特許第6095416号(P6095416)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6095416
(24)【登録日】2017年2月24日
(45)【発行日】2017年3月15日
(54)【発明の名称】スチレン系ポリマー溶液
(51)【国際特許分類】
   C08F 212/08 20060101AFI20170306BHJP
   C09D 125/08 20060101ALI20170306BHJP
   C09D 129/10 20060101ALI20170306BHJP
   C08F 220/28 20060101ALI20170306BHJP
   G03F 7/039 20060101ALI20170306BHJP
【FI】
   C08F212/08
   C09D125/08
   C09D129/10
   C08F220/28
   G03F7/039
【請求項の数】4
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2013-42460(P2013-42460)
(22)【出願日】2013年3月5日
(65)【公開番号】特開2014-95062(P2014-95062A)
(43)【公開日】2014年5月22日
【審査請求日】2015年12月4日
(31)【優先権主張番号】特願2012-223744(P2012-223744)
(32)【優先日】2012年10月8日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004628
【氏名又は名称】株式会社日本触媒
(74)【代理人】
【識別番号】100141472
【弁理士】
【氏名又は名称】赤松 善弘
(72)【発明者】
【氏名】松田 安弘
(72)【発明者】
【氏名】金子 知正
【審査官】 藤井 明子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−123819(JP,A)
【文献】 特開2006−091578(JP,A)
【文献】 特開昭57−131211(JP,A)
【文献】 特開2001−081139(JP,A)
【文献】 特開2009−040999(JP,A)
【文献】 特開2002−179726(JP,A)
【文献】 特表2007−537330(JP,A)
【文献】 特開2001−040041(JP,A)
【文献】 特開平10−306107(JP,A)
【文献】 特開2003−012734(JP,A)
【文献】 特開2000−239325(JP,A)
【文献】 特開昭54−068836(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 6/00−246/00、301/00
C08F 2/00−2/60
C09D 1/00−10/00
C09D 101/00−201/10
G03C 3/00
G03F 7/004−7/04
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
スチレン系ポリマーを含有するスチレン系ポリマー溶液であって、スチレン系モノマーおよび式(I):
【化1】
(式中、R1およびR2は、それぞれ独立して、水素原子または置換基を有していてもよい炭素数1〜25の炭化水素基を示す)
で表わされるエーテル系モノマーを含有するモノマー成分を重合させてなるスチレン系ポリマーを含有し、前記スチレン系モノマーがスチレン、ビニルトルエン、4−tert−ブチルスチレン、α−メチルスチレン、4−クロロスチレン、4−メチルスチレン、4−クロロメチルスチレンおよびジビニルベンゼンからなる群より選ばれた少なくとも1種のスチレン系モノマーであり、当該スチレン系モノマーの含有率が0.8質量%以下であることを特徴とするスチレン系ポリマー溶液。
【請求項2】
スチレン系ポリマー溶液がアルカリ現像用の塗膜形成用スチレン系ポリマー溶液である請求項1に記載のスチレン系ポリマー溶液。
【請求項3】
モノマー成分がさらにカルボキシル基含有モノマーを含有する請求項1または2に記載のスチレン系ポリマー溶液。
【請求項4】
モノマー成分におけるスチレン系モノマーの含有率が10〜80質量%であり、当該モノマー成分がアルキル(メタ)アクリレートおよびカルボキシル基含有モノマーを含有し、当該モノマー成分におけるアルキル(メタ)アクリレートおよびカルボキシル基含有モノマーの合計含有率が10〜70質量%である請求項1〜3のいずれかに記載のスチレン系ポリマー溶液。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スチレン系ポリマー溶液に関する。さらに詳しくは、本発明は、例えば、感光性樹脂組成物、コーティング剤、塗料などの塗膜を形成する用途に好適に使用することができるスチレン系ポリマー溶液に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、スチレン系モノマーを含有するモノマー成分を重合させることによって得られるスチレン系ポリマーには、未反応のスチレン系モノマーが含まれる。スチレン系ポリマーは、例えば、トナーなどに用いられており、トナーとしたときの臭気が改善され、耐ブロッキング性に優れたスチレン系ポリマーとして、スチレンおよび/またはその誘導体と(メタ)アクリル酸エステルとを主要な構成単位とし、残存モノマーの残存率が200ppm以下であることを特徴とするスチレン系ポリマー(樹脂)が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
前記スチレン系ポリマーは、残存モノマーの残存率が200ppm以下であることから、臭気および耐ブロッキング性が改善されるとされている。しかし、前記スチレン系ポリマーの溶液を用いてアルカリ現像性塗膜を形成させた場合には、現像後に基板上に残渣が生じ、パターンに欠陥が生じるという欠点がある。
【0004】
したがって、近年、感光性樹脂組成物、コーティング剤、塗料などの塗膜を形成する用途に好適に使用することができ、アルカリ現像性塗膜を形成したとき、現像後に基板上に残渣を生じず、パターン形成性に優れたスチレン系ポリマー溶液の開発が待ち望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第2760499号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、前記従来技術に鑑みてなされたものであり、アルカリ現像用の塗膜を形成したときに現像後に基板上に残渣を生じず、しかもパターン形成性にも優れ、例えば、感光性樹脂組成物、コーティング剤、塗料などの塗膜を形成する用途に好適に使用することができるスチレン系ポリマー溶液を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、
(1) スチレン系ポリマーを含有するスチレン系ポリマー溶液であって、スチレン系モノマーおよび式(I):
【0008】
【化1】
【0009】
(式中、R1およびR2は、それぞれ独立して、水素原子または置換基を有していてもよい炭素数1〜25の炭化水素基を示す)
