(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記従来のスイングアームでは、以下に示すような問題が存在する。
特許文献1に記載の構成においては、軸受装置の外周部と貫通孔の内周面との間に介在する接着剤の塗布厚さや硬化具合が周方向で異なることがある。また、特許文献2に記載の構成においては、トレランスリングのテンションが、製造誤差や製造時の残留応力等によって周方向で異なることがある。これらのことから、貫通孔の内周面と転がり軸受の外周面との間に作用する力が、貫通孔の周方向に沿った位置ごとにばらつき易い。
しかもこれらの両構成とも、軸受装置を貫通孔に挿入する挿入ストロークが長いため、軸受装置が傾くことがある。この場合もやはり、貫通孔の内周面と転がり軸受の外周面との間に作用する力が、貫通孔の周方向に沿った位置ごとにばらつき易い。
以上のように、貫通孔の内周面と転がり軸受の外周面との間に作用する力が、貫通孔の周方向に沿った位置ごとにばらつくと、トルクウェーブが発生し易いという問題がある。
【0006】
また前記従来のスイングアームでは、軸受装置を貫通孔に挿入するときに、一方の転がり軸受と他方の転がり軸受とで、貫通孔への挿入ストロークが異なっている。この挿入ストロークが大きいほど、転がり軸受が貫通孔に対して傾く可能性が高まったり、転がり軸受が貫通孔の内周面と強く擦れることによって生じたバリが貫通孔の内周面と転がり軸受との間に噛み込む可能性が高まったりする。その結果、一方の転がり軸受と他方の転がり軸受とで、トルクが異なってしまう可能性がある。さらに、一方の転がり軸受と他方の転がり軸受とが芯ずれしてスイングアームの転動特性に悪影響が及ぶ可能性もある。
【0007】
また、前記従来のスイングアームにおいて転がり軸受に予圧を付与する場合には、転がり軸受に予圧を付与した後、軸受装置を貫通孔に挿入する。しかしながら、軸受装置を貫通孔に挿入するときに転がり軸受に前記軸方向に圧縮力が加えられることで、予期せぬトルク上昇を生じさせるおそれがある。また、軸受装置を貫通孔に挿入した後においては、上記の接着剤の硬化やトレランスリングのテンションによって、転がり軸受に外周側から径方向内側に圧縮力が加えられることで、やはりトルク上昇を生じさせる恐れがある。
以上のように、前記従来のスイングアームでは、品質を向上させることについて改善の余地がある。
【0008】
本発明は、前述した事情に鑑みてなされたものであって、品質を向上させることができるスイングアーム、情報記録再生装置、スイングアームの組み立て方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するために、本発明は以下の手段を提案している。
本発明に係るスイングアームは、貫通孔が形成された基部、および前記基部に突設されたアーム部を有する回動部材と、前記基部に形成された貫通孔内に配置され、前記回動部材を、前記貫通孔の軸線回りに回動可能に支持する軸受装置と、を備える情報記録再生装置用のスイングアームであって、前記貫通孔の内周面においてこの貫通孔の軸方向の中央部には、この貫通孔の径方向の内側に向けて突出する段差部が設けられ、前記軸受装置は、前記貫通孔内に挿通されるシャフトと、前記貫通孔の内周面と前記シャフトの外周面との間に圧入された一対の転がり軸受と、を備え、前記一対の転がり軸受は、前記段差部に対して前記軸方向の両側に配置されていることを特徴とする。
【0010】
この発明によれば、一対の転がり軸受が、段差部に対して前記軸方向の両側に配置されているので、一対の転がり軸受を、段差部に対して前記軸方向の両側から挿入することができる。これにより、転がり軸受が圧入される距離を短くして、転がり軸受を傾きにくくすることができる。また、圧入距離が短いほど、バリが噛み込む可能性も低い。したがって、貫通孔の内周面と転がり軸受の外周面との間に作用する力が、貫通孔の周方向に沿った位置ごとにばらつくのを抑えることができるとともに、一対の転がり軸受の軸線が位置ずれするのを抑えることが可能になり、トルクウェーブの発生を抑制することができる。
また、一対の転がり軸受を、段差部に対して軸方向の両側から挿入することで、いずれか一方の転がり軸受の挿入ストロークが大きくなるのを回避し、一方の転がり軸受と他方の転がり軸受とで、貫通孔への挿入ストロークを同様のものとすることができる。これにより、一方の転がり軸受と他方の転がり軸受とでトルクが異なるのを抑えることが可能になり、トルクウェーブの発生を確実に抑制することができる。
