特許第6095411号(P6095411)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6095411
(24)【登録日】2017年2月24日
(45)【発行日】2017年3月15日
(54)【発明の名称】コンデンサステレオマイクロホン
(51)【国際特許分類】
   H04R 3/00 20060101AFI20170306BHJP
   H04R 5/027 20060101ALI20170306BHJP
   H04R 19/04 20060101ALI20170306BHJP
【FI】
   H04R3/00 320
   H04R5/027 Z
   H04R19/04
【請求項の数】10
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-36617(P2013-36617)
(22)【出願日】2013年2月27日
(65)【公開番号】特開2014-165784(P2014-165784A)
(43)【公開日】2014年9月8日
【審査請求日】2015年11月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】000128566
【氏名又は名称】株式会社オーディオテクニカ
(74)【代理人】
【識別番号】100088856
【弁理士】
【氏名又は名称】石橋 佳之夫
(72)【発明者】
【氏名】金津 亮
(72)【発明者】
【氏名】林 楷迪
【審査官】 菊池 充
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−028795(JP,A)
【文献】 特開2012−178628(JP,A)
【文献】 実開昭60−025298(JP,U)
【文献】 特開2011−223138(JP,A)
【文献】 特開2005−026868(JP,A)
【文献】 実開昭55−051018(JP,U)
【文献】 米国特許第04466117(US,A)
【文献】 米国特許出願公開第2004/0264703(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04R 3/00− 3/14
H04R 5/00− 5/04
H04R 19/01−19/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
指向軸がマイクロホン本体の主軸に沿って配置されたミッド用コンデンサマイクロホンユニットと、
指向軸が上記主軸に直交する方向に向きかつ上記主軸を挟んで対称形に配置された左右のサイド用コンデンサマイクロホンユニットと、を有し、
上記ミッド用コンデンサマイクロホンユニットの出力が左サイド用コンデンサマイクロホンユニットおよび右サイド用コンデンサマイクロホンユニットに付加されるように接続され、
上記左右のサイド用コンデンサマイクロホンユニットがそれぞれ左チャンネルのコネクタ端子および右チャンネルのコネクタ端子に接続され、
上記左チャンネルのコネクタ端子および右チャンネルのコネクタ端子はそれぞれ電源供給抵抗を介して上記ミッド用コンデンサマイクロホンユニットに接続されているコンデンサステレオマイクロホン。
【請求項2】
ミッド用コンデンサマイクロホンユニットおよび左右のサイド用コンデンサマイクロホンユニットはそれぞれマイクロホンカプセルと出力インピーダンス変換用のFETを有している請求項1記載のコンデンサステレオマイクロホン。
【請求項3】
ミッド用コンデンサマイクロホンカプセルの出力端は、上記ミッド用コンデンサマイクロホンカプセルに対応するFETのゲートに接続され、上記FETのドレインには、左チャンネルのコネクタ端子および右チャンネルのコネクタ端子がそれぞれ電源供給抵抗を介して接続されている請求項2記載のコンデンサステレオマイクロホン。
【請求項4】
左右のサイド用コンデンサマイクロホンカプセルの出力端は、対応する各FETのゲートに接続され、上記各FETのドレインはそれぞれ左右チャンネルのコネクタ端子に接続されている請求項2または3記載のコンデンサステレオマイクロホン。
【請求項5】
ミッド用コンデンサマイクロホンカプセルに対応するFETのソース側が、ミッド用コンデンサマイクロホンユニットの出力信号の左右サイド用コンデンサマイクロホンユニットへの信号付加系統を構成している請求項2、3または4記載のコンデンサステレオマイクロホン。
【請求項6】
