特許第6095387号(P6095387)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6095387
(24)【登録日】2017年2月24日
(45)【発行日】2017年3月15日
(54)【発明の名称】ハイブリッド車両用駆動装置
(51)【国際特許分類】
   B60K 6/547 20071001AFI20170306BHJP
   B60K 6/48 20071001ALI20170306BHJP
   B60L 11/14 20060101ALI20170306BHJP
   B60W 10/02 20060101ALI20170306BHJP
   B60W 10/04 20060101ALI20170306BHJP
   B60W 10/06 20060101ALI20170306BHJP
   B60W 20/00 20160101ALI20170306BHJP
   B60W 20/40 20160101ALI20170306BHJP
【FI】
   B60K6/547ZHV
   B60K6/48
   B60L11/14
   B60W10/00 102
   B60W10/02 900
   B60W10/06 900
   B60W20/00 900
   B60W20/40
【請求項の数】4
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2013-17412(P2013-17412)
(22)【出願日】2013年1月31日
(65)【公開番号】特開2014-148228(P2014-148228A)
(43)【公開日】2014年8月21日
【審査請求日】2015年11月2日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】アイシン精機株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】592058315
【氏名又は名称】アイシン・エーアイ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100089082
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 脩
(72)【発明者】
【氏名】加藤 浩美
(72)【発明者】
【氏名】寺川 智充
(72)【発明者】
【氏名】堀部 和久
(72)【発明者】
【氏名】北村 雄一郎
(72)【発明者】
【氏名】青木 賢司
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 良英
(72)【発明者】
【氏名】小林 和貴
(72)【発明者】
【氏名】青山 義幸
【審査官】 有賀 信
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−017099(JP,A)
【文献】 特開2002−250436(JP,A)
【文献】 特開平11−069509(JP,A)
【文献】 特開2000−314474(JP,A)
【文献】 特開2010−083351(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0167956(US,A1)
【文献】 特開2011−073483(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 6/20─ 6/547
B60W 10/00─20/50
F16H 59/00─61/12
F16H 61/16─61/24
F16H 61/66─61/70
F16H 63/40─63/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動輪に駆動力を付与するエンジンと、
前記エンジンと前記駆動輪との間に設けられ、前記駆動輪に駆動力を付与するモータと、
前記エンジンと前記モータとの間に設けられ、入力軸と前記モータと連動して回転する出力軸とを有し、前記入力軸の回転速度を前記出力軸の回転速度で除した変速比がそれぞれ異なる複数の変速段を選択的に切り替えて変速を実行する自動変速機と、
前記エンジンと前記自動変速機との間に設けられ、前記エンジンに回転連結された入力部材と、前記入力軸に回転連結された出力部材とを有し、前記入力部材と前記出力部材を接続又は切断するフロントクラッチと、
前記入力軸の回転速度を検出する入力軸回転速度センサと、
前記モータのみで前記駆動輪を駆動する電動走行モードと、前記モータ及び前記エンジンの両方で前記駆動輪を駆動するスプリット走行モードとのいずれかのモードを判断するモード判断部と、
前記モード判断部の判断によって、前記スプリット走行モードから前記電動走行モードに移行する場合に、前記自動変速機を前記入力軸が前記出力軸に対して相対回転可能なニュートラル状態とする電動走行モード移行部と、
前記モード判断部の判断によって、前記電動走行モードから前記スプリット走行モードに移行する場合に、前記自動変速機において形成される前記変速段における前記入力軸の回転速度である目標入力軸回転速度を演算し、前記入力軸の回転速度が前記目標入力軸回転速度となるように前記フロントクラッチを接続した状態で前記エンジンを制御して、前記エンジンによって前記入力軸の回転速度を上昇させ、前記入力軸回転速度センサによって検出された前記入力軸の回転速度が前記目標入力軸回転速度から規定回転速度を減算した回転速度よりも速くなったときに、前記フロントクラッチを切断して、前記自動変速機の前記変速段を形成し、前記フロントクラッチを接続するスプリット走行モード移行部と、を有するハイブリッド車両用駆動装置。
【請求項2】
前記スプリット走行モード移行部は、前記フロントクラッチのクラッチトルクを、前記ニュートラル状態である前記自動変速機の前記入力軸の回転が前記エンジンによって引き上げるのに必要な前記クラッチトルクとなるように低下させた半クラッチ状態で、前記エンジンによって前記入力軸の回転速度を上昇させ、前記変速段を形成する際に前記フロントクラッチを切断する請求項1記載のハイブリッド車両用駆動装置
【請求項3】
前記電動走行モード移行部は、前記スプリット走行モードから前記電動走行モードに移行する場合に、前記フロントクラッチを接続状態にする請求項1又は請求項に記載のハイブリッド車両用駆動装置。
【請求項4】