で表わされるエーテル系モノマーを含有するモノマー成分を重合させてなるスチレン系ポリマーを含有し、スチレン系モノマーの含有率が0.8質量%以下であることを特徴とするスチレン系ポリマー溶液、
(2) モノマー成分がさらにカルボキシル基含有モノマーを含有する前記(1)に記載のスチレン系ポリマー溶液、
(3) 前記スチレン系ポリマー溶液の用途が塗膜形成用である前記(1)または(2)に記載のスチレン系ポリマー溶液、および
(4) スチレン系ポリマー溶液を製造する方法であって、スチレン系モノマーおよび式(I):
【0010】
【化2】
【0011】
(式中、R1およびR2は、それぞれ独立して、水素原子または置換基を有していてもよい炭素数1〜25の炭化水素基を示す)
で表わされるエーテル系モノマーを含有するモノマー成分を、当該モノマー成分に対する連鎖移動剤の量を0.05質量%以下に調整して重合させることを特徴とする、スチレン系ポリマーを含有し、スチレン系モノマーの含有率が0.8質量%以下であるスチレン系ポリマー溶液の製造方法
に関する。
【0012】
なお、本明細書において、スチレン系ポリマー溶液における未反応のスチレン系モノマーの含有率は、式:
〔スチレン系モノマーの含有率(質量%)[×104ppm(換算)]〕
=[モノマー成分に使用されるスチレン系モノマーの量(質量部)]×[100−スチレン系モノマーの反応率(%)]÷[モノマー成分の量(質量部)]
に基づいて求められる値を意味する。
【発明の効果】
【0013】
本発明のスチレン系ポリマー溶液は、アルカリ現像用の塗膜を形成したときに現像後に基板上に残渣を生じず、しかもパターン形成性にも優れ、例えば、感光性樹脂組成物、コーティング剤、塗料などの塗膜を形成する用途に好適に使用することができるという優れた効果を奏する。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明のスチレン系ポリマー溶液は、前記したように、スチレン系モノマーおよび式(I)で表わされるエーテル系モノマーを含有するモノマー成分を重合させることによって得られるスチレン系ポリマーを含有し、スチレン系モノマーの含有率が0.8質量%以下であることを特徴とする。
【0015】
本発明のスチレン系ポリマー溶液は、このようにスチレン系モノマーおよび式(I)で表わされるエーテル系モノマーを含有するモノマー成分を重合させることによって得られるスチレン系ポリマーを含有し、なおかつスチレン系モノマーの含有率が0.8質量%以下であるので、当該スチレン系ポリマー溶液を用いてアルカリ現像用の塗膜を形成したときに現像後に基板上に残渣を生じず、しかもパターン形成性にも優れるという優れた効果を奏する。
【0016】
スチレン系モノマーとしては、例えば、スチレン、ビニルトルエン、4−tert−ブチルスチレン、α−メチルスチレン、4−クロロスチレン、4−メチルスチレン、4−クロロメチルスチレン、ジビニルベンゼンなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらのスチレン系モノマーは、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。これらのスチレン系モノマーのなかでは、当該ポリマーを用いて塗膜を形成したときの歩留りに優れていることから、スチレン、ビニルトルエン、4−tert−ブチルスチレンおよびα−メチルスチレンが好ましく、スチレン、ビニルトルエンおよびα−メチルスチレンがより好ましくスチレンおよびビニルトルエンがさらに好ましく、ビニルトルエンがさらに一層好ましい。
【0017】
モノマー成分におけるスチレン系モノマーの含有率は、アルカリ現像性を向上させる観点から、好ましくは10質量%以上、より好ましくは15質量%以上、さらに好ましくは20質量%以上であり、パターン形成性を向上させる観点から、好ましくは80質量%以下、より好ましくは70質量%以下、さらに好ましくは60質量%以下である。
【0018】
式(I)で表わされるエーテル系モノマーにおいて、R1およびR2は、それぞれ独立して、水素原子または置換基を有していてもよい炭素数1〜25の炭化水素基である。前記炭化水素基の炭素数は、本発明のスチレン系ポリマー溶液を用いてアルカリ現像用の塗膜を形成したときに現像後に基板上に残渣が生じないようにする観点から、1〜25、好ましくは1〜20、より好ましくは1〜10、さらに好ましくは1〜6である。R1およびR2は、それぞれ、直鎖状であってもよく、分岐鎖状であってもよく、あるいは環構造を含んでいてもよい。R1およびR2は、それぞれ、飽和炭化水素基であってもよく、不飽和炭化水素基であってもよい。また、R1およびR2は、それぞれ、本発明の目的が阻害しない範囲内で置換基を有していてもよい。
【0019】
好適な炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、tert−ブチル基、n−ヘキシル基などの炭素数が1〜6の鎖状アルキル基、シクロヘキシル基などの炭素数6〜8のシクロアルキル基、アダマンチル基、イソボルニル基などの炭素数8〜12の脂環式炭化水素基が挙げられる。
【0020】
式(I)で表わされるエーテル系モノマーとしては、例えば、ジメチル−2,2’−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート、ジエチル−2,2’−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート、ジ(n−プロピル)−2,2’−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート、ジ(イソプロピル)−2,2’−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート、ジ(n−ブチル)−2,2’−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート、ジ(イソブチル)−2,2’−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート、ジ(tert−ブチル)−2,2’−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート、ジ(tert−アミル)−2,2’−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート、ジ(ステアリル)−2,2’−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート、ジ(ラウリル)−2,2’−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート、ジ(2−エチルヘキシル)−2,2’−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート、ジ(1−メトキシエチル)−2,2’−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート、ジ(1−エトキシエチル)−2,2’−