(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
非消耗電極アーク溶接、消耗電極アーク溶接、プラズマアーク溶接等のアーク溶接において、溶接トーチの移動速度である溶接速度は、母材の板厚、継手形状、溶接法等が設定されるとその適正値が決まる。したがって、ロボット溶接等の自動溶接の場合には、溶接速度を適正値に設定すれば、溶接トーチは正確に設定通りの速度で移動することになる。
【0003】
他方、溶接作業者が溶接トーチを手で把持して行う手動溶接の場合には、溶接速度を適正値に正確に維持することができるかは各自の技量に左右されることになる。熟練した溶接作業者の場合には、永年の経験と技量によって溶接速度を適正値に維持して溶接することができる。しかし、熟練した溶接作業者でない場合には、溶接速度を適正値に維持して溶接することは難しい。
【0004】
特許文献1の発明では、溶接線と平行して移動する第1及び第2の検出器を設ける。第2の検出器は第1の検出器の所定距離後方を移動する。第1及び第2の検出器は、アークからの光又は熱を検出すると、警報を出力する。溶接作業者がアークを発生させて溶接トーチの移動を開始すると、第1及び第2の検出器も予め定めた溶接速度に対応する速度で移動を開始する。溶接トーチが第1の検出器と第2の検出器との間に位置している場合は、溶接トーチの移動速度が設定された溶接速度と略同一であることになる。溶接トーチの移動速度が速くなると、第1の検出器に近づくのでアークからの光又は熱を検出して第1の警報を発する。溶接作業者はこの第1の警報を受けて、移動速度が早いことを認識して遅くする。逆に、溶接トーチの移動速度が遅くなると、第2の検出器に近づくのでアークからの光又は熱を検出して第2の警報を発する。溶接作業者はこの第2の警報を受けて、移動速度が遅いことを認識して速くする。このようにして、特許文献1の発明では、溶接トーチの移動速度を適正範囲に維持することを支援している。
【0005】
特許文献2の発明では、ロボット溶接において、溶接トーチに加速度センサを設け、この加速度センサからの加速度信号を積分して速度波形を算出し、この速度波形を元にさらに積分して位置波形を算出し、この位置波形に基づいて溶接トーチの正確なウィービング波形を算出している。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。
【0019】
[実施の形態1]
溶接トーチに設けられた3軸加速度センサからの加速度信号から移動速度を算出する方法について、以下に説明する。x軸、y軸及びz軸からの加速度信号をそれぞれDx、Dy及びDzとする。これらの加速度信号を下式のように積分すると、各軸方向の速度Sx、Sy及びSzが算出される。
Sx=∫Dx・dt
Sy=∫Dy・dt
Sz=∫Dz・dt
これらの積分は、アークが点弧(溶接電流が通電)された時点から溶接が終了するまでの期間行われる。
【0020】
算出された各軸方向の速度Sx、Sy及びSzを下式のようにして合成して、溶接トーチの移動速度Stを算出する。
St=(Sx
2+Sy
2+Sz
2)
1/2 (1)式
したがって、この(1)式を使用すれば、各軸の加速度信号Dx〜Dzを入力として、溶接トーチの移動速度Stを算出することができる。
【0021】
図1は、本発明の実施の形態1に係るアーク溶接装置のブロック図である。同図は、アーク溶接装置が非消耗電極アーク溶接装置の場合であるが、消耗電極アーク溶接装置及びプラズマアーク溶接装置の場合も同様である。以下、同図を参照して各ブロックについて説明する。
【0022】