前記電動走行モード移行部は、前記フロントクラッチを切断した後に、前記自動変速機を前記ニュートラル状態にし、前記フロントクラッチを接続する請求項3に記載のハイブリッド車両用駆動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車輪がエンジンとモータによって駆動されるハイブリッド車両用の駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車輪がエンジンとモータによって駆動されるハイブリッド車両用の駆動装置に関する従来技術がある(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に示されるハイブリッド車両用の駆動装置は、エンジン、フロントクラッチ、自動変速機、モータが直列に接続され、エンジンとモータとを併用した車両の走行を可能にしている。
【0003】
特許文献1に示される駆動装置においては、モータの駆動力のみで車両が走行する電動走行モードでは、フロントクラッチを切断することにより、エンジンのフリクションロスの発生を防止する技術が開示されている。また、当該駆動装置では、エンジン及びモータの駆動力で車両が走行するスプリット走行時には、フロントクラッチを接続している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−73483号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述の電動走行モードにおいては、自動変速装置において、変速段が形成されているため、多数のギヤが噛み合っていることによるノイズが発生してしまう。
【0006】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、電動走行モード時に自動変速機が発生するノイズを低減することができるハイブリッド車両用駆動装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決するためになされた本発明は、駆動輪に駆動力を付与するエンジンと、前記エンジンと前記駆動輪との間に設けられ、前記駆動輪に駆動力を付与するモータと、前記エンジンと前記モータとの間に設けられ、入力軸と前記モータと連動して回転する出力軸とを有し、前記入力軸の回転速度を前記出力軸の回転速度で除した変速比がそれぞれ異なる複数の変速段を選択的に切り替えて変速を実行する自動変速機と、前記エンジンと前記自動変速機との間に設けられ、前記エンジンに回転連結された入力部材と、前記入力軸に回転連結された出力部材とを有し、前記入力部材と前記出力部材を接続又は切断するフロントクラッチと、前記入力軸の回転速度を検出する入力軸回転速度センサと、前記モータのみで前記駆動輪を駆動する電動走行モードと、前記モータ及び前記エンジンの両方で前記駆動輪を駆動するスプリット走行モードとのいずれかのモードを判断するモード判断部と、前記モード判断部の判断によって、前記スプリット走行モードから前記電動走行モードに移行する場合に、前記自動変速機を前記入力軸が前記出力軸に対して相対回転可能なニュートラル状態とする電動走行モード移行部と、前記モード判断部の判断によって、前記電動走行モードから前記スプリット走行モードに移行する場合に、前記自動変速機において形成される前記変速段における前記入力軸の回転速度である目標入力軸回転速度を演算し、前記入力軸の回転速度が前記目標入力軸回転速度となるように前記フロントクラッチを接続した状態で前記エンジンを制御して、前記エンジンによって前記入力軸の回転速度を上昇させ、前記入力軸回転速度センサによって検出された前記入力軸の回転速度が前記目標入力軸回転速度から規定回転速度を減算した回転速度よりも速くなったときに、前記フロントクラッチを切断して、前記自動変速機の前記変速段を形成し、前記フロントクラッチを接続するスプリット走行モード移行部と、を有する。
【0008】
なお、前記スプリット走行モード移行部は、前記フロントクラッチのクラッチトルクを、前記ニュートラル状態である前記自動変速機の前記入力軸の回転が前記エンジンによって引き上げるのに必要な前記クラッチトルクとなるように低下させた半クラッチ状態で、前記エンジンによって前記入力軸の回転速度を上昇させ、前記変速段を形成する際に前記フロントクラッチを切断することが好ましい。
【0009】
また、前記電動走行モード移行部は、前記スプリット走行モードから前記電動走行モードに移行する場合に、前記フロントクラッチを接続状態にすることが好ましい。
【0010】
また、前記電動走行モード移行部は、前記フロントクラッチを切断した後に、前記自動変速機を前記ニュートラル状態にし、前記フロントクラッチを接続することが好ましい。

【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、電動走行モード移行部は、スプリット走行モードから電動走行モードに移行する場合に、自動変速機を入力軸が出力軸に対して相対回転可能なニュートラル状態とする。
【0012】
これにより、ハイブリッド車両が走行して、出力軸が回転したとしても、入力軸及び入力軸と連動して回転するギヤが回転しない。これにより、電動走行モード時に自動変速機が発生するノイズを低減することができる。また、多数のギヤが噛み合って回転することに起因する機械的損失の発生を防止することができるので、電力の無駄な消費を防止することができる。
【0013】
また、エンジンが回転しないので、エンジンフリクションロスの発生を防止することができる。更に、入力軸と連動して回転する機械要素が回転しないので、モータジェネレータに作用する慣性モーメントを低減することができる。
【0014】
また、スプリット走行モード移行部は、電動走行モードからスプリット走行モードに移行する場合に、フロントクラッチを接続した状態で、エンジンによって入力軸の回転速度を上昇させたうえで、フロントクラッチを切断して、自動変速機の変速段を形成し、フロントクラッチを接続する。
【0015】
これにより、電動走行モード時に、自動変速機をニュートラル状態としていたとしても、変速段を形成して、エンジンの駆動力を駆動輪に伝達させることができる。また、エンジンによって入力軸の回転速度を上昇させたうえで、自動変速機の変速段を形成するの、自動変速機においての同期時間を短縮させることができ、迅速に変速段を形成することができ、迅速にエンジンの駆動力を駆動輪に伝達させることができる。
