(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6095362
(24)【登録日】2017年2月24日
(45)【発行日】2017年3月15日
(54)【発明の名称】衛星通信装置及び衛星通信システム
(51)【国際特許分類】
H04B 7/155 20060101AFI20170306BHJP
【FI】
H04B7/155
【請求項の数】14
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2012-285735(P2012-285735)
(22)【出願日】2012年12月27日
(65)【公開番号】特開2014-127991(P2014-127991A)
(43)【公開日】2014年7月7日
【審査請求日】2015年11月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】000166247
【氏名又は名称】古野電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118784
【弁理士】
【氏名又は名称】桂川 直己
(72)【発明者】
【氏名】安達 智志
(72)【発明者】
【氏名】田村 進司
【審査官】
後澤 瑞征
(56)【参考文献】
【文献】
登録実用新案第3151618(JP,U)
【文献】
特開昭64−078541(JP,A)
【文献】
特開2014−75627(JP,A)
【文献】
特開2014−75654(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B7/14−7/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
LANに接続された端末との間で情報を授受するとともに、前記端末から受信した情報を無線信号により衛星を介してWANに送信し、WANからの情報を無線信号により衛星を介して受信する衛星通信装置において、
前記衛星から送信される前記無線信号の信号レベルを検知する検知部を備え、
前記端末によるWANへの通信の可否を判断するための情報であって、WANを介した通信を行うことなく取得可能な情報であって、かつ、前記検知部が検知した信号レベルを示す情報である判断情報に基づいて、前記端末によるWANへの通信の可否を判断し、当該端末によるWANへの通信が可能である場合に、WANへの通信が可能であることを示す通信可能信号を生成する判断部と、
WANへの通信の可否の確認を要求する疎通確認信号を前記端末から受信し、かつ、当該端末によるWANへの通信が可能である場合に、当該疎通確認信号を送信した端末に対して前記通信可能信号を送信する通知部と、
を備えることを特徴とする衛星通信装置。
【請求項2】
LANに接続された端末との間で情報を授受するとともに、前記端末から受信した情報を無線信号により衛星を介してWANに送信し、WANからの情報を無線信号により衛星を介して受信する衛星通信装置において、
前記端末によるWANへの通信の可否を判断するための情報であって、WANを介した通信を行うことなく取得可能な情報であって、かつ、WANとの間の衛星通信回線の接続状態を示す情報である判断情報に基づいて、前記端末によるWANへの通信の可否を判断し、当該端末によるWANへの通信が可能である場合に、WANへの通信が可能であることを示す通信可能信号を生成する判断部と、
WANへの通信の可否の確認を要求する疎通確認信号を前記端末から受信し、かつ、当該端末によるWANへの通信が可能である場合に、当該疎通確認信号を送信した端末に対して前記通信可能信号を送信する通知部と、
を備えることを特徴とする衛星通信装置。
【請求項3】
LANに接続された端末との間で情報を授受するとともに、前記端末から受信した情報を無線信号により衛星を介してWANに送信し、WANからの情報を無線信号により衛星を介して受信する衛星通信装置において、
前記端末によるWANへの通信の可否を判断するための情報であって、WANを介した通信を行うことなく取得可能な情報であって、かつ、前記端末毎の通信の許可又は禁止に関する設定の情報である判断情報に基づいて、前記端末によるWANへの通信の可否を判断し、当該端末によるWANへの通信が可能である場合に、WANへの通信が可能であることを示す通信可能信号を生成する判断部と、
WANへの通信の可否の確認を要求する疎通確認信号を前記端末から受信し、かつ、当該端末によるWANへの通信が可能である場合に、当該疎通確認信号を送信した端末に対して前記通信可能信号を送信する通知部と、
を備えることを特徴とする衛星通信装置。
【請求項4】
請求項1から3までの何れか一項に記載の衛星通信装置であって、
前記判断部は、前記端末から前記疎通確認信号を受信した時に、当該端末によるWANへの通信が可能であるか否かを判断することを特徴とする衛星通信装置。
【請求項5】
請求項1から4までの何れか一項に記載の衛星通信装置であって、
