(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
弾性を具備した袋状の収容部を有し、該収容部に作動流体が充満状態で収容される過不足調整器を備え、該過不足調整器は、その前記収容部内が前記分岐流路における2つの当接部の間に接続されていることを特徴とする請求項1記載の歯車ポンプ。
【背景技術】
【0002】
上記歯車ポンプは、油圧シリンダなどのアクチュエータに接続することで、当該アクチュエータの駆動などに用いられる。従来、この歯車ポンプは、方向切換弁などを介してアクチュエータに接続されており、例えば、アクチュエータが油圧シリンダである場合には、歯車ポンプの作動を制御して、当該歯車ポンプを一方向に回転させるとともに、方向切換弁の作動を制御して、油圧シリンダのボア側及びロッド側の油圧室に作動油を供給し、シリンダを駆動させていた。
【0003】
近年、工作機械の駆動機構に、従来用いられていたボールねじに代えて歯車ポンプによって駆動される油圧シリンダを用いた油圧装置が使用されるようになっている。しかしながら、この油圧装置においては、上述したように、歯車ポンプの作動及び方向切換弁の作動を制御する必要があるため、油圧シリンダの駆動制御が複雑なものとなっていた。また、歯車ポンプと油圧シリンダとが方向切換弁を介して接続されているため、応答性の向上を図ることが困難であるという問題もあった。更に、歯車ポンプに供給する作動油を貯留するための大きなタンクが必要であり、油圧装置全体が大きなものとなっていた。
【0004】
そこで、上記課題を解決するための油圧装置として、歯車ポンプにおける双方のポートを、油圧シリンダのボア側及びロッド側の油圧室にそれぞれ配管で直接接続するとともに、油圧シリンダが片ロッド型であって、ボア側及びロッド側の油圧室の容積が異なることにより双方のポートを通過する作動油に過不足が生じるような場合には、余剰分を回収し、回収した余剰分を不足分として補充するための所謂過不足バルブを歯車ポンプに接続した油圧装置が提案されている。尚、所謂過不足バルブとしては、例えば、実開昭54−43602号公報に開示された可逆式油圧ポンプ用逆止め弁が提案されている。
【0005】
この油圧装置によれば、歯車ポンプの作動のみを制御し、当該歯車ポンプを両回転させて油圧シリンダの駆動を制御することができるため、従来と比較して駆動制御が容易なものとなる。また、歯車ポンプと油圧シリンダとを配管によって直接接続したことで応答性が向上する。更に、余剰分を回収し、この余剰分を不足分として補充するようにしているため、作動油を貯留するための大きなタンクを必要とせず、油圧装置が従来よりもコンパクトなものとなる。
【0006】
また、従来、歯車ポンプが内接歯車ポンプである場合には、当該内接歯車ポンプを一方向に回転させて使用する際に、内歯歯車の外周面とハウジングとの間(以下、「摺接部」という)に高圧側の作動油を供給して両者の間を潤滑することで、内歯歯車外周面の焼き付きを防止するようにしていた。
【0007】
しかしながら、内接歯車ポンプを両回転させて使用すると、歯車の回転方向によって当該内接歯車ポンプの各ポートが高圧側(吐出側)にも低圧側(吸込側)にもなり得るため、従来高圧側であったポートが低圧側になることで、摺接部に作動油が供給されなくなり、内歯歯車外周面の焼き付きを防止することができなくなる。
【0008】
そこで、本願出願人は、歯車を正逆両方向に回転させても、摺接部に高圧側から作動油が供給されるようにした内接歯車ポンプを提案している(特開2004−308547号公報)。
【0009】
この内接歯車ポンプは、各ポートから摺接部にかけて形成された流路と、対応するポートが吐出から吸込へと切り替わった際に、当該ポートへの作動油の逆流を防止するために各流路に設けられた逆流防止弁とからなる潤滑機構を備えている。これにより、歯車を両回転させた際に、高圧側のポートから摺接部に作動油が供給されるとともに、摺接部から低圧側のポートへの作動油の逆流が防止されて、摺接部が確実に潤滑され内歯歯車外周面の焼き付きが防止される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上述したように、従来の歯車ポンプに所謂過不足バルブを設けることによって、作動油の過不足を補って、歯車ポンプを両回転させて油圧シリンダを駆動させることができるようになる。しかしながら、このような歯車ポンプに、過不足バルブ及び油圧シリンダを配管で接続した油圧装置には、依然として改良すべき点が残されている。
【0012】
即ち、上記従来の油圧装置は、歯車ポンプ、過不足バルブ及び油圧シリンダから構成されているため、依然として油圧装置全体が大きく、その構造も複雑なもの
になっている。更に、部品点数が多く、また、歯車ポンプ、過不足バルブ及び油圧シリン
ダを配管で接続する必要があるため、配管を接続する組立工数が多くコストが高いものとなっている。
【0013】
本発明は、以上の実情に鑑みなされたものであり、油圧装置全体をより小さくでき、また、その構造を容易なものにすることができる歯車ポンプの提供を、その目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決するための本発明は、
歯部が相互に噛合する一対の歯車と、
前記一対の歯車が収納される内部空間が形成されたハウジングと、