【0016】
また、スプリット走行モード移行部は、形成される変速段における入力軸の回転速度である目標入力軸回転速度を演算し、入力軸の回転速度が目標入力軸回転速度となるようにエンジンを制御する。
【0017】
これにより、自動変速機において変速段を形成する際の同期を確実に行うことができ、迅速に変速段を形成することができ、迅速にエンジンの駆動力を駆動輪に伝達させることができる。
【0018】
また、スプリット走行モード移行部は、フロントクラッチを半クラッチ状態としてエンジンによって入力軸の回転速度を上昇させ、変速段を形成する際にフロントクラッチを切断する。このように、フロントクラッチを半クラッチ状態としているので、変速段を形成する際に、迅速にフロントクラッチを切断することができる。このため、迅速に変速段を形成することができ、迅速にエンジンの駆動力を駆動輪に伝達させることができる。
【0019】
また、電動走行モード移行部は、スプリット走行モードから電動走行モードに移行する場合に、フロントクラッチを接続状態にする。
【0020】
これにより、フロントクラッチが切断状態に維持されて作動油が密閉状態となることを防止することができる。このため、作動油が密閉状態となることに起因する、作動油の熱膨張や熱収縮による影響を排除することができ、フロントクラッチにおいて正規にクラッチトルクを発生させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の一実施形態によるハイブリッド車両用駆動装置が搭載されたハイブリッド車両の説明図である。
図2】アクチュエータストロークとクラッチトルクとの関係を示したクラッチトルクマップである。
図3】自動変速機のスケルトン図である。
図4】選択機構の軸方向断面図である。
図5】横軸を車速V、縦軸をアクセル開度Acとしたグラフであり、自動変速機の変速線の説明図である。
図6】「電動走行モード」から「スプリット走行モード」に移行する場合における、経過時間と、走行モード、目標入力軸回転速度、入力軸回転速度、エンジン回転速度、要求変速段、変速要求、及びアクセル開度、との関係を表したグラフである。
図7図1の制御部で実行される「モード移行処理」のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
(ハイブリッド車両の説明)
図1に基づき、本発明の実施形態によるハイブリッド車両用駆動装置1について説明する。図1は、ハイブリッド車両用駆動装置1が搭載されたハイブリッド車両(以下、車両と略す)の概略を示している。図1において、太線は各装置間の機械的な接続を示し、破線による矢印は制御用の信号線を示し、一点鎖線による矢印は車両の電力の供給線を示している。
【0023】
図1に示すように、ハイブリッド車両用駆動装置1は、エンジン2、フロントクラッチ5、クラッチアクチュエータ53、自動変速機8、シフトアクチュエータ85、モータジェネレータ6、インバータ装置15、バッテリ16、制御部10を有している。ハイブリッド車両用駆動装置1は、駆動輪18R、18Lに駆動力を付与するものである。
【0024】
車両は、エンジン2、フロントクラッチ5、自動変速機8、モータジェネレータ6、デファレンシャル17が、この順番に、直列に配設されている。なお、自動変速機8の出力軸82とモータジェネレータ6は、デファレンシャル17に並列に接続されていても差し支え無い。デファレンシャル17には、車両の駆動輪18R、18Lが接続されている。なお、駆動輪18R、18Lは、車両の前輪又は後輪、或いは、前後輪である。
【0025】
エンジン2は、ガソリンや軽油等の炭化水素系燃料を使用するガソリンエンジンやディーゼルエンジン等である。エンジン2は、出力軸21、スロットルバルブ22、燃料噴射装置23、エンジン回転速度センサ24を有し、制御部10によって制御される。出力軸21は、ピストンにより回転駆動されるクランク軸と一体的に回転して駆動力を出力する。
【0026】
スロットルバルブ22は、エンジン2の内部に空気を取り込む経路の途中に配設されている。燃料噴射装置23は、エンジン2の内部に空気を取り込む経路及び燃焼室の少なくとも一方に燃料を噴射するものである。なお、本実施形態では、エンジン2の出力軸21は、後述するフロントクラッチ5の入力部材51に接続している。なお、エンジン2がガソリンエンジンである場合には、エンジン2には、シリンダにある混合気を点火する点火装置(不図示)が設けられている。
【0027】
エンジン回転速度センサ24は、出力軸21の近傍に設けられ、出力軸21の回転速度、つまり、エンジン2の回転速度(以下、エンジン回転速度Neと略す)を検出し、その検出信号を制御部10に出力するセンサである。
【0028】
フロントクラッチ5は、エンジン2と自動変速機8の間に設けられている。フロントクラッチ5は、エンジン2の出力軸21と自動変速機8の入力軸81とを接続又は切断するものである。
【0029】
フロントクラッチ5は、湿式多板摩擦クラッチや乾式単板摩擦クラッチ等である。フロントクラッチ5は、出力軸21に連結された入力部材51と、入力軸81に連結された出力部材52を備えている。なお、入力部材51は出力軸21に連結しているので、入力部材51の回転速度は、出力軸21の回転速度、つまり、エンジン回転速度Neと同一である。また、出力部材52は入力軸81に連結しているので、出力部材52の回転速度は、入力軸回転速度Niと同一である。
【0030】
クラッチアクチュエータ53は、フロントクラッチ5を駆動して、フロントクラッチ5のクラッチトルクを可変とするものである。クラッチアクチュエータ53は、電動式及び油圧式のいずれも採用することができる。本実施形態では、クラッチアクチュエータ53は、フロントクラッチ5を駆動するための油圧を発生させるサーボモータであり、ストロークセンサが設けられている。
【0031】
入力部材51と出力部材52は、クラッチアクチュエータ53によって、接続状態及び切断状態に切り替えられる。本実施形態では、フロントクラッチ5は、クラッチアクチュエータ53が作動していない時に接続状態となるノーマールクローズクラッチである。図2に示すように、クラッチアクチュエータ53のアクチュエータストロークが増大するに従って、クラッチトルクが徐々に低下して、0となる。
【0032】