電流設定回路IRは、予め定めた電流設定信号Irを出力する。溶接電源PSは、一般的な定電流特性を有する非消耗電極アーク溶接用の溶接電源であり、後述する溶接開始信号On及び上記の電流設定信号Irを入力として、溶接開始信号OnがHighレベルになると電流設定信号Irによって設定された溶接電流Iwを出力する。溶接トーチ4の先端に装着されたタングステン等の電極1と母材2との間に溶接電流Iwが通電するアーク3が発生し、溶接電圧Vwが印加する。アークを点弧させるために、高周波高電圧が溶接電圧Vwに重畳されるが、この高周波高電圧発生回路については、図示は省略する。
【0023】
溶接トーチ4には、3軸の加速度センサDSが設けられている。この加速度センサDSは、x軸方向の加速度信号Dx、y軸方向の加速度信号Dy及びz軸方向の加速度信号Dzを出力する。これらの加速度信号Dx〜Dzは、それぞれの軸方向に加わる加速度を検出して出力する。
【0024】
トーチスイッチONは、溶接トーチ4に設けられており、溶接作業者がオンするとHighレベルになる溶接開始信号Onを上記の溶接電源PSに出力する。溶接電源PSは、この溶接開始信号OnがHighレベルになると起動される。溶接電流検出回路IDは、上記の溶接電流Iwを検出して、電流検出信号Idを出力する。通電判別回路CDは、この電流検出信号Idを入力として、この値が予め定めたしきい値以上になるとHighレベルとなる通電判別信号Cdを出力する。しきい値は、溶接電流Iwが通電していることを判別できるように1A程度に設定される。通電判別信号CdがHighレベルであるときは、アーク3が発生しているときである。
【0025】
移動速度算出回路STは、上記の各軸の加速度信号Dx〜Dz及び上記の通電判別信号Cdを入力として、通電判別信号CdがHighレベル(通電)に変化すると上述した(1)式に基づいて溶接トーチ4の移動速度信号Stを算出する。移動速度変化率算出回路DSTは、この移動速度信号Stを入力として、その変化率(微分値)を算出して、移動速度変化率信号Dstとして出力する。
【0026】
第3警報発生回路KH3は、上記の通電判別信号Cdを入力として、通電判別信号CdがHighレベル(通電)に変化した時点から予め定めた停止時間Tsが経過した時点で短時間Highレベルになる第3警報信号Kh3を出力する。溶接作業者は、アーク3が点弧して溶接電流Iwが通電を開始してから、適当な溶融池が形成されるまで溶接トーチ4を停止させる。この溶接トーチ4を停止させている時間が、上記の停止時間Tsに相当する。
【0027】
第2警報発生回路KH2は、上記の移動速度変化率信号Dst及び上記の通電判別信号Cdを入力として、移動速度変化率信号Dstの値が、通電判別信号CdがHighレベル(通電)に変化してから予め定めた第1基準値以上である最初の期間の長さが所定時間範囲外であるときはHighレベルとなる第2警報信号Kh2を出力する。この第1基準値は、溶接トーチ4が停止状態又は定速状態にあるか、加速状態又は減速状態にあるかを判別するためのしきい値である。上記の移動速度変化率信号Dstの値が、通電判別信号CdがHighレベル(通電)に変化してから第1基準値以上である最初の期間とは、アークが点弧して溶接トーチ4を停止している状態から定速状態へと移行する加速状態の期間を意味している。異常表示灯回路PLは、この第2警報信号Kh2を入力として、第2警報信号Kh2がHighレベルのときは異常表示灯を点灯させる。
【0028】
溶接速度設定回路SRは、適正な溶接速度を設定するための予め定めた溶接速度設定信号Srを出力する。第1警報発生回路KH1は、この溶接速度設定信号Sr、上記の移動速度信号St及び上記の移動速度変化率信号Dstを入力として、移動速度変化率信号Dstの値が予め定めた第2基準値以上の状態から未満の状態へと変化した時点以降の期間(定常状態)中において、移動速度信号Stの値が、溶接速度設定信号Srに基づいて設定される所定速度範囲の上限値を超えているときはその値が1となり、上記の所定速度範囲の下限値未満のときはその値が2となり、上記の所定速度範囲内のときはその値が0となる第1警報信号Kh1を出力する。この第2基準値は、基本的には上記の第1基準値と同一値で良い。