しかも、転がり軸受を、接着剤やトレランスリングを用いて固定する必要もなく、この点においても、貫通孔の内周面と転がり軸受の外周面との間に作用する力が、貫通孔の周方向に沿った位置ごとにばらつくのを抑えることができる。これにより、トルクウェーブの発生を一層確実に抑制することができる。
また、転がり軸受に予圧を付与する場合には、転がり軸受を、貫通孔の内周面とシャフトの外周面との間に圧入した後に、転がり軸受に予圧を付与することが可能になる。これにより、予圧の付与後、予期せぬトルク上昇も抑制することができる。
【0011】
また、前記貫通孔の内周面および前記転がり軸受の外周面のうちの少なくとも一方には、前記転がり軸受を前記貫通孔内に圧入することで形成されたバリが進入するバリ逃げ凹部を設けてもよい。
【0012】
この場合、転がり軸受を貫通孔に圧入していくときにバリが形成されても、このバリをバリ逃げ凹部に進入させ、転がり軸受と貫通孔との間にバリが噛み込まれるのを防ぐことができる。これによっても、貫通孔の内周面と転がり軸受の外周面との間に作用する力が、貫通孔の周方向に沿った位置ごとにばらつくのを抑え、トルクウェーブの発生を抑制することができる。
【0013】
また、前記バリ逃げ凹部は、前記貫通孔の内周面のうち、前記段差部との接続部分が前記径方向の外側に向けて窪んでなるものとしてもよい。
【0014】
この場合、バリ逃げ凹部を、貫通孔を形成するときに容易に形成できる。
【0015】
また、前記アーム部は、前記基部に、前記軸方向に間隔をあけて複数配設され、前記段差部のうちの少なくとも一部は、複数の前記アーム部の前記軸方向の内側に位置し、前記基部には、前記軸方向に隣り合う前記アーム部の間に開口するスリット部が形成され、前記スリット部の前記径方向の内側の端部は、前記段差部内に位置していてもよい。
【0016】
この場合、スイングアームの基部にスリット部を形成することにより、磁気記録媒体をこのスリット部まで挿入することができる。これにより、スイングアームの小型化、このスイングアームを備えた情報記録再生装置の小型化を図ることができる。
【0017】
また、前記軸受装置には、前記転がり軸受を前記軸方向に沿って反段差部側から覆うハブキャップが備えられ、前記ハブキャップは、前記転がり軸受に予圧を付与していてもよい。
【0018】
この場合、ハブキャップが、転がり軸受に予圧を付与しているので、ハブキャップをシャフトに接合することで転がり軸受に予圧を付与することが可能になり、別途予圧を付与するための作業を不要とすることができる。これにより、このスイングアームの製造の簡便化を図ることができる。
【0019】
また、前記シャフトには、このシャフトの前記軸方向の端面に開口する凹部が形成され、前記ハブキャップは、このハブキャップに設けられ前記凹部に挿入された挿入部を介して前記シャフトに接合されているようにしてもよい。
【0020】
この場合、ハブキャップが前記挿入部を介してシャフトに接合されているので、シャフトの前記軸方向の大きさを維持しつつ、シャフトの凹部およびハブキャップの挿入部それぞれを前記軸方向に長く形成することができる。したがって、挿入部を凹部に挿入させるときの前記軸方向のストロークを長く確保するとともに、挿入部の凹部に対する挿入代を大きくすることができる。これにより、この軸受装置の大型化を抑えつつ、ハブキャップをシャフトに精度良く組み付けてかつ強固に接合することができる。
【0021】
本発明の情報記録再生装置は、上記したようなスイングアームと、前記シャフトに接続されたハウジングと、前記回動部材に装着され、磁気記録媒体に情報の記録および再生を行うスライダと、を備えたことを特徴とする。
【0022】
この発明によれば、前記スイングアームを備えているので、貫通孔の内周面と転がり軸受の外周面との間に作用する力が、貫通孔の周方向に沿った位置ごとにばらつくのを抑えるとともに、両転がり軸受の軸線が、前記径方向に位置ずれするのを抑えることが可能になり、トルクウェーブの発生を抑制することができる。
【発明の効果】
【0029】
本発明に係るスイングアーム、情報記録再生装置、スイングアームの組み立て方法によれば、品質を向上させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下では、本発明の実施形態について添付図面を参照して説明する。
(情報記録再生装置)