前記疎通確認信号及び前記通信可能信号は、ICMPを利用したパケットから構成されることを特徴とする衛星通信装置。
【請求項6】
請求項5に記載の衛星通信装置であって、
前記疎通確認信号は、Pingコマンドにより送信される信号であり、
前記通信可能信号は、前記Pingコマンドにより送信される信号に対する応答信号であることを特徴とする衛星通信装置。
【請求項7】
請求項3に記載の衛星通信装置であって、
前記端末のIPアドレス又は前記端末のMACアドレスと、当該端末の通信の許可又は禁止と、を対応付けた情報を前記判断情報として利用することを特徴とする衛星通信装置。
【請求項8】
衛星通信を利用した処理又は衛星通信に関する処理を実行する端末と、
衛星通信装置と、
を備え、
前記衛星通信装置は、
衛星通信で用いる衛星から送信される無線信号の信号レベルを検知する検知部と、
前記端末によるWANへの通信の可否を判断するための情報であって、WANを介した通信を行うことなく取得可能な情報であって、かつ、前記検知部が検知した信号レベルを示す情報である判断情報に基づいて、前記端末によるWANへの通信の可否を判断し、当該端末によるWANへの通信が可能である場合に、WANへの通信が可能であることを示す通信可能信号を生成する判断部と、
WANへの通信の可否の確認を要求する疎通確認信号を前記端末から受信し、かつ、当該端末によるWANへの通信が可能である場合に、当該疎通確認信号を送信した端末に対して前記通信可能信号を送信する通知部と、
を備え、
前記端末は、前記通知部による前記通信可能信号の送信の有無に応じて異なる処理を行うことを特徴とする衛星通信システム。
【請求項9】
衛星通信を利用した処理又は衛星通信に関する処理を実行する端末と、
衛星通信装置と、
を備え、
前記衛星通信装置は、
前記端末によるWANへの通信の可否を判断するための情報であって、WANを介した通信を行うことなく取得可能な情報であって、かつ、WANとの間の衛星通信回線の接続状態を示す情報である判断情報に基づいて、前記端末によるWANへの通信の可否を判断し、当該端末によるWANへの通信が可能である場合に、WANへの通信が可能であることを示す通信可能信号を生成する判断部と、
WANへの通信の可否の確認を要求する疎通確認信号を前記端末から受信し、かつ、当該端末によるWANへの通信が可能である場合に、当該疎通確認信号を送信した端末に対して前記通信可能信号を送信する通知部と、
を備え、
前記端末は、前記通知部による前記通信可能信号の送信の有無に応じて異なる処理を行うことを特徴とする衛星通信システム。
【請求項10】
衛星通信を利用した処理又は衛星通信に関する処理を実行する端末と、
衛星通信装置と、
を備え、
前記衛星通信装置は、
前記端末によるWANへの通信の可否を判断するための情報であって、WANを介した通信を行うことなく取得可能な情報であって、かつ、前記端末毎の通信の許可又は禁止に関する設定の情報である判断情報に基づいて、前記端末によるWANへの通信の可否を判断し、当該端末によるWANへの通信が可能である場合に、WANへの通信が可能であることを示す通信可能信号を生成する判断部と、
WANへの通信の可否の確認を要求する疎通確認信号を前記端末から受信し、かつ、当該端末によるWANへの通信が可能である場合に、当該疎通確認信号を送信した端末に対して前記通信可能信号を送信する通知部と、
を備え、
前記端末は、前記通知部による前記通信可能信号の送信の有無に応じて異なる処理を行うことを特徴とする衛星通信システム。
【請求項11】
請求項8から10までの何れか一項に記載の衛星通信システムであって、
前記衛星通信装置を複数備え、
前記端末は、複数の前記衛星通信装置のうち何れを利用して衛星通信を行うかを決定可能であり、
前記端末は、利用中の前記衛星通信装置への前記疎通確認信号の送信後に、前記通信可能信号が送信されなかった場合、他の前記衛星通信装置を利用して衛星通信を行うことを特徴とする衛星通信システム。
【請求項12】
衛星通信を介して無線信号により端末をWANに接続する衛星通信方法において、
衛星通信で用いる衛星から送信される前記無線信号の信号レベルを検知する検知工程と、
前記端末によるWANへの通信の可否を判断するための情報であって、WANを介した通信を行うことなく取得可能な情報であって、かつ、前記検知工程で検知した信号レベルを示す情報である判断情報に基づいて、前記端末によるWANへの通信の可否を判断し、当該端末によるWANへの通信が可能である場合に、WANへの通信が可能であることを示す通信可能信号を生成する判断工程と、
WANへの通信の可否の確認を要求する疎通確認信号を前記端末から受信し、かつ、当該端末によるWANへの通信が可能である場合に、当該疎通確認信号を送信した端末に対して前記通信可能信号を送信する通知工程と、
を含むことを特徴とする衛星通信方法。
【請求項13】
衛星通信を介して無線信号により端末をWANに接続する衛星通信方法において、
