特許第6095370号(P6095370)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6095370インクジェットプリンタにおいて少なくとも1つのインクジェットプリントヘッドのノズルを洗浄媒質で清掃する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6095370
(24)【登録日】2017年2月24日
(45)【発行日】2017年3月15日
(54)【発明の名称】インクジェットプリンタにおいて少なくとも1つのインクジェットプリントヘッドのノズルを洗浄媒質で清掃する方法
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/165 20060101AFI20170306BHJP
【FI】
   B41J2/165 401
   B41J2/165 203
   B41J2/165 301
【請求項の数】7
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-2758(P2013-2758)
(22)【出願日】2013年1月10日
(65)【公開番号】特開2013-141831(P2013-141831A)
(43)【公開日】2013年7月22日
【審査請求日】2015年11月30日
(31)【優先権主張番号】10 2012 100 125.1
(32)【優先日】2012年1月10日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】513267899
【氏名又は名称】オーセ プリンティング システムズ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング ウント コンパニー コマンディートゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Oce Printing Systems GmbH & Co. KG
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100099483
【弁理士】
【氏名又は名称】久野 琢也
(72)【発明者】
【氏名】シュテファン ブシュマン
【審査官】 村田 顕一郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開平04−255361(JP,A)
【文献】 特開2007−118317(JP,A)
【文献】 特開2000−289229(JP,A)
【文献】 特開平11−320912(JP,A)
【文献】 特開2010−149504(JP,A)
【文献】 特開2004−090359(JP,A)
【文献】 特開平02−217256(JP,A)
【文献】 特開平07−144419(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01−2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクジェットプリンタにおいて少なくとも1つのインクプリントヘッドのノズルとインクチャネルを洗浄媒質で清掃する方法において、
下記のいずれの洗浄量がより大きな値を有するかに応じて、
前記インクジェットプリンタの印刷時間に依存して決定された洗浄量(mmin)から、又は、
印刷時に使用されるインクについて、前記インクプリントヘッド(2)の洗浄に必要な洗浄量(「m」)の、前記インクプリントヘッド(2)が前回洗浄された時点からの経過時間である経過時間(t)への依存性を表した洗浄量曲線(k)から導出された洗浄量(「m」)から、
洗浄プロセスのための洗浄媒質の洗浄量を求め、
当該洗浄量を前記インクプリントヘッド(2)の洗浄に使用し、
少なくとも1つのインクプリントヘッド(2)の印刷休止中に当該インクプリントヘッド(2)が保護キャップで覆われない場合には、保護キャップで覆われないインクプリントヘッド(2)用の洗浄量曲線(k4)を使用して必要洗浄量を求め、
2つの順次実行される洗浄プロセスの合間に少なくとも1つのインクプリントヘッド(2)が保護キャップによって一時的にしか覆われないケースでは、
前記インクプリントヘッド(2)のカプセル化されていない期間に関しては、前記カプセル化されないインクプリントヘッド(2)用の洗浄量曲線(k4)からの量を使用して、