図1は情報記録再生装置の斜視図であり、
図2は
図1のA−A線における側面断面図である。
図1に示すように、この情報記録再生装置1は、記録層を有するディスク(磁気記録媒体)Dに対して、書き込みおよび読み取りを行う装置である。情報記録再生装置1は、スイングアーム8Aと、スイングアーム8Aの先端側に支持されたヘッドジンバルアセンブリ4と、ヘッドジンバルアセンブリ4の先端に装着されたスライダ2と、ヘッドジンバルアセンブリ4をスキャン移動させるアクチュエータ(VCM:ボイスコイルモータ)6と、ディスクDを回転させるスピンドルモータ7と、情報に応じて変調した電流をスライダ2に供給する制御部5と、これら各構成品を内部に収容するハウジング9と、を備えている。
【0032】
ハウジング9は、アルミニウム等の金属材料からなり、上部に開口部を有する箱型形状のものであって、平面視四角形状の底部9aと、底部9aの周縁部から垂直に立設された周壁(不図示)とで構成されている。周壁に囲まれたハウジング9の内側には、上述した各構成品を収容する凹部が形成される。底部9aの略中心には、上記スピンドルモータ7が取り付けられており、該スピンドルモータ7に中心孔を嵌め込むことでディスクDが着脱自在に固定されている。
【0033】
スピンドルモータ7の側方には、スイングアーム8Aが配置されている。このスイングアーム8Aは、アーム本体(回動部材)11と、軸受装置10と、を備える。
図2に示すように、アーム本体11は、貫通孔12が形成された基部11aと、基部11aから貫通孔12の軸方向(以下、軸方向という)に直交する方向に突設され、軸方向に間隔をあけて配設された複数のアーム部11bと、を有する。
【0034】
軸受装置10は、貫通孔12内に貫通孔12と同軸に配置され、アーム本体11を貫通孔12の軸線回り、つまりこの軸受装置10の中心軸L1回りに回動自在に支持する。
図1に示すように、アーム本体11の基部11aは、上述したアクチュエータ6に接続されている。またアーム本体11のアーム部11bは、ディスクDの表面と平行に延設され、その先端にヘッドジンバルアセンブリ4が接続されている。ヘッドジンバルアセンブリ4は、サスペンション3と、サスペンション3の先端に装着され、ディスクDの表面に対向配置されたスライダ2とを備えている。スライダ2は、ディスクDに対する情報の書き込み(記録)を行う記録素子と、ディスクDから情報の読み取り(再生)を行う再生素子とを備えている。
【0035】
上記のように構成された情報記録再生装置1において、情報の記録または再生を行うには、まずスピンドルモータ7を駆動して、中心軸L2の周りにディスクDを回転させる。
またアクチュエータ6を駆動して、中心軸L1の周りにアーム本体11を回動させる。これにより、ヘッドジンバルアセンブリ4の先端に配置されたスライダ2を、ディスクDの表面の各部にスキャン移動させることができる。そして、スライダ2の記録素子または再生素子を駆動することにより、ディスクDに対する情報の記録または再生を行うことができる。
【0036】
(第1実施形態、スイングアーム)
ここで
図2に示すように、スイングアーム8Aでは、前記貫通孔12の内周面12aにおける軸方向の中央部に、この貫通孔12の径方向の内側に向けて突出する段差部15が設けられている。段差部15において、軸方向の一方側および他方側それぞれに向く部分には、貫通孔12の軸線に直交する円環状の平面部15aが形成されている。
また、貫通孔12の内周面12aには、段差部15との接続部分、すなわち平面部15aの外周側に、貫通孔12の周方向全周にわたって連続して径方向外側に窪んだバリ逃げ凹部18が形成されている。このバリ逃げ凹部18は、後述の転がり軸受30を貫通孔12内に圧入することで形成されたバリが進入するよう形成されている。
【0037】
軸受装置10は、貫通孔12内に挿通されるシャフト20と、貫通孔12の内周面12aとシャフト20の外周面20aとの間に配置され、軸方向に並んで配置された一対の転がり軸受30(第1転がり軸受31および第2転がり軸受32)と、シャフト20に接合され、転がり軸受31を軸方向の外側から覆うハブキャップ80Aと、を備えている。これらのシャフト20、転がり軸受30およびハブキャップ80Aは、共通軸上に同軸に配置されていて、この共通軸が、軸受装置10の中心軸L1となっている。
【0038】