自動変速機8は、フロントクラッチ5(エンジン2)とモータジェネレータ6の間に設けられている。自動変速機8は、出力部材52と連動して回転する入力軸81、モータジェネレータ6のロータと連動して回転する出力軸82を有している。自動変速機8は、入力軸81の回転速度を出力軸82の回転速度で除した変速比がそれぞれ異なる複数のギヤ段(リバース含む)を選択的に切り替える変速機構を有している有段変速機である。
【0033】
入力軸81には、エンジン2からの駆動力が入力される。自動変速機8は、制御部10からの指令に基づいて変速機構を作動させ、複数のギヤ段を選択的に切り替えて変速を実装するシフトアクチュエータ85を備えている。なお、本実施形態では、自動変速機8は、シンクロ機構を有するオートメイテッド・マニュアルトランスミッション(AMT)である。自動変速機8の構成については、後で詳細に説明する。
【0034】
自動変速機8は、入力軸81の回転速度を検出し、検出信号を制御部10に出力する入力軸回転速度センサ83を有している。
【0035】
モータジェネレータ6は、駆動輪18L、18Rに駆動力を付与するとともに減速時に発電する。モータジェネレータ6は、自動変速機8(エンジン2)と駆動輪18L、18Rとの間に設けられている。
【0036】
モータジェネレータ6は、円筒状のステータと、このステータの内周側に回転可能に配設されたロータとから構成されている。ステータは、ステータコアに巻線が巻回されて構成されている。ロータは、ロータコアに永久磁石が取り付けられて構成されている。本実施形態では、モータジェネレータ6は、三相同期機である。ロータは、出力軸82に連結されるとともに、デファレンシャル17に連結している。
【0037】
車輪18R、18Lの近傍には、車輪18R、18Lの回転速度(以下車輪回転速度Nwr、Nwlと略す)を検出する車輪回転速度センサ88、89が設けられている。車輪回転速度センサ88、89でそれぞれ検出された車輪回転速度Nwr、Nwlは、制御部10に出力される。
【0038】
インバータ装置15は、バッテリ16から供給される直流電流を、交流電流に変換するとともに、交流電流の電圧の周波数及び実効値を可変してモータジェネレータ6に供給する。また、インバータ装置15は、モータジェネレータ6が発電した交流電流を降圧するとともに直流電流に変換して、バッテリ16を充電する。
【0039】
制御部10は、ハイブリッド車両用駆動装置1を制御するものである。制御部10は、スロットルバルブ22、燃料噴射装置23、エンジン回転速度センサ24、クラッチアクチュエータ53、入力軸回転速度センサ83、シフトアクチュエータ85と接続している。制御部10は、CPU、RAM、記憶部、及びこれらを接続するバスとから構成されたECUを有する。CPUは、図7に示すフローチャートに対応したプログラムを実行する。RAMは同プログラムの実行に必要な変数を一時的に記憶するものである。記憶部は、不揮発性メモリー等で構成され、前記プログラムを記憶するものである。
【0040】
制御部10は、アクセルペダル31の操作量を検出するアクセルセンサ32から、前記操作量の相対値を意味するアクセル開度Acの情報を取得する。制御部10は、アクセル開度Acに基づいて、「要求駆動力」を演算する。制御部10は、バッテリ16の充電状態や車速V等の情報に基づいて、「モータ駆動力」を演算する。制御部10は、「要求駆動力」及び「モータ駆動力」に基づいて「エンジン駆動力」を演算する。制御部10(エンジン制御部)は、「エンジン駆動力」に基づいて、スロットルバルブ22の開度及び燃料噴射装置23の燃料噴射量を制御し、エンジン2が出力する駆動力が「エンジン駆動力」となるように制御する。これら「エンジン駆動力」及び「モータ駆動力」の少なくとも一方によって、車両に「要求駆動力」が付与される。
【0041】
制御部10は、インバータ装置15の動作を制御することで、モータジェネレータ6の駆動モードと発電モードの切り替え制御を行うとともに、モータジェネレータ6のモータジェネレータ回転速度Nm及び「モータ駆動力」の制御を行う。
【0042】
制御部10(モード判断部)は、バッテリ16の充電状況やアクセル開度Acに基づいて、「電動走行モード」と「スプリット走行モード」とを切り替えるか否かを判断する。なお、「電動走行モード」は、モータジェネレータ6のみにより駆動輪18R、18Lを駆動する走行モードである。また「スプリット走行モード」は、エンジン2及びモータジェネレータ6により駆動輪18R、18Lを駆動し、又は、エンジン2の駆動力によって駆動輪18R、18Lを駆動するとともに、エンジン2の駆動力によってモータジェネレータ6で発電を行うモードである。
【0043】
制御部10は、バッテリ16の充電量が少ないと判断した場合には、「スプリット走行モード」を選択して、エンジン2の駆動力によって駆動輪18R、18Lを駆動するとともに、エンジン2の駆動力によってモータジェネレータ6で発電を行う。また、アクセル開度Acが大きく、「モータ駆動力」だけでは「要求駆動力」に達しないと判断した場合には、「スプリット走行モード」を選択して、エンジン2及びモータジェネレータ6により駆動輪18R、18Lを駆動する。このように、制御部10によって、「電動走行モード」と「スプリット走行モード」が切り替えられる。
【0044】
(自動変速機)
以下に、図3及び図4を用いて、自動変速機8について説明する。自動変速機8は、入力軸81、出力軸82、第一ドライブギヤ141、第二ドライブギヤ142、第三ドライブギヤ143、第四ドライブギヤ144、第五ドライブギヤ145、リバースドライブギヤ146、第一ドリブンギヤ151、第二ドリブンギヤ152、第三ドリブンギヤ153、第四ドリブンギヤ154、第五ドリブンギヤ155、リバースドリブンギヤ156、出力ギヤ157、リバースアイドラギヤ161、第一選択機構110、第二選択機構120、第三選択機構130を有する。
【0045】
入力軸81と出力軸82は、自動変速機8のハウジング(不図示)に回転可能に平行に軸支されている。
【0046】
第一ドライブギヤ141、第二ドライブギヤ142、第三ドライブギヤ143、第四ドライブギヤ144、第五ドライブギヤ145、リバースドライブギヤ146は、入力軸81に相対回転不能に設けられた固定ギヤである。
【0047】
第一ドリブンギヤ151、第二ドリブンギヤ152、第三ドリブンギヤ153、第四ドリブンギヤ154、第五ドリブンギヤ155、リバースドリブンギヤ156、出力ギヤ157は、出力軸82に遊転可能(相対回転可能)又は嵌合可能に設けられた遊転ギヤである。
【0048】