左右チャンネルの各コネクタ端子からそれぞれ左右サイド用コンデンサマイクロホンユニットのFETのドレインに至る電源供給系統および上記各コネクタ端子から電源供給抵抗を介してミッド用コンデンサマイクロホンユニットのFETのドレインに至る電源供給系統は、ミッド用コンデンサマイクロホンユニットの出力信号の左右サイド用コンデンサマイクロホンユニットへの信号付加系統と分離されている請求項5記載のコンデンサステレオマイクロホン。
【請求項7】
左右チャンネルのコネクタ端子は、アース端子とともに3端子のコネクタを構成している請求項1乃至6のいずれかに記載のコンデンサステレオマイクロホン。
【請求項8】
左右のサイド用コンデンサマイクロホンユニットに付加されるミッド用コンデンサマイクロホンユニットの出力レベルを調整することにより左右チャンネル出力の指向性を調整することができる指向性可変抵抗を備えている請求項1乃至7のいずれかに記載のコンデンサステレオマイクロホン。
【請求項9】
指向性可変抵抗は、ミッド用コンデンサマイクロホンユニットの出力を左右のサイド用コンデンサマイクロホンユニットに付加する位置とアースとの間に接続されている請求項8記載のコンデンサステレオマイクロホン。
【請求項10】
左右チャンネルの各コネクタ端子は、録音機器のコネクタに結合することによって上記録音機器の電源がミッド用コンデンサマイクロホンユニットおよび左右のサイド用コンデンサマイクロホンユニットに供給されるプラグインパワー対応のコネクタ端子を構成している請求項1乃至9のいずれかに記載のコンデンサステレオマイクロホン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラグインパワー対応のコンデンサステレオマイクロホンに関するものである。
【背景技術】
【0002】
コンデンサマイクロホンは、電気音響変換の大本であるマイクロホンカプセルの出力インピーダンスが極めて高いため、インピーダンス変換器によりインピーダンスを低くして出力する。インピーダンス変換器は一般にFETを備えていて、FETを動作させるための電源が必要になる。
【0003】
以下、本明細書において、「マイクロホンカプセル」とは、相対向してコンデンサを構成する振動板と固定極を主体としてなり、音波を受けて振動板が振動することにより電気音響変換する素子のことをいう。マイクロホンカプセルのことをマイクロホンモジュールという場合もあるが、本明細書ではマイクロホンカプセルという。マイクロホンカプセルとインピーダンス変換器を含む部分を「コンデンサマイクロホンユニット」または単に「マイクロホンユニット」という。マイクロホンユニットがマイクロホンケースに収納され、フロントメッシュ、回路基板、その他の部材が装備されることによりマイクロホンが構成される。
【0004】
業務用のコンデンサマイクロホンは、3ピンタイプのXLRコネクタなどを経て外部からファントム電源が供給される。ファントム電源の本来の目的は、コンデンサマイクロホンに成極電圧を供給することであるが、ファントム電源をインピーダンス変換器の動作電源として利用することができる。
【0005】
しかし、民生用のICレコーダ、ビデオレコーダなど(以下「録音機器」という)にコンデンサマイクロホンを接続して使用する場合、ファントム電源を利用することは想定されていない。そこで近年では、民生用録音機器のマイクロホンジャックにマイクロホンプラグを結合すると、録音機器が備えている電源からマイクロホンに電源が供給される仕組みが採用されている。この仕組みをプラグインパワーと称している。
【0006】
ところで、立体感のある音声を収録しかつ再生することができるように、左チャンネルと右チャンネルに分離して収録するようにしたステレオマイクロホンがある。ステレオマイクロホンとして、一つの筺体内に左チャンネルと右チャンネルのマイクロホンカプセルを収納した構造のものがある。また、狭指向性のステレオマイクロホンを得るために、指向軸をマイクロホン本体の主軸方向に向けたミッドカプセルと、指向軸を主軸に直交する方向に向けたサイドカプセルを備えたMS方式ステレオマイクロホンが知られている。
【0007】
従前のMS方式ステレオマイクロホンのサイドカプセルの指向特性は双指向性であった。しかし、双指向性のマイクロホンカプセルはコスト高になる難点がある。そこで本出願人は、ミッドカプセルと、2個の単一指向性のマイクロホンカプセルを備えたステレオ狭指向性マイクロホンに関して先に提案した(特許文献1参照)。2個の単一指向性のマイクロホンカプセルは、主軸を中心として対称形に配置される。
【0008】