なお本願では、一対の転がり軸受31,32の軸方向の内側(一対の転がり軸受31,32のうち一方の転がり軸受から見て他方の転がり軸受側)を「軸方向の内側」と呼び、一対の転がり軸受31,32の軸方向の外側(一対の転がり軸受31,32のうち一方の転がり軸受から見て他方の転がり軸受の反対側、軸方向に沿って反段差部側)を「軸方向の外側」と呼ぶ。
【0039】
シャフト20は、アルミニウムやステンレス等の金属材料により略円柱形状に形成され、ハウジング9(
図1参照)に接続されている。シャフト20の軸方向の一方側にはフランジ25が形成されている。またシャフト20には、このシャフト20の軸方向の端面に開口する凹部27が形成されている。凹部27は、シャフト20を軸方向に貫通していて、シャフト20の軸方向の両端面に各別に開口している。凹部27は、前記中心軸L1と同軸に配置されている。フランジ25において軸方向内側を向く内面25aには、シャフト20の外周部に沿って、軸方向内側に向けて突出したリング状凸部26が形成されている。
【0040】
転がり軸受30としての第1転がり軸受31および第2転がり軸受32は、同形状であって、面対象に配置されている。
転がり軸受30は、シャフト20に固定された内輪36と、段差部15の平面部15aに当接する外輪40と、内輪36と外輪40との間に配置された複数の転動体35と、転動体35を転動自在に保持するリテーナ50と、転動体35の軸方向の両側に配置され内輪36と外輪40との隙間を封止するシールド(外側シールド60b)と、を備えている。
【0041】
内輪36および外輪40は、金属材料により略円筒形状に形成されている。
内輪36の外周面における軸方向の中心には、転動溝38が形成されている。転動溝38は、内輪36の全周にわたって形成されている。
外輪40の軸方向の中央付近には、外輪本体部45が形成されている。外輪本体部45の内周面のうち外輪40の軸方向の中心には、転動溝48が形成されている。転動溝48は、外輪本体部45の全周にわたって形成されている。
転動体35は、金属材料により球状に形成されている。転動体35は、各転動溝38,48の内部に配置され、各転動溝38,48に沿って転動するようになっている。
【0042】
ここで、前記外輪本体部45の軸方向の外側には、外側シールド60bを保持する外側シールド保持部40bが形成されている。一方、外輪本体部45の軸方向の内側には、後述するスペーサ突部72を保持するスペーサ保持部40aが形成されている。
【0043】
外輪40の外径は、外輪40の軸方向の全体について同等に形成されている。一方、外輪40の内径は、外輪本体部45の内径が最小となるように形成されている。スペーサ保持部40aの内径および外側シールド保持部40bの内径は同等であって、外輪本体部45の内径より大きく形成されている。
【0044】
外側シールド60bは、外輪本体部45の軸方向の側面に当接する当接部63と、当接部63の径方向の内側に配置され、内輪36と外輪40との隙間を封止する封止部61と、当接部63と封止部61との間を連結する連結部62とを備えている。また外側シールド60bは、当接部63の外周から、転動体35とは反対方向に立設された爪部65を備えている。なお爪部65は、例えば外側シールド60bの周方向に等角度間隔で複数形成されている。
【0045】
内輪36と外輪40との間に外側シールド60bを圧入すると、外輪40の外側シールド保持部40bの内周面に爪部65が当接し、外側シールド60bの径方向の内側に向かって爪部65が屈曲(弾性)変形する。これにより、外側シールド保持部40bの内周面に外側シールド60bが保持される。
【0046】
このような軸受装置10は、上記の転がり軸受30としての第1転がり軸受31および第2転がり軸受32が、貫通孔12内に収容され、段差部15に対して軸方向の両側に配置されている。ここで、貫通孔12の内周面に形成された段差部15は、その内径が転がり軸受30の内輪36の外径より若干大きく形成されている。これにより、転がり軸受30は、外輪40のみが段差部15の平面部15aに当接した状態で、貫通孔12内に収容されている。
そして、これら転がり軸受30としての第1転がり軸受31および第2転がり軸受32の内輪36,36にシャフト20が挿入され、第1転がり軸受31は、フランジ25により軸方向の外側から覆われている。このとき、シャフト20は、フランジ25のリング状凸部26が第1転がり軸受31の内輪36の側面に当接した状態で配置されている。これにより、フランジ25の内面25aの外周部と第1転がり軸受31の外輪40との間には、軸方向の隙間が設けられている。