前記インクプリントヘッド(2)のカプセル化された期間に関しては、前記カプセル化されるインクプリントヘッド(2)用の洗浄量曲線(k3)からの量を使用して、
必要洗浄量を求める、
ことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記洗浄量曲線(k)を前記インクジェットプリンタのプリンタ制御部にテーブルとして記憶する、
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記洗浄量曲線(k)を近似する数式を前記インクジェットプリンタのプリンタ制御部に記憶する、
請求項1に記載の方法。
【請求項4】
少なくとも1つのインクプリントヘッド(2)の印刷休止中に当該インクプリントヘッド(2)が保護キャップで覆われる場合には、保護キャップで覆われるインクプリントヘッド(2)用の洗浄量曲線(k3)を使用して必要洗浄量を求める、
請求項1から3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
印刷開始時に洗浄プロセスを実行する、
請求項1から4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記インクジェットプリンタの印刷中に印刷時間を決定し、次回の洗浄プロセスでは前記印刷時間に依存して決定された洗浄量(mmin)を使用する、
請求項1から5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
複数のインクプリントヘッド(2)を有するインクジェットプリンタにおいて、各インクプリントヘッド(2)について個別に洗浄量を求め、割り当てられた洗浄量で各インクプリントヘッド(2)を洗浄する、
請求項1から6のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェットプリンタにおいて、少なくとも1つのインクジェットプリントヘッドのノズルを洗浄媒質で清掃する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
被印刷体を、例えば枚葉紙又は例えば紙などの種々の材料から成る帯状の記録担体を1色又は多色印刷するためには、インクジェットプリンタを使用することができる。このようなインクジェットプリンタの構造は例えば特許文献1から公知である。ドロップオンデマンド(DoD)方式のインクジェットプリンタはインクチャネルを内蔵したノズルを有する1つ又は複数のプリントヘッドを有しており、ノズルのアクチュエータはプリンタ制御部による制御によってインク液滴を被印刷体の方向へ促し、インク液滴は被印刷体へと向けられ、被印刷体上に印刷像のための印刷ドットが形成される。アクチュエータはインク液滴を熱的(バブルジェット)又は圧電的に形成することができる。
【0003】
インクジェットプリンタでは、使用されるインクの物理化学的組成、例えばインクの粘度は、プリントヘッドに合わせられている。印刷負荷が低い場合には、印刷過程においてプリントヘッドのすべてのノズルがアクティベートされるのではなく、多くのノズルは静止時間(印刷休止)を有している。その結果、これらノズルのインクチャネル内のインクは動かない。この場合、ノズル開口部からの蒸発の作用のせいで、インクの粘度が変化する危険性がある。その結果、インクチャネル内のインクがもはや最適に動くことができず、ノズルから流出する可能性がある。極端なケースでは、インクチャネル内のインクが完全に干涸らびてインクチャネルを塞いでしまい、このノズルによる印刷がもはや不可能となってしまう。
【0004】
プリントヘッドのノズルの中のインクが印刷休止中に乾燥してしまうと、そのせいで、すべてのノズルを洗浄媒質によって、例えばインク又はクリーニング液によって所定の周期内に洗浄することが妨げられるという問題が生じる。この洗浄周期は印刷負荷に応じて調整することができる。
【0005】
特許文献2から、複数のプリントヘッドから成る印刷ユニットを有するインクジェットプリンタにおいて、プリントヘッドを保護キャップで密閉することでプリントヘッドのノズルの乾燥を防ぐことが公知である。この場合、クリーニングの際にノズルから放出されたインクは保護キャップが受け取る。保護キャップをプリントヘッドに取り付けるために、印刷ユニットはプリントヘッドと共に被印刷体から上方へと動かされ、保護キャップは印刷ユニットと被印刷体との間の空間に移動させられ、その時にプリントヘッドが洗浄される。保護キャップはバネ力によってプリントヘッドに向かって上方へと動かされ、プリントヘッドが覆われる。保護キャップユニットは印刷ユニットが再び印刷に使用されるまでこの位置に留まらなければならない。