特許文献1記載の発明によれば、狭指向性のステレオマイクロホンを実現するという所期の目的を達成することができるが、いわゆるプラグインパワーは考慮されていない。すなわち、特許文献1記載の発明は、その実施例を示す回路図からもわかるように、左右の信号出力端子とは別に電源専用の端子VDDを設ける必要があるからである。
【0009】
特許文献1に記載されている回路例において、プラグインパワーを実現しようとして、例えば右出力端子または左出力端子を電源端子VDDに接続したとする。かかる接続では、右出力端子と左出力端子のインピーダンスのバランスが崩れ、左右の音量が異なってステレオ出力を得ることができなくなる。また、上記右出力端子と左出力端子をともに電源端子VDDに接続したとすると、右出力端子と左出力端子からの出力信号は同じなり、モノラル信号になってしまう。
【0010】
特許文献1に記載されている回路例において、右出力端子と電源端子VDDとの間、左出力端子と電源端子VDDとの間を、それぞれ同じ値の抵抗で接続することが考えられる。こうすれば、右出力端子と左出力端子から電源端子VDDにそれぞれ抵抗を介して録音機器から電源が供給され、プラグインパワーを実現することができる。しかしながら、電源端子VDDに供給される電流が上記抵抗で制限され、インピーダンス変換回路を構成するFETなどの能動素子に十分な電流を供給することができない。結果として左右の出力レベルが小さくなる難点がある。
【0011】
プラグインパワーのもとで使用可能であり、かつ、ステレオマイクロホンとして使用可能なズームマイクロホンも提案されている(特許文献2参照)。特許文献2記載の発明は、センタマイクと、左右チャンネルマイクと、左右チャンネルマイクの配線間に直列に接続された抵抗R1,R2と、切り替えスイッチを備えている。上記切り替えスイッチは、センタマイクを抵抗R1,R2の接続点に接続するズームモードと、抵抗R1,R2の接続点をアースに接続しセンタマイクを無効とするステレオモードに切り替えるものである。
【0012】
特許文献2記載の発明は、プラグインパワーのもとで使用することができる。しかし、ズームモードではセンタマイクと、左右チャンネルマイクの3個のマイクロホン出力が合成されたものであり、左右に分離したステレオ信号を出力することはできない。また、ステレオモードでは広角域で収音するものである。このように、特許文献2記載の発明は、プラグインパワーのもとで狭指向性をもつステレオマイクロホンとして使用することはできない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開2012−178628号公報
【特許文献2】特開2001−28795号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は、プラグインパワーに対応した狭指向性のコンデンサステレオマイクロホンを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明に係るコンデンサステレオマイクロホンは、
指向軸がマイクロホン本体の主軸に沿って配置されたミッド用コンデンサマイクロホンユニットと、
指向軸が上記主軸に直交する方向に向きかつ上記主軸を挟んで対称形に配置された左右のサイド用コンデンサマイクロホンユニットと、を有し、
上記ミッド用コンデンサマイクロホンユニットの出力が左サイド用コンデンサマイクロホンユニットおよび右サイド用コンデンサマイクロホンユニットに付加されるように接続され、
上記左右のサイド用コンデンサマイクロホンユニットがそれぞれ左チャンネルのコネクタ端子および右チャンネルのコネクタ端子に接続され、
上記左チャンネルのコネクタ端子および右チャンネルのコネクタ端子はそれぞれ電源供給抵抗を介して上記ミッド用コンデンサマイクロホンユニットに接続されている
ことを最も主要な特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係るコンデンサステレオマイクロホンを、コネクタを介して録音機器に接続すると、左右チャンネルの各コネクタ端子を介してコンデンサステレオマイクロホンに録音機器側から電源が供給される。この電源は、左右のサイド用コンデンサマイクロホンユニットに供給されるとともに、左右チャンネルのコネクタ端子からそれぞれ電源供給抵抗を介してミッド用コンデンサマイクロホンユニットに供給される。このようにしてプラグインパワーに対応した狭指向性のコンデンサステレオマイクロホンを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明に係るコンデンサステレオマイクロホンの第1実施例を示す回路図である。