【0047】
ハブキャップ80Aは、第2転がり軸受32を軸方向の外側(軸方向において段差部15の反対側)から覆っている。ハブキャップ80Aは、軸方向を向く平板状に形成されている。ハブキャップ80Aの外径は、第2転がり軸受32の外径と同等となっている。ハブキャップ80Aの中央部には、シャフト20が挿入される貫通孔81が形成されている。この貫通孔81には、シャフト20が挿入・固定されている。
このハブキャップ80Aは、貫通孔81にシャフト20を圧入したり、貫通孔81に挿入したシャフト20と接着したりすることによって、シャフト20に固定されている。
ここで、ハブキャップ80Aとシャフト20とにより、第1転がり軸受31、第2転がり軸受32に予圧を付与することもできる。予圧が付与されることで、内輪36および外輪40と転動体35とのがたつきを抑えることができる。図示の例では、ハブキャップ80Aの内面80aは、径方向の外側の逃げ面83と径方向の内側の押圧面84とが段差面85を介して接続されてなる。逃げ面83は、前記中心軸L1と同軸の環状に形成されている。押圧面84は、ハブキャップ80Aの内面80aにおいて逃げ面83よりも径方向の内側で、かつ貫通孔81の径方向の外側に位置する部分に設けられている。押圧面84は、逃げ面83よりも軸方向の内側に位置している。段差面85は、内輪36よりも径方向の外側で、かつ外輪40よりも径方向の内側に位置している。
前記ハブキャップ80Aでは、押圧面84が、第2転がり軸受32の内輪36を軸方向の内側に向けて押圧している。この押圧面84は、シャフト20の端面からは軸方向に離間している。また逃げ面83は、外輪40の端面から軸方向に離間している。
【0048】
(スイングアームの組み立て方法)
上記したような軸受装置10を備えたスイングアーム8Aは、以下のようにして組み立てられる。
まず、シャフト20に第1転がり軸受31を組み込む。このとき、シャフト20と第1転がり軸受31の内輪36は、圧入または接着等によって接合してもよい。
次いで、第1転がり軸受31を組み込んだシャフト20を、アーム本体11の貫通孔12に軸方向の一方側から圧入し、第1転がり軸受31を段差部15の平面部15aに当接させる。
次に、貫通孔12に軸方向の他方側から第2転がり軸受32を圧入し、段差部15の平面部15aに当接させる。
続いて、ハブキャップ80Aを、貫通孔81にシャフト20を挿入させて装着する。このとき、ハブキャップ80Aを軸方向の内側に加圧することによって、リング状凸部26,押圧面84を介して第1転がり軸受31、第2転がり軸受32に予圧を付与することもできる。ハブキャップ80Aをシャフト20に接着する場合は、シャフト20とハブキャップ80Aの少なくとも一方に接着剤を塗布しておき、第1転がり軸受31、第2転がり軸受32に所定の予圧を付与した状態で接着剤を硬化させる。
これにより、軸受装置10を一体に備えたスイングアーム8Aの組み立てが完了する。
【0049】
以上説明したように、本実施形態に係るスイングアーム8Aおよびスイングアーム8Aの組み立て方法によれば、一対の転がり軸受30としての第1転がり軸受31および第2転がり軸受32が、段差部15に対して軸方向の両側に配置されているので、一対の第1転がり軸受31および第2転がり軸受32を、段差部15に対して軸方向の両側から挿入することができる。これにより、第1転がり軸受31および第2転がり軸受32のそれぞれが圧入される距離を短くすることができ、第1転がり軸受31や第2転がり軸受32が傾きにくくなる。また、圧入距離が短いほど、バリが噛み込む可能性も低い。したがって、貫通孔12の内周面と第1転がり軸受31および第2転がり軸受32の外周面との間に作用する力が、貫通孔12の周方向に沿った位置ごとにばらつくのを抑えることができるとともに、第1転がり軸受31と第2転がり軸受32の軸線が位置ずれするのを抑えることができる。
また、一対の第1転がり軸受31および第2転がり軸受32を、段差部15に対して軸方向の両側から挿入することで、第1転がり軸受31および第2転がり軸受32のいずれか一方の挿入ストロークが大きくなるのを回避し、第1転がり軸受31と第2転がり軸受32とで、貫通孔12への挿入ストロークを同様のものとすることができる。これにより、第1転がり軸受31と第2転がり軸受32とで、トルクが異なるのを抑えることができる。
