【実施例】
【0018】
図1には、インクジェットプリンタの既知の部分として、インクジェットプリントヘッド2を有する印刷ユニットのプリントバー1が概略的に示されている。プリントヘッド2は公知のようにインクチャネル(図示せず。以下では、ノズルとインクチャネルとのユニットを「ノズル」と呼ぶ)を具えたノズルを有している。ノズルは例えばDoD方式に従ってインク液滴を生成することができ、インク液滴を被印刷体3の方へ偏向させ、被印刷体3上に印刷ドットを形成する。
【0019】
プリントヘッド2は、印刷像を表現するデータストリームからプリントヘッド2の個々のノズルに対する駆動制御信号を導出するプリンタ制御部(図示せず)と協働する。データストリームからは、プリントヘッド2のノズルのうちで被印刷体3上に印刷ドットを形成すべきノズルを駆動制御する駆動制御信号が導出される。
【0020】
図2には、一例として、プリントヘッド支持体4上に配置されたプリントヘッド2のクリーニング装置が示されている。除去すべきインク液滴6が堆積したプリントヘッド2のノズル平面5は清掃されなければならない。クリーニング装置はクリーニング部材7を有している。クリーニング部材7は例えばゴムブレードなどのクリーニングブレードである。クリーニング部材7がノズル平面5に沿って矢印PF2の方向に動くにつれて、インク液滴6が拭き取られ、ノズル平面5が清掃される。ノズルの清掃は洗浄媒質を用いて、例えばプリントヘッド2のノズルを通って噴出する洗浄インクを用いて行われる。本発明の目標は、プリントヘッド2のノズルを洗浄して清掃するのに必要かつ十分な洗浄媒質の量「m」を求めることである。
【0021】
必要な洗浄媒質の量「m」を最小化するには、プリントヘッド2を清掃するのに必要な洗浄媒質の量「m」を制御するパラメータを決定しなければならない。その際に例えば、
図1に従って、印刷時にプリントヘッドAは完全に使用され、プリントヘッドBは一時的に使用され、プリントヘッドCは使用されないままであることも考慮しなければならない。さらに、プリンタにおいて、その時その時の使用されないプリントヘッド2が、プリントヘッド2のノズルの中のインクが乾燥しないように、保護キャップで覆われるか否かも考慮しなければならない。
【0022】
プリントヘッド2のノズルを清掃する洗浄媒質の量「m」を求めるには、少なくとも以下のパラメータを考慮しなければならない。
− プリンタのプリントヘッド2が保護キャップで覆われる場合には、プリントヘッド2の休止時間t
gekapselt、即ちプリントヘッド2が使用されない時間。これにさらに、プリンタがスイッチオフされている時間も含まれる。この場合も、保護キャップによってプリントヘッド2を停止位置で急速な乾燥から保護してよい。
− 印刷中、プリントヘッド2は部分的に使用されてもよいし(プリントヘッドB、
図1)、完全に使用されなくてもよい(プリントヘッドC、
図1)。プリントヘッド2が保護キャップで覆われないこの時間t
ungekapseltは、プリントヘッド2のノズルの比較的急速な乾燥をもたらす。それゆえ、洗浄媒質の量を順次実行される洗浄プロセスの間の時間間隔に依存してより速く増大させなければならない。
− プリントヘッド2において上記パラメータはすべてのノズルに同じく作用するので、部分的にしか使用されないプリントヘッド(プリントヘッドB、
図1)は、完全に使用されないプリントヘッド2(プリントヘッドC、
図1)と同様に扱われなければならない。
− さらに、ノズルプレートへのインク液滴の不所望な堆積のせいで、プリントヘッド2の印刷時間t
printも考慮しなければならない。
【0023】
それゆえ、洗浄媒質の量「m」を求めるには、以下のパラメータを考慮しなければならない:
【数1】
m=印刷ヘッド2のノズルの清掃に必要な洗浄媒質の量(洗浄量)。これは2つの洗浄プロセスの間の時間に依存する式(1)では、洗浄媒質としてインクが使用される。この時間はプリンタの操作者が選択できる。
t=洗浄プロセスから開始する時間
k=補正係数
【0024】
プリントヘッド2内でのインクの様々な急速乾燥の効果を考慮するために、補正係数k
gekapseltとk
ungekapseltが導入される。これらは使用されるプリンタで経験的に求められなければならず、また印刷時に使用されるインクに依存することがあり得る。
【0025】
近似的に、実施例として、1つのプリンタにおいて2つの異なるインクに関して測定によって求められた、洗浄量「m」の時間tに対する依存関係が、
図3の洗浄量曲線k
1、k
2によって示されている。洗浄量「m」はこの実施例ではe関数によってモデル化することができる(
図3)。e関数は検査されるインクに依存して異なる最大値m
max1、m
max2に達する。m
maxは、洗浄プロセスの時間間隔が比較的長い場合に到達される洗浄量の最大値である。より短い時間間隔を選べば、必要洗浄量「m」は
図3の曲線の形に従ってm
maxよりも小さくできる。
【0026】
図4によれば、1つのインクについて、プリントヘッド2が使用されていない時間の間保護キャップで覆われていたか否か(カプセル化されていたか否か)に応じて、洗浄量m
2=m
gekapseltに対しては洗浄量曲線k
3が、洗浄量m
1に対しては洗浄量曲線k