図2】本発明に係るコンデンサステレオマイクロホンの第2実施例を示す回路図である。
図3】上記第2実施例において指向性可変抵抗よる指向性調整の一例を示すグラフである。
図4】上記指向性可変抵抗よる指向性調整の別の例を示すグラフである。
図5】上記指向性可変抵抗よる指向性調整のさらに別の例を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明に係るコンデンサステレオマイクロホンの実施例を、図面を参照しながら説明する。
【実施例1】
【0019】
図1において、符号1,2,3はそれぞれコンデンサマイクロホンカプセルを示している。コンデンサマイクロホンカプセル1,2,3はそれぞれ音波を受けて振動する振動板と、この振動板に微小な空間をおいて対向する固定極と、上記振動板と固定極を収納した筺体などを有してなる。コンデンサマイクロホンカプセル1,2,3は周知の電気音響変換機能を備えていて、振動板が音波を受けて振動すると固定極との間の静電容量が変化し、音波を電気信号に変換して出力する。コンデンサマイクロホンカプセル1は例えば狭指向性のものを用いる。コンデンサマイクロホンカプセル2,3はいずれも単一指向性をもったカプセルでよい。
【0020】
マイクロホンカプセル1,2,3の出力インピーダンスは極めて高いことから、それぞれインピーダンス変換器としてのFET5,6,7でインピーダンスを変換し、音声信号を出力するようになっている。マイクロホンカプセル1とFET5を含む部分はコンデンサマイクロホンユニット10を構成している。マイクロホンカプセル2とFET6を含む部分はコンデンサマイクロホンユニット20を構成している。マイクロホンカプセル3とFET7を含む部分はコンデンサマイクロホンユニット30を構成している。
【0021】
コンデンサマイクロホンユニット10はミッド用コンデンサマイクロホンユニットであって、指向軸がマイクロホン本体の主軸に沿って、より正確には指向軸とマイクロホン本体の主軸を一致させて配置されている。コンデンサマイクロホンユニット20は左サイド用コンデンサマイクロホンユニット、コンデンサマイクロホンユニット30は右サイド用コンデンサマイクロホンユニットである。左右のサイド用コンデンサマイクロホンユニット20,30は指向軸が上記主軸に直交する方向に向きかつ上記主軸を挟んで対称形に配置されている。
【0022】
マイクロホンカプセル1の振動板と固定極はマイクロホンカプセル1の出力端となっていて、その一方、例えば固定極はFET5のゲートに接続され、マイクロホンカプセル1の他方の出力端である振動板はアースに接続されている。FET5のドレインは電源供給抵抗11を経て左チャンネルのコネクタ端子21に、また、電源供給抵抗12を経て右チャンネルのコネクタ端子22に接続されている。FET5のソースは、ソース抵抗51を経てアースに接続されるとともに、コンデンサ52を経てマイクロホンカプセル2,3の出力端に接続されている。マイクロホンカプセル2,3もそれぞれのマイクロホンカプセル2,3の振動板と固定極が出力端となっていて、マイクロホンカプセル2,3の出力端の一方、例えば振動板とFET5のソースが接続されている。この接続関係は、ミッド用コンデンサマイクロホンユニット10の出力が左サイド用コンデンサマイクロホンユニット20および右サイド用コンデンサマイクロホンユニット30に付加される接続関係になっている。電源供給抵抗11の値と電源供給抵抗12の値は等しい。
【0023】
マイクロホンカプセル2の出力端例えば固定極はFET6のゲートに、マイクロホンカプセル3の出力端例えば固定極はFET7のゲートに接続されている。FET6のドレインは左チャンネルのコネクタ端子21に、FET7のドレインは右チャンネルのコネクタ端子22に接続されている。FET6,7のソースはアースに接続されている。アースにはアース端子23が接続されている。
【0024】
左チャンネルのコネクタ端子21、右チャンネルのコネクタ端子22、アース端子23は、例えば、ステレオミニプラグといわれるような、3極のコネクタを構成している。この3極のコネクタをICレコーダ、ビデオレコーダなどの録音機器のコネクタに接続すると、左右チャンネルの音声信号がコネクタ端子21、22から録音機器に入力される。録音機器側のアースとマイクロホン側のアース端子23とが接続される。
【0025】
また、上記コネクタ端子21、22に対応する録音機器側のコネクタ端子には、録音機器の電源がつながっている。したがって、録音機器の電源が、コネクタ端子21を経てFET6のドレインに、コネクタ端子22を経てFET7のドレインに供給される。さらに、録音機器の電源が、コネクタ端子21と電源供給抵抗11を経てFET5のドレインに、また、コネクタ端子22と電源供給抵抗12を経てFET5のドレインに供給される。