また、第1転がり軸受31および第2転がり軸受32を、接着剤やトレランスリングを用いて固定する必要もなく、この点においても、貫通孔12の内周面と第1転がり軸受31および第2転がり軸受32の外周面との間に作用する力が、貫通孔12の周方向に沿った位置ごとにばらつくのを抑えることができる
以上のようにして、トルクウェーブの発生を抑制することができる。
【0050】
加えて、段差部15の外周側にバリ逃げ凹部18が形成されているので、第1転がり軸受31および第2転がり軸受32を貫通孔12に圧入していくときにバリが形成されても、このバリをバリ逃げ凹部18に進入させ、第1転がり軸受31および第2転がり軸受32と貫通孔12との間にバリが噛み込むのを防ぐことができる。これによっても、貫通孔12の内周面と第1転がり軸受31および第2転がり軸受32の外周面との間に作用する力が、貫通孔12の周方向に沿った位置ごとにばらつくのを抑え、トルクウェーブの発生を抑制することができる。
【0051】
また、貫通孔12内に挿入した第1転がり軸受31および第2転がり軸受32に対して、ハブキャップ80Aによって後から予圧を付与することができるので、予圧を精度よくコントロールすることができ、予圧の付与後、予期せぬトルク上昇も抑制することができる。
さらに、第1転がり軸受31および第2転がり軸受32は、軸方向において、段差部15と、シャフト20のフランジ25およびハブキャップ80Aとによって挟み込まれることによって固定されている。したがって、第1転がり軸受31および第2転がり軸受32は、貫通孔12に対して径方向に強いテンションで固定する必要がなく、貫通孔12に対しても軽く圧入すれば済む。その結果、第1転がり軸受31および第2転がり軸受32に予圧する場合も、径方向外周側から作用する力によって、予圧の大きさに影響が生じるのを防ぐことができ、予圧を高精度にコントロールできる。
また、ハブキャップ80Aが第1転がり軸受31および第2転がり軸受32に予圧を付与しているので、ハブキャップ80Aをシャフト20に接合することで転がり軸受30に予圧を付与することが可能になり、別途予圧を付与するための作業を不要とすることができる。これにより、このスイングアーム8Aの製造の簡便化を図ることができる。
【0052】
加えて、第1転がり軸受31が組み込まれたシャフト20を貫通孔12に挿入するようにしたので、第1転がり軸受31を貫通孔12に円滑に圧入することが可能になり、スイングアーム8Aを簡便に組み立てることができる。
【0053】
なお本実施形態では、シールドとして、外側シールド60bのみを備えているものとしたが、これに限られない。例えば、外側シールドに加えて、外輪本体部の軸方向の内側に設けられた内側シールドを備えていてもよい。この場合、内輪と外輪との隙間が閉塞されるので、その隙間に充填されたグリースが流出するのを防止することができる。これにより、転がり軸受が焼き付いて円滑な回転が不可能になることがなく、転がり軸受の性能を確保することができる。また、流出したグリースが磁気記録媒体の表面に付着して書き込みエラーや読み取りエラーが発生するのを防止することができる。さらに、内輪と外輪との隙間が閉塞されるので、その隙間にゴミが入り込むのを防止することができる。これにより、転がり軸受の円滑な回転が不可能になることがなく、転がり軸受の性能を確保することができる。内側シールドは、例えば外側シールドと同一形状に形成される等していてもよい。
【0054】
(第1実施形態の変形例)
なお、上記第1実施形態で示したスイングアーム8Aの組み立て方法においては、ハブキャップ80Aを軸方向の内側に加圧することによって、第1転がり軸受31、第2転がり軸受32に予圧を付与するようにしたが、これに限るものではない。
ハブキャップ80Aの装着に先立ち、貫通孔12内に配置された第2転がり軸受32に対し、治具等を介して所定の予圧を付与した後に、ハブキャップ80Aを装着するようにしてもよい。この場合、第2転がり軸受32は、圧入または接着により、貫通孔12に固定する。
さらには、このように、第2転がり軸受32に対し、治具等を介して所定の予圧を付与し、圧入や接着により第2転がり軸受32を貫通孔12に固定する構成においては、ハブキャップ80Aの装着を省略してもよい。
【0055】
また、上記第1実施形態では、バリ逃げ凹部18を、貫通孔12の内周面12aから径方向外側に窪むように形成したが、これに限るものではない。
例えば、
図3に示すように、バリ逃げ凹部18は、段差部15の平面部15aに、軸方向の内側に向けて、貫通孔12の内周面12aに連続するよう形成してもよい。