【0006】
クリーニングの際、例えばインクなどの洗浄媒質は、超過圧又は負圧によってノズルとプリントヘッドのインクチャネルを通って押し出されるか又は吸い込まれる。この洗浄媒質は続いてワイピング手段(ブレード、ドクタ)によって、例えば1つ又は複数のゴムリップによって拭き取られる(ワイピングと呼ばれる)。このために、プリントヘッドがワイピング手段の上方へ、又はワイピング手段がプリントヘッドの上方へ動かされる。ワイピング手段に対するプリントヘッドの正確な位置決めは、ワイピング手段とプリントヘッドの一定のオーバーラップを保証するためには不可欠である。
【0007】
プリントヘッドのノズルを清掃するために洗浄媒質を使用する際、例えば以下の問題に注意しなければならない:
− ノズルの清掃に使用される洗浄媒質は通常再使用できず、損失と見なされる。それゆえ目標は、洗浄に使用される洗浄媒質の量をできるだけ少なくすることである。
− 必要な洗浄媒質の量はプリントヘッドにおいて印刷に使用されるインクの状態に依存する。プリントヘッドが長時間使用されなかった場合、インクは強く乾燥しており、ノズルを十分に洗浄するにはより多くの量の洗浄媒質が必要である。
− さらには、長時間の印刷動作後のプリントヘッドのノズルの清掃も必要である。印刷動作中にはつねに少量のインクミスト(微小液滴)が発生し、ノズルプレートに付着する。液滴はそこで問題を引き起こす可能性がある。このような液滴は一方ではインク液滴を偏向させるノズル開口部へと導かれる可能性がある。他方では、これらの液滴は乾燥して、次の清掃の際に妨害粒子としてノズル内に達する可能性がある。
【0008】
特許文献3及び特許文献4から、洗浄インクの消費を清掃前のプリンタの使用に、例えば印刷動作中又は印刷休止中のプリンタの使用に合わせる方法が公知である。特許文献4によれば、印刷休止時間が測定され、それに応じてパルス状の洗浄プロセスの回数が調整される。パルス状の洗浄プロセスの間は、プリントヘッドのノズルを通して洗浄インクが噴射される。特許文献3によっても同様に、印刷休止時間が測定され、印刷休止時間に応じてパルス状の洗浄プロセスの回数が決定される。また、洗浄プロセスの回数は印刷休止中のインクの特性にも依存する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】EP 0 788 882 B1
【特許文献2】US 6,578,945 B2
【特許文献3】DE 697 07 962 T2
【特許文献4】DE 693 11 397 T2
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の課題は、インクジェットプリンタにおいてプリントヘッドのノズルとインクチャネルを清掃する方法であって、プリントヘッドを清掃する際に使用される洗浄媒質の量を印刷休止の持続時間と印刷動作の他のパラメータを考慮して決定する方法を提供することである。前記のようなパラメータは、例えば印刷時に使用されるインクの特性であるか、又は、印刷休止中にプリントヘッドが保護キャップで覆われるのか覆われないのかを表すものであってよい。印刷動作中にインク液滴が除去しなければならないノズルプレート上に堆積する場合には、また別のパラメータが存在する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題は請求項1の特徴を具えた方法によって解決される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】5つのプリントヘッドを有する公知のプリントバーの基本図を示す。
図2】プリントヘッドのノズル平面のクリーニング装置の基本図を示す。
図3】順次実行される2つの洗浄プロセスの間の時間間隔に依存して様々なインクを使用した場合のプリントヘッドの洗浄プロセスの洗浄量をグラフ表示する。
図4】順次実行される2つの洗浄プロセスの間の時間間隔に依存して、ある1つのインクを使用した場合のプリントヘッドの洗浄量曲線をグラフ表示する。ここで、プリントヘッドは一方では一時的に保護キャップで覆われており、他方では覆われていない。