第一ドライブギヤ141と第一ドリブンギヤ151は、互いに噛合し、1速段を構成するギヤである。第二ドライブギヤ142と第二ドリブンギヤ152は、互いに噛合し、2速段を構成するギヤである。第三ドライブギヤ143と第三ドリブンギヤ153は、互いに噛合し、3速段を構成するギヤである。第四ドライブギヤ144と第四ドリブンギヤ154は、互いに噛合し、4速段を構成するギヤである。第五ドライブギヤ145と第五ドリブンギヤ155は、互いに噛合し、5速段を構成するギヤである。
【0049】
第一ドライブギヤ141、第二ドライブギヤ142、第三ドライブギヤ143、第四ドライブギヤ144、第五ドライブギヤ145の順にギヤ径が大きくなっている。第一ドリブンギヤ151、第二ドリブンギヤ152、第三ドリブンギヤ153、第四ドリブンギヤ154、第五ドリブンギヤ155の順にギヤ径が小さくなっている。
【0050】
リバースアイドラギヤ161は、リバースドライブギヤ146とリバースドリブンギヤ156の間に配設され、リバースドライブギヤ146及びリバースドリブンギヤ156と噛合している。リバースアイドラギヤ161、リバースドライブギヤ146及びリバースドリブンギヤ156は、リバース用のギヤである。
【0051】
(選択機構)
[第一選択機構]
第一選択機構110は、第一ドリブンギヤ151又は第二ドリブンギヤ152を選択して、出力軸82に相対回転不能に連結するものである。第一選択機構110は、図3図4に示すように、第一クラッチハブH1と、第一速係合部材E1と、第二速係合部材E2と、第一シンクロナイザリングR1、第二シンクロナイザリングR2と、第一スリーブS1とから構成されている。
【0052】
第一クラッチハブH1は、第一ドリブンギヤ151と第二ドリブンギヤ152との軸方向間となる出力軸82にスプライン嵌合されている。このため、第一クラッチハブH1は、出力軸82に相対回転不能且つ前記軸の軸線方向に移動可能となっている。第一速係合部材E1及び第二速係合部材E2は、第一ドリブンギヤ151及び第二ドリブンギヤ152のそれぞれに、例えば圧入などにより固定される部材である。
【0053】
第一シンクロナイザリングR1は、第一クラッチハブH1と第一速係合部材E1の間に設けられている。第一シンクロナイザリングR1は、第一スリーブS1の軸線方向の移動により、第一スリーブS1とスプライン噛合又は第一スリーブS1から離脱するようになっている。第一シンクロナイザリングR1と第一速係合部材E1には、それぞれ、互いに当接する円錐面のコーン面c1、C1が形成されている。第一スリーブS1は、第一クラッチハブH1の外周に軸方向移動自在にスプライン係合される。
【0054】
第二シンクロナイザリングR2は、第一クラッチハブH1と第二速係合部材E2の間に設けられている。第二速係合部材E2と第二シンクロナイザリングR2には、それぞれ、互いに当接する円錐面のコーン面c2、C2が形成されている。第二スリーブS2は、第二クラッチハブH2の外周に軸方向移動自在にスプライン係合される。
【0055】
この第一選択機構110は、第一ドリブンギヤ151及び第二ドリブンギヤ152の一方を出力軸82に同期しつつ、第一ドリブンギヤ151及び第二ドリブンギヤ152の一方を出力軸82に係合し、かつ、第一ドリブンギヤ151及び第二ドリブンギヤ152の両者を出力軸82に対して離脱する状態にすることができる周知のシンクロメッシュ機構を構成している。
【0056】
第一選択機構110の第一スリーブS1は、図3に示す「中立位置」では第一速係合部材E1及び第二速係合部材E2のいずれにも係合されていない。第一スリーブS1の外周には、環状の第一係合溝S1−1が形成されている。第一係合溝S1−1には、第一シフトフォークF1が係合している。
【0057】
第一シフトフォークF1により第一スリーブS1が第一ドリブンギヤ151側にシフトされれば、第一スリーブS1が第一シンクロナイザリングR1にスプライン係合するともに、第一スリーブS1によって第一シンクロナイザリングR1が第一速係合部材E1側に移動される。すると、第一シンクロナイザリングR1のコーン面c1が第一速係合部材E1のコーン面C1に当接し、これらコーン面c1、C1同士の摩擦力により、出力軸82と第一ドリブンギヤ151の回転速度が徐々に同期される。
【0058】
出力軸82と第一ドリブンギヤ151の回転速度が同期すると、第一スリーブS1は、更に第一速係合部材E1側に移動し、第一速係合部材E1の外周の外歯スプラインと係合し、第一ドリブンギヤ151を出力軸82に相対回転不能に連結して1速段を形成する。
【0059】
また、第一シフトフォークF1により第一スリーブS1が第二ドリブンギヤ152側にシフトされれば、第二シンクロナイザリングR2は同様にして出力軸82と第二ドリブンギヤ152の回転を同期させた後に、この両者を相対回転不能に連結して2速段を形成する。
【0060】
[第二選択機構]
第二選択機構120は、第三ドライブギヤ143又は第四ドライブギヤ144を選択して、出力軸82に相対回転不能に連結するものである。第二選択機構120は、第二クラッチハブH2と、第三速係合部材E3と、第四速係合部材E4と、第三シンクロナイザリングR3、第四シンクロナイザリングR4と、第二スリーブS2とから構成されている。
【0061】
第二選択機構120は、第一選択機構110と同様のシンクロメッシュ機構であり、第二クラッチハブH2が、第三ドライブギヤ143と第四ドライブギヤ144の間の出力軸82に固定され、第三速係合部材E3と第四速係合部材E4が、それぞれ第三ドライブギヤ143と第四ドライブギヤ144に固定されている点が異なっているだけである。第二選択機構120は、「中立位置」ではいずれの係合部材E3、E4とも係合されていない。第二スリーブS2の外周には、環状の第二係合溝S2−1が形成されている。第二係合溝S2−1には、第二シフトフォークF2が係合している。
【0062】
第二シフトフォークF2により第二スリーブS2が第三ドライブギヤ143にシフトされれば、出力軸82と第三ドライブギヤ143の回転が同期された後に、この両者が一体的に連結されて3速段が形成される。また、第二シフトフォークF2により第二スリーブS2が第四ドライブギヤ144側にシフトされれば、出力軸82と第四ドライブギヤ144の回転が同期された後に、この両者が直結されて4速段が形成される。
【0063】
[第三選択機構]