【0029】
サウンド出力回路SDは、上記の第3警報信号Kh3及び上記の第1警報信号Kh1を入力として、第3警報信号Kh3がHighレベルのとき、第1警報信号Kh1=1のとき又は第1警報信号Kh1=2のときは、それぞれ異なる周波数の音を鳴らすためのサウンドSdを出力する。サウンドSdの周波数を異なる値にしているのは、警報の種類を音によって区別できるようにするためである。
【0030】
上記の電流設定回路IR、上記の溶接電流検出回路ID、上記の通電判別回路CD、上記の移動速度算出回路ST、上記の移動速度変化率算出回路DST、上記の第3警報発生回路KH3、上記の第2警報発生回路KH2、上記の異常表示灯回路PL、上記の溶接速度設定回路SR、上記の第1警報発生回路KH1、上記のサウンド出力回路SDを、上記の溶接電源PSに内蔵しても良い。また、これらの回路を別の独立したサウンド発生器に内蔵しても良い。
【0031】
図2は、
図1で上述したアーク溶接装置の各信号のタイミングチャートである。同図(A)は溶接開始信号Onを示し、同図(B)は溶接電流Iwを示し、同図(C)は通電判別信号Cdを示し、同図(D)は移動速度信号Stを示し、同図(E)は移動速度変化率信号Dstを示し、同図(F)は第3警報信号Kh3を示し、同図(G)は第2警報信号Kh2を示し、同図(H)は第1警報信号Kh1を示し、同図(I)はサウンドSdを示す。以下、同図を参照して説明する。
【0032】
時刻t0において、溶接作業者がトーチスイッチOnをオンすると、同図(A)に示すように、溶接開始信号OnがHighレベルに変化する。これに応動して、
図1の溶接電源PSが起動されて、電極1と母材2との間に無負荷電圧値の溶接電圧Vwが印加し、アーク3を点弧するための高周波高電圧が溶接電圧Vwに重畳する。溶接トーチ4は、時刻t2までは停止した状態にある。かつ、電極1と母材2との距離(トーチ高さ)は、時刻t0から溶接が終了するまで適正値に維持されている。
【0033】
時刻t1において、アーク3が点弧すると、同図(B)に示すように、
図1の電流設定信号Irによって設定された値の溶接電流Iwが通電を開始する。これに応動して、同図(C)に示すように、通電判別信号CdがHighレベルに変化する。
【0034】
通電判別信号CdがHighレベルに変化した時刻t1から予め定めた停止時間Tsが経過した時刻t2において、同図(F)に示すように、第3警報信号Kh3が短時間Highレベルになる。これに応動して、同図(I)に示すように、サウンドSdが短時間出力されて、例えば「ピー」という警報音が短く鳴る。溶接作業者は、この警報音を聴くと、溶接方向への溶接トーチ4の移動を開始する。これに応動して、同図(D)に示すように、移動速度信号Stは、時刻t2から次第に速くなり、時刻t3において定速状態のSt1に収束し、時刻t4までこの状態が続く。同図(E)に示すように、移動速度変化率信号Dstは、時刻t2までは0であり、時刻t2から曲線状に大きくなり、時刻t2〜t3の中間時点でピーク値となり、その後は曲線状に小さくなり、時刻t3において0に戻る。
【0035】
図1の第2警報発生回路KH2は、移動速度変化率信号Dstが0よりも少し大きな値である第1基準値以上となる過渡期間(略時刻t2〜t3の期間)の時間長さを検出し、この時間長さが所定時間範囲内にあるかを判別する。この過渡期間は、移動速度信号Stが変化している期間であり、溶接トーチ4の移動を開始してから定速状態に至るまでの過渡期間となる。同図では、この過渡期間の時間長さが所定時間範囲よりも短くて、所定時間範囲外にある場合とする。このために、時刻t3において、同図(G)に示すように、第2警報信号Kh2がHighレベルに変化して、その状態を保持する。第2警報信号Kh2がHighレベルに変化すると、