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート、ジベンジル−2,2’−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート、ジフェニル−2,2’−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート、ジシクロヘキシル−2,2’−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート、ジ(tert−ブチルシクロヘキシル)−2,2’−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート、ジ(シクロペンタジエニル)−2,2’−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート、ジ(トリシクロデカニル)−2,2’−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート、ジ(イソボルニル)−2,2’−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート、ジアダマンチル−2,2’−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート、ジ(2−メチル−2−アダマンチル)−2,2’−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエートなどが挙げられる。これらのエーテル系モノマーは、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0021】
式(I)で表わされるエーテル系モノマーのなかでは、パターン形成性を向上させる観点から、ジメチル−2,2’−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート、ジエチル−2,2’−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート、ジシクロヘキシル−2,2’−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエートおよびジベンジル−2,2’−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエートが好ましい。
【0022】
モノマー成分における式(I)で表わされるエーテル系モノマーの含有率は、パターン形成性を向上させる観点から、好ましくは1質量%以上、より好ましくは2質量%以上、さらに好ましくは3質量%以上であり、アルカリ現像性を向上させる観点から、好ましくは50質量%以下、より好ましくは40質量%以下、さらに好ましくは30質量%以下である。
【0023】
なお、モノマー成分の全量が100質量%となるようにモノマー成分には、必要により、スチレン系モノマーおよび式(I)で表わされるエーテル系モノマー以外のモノマー(以下、「他のモノマー」という)が含まれていてもよい。換言すれば、モノマー成分において、スチレン系モノマーおよび式(I)で表わされるエーテル系モノマーの残部として、他のモノマーが用いられていてもよい。
【0024】
前記他のモノマーとしては、例えば、アルキル(メタ)アクリレート、水酸基含有(メタ)アクリレート、カルボキシル基含有モノマー、シラン基含有モノマー、酸性リン酸エステル系モノマー、エポキシ基含有モノマー、窒素原子含有モノマー、2個以上の重合性二重結合含有モノマー、ハロゲン原子含有モノマー、ビニルエステル系モノマー、ビニルエーテル系モノマー、アラルキル(メタ)アクリレートなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらのモノマーは、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0025】
なお、本明細書において、「(メタ)アクリレート」は、「アクリレート」または「メタクリレート」を意味する。
【0026】
アルキル(メタ)アクリレートとしては、例えば、メチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルアクリレート、エチルメタクリレート、n−プロピルアクリレート、n−プロピルメタクリレート、イソプロピルアクリレート、イソプロピルメタクリレート、n−ブチルアクリレート、n−ブチルメタクリレート、イソブチルアクリレート、イソブチルメタクリレート、tert−ブチルアクリレート、tert−ブチルメタクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、オクチルアクリレート、オクチルメタクリレート、ノニルアクリレート、ノニルメタクリレート、ラウリルアクリレート、ラウリルメタクリレート、ステアリルアクリレート、ステアリルメタクリレートなどの(メタ)アクリル酸アルキルエステル;イソボルニルアクリレート、イソボルニルメタクリレート、シクロヘキシルアクリレート、シクロヘキシルメタクリレートなどのシクロアルキル(メタ)アクリレート;シクロヘキシルメチルアクリレート、シクロヘキシルメチルメタクリレート、シクロヘキシルエチルアクリレート、シクロヘキシルエチルメタクリレート、シクロヘキシルプロピルアクリレート、シクロヘキシルプロピルメタクリレート、4−メチルシクロヘキシルメチルアクリレート、4−メチルシクロヘキシルメチルメタクリレートなどのシクロアルキルアルキル(メタ)アクリレートなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの(メタ)アクリル酸エステルは、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。アルキル(メタ)アクリレートのなかでは、パターン形成性を向上させる観点から、アルキル基の炭素数が1〜8のアルキル(メタ)アクリレートが好ましく、アルキル基の炭素数が1〜4のアルキル(メタ)アクリレートがより好ましい。モノマー成分におけるアルキル(メタ)アクリレートの量は、当該アルキル(メタ)アクリレートの種類などによって異なることから一概には決定することができないため、本発明のスチレン系ポリマー溶液の用途、使用目的などに応じて適宜決定することが好ましい。
【0027】
水酸基含有(メタ)アクリレートとしては、例えば、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、3−ヒドロキシプロピルアクリレート、3−ヒドロキシプロピルメタクリレート、2−ヒドロキシブチルアクリレート、2−ヒドロキシブチルメタクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレート、4−ヒドロキシブチルメタクリレート、カプロラクトン変性ヒドロキシアクリレート、カプロラクトン変性ヒドロキシメタクリレートなどのエステル基の炭素数が1〜18の水酸基含有(メタ)アクリレートなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの水酸基含有(メタ)アクリレートは、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。モノマー成分における水酸基含有(メタ)アクリレートの量は、当該水酸基含有(メタ)アクリレートの種類などによって異なることから一概には決定することができないため、本発明のスチレン系ポリマー溶液の用途、使用目的などに応じて適宜決定することが好ましい。