前記ハウジングの一方端面に固設されるカバー体とを備え、
前記ハウジングには、その内部空間に第1及び第2流体圧室が形成されるとともに、一方が前記第1流体圧室を形成する内壁面に開口し、他方が該ハウジングの外壁面に開口した第1流路及び一方が第2流体圧室を形成する内壁面に開口し、他方が該ハウジングの外壁面に開口した第2流路が形成された歯車ポンプであって、
前記カバー体は、その内部空間に、
相互に対向し且つ該対向方向に沿って移動自在な状態で配設された第1及び第2弁体と、
前記2つの弁体間に、前記対向方向に沿って移動自在な状態で配設された軸体とを備え、
前記第1流体圧室と第1弁体との間には、該第1流体圧室から第1弁体に向けて作動流体を供給する第1供給流路が、前記ハウジングからカバー体にかけて形成されるとともに、前記第2流体圧室と第2弁体との間には、該第2流体圧室から第2弁体に向けて作動流体を供給する第2供給流路が、前記ハウジングからカバー体にかけて形成され、
前記2つの供給流路間には、該2つの供給流路間を連通させるように、これらの供給流路から分岐した流路であって、前記第1弁体が当接する第1当接部及び前記第2弁体が当接する第2当接部が形成された分岐流路が形成され、
前記分岐流路は、前記2つの当接部の間に過不足調整部が接続されるように構成されており、
前記各弁体は、付勢機構によって相対する弁体に向けて付勢され、
前記各弁体がそれぞれ前記軸体に当接した状態において、前記各弁体と各当接部との間には隙間が形成されており、
前記2つの弁体の内の一方の弁体に作動流体が作用して、該一方の弁体が他方の弁体に接近する方向に移動して対応する当接部に当接するとともに、前記他方の弁体が軸体を介して一方の弁体から離反する方向に移動して、該他方の弁体と対応する当接部との間の隙間が広がることで、前記2つの供給流路の内の一方の供給流路と前記過不足調整部との間が遮断された状態になるとともに、他方の供給流路と過不足調整部との間が連通した状態になる歯車ポンプに係る。
【0015】
この歯車ポンプによれば、適宜駆動モータなどを用いて一対の歯車の内の一方を正方向に回転させることによって、これに噛み合った他方の歯車にも回転力が伝達され、両歯車が回転される。これにより、第1流路を介して作動流体が第1流体圧室内に吸い込まれる。そして、当該第1流体圧室内に吸い込まれた作動流体は、各歯車の回転によって加圧された状態で第2流体圧室内に移送され、第2流路を介して外部に吐出される。
【0016】
また、一方の歯車を逆方向に回転させることによって、両歯車が同方向に回転され、これにより、第2流路を介して作動流体が第2流体圧室内に吸い込まれ、各歯車の回転によって加圧された状態で当該作動流体が第1流体圧室内に移送されて、第1流路を介して外部に吐出される。
【0017】
そして、この歯車ポンプによって片ロッド型の流体圧シリンダを駆動させる場合には、前記第1及び第2流路の内の一方の流路と、流体圧シリンダのボア側及びロッド側の流体圧室の内の一方の流体圧室とを接続するとともに、他方の流路と他方の流体圧室とを接続し、歯車ポンプを作動させて、ボア側及びロッド側の流体圧室の内の一方に作動流体を供給するとともに、他方の流体圧室から作動流体を排出することで、流体圧シリンダを駆動させる。
【0018】
ここで、上述したように、片ロッド型の流体圧シリンダにおいて、ボア側とロッド側とにおける流体圧室の容積は、ロッド側における流体圧室の容積の方がロッド分だけ小さくなるため、当該流体圧シリンダを同じ距離進退させる際の行程容積に差が生じ、流体圧回路内で行程容積の差分に起因する作動流体量の不足又は余剰が発生する。しかし、本発明に係る歯車ポンプによれば、以下に説明するように、その過不足分を流体圧回路内に出し入れすることができる。尚、以下の説明においては、第1流路とロッド側の流体圧室とを接続し、第2流路とボア側の流体圧室とを接続したものとする。
【0019】
即ち、一方の歯車を正方向に回転させた場合には、ロッド側の流体圧室から第1流路を介して作動流体が第1流体圧室内に吸い込まれ、吸い込まれた作動流体が第2流体圧室内に移送されて、この移送された作動流体が第2流路を介してボア側の流体圧室に供給される。この際、この第2流体圧室内の高圧の作動流体が第2供給流路を介して第2弁体に向け供給される。そして、この供給された高圧の作動流体が第2弁体に作用することで、当該第2弁体が第1弁体に接近する方向に移動し第2当接部に当接して、第2供給流路と過不足調整部との間が遮断されるとともに、第1弁体が軸体を介して第2弁体から離反する方向に移動し、当該第1弁体と第1当接部との間の隙間が広がる。これにより、ボア側の流体圧室から供給されるべき作動流体の不足分が、前記第1供給流路及び分岐流路を介して過不足調整部から供給される。
【0020】
また、一方の歯車を逆方向に回転させた場合には、ロッド側の流体圧室から第2流路を介して作動流体が第2流体圧室内に吸い込まれ、吸い込まれた作動流体が第1流路を介してボア側の流体圧室に供給される。この際、この第1流体圧室内の高圧の作動流体が第1供給流路を介して第1弁体に向け供給され、この高圧の作動流体が第1弁体に作用することで、第1弁体が第2弁体に接近する方向に移動し第1当接部に当接して、第1供給流路と過不足調整部との間が遮断される。また、第2弁体が軸体を介して第1弁体から離反する方向に移動し、当該第2弁体と第2当接部との間の隙間が広がる。これにより、ボア側の流体圧室から吸い込まれた余剰分の作動流体は、前記第2供給流路及び分岐流路を介して過不足調整部に回収される。