図1の異常表示灯PLが点灯する。上述した第2警報発生回路KH2は、溶接トーチ4の移動を開始してから定速状態に至るまでの過渡期間が適正であるかを判別していることになる。この過渡期間が適正範囲(所定時間範囲)よりも短くても長くても、溶接品質が悪くなるおそれがある。したがって、過渡期間が適正範囲外にあるときは異常表示灯を点灯させる等の警報を発することで、溶接作業者がこの判別結果を認識できるようにしている。これにより、溶接作業者は、次の溶接において、この判別結果を活かすことができる。上記の所定時間範囲は、溶接品質が悪くならない過渡期間の時間長さとして設定される。
【0036】
図1の第1警報発生回路KH1は、同図(E)に示す移動速度変化率信号Dstの値が0よりも少し大きな値である第2基準値(第1基準値と同一値でも良い)よりも大きな値から小さな値へと下降した時点(略時刻t3)以降の期間を定常状態であると判別する。また、時刻t1においてアーク3が点弧してからの経過時間が予め定めた基準時間に達した以降の期間を定常状態として判別しても良い。すなわち、同図(D)に示す移動速度信号Stの値が過渡期間を経て定速状態に収束した状態を定常状態として判別する。同図では、時刻t3〜t4の定常状態における移動速度信号Stの値はSt1となっている。そして、第1警報発生回路KH1は、この移動速度St1が所定速度範囲内にあるかを判別する。すなわち、第1警報発生回路KH1は、移動速度St1が所定速度範囲の上限値よりも速いときは1となる第1警報信号Kh1を出力し、下限値よりも遅いときは2となる第1警報信号Kh1を出力する。同図では、移動速度St1が所定速度範囲の上限値よりも速い場合とする。このために、同図(H)に示すように、第1警報信号Kh1は、時刻t3〜t5の期間中は1(Highレベルとして表示)となる。これに応動して、同図(I)に示すように、サウンド信号Sdが時刻t3〜t5の期間中出力されて、これに対応した周波数の音が鳴る。
【0037】
溶接作業者は、この警報音を聴いて、溶接トーチ4の移動速度St1が所定速度範囲の上限値よりも速いことを認識する。そこで、溶接作業者は、時刻t4から溶接トーチ4の移動速度が遅くなるように操作する。この操作によって、同図(D)に示すように、移動速度信号Stは、時刻t4から次第に遅くなり、時刻t5で定速状態になり、それ以降はその速度を保持する。この時刻t5以降の定速状態における移動速度をSt2とする。この移動速度St2は所定速度範囲内にあるので、同図(H)に示すように、第1警報信号Kh1は時刻t5において0(Lowレベル)に変化する。これに応動して、同図(I)に示すように、サウンドSdの出力は時刻t5において停止し、警報音も停止する。このように、溶接作業者は、第1警報信号Kh1による警報音の種類(周波数)にガイドされて、所定速度範囲内に収まるように溶接トーチ4の移動速度を操作することができる。同図(E)に示すように、移動速度変化率信号Dstは、時刻t4〜t5の期間中は移動速度の減速に伴って負の値のピーク値を示す正弦波の半周期波形となる。この波形によっては何らの処理も行われない。
【0038】
上記の所定速度範囲は、母材の板厚、継手形状、溶接法等によって定まる適正な溶接速度設定信号Srの値を中心値として許容できる変動範囲を加味して設定される。例えば、溶接速度設定信号Srの値が50cm/minであるときに、所定速度範囲を50±5の範囲として設定する。
【0039】
整理すると、定常状態における移動速度信号Stの値が、所定速度範囲の上限値よりも速い場合、所定速度範囲内にある場合、所定速度範囲の下限値よりも遅い場合の3つの場合を判別する。そして、所定速度範囲よりも速い場合と下限値よりも遅い場合とでは異なる周波数の警報音を鳴らす。溶接作業者は、この警報音の種類によって移動速度が適正範囲にあるかを認識することができる。
