧力が、圧力修正範囲内の圧力として所定回数(又は所定時間)(
図10では4回)検出されたとき、前記ポンプ52を駆動させて前記空間11内を加圧し、当該空間11内の圧力を、前記許容範囲内であり且つ前記圧力修正範囲外となる所定の圧力(例えば、初期状態の圧力)に回復させる。尚、
図10では、加圧状態の場合を示しており、上記と同様に加圧状態の方が好ましいが、減圧状態としてもよく、この場合、
図10を上下反転させた状態が想定される。
【0080】
既述のように、前記空間11の気密状態を完全なものとすることは、現実的には難しく、実用面で支障のない範囲、即ち許容可能な範囲での漏洩は起こり得る。この場合、前記空間11内の圧力は、実用上支障のない範囲で経時的に徐々に変動、即ち、初期状態が加圧状態であれば圧力が徐々に低下し、初期状態が減圧状態であれば、圧力が徐々に上昇する。したがって、これをこのまま放置すると、空間11の圧力が許容範囲外の圧力となり、実用上支障のない範囲での経時的な圧力変動であるにも拘らず、前記判別部42において、気密状態が不適当であると判断されるという不都合を生じる。
【0081】
そこで、この第4の態様では、前記空間11内の圧力が前記許容範囲の上限又は下限より内側の所定範囲として設定された圧力修正範囲内の圧力となったことが所定時間又は所定回数検出される場合には、緩やかな変動であって、実用上支障のない範囲での経時的な圧力変動であると判断されるため、圧力調整装置50により、前記空間11内の圧力を、前記許容範囲内であり且つ前記圧力修正範囲外である所定の圧力に回復させるようにしている。このようにすれば、実用上支障のない範囲で経時的な圧力変動を生じる場合でも、判断基準となる許容範囲を固定した状態で、前記気密状態の適否を正確に判断することができる。
【0082】
尚、この態様では、前記空間11内の圧力が所定時間又は所定回数、圧力修正範囲内の圧力となったときに、圧力調整装置50により、前記空間11内の圧力を所定の圧力に回復させるようにしているが、これに限られるものではなく、定期的に空間11内の圧力を回復させるようしてもよく、或いは、工作機械1の電源を入れるごと、若しくは、ドアカバー4を開閉するごと等、所定の動作が行なわれるごとに、空間11内の圧力を回復させるようしてもよい。
【0083】
[判断手法の第5の態様]
第5の態様として、前記判別部42は、随時又は定期的に前記ポンプ制御部51に駆動信号を出力し、前記ポンプ52を所定時間駆動して、前記空間11内を加圧又は減圧するとともに、前記圧力センサ22から圧力データを入力し、検出される前記空間11内の圧力が所定時間内に予め定めた基準圧力に達しなかったとき、前記気密状態が不適当であると判断し、外部に不適信号を出力する態様を採ることができる。
【0084】
例えば、
図11に示すように、前記判別部42は、前記空間11内が所定時間加圧されている間、前記圧力センサ22から出力される圧力データをサンプリングして、サンプリングした圧力値が基準圧力(P
b)を上回るかどうかを確認し、圧力値が所定時間内に基準圧力(Pb)を上回らない場合には、気密状態が不適当であると判断して、外部に不適信号を出力する。
図11中、二点鎖線で示した線図は、欠陥的なリークがない場合の圧力上昇曲線である。
【0085】
尚、この場合、前記絞り弁54の開度は、検出すべき窓部5のリーク量に応じて設定され、これを超えた量のリークがある場合には、前記空間11内を加圧又は減圧しても、その圧力が前記基準圧力に達しないような開度に設定される。
【0086】
また、
図11では、空間11内を加圧状態とした場合を示しており、上記と同様に加圧状態の方が好ましいが、空間11内を減圧状態としてもよく、この場合、
図11を上下反転させた状態を想定することができる。
【0087】
また、この態様では、これを窓部5が加圧又は減圧されていない初期状態から行っても良く、初期状態以後、これを随時又は定期的に行っても良い。
【0088】
以上詳述したように、本例の気密状態検出装置21,31,41によれば、それぞれ、前記窓部5の気密状態を正確に検出することができる。
【0089】
そして、このようにして検出された不適信号を受けて、当該窓部5を早期に新品に交換するなど、適切な予防措置を講じることでき、このような予防措置を講じることで、工具やワークが窓部を貫通して外部に飛び出すといった重大な事故が引き起こされるのを未然に防止することができる。
【0090】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明を具現化する態様は、何らこれに限定されるものではない。
【0091】
例えば、上例では、工作機械1のドアカバー4に窓部5が設けられたものを例示したが、これに限られるものではなく、固定カバー3,4に設けられる窓部5についても、本発明を適用することができる。
【0092】
また、窓部5として、加工領域側にガラス板が配設され、外部側にポリカーボネート板が配設されたものを例示したが、これに限られるものでは無く、加工領域側に配設される窓板として高い耐磨耗性を備えた材料を用い、外部側に配設される窓板として高い靭性、高い耐衝撃性を備えるものの、クーラントに対する耐性が低い材料を用いた窓部5でも、本発明を好適に適用することができ、更には、窓部5を構成する二枚の窓板間の空間の気密状態を検出する目的であれば、窓板の材質に拘わらず、本発明を適用することができる。