【0028】
カルボキシル基含有モノマーとしては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、マレイン酸、無水マレイン酸などの脂肪族カルボン酸などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらのカルボキシル基含有モノマーは、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。モノマー成分におけるカルボキシル基含有モノマーの量は、当該カルボキシル基含有モノマーの種類などによって異なることから一概には決定することができないため、本発明のスチレン系ポリマー溶液の用途、使用目的などに応じて適宜決定することが好ましい。
【0029】
シラン基含有モノマーとしては、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリ(メトキシエトキシ)シラン、3−アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、2−スチリルエチルトリメトキシシラン、ビニルトリクロロシラン、3−アクリロイルオキシプロピルヒドロキシシラン、3−メタクリロイルオキシプロピルヒドロキシシラン、3−アクリロイルオキシプロピルメチルヒドロキシシラン、3−メタクリロイルオキシプロピルメチルヒドロキシシランなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらのシラン基含有モノマーは、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。モノマー成分におけるシラン基含有モノマーの量は、当該シラン基含有モノマーの種類などによって異なることから一概には決定することができないため、本発明のスチレン系ポリマー溶液の用途、使用目的などに応じて適宜決定することが好ましい。
【0030】
酸性リン酸エステル系モノマーとしては、例えば、2−アクリロイルオキシエチルアシッドホスフェート、2−メタクリロイルオキシエチルアシッドホスフェート、2−アクリロイルオキシプロピルアシッドホスフェート、2−メタクリロイルオキシプロピルアシッドホスフェートなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの酸性リン酸エステル系モノマーは、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。モノマー成分における酸性リン酸エステル系モノマーの量は、当該酸性リン酸エステル系モノマーの種類などによって異なることから一概には決定することができないため、本発明のスチレン系ポリマー溶液の用途、使用目的などに応じて適宜決定することが好ましい。
【0031】
エポキシ基含有モノマーとしては、例えば、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレートなどのエポキシ基含有(メタ)アクリル酸エステルなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらのエポキシ基含有モノマーは、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。モノマー成分におけるエポキシ基含有モノマーの量は、当該エポキシ基含有モノマーの種類などによって異なることから一概には決定することができないため、本発明のスチレン系ポリマー溶液の用途、使用目的などに応じて適宜決定することが好ましい。
【0032】
窒素原子含有モノマーとしては、例えば、アクリルアミド、メタクリルアミドなどの(メタ)アクリルアミド、N,N’−ジメチルアミノエチルアクリレート、N,N’−ジメチルアミノエチルメタクリレート、N,N’−ジエチルアミノエチルアクリレート、N,N’−ジエチルアミノエチルメタクリレート、イミドアクリレート、イミドメタクリレートなどの窒素原子含有(メタ)アクリレート;アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどの(メタ)アクリロニトリル;アクリロイルモルホリン、メタクリロイルモルホリンなどの(メタ)アクリロイルモルホリン;ビニルピリジン、ビニルイミダゾール、N−ビニルピロリドンなどのビニル基含有モノマーなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの窒素原子含有モノマーは、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。モノマー成分における窒素原子含有モノマーの量は、当該窒素原子含有モノマーの種類などによって異なることから一概には決定することができないため、本発明のスチレン系ポリマー溶液の用途、使用目的などに応じて適宜決定することが好ましい。
【0033】
2個以上の重合性二重結合含有モノマーとしては、例えば、エチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ペンタエリスリトールテトラメタクリレートなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの2個以上の重合性二重結合含有モノマーは、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。モノマー成分における2個以上の重合性二重結合含有モノマーの量は、当該2個以上の重合性二重結合含有モノマーの種類などによって異なることから一概には決定することができないため、本発明のスチレン系ポリマー溶液の用途、使用目的などに応じて適宜決定することが好ましい。
【0034】
ハロゲン原子含有モノマーとしては、例えば、塩化ビニルなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。ハロゲン原子含有モノマーは、1種類のみを用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。モノマー成分におけるハロゲン原子含有モノマーの量は、当該ハロゲン原子含有モノマーの種類などによって異なることから一概には決定することができないため、本発明のスチレン系ポリマー溶液の用途、使用目的などに応じて適宜決定することが好ましい。
【0035】
ビニルエステル系モノマーとしては、例えば、塩化ビニル、塩化ビニリデン、酢酸ビニルなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。ビニルエステル系モノマーは、1種類のみを用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。モノマー成分におけるビニルエステル系モノマーの量は、当該ビニルエステル系モノマーの種類などによって異なることから一概には決定することができないため、本発明のスチレン系ポリマー溶液の用途、使用目的などに応じて適宜決定することが好ましい。