前記端末によるWANへの通信の可否を判断するための情報であって、WANを介した通信を行うことなく取得可能な情報であって、かつ、WANとの間の衛星通信回線の接続状態を示す情報である判断情報に基づいて、前記端末によるWANへの通信の可否を判断し、当該端末によるWANへの通信が可能である場合に、WANへの通信が可能であることを示す通信可能信号を生成する判断工程と、
WANへの通信の可否の確認を要求する疎通確認信号を前記端末から受信し、かつ、当該端末によるWANへの通信が可能である場合に、当該疎通確認信号を送信した端末に対して前記通信可能信号を送信する通知工程と、
を含むことを特徴とする衛星通信方法。
【請求項14】
衛星通信を介して無線信号により端末をWANに接続する衛星通信方法において、
前記端末によるWANへの通信の可否を判断するための情報であって、WANを介した通信を行うことなく取得可能な情報であって、かつ、前記端末毎の通信の許可又は禁止に関する設定の情報である判断情報に基づいて、前記端末によるWANへの通信の可否を判断し、当該端末によるWANへの通信が可能である場合に、WANへの通信が可能であることを示す通信可能信号を生成する判断工程と、
WANへの通信の可否の確認を要求する疎通確認信号を前記端末から受信し、かつ、当該端末によるWANへの通信が可能である場合に、当該疎通確認信号を送信した端末に対して前記通信可能信号を送信する通知工程と、
を含むことを特徴とする衛星通信方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主要には、人工衛星を介して通信を行う衛星通信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、人工衛星を介して、電話、ファクシミリ、インターネット等の通信を行う技術が知られている。人工衛星を介した通信(以下、衛星通信)は、例えば、有線及び無線の通信設備が設置されていない地域(海上や孤島等)において利用されている。特許文献1は、航空機等において衛星通信を利用する際に用いられる技術を開示する。
【0003】
特許文献1では、航空機内で携帯電話を利用して通話及び通信を可能にする技術が開示されている。具体的には、航空機は衛星通信を行うためのアンテナ等を備えている。この衛星通信により、航空機内の携帯電話のネットワークと、地上の基地局のネットワークと、を接続している。これにより、航空機内においても携帯電話を利用して通話及び通信を行うことができる。
【0004】
ところで、衛星通信は通信量又は通信時間等で料金が定まる従量課金制が採用されていることがある。この場合、衛星通信を常に有効にしておくと、通信料金が高くなってしまう。この課題を解決するために、特許文献1では、エミュレータを用いる構成が開示されている。
【0005】
エミュレータは、携帯電話のネットワークと基地局のネットワークとが実際には接続されていない場合であっても、接続されているように動作することができる。これにより、携帯電話を利用して通話又は通信が行われていない場合又はそれらの情報を地上へ転送する必要がない場合に、衛星通信を無効にして通信料金を低減させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特表2006−527926号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、従来からICMP(Internet Control Message Protocol)と言うプロトコルが知られている。ICMPとは、パケットが送信先に届くまでに起きたエラー又は当該通信に関する情報等を送信元に通知するためのプロトコルである。なお、以下では、このICMPを利用したパケットに対応(応答)可能なサーバをICMPサーバと称する。
【0008】
ICMPを利用した通信としては、例えばPingが知られている。Pingとは、ICMPのエコー要求及びエコー通知を利用したものであり、ネットワークの疎通を確認したい相手(他の端末やICMPサーバ等)に対してICMPパケットを送信し、そのICMPパケットへの応答があるか否かに基づいて、パケットが正しく届くか否かを確認するためのものである。Pingを利用することにより、例えばICMPサーバまでの回線の死活を監視することができる。
【0009】
ここで、フェイルオーバーシステム(一方が使用できない場合に、もう一方を使用するシステムの総称)において、単純な方法で回線状況を把握するためには、通常は、メインの回線を使用してICMPパケットによる死活監視が行われる。しかし、この方法を利用する場合、メインの回線が従量課金制である場合は、通信料金が掛かってしまう。
【0010】
なお、この課題は、実際に衛星通信を行って通信の可否又は通信環境等を確認する方法を採用していれば、Pingに限られず他の方法にも共通する課題である。
【0011】
本発明は以上の事情に鑑みてされたものであり、その主要な目的は、通信の可否又は通信環境等を確認することで通信料金が掛かってしまうことを防止する衛星通信装置を提供することにある。