【0021】
斯くして、この歯車ポンプにおいては、流体圧回路内で発生した作動流体の不足分又は余剰分が、過不足調整部から供給される或いは過不足調整部に回収される。
【0022】
このように、本発明に係る歯車ポンプによれば、作動流体の過不足分を流体圧回路内に出し入れするための機構をカバー体の内部空間に設け、歯車ポンプと所謂過不足バルブとを一体型にしたことで、従来よりも流体圧装置がコンパクトになり、また、その構造も単純なものになる。更に、配管を接続する組立工数が少なくて済むため、コストの低減を図ることができ、また、メンテナンス時の作業性も向上する。加えて、配管の数を少なくすることができるため、圧縮流体量を減らして応答性を従来よりも向上させることができる。
【0023】
尚、本発明に係る歯車ポンプは、両ロッド型の流体圧シリンダの駆動に用いることもできる。両ロッド型の流体圧シリンダにおいては、理論的に、行程容積の差分に起因する作動流体量の不足又は余剰は生じないが、配管の継ぎ目などから徐々に作動流体が漏れるなどしてこれに起因する作動流体量の不足が生じる場合があるため、このような場合に、不足分を流体圧回路内に供給することができる。
【0024】
また、前記軸体は、例えば、ガイド機構などによって前記対向方向に移動自在な状態で、各弁体間に配設された軸状の部材であっても良いし、各弁体の先端部にそれぞれ取り付けられた2つの軸状部材からなるものであっても良い。いずれの場合も、一方の弁体が他方の弁体に接近する方向に移動することで、他方の弁体が軸体を介して一方の弁体から離反する方向に移動させられる。
【0025】
更に、本発明に係る歯車ポンプにおいては、各弁体がそれぞれ軸体に当接した状態において、各弁体と各当接部との間に隙間が形成されるようになっている。これにより、第1供給流路又は第2供給流路と分岐流路とを介して作動流体が過不足調整部に回収される際に、作動流体が各弁体とこれに対応する当接部との間を流通することで生じる力により弁体と当接部との間の隙間が狭まるという問題の発生を防止して、隙間の幅が一定に保たれる。尚、分岐流路と第1供給流路又は第2供給流路とを介して作動流体が過不足調整部から供給される場合において、各弁体とこれに対応する当接部との間を作動流体が流通することで生じる力が、付勢機構による付勢力よりも大きい場合には、弁体と当接部との間の隙間が広げられる。
【0026】
尚、前記歯車ポンプ
は、外周面に歯部が形成された外歯歯車と、内周面に歯部が形成された環状の内歯歯車とが、その歯部の一部が相互に噛み合うように各歯車が相互に偏心した状態で前記内部空間に収納された内接歯車ポンプであ
り、前記ハウジングに、前記第1流路の開口部と前記各歯車を挟んで対向する内壁面に開口した第1凹部及び前記第2流路の開口部と前記各歯車を挟んで対向する内壁面に開口した第2凹部が形成されており、前記第1供給流路が前記ハウジングに形成された第1凹部から前記カバー体の内部空間に配設された第1弁体にかけて貫通した第1貫通穴として形成され、前記第2供給流路が前記ハウジングに形成された第2凹部から前記カバー体の内部空間に配設された第2弁体にかけて貫通した第2貫通穴として形成されている。そして、前記各供給流路から第1流体圧室側及び第2流体圧室側におけるハウジング内周面と内歯歯車との間にそれぞれ連通した2つの潤滑流路が、ハウジングからカバー体にかけて形成され、カバー体内の各潤滑流路に、ハウジング内周面と内歯歯車との間から各供給流路への作動流体の逆流を防止する逆流防止弁が設けられ
ている。
【0027】
この
ため、外歯歯車を正方向に回転させた場合には、上述したように、前記第2流体圧室内の高圧の作動流体が潤滑流路を介して第2流路側におけるハウジング内周面と内歯歯車との間に供給されるとともに、第1流路側におけるハウジング内周面と内歯歯車との間から第1供給流路への作動流体の逆流が防止される。
【0028】
また、外歯歯車を逆方向に回転させた場合には、第1流体圧室内の高圧の作動流体が潤滑流路を介して第1流路側におけるハウジング内周面と内歯歯車との間に供給されるとともに、第2流路側におけるハウジング内周面と内歯歯車との間から第2供給流路への作動流体の逆流が防止される。
【0029】
更に、本発明に係る歯車ポンプは、弾性を具備した袋状の収容部を有し、この収容部に作動流体が充満状態で収容される過不足調整器を備え、この過不足調整器は、その前記収容部が分岐流路に形成された2つの当接部の間に接続された構成とすることもできる。この場合、余剰分の作動流体が収容部内に充満状態で収容され、不足分の作動流体が収容部から供給される。このようにすれば、過不足調整部の取付姿勢が制限されることもなく、姿勢の調整などを行う必要がなくなり、更に、圧力損失を抑えてエネルギー効率を高めることができる。尚、省スペース化や余分な配管の削減を図るという観点から、前記過不足調整器はカバー体に固設されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0030】