図5】順次実行される2つの洗浄プロセスの間の時間間隔に依存して、ある1つのインクを使用した場合のプリントヘッドの洗浄量曲線をグラフ表示する。必要洗浄量の計算を説明するために、プリントヘッドは一方では一時的に保護キャップで覆われており、他方では覆われていない。
図6】プリントヘッドの必要洗浄量の求め方を示す流れ図である。
図7】プリントヘッドごとに洗浄量を配量する装置を示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
プリントヘッドの洗浄に必要な洗浄媒質の量は以下のように求められる:
− プリンタにおいて、プリントヘッドに対して洗浄量曲線を決定する。この洗浄量曲線は、印刷時に使用されるインクに関して、プリントヘッドの洗浄プロセスから始めて、プリントヘッドの洗浄に必要な洗浄量が経過時間に、即ち洗浄サイクルに依存することを示す。
− 新しい洗浄プロセスを実行する前に、先行する洗浄プロセス以来の経過時間から、この時間に対応する洗浄量曲線からの洗浄量を求め、この洗浄量をプリントヘッドの洗浄に使用する。
【0014】
本発明の方法を説明するに当たって、以下の概念が使用される:
− インクチャネルを具えたノズルの清掃に必要かつ十分な洗浄媒質の量は必要洗浄量と呼ばれる。
− 洗浄媒質として、インク又はクリーニング液が使用できる。
− 洗浄プロセスの際、プリントヘッドのノズルは必要洗浄量で洗い流され、浄化される。
− 順次実行される2つの洗浄プロセスの間の時間間隔(洗浄サイクル)をプリンタの操作者が設定できる。
− 本方法は例えばテーブル又はソフトウェアとしてプリンタのプリンタ制御部内に記憶しておくことができる。
【0015】
本発明の更なる実施形態は従属請求項から明らかとなる。
【0016】
本発明の方法は下記の利点を有する:
− プリントヘッドのノズルとインクチャネルを洗浄するための洗浄媒質の量は、印刷休止の持続時間と上記パラメータとに基づいて決定される。これにより、使用される洗浄量を少なくすることができる。
− 求められた必要洗浄量の使用によりすべてのノズルが動作準備完了しているため、高い信頼性が達成される。
− 本方法はプリンタのハードウェアを変えずに実行可能である。
【0017】
本発明を図1〜7に基づいてより詳細に説明する。
【実施例】
【0018】
図1には、インクジェットプリンタの既知の部分として、インクジェットプリントヘッド2を有する印刷ユニットのプリントバー1が概略的に示されている。プリントヘッド2は公知のようにインクチャネル(図示せず。以下では、ノズルとインクチャネルとのユニットを「ノズル」と呼ぶ)を具えたノズルを有している。ノズルは例えばDoD方式に従ってインク液滴を生成することができ、インク液滴を被印刷体3の方へ偏向させ、被印刷体3上に印刷ドットを形成する。
【0019】
プリントヘッド2は、印刷像を表現するデータストリームからプリントヘッド2の個々のノズルに対する駆動制御信号を導出するプリンタ制御部(図示せず)と協働する。データストリームからは、プリントヘッド2のノズルのうちで被印刷体3上に印刷ドットを形成すべきノズルを駆動制御する駆動制御信号が導出される。
【0020】
図2には、一例として、プリントヘッド支持体4上に配置されたプリントヘッド2のクリーニング装置が示されている。除去すべきインク液滴6が堆積したプリントヘッド2のノズル平面5は清掃されなければならない。クリーニング装置はクリーニング部材7を有している。クリーニング部材7は例えばゴムブレードなどのクリーニングブレードである。クリーニング部材7がノズル平面5に沿って矢印PF2の方向に動くにつれて、インク液滴6が拭き取られ、ノズル平面5が清掃される。ノズルの清掃は洗浄媒質を用いて、例えばプリントヘッド2のノズルを通って噴出する洗浄インクを用いて行われる。本発明の目標は、プリントヘッド2のノズルを洗浄して清掃するのに必要かつ十分な洗浄媒質の量「m」を求めることである。
【0021】
必要な洗浄媒質の量「m」を最小化するには、プリントヘッド2を清掃するのに必要な洗浄媒質の量「m」を制御するパラメータを決定しなければならない。その際に例えば、図1に従って、印刷時にプリントヘッドAは完全に使用され、プリントヘッドBは一時的に使用され、プリントヘッドCは使用されないままであることも考慮しなければならない。さらに、プリンタにおいて、その時その時の使用されないプリントヘッド2が、プリントヘッド2のノズルの中のインクが乾燥しないように、保護キャップで覆われるか否かも考慮しなければならない。