【0012】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段とその効果を説明する。
【0013】
本発明の第1の観点によれば、以下の構成の衛星通信装置が提供される。即ち、衛星通信装置は、LANに接続された端末との間で情報を授受するとともに、前記端末から受信した情報を無線信号により衛星を介してWANに送信し、WANからの情報を無線信号により衛星を介して受信する。衛星通信装置は、判断部と、通知部と、を備える。前記判断部は、前記端末によるWANへの通信の可否を判断するための情報であって、WANを介した通信を行うことなく、LANを介した通信又は自機から取得可能な情報である判断情報に基づいて、前記端末によるWANへの通信の可否を判断し、当該端末によるWANへの通信が可能である場合に、WANへの通信が可能であることを示す通信可能信号を生成する。前記通知部は、WANへの通信の可否の確認を要求する疎通確認信号を前記端末から受信し、かつ、当該端末によるWANへの通信が可能である場合に、当該疎通確認信号を送信した端末に対して前記通信可能信号を送信する。
【0014】
これにより、実際に通信を行うことなく、該当する端末の通信の可否を把握することができる。そのため、例えば従量課金制の通信契約を行っていた場合は、通信料金を抑えることができる。
【0015】
前記の衛星通信装置においては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、この衛星通信装置は、前記衛星から送信される前記無線信号の信号レベルを検知する検知部を備える。衛星通信装置は、前記検知部が検知した信号レベルを前記判断情報として利用する。
【0016】
これにより、例えば信号レベルが所定以下の場合は衛星通信を適切に行うことができないので、この情報に基づいて通信の可否を判断できる。
【0017】
前記の衛星通信装置においては、WANとの間の衛星通信回線の接続状態を前記判断情報として利用することが好ましい。
【0018】
これにより、例えば衛星通信回線の接続状態がオフラインとなっている場合は当然衛星通信を行うことができないので、この情報に基づいて通信の可否を判断できる。
【0019】
前記の衛星通信装置においては、前記判断部は、前記端末から前記疎通確認信号を受信した時に、当該端末によるWANへの通信が可能であるか否かを判断することが好ましい。
【0020】
これにより、最新の判断情報に基づいてWANへの通信の可否を判断できるので、確実性の高い判断を行うことができる。
【0021】
前記の衛星通信装置においては、前記疎通確認信号及び前記通信可能信号は、ICMPを利用したパケットから構成されることが好ましい。
【0022】
これにより、通信に関する情報の通知等に一般的に用いられるプロトコルを用いるため、端末側に特別な設定を行うことなく、本発明を実現できる。
【0023】
前記の衛星通信装置においては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、前記疎通確認信号は、Pingコマンドにより送信される信号である。前記通信可能信号は、前記Pingコマンドにより送信される信号に対する応答信号である。
【0024】
これにより、通常のネットワーク処理で頻繁に利用されるPingを利用して、端末の通信の可否を判断できる。また、端末は通常のPing送信を行うだけなので、端末側に特別な設定を行うことなく、本発明を実現できる。
【0025】
前記の衛星通信装置においては、前記端末毎の通信の許可又は禁止に関する設定を前記判断情報として利用することが好ましい。
【0026】
これにより、該当する端末の通信が禁止となっている場合は衛星通信を行うことができないので、この情報に基づいて通信の可否を判断できる。
【0027】
前記の衛星通信装置においては、端末のIPアドレス又は端末のMACアドレスと、当該端末の通信の許可又は禁止と、を対応付けた情報を前記判断情報として利用することが好ましい。
【0028】
これにより、IPアドレス又はMACアドレスを用いることにより端末を特定できるので、端末毎の通信の許可又は禁止を設定することができる。
【0029】
本発明の第2の観点によれば、以下の構成の衛星通信システムが提供される。即ち、この衛星通信システムは、端末と、衛星通信装置と、を備える。前記端末は、衛星通信を利用した処理又は衛星通信に関する処理を実行する。前記衛星通信装置は、判断部と、通知部と、を備える。前記判断部は、前記端末によるWANへの通信の可否を判断するための情報であって、WANを介した通信を行うことなく、LANを介した通信又は自機から取得可能な情報である判断情報に基づいて、前記端末によるWANへの通信の可否を判断し、当該端末によるWANへの通信が可能である場合に、WANへの通信が可能であることを示す通信可能信号を生成する。前記通知部は、WANへの通信の可否の確認を要求する疎通確認信号を前記端末から受信し、かつ、当該端末によるWANへの通信が可能である場合に、当該疎通確認信号を送信した端末に対して前記通信可能信号を送信する。前記端末は、前記通知部による前記通信可能信号の送信の有無に応じて異なる処理を行う。