また、
図4に示すように、バリ逃げ凹部18は、第1転がり軸受31、第2転がり軸受32の外輪40において、軸方向の内側に位置して段差部15の平面部15aに対向する面の外周縁部に、径方向内側に窪むよう形成してもよい。
【0056】
(第2実施形態)
図5は、第2実施形態に係るスイングアームの側面断面図である。なお、この第2実施形態においては、第1実施形態における構成要素と同一の部分については同一の符号を付し、その説明を省略し、異なる点についてのみ説明する。
本実施形態に係るスイングアーム8Bは、前記段差部15が、軸方向において、アーム本体11の複数のアーム部11bが設けられた範囲の内側に位置している。そして、アーム本体11の基部11aには、軸方向において互いに対向するアーム部11b,11bの間に形成された空間Sに開口するスリット部96が形成されている。このスリット部96は、基部11aの径方向内周側に向けて延び、その内周端部96bが段差部15の内周側端部15b近傍まで形成されている。
【0057】
このようなスイングアーム8Bを備えた情報記録再生装置1(
図1参照)においては、上記第1実施形態と同様、トルクウェーブを防ぐとともに、予圧を高精度にコントロールでき、品質を向上させることができる。
さらに、本実施形態のスイングアーム8Bを備えた情報記録再生装置1においては、ディスクDが、アーム部11b,11b間の空間Sだけでなく、さらにスリット部96まで挿入したレイアウトとすることができる。これによって、スイングアーム8Bを短くすることができ、情報記録再生装置1も小型化を図ることができる。
加えて、スイングアーム8Bを短くすることによって、スイングアーム8Bの旋回速度を高めることが可能となり、情報記録再生装置1の動作の高速化を図ることが可能となる。
【0058】
(第3実施形態)
図6は、第3実施形態に係るスイングアームの要部の拡大断面図である。なお、この第3実施形態においては、第1実施形態における構成要素と同一の部分については同一の符号を付し、その説明を省略し、異なる点についてのみ説明する。
本実施形態のスイングアーム8Cは、ハブキャップ80Cには、貫通孔81を設けるのに代えて、シャフト20の凹部27に挿入される挿入部82が設けられている。挿入部82は、ハブキャップ80Cから軸方向の内側に向けて突設されている。挿入部82は、前記中心軸L1と同軸に配置され、凹部27内に圧入されている。これにより、ハブキャップ80Cが、この挿入部82を介してシャフト20に接合されている。
【0059】
ハブキャップ80Cにおいて軸方向の内側を向く内面80aは、シャフト20の端面との間に軸方向の隙間が設けられている。そして、ハブキャップ80Cは、転がり軸受30に予圧を付与している。ハブキャップ80Cは、第2転がり軸受32の軸方向の内側に向けて内輪36を押圧することで、第2転がり軸受32に予圧を付与している。
【0060】
図示の例では、ハブキャップ80Cの内面80aは、径方向の外側の逃げ面91と径方向の内側の押圧面92とが段差面93を介して接続されてなる。逃げ面91は、前記中心軸L1と同軸の環状に形成されている。押圧面92は、ハブキャップ80Cの内面80aにおいて逃げ面91よりも径方向の内側に位置する部分に設けられている。押圧面92は、逃げ面91よりも軸方向の内側に位置している。段差面93は、内輪36よりも径方向の外側で、かつ外輪40よりも径方向の内側に位置している。
【0061】
前記ハブキャップ80Cでは、押圧面92が、第2転がり軸受32の内輪36を軸方向の内側に向けて押圧している。この押圧面92は、シャフト20の端面からは軸方向に離間している。また逃げ面91は、外輪40の端面から軸方向に離間している。
【0062】
以上説明したように、本実施形態に係るスイングアーム8Cによれば、上記第1実施形態と同様、トルクウェーブを防ぐとともに、予圧を高精度にコントロールでき、品質を向上させることができる。
さらに、本実施形態に係るスイングアーム8Cによれば、ハブキャップ80Cが前記挿入部82を介してシャフト20に接合されているので、シャフト20の軸方向の大きさを維持しつつ、シャフト20の凹部27およびハブキャップ80Cの挿入部82それぞれを軸方向に長く形成することができる。したがって、挿入部82を凹部27に挿入させるときの軸方向のストロークを長く確保するとともに、挿入部82の凹部27に対する挿入代を大きくすることができる。これにより、この軸受装置10の大型化を抑えつつ、ハブキャップ80Cをシャフト20に精度良く組み付けてかつ強固に接合することができる。