【0022】
プリントヘッド2のノズルを清掃する洗浄媒質の量「m」を求めるには、少なくとも以下のパラメータを考慮しなければならない。
− プリンタのプリントヘッド2が保護キャップで覆われる場合には、プリントヘッド2の休止時間tgekapselt、即ちプリントヘッド2が使用されない時間。これにさらに、プリンタがスイッチオフされている時間も含まれる。この場合も、保護キャップによってプリントヘッド2を停止位置で急速な乾燥から保護してよい。
− 印刷中、プリントヘッド2は部分的に使用されてもよいし(プリントヘッドB、図1)、完全に使用されなくてもよい(プリントヘッドC、図1)。プリントヘッド2が保護キャップで覆われないこの時間tungekapseltは、プリントヘッド2のノズルの比較的急速な乾燥をもたらす。それゆえ、洗浄媒質の量を順次実行される洗浄プロセスの間の時間間隔に依存してより速く増大させなければならない。
− プリントヘッド2において上記パラメータはすべてのノズルに同じく作用するので、部分的にしか使用されないプリントヘッド(プリントヘッドB、図1)は、完全に使用されないプリントヘッド2(プリントヘッドC、図1)と同様に扱われなければならない。
− さらに、ノズルプレートへのインク液滴の不所望な堆積のせいで、プリントヘッド2の印刷時間tprintも考慮しなければならない。
【0023】
それゆえ、洗浄媒質の量「m」を求めるには、以下のパラメータを考慮しなければならない:
【数1】
m=印刷ヘッド2のノズルの清掃に必要な洗浄媒質の量(洗浄量)。これは2つの洗浄プロセスの間の時間に依存する式(1)では、洗浄媒質としてインクが使用される。この時間はプリンタの操作者が選択できる。
t=洗浄プロセスから開始する時間
k=補正係数
【0024】
プリントヘッド2内でのインクの様々な急速乾燥の効果を考慮するために、補正係数kgekapseltとkungekapseltが導入される。これらは使用されるプリンタで経験的に求められなければならず、また印刷時に使用されるインクに依存することがあり得る。
【0025】
近似的に、実施例として、1つのプリンタにおいて2つの異なるインクに関して測定によって求められた、洗浄量「m」の時間tに対する依存関係が、図3の洗浄量曲線k1、k2によって示されている。洗浄量「m」はこの実施例ではe関数によってモデル化することができる(図3)。e関数は検査されるインクに依存して異なる最大値mmax1、mmax2に達する。mmaxは、洗浄プロセスの時間間隔が比較的長い場合に到達される洗浄量の最大値である。より短い時間間隔を選べば、必要洗浄量「m」は図3の曲線の形に従ってmmaxよりも小さくできる。
【0026】
図4によれば、1つのインクについて、プリントヘッド2が使用されていない時間の間保護キャップで覆われていたか否か(カプセル化されていたか否か)に応じて、洗浄量m2=mgekapseltに対しては洗浄量曲線k3が、洗浄量m1に対しては洗浄量曲線k4が測定される。プリントヘッド2が印刷休止中にカプセル化されていない場合には、プリントヘッド2が印刷休止中にカプセル化されている場合に比べて、短い時間tの後に最大洗浄量mmaxに達する。図4の曲線k3、k4の場合、実施例では、プリントヘッド2が保護キャップで覆われているか否かに応じて、線上媒質の量「m」に関して以下の関数(2)、(3)を仮定してよい。
【数2】
【0027】
2つの洗浄プロセスの間にプリントヘッド2はカプセル化されて例えば停止位置にあってもよいし、カプセル化されずに印刷位置にあってもよいので、洗浄量「m」を計算する際に、両方の量m、m2を考慮しなければならない。図5には、このケースがグラフで示されている。この例では、プリントヘッド2は期間Δt1の間、即ち時点t=0から時点t=t1までは、カプセル化されていない。つまり、プリントヘッド2はカプセル化されていない状態では比較的速く乾燥し、必要洗浄量m2は急速に上昇する(洗浄量曲線k4)。続いて、プリントヘッド2は期間Δt2の間停留し、カプセル化された状態にある。もう一方の洗浄量「m2」を計算するために、停留している時点におけるプリントヘッド2の状態が考慮されなければならない。そのために、カプセル化されたプリントヘッド2の状態に対応する(即ち、m2=m1が成り立つ)相当時間t1*が求められる。次に曲線k3の「m」が続く。続いて、プリントヘッド2がカプセル化されている期間Δt2がt1*に加算され、t2が得られる。それゆえt2は、プリントヘッド2がカプセル化されていない期間もカプセル化されている期間も含んだ相当時間である。この相当時間から、式(2)を用いて必要洗浄量が計算される。