第三選択機構130は、第五ドライブギヤ145又はリバースドライブギヤ146を選択して、出力軸82に相対回転不能に連結するものである。第三選択機構130は、第三クラッチハブH3と、第五速係合部材E5と、リバース係合部材ERと、第五シンクロナイザリングR5、リバースシンクロナイザリングRRと、第三スリーブS3とから構成されている。
【0064】
第三選択機構130は、第一選択機構110と同様のシンクロメッシュ機構であり、第三クラッチハブH3が、第五ドライブギヤ145とリバースドライブギヤ146の間の出力軸82に固定され、第五速係合部材E5とリバース係合部材ERが、それぞれ第四ドライブギヤ144とリバースドライブギヤ146に固定されている点が異なっているだけである。第三選択機構130は、「中立位置」ではいずれの係合部材E5、ERとも係合されていない。第三スリーブS3の外周には、環状の第三係合溝S3−1が形成されている。第三係合溝S3−1には、第三シフトフォークF3が係合している。
【0065】
第三シフトフォークF3により第三スリーブS3が第五ドライブギヤ145にシフトされれば、出力軸82と第五ドライブギヤ145の回転が同期された後に、この両者が一体的に連結されて5速段が形成される。また、第三シフトフォークF3により第三スリーブS3がリバースドライブギヤ146側にシフトされれば、出力軸82とリバースドライブギヤ146の回転が同期された後に、この両者が直結されてリバース段が形成される。
【0066】
なお、シフトアクチュエータ85によって、シフトフォークF1〜F3が移動されて、自動変速機8において各変速段が形成され、自動変速機8が「ニュートラル状態」となる。
【0067】
(変速マップデータの説明)
次に、図5を用いて「変速マップデータ」の説明をする。「変速マップデータ」は、制御部10が、自動変速機8における変速の実行の基準となるデータである。図5に示すように、「変速マップデータ」は、アクセル開度Acと車速Vとの関係を表した「変速線」を複数有している。増速方向に向かって(車速Vが低い方から高い方に向かって)順に、2速アップ変速線、3速アップ変速線(図5の実線で示す)が設定されている。また、減速方向に向かって(車速Vが高い方から低い方に向かって)順に、2速ダウン変速線、1速ダウン変速線(図5の破線で示す)が設定されている。これ以上の変速段についても、同様に、「変速線」が設定されている。
【0068】
図5で、車両が、自動変速機8の変速段が1速で走行している状態(P0の状態)において、車速Vが徐々に増加等して、車両の走行状態が2速アップ変速線上の点P1に到達すると、制御部10(変速判断部)は、「要求変速段」が2速であると判断する。一方で、車両が、自動変速機8の変速段が2速で走行している状態(P2の状態)において、車速Vが徐々に減少等して、車両の走行状態が1速ダウン変速線上の点P3に到達すると、制御部10は、「要求変速段」が1速であると判断する。
【0069】
制御部10は、「要求変速段」となるように、「変速要求」をシフトアクチュエータ85に出力する。シフトアクチュエータ85は、「要求変速段」の変速段に自動変速機8を変速する。なお、車速Vの代わりに、出力軸82の回転速度によって、変速段を判断する実施形態であっても差し支え無い。
【0070】
制御部10は、車輪回転速度センサ88、89でそれぞれ検出された車輪回転速度Nwr、Nwlに基づいて、車速Vを演算する。
【0071】
(本実施形態の概要)
以下に図3図4図6を用いて、本実施形態の概要について説明する。本実施形態では、車両が「電動走行モード」の場合には、フロントクラッチ5は接続状態にある一方で、自動変速機8は、ニュートラル状態となっている。つまり、全ての選択機構110〜130のスリーブS1〜S3が「中立位置」にあり(図3図4の状態)、全ての遊転ギヤ151〜156が出力軸82と遊転可能な状態であり、入力軸81が出力軸82に対して相対回転可能な状態となっている。
【0072】
これにより、車両が走行して、出力軸82が回転したとしても、エンジン2が回転すること無くエンジンフリクションロスが発生しない。また、全ての遊転ギヤ151〜156、全ての固定ギヤ141〜145、入力軸81、出力部材52、入力部材51も回転しない。このため、遊転ギヤ151〜156が固定ギヤ141〜145噛合して回転することに起因する機械的損失の発生を防止することができ、更に、上記機械要素が回転しないので、モータジェネレータ6に作用する慣性モーメントを低減することができる。
【0073】
「電動走行モード」から「スプリット走行モード」に移行する場合には、自動変速機8において変速段を形成しなければならない。本実施形態では、フロントクラッチ5を接続したまま、エンジン2を始動させて(図6の(3))、入力軸回転速度Niをシンクロ内在機構が同期する回転速度の近くまで引き上げたうえで(図6の(5))、フロントクラッチ5を切断して(図6の(6))、シフトアクチュエータ85を作動させて変速段を形成して(図6の(7))、フロントクラッチ5を接続する(図6の(8))。
【0074】
このように、エンジン2によって入力軸回転速度Niを引き上げてから、変速段を形成するので、シンクロ機構による同期時間を短縮することができ、また、シンクロ機構の消耗を抑制することができる。以下に、詳細に説明する。
【0075】
(モード移行処理)
次に、図7に示すフローチャートを用いて、「モード移行処理」について説明する。イグニッションがONとされ、車両が走行可能な状態となると、「モード移行処理」が開始し、S11に進む。
【0076】
S11において、制御部10は、「電動走行モード」から「スプリット走行モード」への移行条件が成立したと判断した場合には(S11:YES、図6のt1)、プログラムをS12に進め、「スプリット走行モード」への移行条件が成立していないと判断した場合には(S11:NO)、プログラムをS21に進める。
【0077】
S12において、制御部10はクラッチアクチュエータ53に制御信号を出力することにより、クラッチトルクを低下させて(図6の(1))、フロントクラッチ5を半クラッチ状態とする。なお、クラッチトルクは、エンジン2によって、出力部材52、入力軸81、固定ギヤ141〜145、遊転ギヤ151〜156、及びリバースアイドラギヤ161の回転を引き上げるのに必要なクラッチトルクに制御される。
【0078】