以上のように、本発明によれば、作動流体の過不足分を流体圧回路内に出し入れするための機構を設けたことで、クローズドループな流体圧回路を形成することができる。更に、この機構をカバー体の内部空間に設けて、歯車ポンプと所謂過不足バルブとを一体化したことにより、流体圧装置を小型化することでき、その装置構造も比較的単純なものにすることができる。また、従来よりも組立工数を少なくすることができるため、コストの低減や、メンテナンス時の作業性の向上を図ることができる。更に、配管の数が少なくなるため、圧縮流体量が減り、従来よりも応答性が向上する。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明の具体的な実施形態に係る歯車ポンプについて、作動流体に作動油を用いる内接歯車ポンプを例にとって、図面に基づき説明する。
【0033】
[内接歯車ポンプの構成]
図1〜
図4に示すように、本例の内接歯車ポンプ1は、内部に収納室4が形成されたハウジング2と、該ハウジングの一方端面(後端面)に液密状に固設されたカバー体20と、収納室4内に収納された外歯歯車70と、同様に収納室4内に収納された環状の内歯歯車80と、前記ハウジング2の中心部を貫通する回転軸75とを備える。
【0034】
前記外歯歯車70は、外周面に歯部が形成されるとともに、中心部にキー溝72を有する表裏に貫通した貫通孔71が形成されており、この貫通孔71に前記回転軸75が嵌挿される。
【0035】
前記内歯歯車80は、内周面に歯部が形成された環状の歯車であり、環内部に前記外歯歯車70が配設される。
【0036】
前記回転軸75は、その外周面にキー部76が形成されており、このキー部76が前記外歯歯車70のキー溝72に嵌合することによって、外歯歯車70が当該回転軸75に固定されている。また、この回転軸75は、一方の端部(前方の端部)の先端にねじ部77が形成されており、同部に適宜駆動モータを接続し、この駆動モータによって回転軸75を回転させることで、外歯歯車70が
図4中の矢示方向に回転する。尚、以下の説明においては、
図4紙面に向かって右回りを「正回転」、左回りを「逆回転」という。
【0037】
前記ハウジング2は、第1本体3と、この第1本体3の他方端面(前端面)に液密状に固定された第2本体15とから構成されており、前記第1本体3は、前記前端面に開口し、断面形状が円形状である空間を具備した前記収納室4が形成されている。
【0038】
また、前記第1本体3は、その中心部に貫通孔5が形成され、この貫通孔5には前記回転軸75が回転自在に挿通されており、貫通孔5の内周面と回転軸75の外周面との間には、適宜ベアリングが介装されている。
【0039】
また、前記収納室4は、その中心が前記貫通孔5に対して偏心するように形成されており、当該収納室4内には、前記内歯歯車80が回転自在に嵌め込まれているとともに、歯部の一部が相互に噛み合った状態で、上述したように、内歯歯車80の環内部に外歯歯車70が配設され、外歯歯車70と内歯歯車80とは相互に偏心した状態で収納室4内に収納されている。
【0040】
更に、前記収納室4を形成する内壁面4aには、前記各歯車70,80における歯部の一部が相互に噛み合っている部分と回転軸75を挟んだ反対側の対応する部分に、クレセントと称される三日月状の仕切片6が第1本体3と一体的に形成され、この仕切片6によって、前記各歯車70,80の噛み合っていない歯部間が仕切られており、仕切片6よりも外歯歯車70の正回転方向上流側(以下、「上流側」という)が第1油圧室(第1流体圧室)に相当し、正回転方向下流側(以下、「下流側」という)が第2油圧室(第2流体圧室)に相当する。
【0041】
また、第1本体3には、前記上流側に、前記内壁面4aに開口した弧状の第1凹部7が形成されるとともに、前記下流側に、同様に内壁面4aに開口した弧状の第2凹部8が形成されている。この第1凹部7及び第2凹部8は、外歯歯車70における歯底の経路及び内歯歯車80における歯底の経路に沿って開口している、即ち、第1凹部7の開口部は、上流側から下流側に向けて徐々に幅広になっており、第2凹部の開口部は、下流側から上流側に向けて徐々に幅広になっている。
【0042】
更に、前記第1本体3には、第1凹部7から当該第1本体3の後端面に向けて貫通した第1貫通孔9と、同様に第2凹部8から第1本体3の後端面に向けて貫通した第2貫通孔10とが形成されている。また、第1本体3は、前記収納室4の内周面と内歯歯車80との間(以下、「摺接部」という)に開口した断面が弧状の第1油溜まり11が第1凹部の前記上流側近傍に形成されるとともに、同じく、前記摺接部に開口した弧状の第2油溜まり12が第2凹部の前記下流側近傍に形成され、更に、当該各油溜まり11,12から第1本体3の後端面に向けて貫通した第1貫通孔13及び第2貫通孔14とが形成されている。
【0043】
前記第2本体15は、その中心部に、一方端側(前端側)の方が第1本体3の前端面と対向する側(後端側)よりも大径であって、回転軸75が回転自在に挿通される貫通孔16が形成されており、貫通孔16の後端側の内周面と回転軸75の外周面との間には、適宜ベアリングが介装され、貫通孔16の前端側の内周面と回転軸75の外周面との間にも、適宜ベアリングが介装され、更に、両面間はオイルシールによってシールされている。
【0044】