4が測定される。プリントヘッド2が印刷休止中にカプセル化されていない場合には、プリントヘッド2が印刷休止中にカプセル化されている場合に比べて、短い時間tの後に最大洗浄量m
maxに達する。
図4の曲線k
3、k
4の場合、実施例では、プリントヘッド2が保護キャップで覆われているか否かに応じて、線上媒質の量「m」に関して以下の関数(2)、(3)を仮定してよい。
【数2】
【0027】
2つの洗浄プロセスの間にプリントヘッド2はカプセル化されて例えば停止位置にあってもよいし、カプセル化されずに印刷位置にあってもよいので、洗浄量「m」を計算する際に、両方の量m
1、m
2を考慮しなければならない。
図5には、このケースがグラフで示されている。この例では、プリントヘッド2は期間Δt
1の間、即ち時点t=0から時点t=t
1までは、カプセル化されていない。つまり、プリントヘッド2はカプセル化されていない状態では比較的速く乾燥し、必要洗浄量m
2は急速に上昇する(洗浄量曲線k
4)。続いて、プリントヘッド2は期間Δt
2の間停留し、カプセル化された状態にある。もう一方の洗浄量「m
2」を計算するために、停留している時点におけるプリントヘッド2の状態が考慮されなければならない。そのために、カプセル化されたプリントヘッド2の状態に対応する(即ち、m
2=m
1が成り立つ)相当時間t
1*が求められる。次に曲線k
3の「m」が続く。続いて、プリントヘッド2がカプセル化されている期間Δt
2がt
1*に加算され、t
2が得られる。それゆえt
2は、プリントヘッド2がカプセル化されていない期間もカプセル化されている期間も含んだ相当時間である。この相当時間から、式(2)を用いて必要洗浄量が計算される。
【0028】
式(3)から、
図5のm
1は
と計算される。m
1はプリントヘッド2が保護キャップなしの場合の洗浄量である。
続いてこのm
1を用いて、プリントヘッド2がカプセル化されている相当時間t
2が次のように計算される。
t
2=Δt
2+t
1*であるから、
が導かれる。m
2は、
図5の例では、ある時は保護キャップで覆われており、またある時は覆われていないプリントヘッド2を清掃するのに必要とされる洗浄量である。
【0029】
この計算は状態変化が複数である場合にも同じように拡張される。状態変化とは、プリントヘッド2が保護キャップで覆われている時間又は覆われていない時間のことである。
図6のダイヤグラムはこの状態変化が複数である場合の計算の流れを示している:
計算の流れは、例えば時点t=0における洗浄プロセス(ステップS1)で始まり、洗浄プロセス(ステップSx)で終了する。これらの時点の間では、プリントヘッド2は一時的に保護キャップで覆われていたり、覆われていなかったりしてよい。例えば、
− S2:時点t
1の洗浄量m
1の計算。プリントヘッド2は例えばカプセル化されていない。
− S3:洗浄量m
2の計算。プリントヘッド2は期間Δt
2の間カプセル化されている。
− S4:洗浄量m
3の計算。プリントヘッド2は期間Δt
3の間再びカプセル化されてない、等。
【0030】
冒頭に記載したように、印刷動作中にも、プリントヘッド2のノズルプレート5に妨害となる残滓が生じるが、これは洗浄プロセスによって定期的に除去されなければならない。そのためには洗浄量の最小量m
minが必要不可欠である。印刷時に噴射されるインク液滴の量は、次に必要なプリントヘッド2の清掃の時点にとって、決定的である。プリントヘッド2は位置的には明らかに互いに離れて配置されていてよい多数のノズルを有しているので、ノズルごとのインク液滴を数えることが最も正確な評価方法である。目下のプロセスは非常にコストがかかるため、その代わりに近似的に印刷時間t
printを洗浄量m
minのパラメータとして考慮してもよい。所定の印刷時間t
printを超えたら、次の印刷開始の前にプリントヘッド2の清掃を実行すべきである。使用される洗浄量「m」として、洗浄量m
minとm
x(
図6による)のうちでその時の大きい方の洗浄量を使用してよい。
【0031】
プリントヘッド2を洗浄する最適な時点は印刷開始の直前である。それゆえ、プリンタは印刷開始の要求があると必要洗浄量「m」の計算を実行し、印刷開始前に洗浄プロセスを実行する。ただし、必ずしも各印刷開始の前に洗浄プロセスを行う必要はない。
【0032】
プリントヘッド2を清掃するための洗浄媒質の量「m」の配量は、
図7に従って行ってよい:
洗浄媒質の貯蔵タンク8とプリントヘッド2との間に弁9が配置されている。貯蔵タンク8には圧力空気源10によって圧力が掛けられ、それによって洗浄媒質は弁9が開くとプリントヘッド2へ供給される。プリントヘッド2に供給される洗浄媒質の量「m」は弁9の制御によって調節することができる。そのために、弁9を本発明の方法に従い圧力制御部によって制御してよい。
【0033】
本発明の方法を1つのプリントヘッド2に対して説明したが、本発明の方法は
図1に従って直ちに複数のプリントヘッドに転用できる。この場合には、各プリントヘッド2について、清掃に必要な洗浄媒質の量を求め、求められた洗浄媒質の量で各プリントヘッドを清掃する。そのために必要なことは、例えば
図1のプリントバーにおいて、各プリントヘッドについて必要洗浄量を求め、求められた洗浄量でこのプリントヘッドを他のプリントヘッド2とは別個に洗浄することができることである。