S13は、S12と同時に実行される。S13において、制御部10は、「要求変速段」及び車輪回転速度センサ88、89によって検出された車輪回転速度Nwr、Nwlに基づいて、目標入力軸回転速度Naiを設定する(図6の(2))。具体的には、制御部10は、「要求変速段」が形成される遊転ギヤ151〜156と出力軸82が同期する入力軸81の回転速度を演算し、当該入力軸81の回転速度を目標入力軸回転速度Naiと設定する。S13が終了すると、プログラムはS14に進む。
【0079】
S14は、S12やS13と同時に実行される。S14において、制御部10は、スロットルバルブ22の開度、燃料噴射装置23の燃料噴射量を制御して、エンジン2を始動させるとともに(図6の(3))、入力軸81の回転速度が目標入力軸回転速度Naiとなるように、エンジン2を制御する。フロントクラッチ5は半クラッチ状態であるので、エンジン回転速度Neの回転の上昇に伴って、入力軸回転速度Niも上昇する(図6の(4))。S14が終了すると、プログラムはS15に進む。
【0080】
S15において、制御部10は、入力軸回転速度Ni(エンジン回転速度Ne)が目標入力軸回転速度Naiから規定回転速度α(例えば、50〜100r.p.m.)を減算した回転速度よりも速くなったと判断した場合には(S15:YES、図6の(5))、プログラムをS16に進め、入力軸回転速度Niが目標入力軸回転速度Naiから規定回転速度αを減算した回転速度よりも遅いと判断した場合には(S15:NO)、プログラムをS13に戻す。なお、規定回転速度αは、エンジン回転速度Neが目標入力軸回転速度Naiに到達する時間と、自動変速機8において変速が完了(シンクロ機構における同期が完了)する時間とが、殆ど同じタイミングとなるように、変速段によって調整される値である。なお、S15は、S12と同時に実行されても差し支え無い。
【0081】
S16において、制御部10は、クラッチアクチュエータ53に制御信号を出力することにより、フロントクラッチ5を完全に切断する(図6の(6))。S16が終了すると、プログラムはS17に進む。
【0082】
S17において、制御部10は、シフトアクチュエータ85に「変速要求」を出力することにより(図6の(7))、シンクロ機構を作動させて、自動変速機8において「要求変速段」の変速段を形成する。S17が終了すると、プログラムはS18に進む。
【0083】
S18において、制御部10は、シフトアクチュエータ85から出力されるシフトストロークに関する信号に基づいて、自動変速機8において「要求変速段」への変速が完了したと判断した場合には(S18:YES)、プログラムをS19に進め、自動変速機8において「要求変速段」への変速が完了していないと判断した場合には(S18:NO)、S18の処理を繰り返す。
【0084】
S19において、制御部10は、クラッチアクチュエータ53に制御信号を出力することにより、フロントクラッチ5を完全に接続する(図6の(8))。S19が終了すると、プログラムはS21に進む。
【0085】
S21において、制御部10が、「スプリット走行モード」から「電動走行モード」への移行条件が成立したと判断した場合には(S21:YES)、プログラムをS22に進め、「スプリット走行モード」から「電動走行モード」への移行条件が成立していないと判断した場合には(S21:NO)、プログラムをS11に戻す。なお、図示しないブレーキペダルが踏まれた場合や、「モータ駆動力」のみで「要求駆動力」を充足できる場合、不足していたバッテリ16の充電量が回復した場合には、「電動走行モード」への移行条件が成立したと判断される。
【0086】
S22において、制御部10は、クラッチアクチュエータ53に制御信号を出力することにより、フロントクラッチ5を切断状態にする。S22が終了すると、プログラムはS23に進む。
【0087】
S23において、制御部10は、シフトアクチュエータ85に制御信号を出力することにより、自動変速機8をニュートラル状態とする。S23が終了すると、プログラムはS24に進む。
【0088】
S24において、制御部10は、クラッチアクチュエータ53に制御信号を出力することにより、フロントクラッチ5を接続状態にする。S24が終了すると、プログラムは、S11に戻る。
【0089】
(本実施形態の効果)
上述したように、図7のS23において、制御部10(電動走行モード移行部)は、「スプリット走行モード」から「電動走行モード」に移行する場合に(図7のS21でYESと判断)、自動変速機8を入力軸81が出力軸82に対して相対回転可能な「ニュートラル状態」とする。
【0090】
これにより、車両が走行して、出力軸82が回転したとしても、入力軸81及び入力軸81と連動して回転するギヤ141〜146、151〜156、161(図3示)が回転しない。これにより、「電動走行モード」時に自動変速機8が発生するノイズを低減することができる。また、多数のギヤ141〜146、151〜156、161が噛み合って回転することに起因する機械的損失の発生を防止することができるので、電力の無駄な消費を防止することができる。
【0091】
また、「電動走行モード」において、エンジン2が回転しないので、エンジンフリクションロスの発生を防止することができる。更に、入力軸81と連動して回転する機械要素141〜146、151〜156、161、52が回転しないので、モータジェネレータ6に作用する慣性モーメントを低減することができ、ハイブリッド車両用駆動装置1のドライバビリティーを向上させることができる。
【0092】
また、制御部10(スプリット走行モード移行部)は、「電動走行モード」から「スプリット走行モード」に移行する場合に(図7のS11でYESと判断)、S12、S13において、フロントクラッチ5を接続した状態で、エンジン2によって入力軸81の回転速度を上昇させたうえで(図6の(4))、S16において、フロントクラッチ5を切断して、S17において、自動変速機8の変速段を形成し、S19において、フロントクラッチ5を接続する。
【0093】
これにより、「電動走行モード時」に、自動変速機8を「ニュートラル状態」としていたとしても、変速段を形成して、エンジン2の駆動力を駆動輪18R、18Lに伝達させることができる。また、エンジン2によって入力軸81の回転速度を上昇させたうえで、自動変速機8の変速段を形成する。これにより、自動変速機8においての同期時間、つまり、シンクロ機構により形成される変速段の遊転ギヤ151〜156と出力軸82との同期時間を短縮させることができ、迅速に変速段を形成することができる。このため、迅速にエンジン2の駆動力を駆動輪18R、18Lに伝達させることができ、ハイブリッド車両用駆動装置1のドライバビリティーを向上させることができる。