【0036】
ビニルエーテル系モノマーとしては、例えば、ブチルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテルなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらのビニルエーテル系モノマーは、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。モノマー成分におけるビニルエーテル系モノマーの量は、当該ビニルエーテル系モノマーの種類などによって異なることから一概には決定することができないため、本発明のスチレン系ポリマー溶液の用途、使用目的などに応じて適宜決定することが好ましい。
【0037】
アラルキル(メタ)アクリレートとしては、例えば、ベンジル(メタ)アクリレート、フェニルエチル(メタ)アクリレート、メチルベンジル(メタ)アクリレート、ナフチルメチル(メタ)アクリレートなどの炭素数が7〜18のアラルキル基を有するアラルキル(メタ)アクリレートなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらのアラルキル(メタ)アクリレートは、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。モノマー成分におけるアラルキル(メタ)アクリレートの量は、当該アラルキル(メタ)アクリレートの種類などによって異なることから一概には決定することができないため、本発明のスチレン系ポリマー溶液の用途、使用目的などに応じて適宜決定することが好ましい。
【0038】
前記他のモノマーのなかでは、パターン形成性およびアルカリ現像性を向上させる観点から、アルキル(メタ)アクリレートおよびカルボキシル基含有モノマーが好ましく、カルボキシル基含有モノマーがより好ましい。モノマー成分におけるアルキル(メタ)アクリレートおよびカルボキシル基含有モノマーの合計含有率は、パターン形成性およびアルカリ現像性を向上させる観点から、好ましくは10〜70質量%、より好ましくは20〜60質量%、さらに好ましくは30〜55質量%である。
【0039】
従来、モノマー成分を重合させる際には、一般に、分子量分布の増大やゲル化を抑制する観点から、連鎖移動剤が用いられている。しかし、本発明において、モノマー成分を連鎖移動剤の非存在下で重合させる点にも1つの特徴がある。本発明によれば、スチレン系モノマーを含有するモノマー成分を重合させる際に連鎖移動剤が必要とされている従来技術に反し、当該連鎖移動剤の非存在下でモノマー成分を重合させるので、モノマー成分の重合性が向上し、ひいてはスチレン系ポリマー溶液における未反応のスチレン系モノマーの含有率を低下させることができる。
【0040】
なお、前記「連鎖移動剤の非存在下」は、モノマー成分に対する連鎖移動剤の量が0.05質量%以下、好ましくは0.01質量%以下、より好ましくは0.001質量%以下、さらに好ましくは0質量%であることを意味する。
【0041】
モノマー成分を重合させる方法としては、例えば、溶液重合法、分散重合法、懸濁重合法、乳化重合法、塊状重合法などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの重合法のなかでは、パターン形成性およびアルカリ現像性を向上させる観点から、溶液重合法が好ましい。
【0042】
モノマー成分を溶液重合法によって重合させる場合、溶媒として、例えば、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、イソブチルアルコール、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテートなどのアルコール系溶媒;ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族系溶媒;プロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブなどのエーテル系溶媒;酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸セロソルブなどのエステル系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジアセトンアルコールなどのケトン系溶媒;ジメチルホルムアミドなどのアミド系溶媒などの有機溶媒が挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの溶媒は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。溶媒の量は、重合条件、モノマー成分の組成、スチレン系ポリマー溶液におけるスチレン系ポリマーの濃度などを考慮して適宜決定すればよい。
【0043】
モノマー成分を重合させる際には、重合開始剤を用いることができる。重合開始剤としては、例えば、過酸化水素;過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウムなどの過硫酸塩;2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(イソ酪酸)ジメチル、4,4’−アゾビス(4−シアノ吉草酸)、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)二塩酸塩、2,2’−アゾビス[N−(2−カルボキシエチル)−2−メチルプロピオンアミジン]二水和物、2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]二塩酸塩、2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]二硫酸塩二水和物、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)などのアゾ系化合物;ベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、tert−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、ジ−tert−ブチルパーオキサイド、クメンヒドロパーオキサイドなどの有機過酸化物などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの重合開始剤は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。重合開始剤の量は、スチレン系ポリマー溶液の物性などに応じて適宜設定すればよいが、通常、モノマー成分100質量部あたり、好ましくは0.01〜50質量部、より好ましくは0.05〜20質量部である。
【0044】