【0030】
これにより、実際に通信を行うことなく、該当する端末の通信の可否を把握することができる。そのため、例えば従量課金制の通信契約を行っていた場合は、通信料金を抑えることができる。
【0031】
前記の衛星通信システムにおいては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、前記衛星通信装置を複数備える。前記端末は、複数の前記衛星通信装置のうち何れを利用して衛星通信を行うかを決定可能である。前記端末は、利用中の前記衛星通信装置への前記疎通確認信号の送信後に、前記通信可能信号が送信されなかった場合、他の前記衛星通信装置を利用して衛星通信を行う。
【0032】
これにより、ある衛星通信装置を利用してWANに接続できなくなった場合に、自動的に他の衛星通信装置を利用することができる。なお、本発明では実際に衛星通信を行うことなくWANへの接続の可否を判断するので、通信確認を頻繁に行った場合であっても、通信料金が高くなることを防止できる。
【0033】
本発明の第3の観点によれば、衛星通信を介して無線信号により端末をWANに接続する衛星通信方法において、以下の方法が提供される。即ち、衛星通信方法は、判断工程と、通知工程と、を含む。前記判断工程は、前記端末によるWANへの通信の可否を判断するための情報であって、WANを介した通信を行うことなく、LANを介した通信又は自機(判断主体)から取得可能な情報である判断情報に基づいて、前記端末によるWANへの通信の可否を判断する。前記通知工程は、WANへの通信の可否の確認を要求する疎通確認信号を前記端末から受信し、かつ、当該端末によるWANへの通信が可能である場合に、当該疎通確認信号を送信した端末に対して前記通信可能信号を送信する。
【0034】
これにより、実際に通信を行うことなく、該当する端末の通信の可否を把握することができる。そのため、例えば従量課金制の通信契約を行っていた場合は、通信料金を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【
図1】船舶と陸上拠点とで衛星通信を行う衛星通信システムのブロック図。
【
図3】従来及び本実施形態の衛星通信システムでのPingの流れを示すシーケンス図。
【
図4】利用する衛星通信装置を選択するためにルータが行う処理を示すフローチャート。
【
図5】利用する衛星通信装置を選択するためにルータが行う処理の別の例を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0036】
次に、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
図1は、船舶と陸上拠点とで衛星通信を行う衛星通信システム1のブロック図である。
【0037】
図1に示すように、船舶と陸上拠点(ビル等)とで通信を行う場合、人工衛星30を介した通信(衛星通信)が利用されることがある。なお、
図1には人工衛星30は1つしか図示していないが、実際には複数の人工衛星が存在し、船舶の位置及び利用する通信サービス等に応じて適切な人工衛星が選択される。
【0038】
また、本実施形態では、船舶に2つの衛星通信装置が設けられており、状況に応じて何れかの衛星通信装置を利用して通信を行う構成である。それぞれの衛星通信装置で利用する衛星通信は異なる事業者により提供されており、それぞれ、利用する人工衛星、通信可能エリア、通信料金等が異なる。なお、衛星通信装置は2つに限られず3つ以上設けられていても良い。
【0039】
以下、衛星通信システム1の構成について具体的に説明する。船舶側には、衛星通信を行うための構成として、第1アンテナユニット11と、第1衛星通信装置12と、第2アンテナユニット13と、第2衛星通信装置14と、を備えている。
【0040】
第1アンテナユニット11は、人工衛星30に向けて電波を送信可能であるとともに、人工衛星30から電波を受信可能である。また、第1アンテナユニット11は、仰角及び方位角を変更可能に構成されており、人工衛星30の方向へ向きを合わせることができる。なお、第1アンテナユニット11が無指向性のアンテナを備える場合は、仰角及び方位角を変更する機構は不要である。
【0041】
第1衛星通信装置12は、同じLANに接続された端末(後述のルータ15、PC16,17、電話機18等)と情報を授受する。また、第1衛星通信装置12は、これらの端末から受信した情報を第1アンテナユニット11が送信する電波(無線信号)によりWAN(ワイドエリアネットワーク)に送信したり、WANから受信した情報を該当する端末に送信したりする。また、第1衛星通信装置12は、NMEA及びLAN等の様々な用途のためのインタフェースを備えている。
【0042】