【0028】
式(3)から、図5のm1
と計算される。m1はプリントヘッド2が保護キャップなしの場合の洗浄量である。
続いてこのm1を用いて、プリントヘッド2がカプセル化されている相当時間t2が次のように計算される。
2=Δt2+t1*であるから、
が導かれる。m2は、図5の例では、ある時は保護キャップで覆われており、またある時は覆われていないプリントヘッド2を清掃するのに必要とされる洗浄量である。
【0029】
この計算は状態変化が複数である場合にも同じように拡張される。状態変化とは、プリントヘッド2が保護キャップで覆われている時間又は覆われていない時間のことである。図6のダイヤグラムはこの状態変化が複数である場合の計算の流れを示している:
計算の流れは、例えば時点t=0における洗浄プロセス(ステップS1)で始まり、洗浄プロセス(ステップSx)で終了する。これらの時点の間では、プリントヘッド2は一時的に保護キャップで覆われていたり、覆われていなかったりしてよい。例えば、
− S2:時点t1の洗浄量m1の計算。プリントヘッド2は例えばカプセル化されていない。
− S3:洗浄量m2の計算。プリントヘッド2は期間Δt2の間カプセル化されている。
− S4:洗浄量m3の計算。プリントヘッド2は期間Δt3の間再びカプセル化されてない、等。
【0030】
冒頭に記載したように、印刷動作中にも、プリントヘッド2のノズルプレート5に妨害となる残滓が生じるが、これは洗浄プロセスによって定期的に除去されなければならない。そのためには洗浄量の最小量mminが必要不可欠である。印刷時に噴射されるインク液滴の量は、次に必要なプリントヘッド2の清掃の時点にとって、決定的である。プリントヘッド2は位置的には明らかに互いに離れて配置されていてよい多数のノズルを有しているので、ノズルごとのインク液滴を数えることが最も正確な評価方法である。目下のプロセスは非常にコストがかかるため、その代わりに近似的に印刷時間tprintを洗浄量mminのパラメータとして考慮してもよい。所定の印刷時間tprintを超えたら、次の印刷開始の前にプリントヘッド2の清掃を実行すべきである。使用される洗浄量「m」として、洗浄量mminとmx図6による)のうちでその時の大きい方の洗浄量を使用してよい。
【0031】
プリントヘッド2を洗浄する最適な時点は印刷開始の直前である。それゆえ、プリンタは印刷開始の要求があると必要洗浄量「m」の計算を実行し、印刷開始前に洗浄プロセスを実行する。ただし、必ずしも各印刷開始の前に洗浄プロセスを行う必要はない。
【0032】
プリントヘッド2を清掃するための洗浄媒質の量「m」の配量は、図7に従って行ってよい:
洗浄媒質の貯蔵タンク8とプリントヘッド2との間に弁9が配置されている。貯蔵タンク8には圧力空気源10によって圧力が掛けられ、それによって洗浄媒質は弁9が開くとプリントヘッド2へ供給される。プリントヘッド2に供給される洗浄媒質の量「m」は弁9の制御によって調節することができる。そのために、弁9を本発明の方法に従い圧力制御部によって制御してよい。
【0033】
本発明の方法を1つのプリントヘッド2に対して説明したが、本発明の方法は図1に従って直ちに複数のプリントヘッドに転用できる。この場合には、各プリントヘッド2について、清掃に必要な洗浄媒質の量を求め、求められた洗浄媒質の量で各プリントヘッドを清掃する。そのために必要なことは、例えば図1のプリントバーにおいて、各プリントヘッドについて必要洗浄量を求め、求められた洗浄量でこのプリントヘッドを他のプリントヘッド2とは別個に洗浄することができることである。
【符号の説明】
【0034】
1 プリントバー
2 プリントヘッド
3 被印刷体
4 プリントヘッド支持体
5 ノズルプレート
6 インク液滴
7 クリーニングブレード
8 貯蔵タンク
9 弁
10 圧力空気源
m 洗浄媒質の量
PF 矢印
k 洗浄量曲線
t 時間
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7