また、前記第2本体15には、一方が当該第2本体15の一方側面に開口し、他方が第2本体15の後端面15aに開口した第1流路17と、一方が第2本体15の他方の側面に開口し、他方が後端面15aに開口した第2流路18とが形成されている。また、前記第1流路17及び第2流路18における他方の開口部は、各歯車70,80を挟んで、第1凹部7及び第2凹部8とそれぞれ対向しており、第1流路17の他方の開口部は、上流側から下流側に向けて徐々に幅広になっており、第2流路18の他方の開口部は、下流側から上流側に向けて徐々に幅広になっている。
【0045】
前記カバー体20は、一方の側面から他方の側面に向けて貫通し、中間部分に径方向に縮径した縮径部21aを有する断面形状が円形状の弁組立体収納室21が形成されている。また、前記第1本体3に形成された第1貫通孔9と連通し、前記第1本体3の後端面と対向する面(前端面)から前記弁組立体収納室21の内周面に貫通した第1貫通孔22及び前記第1本体3に形成された第2貫通孔10と連通し、前端面から弁組立体収納室21の内周面に貫通した第2貫通孔23が形成されている。更に、カバー体20には、当該カバー体20の後端面から前記弁組立体収納室21の内周面に貫通した貫通孔24が形成されている。そして、前記貫通孔24には、過不足調整部としての小型のタンク25が接続されている。
【0046】
前記弁組立体収納室21内には、前記一方側面側に第1弁組立体30が収納され、前記他方側面側に第2弁組立体45が収納され、これら2つの弁組立体30、45は、前記縮径部21aを挟んで相互に対向して配設されている。尚、弁組立体収納室21における各側面の開口部には、前記各弁組立体30,45が収納された状態でプラグ29a、29bが液密状に嵌め込まれている。
【0047】
次に、前記第1弁組立体30及び第2弁組立体45の構成について説明するが、第1弁組立体30及び第2弁組立体45は、実質的に同一の構成要素からなるため、第1弁組立体30について詳細に説明し、第2弁組立体45についてはその詳しい説明は省略する。尚、第2弁組立体45の構成要素については、括弧書きでその符号を付記する。
【0048】
前記第1弁組立体30は、スリーブと称される円筒形状の第1弁収容体31(46)と、当該第1弁収容体31(46)の内部に配設される第1弁体35(50)と、一方端が第1弁体35(50)に接続される圧縮コイルばね40(55)とから構成されており、前記第1弁収容体31(46)は、当該第1弁収容体31(46)の軸線が前記弁組立体収納室21の軸線と沿った状態で、前記弁組立体収納室21に嵌挿されている。
【0049】
また、前記第1弁収容体31(46)の内周面には当接部としてのシート面32(47)が形成されるとともに、前記カバー体20に形成された第1貫通孔22(第2貫通孔23)と対向する外周面には周方向に沿って凹部33(48)が形成されており、更に、当該第1弁収容体31(46)には、前記凹部33(48)底面の一部から内周面に貫通した貫通孔34(49)が周方向に沿って複数形成されている。
【0050】
前記第1弁体35(50)は、先端部にテーパ部を有した円柱形状の部材であり、テーパ面36(51)が前記第1弁収容体31(46)のシート面32(47)と対向し、且つ前記第1弁収容体31(46)の内周面に沿って進退自在な状態で、前記第1弁収容体31(46)内に挿通されている。更に、当該第1弁体35(50)は、その先端部に第1軸体37(52)が当該第1弁体35(50)の軸線に沿って固設され、後端部側には後端面に開口した断面形状が円形状の受け部38(53)が形成されており、また、当該第1弁体35(50)には、当該第1弁体35(50)の外周面から内周面に貫通した第1貫通孔39(54)が、周方向に沿って複数形成されている。
【0051】
そして、前記圧縮コイルばね40の一方端が前記第1弁体35の受け部38内に挿入されるとともに、前記第1弁体35が第1弁収容体31内に挿通されることで、第1弁収容体31、第1弁体35及び圧縮コイルばね40が、1つの組立体として組み付けられ、圧縮コイルばね40の他方端が、前記プラグ29aに形成された受け部に挿入された状態で、前記弁組立体収納室21内に収納される。これにより、圧縮コイルばね40が付勢機構として機能する。
【0052】
同様に、前記第2弁組立体45は、第2弁収容体46、第2弁体50及び圧縮コイルばね55から構成されており、前記圧縮コイルばね55の一方端が第2弁体50の受け部53内に挿入されるとともに、第2弁体50が第2弁収容体46内に挿通されることで、これらが1つの組立体として組み付けられ、圧縮コイルばね55の他方端が、プラグ29bの受け部に挿入された状態で、弁組立体収納室21内に収納されている。
【0053】
そして、各弁組立体30、45における弁体35,50は、前記圧縮コイルばね40,55によって、それぞれ相対する弁体35,50に向けて付勢され、前記各軸体37,52の先端同士が当接し、釣り合った状態(以下、「中立状態」という)となっており、前記各軸体37,52の長さは、この中立状態において、前記各弁収容体31,46のシート面32,47と前記各弁体35,50のテーパ面36,51とが隙間を空けて対向する長さに設定されている。
【0054】
尚、この内接歯車ポンプ1においては、前記第1本体3に形成された第1貫通孔9、カバー体20に形成された第1貫通孔22、第1弁収容体31に形成された第1貫通孔34及び第1弁体35に形成された第1貫通孔39が第1供給流路として機能し、第1本体3に形成された第2貫通孔10、カバー体20に形成された第2貫通孔23、第2弁収容体46に形成された第2貫通孔49及び第2弁体50に形成された第2貫通孔54が第2供給流路として機能する。また、第1弁収容体31のシート面32と第1弁体35のテーパ面36との間、弁組立体収納室21における縮径部21a及び第2弁収容体46のシート面47と第2弁体50のテーパ面51との間が分岐流路として機能している。