【0040】
次に、上述した実施の形態に係る発明の作用効果について説明する。
(1)溶接作業者が、溶接開始位置で溶接トーチを停止させた状態で、トーチスイッチをオンすると、アークが点弧する。このアークの点弧を溶接電流の通電で判別し、判別から予め定めた停止時間Tsが経過すると、第3警報信号Kh3によって警報音が鳴る。溶接作業者はこの警報音を聴くと、溶接トーチの溶接方向への移動を開始する。これにより、アークが点弧されて溶融池の形成状態が適正状態になった時点で、溶接トーチの移動を開始することができるので、アークスタート部の溶接品質が向上する。アークが点弧されて溶融池の形成状態が適正状態になった時点を、上記の停止時間Tsで予め設定しておく。
【0041】
(2)溶接作業者は、溶接トーチの移動を開始して、定速状態を保持する。この溶接トーチの移動開始から定速状態に至るまでの過渡期間中は、移動速度は0から定速値まで加速される。この過渡期間が短くても、長くても、溶接品質は悪くなる。つまり、この過渡期間には適正範囲(所定時間範囲)が存在する。そこで、この過渡期間を検出して、この過渡期間の時間長さが適正範囲外にあるときは、第2警報信号Kh2によって警報を発するようにしている。これにより、溶接作業者は、過渡期間が適正範囲であったかを認識することができるので、溶接品質の向上に活かすことができる。
【0042】
(3)溶接作業者は、溶接トーチの移動速度を定速値(溶接速度)に保持する。この溶接速度が母材の板厚、継手形状、溶接法等によってさだまる適正範囲(所定速度範囲)内にあるかを判別する。そして、この溶接速度が適正範囲よりも速い場合又は遅い場合には、第1警報信号Kh1によって警報音を鳴らす。この警報音は、溶接速度が適正範囲よりも速い場合と、遅い場合とで、異なる周波数の音とする。これにより、溶接作業者は、溶接トーチの移動速度(溶接速度)が適正範囲よりも速いのか、適正範囲内にあるのか、適正範囲よりも遅いかを認識することができる。このために、溶接作業者は、この警報音にガイドされて、溶接トーチの移動速度を適正範囲に操作することができ、良好な溶接品質を得ることができる。
【0043】
上述した実施の形態1によれば、溶接トーチに設けられた3軸加速度センサと、アークが点弧されると3軸加速度センサからの各軸の加速度信号を積分しこれらの積分信号を合成して溶接トーチの移動速度信号を算出する移動速度算出部と、定常状態における移動速度信号の値が所定速度範囲外にあるときは警報を発生させる警報発生部とを備える。これにより、溶接トーチの移動速度が所定速度範囲外にあるときは、警報音等の警報が発せられる。溶接作業者はこの警報にガイドされて、溶接トーチの移動速度を上記速度範囲に操作することができる。また、警報を発するようにするために、溶接前の準備及び溶接中に追加される作業はないので、生産効率が低下することもない。したがって、本実施の形態では、手動のアーク溶接において、生産効率を低下させることなく、溶接トーチの移動速度を適正範囲に維持することを支援することができる。
【0044】
上記においては、第1警報信号Kh1及び第3警報信号Kh3による警報を、音によって行う場合を説明したが、溶接トーチをバイブレーションさせるようにしても良い。また、表示灯と併用して警報するようにしても良い。また、上記においては、第2警報信号Kh2による警報を、異常表示灯を点灯させる場合を説明したが、音声によって警報するようにしても良い。
【0045】
[実施の形態2]
実施の形態2に係る発明は、定常状態における移動速度信号の値に応じて溶接電流の値を変化させるものである。
【0046】
図3は、本発明の実施の形態2に係るアーク溶接装置のブロック図である。同図は、アーク溶接装置が非消耗電極アーク溶接装置の場合である。同図は、上述した