第2アンテナユニット13は、第1アンテナユニット11とは異なる人工衛星30に対して電波の送受信を行う。第2アンテナユニット13は、第1アンテナユニット11と同様に、仰角及び方位角を変更可能に構成されており、人工衛星30の方向へ向きを合わせることができる。なお、第2アンテナユニット13が無指向性のアンテナを備える場合は、仰角及び方位角を変更する機構は不要である。
【0043】
第2衛星通信装置14は、第2アンテナユニット13が送受信する電波を利用して衛星通信を行う。なお、第1衛星通信装置12と第2衛星通信装置14とは、利用する人工衛星30が異なるだけであり、内部の構成は同等である。
【0044】
また、船舶には、ルータ15と、PC16,17と、電話機18と、が設けられている。
【0045】
ルータ15は、第1衛星通信装置12及び第2衛星通信装置14と接続されるとともに、PC16,17及び電話機18と接続される。これにより、船内にLAN(ローカルエリアネットワーク)が形成される。また、ルータ15は、PC16,17及び電話機18を、衛星通信装置を介してインターネットに接続する。なお、ルータ15は、第1衛星通信装置12を利用するか第2衛星通信装置14を利用するかを選択可能であるが、この選択を行う制御については後述する。
【0046】
PC16,17及び電話機18は、ルータ15等によりインターネットに接続されることで、データの送受信及び通話(VoIPによる通話も含む)を実現することができる。
【0047】
また、陸上拠点には、船舶と同様に、人工衛星30と電波を送受信するためのアンテナユニット41と、それを制御する制御装置42と、PC43等が設置されている。
【0048】
なお、アンテナユニット41及び制御装置42は、必ずしもPC43の近傍に設置される必要はない。例えば、PC43が送信したデータが、インターネットを介して他の地点まで送信され、このデータが当該地点に設置されたアンテナユニット等を介して衛星へ送信される構成であっても良い。
【0049】
以上の構成により、衛星通信が実現できる。従って、陸上拠点にいる者は、PC43等を利用して、PC16,17と所定のデータの送受信することができる。
【0050】
次に、第1衛星通信装置12及び第2衛星通信装置14の詳細について説明する。なお、上述のように第1衛星通信装置12及び第2衛星通信装置14は同等の構成なので、以下では代表して第1衛星通信装置12について説明する。
【0051】
図1に示すように、第1衛星通信装置12は、通信制御部21と、検知部22と、記憶部23と、判断部24と、通知部25と、を備えている。
【0052】
通信制御部21は、第1アンテナユニット11が送受信する電波を解析等して衛星通信を行う。なお、通信制御部21は、現在の衛星通信回線の接続状態(オンライン又はオフライン)を記憶部23に記憶する。具体的には、第1衛星通信装置12の起動時に通信制御部21は衛星通信回線を接続することで、接続状態がオンラインとなる。その後、無線信号の不良等により衛星通信回線が切断されると、接続状態がオフラインとなる。
【0053】
検知部22は、第1アンテナユニット11が受信する電波の信号レベルを検知することができる。
【0054】
記憶部23は、上記の接続状態に加え、通信に関する権限を示す情報(権限情報)を記憶する。上述のように、衛星通信は従量課金制が採用されることが多いので、通信に規制がされることがある。本実施形態では、船内のLANを構成する端末に応じて通信が規制されている。
【0055】
図2には、この記憶部23が記憶する権限情報の例が示されている。
図2(a)では、端末を識別するために端末の(ローカル)IPアドレスを利用している。そして、IPアドレスと同じ行には、当該端末が通信を許可されているか禁止されているかが記述されている。また、
図2(b)は、端末のMACアドレスを利用して端末を識別している。なお、IPアドレス及びMACアドレス以外で端末を識別しても良い。
【0056】
また、端末ではなくユーザ毎に通信の許可/禁止を定めても良い。この場合、ユーザIDを設定し、端末を用いた通信を開始する際に、ユーザに対して、ユーザIDと必要に応じてパスワードとを入力させる。そして、通信が許可されているユーザIDであれば通信を開始する。更には、端末及びユーザではなく端末で使用されるアプリケーションに応じて通信の許可/禁止を定めても良い。
【0057】
判断部24は、所定の端末がインターネットに接続可能か否か(衛星を介してWANに接続できるか否か)を判断する。判断部24は、検知部22が検知した信号レベル、及び、記憶部23に記憶された情報に基づいて判断を行う。なお、衛星通信の可否を判断するための情報であって、WANを介した通信を行わず、LANを介した通信又は自機から取得可能な情報を、以下では「判断情報」と称する。また、判断部24は、該当する端末がWANに接続できることを示す通信可能信号を生成することができる。
【0058】