【0055】
そして、この弁組立体30,45によれば、例えば、第1流路17から作動油を吐出している場合、即ち、第1流路17側に高圧の作動油が流れている場合には、前記第1供給流路を介して第1弁体35の背面に高圧の作動油が作用する。これにより、第1弁体35は、前記圧縮コイルばね40による付勢力及び高圧の作動油から受ける圧力によって、第2弁体50に向けて進出して第1弁体35のテーパ面36と第1弁収容体31のシート面32とが当接する。斯くして、前記第1供給流路と、第2供給流路及びタンク25との間が遮断される。また、第2弁体50は、前記第1弁体35が当該第2弁体50に向けて進出することで、第1弁体35の軸体37によって軸体52が押されて後退する。これにより、第2弁体50のテーパ面51と第2弁収容体46のシート面47との間の隙間が広げられる。
【0056】
尚、第2流路18から作動油を吐出している場合、即ち、第2流路18側に高圧の作動油が流れている場合については、各弁体35,50が逆に動作することで、第2供給流路と、第1供給流路及びタンク25との間が遮断されるとともに、第1弁体35のテーパ面36と第1弁収容体31のシート面32との間の隙間が広げられる。
【0057】
また、前記カバー体20には、前記第1本体3に形成された第1貫通孔13と連通し、前記弁組立体収納室21における、第1弁収容体31に形成された凹部33と対向する内周面からカバー体20の前端面に貫通した第1貫通孔26と、同様に、第1本体3に形成された第2貫通孔14と連通し、弁組立体収納室21における、第2弁収容体46に形成された凹部48と対向する内周面からカバー体20の前端面に貫通した第2貫通孔27とが更に形成されており、第1貫通孔13及び第1貫通孔26が第1流路17側の摺接部に作動油を供給する潤滑流路として機能し、同様に、第2貫通孔14及び第2貫通孔27が第2流路18側の摺接部に作動油を供給する潤滑流路として機能する。また、当該各貫通孔26,27には、それぞれ逆流防止弁60,65が設けられている。尚、この各貫通孔26,27は、カバー体20前端面側に形成され、前記第1貫通孔13及び第2貫通孔14よりも大径である大径部26a,27aと、当該大径部26a,27aよりもカバー体20後端面側に形成され、大径部26a,27aよりも小径である小径部26b,27bとからなり、大径部26a,27aと小径部26b,27bとの間には、後述する逆流防止弁60,65の鋼球62,67が当接する当接部26c,27cが形成されている。
【0058】
前記第1及び第2逆流防止弁60,65は、実質的に同一の構成要素からなるため、第1逆流防止弁60について詳細に説明し、第2逆流防止弁65についてはその詳しい説明を省略する。尚、第2逆流防止弁65の構成要素については、括弧書きでその符号を付記する。この第1逆流防止弁60は、チェック弁として機能するものであり、一方端が前記第1本体3の後端面に当接した圧縮コイルばね61(66)と、当該圧縮コイルばね61(66)の他方端に取り付けられた鋼球62(67)とからなり、圧縮コイルばね61(66)によって、鋼球62(67)が前記各貫通孔26(27)の当接部26c(27c)に僅かな圧力で押し付けられている。
【0059】
斯くして、当該第1逆流防止弁60によれば、第1流路17側から作動油を吐出している場合には、前記第1弁収容体31に形成された凹部33から貫通孔26内に高圧の作動油が流れ込み、鋼球62が高圧の作動油から受ける圧力によって逆流防止弁60が開くことで、第1本体3に形成された第1貫通孔13を介して第1油溜まり11に作動油が供給される。尚、この際、第2流路18側には低圧の作動油が流れているため、第2逆流防止弁65が閉じた状態、即ち、鋼球67が当接部27cに押し付けられた状態となっており、第2油溜まり12からの作動油の逆流が防止されている。
【0060】
尚、第2流路18から作動油を吐出している場合には、各逆流防止弁60,65が逆に動作することで、第2油溜まり12に作動油が供給されるとともに、第1油溜まり11からの作動油の逆流が防止される。
【0061】
[内接歯車ポンプを用いた片ロッド型シリンダの駆動]
次に、以上の構成を備えた本例の内接歯車ポンプ1によって、シリンダ本体91とピストンロッド92とを備えた片ロッド型シリンダ90を駆動させる方法を、
図5及び
図6を参照して説明する。
【0062】
尚、
図5及び
図6は、片ロッド型シリンダ90のロッド側油圧室93と第1流路17とを適宜配管を介して接続し、同様に、ボア側油圧室94と第2流路18とを適宜配管を介して接続した際の油圧回路を模式的に示した図であり、
図5には、ロッド側油圧室93からボア側油圧室94に作動油を供給し、ピストンロッド92を進出させる場合を示し、
図6には、ボア側油圧室94からロッド側油圧室93に作動油を供給し、ピストンロッド92を後退させる場合を示した。尚、各図中の実線矢印は、高圧側の作動油の流れを示し、点線矢印は、低圧側の作動油の流れを示している。
【0063】