【0063】
また凹部27が、シャフト20を軸方向に貫通しているので、例えば本実施形態のように、挿入部82を凹部27に、軸方向の他方側から圧入することでハブキャップ80Cをシャフト20に固定するような構成において、挿入部82を凹部27に圧入した後、ハブキャップ80Cをシャフト20から離脱させたい場合などに、挿入部82を、軸方向の一方側から押し込んで離脱させることができる。したがって、転がり軸受30の品質に影響を与えることなくハブキャップ80Cをシャフト20から離脱させることが可能になり、この軸受装置10の歩留まりを向上させることができる。
【0064】
(第4実施形態)
図7は、第4実施形態に係るスイングアームの要部の拡大断面図である。なお、この第4実施形態においては、第3実施形態における構成要素と同一の部分については同一の符号を付し、その説明を省略し、異なる点についてのみ説明する。
【0065】
第4実施形態に係るスイングアーム8Dでは、転動体35は、ハブキャップ80Cに対して、内輪36と外輪40との間を通して軸方向の内側から露出していて、シールドが設けられていない。図示の例では、第2転がり軸受32の外側シールドおよび第1転がり軸受31の外側シールドが設けられていない。これにより、第1転がり軸受30の転動体35は、シャフト20のフランジ25に対して、内輪36と外輪40との間を通して軸方向の内側から露出している。
【0066】
以上説明したように、本実施形態に係るスイングアームによれば、転動体35が、ハブキャップ80Cに対して、内輪36と外輪40との間を通して軸方向の内側から露出しているので、例えば第3実施形態のように、転がり軸受30に、転動体35の軸方向の外側に配置され内輪36と外輪40との隙間を封止するシールドが備えられたような構成(
図6参照)に比べて、転がり軸受30を軸方向に小さく形成することができる。これにより、軸受装置10の小型化を図ることができる。
【0067】
また本実施形態では、押圧面92が、第2転がり軸受32の内輪36を軸方向の内側に向けて押圧し、この押圧面92が、内輪36に軸方向の外側から当接しているので、ハブキャップ80Cの段差面93の軸方向の大きさを寸法管理により最小にすることができる。すなわち押圧面92が、内輪36に軸方向の外側から当接しているので、逃げ面91と転がり軸受30との軸方向の距離を、段差面93の軸方向の大きさに基づいて設定することができる。したがって、段差面93の軸方向の大きさを適宜設計することで、逃げ面91を、外輪40の端面から確実に軸方向に離間させつつ、両者の離間する距離を最小に留めることができる。これにより、ハブキャップ80Cやフランジ25に、内輪36と外輪40との隙間を確実に封止させて、このハブキャップ80Cに、シールドの機能を高精度に代用させることができる。
【0068】
なお、本発明の技術範囲は、上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、上述した実施形態に種々の変更を加えたものを含む。すなわち、実施形態で挙げた具体的な材料や構造などはほんの一例に過ぎず、適宜変更が可能である。
例えば、ハブキャップの内面に逃げ面が形成されているものとしたが、これに限られない。例えば、ハブキャップの内面を面一に形成してこの内面に内輪を押圧させつつ、外輪の軸方向の外側の端面を、内輪の端面よりも軸方向の内側に位置させることで、ハブキャップの内面に外輪を押圧させない構成を採用してもよい。
また、例えば、情報記録再生装置の具体的な構成は、実施形態の構成に限られない。また、軸受装置のシャフトの具体的な形状も、実施形態の形状に限られない。また、実施形態では転がり軸受の外側シールドを外輪に固定したが、内輪に固定してもよい。さらに、実施形態では、凹部はシャフトを軸方向に貫通しているものとしたが、貫通していなくてもよい。また実施形態では、挿入部を凹部内に圧入するものとしたが、これに限られない。例えば挿入部を凹部内に遊嵌し、挿入部の外周面と凹部の内周面とを接着してもよい。また挿入部の外周面に雄ねじを形成するとともに凹部の内周面に雌ねじを形成し、挿入部を凹部に螺着させてもよい。また実施形態では、アーム部が、基部に、軸方向に間隔をあけて複数配設されているものとしたが、これに限られず、例えばアーム部が1つであってもよい。