図1と対応しており、同一ブロックには同一符号を付して、それらの説明は省略する。同図は、
図1に電流制御設定回路ICRを追加したものである。以下、この異なるブロックについて、同図を参照して説明する。
【0047】
電流制御設定回路ICRは、移動速度信号St、溶接速度設定信号Sr及び電流設定信号Irを入力として、定常状態中において、予め定めた関数によって電流制御設定信号Icrを算出して出力する。この電流制御設定信号Icrは、電流設定信号Irの代わりに溶接電源PSに入力されて、溶接電流Iwの値を設定する。上記の関数は、例えば、Icr=Ir×(St/Sr)である。この関数によれば、移動速度信号Stが溶接速度設定信号Srよりも速くなると、電流制御設定信号Icrは電流設定信号Irよりも大きくなる。逆に、移動速度信号Stが溶接速度設定信号Srよりも遅くなると、電流制御設定信号Icrは電流設定信号Irよりも小さくなる。これにより、移動速度が速くなると溶接電流Iwの値を大きくすることで溶接ビードの幅が細くなることを抑制し、移動速度が遅くなると溶接電流Iwの値を小さくすることで溶接ビードの幅が太くなることを抑制している。
【0048】
図4は、
図3で上述したアーク溶接装置の各信号のタイミングチャートである。同図(A)は溶接開始信号Onを示し、同図(B)は溶接電流Iwを示し、同図(C)は通電判別信号Cdを示し、同図(D)は移動速度信号Stを示し、同図(E)は移動速度変化率信号Dstを示し、同図(F)は第3警報信号Kh3を示し、同図(G)は第2警報信号Kh2を示し、同図(H)は第1警報信号Kh1を示し、同図(I)はサウンドSdを示す。同図は
図2と対応しており、同図(B)に示す溶接電流Iw以外の信号の波形は同一である。以下、同図を参照して、溶接電流Iwの波形を中心にして説明する。
【0049】
時刻t1において、アーク3が点弧すると、同図(B)に示すように、
図3の電流設定信号Irによって設定された値の溶接電流Iwが通電を開始する。そして、時刻t1〜t2の停止時間Ts及び時刻t2〜t3の溶接トーチ4の移動を開始してから定速状態に至るまでの過渡期間中は、溶接電流Iwはこの値を維持する。
【0050】
時刻t3以降の期間が定常状態の期間となる。同図(D)に示すように、移動速度信号Stは、時刻t3〜t4の期間中はSt1となり、時刻t4から次第に遅くなり、時刻t5以降はSt2となる。ここで、St1は
図3の溶接速度設定信号Srよりも早い速度であり、St2はSrと略等しい速度である。このために、
図3の電流制御設定回路ICRによって、時刻t3〜t4の期間中の電流制御設定信号Icrは電流設定信号Irよりも大きな値となり、時刻t5以降の期間中の電流制御設定信号Icrは電流設定信号Irと略等しい値となる。この結果、同図(B)に示すように、溶接電流Iwは、時刻t3において増加して大きくなり、時刻t4までその値を維持する。そして、溶接電流Iwは、時刻t4〜t5の期間中は次第に減少し、時刻t5以降の期間中は電流設定信号Irによって設定された値になる。
【0051】
上述した実施の形態2によれば、定常状態における移動速度信号の値に応じて溶接電流の値を変化させる電流制御設定部を備えている。これにより、移動速度が設定値よりも速くなると溶接電流Iwの値を大きくすることで溶接ビードの幅が細くなることを抑制し、移動速度が設定値よりも遅くなると溶接電流Iwの値を小さくすることで溶接ビードの幅が太くなることを抑制している。
【0052】
上述した実施の形態2は、アーク溶接装置が非消耗電極アーク溶接装置の場合であるが、プラズマアーク溶接装置の場合も同様である。また、アーク溶接装置が消耗電極アーク溶接装置の場合には、電流制御設定信号Icrによって溶接ワイヤの送給速度を変化させることで溶接電流Iwの値を変化させる。