モノマー成分を重合させる際の重合条件は、重合方法に応じて適宜設定すればよく、特に限定されるものではない。モノマー成分の重合温度は、好ましくは室温〜200℃、より好ましくは40〜140℃である。モノマー成分の重合反応時間は、モノマー成分の重合反応が完結するように適宜設定することができるが、通常、1〜5時間であることが好ましい。また、モノマー成分を重合させた後、得られたスチレン系ポリマー溶液を熟成させることにより、未反応のスチレン系モノマーの残存量を低減させることができる。スチレン系ポリマー溶液の熟成時間は、好ましくは30分間〜8時間、より好ましくは1〜5時間である。
【0045】
モノマー成分を重合させる際のスチレン系モノマーの反応率は、未反応のスチレン系モノマーの含有率を低下させ、パターン形成性およびアルカリ現像性を向上させる観点から、95質量%以上であることが好ましく、98質量%以上であることがより好ましい。なお、スチレン系モノマーの反応率は、以下の実施例に記載の方法に基づいて測定したときの値である。
【0046】
以上のようにしてモノマー成分を重合させることにより、スチレン系ポリマーを調製することができるが、本発明においては、スチレン系モノマーおよび式(I)で表わされるエーテル系モノマーを含有するモノマー成分を連鎖移動剤の非存在下で溶液重合させることにより、本発明のスチレン系ポリマー溶液を容易に製造することができる。
【0047】
以上のようにしてモノマー成分を重合させることによって得られたスチレン系ポリマーの重量平均分子量は、好ましくは2000〜50万、より好ましくは3000〜10万、さらに好ましくは5000〜5万である。なお、スチレン系ポリマーの重量平均分子量は、以下の実施例に記載の方法に基づいて測定したときの値である。
【0048】
スチレン系ポリマーの酸価は、アルカリ現像性を向上させる観点から、好ましくは100mgKOH/g以上、より好ましくは110mgKOH/g以上であり、アルカリ現像時における歩留りを向上させる観点から、好ましくは250mgKOH/g以下、より好ましくは200mgKOH/g以下、さらに好ましくは150mgKOH/g以下である。なお、スチレン系ポリマーの酸価は、以下の実施例に記載の方法に基づいて測定したときの値である。
【0049】
本発明のスチレン系ポリマー溶液は、必要により、スチレン系ポリマーを所望の濃度で含有するように溶媒で希釈することができる。本発明のスチレン系ポリマー溶液を、例えば、モノマー成分を溶液重合させることによって調製した場合には、必ずしも溶媒を用いなくてもスチレン系ポリマーを所望の濃度で含有するスチレン系ポリマー溶液を得ることができる。
【0050】
前記溶媒としては、モノマー成分を溶液重合法によって重合させる際に用いられる溶媒と同様のものが例示されるが、本発明は、当該溶媒の種類によって限定されるものではない。スチレン系ポリマー溶液におけるスチレン系ポリマーの濃度は、前記有機溶媒を用いることにより、容易に調整することができる。本発明のスチレン系ポリマー溶液におけるスチレン系ポリマーの固形分濃度は、本発明のスチレン系ポリマー溶液の用途、使用目的などによって異なるので一概には決定することができないことから、本発明のスチレン系ポリマー溶液の用途、使用目的などに応じて適宜調整することが好ましいが、通常、塗工性を向上させる観点から、好ましくは5〜80質量%、より好ましくは10〜80質量%、さらに好ましくは20〜70質量%、さらに一層好ましくは25〜60質量%、特に好ましくは30〜50質量%である。
【0051】
以上のようにして得られる本発明のスチレン系ポリマー溶液におけるスチレン系モノマーの含有率は、本発明のスチレン系ポリマー溶液を用いて形成された塗膜のアルカリ現像後に基板上に残渣を生じないようにし、パターン形成性を向上させる観点から、0.8質量%以下、好ましくは0.75質量%以下、より好ましくは0.3質量%以下である。なお、スチレン系ポリマー溶液におけるスチレン系モノマーの含有率は、以下の実施例に記載の方法に基づいて測定したときの値である。
【0052】
本発明のスチレン系ポリマー溶液は、スチレン系モノマーおよび式(I)で表わされるエーテル系モノマーを含有するモノマー成分を重合させることによって得られたスチレン系ポリマーを含有し、スチレン系モノマーの含有率が0.8質量%以下であるので、本発明のスチレン系ポリマー溶液を用いてアルカリ現像用の塗膜を形成したとき、現像後に基板上に残渣を生じず、しかも優れたパターン形成性を発現させることができる。したがって、本発明のスチレン系ポリマー溶液は、例えば、感光性樹脂組成物、コーティング剤、塗料などの塗膜を形成する用途に好適に使用することができる。
【0053】
なお、本発明のスチレン系ポリマー溶液には、本発明の目的を阻害しない範囲内で、前記スチレン系ポリマー以外のポリマーが含まれていてもよい。
【実施例】
【0054】
次に本発明を実施例に基づいてさらに詳細に説明するが、本発明は、かかる実施例のみに限定されるものではない。
【0055】
実施例1
モノマー滴下槽にモノマー成分としてスチレン35質量部、ジメチル−2,2’−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート15質量部、メタクリル酸32質量部およびメチルメタクリレート18質量部、重合開始剤としてtert−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート〔日油(株)製、商品名:パーブチルO〕6質量部、および溶媒としてプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート40質量部を均一な組成となるように攪拌下で混合することにより、モノマー成分を得た。
【0056】
一方、反応槽として冷却管を取り付けたセパラブルフラスコを用意した。この反応槽内に、溶媒としてプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート140質量部を仕込み、反応槽内を窒素ガス置換した後、攪拌しながら湯浴で加熱し、反応槽の温度を90℃まで昇温させた。反応槽の温度が90℃に安定した後、モノマー滴下槽からモノマー成分の滴下を開始した。モノマー成分の滴下は、反応槽の温度を90℃に保ちながら、180分間かけて行なった。
【0057】
モノマー成分の滴下が終了し、60分間経過後に、重合開始剤としてtert−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート2質量部を反応槽内に投入し、さらに反応槽の内温を110℃に昇温させ、110℃で2時間反応を継続させた。その後、反応槽をいったん室温まで冷却し、セパラブルフラスコにガス導入管を取り付け、酸素/窒素の体積比が5/95となるように混合した混合ガスを反応槽内の内容物に吹き込んだ。
【0058】
次に、反応槽内に、グリシジルメタクリレート20質量部、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール0.2質量部およびトリエチルアミン0.4質量部を仕込み、反応槽を110℃まで昇温させた。その状態で110℃にて10時間反応させた後、反応槽内に溶媒としてプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート50質量部を添加し、室温まで冷却することにより、スチレン系ポリマーの濃度(固形分濃度、以下同じ)が33質量%のスチレン系ポリマー溶液を得た。なお、スチレン系ポリマー溶液におけるスチレン系ポリマーの濃度は、以下の方法に基づいて求めた。