判断情報としては様々な情報を用いることができるが、本実施形態では、(1)人工衛星30から受信した電波の信号レベル、(2)衛星通信回線の接続状態、(3)通信に関する権限の3つを判断情報として用いている。上記の3つの項目には所定の基準が設けられており、3つ全てにおいて当該基準を満たした場合、判断部24は「端末がインターネットに接続可能」と判断する。
【0059】
「人工衛星30から受信した電波の信号レベル」は、上述のように検知部22によって検知される。本実施形態では、規格等に基づいて閾値を定めており、当該閾値を上回る信号レベルが検知されている場合、この項目の基準を満たすこととなる。
【0060】
「衛星通信回線の接続状態」は、通信制御部21によって記憶部23に記憶されている。衛星通信回線がオンラインである場合、この項目の基準を満たすこととなる。
【0061】
「衛星通信に関する権限」は、記憶部23の記憶内容を確認することにより判断可能である。具体的には、判断対象の端末のIPアドレス又はMACアドレス等を用いて記憶部23の記憶する権限情報と照合し、該当する端末についての通信の許可/禁止を確認する。該当する端末について通信が許可されていた場合、この項目の基準を満たすこととなる。なお、ユーザ毎に通信の許可/禁止が設定されている場合、ユーザが入力したユーザID等に基づいて同じ処理を行うことで判断可能である。
【0062】
判断部24は、以上の項目について基準を満たすか否か判断し、全ての項目について基準を満たす場合、該当する端末が通信可能と判断して通信可能信号を生成する。
【0063】
通知部25は、判断部24が通信可能と判断した端末に対して通知を行う。例えば、ある端末でPingコマンドが実行され、ICMPパケット(疎通確認信号)を送信してきた場合、通知部25は、このICMPパケットに対する応答を通知する。通知部は、例えば判断部24が生成した通信可能信号を該当する端末へ送信する。
【0064】
次に、通信が可能か否かについて判断して通知を行う実際の流れについて説明する。
図3は、従来及び本実施形態の衛星通信システムでのICMPパケットの流れを示すシーケンス図である。
【0065】
以下では、ルータ15が陸上の所定のICMPサーバへICMPパケットを送信した場合を考える。なお、ルータ15ではなくPC16,17等がルータ15を介してICMPパケットを送信した場合であっても同様である。
【0066】
初めに、
図3(a)を参照して、従来例における流れを説明する。ルータ15でPingコマンドが実行されることで送信されたICMPパケット(疎通確認信号)は、第1衛星通信装置12へ送られる。このICMPパケットは、人工衛星30を介して陸上のICMPサーバまで送られる。
【0067】
ICMPサーバは、このICMPパケットを受信した場合、ICMPパケットに対する応答信号をルータ15へ向けて送信する、この応答信号は、送信時と同様に、人工衛星30及び第1衛星通信装置12を介してルータ15まで送られる。これにより、ルータ15は、第1衛星通信装置12を利用してインターネットに接続できること、及び、ICMPサーバと通信するのに掛かる時間等を把握することができる。
【0068】
しかし、従量課金制の衛星通信を契約していた場合、このICMPパケットの送受信にも通信料金が掛かってしまう。
【0069】
この点本実施形態では、
図3(b)に示すように、第1衛星通信装置12(判断部24)は、ICMPパケット(疎通確認信号)を受信した場合、判断情報に基づいて当該端末の通信の可否を判断する。第1衛星通信装置12は、判断情報の3つの項目で全て基準を満たして通信が可能と判断した場合、ICMPパケットに対する応答信号(通信可能信号)をルータ15へ送信する。
【0070】
このように、第1衛星通信装置12は、擬似的にICMPサーバとして機能していると言うことができる。なお、本実施形態では、第1衛星通信装置12がICMPサーバと同じ挙動となるように、通信が可能な場合のみICMPパケットへ応答するが、通信が不能な場合に通信不能信号を端末へ送信することもできる。
【0071】
これにより、実際に通信を行うことなく(即ち通信料金を発生させることなく)、ICMPパケットに対応することができる。
【0072】
本実施形態では、船舶には2つの衛星通信装置が設けられている。第1衛星通信装置12はメインであり、通常はこれを利用して通信を行う。一方、第1衛星通信装置12による通信を行うことができない場合は、バックアップである第2衛星通信装置14を用いて通信を行う。以下、この処理を実現するためにルータ15が行う処理について説明する。
図4は、利用する衛星通信装置を選択するためにルータが行う処理を示すフローチャートである。
【0073】
ルータ15は、第1衛星通信装置12により通信が行えることを確認するために、定期的にICMPパケット(疎通確認信号)を送信するように構成されている。具体的には、ルータ15は、Pingコマンドを実行するタイミングになると(S101)、第1衛星通信装置12へICMPパケットを送信する(S102)。第1衛星通信装置12は、ICMPパケットを受信すると、上記のようにルータ15による通信が可能か否かを判断する。