【0026】
ミッド用コンデンサマイクロホンユニット10、左右のサイド用コンデンサマイクロホンユニット20,30、これらに付随する抵抗、コンデンサは、マイクロホンケースに組み込まれてコンデンサステレオマイクロホンが構成されている。コネクタ端子21,22,23はマイクロホンケースに固定的に設けてもよいし、マイクロホンケースから引き出したケーブルの先端に設けてもよい。
【0027】
マイクロホン側のコネクタを録音機器に接続すると、上記のようにコネクタ端子21,22を経て、録音機器の電源がFET6,7のドレインに供給され、FET6,7が所期のインピーダンス変換動作をする。コネクタ端子21,22にかかる電源は、それぞれ電源供給抵抗11と電源供給抵抗12を経て、電源供給抵抗11,12の接続位置からFET5のドレインに供給され、FET5が所期のインピーダンス変換動作をする。
【0028】
ミッド用コンデンサマイクロホンカプセル1に対応するFET5のソース側は、ミッド用コンデンサマイクロホンユニット10の出力信号の、左右サイド用コンデンサマイクロホンユニット20,30への付加系統を構成している。上記電源供給抵抗11,12の値を適切に設定することにより、FET5のドレインへの電源供給系統は、FET5のソース側である上記マイクロホンユニット10の出力信号の、左右サイド用コンデンサマイクロホンユニット20,30への信号付加系統と分離される。よって、FET5のドレインへの電源供給系統が左右チャンネルの信号に及ぼす影響は軽微で、左右チャンネルの信号の分離は実用上問題ない。
【0029】
上記実施例の動作を説明する。マイクロホンユニット10からは、マイクロホンカプセル1の出力信号がFET5でインピーダンス変換されて出力される。この出力信号はコンデンサ52、マイクロホンカプセル2を経てFET6のゲートに入力される。上記マイクロホンユニット10の出力信号はまた、コンデンサ52、マイクロホンカプセル3を経てFET7のゲートに入力される。FET6およびFET7はソース接地回路になっている。FET6は、マイクロホンユニット10の出力信号とマイクロホンカプセル2の出力信号の合算値をインピーダンス変換し、コネクタ端子21に出力する。FET7は、マイクロホンユニット10の出力信号とマイクロホンカプセル3の出力信号の合算値をインピーダンス変換し、コネクタ端子22に出力する。
【0030】
マイクロホンカプセル1は、指向軸がマイクロホンの主軸に沿っていて狭指向性であり、マイクロホンカプセル2は主軸方向に対し左に90度向いた単一指向性である。コネクタ端子21に出力される信号すなわちFET6の出力信号は、従来のMS方式ステレオ狭指向性マイクロホンの左チャンネル出力と同様に、左側に傾いた狭指向性信号となる。コネクタ端子22に出力される信号すなわちFET7の出力信号は、従来のMS方式ステレオ狭指向性マイクロホンの右チャンネル出力と同様に、右側に傾いた狭指向性信号となる。こうして、コネクタ端子21,22から狭指向性ステレオ信号が出力される。
【0031】
次に、各マイクロホンユニット10,20,30から出力される信号の位相について説明する。ミッド用のマイクロホンカプセル1の出力信号を正相とする。FET5はソース側から信号を出力するため、FET5の出力信号は正相である。サイド用のマイクロホンカプセル2,3は、マイクロホンカプセル1に十分に近い位置に配置されていて、その出力は正相であるとみなすことができる。そのため、FET6の入力すなわちFET5の出力とマイクロホンカプセル2の出力はともに正相で合算される。
【0032】
FET6はソース接地でドレイン出力であるから、その出力信号は反転され、コネクタ端子21には逆相が出力される。また、FET5のドレインより電源供給抵抗11を通じてコネクタ端子21に出力される信号は逆相である。このように、コネクタ端子21には、ともに逆相のFET6の出力信号とFET5の出力信号が現れ、互いに合算される。同様に、コネクタ端子22に表われるFET7の出力信号とFET5の出力信号もともに逆相であり、FET7、FET5の出力信号が互いに合算された信号になる。
【0033】
こうして、図1に示す実施例によれば、ミッド用コンデンサマイクロホンユニット10とサイド用コンデンサマイクロホンユニット20,30の出力信号の位相の違いによる相殺が発生せず、高い出力レベルを確保できる利点がある。
【0034】