【0059】
〔スチレン系ポリマーの濃度の測定法〕
スチレン系ポリマー溶液1gにアセトン4gを加えて溶解させた溶液を、常温で自然乾燥させ、さらに160℃で5mmHgの減圧度にて5時間減圧乾燥させ、デシケータ内で放冷させた後、スチレン系ポリマーの質量を測定した。スチレン系ポリマー溶液の質量(1g)およびスチレン系ポリマーの質量に基づき、スチレン系ポリマー溶液におけるスチレン系ポリマーの濃度を求めた。
【0060】
前記で得られたスチレン系ポリマー溶液において、スチレン系モノマー(スチレン)の反応率、スチレン系ポリマーの重量平均分子量およびその酸価、ならびに未反応のスチレン系モノマー(スチレン)の含有率を以下の方法に基づいて測定したところ、スチレンの反応率は98質量%であり、スチレン系ポリマーの重量平均分子量は12000で、スチレン系ポリマーの酸価は108mgKOH/gであり、未反応のスチレンの含有率は5800ppmであった。
【0061】
〔スチレン系モノマーの反応率〕
ガスクロマトグラフィー測定装置〔(株)島津製作所製、品番:GC−17A〕を用いてスチレン系ポリマー溶液に含まれているスチレン系モノマーの量を求め、スチレン系モノマーの仕込み量から反応率を求めた。
【0062】
〔スチレン系ポリマーの重量平均分子量〕
ゲル透過クロマトグラフ測定装置〔昭和電工(株)製、商品名:Shodex GPC System−21H〕を用い、溶離液としてテトラヒドロフランを用いてポリスチレン換算でスチレン系ポリマーの重量平均分子量を測定した。
【0063】
〔スチレン系ポリマーの酸価〕
スチレン系ポリマー溶液0.5〜1gに、アセトン80mLおよび水10mLを添加し、攪拌することによって均一な組成となるように溶解させることによって溶液を得た。濃度が0.1mol/Lの水酸化カリウム水溶液を滴定液として用い、自動滴定装置〔平沼産業(株)製、品番:COM−555〕を用いて前記溶液を滴定し、当該溶液の酸価を測定した。この溶液の酸価とスチレン系ポリマーの濃度に基づいて当該スチレン系ポリマーの酸価を求めた。
【0064】
〔未反応のスチレン系モノマーの含有率〕
スチレン系ポリマー溶液における未反応のスチレン系モノマーの含有率は、モノマー成分に使用されたスチレン系モノマーの量、前記で求められたスチレン系モノマーの反応率およびモノマー成分の量に基づいて求めた。より具体的には、未反応のスチレン系モノマーの含有率は、式:
〔スチレン系モノマーの含有率(質量%)[×104ppm(換算)]〕
=[モノマー成分に使用されるスチレン系モノマーの量(質量部)]×[100−スチレン系モノマーの反応率(%)]÷[モノマー成分の量(質量部)]
に基づいて求めた。
【0065】
次に、前記で得られたスチレン系ポリマー溶液100質量部、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート30質量部、光重合開始剤(チバガイギー社製、商品名:イルガキュア907)5質量部および溶媒としてプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート500質量部を混合したのち、ガラス基板上にスピンコートし、90℃で3分間乾燥させることにより、膜厚が3μmの塗膜を形成させた。
【0066】
前記で形成された塗膜に、紫外線露光装置(Topcon社製、品番:TME−150RNS)を用い、ライン幅15μmのラインアンドスペースのフォトマスクを介し、20mJ/cm2の紫外線を露光し、90℃で3分間乾燥させた。その後、スピン現像機(アクテス社製、品番:ADE−3000S)を用い、0.01%水酸化カリウム水溶液で20秒間、前記塗膜のアルカリ現像性を以下の方法に基づいて評価した。その結果を表1に示す。
【0067】
〔アルカリ現像性〕
(1)残渣
前記塗膜の表面を光学顕微鏡で観察し、未露光部における塗膜の溶け残りの有無を観察し、以下の評価基準に基づいて評価した。
(評価基準)
◎:塗膜が溶解しており、溶け残りの残渣は認められない。
○:塗膜が溶解しているが、溶け残りの残渣がごく僅か認められる。
△:塗膜が溶解しているが、溶け残りの残渣が明らかに認められる。
×:塗膜が溶解していない。
【0068】
(2)パターン形成性
前記塗膜の表面を光学顕微鏡で観察し、露光部における塗膜を観察し、以下の評価基準に基づいて評価した。
(評価基準)
◎:塗膜が露光部で硬化することにより、完全なパターンが形成されている。
○:塗膜が露光部で硬化することにより、ほぼ完全なパターンが形成されている。
△:塗膜が露光部で硬化しているが、完全なパターンが形成されているとはいえない。
×:塗膜が露光部で硬化していない。
【0069】
実施例2
実施例1において、スチレンの代わりにビニルトルエン35質量部を用いたこと以外は、実施例1と同様にしてスチレン系ポリマーの濃度が33質量%のスチレン系ポリマー溶液を得た。
【0070】
前記で得られたスチレン系ポリマー溶液において、ビニルトルエンの反応率、スチレン系ポリマーの重量平均分子量およびその酸価、ならびに未反応のビニルトルエンの含有率を実施例1と同様にして調べたところ、ビニルトルエンの反応率は98質量%であり、スチレン系ポリマーの重量平均分子量は12000で、スチレン系ポリマーの酸価は108mgKOH/gであり、未反応のビニルトルエンの含有率は5800ppmであった。
【0071】
次に、前記で得られたスチレン系ポリマー溶液を用いて実施例1と同様にして塗膜を形成させ、塗膜のアルカリ現像性を評価した。その結果を表1に示す。
【0072】
実施例3
実施例1において、モノマー滴下槽に投入するtert−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート(重合開始剤)の量を6質量部から10質量部に変更したこと以外は、実施例1と同様にしてスチレン系ポリマーの濃度が33質量%のスチレン系ポリマー溶液を得た。
【0073】
前記で得られたスチレン系ポリマー溶液において、スチレンの反応率、スチレン系ポリマーの重量平均分子量およびその酸価、ならびに未反応のスチレンの含有率を実施例1と同様にして調べたところ、スチレンの反応率は99質量%であり、スチレン系ポリマーの重量平均分子量は7000で、スチレン系ポリマーの酸価は108mgKOH/gであり、未反応のスチレンの含有率は2900ppmであった。
【0074】
次に、前記で得られたスチレン系ポリマー溶液を用いて実施例1と同様にして塗膜を形成させ、塗膜のアルカリ現像性を評価した。その結果を表1に示す。
【0075】
実施例4
実施例1において、メタクリル酸の量を32質量部から16質量部に変更し、メチルメタクリレートの量を18質量部から34質量部に変更し、グリシジルメタクリレートを使用しなかったこと以外は、実施例1と同様にしてスチレン系ポリマーの濃度が29質量%のスチレン系ポリマー溶液を得た。
【0076】