【0074】
ルータ15は、第1衛星通信装置12からICMPパケットの応答があった場合は(S103)、第1衛星通信装置12による通信が可能であると判断して、S101の処理へ戻る。一方、ルータ15は、第1衛星通信装置12からICMPパケットの応答がなかった場合は(S103)、第2衛星通信装置14を利用して通信を行うように設定を切り替える(S104)。
【0075】
以上のように処理を行うことで、実際に通信を行うことなく通信の可否を判断し、必要に応じて衛星通信装置を切り替えつつ通信を行うことができる。
【0076】
なお、上記で示したフローチャートは一例であり、処理の追加、変更等を行うことができる。例えば、ルータ15が定期的に両方の衛星通信装置にPingを送信し、その結果に応じて利用する衛星通信装置を決定する構成であっても良い。
【0077】
また、ルータ15は以下のような処理を行っても良い。即ち、
図4に示すフローチャートでは、S103において応答を受信できないときに、即座に第2衛星通信装置14を利用して通信を行うように切り替えるが、例えば第2衛星通信装置14による通信が可能であることを確認した後に切替えを行っても良い。
【0078】
以下、衛星通信装置が3つで構成される衛星通信システムにおいて、この処理を行うフローチャートを説明する。
図5は、通信に用いる衛星通信装置を切り替える際に行う別の処理を示すフローチャートである。
図5のS201からS203の処理は、
図4のS101からS103の処理と同じである。しかし、
図5では、ルータは、第1衛星通信装置からの応答信号を受信できない場合に、第2衛星通信装置に対してICMPパケットを送信して(S204)通信の可否を判断する。更に、この第2衛星通信装置からの応答信号が受信できない場合は、第3衛星通信装置に対してICMPパケットを送信して(S207)通信の可否を判断する。また、
図5では、ルータは、全て(今回の例では3つ)の衛星通信装置で通信が不能である場合、エラーを通知する(S210)。
【0079】
また、上記では通信の可否を判断する方法としてPingを例に挙げて説明したが、ICMPを利用した他の通信にも本発明を適用することができる。例えば、ICMPパケットとして、終点到達不能と言うメッセージを送信することができるが、衛星通信装置側で到達不能なエラー要因が判別できる場合は、当該エラー要因とともにこのメッセージを送信することができる。これにより、端末に専用のソフトウェアを導入することなく様々な通信に対応できる。なお、端末に専用にソフトウェアを導入し、例えばPCのディスプレイに通信の可否を常時表示する構成にも本発明を適用できる。
【0080】
また、接続の可否を判断する本発明の構成は、使用する衛星通信装置の切替えだけでなく様々な用途に利用することができる。例えば、PC16を用いて衛星通信を利用した処理を行いエラーが発生した場合、本発明の方法によりインターネットへの接続の可否を判断することで、エラーの原因がネットワークにあるか否かを通信料金を掛けることなく把握できる。
【0081】
以上に説明したように、第1衛星通信装置12は、判断部24と、通知部25と、を備える。判断部24は、同一のLANに接続された端末が人工衛星30を介してWANに接続できるか否かを、衛星通信の可否を判断するための情報であって、WANを介した通信を行うことなく、LANを介した通信又は自機から取得可能な情報である判断情報に基づいて、判断する。通知部25は、WANに接続できると判断部24が判断したときに、該当する端末へ通知を行う。
【0082】
これにより、実際に通信を行うことなく、該当する端末の通信の可否を把握することができる。そのため、例えば従量課金制の通信契約を行っていた場合は、通信料金を抑えることができる。
【0083】
以上に本発明の好適な実施の形態を説明したが、上記の構成は例えば以下のように変更することができる。
【0084】
上記実施形態では、判断情報として3つの情報を説明したが、それ以外の情報を判断情報として用いても良い。
【0085】
上記では、1つの筐体内に通信制御部21、記憶部23、判断部24、及び通知部25を備える構成の衛星通信装置を開示したが、それぞれの構成要素は、物理的に離れて(LANケーブル等を介して)配置されていても良い。例えば、記憶部23の記憶内容を他のPC内に記憶させ、必要に応じて参照する構成が考えられる。この場合、衛星通信装置とPCとを合わせて「衛星通信装置」に該当するものとする。
【0086】
上記では、船舶と地上とで通信を行う構成を説明したが、人工衛星を介して通信を行う構成であれば良く、例えば、船舶同士、航空機と陸上拠点、又は孤島と陸上拠点で通信する場合等、様々な用途に適用することができる。
【符号の説明】
【0087】
1 衛星通信システム
12 第1衛星通信装置(衛星通信装置)
14 第2衛星通信装置(衛星通信装置)
15 ルータ(端末)
16,17 PC(端末)
18 電話機(端末)
21 通信制御部
22 検知部
23 記憶部
24 判断部
25 通知部