ピストンロッド92を進出させる場合には、まず、回転軸75に接続した駆動モータ(図示せず)を作動させて、外歯歯車70を正回転させる。これにより、外歯歯車70と歯部の一部が噛み合った内歯歯車80に回転が伝達され、両歯車70,80が偏心した状態で回転し、第1流路17が形成されている側、即ち、仕切片6よりも前記上流側では、外歯歯車70の歯部と内歯歯車80の歯部とが漸次離反し、この歯部間の空間が広がることによって吸引作用が生じる。そして、この吸引作用が第1流路17の開口部に作用し、ロッド側油圧室93から配管を介して、前記各歯車70,80の歯部間に作動油が吸引される。
【0064】
そして、このようにして吸い込まれた作動油は、仕切片6の内周側と外周側とに別れて、第2流路18が形成されている側、即ち、仕切片6よりも下流側へと移送され、仕切片6よりも下流側においては、各歯車70,80の歯部が漸次接近して歯部間が狭まるため、上流側から移送された作動油が加圧されて、第2流路18及びこれに接続された配管を介してボア側油圧室94に送られる。これにより、ピストンロッド92が進出する。
【0065】
また、加圧された作動油は、上述したように、第2弁体50の背面に作用するため、第2弁体50が第1弁体35に向けて進出して、テーパ面51とシート面47とが当接し、これと同時に、第1弁体35は、第2弁体50から離反する方向に後退する。これにより、第2供給流路と第1供給流路及びタンク25との間が遮断されるとともに、第1弁体35のテーパ面36と第1弁収容体31のシート面32との間の隙間が広げられる。
【0066】
したがって、ピストンロッド92を所定量だけ進出させる際に、油圧シリンダ90のロッド側油圧室93とボア側油圧室94とにおける行程容積の差分に起因する作動油量の不足が発生しても、前記テーパ面36とシート面32との間の隙間を通してタンク25内から第1供給流路を介して不足分の作動油が供給される。
【0067】
更に、第2弁収容体46に形成された凹部48から貫通孔27内に高圧の作動油が流れ込むため、鋼球67が作動油からの圧力を受けて逆流防止弁65が開き、第2油溜まり12に作動油が供給され、前記摺接部が潤滑される。
【0068】
次に、ピストンロッド92を後退させる場合について説明する。ピストンロッド92を後退させる場合には、まず、前記駆動モータ(図示せず)を作動させて、外歯歯車70を逆方向に回転させる。これにより、上記と同様に、両歯車70,80が偏心した状態で回転し、第2流路18が形成されている側では、外歯歯車70の歯部と内歯歯車80の歯部との間の空間が広がることで吸引作用が生じて、ボア側油圧室94から前記歯部間に作動油が吸引される。
【0069】
そして、吸い込まれた作動油は、第1流路17が形成されている側へと移送され、当該第1流路17が形成されている側おいて、歯部間の空間が狭まることで作動油が加圧されて、この加圧された作動油がロッド側油圧室93に送られる。これにより、ピストンロッド92が後退する。
【0070】
尚、この場合も、上述したように、加圧された作動油が第1弁体35の背面に作用して、第1弁体35が第2弁体50に向けて進出し、テーパ面36とシート面32とが当接するとともに、第2弁体50が第1弁体35から離反する方向に後退する。したがって、第1供給流路と第2供給流路及びタンク25との間が遮断されるとともに、第2弁体50のテーパ面51と第2弁収容体46のシート面47との間の隙間が広げられる。
【0071】
したがって、ピストンロッド92を所定量だけ後退させる際に、油圧シリンダ90のロッド側油圧室93とボア側油圧室94とにおける行程容積の差分に起因する作動油量の余剰が発生しても、前記テーパ面51とシート面46との間の隙間を通して第2供給流路からタンク25内に余剰分の作動油が回収される。尚、本例の内接歯車ポンプ1は、各シート面32,47とテーパ面36,51とが前記中立状態おいて隙間を空けて対向するようになっているため、テーパ面51とシート面46との間の隙間を作動油が流通する際の力によってこの隙間が狭まるのが防止され、隙間の幅が一定に保たれる。
【0072】
また、この場合も、第1弁収容体31に形成された凹部33から貫通孔26内に高圧の作動油が流れ込むことによって、逆流防止弁60が開き、第1油溜まり11に作動油が供給されるため、前記摺接部が潤滑される。
【0073】
以上のように、本例の内接歯車ポンプ1によれば、作動油の過不足分を回収・供給する機構を設けたことで、クローズドループな油圧回路を構成することができ、更に、この機構をカバー体20内に設けたことにより、油圧装置自体を小型化することができ、その構造を従来よりも単純な構造にすることができる。また、油圧シリンダ90の駆動に本例の内接歯車ポンプ1を用いることで、従来よりも配管で接続する箇所が少なくなるため、組立コストが低減し、また、メンテナンス時の作業性も向上する。更に、配管の数が従来よりも少なくなることで、圧縮油量が減少し、従来よりも応答性が向上している。
【0074】
また、摺接部に作動油を供給する潤滑流路を形成し、この潤滑流路内に摺接部からの作動油の逆流を防止する逆流防止弁60,65を設けたことにより、歯車70,80の回転方向を変えても、常に高圧側の流路から前記摺接部に高圧の作動油を供給することができ、同時に、低圧側の流路からの作動油の逆流を防止することができる。