前記で得られたスチレン系ポリマー溶液において、スチレンの反応率、スチレン系ポリマーの重量平均分子量およびその酸価、ならびに未反応のスチレンの含有率を実施例1と同様にして調べたところ、スチレンの反応率は98質量%であり、スチレン系ポリマーの重量平均分子量は10000で、スチレン系ポリマーの酸価は104mgKOH/gであり、未反応のスチレンの含有率は7000ppmであった。
【0077】
次に、前記で得られたスチレン系ポリマー溶液を用いて実施例1と同様にして塗膜を形成させ、塗膜のアルカリ現像性を評価した。その結果を表1に示す。
【0078】
比較例1
モノマー滴下槽にモノマー成分としてスチレン35質量部、ジメチル−2,2’−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート15質量部、メタクリル酸32質量部およびメチルメタクリレート18質量部、重合開始剤としてtert−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート〔日油(株)製、商品名:パーブチルO〕6質量部、および溶媒としてプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート40質量部を均一な組成となるように攪拌下で混合することにより、モノマー成分を得た。
【0079】
また、連鎖移動剤の滴下槽として、n−ドデカンチオール3質量部およびプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート17質量部を均一な組成となるように混合した連鎖移動剤溶液を用意した。
【0080】
一方、反応槽として冷却管を取り付けたセパラブルフラスコを用意した。この反応槽内に、溶媒としてプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート120質量部を仕込み、反応槽内を窒素ガス置換した後、攪拌しながら湯浴で加熱し、反応槽の温度を90℃まで昇温させた。反応槽の温度が90℃に安定した後、モノマー滴下槽からモノマー成分の滴下を開始し、連鎖移動剤の滴下槽から連鎖移動剤溶液の滴下を開始した。モノマー成分および連鎖移動剤溶液の滴下は、反応槽の温度を90℃に保ちながら、それぞれ180分間かけて行なった。
【0081】
モノマー成分および連鎖移動剤溶液の滴下が終了し、60分間経過後に、重合開始剤としてtert−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート2質量部を反応槽内に投入し、さらに反応槽の内温を110℃に昇温させ、110℃で1時間反応を継続させた。その後、反応槽をいったん室温まで冷却し、セパラブルフラスコにガス導入管を取り付け、酸素/窒素の体積比が5/95となるように混合した混合ガスを反応槽内の内容物に吹き込んだ。
【0082】
次に、反応槽内に、グリシジルメタクリレート20質量部、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール0.2質量部およびトリエチルアミン0.4質量部を仕込み、反応槽を110℃まで昇温させた。その状態で110℃にて10時間反応させた後、反応槽内に溶媒としてプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート50質量部を添加し、室温まで冷却することにより、スチレン系ポリマーの濃度が31質量%のスチレン系ポリマー溶液を得た。
【0083】
前記で得られたスチレン系ポリマー溶液において、スチレンの反応率、スチレン系ポリマーの重量平均分子量およびその酸価、ならびに未反応のスチレンの含有率を実施例1と同様にして調べたところ、スチレンの反応率は85質量%であり、スチレン系ポリマーの重量平均分子量は10000で、スチレン系ポリマーの酸価は112mgKOH/gであり、未反応のスチレンの含有率は43800ppmであった。
【0084】
次に、前記で得られたスチレン系ポリマー溶液を用いて実施例1と同様にして塗膜を形成させ、塗膜のアルカリ現像性を評価した。その結果を表1に示す。
【0085】
比較例2
モノマー滴下槽にモノマー成分としてスチレン35質量部、ジメチル−2,2’−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート10質量部、メタクリル酸16質量部およびメチルメタクリレート39質量部、重合開始剤としてtert−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート〔日油(株)製、商品名:パーブチルO〕5質量部、および溶媒としてプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート20質量部を均一な組成となるように攪拌下で混合することにより、モノマー成分を得た。
【0086】
一方、反応槽として冷却管を取り付けたセパラブルフラスコを用意した。この反応槽内に、溶媒としてプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート137.5質量部を仕込み、反応槽内を窒素ガス置換した後、攪拌しながら湯浴で加熱し、反応槽の温度を90℃まで昇温させた。反応槽の温度が90℃に安定した後、モノマー滴下槽からモノマー成分の滴下を開始した。モノマー成分の滴下は、反応槽の温度を90℃に保ちながら、135分間かけて行なった。
【0087】
モノマー成分の滴下が終了し、60分間経過後に反応槽の内温を110℃に昇温させ、110℃で3時間反応を継続させた。その後、反応槽を室温まで冷却することにより、スチレン系ポリマーの濃度が40質量%のスチレン系ポリマー溶液を得た。
【0088】
前記で得られたスチレン系ポリマー溶液において、スチレンの反応率、スチレン系ポリマーの重量平均分子量およびその酸価、ならびにスチレンの含有率を実施例1と同様にして調べたところ、スチレンの反応率は88質量%であり、スチレン系ポリマーの重量平均分子量は7100で、スチレン系ポリマーの酸価は104mgKOH/gであり、未反応のスチレンの含有率は42000ppmであった。
【0089】
次に、前記で得られたスチレン系ポリマー溶液を用いて実施例1と同様にして塗膜を形成させ、塗膜のアルカリ現像性を評価した。その結果を表1に示す。
【0090】
【表1】
【0091】
表1に示された結果から、各実施例で得られたスチレン系ポリマー溶液は、スチレン系モノマーおよび式(I)で表わされるエーテル系モノマーを含有するモノマー成分を重合させることによって得られたスチレン系ポリマーを含有し、残存スチレン系モノマーの含有率が0.8質量%以下であることから、アルカリ現像性に優れていることがわかる。なかでも、実施例2の結果から、スチレン系モノマーとしてビニルトルエンを用いた場合には、アルカリ現像性がより一層優れることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0092】
本発明のスチレン系ポリマー溶液は、アルカリ現像性に優れていることから、例えば、感光性樹脂組成物、コーティング剤、塗料などの塗膜を形成する用途に使用することが期待される。