以上説明したように、図1に示す実施例は、ミッド用コンデンサマイクロホンユニット10と、左右のサイド用コンデンサマイクロホンユニット20,30を備えることにより、MS方式コンデンサステレオマイクロホンを構成している。また、MS方式コンデンサステレオマイクロホンを構成することによって狭指向性のコンデンサステレオマイクロホンを得ることができる。この実施例によれば、コネクタを介して録音機器に接続することにより、録音機器側から動作電源の供給を受けることができ、いわゆるプラグインパワーを実現することができる。
【実施例2】
【0035】
次に、本発明にかかるコンデンサステレオマイクロホンの第2実施例について図2以下を参照しながら説明する。第2実施例が第1実施例と異なるのは、指向性可変抵抗14を有していることである。指向性可変抵抗14は、ミッド用コンデンサマイクロホンユニット10の出力を左右のサイド用コンデンサマイクロホンユニット20,30に付加する位置とアースとの間に接続されている。より具体的には、マイクロホンカプセル2,3の振動板とコンデンサ52との接続点と、アースとの間に指向性可変抵抗14が接続されている。
【0036】
指向性可変抵抗14の値を変えることにより、左右のサイド用コンデンサマイクロホンユニット20,30に付加されるミッド用コンデンサマイクロホンユニット10の出力レベルが調整される。したがって、左右のサイド用コンデンサマイクロホンユニット20,30に及ぼすミッド用コンデンサマイクロホンユニット10の影響度合いが変化し、左右チャンネルのコネクタ端子22,23に表われる信号の指向性が変化する。
【0037】
図3乃至図5は、指向性可変抵抗14の値を可変することによって左または右チャンネルのコネクタ端子に表われる信号の指向性の変化を順に示している。ただし、左または右チャンネルの一方のみの指向性を示しており、他方チャンネルの指向性は、0度と180度を結ぶ直線に対して対称に現れる。
【0038】
図3は、指向性可変抵抗14の値を適正な値に設定して、左右のサイド用コンデンサマイクロホンユニット20,30に及ぼすミッド用コンデンサマイクロホンユニット10の影響度合いを大きくした場合を示している。図3に示すように、指向軸が約30度傾いたカージオイド形の指向特性になる。また、指向角度は狭角となる。
【0039】
図4は、指向性可変抵抗14の値を調整してミッド用コンデンサマイクロホンユニット10の出力レベルを低下させた場合を示している。ミッド用コンデンサマイクロホンユニット10の出力がアースに分流し、左右のサイド用コンデンサマイクロホンユニット20,30に及ぼすミッド用コンデンサマイクロホンユニット10の影響度合いが低下する。図4に示すように、指向軸は約60度傾き、カージオイド形が崩れて指向範囲が広がった形の指向特性になる。
【0040】
図5は、指向性可変抵抗14の値をゼロにしてミッド用コンデンサマイクロホンユニット10の出力レベルをゼロにした場合を示している。ミッド用コンデンサマイクロホンユニット10の影響がなくなるから、左右のサイド用コンデンサマイクロホンユニット20,30からは、それぞれのユニット独自の指向特性をもって音声信号が出力される。図5に示すように、指向軸は約90度傾き、カージオイド形がさらに崩れて指向角度は広角になる。
【0041】
第2実施例にかかるコンデンサステレオマイクロホンによれば、左右チャンネルの出力信号の指向性を、指向性可変抵抗14の値を調整するだけで容易に変化させることができる。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明に係るコンデンサステレオマイクロホンによれば、ミッド用コンデンサマイクロホンユニットとサイド用コンデンサマイクロホンユニットを備えたステレオマイクロホンにおいて、いわゆるプラグインパワーを実現することができる。したがって、例えば、民生用の各種録音機器に装着するだけで、録音機器の電源をマイクロホンの電源として利用することができ、コンデンサステレオマイクロホンの使い勝手が向上する。
【符号の説明】
【0043】
1 マイクロホンカプセル(ミッド用)
2 マイクロホンカプセル(左サイド用)
3 マイクロホンカプセル(右サイド用)
5 FET(ミッド用)
6 FET(左サイド用)
7 FET(右サイド用)
10 マイクロホンユニット(ミッド用)
11 電源供給抵抗
12 電源供給抵抗
14 指向性可変抵抗
20 マイクロホンユニット(左サイド用)
21 左チャンネルのコネクタ端子
22 右チャンネルのコネクタ端子
23 アース端子
30 マイクロホンユニット(右サイド用)
図1
図2
図3
図4
図5