【0075】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明の採り得る具体的な態様は何らこれに限定されるものではない。
【0076】
上例においては、ロッド側油圧室93とボア側油圧室94とに交互に作動油を供給するようにして、油圧室に作動油が供給されることにより、ピストンロッド92が進退する態様を示したが、これに限られるものではない。例えば、ピストンロッドに対して、当該ピストンロッドを引っ張る方向或いは押し込める方向に力が作用した状態で、反力を与えながら徐々にピストンロッドを進退させる態様を例示することができる。これについて、
図7及び
図8を参照して説明する。
【0077】
図7及び
図8は、
図6及び
図7と同様に、片ロッド型シリンダ90の各油圧室93,94と内接歯車ポンプ1の各流路17,18とを適宜配管で接続した際の油圧回路を模式的に示した図であり、ピストンロッド90に対して、このピストンロッド90が引っ張られる方向及び押し込められる方向に力が作用した状態を理解し易くするために、2つの油圧室96,97が形成された両ロッド型シリンダ95を、ピストンロッド90の先に接続した状態を図示した。尚、
図7は、ピストンロッド92を徐々に進出させる場合を示した図であり、
図8は、ピストンロッド92を徐々に後退させる場合を示した図であり、各図中の実線矢印は、高圧側の作動油の流れを示し、点線矢印は、低圧側の作動油の流れを示している。
【0078】
まず、両ロッド型シリンダ95の油圧室96に高圧の作動油が供給され、ピストンロッド92に対して、このピストンロッド92を引っ張る方向に力が作用した状態において、ピストンロッド92を徐々に進出させる場合について説明する。この場合、駆動モータのトルクの向きを歯車70,80が逆回転する向きにすることで、第1流路17側が高圧側となった状態で、歯車70,80が正回転して、第2流路18側に作動油が移送され、ボア側油圧室94に作動油が供給される。
【0079】
また、第1流路17側が高圧側となることで、上述したように、第1供給流路と第2供給流路及びタンク25との間が遮断されるとともに、第2弁体50のテーパ面51と第2弁収容体46のシート面47との間の隙間が広げられる。したがって、作動油量の不足が生じても、タンク25内から第2供給流路を介してボア側油圧室94に不足分の作動油が供給される。
【0080】
次に、両ロッド型シリンダ95の油圧室97に高圧の作動油が供給され、ピストンロッド92に対して、このピストンロッド92を押し込める方向に力が作用した状態において、ピストンロッド92を徐々に後退させる場合について説明する。この場合、駆動モータのトルクの向きを歯車70,80が正回転する向きにすることで、第2流路18側が高圧側となった状態で、歯車70,80が逆回転して、第1流路17側に作動油が移送されて、ロッド側油圧室93に作動油が供給される。
【0081】
この場合も、第2流路18側が高圧側となることで、上述したように、第2供給流路と第1供給流路及びタンク25との間が遮断されるとともに、第1弁体35のテーパ面36と第1弁収容対31のシート面32との間の隙間が広がる。これにより、作動油量の余剰が発生しても、第1供給流路を介してタンク25内に余剰分の作動油が回収される。
【0082】
また、上例においては、過不足調整部としてタンク25を採用したが、
図9に示す内接歯車ポンプ1’のように、タンク25に代えて、過不足調整器100を採用しても良い。適宜継手を介して貫通孔24に過不足調整器100を接続するようにしても良い。この過不足調整器100は、伸縮自在な弾性体からなる袋状の収容部101を有し、当該収容部101と前記貫通孔24とが適宜継手を介して接続されており、前記貫通孔24を介して第2貫通孔10から収容部101内に余剰分の作動油を充満状態で収容し、貫通孔24を介して第1貫通孔9に不足分の作動油を供給するようになっている。尚、前記収容部101内の容積は、回収される余剰分の作動油の量を基に、当該収容部101内に極力空気が含まれることのないような容積となるようにする。このように、過不足調整部として過不足調整器100を採用しても、上記と同様に、相応の効果を奏する。また、過不足調整器100を採用することによって、取付姿勢が制限されることもなく、姿勢の調整などを行う必要がなく、更に、油圧回路への作動油の出し入れを行う際の圧力損失を抑えて、エネルギー効率を高めることができる。
【0083】
更に、上例では、内接歯車ポンプ1を用いて片ロッド型油圧シリンダを駆動させる態様について説明したが、これに限られるものではなく、内接歯車ポンプ1は、両ロッド型油圧シリンダの駆動にも用いることができる。尚、両ロッド型油圧シリンダは、行程容積の差分に起因する作動油量の不足又は余剰が理論的には発生しないが、作動油が何らかの要因で油圧回路内から漏れ出し、作動油量の不足が生じる場合がある。このような場合、前記内接歯車ポンプ1を用いて両ロッド型油圧シリンダを駆動させるようにすることで、不足分(漏れ分)を油圧回路内に供給することができる。また、内接歯車ポンプ1は油圧シリンダの駆動にのみ用いられるものではなく、他の油圧機器の駆動にも用いることができる。
【0084】
また、上例では、付勢機構として圧縮コイルばね40を用いたが、例えば、実開昭54−43602のように、ポンプの吸入負圧及び吐出圧力のパイロット圧力を付勢機構として利用するようにしても良い。