【0094】
また、本実施形態では、「電動走行モード」時には、自動変速機8は「ニュートラル状態」とされ、各遊転ギヤ151〜156は回転しない。このため、「スプリット走行モード」への移行時に、エンジン2によって入力軸81の回転速度を上昇させずに、シンクロ機構によって、変速段が形成される遊転ギヤ151〜156と出力軸82を同期させると、シンクロナイザリングR1〜RRと係合部材E1〜ERの回転速度差が大きいため、これらのコーン面に過大な負荷が作用してしまう。一方で、本実施形態では、エンジン2によって入力軸81の回転速度を上昇させてから、シンクロ機構を作動させているので、シンクロナイザリングR1〜RRと係合部材E1〜ERの回転速度差が小さく、コーン面に過大な負荷が作用すること無く、シンクロナイザリングR1〜RRや係合部材E1〜ERの摩耗や破損を防止することができる。
【0095】
また、制御部10(スプリット走行モード移行部)は、S13において、形成される変速段における入力軸81の回転速度である目標入力軸回転速度Naiを演算し、S14において、入力軸81の回転速度が目標回転入力軸回転速度Naiとなるようにエンジン2を制御する(図6の(4)、(5))。これにより、自動変速機8において変速段を形成する際の同期、つまり、シンクロ機構により形成される変速段の遊転ギヤ151〜156と出力軸82との同期を確実に行うことができ、迅速に変速段を形成することができる。このため、迅速にエンジン2の駆動力を駆動輪18R、18Lに伝達させることができ、ハイブリッド車両用駆動装置1のドライバビリティーを向上させることができる。
【0096】
また、制御部10(スプリット走行モード移行部)は、図7のS12において、フロントクラッチ5を半クラッチ状態として(図6の(1))、エンジン2によって入力軸81の回転速度を上昇させ、S16において、変速段を形成する際にフロントクラッチ5を切断する。このように、フロントクラッチ5を半クラッチ状態としているので、変速段を形成する際に、迅速にフロントクラッチ5を切断することができる。このため、迅速に変速段を形成することができ、迅速にエンジン2の駆動力を駆動輪18R、18Lに伝達させることができ、ハイブリッド車両用駆動装置1のドライバビリティーを向上させることができる。
【0097】
また、制御部10(電動走行モード移行部)は、「スプリット走行モード」から「電動走行モード」に移行する場合に(図7のS21でYESと判断)、S24において、フロントクラッチ5を接続状態にする。
【0098】
フロントクラッチ5が切断中には、作動油が密閉状態となるので、作動油の温度変化により、作動油が熱膨張又は収縮してしまう。クラッチアクチュエータ53のストロークセンサがサーボモータ側にしかないと、入力部材51や出力部材52の位置を正確に検出することができず、フロントクラッチ5において正規にクラッチトルクを発生させることができない。本実施形態では、上述したように、「スプリット走行モード」から「電動走行モード」に移行する場合に、フロントクラッチ5は接続状態にされる。このため、作動油が密閉状態となることに起因する、作動油の熱膨張や熱収縮による影響を排除することができ、フロントクラッチにおいて正規にクラッチトルクを発生させることができる。
【0099】
また、図3に示すように、遊転ギヤ151〜156は出力軸82側に設けられている。これにより、自動変速機8が「ニュートラル状態」の場合には、遊転ギヤ151〜156、固定ギヤ141〜146、及びリバースアイドラギヤ161のいずれもが回転しない。このため、これらのギヤが噛み合って回転することに起因する機械的損失を防止することができる。
【0100】
(別の実施形態)
以上説明した実施形態では、車輪回転速度センサ88、89によって、車速Vや出力軸82の回転速度を検出している。しかし、出力軸82の近傍に配設され、出力軸82の回転速度を直接検出する出力軸回転速度センサによって、車速Vや出力軸82の回転速度を検出する実施形態であっても差し支え無い。
【0101】
以上説明した実施形態では、図7のS15において、制御部10は、入力軸回転速度Niが目標入力軸回転速度Naiに近接したと判断した場合に、プログラムをS16に進めて、フロントクラッチ5を切断し、S17において、変速を開始している。しかし、制御部10が、入力軸回転速度Niが目標入力軸回転速度Naiに達したと判断した場合に、プログラムをS16に進めて、フロントクラッチ5を切断して、S17において、変速を開始する実施形態であっても差し支え無い。
【0102】
以上説明した実施形態では、出力軸21と入力部材51は接続し、入力軸81と出力部材52は接続している。しかし、出力軸21と入力部材51との間や入力軸81と出力部材52の間にギヤ等の機械要素が設けられている実施形態であっても差し支え無い。
【0103】
また、以上説明した実施形態では、自動変速機8は、シンクロ機構を有するAMTである。しかし、自動変速機8が、ドグクラッチを有するAMT、デュアルクラッチトランスミッション(DCT)、トルクコンバータやプラネタリギヤ機構、摩擦係合要素を用いたトルクコンバータ式自動変速機等であるハイブリッド車両用駆動装置にも、本発明の技術思想が適用可能なことは言うまでもない。
【0104】
以上の説明では、駆動輪18L、18Rに駆動力を付与するモータとして作動するとともに、発電機としても作動するモータジェネレータ6を用いた実施形態について本発明を説明した。しかし、モータと発電機が別体の実施形態であっても差し支え無い。また、発電機を有しないハイブリッド車両用駆動装置1にも、本発明の技術的思想が適用可能なことは言うまでもない。
【0105】
なお、制御部10は、単一のECUに限定されず、複数のECUから構成されている実施形態であっても差し支え無い。
【符号の説明】
【0106】
1…ハイブリッド車両用駆動装置、2…エンジン、5…フロントクラッチ、8…自動変速機、6…モータジェネレータ(モータ)、10…制御部(モード判断部、電動走行移行部、スプリット走行移行部)、18R、18L…駆動輪、51…入力部材、52…出力部材、81…入力軸、82…出力軸
Ne…エンジン回転速度
Ni…入力軸回転速度
Nai…目標入力軸回転速度
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7